説明

測定装置

温度を測定するだけで、その測定対象物の識別情報も記録できる測定装置を提供する。この測定装置は、接触型の温度検出ユニットと、非接触型の無線ユニットとを有する。無線ユニットの受信可能な範囲を接触型の温度検出ユニットの接触距離、すなわちロッドの長さ程度にすることにより、温度を測定するだけで、温度測定対象の識別情報も得ることができ、その識別情報が得られる範囲は対象物のサイズと比較すると十分に小さいので、温度検出ユニットと一体で移動するように構成された無線ユニットであれば、複数の対象物が積載されている場合でも、対象物の温度を測定する操作だけで対象物の識別情報を他の対象物の情報とは分離して得ることができ、測定値を取得した対象物の識別情報と共に記録することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の温度などの物理量の測定、記録および管理などに用いられる測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チルド食品、生鮮食品、冷凍食品または乳製品等を倉庫から店舗および顧客に配送する流通システムにおいては、出荷されてから顧客に商品が渡るまでの間、品質や衛生面を管理するために商品が適切な温度管理の下に置かれることが要望されている。
【0003】
したがって、受入れや受渡し等を含む流通途中で、トラックの運転手など運搬者が、適当なタイミングで運搬中の各商品の温度を測定して管理をすることが要望されている。特開2000−76504号公報には、出荷時および受入時から商品保管に至る迄の流通過程での商品の温度管理を行う、温度計測機能付きタイムスタンプが開示されている。このタイムスタンプは、非接触で物体の表面温度を測定する非接触計測手段(非接触温度計)と、計測した温度とその計測時刻を一緒に記録する温度記録手段と、その表面温度と計測時刻を印刷する印字手段とを有することで、1台の装置(タイムスタンプ)で、流通過程の温度管理、衛生管理を徹底できるようにしている。
【発明の開示】
【0004】
流通過程において、さらに精度の高い商品の温度管理を行うためには、時刻情報だけでは不十分であり、温度管理を行っている各物品を識別する情報、例えば、品目やシリアルナンバー等を記録することが望ましい。測定対象物の識別情報は、商品のラベルを参照したり、荷札を参照して測定時に手動で入力することができる。あるいは、予め作成されたリストがあれば、それを参照して入力することも可能である。しかしながら、識別情報の入力には手間が掛かり、入力ミスが発生する可能性がある。また、リストを参照しながら識別情報を入力したとしても、本当にその商品の温度を測定しているか否かの保障はない。
【0005】
非接触型の温度計は、商品から離れて測定できるので便利であるが、商品に取り付けられたラベルや伝票などから識別情報を取得しようとすると、結局、商品に接近する必要がある。また、商品から離れて温度を測定できる反面、時刻情報だけでは、どの商品の温度を測定したかを特定することはできない。
【0006】
そこで、本発明においては、簡単に商品などの測定対象物の温度あるいはその他の物理量を測定でき、さらに、どの商品の温度を測定したかを確実に記録することができる温度などの測定装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明では、測定対象物に感知部を接する、浸す、差し込むあるいは接続などの距離が制限される物理的な関係を持ちながら、温度などの物理量を測定する検出ユニットと、無線による情報を取得する非接触式の無線ユニットとを一体で移動可能とし、無線ユニットの受信可能範囲を温度検出ユニットの測定距離と同じ程度に限定または絞ることにより、測定対象物の物理量と識別情報を同時に、そして、他の測定対象物の情報と混同することなく取得するようにしている。さらに、それらの情報を関連付けて出力し、内蔵した記録媒体や外部の記録装置に記録できるようにしている。すなわち、本発明の測定装置は、測定対象物との距離が制限される物理的な関係を持った状態で測定対象物の物理量を測定する検出ユニットと、この検出ユニットと一体で移動し、検出ユニットの測定距離程度の範囲を、発信源から無線出力された識別情報を受信可能な範囲あるいは限界とする無線ユニットと、検出ユニットの測定値を無線ユニットで得られた識別情報と関連付けして出力する出力ユニットとを有する。
【0008】
本明細書においては、測定対象物との距離が制限される物理的な関係の1つは、センサー自身あるいはセンサーの一部である感知部が測定対象物に接触した状態であり、物理量を感知するための部分を測定対象物の表面に接したり、中に浸したり、中に差し込んだりした状態などが含まれる。本明細書において、センサーとは、物理量を検出するための部分を主に示す。さらに、放射線や電流などの物理量を測定する場合においては、センサーを線源や配線に近接させた状態も、測定対象物との距離が制限される物理的な関係に含まれる。したがって、本発明の測定装置は、測定対象物に接触または近接させるセンサーと、このセンサーと物理的に繋がり、センサーからの信号に基づき測定対象物の物理量を測定する検出ユニットと、センサーと検出ユニットとの測定距離程度の範囲を、発信源から無線出力された識別情報を受信する範囲とする無線ユニットと、検出ユニットの測定値を無線ユニットで得られた識別情報と関連付けして出力する出力ユニットとを有する。
【0009】
測定装置は、センサーと検出ユニットとの間の距離を維持あるいは制限する手段を備えていることが望ましい。その1つは、センサーを先端に具備するロッドである。センサーと検出ユニットとを接続する配線だけでは、ユーザがセンサーを手で持って測定対象物に接触させたり、近接させる必要がある。センサーと検出ユニットとをロッドで接続すれば、センサーの位置を遠隔制御できる。
【0010】
接触型の検出ユニットの最も有用なものの1つは、測定対象物に接触し、その温度を測定する温度検出ユニットである。先端にセンサーを具備するロッドを備えている測定装置であれば、無線ユニットは、ロッドの長さ程度の距離を受信可能な範囲として設定可能であることが望ましい。また、出力ユニットの出力先は、内蔵あるいは着脱可能なRAMあるいはディスクなどの記録媒体、さらには、外部の記録装置、例えば、パーソナルコンピュータやサーバなどである。特に、出力ユニットが、無線インターフェースを備えていれば、電波や光などを介して外部にデータを出力することができ、無線LANインターフェースを内蔵していれば、温度測定装置から直にインターネットを経由してサーバなどの蓄積媒体にデータを出力することができる。さらに、電子メールでデータを出力することも可能である。
【0011】
また、本発明の記録方法は、測定対象物との距離が制限される物理的な関係を持った状態で測定対象物の物理量を測定する検出ユニットにより測定対象物の温度などの物理量を測定すると共に、検出ユニットの測定距離程度の範囲を発信源から無線出力された情報の受信可能な範囲とする無線ユニットにより識別情報を取得する取得工程と、測定値と識別情報とを関連付けして出力する出力工程とを有する。無線ユニットの検出範囲(受信可能な範囲)とは、その範囲にある発信源からの情報は取得でき、範囲外にある発信源からの情報は取得できない領域を示すが、デジタル的に検出範囲が決まる必要はなく、その検出範囲の倍あるいは数倍離れた位置にある発信源からの情報は取得できず、検出範囲の近傍にある発信源からの情報は取得できれば良い。
【0012】
測定対象物にセンサーを接したり、把持させたり、挿入するなど、測定対象物と物理的な関係を持たないと物理量を検出できない検出ユニットにおいては、測定対象物は一義的に決まる。そして流通過程、定期検査、巡回点検などの場面において、温度、湿度、照度、濃度、電流、電圧などの物理量を測定対象物ごとに検出する際は、検出ユニットと測定対象物との間で物理的な関係を生じさせるために、検出ユニットと測定対象物との距離、すなわち測定距離が決まるか、若しくは限定される。接触型の温度検出ユニットであれば、温度検出ユニット自身を測定対象物に接触させたり、ロッドの先端を測定対象物に接してロッドの距離だけ離れた位置で物理量を測定する。温度測定用のロッドは、先端に熱電対またはサーミスタなどの適当な温度センサーを内蔵したり、取り付けられているものである。したがって、温度検出ユニットと測定対象物との測定距離は、数cm程度から数10cm程度であり、ほとんどの測定対象物のサイズより十分に小さい。したがって、その測定距離を検出距離とすれば、無線ユニットは測定対象物の発信源からの情報と、隣接した測定対象物の発信源からの情報とを混同して取得することはない。
【0013】
このため、検出ユニットと無線ユニットとを一体で移動し、同時に、あるいは検出ユニットが物理量を測定する状態にあるときに、測定対象物の物理量と識別情報を共に取得することにより、その物理量を測定した測定対象物の識別情報を簡単に、そして確実に取得することができる。このため、測定値を識別情報と関連付けすることにより、測定された測定対象物を一義的に定義でき、測定されたことを間違いなく記録できる。
【0014】
測定対象物には、無線出力の小さな非接触の発信源が内蔵され、あるいは表面に取り付けられていることが望ましく、近年では、識別情報などを無線、特に電波で出力する近接型のICタグ(無線タグ、ICチップなどを含む)を使用できる。ICタグはコンパクトで低コストであり、さらに使い捨てできるものが検討されている。このため、梱包する際に測定対象物の中に入れたり、商品ラベルあるいは伝票などと共に測定対象物の表面に貼り付けたりしておくことができる。ICタグの無線出力と無線ユニットの感度を調整したり、ICタグの無線出力が調整できない場合は、適当な受信可能範囲が得られるように無線ユニットの感度を設定することにより、測定対象物に接触しながら温度などの物理量を測定するのと同時に、その測定対象物の識別情報だけを無線により限定的に取得でき、それらを関連付けることができる。
【0015】
さらに、計時ユニットを有し、出力ユニットが測定値および識別情報に測定時刻を関連付けして出力することにより、それらを記録することができる。したがって、測定対象物の温度管理を経過も含めて精度良く、簡単に記録し、管理することができる。計時ユニットはCPUのクロックを用いることも可能である。
【0016】
万一、測定対象物のサイズが小さい場合は、無線ユニットが複数の識別情報を受信する可能性がある。しかしながら、その場合でも、識別情報の受信可能な範囲は狭いのでユーザが混乱するほど多数の識別情報を読み取ることはなく、数個の識別情報から適当なものを選択して測定値と共に記録することができる。複数の識別情報が選択可能な状況の場合に対処できるように選択スイッチを設けておくことも可能である。さらに、複数の識別情報の選択肢があるときにそれが1つに絞られるまで無線ユニットの感度を落とす感度調整回路を設けたり、ロッドの長さを調整するような、物理量を測定する際の距離を調整できる手段を設けることにより、ユーザが識別情報を選択する手間を省くことができる。
【0017】
さらに、物理量を測定している測定対象物の測定値および識別情報が得られたとユーザが認識したときに、その測定値および識別情報を関連付けして出力できるように、出力ユニットから測定値および識別情報を出力するタイミングを指示する記録スイッチを設けておくことが有効である。ワンプッシュで、簡単にそして確実に、温度などの管理に必要な項目、測定値および識別情報を記録でき、また、測定している温度が安定したときの値を測定値として記録するためにもこの記録スイッチは利用できる。これらのデータは、ワンプッシュで取得すると共に出力ユニットの無線インターフェースなどを介して外部記録装置に送出することも可能である。
【0018】
本発明の温度測定装置を用いることにより、予め輸送する対象物に、識別情報を有する近接型の無線タグを取り付けて発送すれば、本発明の温度測定装置により、流通途上の対象物の温度を測定するだけで測定対象物の測定値と識別情報とを関連付けして記録することができる。したがって、測定対象物を出荷するときから、流通業者が受け入れ、運搬し、さらにユーザの手元に渡されるときまで、すべての過程において、各商品(物品)の温度管理を精度良く、簡単に行うことができ、その履歴を残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)および図1(b)は、流通過程において、本発明の温度測定装置を用いる例を示す。
【図2】図2は、温度測定装置の概観を示す斜視図である。
【図3】図3は、温度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、温度測定装置において温度を測定し記録する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態についてさらに説明する。図1に、本発明に係る温度測定装置10を用い、物品の流通過程における温度を管理する様子を示してある。製造工場などから出荷される対象物(荷物あるいはコンテナ)80の各々には、それぞれの対象物を識別する識別情報φ2を備えたICタグ70が取り付けられる。ICタグは、無線タグあるいはRFID(Radio Frequency IDentification)タグと称され、対象物に取り付けたICチップとアンテナから成っており、「ラベル型」、「カード型」、「スティック型」などさまざまな形状のものがある。したがって、ICタグ70は、図示したように対象物80の表面にラベルと共につけても良く、対象物80の内部に入れておいても良い。
【0021】
ICタグ70のICチップ内のデータには、外部からの電波により、非接触でアクセスできる。この非接触型の情報出力装置であるICタグに、従来、バーコードやラベルなどを用いて標記していた製品コードや、その個体固有の製造番号などを含む識別情報φ2を含めることができ、非接触で読み出すことができる。また、ICタグ70は、バーコードと異なり、電波の届く範囲であれば、どんな向きであっても読み取れるので、ICタグ70が視覚的に見えなくても識別情報φ2を読み取ることができる。逆に、電波の届く範囲内でなければ識別情報φ2を取得することができず、その電波の届く範囲はICタグ70の出力と、出力された電波を受信する無線ユニットの感度により決定される。
【0022】
図2に、温度測定装置10の概要を斜視図により示してある。また、図3に、温度測定装置10の概略構成をブロック図により示してある。本例の温度測定装置10は、小型なハンディータイプであり、ほぼ長方形状のハウジング11を有する。ハウジング11の端11aには、長さが10cm程度で、ステンレス製の先端12aが細くなったロッド12が取り付けられている。このロッド12の先端12aには温度センサー21、たとえば、熱電対が取り付けられており、先端12aを対象物80に接触することにより対象物80の温度を測定することができる。ロッド12は、長さが一定のものであっても良く、スライド機構などを含めて長さを調製できるものであっても良い。ハウジング11の上面11bには、表示パネルとなるLCD13が設置されており、温度センサー21で感知された値から温度に変換された測定値φ1、受信された識別情報φ2などを表示する。また、ハウジング11の上面11bの操作部16には、記録スイッチ14、電源スイッチ15などが配置されている。
【0023】
測定装置10は、図3に示すように、ロッド12の先端12aに取り付けられたセンサー21により得られたデータを温度の測定値φ1に変換し、温度測定値として取得する接触型の温度検出ユニット20と、ICタグ70から無線により発信された識別情報φ2を受信する無線ユニット30とを備えている。無線ユニット30は、ICタグ70からの電波を受信するアンテナ31と、アンテナ31により電波から情報を取得する送受信部32と、送受信部32により得られた情報から識別情報φ2をデコードするIDリーダ33とを備えている。送受信部32は、感度調整が可能であり、発信源であるICタグ70からの情報を受信できる範囲(受信可能な限界)を設定できる。本例では、ロッド12の長さ程度の範囲にいるICタグ70から情報を取得し、それ以上の距離にいるICタグ70からの情報を取得しないように受信可能な範囲が設定される。
【0024】
対象物80のラベル75にICタグ70が組み込まれており、異なる対象物80のラベル同士が接触するように対象物80が積まれている場合は、発信源である複数のICタグ70が同じ距離に存在する可能性がある。その場合は、複数のICタグ70からの情報を、無線ユニットの受信可能な範囲の設定では分離できない。したがって、IDリーダ33は複数の識別情報をLCD13に表示し、ユーザがそれらの中から選択する操作が要求され、この測定装置10は、識別情報を分離できない場合は、それらをLCD13に表示してユーザが選択する機能を備えている。しかしながら、多くのケースでは、積載されている対象物80が外部から確認できるようにICタグ70を含むラベル75は外部から見えるように積まれる。したがって複数のICタグ70が向かい合うことは少なく、識別情報を選別できないケースは少ない。さらに、ラベル75が向かい合わないよう積載することは難しいことではなく、適切な積載方法を採用することによってもこの問題は解決できる。
【0025】
ICタグ70が対象物80に入れられている場合は、ロッド12の長さに対して対象物80の特徴的な長さが数倍程度になっていれば、複数の対象物80から得られる識別情報を十分に差別化できる。ロッド12の長さが10cm程度なのに対し、荷物として輸送される多くの対象物の一辺の長さは数10cmあるいはそれ以上であり、内蔵されたICタグ70からの情報は十分に個々に分けて識別できる。また、このことから分かるように、送受信部32の受信可能範囲はロッド12の長さと明確に、あるいはデジタル的に同じである必要はなく、対象物80の特徴的な長さである数10cmあるいは1mに対してロッド12の長さに近いレンジであれば良い。
【0026】
さらに、本例の無線ユニット30は、受信ユニットとしての機能だけではなく、対象物80のICタグ70に情報を書き込む機能も備えている。したがって、測定装置10で測定した内容をICタグ70に書き込んで、ICタグ70を記録媒体として利用することも可能であり、ICタグ70に、その荷物80のすべての履歴を保存させることが可能である。ICタグ70にそれほどの記憶容量がない場合は、測定装置10に設定された測定装置10の識別情報φ9をICタグ70に書き込み、流通過程においてその商品80の流通に関与した作業者の情報を残すようにすることが可能である。
【0027】
測定装置10は、そのすべての機能を制御するCPU40を備えている。CPU40により実現される1つの機能は、温度検出ユニット20から出力された測定値φ1と、無線ユニット30により得られた識別情報φ2とを関連付けして出力する出力ユニットとしての機能である。したがって、CPU40は、記録スイッチ14が操作されたときに温度検出ユニット20から出力されている測定値φ1と、無線ユニット30から得られた識別情報φ2を関連付けしてデータ記録用のメモリ51に出力し、メモリ51を履歴ファイルとして利用して測定値φ1と識別情報φ2を記録する。測定値φ1と識別情報φ2の出力先は、内蔵しているRAMあるいはROMといったメモリ51に限定されず、上述したようにICタグ70に書き込んで記録することができる。外部通信インターフェース48により、無線やLANなどの通信手段を用いてパーソナルコンピュータやインターネット上のサーバに測定値φ1と識別情報φ2を出力して記録することも可能である。
【0028】
測定装置10は、さらに、計時ユニット(RTC)45を備えている。このため、CPU40は計時ユニット45から得られた時刻情報φ3も、測定値φ1と識別情報φ2に関連付けして出力する。時刻情報φ3の代わりにCPU40でカウントしている時間情報を関連付けして記録しても良い。いずれにしても、時刻情報φ3を加えることにより、測定値φ1が得られた時刻が明確になり、流通過程のどの時点でのデータかが明確になる。このため、流通過程の各段階における物品80の温度管理情報が自動的に生成され、記録できる。
【0029】
測定装置10は、CPU40のプログラムが記録されたROM52を備えており、ROM52は測定装置10の識別情報φ9も記録している。この識別情報φ9は、測定装置10を操作しているスタッフ、運転手などを直接又は間接的に識別する情報にすることができる。したがって、上述したように、ICタグ70に流通過程の各段階に関与したスタッフの情報を記録できる。また、測定装置10から出力する情報として、測定値φ1、荷物80の識別情報φ2、時刻情報φ3に測定装置10の識別情報φ9を加えることが可能となり、サーバやパーソナルコンピュータで荷物80の流通経過を管理することが容易になる。
【0030】
本例の温度測定装置10は、USBなどのシリアルインターフェース、LANインターフェース、無線インターフェース、あるいは無線LANインターフェースなどの機能、あるいはそれらの複数の機能を持ったインターフェース外部通信インターフェース48を備えており、CPU40により制御されて出力ユニットとして機能する。したがって、サーバやホストコンピュータ59などの外部の情報処理装置とインターネット等を介して通信して、オンタイムで、例えば記録スイッチ14がワンプッシュされたときに、対象物80から得られた情報を出力したり、測定装置10の記録ユニット51に蓄積された情報を出力することができる。このため、パーソナルコンピュータなどからなる外部の端末59の側で、配送過程に記録し蓄積したデータをダウンロードし、そのデータを基に、温度、品名、測定時刻を含む管理用のデータの一覧表を簡単に作成できる。
【0031】
接触型の温度検出ユニット20と、非接触型のID読み取り装置(無線ユニット)30とを有する本例の温度測定装置10において、ID読み取り装置30の検出範囲を接触型の温度検出ユニット20の接触距離、すなわちロッド12の長さ程度に設定することにより、温度を測定するという1つの行為で、同時に温度測定対象80の識別情報φ2も得ることができる。そして、接触型の温度検出ユニット20の接触距離が、対象物80のサイズと比較したときに無線ユニット30が弁別できるほど十分に小さければ、温度検出ユニット20と一体で移動するように構成することにより、複数の対象物80が積載されているような条件でも、対象物80の温度を測定する操作だけで対象物80の識別情報φ2を他の対象物80の情報とは分離して得ることができる。このため、測定値φ1を取得した対象物80の識別情報φ2と共にワンプッシュで記録することができる。したがって、本発明の温度測定装置10は、流通過程の様々な段階で利用できる。
【0032】
図1(a)に戻って、荷物80の発送元の工場あるいは荷物の集荷場99においては、発送用の荷物80を受け取った作業者91が図1(b)に示すように測定装置10により各荷物80の温度を測定することにより、発送する荷物80を識別情報φ2により確認できる。それと共に、各荷物の温度φ1と荷物80の識別情報φ2を関連付けして記録することにより、各荷物の発送状態を記録できる。
【0033】
また、トラック96により運搬されている途中では、ドライバ91が、トラック96に荷物80を積んだとき、輸送の途中などの、適当なタイミングにおいて、測定装置10を用いて複数の荷物80の温度を測定することにより、各々の荷物80の測定温度φ1と各荷物80の識別情報φ2を時刻情報φ3と共に記録できる。
【0034】
さらに、その荷物80を受け取る配送先(配達先)98においても、荷物80を受け取った作業者(ユーザ)91が図1(b)に示すように測定装置10により各荷物80の温度を測定することにより、識別情報φ2により受領した各荷物を確認および記録しながら、各荷物80の受け取ったときの状態を温度測定値により記録することができる。
【0035】
図4に、本例の温度測定装置10の温度測定の動作をフローチャートで示してある。この測定装置10においては、接触型の温度検出ユニット20により常に温度φ1を測定する処理(ステップ61)と、それに前後してあるいは同時に非接触型の無線ユニット30により識別情報φ2を取得する処理(ステップ62)とが共に行われる。この取得工程(ステップ60)において取得されたデータはLCD13に表示され、表示されたデータが所望のものであれば、ステップ63において記録スイッチ14を押すことでデータが選択される。さらに、ステップ64において、それらのデータφ1およびφ2が関連付され、たとえば、1つのレコードとして出力され、メモリ51に記録される。複数の識別情報φ2が表示されるような状態であれば、測定装置10を動かして1つの識別情報φ2が表示される位置を選択したり、表示された複数の識別情報φ2の中から荷物80のラベルなどを見て適当な識別情報φ2を選択するようにしても良い。
【0036】
以上に説明したように、本例の温度測定装置10は、接触型の温度計で温度を測るだけで識別情報も得られるので、温度測定とは別に、ユーザがバーコードをサーチしたり荷札をチェックして識別情報を書き込んだりする必要がない。したがって、ユーザが簡単に荷物の識別情報と測定値とを関連付けして記録できる。このため、流通過程のどの場面でも、作業者は、温度測定を行うだけで識別情報も得られ、そして、そのときの測定温度と識別情報、さらには、時刻情報を加えて、流通している荷物あるいは商品の状態を管理するデータを作り出すことができる。そのために、荷物に付いているラベルを直接読む必要もなく、その情報を書き込む必要もない。したがって、手間をかけずに、精度の高い情報を取得することができ、品質管理能力を向上でき、客先に対するサービスの向上も図ることができる。
【0037】
なお、本発明に係る温度測定装置は、温度検出ユニットと無線ユニットとが一体で移動できるものであれば良く、メモリやその他の機構も含めて一体である必要はない。しかしながら、それらが一体となって移動可能なポータブルなものであれば、使い勝手が良く、全体を低コストに纏めることができる。
【0038】
また、本発明に係る温度測定装置は、流通過程における物品の温度を測定するだけではなく、温度管理が要求される、あるいは温度管理することが望ましい、全ての用途あるいは過程で利用できる。特に、識別情報を出力する手段として好適なICタグは、近年、小型化および低コスト化されており、様々な場所あるいは製品にも取り付けでき、さらに、使い捨ても可能になっている。したがって、ICタグと組合せることにより本発明に係る温度測定装置を利用できる用途は多種多様である。例えば、食品を調理する場面であれば、冷凍あるいは冷蔵食品の保存状態を監視するために用いられるだけではなく、加熱調理後の食品の温度を測定し、パッケージなどに取り付けられたICタグから得られた識別情報と共に記録しておくことにより、食中毒の発生を未然に防止したり、万一、そのようなトラブルが発生したときの原因究明のために利用することができる。
【0039】
また、上記では、物理量として温度を測定する温度測定装置により本発明を説明しているが、測定する物理量は温度に限定されるものではない。温度の代わりに湿度、PH、特定の成分の濃度を測定する場合にも本発明を適用できる。また、クランプ式の電流計においても、測定対象の機器にICタグが取り付けられていれば、クランプセンサーを測定対象の電線に近接させて電流を測定しながら巡回点検する際に、測定対象の電流と識別情報とを関連付けして取り込むことができる。クランプセンサーはロッドに取り付けても良いし、適当な長さのコードにより検出ユニットと接続されるようにしておいても良い。また、測定対象の相互間の距離が離れている場合は、接触型のセンサーに限らず、本発明を適用できる。例えば、一定の距離で照度を測定する照明器具の点検、災害あるいは火災防止用の報知用センサーの点検においても本発明を適用することができる。
【0040】
以上のように、本発明の温度測定装置は、接触式の温度検出ユニットと、非接触式で識別情報を読み取る無線ユニットとを組合せて一体で移動できるようにしたものであり、接触式の温度検出ユニットは測定対象物に接触させるので対象物と無線ユニットとの距離が限定され、その距離を受信可能な範囲とする無線ユニットにより識別情報を読み取ることにより接触している測定対象物の識別情報であることを自動的に判別できるようにしている。無線により識別情報が得られる範囲が対象物のサイズと比較すると十分に小さければ、識別情報の弁別は容易であり、自動的に識別情報を測定対象のものに限定できる。このため、本発明の測定装置においては、測定値(温度)と、その測定するときに得られた識別情報とを関連づけして出力し記録することにより、作業者はワンプッシュし温度測定をするだけで、測定対象物の情報をその都度入力したり選択する必要もなく、簡単に、さらに確実に商品毎の温度測定の履歴を残すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物との距離が制限される物理的な関係を持った状態で前記測定対象物の物理量を測定する検出ユニットと、
この検出ユニットと一体で移動し、前記検出ユニットの測定距離程度の範囲を、発信源から無線出力された識別情報を受信可能な範囲とする無線ユニットと、
前記検出ユニットの測定値を前記無線ユニットで得られた識別情報と関連付けして出力する出力ユニットとを有する測定装置。
【請求項2】
前記検出ユニットは、感知部を前記測定対象物に接し、その感知部からの信号により前記物理量を測定する、請求項1の測定装置。
【請求項3】
前記検出ユニットは、感知部を前記測定対象物に接触し、その感知部からの信号により温度を測定する温度検出ユニットである、請求項1の測定装置。
【請求項4】
前記検出ユニットは、前記感知部を先端に具備するロッドを備えており、
前記無線ユニットは、前記ロッドの長さ程度の距離を受信可能な範囲として設定可能である、請求項2の測定装置。
【請求項5】
計時ユニットをさらに有し、前記出力ユニットは前記測定値および前記識別情報に測定時刻を関連付けして出力する、請求項1の測定装置。
【請求項6】
前記出力ユニットにより前記測定値および前記識別情報を出力するタイミングを指示する記録スイッチを有する、請求項1の測定装置。
【請求項7】
前記出力ユニットは、無線インターフェースを備えている、請求項1の測定装置。
【請求項8】
測定対象物に接触または近接させるセンサーと、
このセンサーと物理的に繋がり、前記センサーからの信号に基づき前記測定対象物の物理量を測定する検出ユニットと、
前記センサーと前記検出ユニットとの測定距離程度の範囲を、発信源から無線出力された識別情報を受信可能な範囲とする無線ユニットと、
前記検出ユニットの測定値を前記無線ユニットで得られた識別情報と関連付けして出力する出力ユニットとを有する測定装置。
【請求項9】
前記センサーと検出ユニットとの間の距離を維持する手段を備えている、請求項8の測定装置。
【請求項10】
前記センサーを先端に具備するロッドを備えている、請求項8の測定装置。
【請求項11】
測定対象物との距離が制限される物理的な関係を持った状態で前記測定対象物の物理量を測定する検出ユニットにより前記測定対象物の物理量を測定すると共に、前記検出ユニットの測定距離程度の範囲を発信源から無線出力された情報を受信可能な範囲とする無線ユニットにより識別情報を取得する取得工程と、
前記測定値と識別情報とを関連付けして出力する出力工程とを有する記録方法。
【請求項12】
前記取得工程では、前記測定対象物に接して、その温度を測定する、請求項11の記録方法。
【請求項13】
輸送する対象物に、識別情報を有する近接型の無線タグを取り付けて発送する工程と、
請求項3に記載の測定装置により、流通途上の前記対象物の温度を測定して前記識別情報と共に管理する工程とを有する流通方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/015144
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512945(P2005−512945)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011230
【国際出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(594142311)株式会社ティアンドデイ (14)
【Fターム(参考)】