説明

測角器、測角器の製造方法及びX線分析装置

【課題】基本的にはインクリメンタル型エンコーダを基本とする簡単で扱い易い構成を有し、アブソリュート型エンコーダのような複雑で高価な構成を用いることなく回転体の基準となる角度位置を認識できる測角器を提供する。
【解決手段】ウオームホイール22,23の回転角度を測定するための測角器2において、ウオームホイール22,23に設けられた測角用の第1識別用マーク33と、第1識別用マーク33を読取る第1検出部36と、ウオームホイール22,23に設けられた第2識別用マーク34と、第2識別用マーク34を読取る第2検出部37とを有しており、第1識別用マーク33及び第2識別用マーク34はウオームホイール22の表面上に直接に形成されており、第2識別用マーク34はウオームホイール22,23の回転中心線X1を中心とした一部の角度範囲に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角度を測定するための機器である測角器、その測角器の製造方法、及びその測角器を用いたX線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測角器は種々の回転体の回転角度を測定する際に用いられる。例えば、特許文献1は、X線分析装置の構成要素であるゴニオメータを測角器として開示している。このゴニオメータは、X線検出器を支持して回転する回転体としての第1ロータリーシャフトと、X線源を支持して回転する回転体としての第2ロータリーシャフトとの2つの回転体の回転角度を測定するために用いられている。
【0003】
また、特許文献2は、X線分析装置の1つであるX線回折装置の構成要素であるゴニオメータを測角器として開示している。このゴニオメータは、X線回折装置の内部に設けられた複数の回転系のそれぞれの内部に設けられた回転部分の回転角度を測定するために用いられている。このゴニオメータは、特に、アブソリュート型エンコーダを用いて回転角度の測定を行っている。
【0004】
エンコーダとしてインクリメンタル型のエンコーダとアブソリュート型のエンコーダとがあることは、既に知られている。インクリメンタル型のエンコーダは、測角用のスケールマークを備えていて回転体の相対的な角度変位を測定できるエンコーダである。一方、アブソリュート型のエンコーダは、測角用のスケールマークと、特定の角度位置を認識するためのマークとを併せて有していて、特定の角度位置を基準とした絶対的な角度変位を測定できるエンコーダである。
【0005】
また、特許文献3は、測角器としてのエンコーダ、特にアブソリュート型のロータリーエンコーダを開示している。このエンコーダにおいて、回転体は円筒形状に形成されており、その回転体の外周表面上に測角用のスケールマークと、特定の角度位置を認識するためのマークとが複数段にわたって設けられている。
【0006】
さらに、特許文献4は、測角器としてのエンコーダ、特にアブソリュート型のロータリーエンコーダを開示している。このエンコーダは、回転体としてのモータ回転軸の外周表面上にコード化された複数の格子パターンを設け、これらのパターンに対応して生成される電気信号に基づいてモータ回転軸の絶対的な角度変位を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−196586号公報(第3,4頁、図2)
【特許文献2】特開2006−029947号公報(第4,5,6頁、図2)
【特許文献3】特開平8−254439号公報(第3頁、図1)
【特許文献4】特開平2−057913号公報(第5頁、第9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に開示された上記の従来の測角器においては、エンコーダを構成するディスクが測角器の回転部とは別個に製作され、製作されたディスクが測角器の回転部分に外付け又は後付けによって固定されていた。従って、測角器の回転部分とエンコーダのディスクとのそれぞれの回転中心を正確に一致させることが難しかった。そして、このような回転中心のずれに起因して、測角器の回転部分の回転角度に計測誤差が生じるおそれがあった。
【0009】
このような計測誤差を小さくするためには、測角器の回転部とエンコーダディスクとのそれぞれの回転中心を一致させるための調整が必要である。しかしながら、この調整は非常に面倒で長い時間を必要とする。
【0010】
特許文献3及び特許文献4に開示された測角器においては、格子パターンやスケール等といった識別用マークが回転体の表面上に直接に形成されている。従って、回転体の回転中心と識別用マークの回転中心とのずれに起因して計測誤差が生じるという不都合はない。
【0011】
しかしながら、特許文献3及び特許文献4ではアブソリュート型エンコーダを用いており、回転体の絶対的な回転角度を測定するために、回転体の回転軸線の延在方向に沿って多数段の識別用マークを設けなければならず、しかもそれらの多数段の識別用マークに対応した出力信号を処理する処理回路が必要となり、処理回路も含めた測角器全体の構成が複雑であり、高価であるという問題があった。
【0012】
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、基本的にはインクリメンタル型エンコーダを基本とする簡単で扱い易い構成を有し、回転体とスケール部分とが別体である従来の測角器に比べて高精度の測角を実現でき、さらに、アブソリュート型エンコーダのような複雑で高価な構成を用いることなく回転体の角度位置を識別できるような測角器及びX線分析装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、そのような測角器を安定して確実に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る測角器は、回転体の回転角度を測定するための測角器であって、前記回転体に設けられた測角用の第1識別用マークと、前記第1識別用マークを読取る第1検出部と、前記回転体に設けられた第2識別用マークと、前記第2識別用マークを読取る第2検出部とを有しており、前記第1識別用マーク及び前記第2識別用マークは前記回転体の表面上に直接に形成されており、前記第2識別用マークは前記回転体の回転中心線を中心とした一部の角度範囲に設けられていることを特徴とする。
【0015】
上記回転体は回転角度を測定したい任意の部材である。この回転体は任意の形状及び任意の機能を有する部材である。この回転体は、例えば、モータの回転軸そのものであったり、モータの回転軸に位置不動に固定された回転体であったり、分析装置を構成する1つの要素である回転機器の一部分であって当該回転機器の回転中心軸上にある部分であったり、X線分析装置内でX線源を回転可能に支持するアーム部材の回転中心部分であったり、X線分析装置内でX線検出器を回転可能に支持するアーム部材の回転中心部分であったりする。
【0016】
第1識別用マークと第1検出部とのユニット及び第2識別用マークと第2検出部とのユニットは、任意の原理に従って回転角度測定用の信号を生成できるものである。例えば、発光及び受光といった光学的な処理により電気的な信号を生成する装置や、磁気的な処理によって電気的な信号を生成する装置や、その他任意の装置を適用できる。
【0017】
第1識別用マーク及び第2識別用マークが回転体の表面上に直接に形成されているというのは、回転体とは別物の部材、例えばホイール部材に、第1識別用マーク又は第2識別用マークを形成した上でそれらのホイール部材を回転体に連結する、というのではなく、第1識別用マーク及び第2識別用マークを回転体に直接に形成するということである。
【0018】
測角器の一例であるエンコーダとして、インクリメンタル型エンコーダとアブソリュート型エンコーダの2種類があることは既に知られている。インクリメンタル型エンコーダは、ある任意の角度位置からの相対的な角度変位を表す信号を出力するエンコーダである。アブソリュート型エンコーダは、基準角度位置(例えば角度0°位置)に対する絶対的な角度変位を表す信号を出力するエンコーダである。アブソリュート型は絶対的な角度変位を知ることができるが、スケール(目盛り)の構成が複雑であり、高価であり、制御が難しいという問題がある。インクリメンタル型は比較的高精度の測角を行うことが可能であるが、絶対的な角度を知るために付随機器、例えばデータム点センサ等が必要となるという問題がある。
【0019】
本発明の測角器は基本的には第1識別用マークを用いたインクリメンタル型の測角器であって構造が非常に簡単であり、しかも第2識別用マークを用いて回転体の特定角度位置を認識することができるので、簡単な構成でありながら絶対的な角度変位を示すこともできる。
【0020】
第2識別用マークが回転体の回転中心軸を中心とした一部の角度範囲に設けられるというのは、360°の全周にわたって設けられるのではなく、360°の一部の角度範囲に設けられるということである。一部の角度範囲は、1つの角度範囲であっても良いし、2つ以上の互いに分離した角度範囲であっても良い。
【0021】
本発明に係る測角器において、前記第2識別用マークは、前記回転体の回転中心線を中心とした1つの角度範囲内に設けることができる。この構成によれば、第2識別用マークを設けた角度範囲と該マークが設けられていない角度範囲とで回転体の角度位置を絶対的に判別できる。しかも、マークのパターン(すなわち、模様、形状等)が非常に簡単で、形成し易い。
【0022】
本発明に係る測角器において、前記第2識別用マークは、前記回転体の回転中心線を中心とした複数の互いに分離した角度範囲のそれぞれに設けることができる。この場合、各第2識別用マークは検出部によって互いに識別可能なマークであることが望ましい。この構成により、複数の互いに分離した角度範囲を検出部によって正確に認識することができる。
【0023】
本発明に係る測角器において、前記第2識別用マークは、互いに間隔をあけて形成された複数の線状マークとすることができる。線状マークは非常に簡単なマークであるので、第2識別用マークを容易に且つ正確に形成することができる。
【0024】
本発明に係る測角器においては、第1検出部の出力に基づいて第1信号を生成し、さらに第2検出部の出力に基づいて第2信号を生成する信号生成手段を設けることができる。そして、本発明に係る測角器において第2識別用マークが複数の互いに分離した角度範囲に設けられる場合には、上記信号生成手段は、異なった角度範囲のそれぞれに対応する第2信号として互いに識別可能な信号を生成することが望ましい。例えば、周期やパルス幅が異なる複数の信号を生成することができる。こうすれば、第2検出部が回転体の円周方向内のどの部分を検出しているかを正確に判定できる。
【0025】
本発明に係る測角器において、前記第2識別用マークは、回転体の基準角度位置に対応した基準点マークを含んでいることが望ましい。基準角度位置は、例えば、角度0°の位置であったり、回転体を用いた装置に関して基準となる角度位置であったりする。例えば、X線分析装置の1つであるX線回折装置においては、試料に入射するX線の中心線に対するX線検出器のX線取込み角度を2θ角度と言い、この2θ角度のデータム位置が基準角度位置となることがある。通常、2θ角度のデータム位置は2θ=10°である。上記の基準点マークを2θ=10°の角度位置に対応して回転体上に設けておけば、データム位置や、データム位置に対する任意の角度位置を容易に認識できる。
【0026】
本発明に係る測角器は、前記角度範囲内に設けられた第2識別用マークを用いて回転体の角度位置を判別する角度判別手段をさらに有することができる。この角度判別手段は、第2識別用マークが存在する範囲と第2識別用マークが存在しない範囲との違いに基づいて回転体の角度位置を判別することができる。この構成により、第2識別用マーク、第2検出器、及び角度判別手段のそれぞれの構成を簡単に形成した上で、第2検出部が回転体のどの角度位置を検出しているかを正確に判定できる。
【0027】
本発明に係る測角器において、前記角度判別手段は、前記第2検出部が前記第2識別用マークが存在する範囲を検出しているか、又は前記第2識別用マークが存在しない範囲を検出しているかと、前記回転体の回転方向が正転方向であるか、又は逆転方向であるかと、前記第2検出部が前記基準点マークを検出したこと、とに基づいて前記回転体の基準角度位置を判定することができる。この構成によれば、測角器の動作の開始時に回転体の回転角度位置がどこにあるかが不明である場合に、その回転体の基準角度位置、例えば、回転体の角度0°位置や、X線回折装置における回折角2θ=10°の基準角度位置を迅速且つ正確に求めることができる。
【0028】
本発明に係る測角器において、第1識別用マークと第2識別用マークとは、例えば図6(a)、図11(a)、図11(b)、図12(a)に示すように、回転体の回転中心線に沿って互いに異なった位置に互いに平行に設けることができる。他方、第1識別用マークと第2識別用マークとは、例えば図6(a)、図11(a)、図11(b)に示すように、それらの先端同士が互いに接触又は近接して、それらのマークの全体が互いに隣接するように設けられることができる。
【0029】
さらには、第1識別用マークと第2識別用マークとは、例えば図12(a)に示すように、前記回転体の回転中心線に沿ったそれらの一部分同士が互いに重なり合うように設けることができる。又は、例えば図12(b)に示すように、それらのマークのいずれか一方の全部が他方のマークに重なり合うように設けることができる。第1識別用マークと第2識別用マークのいずれか一方の全部が他のマークに重なり合うというのは、両マークが1つのマーク列に含まれるということであるので、この場合には、第1識別用マークと第2識別用マークとを識別するための方策を施しておく必要がある。
【0030】
本発明に係る測角器においては、回転体の外周面を円筒状に形成し、第1識別用マークを外周面の全域である角度360°の範囲にわたって形成し、第2識別用マークを外周面の一部の角度領域内に形成することができる。この構成により、第1識別用マーク及び第2識別用マークの回転体への形成が簡単になり、第1検出部及び第2検出部を用いたそれらのマークの読取りが正確になる。
【0031】
本発明に係る測角器において、回転体の回転可能範囲は360°よりも小さい角度範囲に限定されることがある。この場合には、第2識別用マークは、回転体の回転可能範囲の許容限界角度位置に対応した限界点マークを含むことが望ましい。こうすれば、第2識別用マーク及び第2検出器を用いた制御によって回転体の回転範囲を正確に規制できる。
例えば、X線分析装置の1つであるX線回折装置ではX線源及びX線検出器等といった回転機器が大きくて重く、それらの機器に付随して電力線、制御線等が接続されるので、それらの回転機器の可動範囲が所定の角度範囲に規制されることがある。本発明に係る測角器によれば、それらの回転機器の可動範囲を第2識別用マークによって正確且つ簡単に規定できる。
【0032】
次に、本発明に係る測角器の製造方法は、(A)回転体の回転角度を測定するための測角器の製造方法において、(B)角度設定機構によって所定回転速度で回転させられる回転台上に前記回転体を置き、(C)前記回転台によって前記回転体を回転させて前記回転体の異なる面をマーク形成手段によるマーク形成位置に持ち運び、当該回転体の表面に測角用の第1識別用マークを前記マーク形成手段によって形成し、さらに、前記回転体の回転中心線を中心とした一部の角度範囲に前記マーク形成手段によって第2識別用マークを形成し、(D)前記第1識別用マークを読取る第1検出部と前記第2識別用マークを読取る第2検出部とを前記測角器内の所定位置に配設し、(E)前記角度設定機構は、前記回転台を支持した回転軸と、該回転軸の回転角度を検出する角度検出器とを有しており、(F)該角度検出器は、前記回転軸と一体に回転する目盛り盤と、該目盛り盤の目盛りを読取る複数の読取りヘッドとを有し、これらの読取りヘッドの計測差に基づいて前記回転軸の回転角度を校正、いわゆる自己校正することを特徴とする。
【0033】
本発明に係る測角器の製造方法によれば、本発明に係る測角器を安定して製造することができる。なお、自己校正とは、角度検出器に付設された機器要素によって校正が行われるのではなく、角度検出器の内部に設けられた機器要素によって角度検出器自らが校正を行うことである。
【0034】
上記の角度検出器は、例えば、特許第3826207号公報に開示された角度検出器であり、角度原器を実現できる程度に高精度な角度検出器である。この角度検出器を用いて測角器の回転体に第1識別用マーク及び第2識別用マークを形成すれば、それらのマークを極めて高精度に形成できる。また、上記の角度検出器は、特許第3826207号公報に開示された角度検出器を改変した自己校正可能な角度検出器であっても良い。
【0035】
本発明に係る測角器の製造方法において、前記マーク形成手段はレーザ加工によって前記第1識別用マーク及び第2識別用マークを形成することが望ましい。レーザ加工は、マークと未処理部分との間で光反射率に差を持たせることを簡単に実現できる。レーザ加工を用いた本発明の測角器の製造方法により、第1識別用マーク及び第2識別用マークを少ない工数で正確に形成できる。
【0036】
次に、本発明に係るX線分析装置は、(A)X線源から出て試料へ入射するX線の入射角θs 及び前記試料から出たX線を検出するX線検出器の前記試料に対するX線取込み角θd を変化させながら分析用のデータを採取するX線分析装置において、(B)前記X線検出器を支持した検出器支持体が固定された回転体と、(C)該回転体の回転角度を測定するための測角器とを有しており、(D)該測角器は、(a)前記回転体に設けられた測角用の第1識別用マークと、(b)前記第1識別用マークを読取る第1検出部と、(c)前記回転体に設けられた第2識別用マークと、(d)前記第2識別用マークを読取る第2検出部とを有しており、(e)前記第1識別用マーク及び前記第2識別用マークは前記回転体の表面上に直接に形成されており、(f)前記第2識別用マークは前記回転体の回転中心線を中心とした一部の角度範囲に設けられていることを特徴とする。
【0037】
本発明に係るX線分析装置は、前記検出器支持体が固定されたウオームホイールと、該ウオームホイールに噛み合うウオームと、該ウオームを回転駆動する駆動源とをさらに有することができる。この場合、前記回転体は前記ウオームホイールと一体である円筒形状のボス部、すなわち中心部分となる。
【0038】
本発明に係るX線分析装置は、前記角度範囲内に設けられた前記第2識別用マークを用いて前記回転体の角度位置を判別する角度判別手段をさらに有し、該角度判別手段は、前記第2識別用マークが存在する範囲と前記第2識別用マークが存在しない範囲との違いに基づいて前記回転体の角度位置を判別し、前記第2識別用マークは、前記回転体の基準角度位置に対応した基準点マークを含んでおり、前記角度判別手段は、前記第2検出部が、前記第2識別用マークが存在する範囲を検出しているか、又は前記第2識別用マークが存在しない範囲を検出しているかと、前記回転体の回転方向が正転方向であるか、又は逆転方向であるかと、前記第2検出部が前記基準点マークを検出したこと、とに基づいて前記回転体の基準角度位置を判定することを特徴とする。
この構成によれば、測角器の動作の開始時に回転体がどの回転角度位置にあるかが不明である場合に、その回転体の基準角度位置、例えば、X線回折装置における回折角2θ=10°の基準角度位置を迅速且つ正確に求めることができる。
【発明の効果】
【0039】
(1)測角器及びX線分析装置
本発明に係る測角器又はX線分析装置によれば、第1識別用マーク及び第2識別用マークが回転体とは別体の部材上に形成された後にその部材が回転体に後付けされるのではなく、回転体の表面上にそれらのマークが直接に形成されるので、回転体とスケール部分とが別体である従来の測角器に比べて、回転体とマークとの間に回転ズレが無く、その結果、回転体の回転角度を非常に高精度に測角できる。
【0040】
また、本発明に係る測角器又はX線分析装置は、第2識別用マークを回転体の表面上の一部の角度範囲に設けたので、第2検出部が検出している部分の回転体の角度位置を、第2識別用マークが存在する範囲とそれが存在しない範囲とを利用して容易に判別できる。
【0041】
また、本発明に係る測角器又はX線分析装置は、アブソリュート型エンコーダのような複雑で高価な構成を用いること無く、基本的には1つの識別用マークによって構成されるインクリメンタル型エンコーダを基本とした簡単で扱い易い構成を有しているにもかかわらず、インクリメンタル型エンコーダでは無理であった、回転体の角度位置の判別を正確に行えるようになった。
【0042】
さらに、本発明に係る測角器又はX線分析装置は、回転体の基準角度位置や回転限界位置を第2識別用マークを用いて判別でき、リミットスイッチ等といった余分な機器要素を必要としないので、簡単な構造で小型に作製することができる。
【0043】
(2)測角器の製造方法
本発明に係る測角器の製造方法によれば、回転体に第1識別用マーク及び第2識別用マークを形成する際の回転体のための角度検出器として、「回転軸と一体に回転する目盛り盤と、該目盛り盤の目盛りを読取る複数の読取りヘッドとを有し、これらの読取りヘッドの計測差に基づいて前記回転軸の回転角度を自己校正する」という構成の角度検出器を用いたので、すなわち、角度原器として使用可能な高精度の角度検出器を用いたので、本発明に係る測角器の第1識別用マーク及び第2識別用マークを所望の通りのパターンに正確に形成できる。こうして、本発明に係る測角器の製造方法によれば、上記の本発明に係る測角器を安定して正確に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るX線分析装置用測角器を用いたX線分析装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明に係るX線分析装置用測角器の斜視図である。
【図3】図1及び図2のA−A線に従った平面断面図である。
【図4】図3の主要部材であるウオームホイールを示す図である。
【図5】ウオームホイールの回転を制御するための制御系を示す図である。
【図6】ウオームホイールに形成されたエンコーダ用のマークの一例を示す図である。
【図7】マークを形成するためのマーク形成装置の一例を示す正面図である。
【図8】X線分析装置の一例であるX線回折装置によって行われた測定の結果であるX線回折図形の一例を示す図である。
【図9】マーク形成装置で用いる角度検出器の一例を示す斜視図である。
【図10】マーク形成装置で用いる角度検出器の他の例を示す斜視図である。
【図11】ウオームホイールに形成されたエンコーダ用のマークの他の例を示す図である。
【図12】ウオームホイールに形成されたエンコーダ用のマークのさらに他の例を示す図である。
【図13】異なった数種類のエンコーダ用のマークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(測角器及びX線分析装置の第1の実施形態)
以下、本発明に係る測角器及びX線分析装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0046】
図1は、本発明に係る測角器を用いた本発明に係るX線分析装置の一実施形態であるX線回折装置を示している。図1は正面図であり、左右方向及び前後方向が水平方向であり、上下方向が鉛直方向である。ここに示すX線回折装置1は、測角器であるゴニオメータ2を有しており、このゴニオメータ2は、X線源支持体としてのX線源アーム3と、検出器支持体としての検出器アーム4と、試料支持体としての試料ホルダ6とを有している。
【0047】
ゴニオメータ2はその中心部において試料ホルダ6を着脱可能に支持している。試料ホルダ6の適所には凹部が形成されており、その凹部の中に試料、例えば粉末試料7が詰め込まれている。X線源アーム3は試料ホルダ6から左方向へ延びており、検出器アーム4は試料ホルダ6から右方向へ延びている。
【0048】
ゴニオメータ2によって支持された試料ホルダ6内の試料7の表面上を通るように軸線X1が規定されている。この軸線X1は、図1の水平方向、すなわち図1の紙面を貫通する方向へ延びている。X線源アーム3及び検出器アーム4は、それぞれ、軸線X1を中心として独自に回転可能である。X線源アーム3の回転軸線X1と検出器アーム4の回転軸線X1とは、できる限り一致するように設定されている。
【0049】
X線源アーム3上には、X線発生装置8及び発散スリット9がX線光学的に位置調整された状態で位置移動しないように固定されている。場合によっては、その他の光学要素、例えばX線を平行化するソーラスリットや、種々の波長のX線を含むX線から特性X線を取り出すモノクロメータ等をX線源アーム上に設けることもできる。
【0050】
X線発生装置8の内部は真空である。X線発生装置8の内部には、通電によって熱電子を発生するフィラメント12と、それに対向して配置されたターゲット13とが設けられている。ターゲット13の外周面上であって熱電子が衝突する領域がX線焦点であり、このX線焦点がX線源14となっている。ターゲット13は、例えば回転ターゲットである。
【0051】
ターゲット13の表面は、例えばCu(銅)によって形成されており、このターゲット13から特性線であるCuKα線を含んだX線が放射される。X線源14から出たX線はターゲット面に対して所定角度、例えば約6°の取り出し角度をもって取り出される。発散スリット9は、X線源14で発生したX線が試料Sに入射するようにそのX線の発散を規制する。
【0052】
検出器アーム4上には、散乱スリット16、受光スリット17及びX線検出器18がX線光学的に位置調整された状態で位置移動しないように固定して設けられている。散乱スリット16は、試料以外のところで空気散乱等によって発生した散乱X線がX線検出器18に入るのを防止する。受光スリット17は試料Sで回折したX線が集中する点に設けられ、集中したX線以外のX線がX線検出器18に入るのを防止する。X線検出器18は、例えば0次元X線検出器によって構成されている。
【0053】
0次元X線検出器は、所定の領域で受け取ったX線を受光位置を判別することなく1つの束のX線として検出する検出器であり、例えばPC(Proportional Counter:プロポーショナルカウンタ)、SC(Scintillation Counter:シンチレーションカウンタ)等を用いて構成される。PCは、X線によるガスのイオン化作用に基づいてX線の量を電気信号に変換するカウンタである。SCは、X線を受けて発光する物質(シンチレータ)の発光作用に基づいてX線の量を電気信号に変換するカウンタである。
【0054】
X線検出器18は受光したX線の量に対応して信号を出力し、その出力信号に基づいて強度検出回路15がX線強度を演算する。強度検出回路15は外観上、X線検出器18の内部に組み込まれることがある。
【0055】
なお、X線検出器としては、X線を線状領域で検出する1次元X線検出器、例えばPSPC(Position Sensitive Proportional Counter)や、X線を面状領域で検出する2次元X線検出器、例えば面状X線蛍光体を用いたX線検出器を用いることもできる。
【0056】
図2はゴニオメータ2の斜視図を示している。図3は図2及び図1のA−A線に従った平面断面図を示している。図2に示すように、ゴニオメータ2は、金属製のケース21と、ケース21の中に設けられた回転体としてのX線源側ウオームホイール22と、ケース21の中に設けられた回転体としての検出器側ウオームホイール23とを有する。これらのウオームホイール22,23は、軸受によってケース21に、それぞれ独自に回転可能に、しかし軸方向移動をしないように、支持されている。
【0057】
ケース21の下部には、向かって左側にX線源側モータ24が設けられ、向かって右側に検出器側モータ25が設けられている。X線源側モータ24及び検出器側モータ25は、いずれも、回転速度の制御が可能なモータであるサーボモータによって形成されている。X線源側モータ24の出力軸にはウオームギヤ27が連結されている。また、検出器側モータ25の出力軸にはウオームギヤ28が連結されている。図3に示すように、ウオームギヤ27はX線源側ウオームホイール22のギヤ部に噛み合っている。また、ウオームギヤ28は検出器側ウオームホイール23のギヤ部に噛み合っている。
【0058】
X線源側ウオームホイール22のギヤ部は、円筒形状である回転胴29の外周面の一部にネジ切り加工によって形成されている。また、検出器側ウオームホイール23のギヤ部は、円筒形状である回転胴30の外周面の一部にネジ切り加工によって形成されている。X線源側ウオームホイール22のギヤ部の外径と検出器側ウオームホイール23のギヤ部の外径はほぼ同一であるが、検出器側ウオームホイール23の回転胴30の前方部分の外径はX線源側ウオームホイール22の回転胴29の内径よりも小さくなっており、検出器側ウオームホイール23の回転胴30はX線源側ウオームホイール22の回転胴29の内部を貫通している。
【0059】
検出器側ウオームホイール23の内部は円柱状の空間となっており、その空間内に軸部材32が貫通状態で設けられており、その軸部材32の先端に試料ホルダ6が着脱可能に取り付けられている。また、検出器側ウオームホイール23の回転胴30の前端に検出器アーム4が取り付けられ、X線源側ウオームホイール22の回転胴29の前端にX線源アーム3が取り付けられている。試料ホルダ6に詰め込まれた試料7の表面を通ることになる軸線X1がX線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23のための共通の回転軸線であり、従って、軸線X1がX線源アーム3及び検出器アーム4のための共通の回転中心軸線である。
【0060】
X線源側モータ24が作動してウオームギヤ27が回転すると、X線源側ウオームホイール22及びそれに支持されたX線源アーム3が軸線X1を中心として回転する。X線源アーム3が回転すると、図1において、X線源14から出て試料7へ入射するX線の入射角θs が変化する。本明細書では、X線源アーム3やX線源14の試料軸線X1を中心とした回転、すなわち入射X線角度θs を変化させるための回転、を「θ回転」と呼ぶことがある。
【0061】
図3において、検出器側モータ25が作動してウオームギヤ28が回転すると、検出器側ウオームホイール23及びそれに支持された検出器側アーム4が軸線X1を中心として回転する。検出器側アーム4が回転すると、図1において、X線検出器18が試料7を見込む角度(すなわち、試料7から出た回折線を取り込む角度)θd が変化する。本明細書では、X線入射角度θs と回折線取込み角度θd との和(θs+θd)、すなわち試料7へ入射するX線の中心線(すなわち、ダイレクトビーム)に対するX線検出器18による回折線の取込み角度を「2θ」と呼ぶことがある。また、回折線取込み角度2θを変化させるための検出器アーム4の回転、を「2θ回転」と呼ぶことがある。
【0062】
X線検出器18によるX線取込み角2θは、試料7に入射する入射X線の中心線の延長線と、X線検出器18から試料7への見込み線とが成す角度である。X線回折測定が行われる間、X線入射角θs は図1の正時計方向へ所定の角速度で連続的又は間欠的に大きくなるように制御される。そして、X線検出器18による回折線取込み角度θd は図1の反時計方向(すなわち、X線源14のθ回転と反対の方向)へθ回転と同じ角速度で連続的又は間欠的に大きくなるように制御される。
【0063】
通常、θs とθd は同じ角速度で回転させるので、前述したようにX線源アーム3やX線源14の試料軸線X1を中心とした回転、すなわち入射X線角度θs を変化させるための回転角を「θ回転角」と呼んでいるが、θs とθd が同じ角速度回転でない場合は、θs とθd の加算値の半角、すなわち(θs+θd)/2を「θ回転角」と呼ぶこともある。
【0064】
以上の角度制御により、試料7に対するX線入射角θs が変化する間に、試料7から回折角2θで回折線が発生したときに、回折線取込み角2θに在るX線検出器18によってその回折線が検出される。
【0065】
なお、試料7へのX線入射角θs を変化させるにあたっては、X線源14と試料7とが相対的に回転すれば良いのであり、従って、X線源14を試料7に対してθ回転させることに代えて、X線源14を固定配置した上で、試料7を試料軸線X1を中心として図1の反時計方向へθ回転させる構成を採用することもできる。この場合には、検出器アーム4の2θ回転は、検出器アーム4を試料7のθ回転の2倍の角速度で、試料7のθ回転と同じ方向へ回転させることによって達成される。
【0066】
本実施形態のX線光学系は集中法光学系であり、X線入射角θs 及び回折線取込み角θd が変化する際、X線源14及び受光スリット17は、試料軸線X1を中心とするゴニオメータ円Cg上に在る。また、X線源14、試料7、及び受光スリット17の3点は、X線入射角θs 及び回折線取込み角θd が変化する際、集中円Cf上に在る。X線入射角θs 及び回折線取込み角θd が変化する際、ゴニオメータ円Cgは常に直径一定の円であり、集中円Cfは角θs 及び角θd の変化に伴って直径が変化する円である。
【0067】
図3のX線源側ウオームホイール22は、図4に示すように、回転胴29の先端にエンコーダ用リング26を焼き嵌めすることによって形成されている。この焼き嵌めは次のようにして行われる。すなわち、鋳鉄等から成る段付きで円筒状の基材の外側に、基材の外形より小さい内径を持つエンコーダ用リング26を、例えば100℃以上に加熱した状態で嵌め込む。このとき、エンコーダ用リング26は熱膨張しているので、基材に接触することなく容易に嵌め込まれる。その後、エンコーダ用リング26は、室温まで冷却されて基材の外周面に機械的に強固に接合し、ずれることが無くなる。
【0068】
X線源側ウオームホイール22の基材部分の材質は、例えばデンスバー(すなわち鋳鉄)であり、エンコーダ用リング26の材質は、例えば、ステンレススチール、銅、真鍮、砲金又はその表面にメッキ等による金属又は黒色の皮膜を形成したものである。エンコーダ用リング26の外周面の中心軸線X0とX線源側ウオームホイール22の中心軸線X2とは正確に一致している。なお、図3において、検出器側ウオームホイール23もエンコーダ用リング26を用いて同様に形成されている。
【0069】
X線源側ウオームホイール22のエンコーダ用リング26はケース21の前方(図3の左方)へ出ている。また、検出器側ウオームホイール23のエンコーダ用リング26はケース21の後方(図3の右方)へ出ている。そして、これらのエンコーダ用リング26の外周表面のそれぞれに、第1識別用マークとしての線状マークである複数のスケール用線分マーク33と、第2識別用マークとしての線状マークである複数のインデックス用線分マーク34とが設けられている。これらのマーク33,34は後述するレーザ加工により、エンコーダ用リング26の表面に直接、すなわち回転胴29,30の表面に直接、すなわち回転体としてのウオームホイール22,23の表面に直接、形成されている。
【0070】
従来のゴニオメータにおいては、エンコーダ用の複数のマークを刻んだホイールをX線源側ウオームホイール22や検出器側ウオームホイール23に外付け又は後付けしていた。この場合には、エンコーダ用ホイールとウオームホイール22,23との間の偏心誤差を無くすために長時間をかけて、例えば1時間以上をかけて調整作業をしなければならなかった。これに対し、本実施形態では、ウオームホイール22,23の一部分であるエンコーダ用リング26に直接、マーク33,34が形成されているので、しかも、後述のように高精度角度設定機構によってそれらのマーク33,34が形成されるので、マーク33,34とウオームホイール22,23との間の誤差を無視できる。











【0071】
本実施形態における精度を実測した例を、表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
このときの装置条件は次の表2の通りである。
【0074】
【表2】

【0075】
なお、マーク33,34とそれらの周辺の未処理部分(すなわち、ウオームホイール22,23の回転胴29,30の部分)とに関しては、エンコード用の光に関する反射率に差があることが望ましい。具体的には、レーザ加工によって形成されたマーク33,34とそれらの下地部分との間で反射率に差が生じるようなレーザ加工方法が採用されることが望ましい。また、明部(すなわち、未処理部分)は表面平坦性があることが望ましい。
【0076】
なお、本実施形態では、回転胴29,30とエンコーダ用リング26とを別々に作製した後にそれらを焼き嵌めした上でエンコーダ用リング26の表面にマーク33,34を形成する構成としたが、これに代えて、回転胴29,30の全体を1つの材料によって単一部材として形成し、その単一部材の先端部にマーク33,34を形成するようにしても良い。
【0077】
スケール用マーク33は、図2及び図5に示すように、所定の狭い間隔で設けられており、インデックス用マーク34はスケール用マーク33よりも広い間隔で設けられている。なお、図2においては検出器側ウオームホイール23に属するスケール用マーク33は示されていない。また、図5では、便宜のため、X線源側ウオームホイール22に属する構成と検出器側ウオームホイール23に属する構成とを1つの図によってまとめて表現している。
【0078】
図6(a)はスケール用マーク33及びインデックス用マーク34を平面的に展開した状態を示している。スケール用マーク33は、X線源側ウオームホイール22の回転胴29及び検出器側ウオームホイール23の回転胴30のそれぞれの全周に(すなわち、360°の角度範囲にわたって)設けられている。一方、インデックス用マーク34は図示のように、360°のうちの一部の角度範囲だけに設けられている。
【0079】
インデックス用マーク34のうちの一方の端にある1つのマーク34aは基準角度位置、すなわち基準点又はデータム点、を示すマークである。本明細書では、360°の角度範囲のうちインデックス用マーク34が設けられている領域をデータム点に対する−(マイナス)領域といい、インデックス用マーク34が設けられていない領域をデータム点に対する+(プラス)領域ということにする。
【0080】
図3において、スケール用マーク33に対向する位置に第1検出部36が設けられている。また、インデックス用マーク34に対向する位置に第2検出部37が設けられている。これらの検出部36,37は位置移動しないように固定されている。例えば、ケース21に固定されている。スケール用マーク33と第1検出部36とは1つのエンコーダを構成し、インデックス用マーク34と第2検出部37とは他の1つのエンコーダを構成している。第1検出部36と第2検出部37とは互いに別々に設けても良いし、1つのユニットを構成するように1つのケーシング内に一体に設けられていても良い。
【0081】
一般に、エンコーダには透過型と反射型とがある。透過型エンコーダは、被検体に取付けられた光透過性のスケール用マークを挟んで発光器と受光器とを設け、発光器から出た光をスケール用マークを通して受光器で受光し、そして、スケール用マークの移動に従って受光器から信号を出力する。また、反射型エンコーダは、被検体に取付けられた光反射性のスケール用マークに対向させて発光器と受光器とを設け、発光器から出た光をスケール用マークで反射させて受光器で受光し、そして、スケール用マークの移動に従って受光器から信号を出力する。
【0082】
透過型の場合も反射型の場合も、受光器から出力される信号に基づいて、被検体の回転角度、回転速度等を求めることができる。発光器は、例えばLED(Light Emitting Diode)を用いて構成される。受光器は、例えばPD(Photo-diode)を用いて構成される。
【0083】
本実施形態では反射型のエンコーダを用いるものとし、そのため、第1検出部36及び第2検出部37のそれぞれの内部に発光器及び受光器が設けられる。発光器の前に第1格子を設け、スケール用マークを第2格子として用い、受光器の前に第3格子を設け、第1格子を通してスケールマークに光を照射して反射させ、反射光を第3格子を通して受光器によって受光してその受光器から信号を出力する。この実施形態に代えて、第1格子を除外した2格子型のエンコーダを採用することも可能である。また、本実施形態に代えて透過型のエンコーダを採用することも可能である。
【0084】
スケール用マーク33はX線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23の回転角度及び回転速度を検知するためのマーク、すなわち測角用のマークである。一方、インデックス用マーク34は、ウオームホイール22,23がどの角度位置にあるか、例えば、データム点にあるかどうか、データム点のプラス側にあるのか、データム点のマイナス側にあるのか、等を検知するためのマークである。
【0085】
図1において、強度検出回路15の出力信号は制御装置40に伝送される。制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を含むコンピュータによって構成されている。制御装置40の入出力部には、キーボード、マウス等といった入力装置41や、出力装置である次の各要素、すなわちプリンタ42、ディスプレイ43、及びモータコントローラ44が接続されている。
【0086】
制御装置40のメモリ内には、X線回折測定を実現するためのプログラムソフトが記憶されている。このプログラムソフトの中には、図5のスケール用エンコーダ(マーク33,検出部36)及びインデックス用エンコーダ(マーク34,検出部37)を用いて、X線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23の回転角度を求めるためのプログラムソフトが含まれている。
【0087】
図2に示すX線源側モータ24及び検出器側モータ25は、図5においてモータコントローラ44からの指令に従って作動する。モータコントローラ44は、制御装置40からの指令に従って各モータ24,25の動作を制御する。具体的には、モータコントローラ44は、モータ24,25の始動、停止、回転速度等を制御する。モータ24,25が作動してそれらの出力軸が回転すると、それらの出力軸に固定されたX線源側ウオームギヤ27及び検出器側ウオームギヤ28が回転し、さらに、それらに噛み合っているX線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23が回転する。
【0088】
X線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23が回転すると、それぞれのスケール用マーク33に対向した第1検出部36の出力端子にマーク33のピッチに対応した信号が出力される。また、それぞれのインデックス用マーク34に対向した第2検出部37の出力端子にマーク34の有無に対応した信号が出力される。
【0089】
第1検出部36の出力及び第2検出部37の出力は、信号生成手段としての信号処理部46へ伝送される。信号処理部46は各検出部の出力を増幅し、さらに必要に応じて逓倍して、必要な大きさの信号を形成する。信号処理部46は、第1検出部36の出力信号に基づいて第1信号S1を出力し、第2検出部37の出力信号に基づいて第2信号S2を出力する。第1信号S1及び第2信号S2は制御装置40によって識別可能な信号である。
【0090】
第1信号S1及び第2信号S2はモータコントローラ44へ伝送される。モータコントローラ44は、X線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23が所定の回転速度で回転するように、信号S1,S2に基づいてモータ24,25の出力回転を制御する。さらに制御装置40は、インデックス用マーク34に属する第2検出部37の出力に基づいて、ウオームホイール22,23がどの回転角度位置にあるかを検出する。
【0091】
一般に、モータの駆動制御方法として、オープンループ制御、セミクローズド制御、及びフルクローズド制御が知られている。オープンループ制御は、制御対象を駆動する動力源としてパルスモータ、すなわちステッピングモータを用い、このモータに入力する信号を調整することによりモータの出力軸の回転を制御し、もって制御対象の動きを制御する方法である。
【0092】
セミクローズド制御は、制御対象を駆動する動力源として回転速度を制御可能なモータ、例えばサーボモータを用い、モータの出力軸にエンコーダを取付け、このエンコーダの出力信号を制御装置へフィードバックしてモータの出力軸の回転を制御し、もって制御対象の動きを制御する方法である。
【0093】
フルクローズド制御は、制御対象を駆動する動力源として回転速度を制御可能なモータ、例えばサーボモータを用い、制御対象の変位をエンコーダ等によって検知し、その検知結果を制御装置へフィードバックしてモータの出力軸の回転を制御し、もって制御対象の動きを制御する方法である。
【0094】
本実施形態では、図1のX線源アーム3及び検出器アーム4が制御対象であり、これらは図3に示すように、それぞれ、X線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23に固定されている。そして、エンコーダを構成するスケール用マーク33及びインデックス用マーク34は、それぞれ、X線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23の回転胴29,30(特に、エンコーダ用リング26)に形成されている。従って、本実施形態では、制御方法としてフルクローズド制御が採用されている。このフルクローズド制御の採用により、高精度の角度検知及び角度制御が行われるようになっている。
【0095】
本実施形態では、回転胴29,30の直径が約160.43mmであり、従って円周長さは約504.0mmである。スケール用マーク33に関しては、ピッチは20.00μmであり、360°の本数は25200.0本であり、外周面における1°の距離は1.4000mmであり、1°当りの刻み数は70本である。このマーク33を第1検出部36で読取って電気信号に変換する。さらに、1000倍に分割(すなわち1000逓倍)すると、1万分の1度あたり7パルスの信号を出力できる。そして、この信号がフルクローズド制御に供される。
【0096】
直径及びピッチは任意の値を選ぶことができるが、実際のゴニオメータの形状に適用するのに適当な直径及び汎用的に使われているピッチ(例えば20μm又は80μm)を用い、さらに1000逓倍をした後のパルス数が整数になるように選定することが望ましい。
【0097】
次に、図6(a)のインデックス用マーク34は、スケール用マーク33よりも広い幅に形成されている。例えば、幅が約60μmであり、長さが約2mmである。そして、−(マイナス)領域、例えばデータム点から−180°の領域に、0.5°間隔で繰り返してマーク34が形成されている。なお、マーク34は+(プラス)領域、例えばデータム点から+180°の領域に設けられていても良い。
【0098】
装置の電源を切った後に再び電源を投入した場合や、メモリ内の角度情報をリセットした場合には、その時点におけるX線源側ウオームホイール22や検出器側ウオームホイール23の絶対的な角度が不明となる。この場合に絶対的な角度値を知りたいときには、まず、回転胴29,30を+(プラス)方向へ0.5°回転させる。図6(b)に示すように回転の始点が−(マイナス)領域内にあった場合、インデックス用マーク34のいずれかが検知される。このとき、基準点マーク34aを検出した位置で、制御装置40のメモリ上にある角度情報をデータム点(例えば、2θ=10°)にリセットする。
【0099】
引き続き0.5°ずつ+(プラス)方向に回転を続け、インデックス用マーク34が検知されなくなった時点で回転を停止する。このときのメモリ上の角度情報は、最後に検知したインデックス用マーク34(すなわち最も端にあるマーク34a)の位置を保存しており、この位置がデータム点になる。
【0100】
他方、回転開始時の始点が図6(c)に示すように+(プラス)領域にあった場合には、最初に+(プラス)方向に0.5°回転させても、インデックス用マーク34は検知されない。このときには、回転方向を−(マイナス)方向に変えて再び角度0.5°ずつ回転を継続させる。そして、インデックス用マーク34(具体的には端のマーク34a)が検知された時点で回転を停止する。このようにインデックス用マーク34が検知された位置がデータム点である。このデータム点の所で、制御装置40のメモリ上にある角度情報をデータム点(例えば、2θ=10°)にリセットする。
【0101】
インデックス用マーク34を読取るための第2検出部37の構造によっては、+側に回転した場合と−側に回転した場合とで、読取位置が微小量、異なる場合がある。このような誤差を防ぐため、回転胴を−(マイナス)方向へ回転させてインデックス用マーク34を最初に検知した後、さらに少し−(マイナス)方向へ回転させた後、引続いて回転方向を+(プラス)方向へ変化させて角度0.5°ずつ回転させ、インデックス用マーク34が検知されなくなった時点をデータム点とする、ように制御することができる。
【0102】
以下、上記構成より成るX線回折装置1によるX線回折測定を説明する。
この測定は、図1において、X線源14からX線を発生して試料7にX線を照射し、X線源14及び発散スリット9をθ回転させ、さらに、X線検出器18、受光スリット17及び散乱スリット16を2θ回転させることによって行われる。X線源14及び発散スリット9のθ回転は、X線源側モータ24を作動して図3のX線源側ウオームホイール22を回転駆動してX線源アーム3をθ回転させることによって行われる。また、X線検出器18、受光スリット17及び散乱スリット16の2θ回転は、検出器側モータ25を作動して検出器側ウオームホイール23を回転駆動して検出器アーム4を2θ回転させることによって行われる。
【0103】
試料7へ入射するX線の入射角θs の基準角度位置(データム点)、例えばθs =5°は図3のX線源側ウオームホイール22に付設されたインデックス用エンコーダ34,37によって図6(b)又は(c)に示したようにして特定される。また、X線検出器18の回折線取込み角θd の基準角度位置、例えばθd =5°は検出器側ウオームホイール23に付設されたインデックス用エンコーダ34,37によって特定される。データム点を2θで表せば、2θ=θs +θd =10°である。
【0104】
インデックス用エンコーダを構成しているインデックス用マーク34は、回転体であるX線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23の表面上に外付け又は後付けされるのではなく、それらのウオームホイール22,23を形成しているエンコーダ用リング26の表面上に直接、形成されている。従って、従来のゴニオメータの場合のように、インデックス用マークを刻んである部品をウオームホイール22,23に取付け、さらに取付け位置の調整を行う必要がなく、ゴニオメータの組立て作業が非常に容易である。
【0105】
しかも、インデックス用マーク34はウオームホイール22,23に対して取付け誤差が全く無く、しかもインデックス用マーク34は図7に示したマーク形成装置、すなわち特許第3826207号に開示された自己校正を行う角度検出器を備えた高精度回転機構57を有したマーク形成装置51によって極めて高精度で形成されている。それ故、本実施形態のゴニオメータ2はインデックス用マーク34を用いることにより、X線源14やX線検出器18の基準角度位置や限界角度位置を正確に決めることができる。
【0106】
なお、基準角度位置(例えば、データム点にあるかどうか、データム点のどちら側にあるかどうか等)はインデックス用マーク34そのものによって特定でき、可動範囲の限界角度位置はインデックス用マーク34によって基準角度位置を特定した上でスケール用マーク33によって所定角度を計測することによって特定できる。
【0107】
X線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23に関して基準角度位置が特定された後、X線源アーム3をθ回転させると共に、検出器アーム4を2θ回転させながらX線源14からX線を放射することにより、試料7に関してX線回折測定が行われる。この測定により、例えば図8に示すようなX線回折図形が測定結果として求められる。
【0108】
図8は、Kα1及びKα2によるSi400の反射を測定したものである。ここに示されている回折パターンは半値幅が狭いパターンとなっている。このように半値幅が狭い回折パターンは高精度の測角が行われないと求められないものであり、具体的には(1/1000)度程度の角度設定精度が必要である。本実施形態のX線回折装置1によれば高精度の測角が行われるので、図8に示すような高精度のX線回折図形を得ることができる。
【0109】
図8において横軸は図1の検出器アーム4の回折角2θであり、縦軸はX線検出器18によって求めたX線強度である。回折角2θは図3の検出器側ウオームホイール23に付設されたスケール用マーク33及び第1検出部36から成るスケール用エンコーダによって計測される。また、回折角2θに連動するX線源アーム3の回転によるX線入射角θはX線源側ウオームホイール22に付設されたスケール用マーク33及び第1検出部36から成るスケール用エンコーダによって計測される。
【0110】
スケール用エンコーダを構成しているスケール用マーク33は、回転体であるX線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23の表面上に外付け又は後付けされるのではなく、それらのウオームホイール22,23の表面上に直接、形成されている。従って、従来のゴニオメータの場合のように、インデックス用マークを刻んである部品をウオームホイール22,23に取付け、さらに取付け位置の調整を行う必要がなく、ゴニオメータの組立て作業が非常に容易である。
【0111】
しかも、スケール用マーク33はウオームホイール22,23に対して取付け誤差が全く無く、しかもスケール用マーク33は図7に示したマーク形成装置、すなわち特許第3826207号に開示された自己校正を行う角度検出器を備えた高精度回転機構57を有したマーク形成装置51によって極めて高精度で形成されている。それ故、本実施形態のゴニオメータ2はスケール用マーク33を用いることにより、試料へのX線入射角θ及び試料から出る回折線の回折角2θを極めて高精度に測角できる。
【0112】
高精度回転機構57内に設けられた角度検出器は、例えば図9にその全体を符号81で示すような角度検出器である。この角度検出器81は、回転軸82に固定した目盛り盤83の周囲に読取りヘッドを備えた角度検出器であって、同一の目盛り盤83の周囲に複数の第1目盛り読取りヘッド84と、1個の第2目盛り読取りヘッド85とを備え、第2目盛り読取りヘッド85と各第1目盛り読取りヘッド84との計測差を求めて演算処理を行うことにより自己校正を行う構成の角度検出器である。なお、この角度検出器81の詳細及び改変例は特許第3826207号公報に例示されている。
【0113】
また、高精度回転機構57内に設けられた角度検出器は、産総研計量標準報告Vol.1,No.1(2002年1月)P.19−23、渡辺司他、「ロータリーエンコーダの高精度校正装置の開発(第1報)」に述べられている高精度自己校正機構を利用することもできる。この自己校正機構は、例えば、図10に示す構成を有しており、標準偏差0.01角度秒以内の精度で角度検出が可能である。この方法では、回転軸82を含んだ回転機構に取り付けられた2つのロータリーエンコーダ87a,87bが用いられる。
【0114】
ロータリーエンコーダ87aには複数の読取りヘッド88が設けられている。ロータリーエンコーダ87bには位置不動に固定された読取りヘッド89が設けられている。ロータリーエンコーダ87aの読取りヘッド88は前記回転機構と同軸に設けられた別の回転機構によって360°回転移動可能となっている。読取りヘッド88の角度は、位置不動に固定された読取りヘッド90を備えたロータリーエンコーダ91によって検出される。ロータリーエンコーダ87aに含まれる複数の読取りヘッド88を用いて複数の角度で検出した角度情報とロータリーエンコーダ87bの角度とを比較する演算処理を行うことにより、角度設定機構としての回転装置59の誤差を自己校正することができる。
【0115】
X線回折測定に際して測定すべき回折角2θの角度範囲は試料の特性に応じて所定の角度範囲に規定されるが、通常、その角度範囲は360°以下の角度範囲である。回折角2θの角度範囲が制限されるのに応じて試料へのX線入射角θも当然のことながら、2θの1/2の角度範囲に限定される。X線源アーム3及び検出器アーム4の周囲には電気コードその他の各種の機器要素が設けられる。各アーム3,4はそれらの機器要素にぶつかってはならない。そのため、X線源アーム3のθ回転及び検出器アーム4の2θ回転は、基準角度位置(データム点)からの旋回が所定の限界角度位置までに制限される。
【0116】
本実施形態では、基準角度位置(データム点)は図6(a)のインデックス用マーク34、特に基準点マーク34aそのものによって特定できる。また、限界角度位置は基準点マーク34aからのスケール用マーク33の数によって特定できる。インデックス用マーク34及びスケール用マーク33はいずれもX線源側ウオームホイール22及び検出器側ウオームホイール23の表面上に直接、形成されており、しかも、図7の高精度回転機構57を備えたマーク形成装置51によって形成されている。従って、基準角度位置(データム点)から限界角度位置までの旋回許容角度範囲は非常に正確に特定され、それ故、X線源アーム3及び検出器アーム4が他の機器要素にぶつかることを確実に防止できる。
【0117】
なお、基準点マーク34aによって特定される基準角度位置から所定数のスケール用マーク33をもって限界角度位置であると特定することに代えて、図11(a)に示すように、インデックス用マーク34の所望角度位置に限界点マーク34bを予め形成しておき、基準点マーク34aと限界点マーク34bとによって旋回許容角度範囲を特定することもできる。
【0118】
さらに、図1のX線回折装置1において電源投入時にはX線源アーム3及び検出器アーム4をそれぞれデータム点、すなわち2θ=10°)の位置に回動させる必要がある。このとき、それらのアーム3,4がデータム点のプラス側にあるか、マイナス側にあるかによって、各アームの回動方向を適宜に制御する必要がある。この回動方向の選定を間違えると、各アーム3,4が他の機器にぶつかって損傷するおそれがある。
【0119】
本実施形態では、図6(a)に示したように、インデックス用マーク34を設けた領域と設けていない領域とを作成したことにより、第2検出部37(図5参照)がウオームホイール22,23のどの角度位置を検出しているか、換言すれば、ウオームホイール22,23がどの角度位置にあるかを簡単に検知できるようになっている。従って、電源投入時のアーム3,4の回転方向の選定を容易に行うことができる。
【0120】
以上の説明から理解されるように、本実施形態によれば、回転体であるウオームホイール22,23がどの回転角度位置にあるかをインデックス用マーク34を用いて容易に判定できる。そのため、電源投入時にその回転角度位置を基準としてウオームホイール222,23を自動的に所望の位置に移動させることができる。
【0121】
本実施形態によれば、インデックス用マーク34が或る角度範囲を持って形成されているので、例えばウオームホイール22,23がその角度範囲以外には回転しないように制御することができる。これにより、ウオームホイール22,23に支持されたX線発生装置8、X線検出器18等がその角度範囲外に存在する他の物体に衝突することを容易に回避できる。
【0122】
図6(a)に示した実施形態では、1つの角度範囲にインデックス用マーク34を形成した。これに代えて、複数の互いに分離した角度範囲にインデックス用マーク34を形成しても良い。こうすれば、マーク34を形成した範囲内では所定速度で測角を行い、それ以外の範囲は測角を行うことなく高速度でスキップ移動を行うことにより、測定時間を短縮することができる。
【0123】
複数の互いに分離した角度範囲のそれぞれにインデックス用マーク34を形成する場合には、個々の角度範囲内のマーク34を読取った第2検出部37の出力端子にそれぞれの角度範囲に対応して互いに識別可能な信号が出力されるように、各角度範囲内のマーク34に違いを持たせることが望ましい。こうすれば、第2検出部37がどの角度位置の角度範囲を検出しているか、すなわち回転体であるウオームホイール22,23がどの角度範囲に対応した位置にあるか、を容易に判別できる。
【0124】
例えば、図11(b)に示すように、複数の互いに分離した角度範囲A1,A2,A3にインデックス用マーク34を形成するものとし、マーク34のピッチを範囲A1で2θ=0.5°相当、範囲A2で2θ=0.4°相当、そして範囲A3で2θ=0.3°相当に設定することができる。これ以外に、マーク34自身の幅に変化を持たせたり、マーク34の濃淡(すなわち、反射光の強度差)に変化を持たせたりすることもできる。
【0125】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明に係る測角器を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0126】
例えば、上記実施形態では、X線源14を回転させる回転系とX線検出器18を回転させる回転系との両方に本発明に係る測角器を適用したが、いずれか一方の回転系に本発明に係る測角器を適用しても良い。また、X線回折装置の種類によっては、X線源14は位置不動の固定状態に設置されるものがある。このようなX線回折装置においては、X線検出器18を回転させる回転系だけに本発明に係る測角器を適用することができる。
【0127】
また、上記実施形態では、第1識別用マークと第1検出部とから成る検出ユニット及び第2識別用マークと第2検出部とから成る検出ユニットを光学式の検出ユニットによって構成したが、これを磁気を利用した検出ユニットに代えることもできる。
【0128】
また、上記実施形態では図1において試料ホルダ6を水平に固定して、X線源アーム3を正時計方向へθ回転させてX線入射角θs を変化させ、検出器アーム4をX線源アーム3と反対方向(反時計方向)へ同じ角速度で2θ回転させて回折線取込み角θd を変化させた。すなわち、いわゆるθ−θ回転構造を採用した。
【0129】
しかしながら、これに代えて、X線源アーム3を固定(すなわちX線源14を固定)状態として、試料ホルダ6を反時計方向へθ回転させてX線入射角θs を変化させ、検出器アーム4を試料ホルダ6と同じ方向(反時計方向)へ2倍の角速度で2θ回転させて回折線取込み角θd を変化させる構造、いわゆるθ−2θ回転構造を採用することもできる。
【0130】
以上の実施形態は、X線源アーム3を回転させるθ軸回転系と、検出器アーム4を回転させる2θ軸回転系との2つの回転系に対して本発明を適用したが、1つの回転系しか備えていない装置に対しては、その1つの回転系だけに本発明を適用することもできる。
【0131】
また、4つの回転系を備えた4軸ゴニオメータに関しては、それらの回転系のいずれか又は全部に対して本発明を適用することもできる。
【0132】
また、以上の実施形態ではX線分析装置としてX線回折装置を例示したが、本発明はその他のX線分析装置、例えば蛍光X線装置、X線小角散乱装置等にも適用できる。
【0133】
さらに、本発明に係る測角器は、X線分析装置以外の分析装置であって回転する何等かの要素機器を含んで成る分析装置、検査装置、製造装置等にも適用できる。
【0134】
図11(a)及び図11(b)の実施形態では、第1識別用マーク33と第2識別用マーク34の先端同士が互いに接触又は近接して、それらのマークの全体が互いに隣接している。これに代えて、図12(a)に示すように、第1識別用マーク33と第2識別用マーク34の一部分同士が互いに重なり合うようにそれらのマークを設けることもできる。また、図12(b)に示すように、第1識別用マーク33と第2識別用マーク34のいずれか一方の全部(実施形態では第2識別用マーク34の全部)が他方のマーク(実施形態では第1識別用マーク33)に重なり合うようにそれらのマークを設けることもできる。
【0135】
(測角器の製造方法の第1の実施形態)
次に、図5においてウオームホイール22,23の回転胴29,30の表面にスケール用マーク33及びインデックス用マーク34を直接、形成するための方法を中心として、測角器の製造方法の一実施形態を説明する。
【0136】
図7はマーク形成装置の一例を示している。このマーク形成装置51は、基台としての剛性の高い定盤52と、その定盤52上に設けられたワーク支持部53と、同じく定盤52上に設けられたレーザ出射部54とを有している。レーザ出射部54はマーク形成手段として機能する。
【0137】
ワーク支持部53はフレーム56を有しており、そのフレーム56の内部には、高精度回転機構57と、高精度回転機構57によって支持されたXYステージ58とが設けられている。高精度回転機構57は、例えば特許第3826207号に開示された角度検出器を備えた回転装置59を有している。この回転装置59はその角度検出器の作用により出力軸である回転軸60を所定の角速度で極めて高精度に回転させることができる。XYステージ58はこのような回転軸60に固定されている。
【0138】
加工を受けるべきワークであるX線源側ウオームホイール22又は検出器側ウオームホイール23はXYステージ58の上に載置される。好ましくは位置移動しないように固定される。ワーク22,23が載置されるべき空間の側方位置には反射型の光検出部61が設けられている。この光検出部61は、形成されたマークの位置が正しいかどうかを検査する際に用いられる。
【0139】
また、ワーク22,23が載置されるべき空間の上方位置には位置センサ62が設けられている。この位置センサ62は、XYステージ58に載置されたワーク22,23の外周の一部分を検知することにより、ワーク22,23が所定の位置に配置されているかどうかを検知するために用いられる。
【0140】
他方、レーザ出射部54は、XYステージ64と、XYステージ64上に固定されたレーザ光源部フレーム65と、当該フレーム65上に固定されたレーザ光源部定盤66とを有している。定盤66の端部にはレーザ光源67が固定され、さらに、レーザ光源67からワーク支持部53に向かって順に、ガルバノスキャナ68、ハーフミラー69、そして集光レンズ70が設けられている。また、ハーフミラー69の上方位置に顕微鏡ユニット71が設けられている。顕微鏡ユニット71は、レーザ光路とレーザ加工位置とを相対的に比較して加工位置を確認するために用いられる。
【0141】
レーザ加工を開始するにあたっては、まず、図5においてスケール用マーク33又はインデックス用マーク34が形成されていない状態のX線源側ウオームホイール22又は検出器側ウオームホイール23を、図7のマーク形成装置51のワーク支持部53のXYステージ58の上の所定位置にワークとして載置する。必要に応じて位置移動しないように固定する。
【0142】
次に、位置センサ62及びXYステージ58を用いて回転装置59の回転軸とホイール22,23の中心軸とを一致させる。具体的には、まず、XYステージ58によってX方向に平行な位置の調整を行い、位置センサ62によってホイール22,23の位置測定を行い、XYステージ58を180°回転させる。その後、位置センサ62によって再びホイール22,23の位置測定を行う。両測定値の差の1/2が回転軸の差なので、その差分値だけXYステージ58をX方向へ移動させる。次に、XYステージ58を90°回転させてXYステージ58によってY方向に関してX方向と同様の調整を行う。以後、X方向及びY方向に関する調整を複数回繰返して行うことにより、回転装置59の回転軸とホイール22,23の中心軸とを一致させる。
【0143】
回転装置59は、特許第3826207号に記載された角度検出器、すなわち回転軸に固定した目盛り盤の周囲に読取りヘッドを備えた角度検出器であって、同一目盛り盤の周囲に複数の第1目盛り読取りヘッドと、1個の第2目盛り読取りヘッドとを備え、前記第2目盛り読取りヘッドと各第1目盛り読取りヘッドとの計測差を求めて演算処理を行うことにより自己校正を行うようにした角度検出器を備えているので、ワークとしてのウオームホイール22又は23を極めて高精度に微細角度で回転させることができる。従って、回転装置59の回転軸とホイール22,23の中心軸とは極めて高精度に、例えば真円度の誤差の範囲内で一致する。
【0144】
また、高精度回転機構57内に設けられた角度検出器は、既述のように、産総研計量標準報告Vol.1,No.1(2002年1月)P.19−23、渡辺司他、「ロータリーエンコーダの高精度校正装置の開発(第1報)」に述べられている高精度自己校正機構を利用することもできる。
【0145】
次に、高精度回転機構57の回転装置59を作動させて回転軸60を連続的又は間欠的に一定の微細角度で回転させることにより、ウオームホイール22又は23の新しい面をレーザが当たる部分に持ち運ぶ。ウオームホイール22又は23が回転する間、レーザ光源67からレーザ光を発生させ、ガルバノスキャナ68によってレーザ光を上下及び左右で走査移動させ、且つ集光レンズ70によってレーザ光をワークとしてのウオームホイール22又は23の表面に集光させる。
【0146】
この集光により、複数のスケール用マーク33又は複数のインデックス用マーク34をウオームホイール22又は23の表面上に刻印する。顕微鏡ユニット71はマーク形成位置を確認する際に使用する。回転軸60を間欠的に回転させる場合には、ウオームホイール22又は23を微小角度回転させた後にそれを停止させ、その停止状態でマークの形成が行われる。
【0147】
本実施形態では既述のように角度原器に相当する高精度の角度設定機構である回転装置59を用いてワークとしてのウオームホイール22,23を回転させるようにしたので、ウオームホイール22又は23の表面上に刻印された複数のスケール用マーク33又は複数のインデックス用マーク34のピッチは極めて高精度である。
【0148】
本実施形態では、平滑で光沢のある金属表面にレーザ加工によって縞状に正反射防止加工を施すことにより線分形状のマーク33,34が形成される。線分の幅は10〜50μmであり、長さは5mmである。また、互いに隣接する線分間のピッチは幅の2倍である。上記金属としては、レーザ光の光吸収が小さい物質、例えばニッケル、クロム、金、銀、銅、ステンレス鋼等を用いる。
【0149】
レーザ加工を用いる場合、レーザ波長に対する吸収、アブレーション特性、加工後のドロスが少ないことが望ましい。また、2種類の材料の一方を除去してスケール用マークを形成する場合には、2種類の材料の加工選択性があることが望ましい。また、表面を粗化してスケール用マークを形成する場合には、材料表面に凹凸形状が形成されやすいことが望ましい。
【0150】
(測角器の製造方法の第2の実施形態)
上記第1実施形態では正反射防止加工としてレーザ加工による除去及び粗面化を用いたが、レーザ加工に代えて機械加工又は化学加工による除去、粗面化、黒色化を採用することもできる。
【0151】
例えば、図13(a)に示すようにワーク73の表面に縞状のマーク74を形成する場合に、図13(b)に示すように、光反射率の異なる2種類の物質から成る積層物75及び76を基材77の表面に成膜し、表面層76を縞状に除去することにより、マーク74を形成できる。
【0152】
上記2種類の物質としては、ガラスと金属、金属と金属、又は金属と黒色被膜等が考えられる。金属としては、例えばクロム、ニッケル等が考えられる。2種類の金属としては、例えばニッケルと銅が考えられる。金属と黒色被膜としては、例えばステンレス鋼と黒化処理による黒色被膜や、銅と黒化処理による黒色被膜や、アルミニウムと黒色アルマイト処理による黒色被膜等が考えられる。
【0153】
また、膜を縞状に除去する方法としては、ホトリソグラフィ、機械加工、レーザ加工等が考えられる。
【0154】
成膜処理を行う際には、成膜された層と基材との密着性が高いこと、両者間に応力が生じないことが望ましい。また、めっき容易性が高いことが望ましい。また、ユーザ使用環境において長期間にわたって変色、腐食、剥れが無いことが望ましい。
【0155】
(測角器の製造方法の第3の実施形態)
マークの形成方法として、光反射率の異なる2種類の物質から成る積層物を基材上に形成し、表面層を縞状に付加する方法も考えられる。2種類の物質としては、ガラスと金属、金属と金属、又は金属と黒色被膜等が考えられる。図13(d)は、基材77上に金属膜75を成膜し、さらにその上に黒色被膜78を付加して縞状マーク74を形成した例である。
【0156】
上記の金属としては、クロム、ニッケル等が考えられる。上記の2種類の金属としては、ニッケルと銅等が考えられる。上記の金属と黒色被膜としては、ステンレス鋼と黒化処理による黒色被膜や、銅と黒化処理による黒色被膜や、アルミニウムと黒色アルマイト処理による黒色被膜等が考えられる。
【0157】
上記の縞状に付加する方法としては、例えば、まず基材77上に第1層の材料を成膜し(符号75)、その上にフォトレジスト又は樹脂を塗布し、その塗布物をホトリソグラフィ又はレーザ加工等で縞状に除去し、さらに蒸着、スパッタリング、メッキ等といった成膜方法又は黒色化処理を行って第1層の材料75の上に金属又は黒色被膜78を縞状に形成し、さらに上記の塗布物を溶剤で溶解して除去することにより、第1層の材料75と第2の材料78との縞状構造を形成する。
【0158】
なお、ホトリソグラフ処理を行う際には、円筒形状のワークと露光源との間に平面状のマスクを配置しておいて、そのワークを回転させながら露光を行うという手法を採用できる。また、エッチング液を供給する際には、対象ワークをマスクした上でエッチング液をスプレイするという手法を採用できる。
【0159】
(測角器の製造方法の第4の実施形態)
図13(c)は、例えばデンスバー(すなわち、鋳鉄)から成る基材77の上に、例えばニッケルから成る第1膜75を成膜し、その第1膜75に機械加工又はレーザ加工を施して縞状のマーク74を形成した例である。図ではマーク74を第1膜75から突出する凸状部分によって形成したが、マーク74を第1膜75へ窪む凹状部分によって形成することもできる。
【0160】
(測角器の製造方法の第5の実施形態)
図13(e)は、例えばデンスバーから成る基材77の上に、縞状に黒色被膜78を直接に形成してマーク74を形成した例である。
【0161】
(測角器の製造方法の第6の実施形態)
金属膜をメッキした上でその金属膜を縞状に除去してマークを形成する場合には、次の処理を行うことができる。
【0162】
(1)エッチングで除去する場合
(ア)基板加工
ゴニオメータ2のウオームホイール22,23の材料であるデンスバーを加工し、スケール用マーク33及びインデックス用マーク34を書き込むための円筒面を形成する。この際には、自動加工装置により研削加工によって形成する。機械加工後の粗さは概ね次の通りである。
【0163】
Ra(算術平均粗さ)=0.6μmであり、Rz(最大高さ:基準長さにおける輪郭曲線の中で、最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和)=10μm、である。表面粗さの定義はJIS B 0601−2001に従う。
機械加工後には研削の加工筋が残り、このような粗い状態となっている。これにより、光線を入射したとき、正反射せず、散乱する比率が高くなる。
デンスバーをそのまま基材としても良いが、表面粗さをより小さくし易いCu等の材料を嵌めこんでも良い。
【0164】
(イ)研磨
バフ研磨等により表面粗さを低減することが好ましい。Ra=0.2μm、Rz=0.6μmとすることができる。
(ウ)洗浄
油分及び金属を除去すること好ましい。
(エ)マークの形成
金属膜めっき、レジスト塗布、プリベーク、露光、現像、リンス、ポストベーク、エッチングの各処理を順次に行う。金属膜めっきは、例えばNi(ニッケル)めっきである。露光は、マスク露光又はレーザ直描である。現像はTMA等によって行う。リンスは超純水によって行う。
【0165】
(2)露光方法
(ア)マスク露光による外周面露光
実施例として、一度に露光する範囲を3°(ホイール直径を160.43mmとすると、範囲4.2mm、210本)とする。外周面にライン/スペース=10μm/10μm、210本のマスクを固定しておく。高精度角度設定機構(図7の符号57参照)を角度1°動かし、外周面を露光する。露光光源としては水銀ランプを使用した。
【0166】
1°ずつの回転と露光を繰り返して合計360°回転すれば、1°の領域が3回ずつ露光されることになり、露光量ばらつきを平均化することができる。
【0167】
光源としては、例えば次のようなものを使用できる。
(a)UV−LED(浜松ホトニクス社製、型式LC−L2、波長365nm(i線相当)、
(b)UV−LED(住友電工社製、型式UVLM−400、波長375nm)、
(c)ハロゲンランプ(トーヨーコーポレーション社製、型式URM−300、波長380−420nm)、
(d)水銀ランプ(ウシオ社製、波長300−400nm)。
【0168】
(イ)レーザ直描
上記の処理において、マスク露光に代えて、レーザによって対象面をスキャンしてパターンを書き込んでも良い。
【0169】
(ウ)レジストのレーザ加工
上記の処理において、露光及び現像に代えて、レーザを照射してレジストを直接、除去しても良い。現像以後のプロセスはマスク露光と同様である。
【0170】
(測角器の製造方法の第7の実施形態)
図7に示すようなレーザを用いたマーク形成装置において、ガルバノスキャナではなく、マスクを用いてマークを形成できる。例えば、ビーム径の大きなエキシマレーザ等を用い、光学系の途中にマスクを位置移動しないように配置し、被加工面でライン/スペース=10μm/10μm、70本を同時に加工できる。一度に加工する範囲は1°(ホイール直径は160.43mmとすると、範囲1.4mm、70本である)とする。
【0171】
(測角器の製造方法の第8の実施形態)
図7において、ビーム径の小さいグリーンレーザを用い、ガルバノスキャンによって、ライン/スペース=10μm/10μm、70本を同時に加工する。一度に加工する範囲は1°(ホイール直径は160.43mmとすると、範囲1.4mm、70本である)とする。エンコーダ付きのデジタルガルバノスキャナを用いることにより、再現性の良い加工を行うことができる。1つのマークを加工後、高精度角度設定機構(図7の符号57参照)を角度1°動かして、次のマークを加工する。角度1°ずつの回転と加工を繰り返して合計360°回転すれば良い。
【0172】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明の製造方法を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、以上の実施形態ではX線分析装置としてX線回折装置を例示したが、本発明はその他のX線分析装置、例えば蛍光X線装置、X線小角散乱装置等にも適用できる。
【符号の説明】
【0173】
1.X線回折装置、 2.ゴニオメータ(測角器)、 3.X線源アーム(X線源支持体)、 4.検出器アーム(検出器支持体)、 6.試料ホルダ(試料支持体)、 7.試料、 8.X線発生装置、 9.発散スリット、12.フィラメント、 13.ターゲット、 14.X線源、 16.散乱スリット、 17.受光スリット、 18.X線検出器、 21.ケース、 22.X線源側ウオームホイール(回転体)、 23.検出器側ウオームホイール(回転体)、 24.X線源側モータ、 25.検出器側モータ(駆動源)、 26.エンコーダ用リング、 27.X線源側ウオームギヤ、 28.検出器側ウオームギヤ、 29.X線源側回転胴、 30.検出器側回転胴、 32.軸部材、 33.スケール用線分マーク(第1識別用マーク)、 34.インデックス用線分マーク(第2識別用マーク)、 34a.基準点マーク、 34b.限界点マーク、 36.第1検出部、 37.第2検出部、 46.信号処理部(信号生成手段、角度判別手段)、 51.マーク形成装置、 52.定盤、 53.ワーク支持部、 54.レーザ出射部、 56.フレーム、 57.高精度回転機構、 58.XYステージ(回転台)、 59.回転装置、 60.回転軸、 61.光検出部、 62.位置センサ、 64.XYステージ、 65.レーザ光源部フレーム、 66.レーザ光源部定盤、 67.レーザ光源、 68.ガルバノスキャナ、 69.ハーフミラー、 70.集光レンズ、 71.顕微鏡ユニット、 73.ワーク、 74.マーク、 75.第1積層物、 76.第2積層物、 77.基材、 78.黒色被膜、 81.角度検出器、 82.回転軸、 83.目盛り盤、 84.第1目盛り読取りヘッド、 85.第2目盛り読取りヘッド、 Cf.集中円、 Cg.ゴニオメータ円、 θs :X線入射角、 θd :回折線取込み角(X線回折角)、 X1、試料軸線、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転角度を測定するための測角器において、
前記回転体に設けられた測角用の第1識別用マークと、
前記第1識別用マークを読取る第1検出部と、
前記回転体に設けられた第2識別用マークと、
前記第2識別用マークを読取る第2検出部と、
を有しており、
前記第1識別用マーク及び前記第2識別用マークは前記回転体の表面上に直接に形成されており、
前記第2識別用マークは前記回転体の回転中心線を中心とした一部の角度範囲に設けられている
ことを特徴とする測角器。
【請求項2】
前記第2識別用マークは、前記回転体の回転中心線を中心とした1つの角度範囲内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の測角器。
【請求項3】
前記第2識別用マークは、前記回転体の回転中心線を中心とした複数の互いに分離した角度範囲のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項1記載の測角器。
【請求項4】
前記第2識別用マークは、互いに間隔をあけて形成された複数の線状マークであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の測角器。
【請求項5】
前記第1検出部の出力に基づいて第1信号を生成し前記第2検出部の出力に基づいて第2信号を生成する信号生成手段を有しており、
前記信号生成手段は、前記異なった角度範囲のそれぞれに対応する前記第2信号として互いに識別可能な信号を生成する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の測角器。
【請求項6】
前記角度範囲内に設けられた前記第2識別用マークを用いて前記回転体の角度位置を判別する角度判別手段をさらに有し、
該角度判別手段は、前記第2識別用マークが存在する範囲と前記第2識別用マークが存在しない範囲との違いに基づいて前記回転体の角度位置を判別する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の測角器。
【請求項7】
前記第2識別用マークは、前記回転体の基準角度位置に対応した基準点マークを含んでいることを特徴とする請求項6記載の測角器。
【請求項8】
前記角度判別手段は、
前記第2検出部が前記第2識別用マークが存在する範囲を検出しているか、又は前記第2識別用マークが存在しない範囲を検出しているかと、
前記回転体の回転方向が正転方向であるか、又は逆転方向であるかと、
前記第2検出部が前記基準点マークを検出したこと、
とに基づいて前記回転体の基準角度位置を判定することを特徴とする請求項7記載の測角器。
【請求項9】
前記第1識別用マークと前記第2識別用マークとは前記回転体の回転中心線に沿って互いに異なった位置に互いに平行に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の記載の測角器。
【請求項10】
前記第1識別用マークと前記第2識別用マークの先端同士が互いに接触又は近接して、それらのマークの全体が互いに隣接していることを特徴とする請求項9記載の測角器。
【請求項11】
前記第1識別用マークと前記第2識別用マークとは前記回転体の回転中心線に沿ったそれらの一部分同士が互いに重なり合うか、又はそれらのマークのいずれか一方の全部が他方のマークに重なり合うことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の測角器。
【請求項12】
前記回転体は円筒状の外周面を有し、
前記第1識別用マークは前記外周面の全域である角度360°の範囲にわたって形成され、
前記第2識別用マークは前記外周面の一部の角度領域内に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1つに記載の測角器。
【請求項13】
前記回転体の回転可能範囲は360°よりも小さい角度範囲であり、
前記第2識別用マークは、前記回転体の回転可能範囲の許容限界角度位置に対応した限界点マークを含むことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1つに記載の記載の測角器。
【請求項14】
回転体の回転角度を測定するための測角器の製造方法において、
角度設定機構によって所定回転速度で回転させられる回転台上に前記回転体を置き、
前記回転台によって前記回転体を回転させて前記回転体の異なる面をマーク形成手段によるマーク形成位置に持ち運び、前記マーク形成手段によって前記回転体の表面に測角用の第1識別用マークを形成し、さらに、前記回転体の回転中心線を中心とした一部の角度範囲に前記マーク形成手段によって第2識別用マークを形成し、
前記第1識別用マークを読取る第1検出部と前記第2識別用マークを読取る第2検出部とを前記測角器内の所定位置に配設し、
前記角度設定機構は、前記回転台を支持した回転軸と、該回転軸の回転角度を検出する角度検出器とを有しており、
該角度検出器は、前記回転軸と一体に回転する目盛り盤と、該目盛り盤の目盛りを読取る複数の読取りヘッドとを有し、これらの読取りヘッドの計測差に基づいて前記回転軸の回転角度を校正する
ことを特徴とする測角器の製造方法。
【請求項15】
前記マーク形成手段はレーザ加工によって前記第1識別用マーク及び第2識別用マークを形成することを特徴とする請求項14記載の測角器の製造方法。
【請求項16】
X線源から出て試料へ入射するX線の入射角θs 及び前記試料から出たX線を検出するX線検出器の前記試料に対するX線取込み角θd を変化させながら分析用のデータを採取するX線分析装置において、
前記X線検出器を支持した検出器支持体が固定された回転体と、
該回転体の回転角度を測定するための測角器とを有しており、
該測角器は、
前記回転体に設けられた測角用の第1識別用マークと、
前記第1識別用マークを読取る第1検出部と、
前記回転体に設けられた第2識別用マークと、
前記第2識別用マークを読取る第2検出部と、
を有しており、
前記第1識別用マーク及び前記第2識別用マークは前記回転体の表面上に直接に形成されており、
前記第2識別用マークは前記回転体の回転中心線を中心とした一部の角度範囲に設けられている
ことを特徴とするX線分析装置。
【請求項17】
前記検出器支持体が固定されたウオームホイールと、
該ウオームホイールに噛み合うウオームと、
該ウオームを回転駆動する駆動源と、をさらに有しており,
前記回転体は前記ウオームホイールと一体である円筒形状の回転胴であることを特徴とする請求項16記載のX線分析装置。
【請求項18】
前記角度範囲内に設けられた前記第2識別用マークを用いて前記回転体の角度位置を判別する角度判別手段をさらに有し、
該角度判別手段は、前記第2識別用マークが存在する範囲と前記第2識別用マークが存在しない範囲との違いに基づいて前記回転体の角度位置を判別し、
前記第2識別用マークは、前記回転体の基準角度位置に対応した基準点マークを含んでおり、
前記角度判別手段は、
前記第2検出部が前記第2識別用マークが存在する範囲を検出しているか、又は前記第2識別用マークが存在しない範囲を検出しているかと、
前記回転体の回転方向が正転方向であるか、又は逆転方向であるかと、
前記第2検出部が前記基準点マークを検出したこと、
とに基づいて前記回転体の基準角度位置を判定する
ことを特徴とする請求項16又は請求項17記載のX線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−137772(P2011−137772A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299262(P2009−299262)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】