説明

測距方法及びレーザ測距装置

【課題】一つのレーザ照射手段を用いて高精度の測距が可能な測距方法及びレーザ測距装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る測距方法及びレーザ測距装置は、波長の異なる複数のレーザ照射手段を用いるのではなく、スペクトル線幅が比較的広く多縦モード発振するレーザ照射手段を利用して測距を行う。このため、高精度の測距が可能でありながらレーザ照射手段が一つで良く、レーザ測距装置の光学系の作製をより容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の干渉を用いて被測定物までの距離もしくは被測定物の測定点間の厚み方向の距離を測距する測距方法及びレーザ測距装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ光を用いたレーザ測距方法は、例えばレーザ光を参照光と測定光とに分割し、その参照光と被測定物で反射された測定光との時間差から両者の光路差を求めることで被測定物までの距離を測定する。このような参照光と測定光との時間差から測距を行う従来のレーザ測距方法では、その測距精度はレーザ光の波長レベル、即ちnm(ナノメートル)オーダーには遠く及ばない。
【0003】
そこで本願発明者は下記[特許文献1]に示すように、波長の異なる複数のレーザ光を用い、さらにその光路差を変化させることでレーザ光の特徴である可干渉性を利用した高精度のレーザ測距方法及びレーザ測距装置に関する発明を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公報第2008/099788号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[特許文献1]に開示された発明により被測定物までの距離を高精度に測距することが可能となった。しかしながら、[特許文献1]に開示された発明では複数のレーザ照射手段を用いるため、それらから出射する複数のレーザ光の光路を完全に一致させる必要がある。このため、レーザ測距装置の光学系の作製に極めて高い精度を要するという問題点があり、さらなる改善が望まれる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一つのレーザ照射手段を用いて高精度の測距が可能な測距方法及びレーザ測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を参照光と測定光に分割し、参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに測定光を被測定物6の測定点Sで反射させ、反射点で反射した参照光と測定点で反射した測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物6の測定点Sまでの距離を測定する測距方法であって、
反射点の位置を移動させながら前記レーザ光を照射して反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する取得ステップと、
当該強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報、もしくは、当該強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報、もしくは、当該強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報、を記録する記録ステップと、
当該位置情報と予め取得されている基準点の位置情報とに基づいて基準点から測定点までの距離Lを算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)取得ステップで取得した合成光の強度データをフーリエ変換して、合成光に含まれるそれぞれ異なる周波数のレーザ光の個々の干渉光の振幅、位相、周期を取得し、さらに取得した個々の干渉光の振幅、位相、周期に基づいて個々の干渉光の必要な範囲の強度データを作成し、作成した個々の干渉光の必要な範囲の強度データを全て合成することで必要な範囲の合成光の強度データを算出するフーリエ変換ステップをさらに有し、
記録ステップがフーリエ変換ステップで算出された強度データを基に反射点の位置情報を記録することを特徴とする上記(1)記載の測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を参照光と測定光に分割し、測定光をさらに第1測定光と第2測定光とに分割し、参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに第1測定光を被測定物6の第1測定点S1で反射させ、さらに第2測定光を被測定物6の第2測定点S2で反射させ、
反射点で反射した参照光と第1測定点S1で反射した第1測定光と第2測定点S2で反射した第2測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを測定する測距方法であって、
反射点の位置を移動させながら前記レーザ光を照射して反射点の位置と対応し参照光と第1測定光との干渉光を含む合成光の第1強度データを取得する第1取得ステップと、
第1強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報、もしくは、第1強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報、もしくは、第1強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報、を第1位置情報として記録する第1記録ステップと、
反射点の位置をさらに移動して反射点の位置と対応し参照光と第2測定光との干渉光を含む合成光の第2強度データを取得する第2取得ステップと、
第2強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報、もしくは、第2強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報、もしくは、第2強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報、を第2位置情報として記録する第2記録ステップと、
第1位置情報と第2位置情報とに基づいて第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)第1取得ステップで取得した合成光の部分的な第1強度データをフーリエ変換して、合成光に含まれるそれぞれ異なる周波数のレーザ光の個々の干渉光の振幅、位相、周期を取得し、さらに取得した個々の干渉光の振幅、位相、周期に基づいて個々の干渉光の必要な範囲の強度データを作成し、作成した個々の干渉光の必要な範囲の強度データを全て合成することで必要な範囲の合成光の第1強度データを算出する第1フーリエ変換ステップと、
第2取得ステップで取得した合成光の部分的な第2強度データをフーリエ変換して、合成光に含まれるそれぞれ異なる周波数のレーザ光の個々の干渉光の振幅、位相、周期を取得し、さらに取得した個々の干渉光の振幅、位相、周期に基づいて個々の干渉光の必要な範囲の強度データを作成し、作成した個々の干渉光の必要な範囲の強度データを全て合成することで必要な範囲の合成光の第2強度データを算出する第2フーリエ変換ステップと、をさらに有し、
第1記録ステップが第1フーリエ変換ステップで算出された第1強度データを基に第1位置情報を記録するとともに、第2記録ステップが第2フーリエ変換ステップで算出された第2強度データを基に第2位置情報を記録することを特徴とする上記(3)記載の測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)無測定物状態で第1測定光の光路長及び第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる反射点の位置を原点位置情報として記録する原点取得ステップをさらに有し、第1測定光を被測定物6の第1測定点S1で反射させるとともに第2測定光を第1測定点S1の裏面に位置する第2測定点S2で反射させ、
測定ステップが第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とに基づいて被測定物6の厚みtを算出することを特徴とする上記(3)又は(4)記載の測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を参照光と測定光に分割し、
参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに測定光を被測定物6の測定点Sで反射させ、
反射点で反射した参照光と測定点Sで反射した測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物6の測定点Sまでの距離を測定する測距方法であって、
予め参照光と測定光との光路長が等しい等位位置を含んで前後所定範囲の合成光の標準強度データを取得した上で、
反射点の位置を移動させながら前記レーザ光を照射して反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する取得ステップと、
当該強度データと標準強度データとが一致する範囲を特定して両者を合致させた上で標準強度データの位置情報と強度データの位置情報とを対応させ、参照光と測定光との光路長が等しくなる位置の位置情報を等位位置の位置情報から算出する算出ステップと、
算出ステップで算出された位置情報と予め取得されている基準点の位置情報とに基づいて基準点から測定点までの距離Lを算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(7)スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を参照光と測定光に分割し、
測定光をさらに第1測定光と第2測定光とに分割し、
参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに第1測定光を被測定物6の第1測定点S1で反射させ、さらに第2測定光を被測定物6の第2測定点S2で反射させ、
反射点で反射した参照光と第1測定点S1で反射した第1測定光と第2測定点S2で反射した第2測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを測定する測距方法であって、
予め参照光と測定光との光路長が等しい等位位置を含んで前後所定範囲の合成光の標準強度データを取得した上で、
反射点の位置を移動させながら前記レーザ光を照射して反射点の位置と対応し参照光と第1測定光との干渉光を含む合成光の第1強度データを取得する第1取得ステップと、
第1取得ステップで取得した第1強度データと標準強度データとが一致する範囲を特定して両者を合致させた上で標準強度データの位置情報と第1強度データの位置情報とを対応させ、参照光と第1測定光との光路長が等しくなる第1位置情報を等位位置の位置情報から算出する第1算出ステップと、
反射点の位置をさらに移動して反射点の位置と対応し参照光と第2測定光との干渉光を含む合成光の第2強度データを取得する第2取得ステップと、
第2取得ステップで取得した第2強度データと標準強度データとが一致する範囲を特定して両者を合致させた上で標準強度データの位置情報と第2強度データの位置情報とを対応させ、参照光と第2測定光との光路長が等しくなる第2位置情報を等位位置の位置情報から算出する第2算出ステップと、
第1位置情報と第2位置情報とに基づいて第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(8)無測定物状態で第1測定光の光路長及び第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる反射点の位置を原点位置情報として記録する原点取得ステップをさらに有し、
第1測定光を被測定物6の第1測定点S1で反射させるとともに第2測定光を第1測定点S1の裏面に位置する第2測定点S2で反射させ、
測定ステップが第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とに基づいて被測定物6の厚みtを算出することを特徴とする上記(7)記載の測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(9)スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を出射するレーザ照射手段10と、当該レーザ照射手段10から出射したレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部12と、前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部14と、当該反射部14の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部24と、反射部14で反射した参照光と被測定物6の測定点Sで反射した測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部18と、当該強度のデータと前記位置情報取得部24からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部20と、を備え、
上記(1)又は(2)又は(6)記載の測距方法を行い、予め設定されている基準点から測定点Sまでの距離Lを測距することを特徴とするレーザ測距装置50aを提供することにより、上記課題を解決する。
(10)スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を出射するレーザ照射手段10と、当該レーザ照射手段10から出射したレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部12と、前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部14と、当該反射部14の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部24と、前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部28と、第1測定光を出射する第1出射口16aと第2測定光を出射する第2出射口16bと、反射部14で反射した参照光と被測定物6の第1測定点S1で反射した第1測定光と被測定物6の第2測定点S2で反射した第2測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部18と、当該強度のデータと前記位置情報取得部24からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部20と、を備え、
上記(3)又は(4)又は(7)記載の測距方法を行い第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを測距することを特徴とするレーザ測距装置50bを提供することにより、上記課題を解決する。
(11)スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を出射するレーザ照射手段10と、当該レーザ照射手段10から出射したレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部12と、前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部14と、当該反射部14の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部24と、前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部28と、被測定物6の配置位置を挟んで対向する位置に設けられ第1測定光を出射する第1出射口16aと第2測定光を出射する第2出射口16bと、反射部14で反射した参照光と被測定物6の第1測定点S1で反射した第1測定光と第1測定点S1の裏面に位置する第2測定点S2で反射した第2測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部18と、当該強度のデータと前記位置情報取得部24からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部20と、を備え、
上記(5)又は(8)記載の測距方法を行い被測定物6の厚みtを測距することを特徴とするレーザ測距装置50cを提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る測距方法及びレーザ測距装置によれば、レーザ照射手段が一つであるため装置の光学系の作製にさほどの精度を必要としない。よって、レーザ測距装置の製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る第1の形態のレーザ測距装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る第1の形態のレーザ測距装置の使用例を示す図である。
【図3】本発明に係る第2の形態のレーザ測距装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明に係る第3の形態のレーザ測距装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明に係る第3の形態のレーザ測距装置の変形例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る測距方法及びレーザ測距装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、図1〜図5中の破線はレーザ光の光路を示す。
【0011】
図1に示す本発明に係る第1の形態のレーザ測距装置50aのレーザ照射手段10は、中心周波数のレーザ光とこれと周波数の異なる複数の縦モードレーザとが混在したレーザ光を出射する。尚、中心周波数のレーザ光及びこれと周波数の異なる複数の縦モードレーザのスペクトル線幅は比較的広いものが好ましく、特に、個々のスペクトル線の中心波長をλとし、その半値幅をΔλとした時に、
Δλ≒λ/500
程度のもので構成されることが好ましい。このようなレーザ照射手段10の例としては、多縦モード発振のレーザ照射手段が挙げられる。また、一般的なレーザ照射手段は出射するレーザ光に縦モードレーザをある程度有しており、これらのレーザ照射手段も本願のレーザ照射手段10として適用が可能である。尚、レーザ照射手段10が出射する縦モードレーザを含むレーザ光の分布(周波数分布)は広いほうが好ましいが、その分布自体は如何なるものでも良い。これには、製造時のバラつき等により結果として周波数分布が広がっているものも含むものとする。ただし、出射するレーザ光の各周波数はある程度安定している必要がある。周波数を安定させる手法としては、周波数安定性の高いレーザ照射手段10を用いることの他に、レーザ照射手段10の温度を一定とする例えばペルチェ素子を利用した温度制御装置等を用いるなど、装置側の構成により出射するレーザ光の周波数を安定化させても良い。これらの条件を満たしていればレーザ照射手段10に特に限定はないが、中でも特に安価な半導体レーザを用いることが材料コストの面から好ましい。
【0012】
このレーザ照射手段10から出射したレーザ光は、ハーフミラーやビームスプリッタ等の分割部12の分割点で2分割される。そして、一方は参照光として反射部14に向かい、もう一方は測定光として被測定物6の側に向う。
【0013】
分割部12で分割された参照光は反射部14の反射点にて反射され、分割部12を通過して受光部18に到達する。尚、反射部14には移動手段22が設置されており、移動手段22の動作により反射部14は反射点から分割点までの距離が変化する方向、即ち参照光の光路長が変化する方向に移動する。
【0014】
位置情報取得部24は、図示しない装置制御部からの信号を受けて移動手段22を動作させるとともに、移動手段22の動作によって変化する反射点の位置情報を演算部20に出力する。尚、移動手段22としては1ステップで5〜10nm程度移動する摺動型超音波モータ等を用いることが好ましい。また、反射部14と反射点とは固定であり、本願では反射点の絶対位置よりも相対位置が重要であるから、反射点の位置情報は反射部14の位置情報で間接的に代用することも可能である。
【0015】
また、分割部12で分割された測定光は出射口16から出射する。そして、図1(b)に示すように、出射口16から出射した測定光は被測定物6の測定点Sで反射され分割部12を経由して受光部18に到達する。
【0016】
受光部18は、測定点Sで反射した測定光と反射点で反射した参照光とを受光して、これらの光が合成もしくは干渉した合成光の強度のデータを電気信号に変換し演算部20に出力する。
【0017】
このとき、位置情報取得部24が移動手段22を動作させ反射点の位置を参照光の光路長が変化する方向に移動させる。参照光の光路長が変化すると参照光と測定光との光路差に変化が生じ、特に参照光と測定光とが干渉している場合には、光路差の変化に伴って受光部18が出力する合成光の強度のデータも変化する。
【0018】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度のデータと位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成し、さらにこの強度データに基づいて後述の演算を行う。尚、以後は受光部18が出力するある一点での合成光の強度のデータを単に“強度”と記述し、演算部20が作成する反射点の位置と対応した一連の合成光の強度データを“強度データ”と記述して、両者を区別する。
【0019】
ここで、参照光の光路長と測定光の光路長とが等しく光路差が存在しない場合には、どのような発振波長(周波数)を有するレーザ光であってもその参照光と測定光とは干渉して強め合いその合成光(干渉光)は明部のピークをとる。反対に参照光と測定光とに光路差が存在する場合には、異なる周波数を有するレーザ光の干渉光が同時に明部のピークをとる光路差の値は現実には存在しない。
【0020】
よって、参照光の光路長と測定光の光路長とが等しくなる位置Oに反射点がある場合、どのような周波数のレーザ光の干渉光も全て明部のピークをとる。ここで、レーザ照射手段10は中心周波数のレーザ光とその他の縦モードレーザが混在したレーザ光を出射する。しかしながら、レーザ照射手段10が出射する全てのレーザ光(中心周波数のレーザ光とその他の縦モードレーザ)のそれぞれの参照光と測定光とが各々干渉した干渉光は、位置Oにおいて全て明部のピークをとる。よって、この位置Oにおいては、これら全ての干渉光の明部のピーク強度が合算され、位置Oにおける合成光の強度データは最大強度のピークを取る。従って、合成光の強度データのうち最大強度のピークをとる反射点の位置を特定すれば、参照光の光路長と測定光の光路長とが等しい反射点の位置Oを求めることができる。
【0021】
また、位置Oではその前後において合成光の強度データが対称性を示すという特徴を有している。上記の最大強度のピークから位置Oを求める手法では、位置O以外の位置において明部のピークが集中する場合があるので、このような位置でのピーク強度は見かけ上、最大強度のピークと同レベルとなる虞があり、装置側での判別が困難となる場合がある。これに対して、強度データが対称性を示すのは位置Oのみであり、よって、合成光の強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置を特定すれば位置Oをより確実に求めることができる。
【0022】
次に、本発明に係る第1の測距方法をレーザ測距装置50aの動作とともに説明する。本発明に係る第1の測距方法では、予め基準点の位置情報を取得する必要がある。よって、ここでは先ずシャッタ5の反射点S’を基準点としてこの基準点の位置情報を取得する方法を説明する。尚、ここでの基準点の位置情報の取得方法は、基本的に第1の測距方法及びレーザ測距装置50aの動作と同等である。
【0023】
先ず、図1(a)に示すように、出射口16をシャッタ5で塞ぐ。次に、反射部14の反射点を起点位置に位置させる。ここでの起点位置は分割点から出射口16までの距離より若干短い反射点の位置とすることが好ましい。次に、レーザ照射手段10を動作させ縦モードレーザが複数混在したレーザ光を出射する。これにより、受光部18は反射点で反射した参照光とシャッタ5の反射点S’で反射した測定光とを受光して、これらの合成光の強度を演算部20に出力する。また、位置情報取得部24は移動手段22を動作させ、反射点を反射部14ごと参照光の光路長が増加する方向に移動させる。また、位置情報取得部24は、移動手段22の動作によって変化する反射点の位置情報を演算部20に出力する。
【0024】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成する。
【0025】
ここで、反射点が移動して距離Lr(s’)が距離Lm(s’)と等しい位置O(s’)となると、測定光の光路長2×Lm(s’)と参照光の光路長2×Lr(s’)とが等しくなる。前述のように、この位置O(s’)では全ての周波数のレーザ光の干渉光が全て明部のピークをとる。従って、この位置O(s’)において合成光の強度は最大ピーク強度をとる。また、強度データはこの位置O(s’)前後において対称性を示す。
【0026】
演算部20は合成光の強度データをモニタして、判定基準(例えば、既知の最大ピーク強度の90%)を超える略最大強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離、反射点を移動させて当該ピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データを取得する。次に、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置情報を基準点の位置情報として記録する。この基準点の位置は、図1(a)においては位置O(s’)に相当する。
【0027】
尚、最大強度のピークがその他のピークの強度と十分に判別可能な値を有している場合、判定基準を最適化して最大強度のピークを示す反射点の位置情報を直接、基準点の位置情報として記録しても良い。また、演算部20が強度データを随時モニタして、前後で対称性が確認されたピークの位置情報を基準点の位置情報として記録するようにしても良い。
【0028】
次に、被測定物6の測定点Sまでの距離を測定する。先ず、シャッタ5を除くとともに被測定物6を設置して測定光を被測定物6の測定点Sで反射させる。これにより、受光部18は反射点で反射した参照光と被測定物6の測定点Sで反射した測定光とを受光して、これらの合成光の強度を演算部20に出力する。また、位置情報取得部24は移動手段22を動作させ、反射点を参照光の光路長が増加する方向にさらに移動させるとともに、移動手段22の動作によって変化する反射点の位置情報を演算部20に出力する。
【0029】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成する。以上が第1の測距方法の取得ステップに相当する。
【0030】
そして、反射点が移動して参照光と測定光との光路差がレーザ光のコヒーレンス長よりも短くなると参照光と測定光とが干渉し、合成光には参照光と測定光とによる干渉光の干渉縞が出現する。そしてさらに反射点が移動して分割点から反射点までの距離Lr(s)が分割点から測定点Sまでの距離を距離Lm(s)と等しい位置O(s)に到達した時に、測定光の光路長2×Lm(s)と参照光の光路長2×Lr(s)とが等しくなる。従って、この位置O(s)において合成光の強度は最大ピーク強度をとる。また、強度データはこの位置O(s)前後において対称性を示す。
【0031】
演算部20は取得ステップと並行して、得られた強度データをモニタし、判定基準を超える略最大強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離、反射点を移動させて当該ピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データを取得する。次に、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置情報を記録する。このとき記録される位置情報は位置O(s)の位置情報に相当する。以上が第1の測距方法の記録ステップに相当する。
【0032】
尚、基準点の位置情報取得時と同様、最大強度のピークがその他のピークの強度と十分に判別可能な値を有している場合、判定基準を最適化して最大強度のピークを示す反射点の位置情報を位置O(s)の位置情報として記録しても良い。また、演算部20が強度データを随時モニタして、前後で対称性が確認されたピークの位置情報を位置O(s)の位置情報として記録するようにしても良い。
【0033】
次に、演算部20は、基準点である位置O(s’)の位置情報と記録ステップで得られた位置O(s)の位置情報とから、基準点である出射口16の出射点(シャッタ5の反射点S’に相当)から被測定物6の測定点Sまでの距離Lを算出する。距離Lの算出方法は、例えば、基準点の位置情報の値をPOs’、位置O(s)の位置情報をPOsとし、反射部14が分割部12から遠ざかるにつれ位置情報の値が増加する場合、
L=Lm(s)−Lm(s’)=Lr(s)−Lr(s’)=POs−POs’
となる。以上が第1の測距方法の測定ステップに相当する。
【0034】
尚、移動手段22はモータ等の機械的なものであるから、移動手段22の精度によっては反射点を各位置、特にピーク位置に完全に位置させることが困難な場合がある。このような場合、得られた強度のデータから不足している位置の強度のデータを算出により補い、最大の強度をとる反射点の位置の取得と強度データの対称性の確認とを行うようにしても良い。このことは、後述の測距方法においても同様である。
【0035】
また、基準点をシャッタ5の内面とせずに、図2(a)に示すように、被測定物6の第1測定点S1とし、第1測定点S1の位置情報取得後に図2(b)に示すように、レーザ測距装置50aもしくは被測定物6を平行移動させて測定光を被測定物6の第2測定点S2で反射させるようにすれば、得られる距離Lは第1測定点S1と第2測定点S2の厚み方向の距離となる。尚、この場合、第1測定点S1と第2測定点S2の位置関係を予め把握しておき、レーザ測距装置50aに近い側(図2の例では第1測定点S1)を基準点とし、遠い側(図2の例では第2測定点S2)を測定点とすることが好ましい。また、移動手段22の動作方向を参照光の光路長が減少する方向とする場合には、逆にレーザ測距装置50aから遠い側(図2の例では第2測定点S2)を基準点とし、近い側(図2の例では第1測定点S1)を測定点とすることが好ましい。
【0036】
次に、本発明に係る第2の測距方法を説明する。尚、本発明に係る第2の測距方法は演算部20による強度データの取得方法が異なるのみで、レーザ測距装置50aの動作は基本的に同じである。
【0037】
先ず、基準点の位置情報を取得する。基準点の位置情報の取得は、第1の測距方法と同様に行っても良いし、以下の第2の測距方法に準じて行っても、後述する標準強度データを用いた手法により行っても良い。
【0038】
次に、シャッタ5を除くとともに被測定物6を設置して測定光を被測定物6の測定点Sで反射させる。そして、第1の測距方法の取得ステップと同様にして、反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する。この際、第2の測距方法の取得ステップで取得する強度データは、参照光と測定光とによる干渉光の明部のピーク(干渉縞)が出現している干渉部分を所定の長さ含んでいればよい。つまり、第1の測距方法の取得ステップのように位置O(s)が出現するまで強度データを取得する必要はない。ここで必要な干渉部分の長さは、後述のフーリエ変換により干渉光の周期、振幅、位相が十分に算出可能な長さである。以上が第2の測距方法における取得ステップに相当する。
【0039】
次に、演算部20は取得ステップで実測された合成光の強度データのうちの干渉部分の強度データに対してフーリエ変換処理を施す。ここで、レーザ照射手段10から出射するレーザ光には、中心周波数のレーザ光とそれと異なる周波数の縦モードレーザが混在しているから、干渉部分の強度データには各周波数のレーザ光の参照光と測定光とが干渉した干渉光(以後、個々の干渉光とし、合成光と区別する)が含まれている。よって、干渉部分の強度データをフーリエ変換することにより、個々の干渉光の周期、振幅、位相がそれぞれ取得される。
【0040】
次に、演算部20は所得された個々の干渉光の周期、振幅、位相から位置O(s)を特定するに必要な範囲に亘って振幅を含む明部のピーク位置を算出する。即ち、本例においては例えば基準点O(s’)から距離Lを超えた範囲の個々の干渉光の振幅を含む明部のピーク位置を算出する。次に、算出された個々の干渉光の振幅を含めた明部のピーク位置を全て合成することで必要な範囲の合成光の明部のピーク位置を振幅を含めて算出する。算出された振幅を含めた合成光の明部のピーク位置のデータは、合成光の強度データと同等の特徴を備えている。よって、第2の測距方法においては、この合成光の明部のピーク位置のデータを合成光の強度データとみなすことができる。以上が第2の測距方法におけるフーリエ変換ステップに相当する。
【0041】
次に、演算部20はフーリエ変換ステップで算出された必要な範囲の合成光の強度データを確認して、強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報を記録する。または、強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報を記録する。または、強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報を記録する。これら記録された反射点の位置情報はいずれの手法をとっても全て位置O(s)の位置情報に相当する。以上が第2の測距方法における記録ステップに相当する。
【0042】
次に、演算部20は第1の測距方法の測定ステップと同様にして、基準点の位置情報と記録ステップで得られた位置O(s)の位置情報とから、基準点から被測定物6の測定点Sまでの距離Lを算出する。
【0043】
この第2の測距方法によれば、一部の実測した強度データから必要な範囲の強度データを演算により作成するため、第1の測距方法と比較して実測の測定範囲を狭めることができる。
【0044】
次に、本発明に係る第3の測距方法を説明する。尚、本発明に係る第3の測距方法は、予め合成光の標準強度データを取得しておき、この標準強度データを用いて位置情報の取得を行うものであり、レーザ測距装置50aの動作は基本的に同じである。
【0045】
ここで、標準強度データに関して説明する。上記の強度データ及び後述の第1強度データ、第2強度データは、参照光と測定光(第1測定光、第2測定光)との光路差の変化に伴って変化するものであるから、光路差が同じであれば得られる波形は全て同一となる。つまり、広範囲に亘って標準強度データを取得しておけば、上記の強度データは標準強度データのいずれかの部分と一致する。ただし、強度データ取得時の測定点の位置によって、強度データの位置情報と標準強度データの位置情報とは大きく乖離する。
【0046】
よって、第3の測距方法では任意の測定点において、第1の測距方法の取得ステップと同様にして、参照光と測定光との光路長が等しい等位位置を含んで前後所定範囲の反射点の位置と対応した標準強度データを予め取得する。このときの前後所定範囲とは、参照光と測定光との光路差が使用するレーザ光のコヒーレンス長を超えるまでとすることが好ましい。尚、等位位置では参照光と測定光との光路差が等しいため、この等位位置において標準強度データは最大強度のピークを取るとともにその前後で対称となる。よって、標準強度データにおける等位位置の特定はピーク強度と波形の対称性とから行うことができる。また、標準強度データにおける位置情報は絶対的な値を得ることを目的とするのではなく、等位位置からの距離を得るため相対的なものとして用いられる。さらに、標準強度データは一度取得してメモリ等に記録しておけば良い。
【0047】
本発明に係る第3の測距方法でも、第1の測距方法、第2の測距方法と同様にして先ず基準点の位置情報を取得する。
【0048】
次に、第2の測距方法における取得ステップと同様のステップを行い、干渉部分を所定の長さ含んだ強度データを取得する。以上が、第3の測距方法の取得ステップに相当する。
【0049】
次に、取得ステップで取得した強度データと標準強度データとを、波形のみに着目して両者が一致する範囲を特定する。前述のように、強度データと標準強度データとは位置情報と取得範囲とが異なるのみで基本的な波形は等しいから、取得範囲の狭い上記の強度データはより広範囲の標準強度データのどこかの部位と必ず一致する。次に、強度データと標準強度データとが一致する部位を合致させた上で、例えば、強度データの位置情報に連続するように標準強度データの位置情報を書き換えて対応させる。これにより、この位置情報の書き換えられた標準強度データは参照光と測定光との光路長が等しい位置O(s)に相当する位置を含んだ必要な範囲の合成光の強度データと同じものとなる。尚、参照光と測定光との光路長が等しい位置O(s)は、標準強度データの等位位置と対応する。
【0050】
演算部20は、例えばこの位置情報の書き換えられた標準強度データの位置O(s)に相当する等位位置の位置情報を算出して記録する。以上が、第3の測距方法の算出ステップに相当する。
【0051】
次に、演算部20は第1の測距方法の測定ステップと同様にして、基準点の位置情報と算出ステップで得られた位置O(s)の位置情報とから、基準点から被測定物6の測定点Sまでの距離Lを算出する。
【0052】
この第3の測距方法によれば、一部の実測した強度データと標準強度データとから必要な範囲の強度データを作成するため、第1の測距方法と比較して実測の測定範囲を狭めることができる。また、フーリエ変換を行う必要が無いため第2の測距方法と比較して、演算部20の負荷を軽減することができる。
【0053】
次に、本発明に係る第2の形態のレーザ測距装置50bを説明する。図3に示す本発明に係るレーザ測距装置50bは、第1の形態のレーザ測距装置50aに加えて、測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部28を有している。そして、測定光分割部28にて分割された第1測定光は第1出射口16aから被測定物6の側に出射する。また、測定光分割部28で分割された第2測定光はミラー8で反射され第2出射口16bから被測定物6の側に出射する。尚、第1測定光と第2測定光との装置内部における光路差(2×Ld)は、レーザ光のコヒーレンス長よりも長い距離とする。よって、距離Ldはレーザ光のコヒーレンス長の1/2よりも長い距離となる。
【0054】
次に、本発明に係る第4の測距方法をレーザ測距装置50bの動作とともに説明する。本発明に係るレーザ測距装置50bでは、予め第1測定光と第2測定光との装置内部における光路差の1/2の値である距離Ldを取得する必要がある。レーザ測距装置50bに好適な距離Ldの取得方法は後述する。尚、距離Ldの取得は測定毎に行う必要は無く、レーザ測距装置50bの出荷時等に行ってメモリ等に記録しておいても良い。
【0055】
本発明に係る第4の測距方法では、先ず、図3(a)に示すように、被測定物6をその第1測定点S1に第1測定光が、第2測定点S2に第2測定光が垂直に照射するように設置する。次に、反射部14の反射点を起点位置に位置させる。ここでの起点位置は分割点から第1出射口16aまでの距離と等しい反射点の位置とすることが好ましい。
【0056】
次に、レーザ照射手段10を動作させレーザ光を照射する。これにより、参照光は反射点で反射され受光部18に到達する。また、測定光分割部28で分割された第1測定光は第1出射口16aから出射した後、被測定物6の第1測定点S1で反射され、測定光分割部28、分割点を経由して受光部18に到達する。また、第2測定光は第2出射口16bから出射した後、被測定物6の第2測定点S2で反射され、ミラー8、測定光分割部28、分割点を経由して受光部18に到達する。受光部18は、参照光と第1測定光と第2測定光とを受光し、それらの光が合成もしくは干渉した合成光の強度を演算部20に出力する。そして、この状態を維持しながら位置情報取得部24が移動手段22を動作させ反射点を反射部14ごと参照光の光路長が増加する方向に移動させる。また、位置情報取得部24は反射点の位置情報を演算部20に出力する。
【0057】
ここで、反射点が移動して参照光と第1測定光との光路差がレーザ光のコヒーレンス長よりも短くなると参照光と第1測定光とが干渉する。そして、合成光の強度データには参照光と第1測定光とによる明部のピークが出現する。ここで、この参照光と第1測定光との干渉光を含む合成光の強度データを第1強度データとする。このとき、距離2×Ldはコヒーレンス長よりも長いから、この領域では第1測定光と参照光とは干渉するものの、光路差がコヒーレンス長を超えている第2測定光と参照光及び第2測定光と第1測定光とは干渉することはない。従って、第2測定光は一定強度の光として受光部18に受光され、第1強度データには第2測定光による干渉光が存在することはない。
【0058】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応した合成光の第1強度データを作成する。以上が第4の測距方法における第1取得ステップに相当する。
【0059】
そして、さらに反射点が移動して分割点から反射点までの距離が分割点から第1測定点S1までの距離と等しい位置O(s1)に到達すると、第1測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる。そして、この位置O(s1)において合成光の強度は最大ピーク強度をとる。また、第1強度データはこの位置O(s1)前後において対称性を示す。
【0060】
演算部20は第1取得ステップと並行して、得られた第1強度データをモニタし、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離、反射点を移動させて当該ピーク位置を過ぎた所定範囲の第1強度データを取得する。次に、演算部20はピーク位置前後の第1強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置(=位置O(s1))を第1位置情報として記録する。
【0061】
このとき、第1の測距方法と同様、最大強度のピークがその他のピークの強度と十分に判別可能な値を有している場合、判定基準を最適化して最大強度のピークを示す反射点の位置情報を第1位置情報として記録しても良い。また、演算部20が第1強度データを随時モニタして、前後で対称性が確認されたピークの位置情報を第1位置情報として記録するようにしても良い。以上が第4の測距方法における第1記録ステップに相当する。
【0062】
次に、さらに反射点が移動して参照光と第1測定光との光路差がレーザ光のコヒーレンス長よりも長くなると参照光と第1測定光とは干渉しなくなり合成光の明部のピークは消滅する。そしてさらに、反射点が移動すると今度は参照光と第2測定光との光路差がレーザ光のコヒーレンス長よりも短くなり、参照光と第2測定光とが干渉する。そして、合成光の強度データには参照光と第2測定光とによる明部のピークが出現する。ここで、この参照光と第2測定光との干渉光を含む合成光の強度データを第2強度データとする。このとき、距離2×Ldはコヒーレンス長よりも長いから、この領域では第2測定光と参照光とは干渉するものの、光路差がコヒーレンス長を超えている第1測定光と参照光及び第2測定光と第1測定光とは干渉することはない。従って、第1測定光は一定強度の光として受光部18に受光され、第2強度データには第1測定光による干渉光が存在することはない。
【0063】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応した合成光の第2強度データを作成する。以上が第4の測距方法における第2取得ステップに相当する。
【0064】
そして、反射点がさらに移動して分割点から反射点までの距離が分割点→測定光分割部28→ミラー8→第2測定点S2までの距離と等しい位置O(s2)に到達すると、今度は第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる。そして、この位置O(s2)において合成光の強度は最大ピーク強度をとる。また、第2強度データはこの位置O(s2)前後において対称性を示す。
【0065】
演算部20は第2取得ステップと並行して、得られた第2強度データをモニタし、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離、反射点を移動させて当該ピーク位置を過ぎた所定範囲の第2強度データを取得する。次に、演算部20はピーク位置前後の第2強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置(=位置O(s2))を第2位置情報として記録する。
【0066】
このとき、最大強度のピークがその他のピークの強度と十分に判別可能な値を有している場合、判定基準を最適化して最大強度のピークを示す反射点の位置情報を位置O(s2)の位置情報として記録しても良い。また、演算部20が第2強度データを随時モニタして、前後で対称性が確認されたピークの位置情報を位置O(s2)の位置情報として記録するようにしても良い。以上が第4の測距方法における第2記録ステップに相当する。
【0067】
次に、演算部20は、第1位置情報と第2位置情報と予め取得されている距離Ldの値とから、被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを算出する。距離Lの算出方法は、例えば、第1位置情報の値をPs1、第2位置情報をPs2とし、反射部14が分割部12から遠ざかるにつれ位置情報の値が増加する場合、
L=Ps2−Ps1−Ld
となる。以上が第4の測距方法の測定ステップに相当する。
【0068】
次に、第1測定光と第2測定光との装置内部における距離Ldを取得する方法を説明する。尚、以下に示す距離Ldの取得方法は、基本的に本発明に係る第4の測距方法及びレーザ測距装置50bの動作と同等である。また、以下に示す距離Ldの取得方法は本発明に係るレーザ測距装置50bに好適なものであるが、必ずしもこの方法を用いる必要は無い。
【0069】
先ず、図3(b)に示すように、表面が平滑な平板5を、その第1測定点S1’に第1測定光が、第2測定点S2’に第2測定光が垂直に照射するように設置する。このとき、第1出射口16aから第1測定点S1’までの距離と、第2出射口16bから第2測定点S2’までの距離とを等しくする。次に、反射部14の反射点を分割点から第1出射口16aまでの距離と等しい起点位置よりも参照光の光路長が若干短くなる位置に位置させる。
【0070】
そして、上記の第1取得ステップと第1記録ステップを行い、分割点から平板5の第1測定点S1’までの距離と分割点から反射点までの距離とが等しくなる反射点の位置O(s1’)の第1位置情報を記録する。次に、上記の第2取得ステップと第2記録ステップを行い、分割点→測定光分割部28→ミラー8→第2測定点S2’までの距離と分割点から反射点までの距離とが等しくなる反射点の位置O(s2’)の第2位置情報を記録する。
【0071】
次に、演算部20は、得られた第1位置情報と第2位置情報とから、距離Ldを算出する。距離Ldの算出方法は、例えば、第1位置情報の値をPs1’、第2位置情報をPs2’とし、反射部14が分割部12から遠ざかるにつれ位置情報の値が増加する場合、
Ld=Ps2’−Ps1’
となる。
【0072】
次に、本発明に係る第5の測距方法を説明する。尚、本発明に係る第5の測距方法は演算部20による強度データの取得を第2の測距方法と同様の手法で行うのみで、レーザ測距装置50bの動作は基本的に同じである。
【0073】
先ず、第4の測距方法と同様、距離Ldを取得する。距離Ldの取得は、第4の測距方法と同様に行っても良いし、以下の第5の測距方法に準じて行っても、標準強度データを用いた手法により行っても良い。
【0074】
次に、第4の測距方法の第1取得ステップと同様にして合成光の第1強度データを取得する。この際、第5の測距方法の第1取得ステップでは、第1強度データを部分的に取得すれば良い。この部分の長さは後述のフーリエ変換により干渉光の周期、振幅、位相が十分に算出可能な長さである。以上が第5の測距方法における第1取得ステップに相当する。
【0075】
次に、演算部20は、第1取得ステップで取得された部分的な第1強度データにフーリエ変換処理を施す。これにより、合成光のうち参照光と第1測定光による干渉光を構成する個々の干渉光の周期、振幅、位相が全て取得される。尚、第2測定光の強度はフーリエ変換により定数となる。
【0076】
次に、演算部20は所得された個々の干渉光の周期、振幅、位相から位置O(s1)を特定するに必要な範囲に亘って個々の干渉光の振幅を含む明部のピーク位置を算出する。次に、算出された個々の干渉光の振幅を含めた明部のピーク位置を全て合成することで必要な範囲の合成光の明部のピーク位置を振幅を含めて算出する。第5の測距方法においては、この合成光の明部のピーク位置のデータを合成光の第1強度データとみなす。以上が第5の測距方法における第1フーリエ変換ステップに相当する。
【0077】
次に、演算部20は第1フーリエ変換ステップで算出された必要な範囲の第1強度データを確認して、第1強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報を第1位置情報として記録する。または、第1強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報を第1位置情報として記録する。または、第1強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報を第1位置情報として記録する。これら記録された第1位置情報はいずれの手法をとっても全て位置O(s1)の位置情報に相当する。以上が第5の測距方法における第1記録ステップに相当する。
【0078】
次に、第4の測距方法の第2取得ステップと同様にして合成光の第2強度データを取得する。このときも、第2強度データを後述のフーリエ変換により干渉光の周期、振幅、位相が十分に算出可能な範囲で部分的に取得すれば良い。以上が第5の測距方法における第2取得ステップに相当する。
【0079】
次に、演算部20は、第2取得ステップで取得された部分的な第2強度データにフーリエ変換処理を施す。これにより、合成光のうち参照光と第2測定光による干渉光を構成する個々の干渉光の周期、振幅、位相が全て取得される。尚、第1測定光の強度はフーリエ変換により定数となる。
【0080】
次に、演算部20は所得された個々の干渉光の周期、振幅、位相から位置O(s2)を特定するに必要な範囲に亘って個々の干渉光の振幅を含む明部のピーク位置を算出する。次に、算出された個々の干渉光の振幅を含めた明部のピーク位置を全て合成することで必要な範囲の合成光の明部のピーク位置を振幅を含めて算出する。第5の測距方法においては、この合成光の明部のピーク位置のデータを合成光の第2強度データとみなす。以上が第5の測距方法における第2フーリエ変換ステップに相当する。
【0081】
次に、演算部20は第2フーリエ変換ステップで算出された必要な範囲の第2強度データを確認して、第2強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報を第2位置情報として記録する。または、第2強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報を第2位置情報として記録する。または、第2強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報を第2位置情報として記録する。これら記録された第2位置情報はいずれの手法をとっても全て位置O(s2)の位置情報に相当する。以上が第5の測距方法における第2記録ステップに相当する。
【0082】
次に、演算部20は第4の測距方法の測定ステップと同様にして、第1記録ステップで得られた第1位置情報と第2記録ステップで得られた第2位置情報と距離Ldとから、被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを算出する。
【0083】
この第5の測距方法によれば、第2の測距方法と同様、一部の実測した強度データから必要な範囲の強度データを演算により作成するため、第4の測距方法と比較して実測の測定範囲を狭めることができる。
【0084】
次に、本発明に係る第6の測距方法を説明する。尚、本発明に係る第6の測距方法は、第1位置情報、第2位置情報の取得を第3の測距方法と同様に標準強度データを用いて行うものであり、レーザ測距装置50bの動作は基本的に同じである。
【0085】
先ず、第3の測距方法と同様にして、任意の測定点で予め標準強度データを取得する。前述のようにレーザ照射手段10が同一であれば標準強度データの波形は全て同じであり、また標準強度データの位置情報は相対的なものとして使用するから、標準強度データは第1測定光と参照光とが干渉したものでも、第2測定光と参照光とが干渉したものでも良い。
【0086】
次に、第4の測距方法、第5の測距方法と同様にして距離Ldの値を取得する。
【0087】
次に、第5の測距方法における第1取得ステップと同様にして、干渉部分を所定の長さ含んだ第1強度データを取得する。以上が、第6の測距方法の第1取得ステップに相当する。
【0088】
次に、第1強度データと標準強度データとを、波形のみに着目して両者が一致する範囲を特定する。次に、第1強度データと標準強度データとが一致する部位を合致させた上で、例えば、第1強度データの位置情報に連続するように標準強度データの位置情報を書き換えて対応させる。これにより、この位置情報の書き換えられた標準強度データは参照光と第1測定光との光路長が等しい位置O(s1)に相当する位置を含んだ必要な範囲の第1強度データと同じものとなる。尚、参照光と第1測定光との光路長が等しい位置O(s1)は、標準強度データの等位位置と対応する。
【0089】
演算部20は、例えばこの位置情報の書き換えられた標準強度データの位置O(s1)に相当する等位位置の位置情報を算出して第1位置情報として記録する。以上が、第6の測距方法の第1算出ステップに相当する。
【0090】
次に、第5の測距方法における第2取得ステップと同様にして、干渉部分を所定の長さ含んだ第2強度データを取得する。以上が、第6の測距方法の第2取得ステップに相当する。
【0091】
次に、第2強度データと標準強度データとを、波形のみに着目して両者が一致する範囲を特定する。次に、第2強度データと標準強度データとが一致する部位を合致させた上で、例えば、第2強度データの位置情報に連続するように標準強度データの位置情報を書き換えて対応させる。これにより、この位置情報の書き換えられた標準強度データは参照光と第2測定光との光路長が等しい位置O(s2)に相当する位置を含んだ必要な範囲の第2強度データと同じものとなる。尚、参照光と第2測定光との光路長が等しい位置O(s2)は、標準強度データの等位位置と対応する。
【0092】
演算部20は、例えばこの位置情報の書き換えられた標準強度データの位置O(s2)に相当する等位位置の位置情報を算出して第2位置情報として記録する。以上が、第6の測距方法の第2算出ステップに相当する。
【0093】
次に、演算部20は第4の測距方法の測定ステップと同様にして、第1算出ステップで得られた第1位置情報と第2算出ステップで得られた第2位置情報と距離Ldとから、被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを算出する。
【0094】
この第6の測距方法によれば、一部の実測した強度データと標準強度データとから必要な範囲の強度データを作成するため、第4の測距方法と比較して実測の測定範囲を狭めることができる。また、フーリエ変換を行う必要が無いため第5の測距方法と比較して、演算部20の負荷を軽減することができる。
【0095】
次に、図4に本発明に係る第3の形態のレーザ測距装置50cを示す。第3の形態のレーザ測距装置50cは被測定物6の一面側に位置する第1測定点S1と、第1測定点S1の裏面に位置する第2測定点S2との間の厚み方向の距離を測距することで、被測定物6の厚みtを測距するものである。従って、その構成は第1測定光と第2測定光との光学経路が異なる以外、第2の形態のレーザ測距装置50bと基本的に同等である。
【0096】
そして、レーザ測距装置50cにおいては、測定光分割部28にて分割された第1測定光は、ミラー8a、ミラー8b、ミラー8cで反射され第1出射口16aから第2出射口16bに向けて出射する。また、測定光分割部28で分割された第2測定光はミラー8d、ミラー8eで反射され第2出射口16bから第1出射口16aに向けて出射する。尚、第1出射口16aと第2出射口16bとは対向する位置に設けられ、被測定物6はこの第1出射口16aと第2出射口16bとの間に配置される。そして、図4(a)に示すように、第1出射口16aと第2出射口16bとの間に何も存在しない無測定物状態の場合には、第1出射口16aから出射した第1測定光は、第2出射口16bから再度レーザ測距装置50c内に入射してミラー8e、ミラー8dで反射され測定光分割部28に帰還する。また、第2出射口16bから出射した第2測定光は第1出射口16aから再度レーザ測距装置50c内に入射してミラー8c、ミラー8b、ミラー8aで反射され測定光分割部28に帰還する。よって、無測定物状態においては第1測定光と第2測定光とは同じ光路を互いに逆方向に進んで測定光分割部28に帰還することとなる。従って、このときの第1測定光と第2測定光との光路長は等しくなる。尚、測定光分割部28から第1出射口16aまでの第1測定光の光路長と測定光分割部28から第2出射口16bまでの第2測定光の光路長とは完全に等しくする必要は無いが、略同等として無測定物状態における第1測定光及び第2測定光の測定光分割部28から測定光分割部28に帰還するまでの光路(即ち、第1測定光における測定光分割部28→ミラー8a→ミラー8b→ミラー8c→ミラー8e→ミラー8d→測定光分割部28までの光路)の中間地点P0を、第1出射口16aと第2出射口16bとの間の中間位置近傍とすることが好ましい。
【0097】
次に、本発明に係る第7の測距方法をレーザ測距装置50cの動作とともに説明する。本発明に係る第7の測距方法では、先ず、第1測定光及び第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる反射点の位置(原点位置O)を取得して原点位置情報として記録する原点取得ステップを行う。尚、原点位置情報の取得は以下のようにして行うことが好ましい。
【0098】
先ず、無測定物状態で反射部14の反射点を起点位置に位置させる。ここでの起点位置は分割点から中間地点P0までの測定光の光学経路よりも若干長くなるような反射点の位置とすることが好ましい。
【0099】
次に、この状態でレーザ照射手段10を動作させレーザ光を照射する。これにより、参照光は分割点→反射点→分割点→受光部18の光路をとって受光部18に到達する。また、第1測定光は分割点→測定光分割部28→ミラー8a→ミラー8b→ミラー8c→第1出射口16a→第2出射口16b→ミラー8e→ミラー8d→測定光分割部28→分割点→受光部18の光路をとって受光部18に到達する。また、第2測定光は分割点→測定光分割部28→ミラー8d→ミラー8e→第2出射口16b→第1出射口16a→ミラー8c→ミラー8b→ミラー8a→測定光分割部28→分割点→受光部18の光路をとって受光部18に到達する。
【0100】
そして、この状態を維持しながら位置情報取得部24が移動手段22を動作させ反射点を反射部14ごと参照光の光路長が減少する方向に移動させる。また、位置情報取得部24は反射点の位置情報を演算部20に出力する。
【0101】
反射点が移動して参照光の光路長と第1測定光及び第2測定光の光路長とが等しくなる原点位置Oに到達すると、この原点位置Oでは参照光と第1測定光とによる干渉光と参照光と第2測定光とによる干渉光とが明部のピークを取る。よって、合成光の強度はこの原点位置Oにおいて最大ピーク強度をとる。また、強度データはこの原点位置Oの前後において対称性を示す。尚、原点取得ステップにおける最大ピーク強度と後述の第1記録ステップ、第2記録ステップにおける最大ピーク強度とは値が異なり、原点取得ステップにおける最大ピーク強度のほうが大きい。よって、原点取得ステップにおける判定基準と第1記録ステップ、第2記録ステップにおける判定基準とは異なる。
【0102】
演算部20は合成光の強度データをモニタして、原点取得ステップの判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離、反射点を移動させて当該ピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データを取得する。次に、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置を原点位置Oの原点位置情報として記録する。以上が、原点取得ステップに相当する。尚、参照光の光路上の原点位置Oは、図4中の測定光の光路上では中間地点P0と対応する。
【0103】
上記の原点位置情報の取得方法は最も高精度であり本発明に係るレーザ測距装置50cに好適なものであるが、必ずしもこの方法を用いる必要は無い。尚、原点位置情報の取得は測定毎に行うことが好ましいが、さほど高精度の測定値を必要としない場合にはこの限りではない。
【0104】
次に、図4(b)に示すように被測定物6を第1出射口16aと第2出射口16bとの間に配置する。このとき、被測定物6を中間地点P0と重なり、且つ中間地点P0から第1測定点S1までの距離L1と中間地点P0から第2測定点S2までの距離L2との差がレーザ光のコヒーレンス長の1/2の値よりも長い距離となるように配置することが好ましい。
【0105】
ここで、被測定物6を中間地点P0と重ならないように配置すると、測定時の第1測定光の光路長もしくは第2測定光の光路長のいずれか一方が原点位置における参照光の光路長より長くなり他方が短くなる。このような場合、本願の測距方法においては移動手段22を測定中に逆動作させて参照光の光路長を増加させる方向と減少させる方向とに移動させる必要が生じる。移動手段22であるモータ等の機械は、一定方向に動作させる場合においては位置情報と実際の位置とに大きな差は生じないが、逆動作させるとバックラッシュが発生し位置情報と実際の位置とに誤差が生じる。被測定物6を中間地点P0と重なるように配置すれば、測定時の第1測定光の光路長と第2測定光の光路長とはいずれも原点位置における参照光の光路長より短くなり、反射部14は原点位置から参照光の光路長を減少させる方向のみに移動すればよく、移動手段22が逆動作する必要は無い。よって、高精度の厚み測定を行うことができる。
【0106】
また、距離L1と距離L2との差をコヒーレンス長の1/2よりも長い距離になるように配置すれば、後述の第1測定光による第1測定点S1の測定時には第2測定光は干渉せず、また第2測定光による第2測定点S2の測定時には第1測定光は干渉することがない。従って、レーザ測距装置50cによる被測定物6の厚みtの測距を効率良く行うことができる。尚、被測定物6の厚みtがコヒーレンス長の1/2よりも薄く上記の条件を満たすことができない場合、被測定物6を中間地点P0からずらして第1測定光と第2測定光との光路差をコヒーレンス長の値以上とする。この場合、移動手段22は逆動作が必要でバックラッシュに伴う誤差が生じるが、移動手段22に高精度のアクチュエータを用いればバックラッシュを含む繰り返し位置精度は約20nm程度であり、要求される測定精度によっては十分に使用可能である。
【0107】
尚、レーザ測距装置50cは測定光の光学経路を図5に示すようにしても良い。この構成によれば、装置内部における第1測定光と第2測定光との光路差が既にコヒーレンス長よりも長く設定されているから、被測定物6の設置位置によらず被測定物6の厚みtの測距を行うことができる。ただしこの場合、移動手段22の逆動作が必要となる。
【0108】
次に、レーザ照射手段10を動作させレーザ光を照射する。これにより、参照光は反射点で反射され受光部18に到達する。また、測定光分割部28で分割された第1測定光は第1出射口16aから出射した後、被測定物6の第1測定点S1で反射され、ミラー8c、ミラー8b、ミラー8a、測定光分割部28、分割点を経由して受光部18に到達する。また、第2測定光は第2出射口16bから出射した後、被測定物6の第2測定点S2で反射され、ミラー8e、ミラー8d、測定光分割部28、分割点を経由して受光部18に到達する。受光部18は、参照光と第1測定光と第2測定光とを受光し、それらの光が合成もしくは干渉した合成光の強度を演算部20に出力する。
【0109】
そして、この状態を維持しながら位置情報取得部24が移動手段22を動作させ反射点を反射部14ごと参照光の光路長が減少する方向に移動させる。
【0110】
ここで、反射点が移動して参照光と第1測定光との光路差がレーザ光のコヒーレンス長よりも短くなると参照光と第1測定光とが干渉して明部のピークを有する第1強度データとなる。演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、この第1強度データを取得する。以上が第7の測距方法における第1取得ステップに相当する。
【0111】
そして、反射点をさらに移動して分割点から反射点までの距離が分割点から第1測定点S1までの第1測定光の片道分の光路長と等しい位置O(s1)に到達すると、第1測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる。そして、この位置O(s1)において合成光の強度は最大ピーク強度をとる。また、第1強度データはこの位置O(s1)前後において対称性を示す。
【0112】
演算部20は第1取得ステップと並行して、得られた第1強度データをモニタし、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離、反射点を移動させて当該ピーク位置を過ぎた所定範囲の第1強度データを取得する。次に、演算部20はピーク位置前後の第1強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置(=位置O(s1))を第1位置情報として記録する。
【0113】
また、最大強度のピークがその他のピークの強度と十分に判別可能な値を有している場合、判定基準を最適化して最大強度のピークを示す反射点の位置情報を第1位置情報として記録しても良い。また、演算部20が第1強度データを随時モニタして、前後で対称性が確認されたピークの位置情報を第1位置情報として記録するようにしても良い。以上が第7の測距方法における第1記録ステップに相当する。尚ここでの、原点位置Oから位置O(s1)までの距離は距離L1に相当する。
【0114】
次に、さらに反射点が移動して参照光と第1測定光との光路差がレーザ光のコヒーレンス長よりも長くなると参照光と第1測定光とは干渉しなくなり合成光の明部のピークは消滅する。そしてさらに、反射点が移動すると今度は参照光と第2測定光との光路差がレーザ光のコヒーレンス長よりも短くなり、参照光と第2測定光とが干渉して明部のピークを有する第2強度データとなる。演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、この第2強度データを取得する。以上が第7の測距方法における第2取得ステップに相当する。
【0115】
そして、反射点がさらに移動して分割点から反射点までの距離が分割点から第2測定点S2までの第2測定光の片道分の光路長と等しい位置O(s2)に到達すると、今度は第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる。そして、この位置O(s2)において合成光の強度は最大ピーク強度をとる。また、第2強度データはこの位置O(s2)前後において対称性を示す。
【0116】
演算部20は第2取得ステップと並行して、第2強度データをモニタし、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離、反射点を移動させて当該ピーク位置を過ぎた所定範囲の第2強度データを取得する。次に、演算部20はピーク位置前後の第2強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置(=位置O(s2))を第2位置情報として記録する。
【0117】
また、最大強度のピークがその他のピークの強度と十分に判別可能な値を有している場合、判定基準を最適化して最大強度のピークを示す反射点の位置情報を第2位置情報として記録しても良い。また、演算部20が第2強度データを随時モニタして、前後で対称性が確認されたピークの位置情報を第2位置情報として記録するようにしても良い。以上が第7の測距方法における第2記録ステップに相当する。尚ここでの、原点位置Oから位置O(s2)までの距離は距離L2に相当する。
【0118】
次に、演算部20は、第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とから、被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離、即ち被測定物6の厚みtを算出する。厚みtの算出方法は、例えば、原点位置情報をPo、第1位置情報の値をPs1、第2位置情報をPs2とし、反射部14が分割部12から遠ざかるにつれ位置情報の値が増加する場合、
t=(Po−Ps1)+(Po−Ps2)=2Po−Ps1−Ps2
となる。以上が第7の測距方法の測定ステップに相当する。
【0119】
次に、本発明に係る第8の測距方法を説明する。尚、本発明に係る第8の測距方法は演算部20による強度データの取得を第2の測距方法と同様の手法で行うのみで、レーザ測距装置50cの動作は基本的に同じである。
【0120】
先ず、原点取得ステップを行い原点位置情報を取得する。原点位置情報の取得は、第7の測距方法と同様に行っても良いし、以下の第8の測距方法に準じて行っても、標準強度データを用いた手法により行っても良い。
【0121】
次に、第7の測距方法の第1取得ステップと同様にして合成光の第1強度データを取得する。ここで取得する第1強度データは、後述のフーリエ変換ステップにより干渉光の周期、振幅、位相が十分に算出可能な範囲の部分的なもので良い。以上が第8の測距方法における第1取得ステップに相当する。
【0122】
次に、演算部20は、第1取得ステップで取得された部分的な第1強度データに対し、第5の測距方法における第1フーリエ変換ステップと同様のステップを行う。これにより、必要な範囲の合成光の第1強度データが算出される。
【0123】
次に、演算部20は第5の測距方法における第1記録ステップと同様のステップを行う。これにより、位置O(s1)の位置情報が記録される。
【0124】
次に、第7の測距方法の第2取得ステップと同様にして合成光の第2強度データを取得する。ここで取得する第2強度データも、後述のフーリエ変換ステップにより干渉光の周期、振幅、位相が十分に算出可能な範囲の部分的なもので良い。以上が第8の測距方法における第2取得ステップに相当する。
【0125】
次に、演算部20は、第2取得ステップで取得された部分的な第2強度データに対し、第5の測距方法における第2フーリエ変換ステップと同様のステップを行う。これにより、必要な範囲の合成光の第2強度データが算出される。
【0126】
次に、演算部20は第5の測距方法における第2記録ステップと同様のステップを行う。これにより、位置O(s2)の位置情報が記録される。
【0127】
次に、演算部20は第7の測距方法の測定ステップと同様にして、第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とから、被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離、即ち被測定物6の厚みtを算出する。
【0128】
この第8の測距方法によれば、第2の測距方法と同様、一部の実測した強度データから必要な範囲の強度データを演算により作成するため、第7の測距方法と比較して実測の測定範囲を狭めることができる。
【0129】
次に、本発明に係る第9の測距方法を説明する。尚、本発明に係る第9の測距方法は、第1位置情報、第2位置情報の取得を第3の測距方法と同様に標準強度データを用いて行うものであり、レーザ測距装置50cの動作は基本的に同じである。
【0130】
先ず、第3の測距方法と同様にして、任意の測定点で予め標準強度データを取得する。尚、標準強度データは第1測定光と参照光とが干渉したものでも、第2測定光と参照光とが干渉したものでも良い。
【0131】
次に、第7の測距方法、第8の測距方法と同様にして原点位置情報を取得する。
【0132】
次に、第8の測距方法における第1取得ステップと同様にして、干渉部分を所定の長さ含んだ第1強度データを取得する。以上が、第6の測距方法の第1取得ステップに相当する。
【0133】
次に、第6の測距方法の第1算出ステップと同様、第1強度データと標準強度データとを、波形のみに着目して両者が一致する範囲を特定する。次に、第1強度データと標準強度データとが一致する部位を合致させた上で、例えば、第1強度データの位置情報に連続するように標準強度データの位置情報を書き換えて対応させる。そして、演算部20は、例えばこの位置情報の書き換えられた標準強度データの位置O(s1)に相当する等位位置の位置情報を算出して第1位置情報として記録する。以上が、第9の測距方法の第1算出ステップに相当する。
【0134】
次に、第8の測距方法における第2取得ステップと同様にして、干渉部分を所定の長さ含んだ第2強度データを取得する。以上が、第9の測距方法の第2取得ステップに相当する。
【0135】
次に、第6の測距方法の第2算出ステップと同様、第2強度データと標準強度データとを、波形のみに着目して両者が一致する範囲を特定する。次に、第2強度データと標準強度データとが一致する部位を合致させた上で、例えば、第2強度データの位置情報に連続するように標準強度データの位置情報を書き換えて対応させる。そして、演算部20は、例えばこの位置情報の書き換えられた標準強度データの位置O(s2)に相当する等位位置の位置情報を算出して第2位置情報として記録する。以上が、第6の測距方法の第2算出ステップに相当する。
【0136】
次に、演算部20は第7の測距方法の測定ステップと同様にして、第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とから、被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離、即ち被測定物6の厚みtを算出する。
【0137】
この第9の測距方法によれば、一部の実測した強度データと標準強度データとから必要な範囲の強度データを作成するため、第7の測距方法と比較して実測の測定範囲を狭めることができる。また、フーリエ変換を行う必要が無いため第8の測距方法と比較して、演算部20の負荷を軽減することができる。
【0138】
以上のように、本発明に係る測距方法及びレーザ測距装置は、波長の異なる複数のレーザ照射手段を用いるのではなく、スペクトル線幅が比較的広く多縦モード発振するレーザ照射手段を利用して測距を行う。このため、レーザ照射手段が一つで良く、レーザ測距装置の光学系の作製をより容易に行うことができる。よって、レーザ測距装置の製造コストを削減することができる。また、縦モードのレーザ光が複数混在したレーザ光であれば特に周波数分布は問わないため、特殊なレーザ照射手段を必ずしも必要とせず、安価なレーザ照射手段を使用することができる。さらに、本発明に係る第2、第5、第8の測距方法は、一部の実測した強度データから必要な範囲の強度データを演算により作成するため、実測の測定範囲を狭めることができる。これにより、実測にかかる測定時間を短縮することができる。またさらに、本発明に係る第3、第6、第9の測距方法は、一部の実測した強度データと標準強度データとから必要な範囲の強度データを作成することに加え、フーリエ変換を行う必要が無いため実測にかかる測定時間を短縮しながら演算部20の負荷を軽減することができる。
【0139】
尚、上記で示したレーザ測距装置50a〜50cは本発明に好適な例であるから、参照光、測定光、第1測定光、第2測定光の光路は部分的に光ファイバで置き換えても良い他、各部の構成及び各光路等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0140】
6 被測定物
10 レーザ照射手段
12 分割部
14 反射部
16a 第1出射口
16b 第2出射口
18 受光部
20 演算部
24 位置情報取得部
28 測定光分割部
50a〜50c レーザ測距装置
S 測定点
S1 第1測定点
S2 第2測定点
L 距離
t (被測定物の)厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を参照光と測定光に分割し、
参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに測定光を被測定物の測定点で反射させ、
反射点で反射した参照光と測定点で反射した測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物の測定点までの距離を測定する測距方法であって、
反射点の位置を移動させながら前記レーザ光を照射して反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する取得ステップと、
当該強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報、もしくは、当該強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報、もしくは、当該強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報、を記録する記録ステップと、
当該位置情報と予め取得されている基準点の位置情報とに基づいて基準点から測定点までの距離を算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法。
【請求項2】
取得ステップで取得した合成光の強度データをフーリエ変換して、合成光に含まれるそれぞれ異なる周波数のレーザ光の個々の干渉光の振幅、位相、周期を取得し、さらに取得した個々の干渉光の振幅、位相、周期に基づいて個々の干渉光の必要な範囲の強度データを作成し、作成した個々の干渉光の必要な範囲の強度データを全て合成することで必要な範囲の合成光の強度データを算出するフーリエ変換ステップをさらに有し、
記録ステップがフーリエ変換ステップで算出された強度データを基に反射点の位置情報を記録することを特徴とする請求項1記載の測距方法。
【請求項3】
スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を参照光と測定光に分割し、
測定光をさらに第1測定光と第2測定光とに分割し、
参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに第1測定光を被測定物の第1測定点で反射させ、さらに第2測定光を被測定物の第2測定点で反射させ、
反射点で反射した参照光と第1測定点で反射した第1測定光と第2測定点で反射した第2測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物の第1測定点と第2測定点との間の厚み方向の距離を測定する測距方法であって、
反射点の位置を移動させながら前記レーザ光を照射して反射点の位置と対応し参照光と第1測定光との干渉光を含む合成光の第1強度データを取得する第1取得ステップと、
第1強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報、もしくは、第1強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報、もしくは、第1強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報、を第1位置情報として記録する第1記録ステップと、
反射点の位置をさらに移動して反射点の位置と対応し参照光と第2測定光との干渉光を含む合成光の第2強度データを取得する第2取得ステップと、
第2強度データが最大強度のピークを取る反射点の位置情報、もしくは、第2強度データがその前後で対称性を示す反射点の位置情報、もしくは、第2強度データが略最大強度のピークを取り且つその前後で対称性を示す反射点の位置情報、を第2位置情報として記録する第2記録ステップと、
第1位置情報と第2位置情報とに基づいて第1測定点と第2測定点との間の厚み方向の距離を算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法。
【請求項4】
第1取得ステップで取得した合成光の部分的な第1強度データをフーリエ変換して、合成光に含まれるそれぞれ異なる周波数のレーザ光の個々の干渉光の振幅、位相、周期を取得し、さらに取得した個々の干渉光の振幅、位相、周期に基づいて個々の干渉光の必要な範囲の強度データを作成し、作成した個々の干渉光の必要な範囲の強度データを全て合成することで必要な範囲の合成光の第1強度データを算出する第1フーリエ変換ステップと、
第2取得ステップで取得した合成光の部分的な第2強度データをフーリエ変換して、合成光に含まれるそれぞれ異なる周波数のレーザ光の個々の干渉光の振幅、位相、周期を取得し、さらに取得した個々の干渉光の振幅、位相、周期に基づいて個々の干渉光の必要な範囲の強度データを作成し、作成した個々の干渉光の必要な範囲の強度データを全て合成することで必要な範囲の合成光の第2強度データを算出する第2フーリエ変換ステップと、をさらに有し、
第1記録ステップが第1フーリエ変換ステップで算出された第1強度データを基に第1位置情報を記録するとともに、第2記録ステップが第2フーリエ変換ステップで算出された第2強度データを基に第2位置情報を記録することを特徴とする請求項3記載の測距方法。
【請求項5】
無測定物状態で第1測定光の光路長及び第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる反射点の位置を原点位置情報として記録する原点取得ステップをさらに有し、
第1測定光を被測定物の第1測定点で反射させるとともに第2測定光を第1測定点の裏面に位置する第2測定点で反射させ、
測定ステップが第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とに基づいて被測定物の厚みを算出することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の測距方法。
【請求項6】
スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を参照光と測定光に分割し、
参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに測定光を被測定物の測定点で反射させ、
反射点で反射した参照光と測定点で反射した測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物の測定点までの距離を測定する測距方法であって、
予め参照光と測定光との光路長が等しい等位位置を含んで前後所定範囲の合成光の標準強度データを取得した上で、
反射点の位置を移動させながら前記レーザ光を照射して反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する取得ステップと、
当該強度データと標準強度データとが一致する範囲を特定して両者を合致させた上で標準強度データの位置情報と強度データの位置情報とを対応させ、参照光と測定光との光路長が等しくなる位置の位置情報を等位位置の位置情報から算出する算出ステップと、
算出ステップで算出された位置情報と予め取得されている基準点の位置情報とに基づいて基準点から測定点までの距離を算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法。
【請求項7】
スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を参照光と測定光に分割し、
測定光をさらに第1測定光と第2測定光とに分割し、
参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに第1測定光を被測定物の第1測定点で反射させ、さらに第2測定光を被測定物の第2測定点で反射させ、
反射点で反射した参照光と第1測定点で反射した第1測定光と第2測定点で反射した第2測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物の第1測定点と第2測定点との間の厚み方向の距離を測定する測距方法であって、
予め参照光と測定光との光路長が等しい等位位置を含んで前後所定範囲の合成光の標準強度データを取得した上で、
反射点の位置を移動させながら前記レーザ光を照射して反射点の位置と対応し参照光と第1測定光との干渉光を含む合成光の第1強度データを取得する第1取得ステップと、
第1取得ステップで取得した第1強度データと標準強度データとが一致する範囲を特定して両者を合致させた上で標準強度データの位置情報と第1強度データの位置情報とを対応させ、参照光と第1測定光との光路長が等しくなる第1位置情報を等位位置の位置情報から算出する第1算出ステップと、
反射点の位置をさらに移動して反射点の位置と対応し参照光と第2測定光との干渉光を含む合成光の第2強度データを取得する第2取得ステップと、
第2取得ステップで取得した第2強度データと標準強度データとが一致する範囲を特定して両者を合致させた上で標準強度データの位置情報と第2強度データの位置情報とを対応させ、参照光と第2測定光との光路長が等しくなる第2位置情報を等位位置の位置情報から算出する第2算出ステップと、
第1位置情報と第2位置情報とに基づいて第1測定点と第2測定点との間の厚み方向の距離を算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法。
【請求項8】
無測定物状態で第1測定光の光路長及び第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる反射点の位置を原点位置情報として記録する原点取得ステップをさらに有し、
第1測定光を被測定物の第1測定点で反射させるとともに第2測定光を第1測定点の裏面に位置する第2測定点で反射させ、
測定ステップが第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とに基づいて被測定物の厚みを算出することを特徴とする請求項7記載の測距方法。
【請求項9】
スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を出射するレーザ照射手段と、
当該レーザ照射手段から出射したレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部と、
前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部と、
当該反射部の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部と、
反射部で反射した参照光と被測定物の測定点で反射した測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部と、
当該強度のデータと前記位置情報取得部からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部と、を備え、
請求項1又は請求項2又は請求項6記載の測距方法を行い、予め設定されている基準点から測定点までの距離を測距することを特徴とするレーザ測距装置。
【請求項10】
スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を出射するレーザ照射手段と、
当該レーザ照射手段から出射したレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部と、
前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部と、
当該反射部の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部と、
第1測定光を出射する第1出射口と第2測定光を出射する第2出射口と、
反射部で反射した参照光と被測定物の第1測定点で反射した第1測定光と被測定物の第2測定点で反射した第2測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部と、
当該強度のデータと前記位置情報取得部からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部と、を備え、
請求項3又は請求項4又は請求項7記載の測距方法を行い第1測定点と第2測定点との間の厚み方向の距離を測距することを特徴とするレーザ測距装置。
【請求項11】
スペクトル線幅が比較的広く周波数の異なる複数の縦モードレーザが混在したレーザ光を出射するレーザ照射手段と、
当該レーザ照射手段から出射したレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部と、
前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部と、
当該反射部の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部と、
被測定物の配置位置を挟んで対向する位置に設けられ第1測定光を出射する第1出射口と第2測定光を出射する第2出射口と、
反射部で反射した参照光と被測定物の第1測定点で反射した第1測定光と第1測定点の裏面に位置する第2測定点で反射した第2測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部と、
当該強度のデータと前記位置情報取得部からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部と、を備え、
請求項5又は請求項8記載の測距方法を行い被測定物の厚みを測距することを特徴とするレーザ測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226938(P2011−226938A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97496(P2010−97496)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(507039626)
【Fターム(参考)】