説明

湿潤表面に対する接着のためのシリコーン接着剤

湿潤表面に装置又は物質を接着させるのに使用されるシリコーン接着剤組成物は、(i)トリアルキル加水分解性シランとケイ酸アルキルとの共加水分解生成物であるシリコーン樹脂であって、当該共加水分解生成物が複数のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する、シリコーン樹脂と、(ii)25℃で200,000mm2/sを越える粘度を有する末端ケイ素結合ヒドロキシ基を含有する直鎖オルガノポリシロキサン流体と、(iii)25℃で100,000〜600,000mm2/sの粘度を有するトリアルキルシロキシ末端化ポリオルガノシロキサン流体と、(iv)100,000〜8,000,000の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)ポリマー、500,000〜4,500,000,000の分子量を有するアクリル酸ポリマー、及び90,000〜1,300,000,000の分子量を有するヒドロキシエチルセルロースポリマーから成る群から選択される水溶性粘膜接着性ポリマーと、任意に(v)脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、揮発性直鎖及び環状シリコーン化合物から成る群から選択される溶媒とを含有する。シリコーンポリエーテル、シリコーンワックス、薬剤、賦形剤及び/又は活性成分等の他の構成成分も含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯肉、口腔、粘膜内層、及び湿潤表皮を含む湿潤生体表面に対する接着を改良したシリコーン接着剤組成物に関する。シリコーン接着剤組成物は、局所パッチ及び経皮パッチ又は他のドラッグデリバリデバイス等の医療装置、義歯、ヘアピース、造瘻、テープ、及び創傷被覆材を湿潤表面に接着させるのに使用することができる。シリコーン接着剤組成物は、多くの薬剤及び/又は活性成分と適合するものであり、シリコーン接着剤組成物、薬剤及び/又は活性成分を含有するマトリクスから薬剤を効果的に放出し、水中に浸漬される表皮に対する効果的な接着をもたらす。シリコーン接着剤組成物は、ペースト、ビーズ、パッチ又は押出成形品の形態で使用することができる。
【0002】
関連出願の相互参照
該当なし。
【背景技術】
【0003】
シリコーン接着剤組成物には、感圧タイプ又は永久結合タイプの接着剤が可能である。永久結合とは、接着剤が実際に2表面を互いに接着させる、即ち、膠のように振る舞うことを意味する。他方で感圧とは、接着剤が表面から剥がされて表面に再接着し得る、即ち、接着剤がScotch(登録商標)ブランドのテープ上に存在する接着剤の性質を有することを意味する。本発明の接着剤は感圧接着剤であるが、水素担持(bearing)シリコーンポリマー等の好適な架橋剤及び触媒と組み合わせた場合には永久結合接着剤にもなり得る。
【0004】
典型的には、シリコーン感圧接着剤の構成成分は、(i)単官能性(M)単位R3SiO1/2及び四官能性(Q)単位SiO4を含有するシリコーン樹脂、即ち、MQシリコーン樹脂(式中、Rはメチル等の炭化水素基である)と、(ii)25℃で5,000〜1,000,000mm2/sの粘度を有する高分子量ヒドロキシル末端封鎖ポリジオルガノシロキサン流体、又は高分子量ヒドロキシル末端封鎖ポリジオルガノシロキサンガムとから成る。ここでの粘度とは可塑性の意味で表されている。
【0005】
シリコーン感圧接着剤は、構成成分(i)と構成成分(ii)とを単に混合することによって調製することができる。一般的に、これは、有機溶媒、芳香族溶媒、又は炭化水素溶媒、即ち、酢酸エチル、ヘプタン、キシレン若しくはトルエンの相互溶剤の存在下で実施される。しかしながら、この溶媒を省いてもよい。構成成分(i)及び構成成分(ii)が混合されると直ちに、その組成物は容易に、さらなる処理を伴うことなく感圧接着剤として使用される。これは任意の好適な手段によって接着すべき表面に簡単に塗布することができ、次いでこれらの表面を接合させる。典型的には、組成物が溶媒を含有する場合、これら2表面を接着する前に溶媒を蒸発させる。コーティングは、手短に加熱することにより短時間で硬化され得るが、硬化は一般的には必要とされない。同様に、触媒を加えることにより硬化を助け得るが、触媒は一般的には必要とされない。
【0006】
シリコーン感圧接着剤は、米国特許第2,736,721号(1956年2月28日)、米国特許第2,814,601号(1957年11月26日)、米国特許第2,857,356号(1958年10月21日)、米国特許第4,584,355号(1986年4月22日)、米国特許第4,585,836号(1986年4月29日)、米国特許第4,591,622号(1986年5月27日)、米国特許第4,655,767号(1987年4月7日)、及び米国特許第5,482,988号(1996年1月9日)に記載されている。加えて、より好適な表面感圧接着性を有する他のタイプの接着剤を使用してもよく、例えばいわゆるSoft Skin Adhesive、即ち、米国特許第5,145,933号(1992年9月8日)に詳細に記載のシロキサンゲル組成物であり、(A)アルケニル含有ポリジオルガノシロキサン、(B)少なくとも3つのSiH基を有する水素化ケイ素化合物、(C)SiH末端封鎖ポリジオルガノシロキサン、及び(D)触媒から調製される。しかしながら、これらのいずれの特許も、湿潤表面に接着し得る本発明によるシリコーン感圧接着剤組成物を記載も示唆もしていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリコーン接着剤組成物に関し、また、シリコーン接着剤組成物を湿潤表面に塗布することによって湿潤表面に装置又は物質を接着させる方法に関する。シリコーン接着剤組成物は、
(i)トリアルキル加水分解性シランとケイ酸アルキルとの共加水分解生成物であるシリコーン樹脂であって、共加水分解生成物が複数のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する、シリコーン樹脂と、
(ii)25℃で200,000mm2/sを超える粘度を有する、末端ケイ素結合ヒドロキシ基を含有する直鎖オルガノポリシロキサン流体と、
(iii)25℃で100,000〜600,000mm2/sの粘度を有するトリアルキルシロキシ末端化ポリオルガノシロキサン流体と、
(iv)100,000〜8,000,000の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)ポリマー、500,000〜4,500,000,000の分子量を有するアクリル酸ポリマー、及び90,000〜1,300,000,000の分子量を有するヒドロキシエチルセルロースポリマーから成る群から選択される水溶性粘膜接着性ポリマーと、任意に
(v)脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、揮発性直鎖及び環状シリコーン化合物から成る群から選択される溶媒と、
を含有する。
【0008】
シリコーン接着剤組成物は、シリコーンポリエーテル、シリコーンワックス、薬剤、賦形剤及び/又は活性成分等の他の構成成分を含んでいてもよい。シリコーン接着剤組成物は、義歯、ヘアピース、人工器官、造瘻、創傷被覆材、テープ、口腔内パッチ又は経皮パッチ等の装置を湿潤表面に付着させるのに有用である。装置及び物質は、皮膚、口腔、歯肉、鼻腔内通路の粘膜内層、消化管、膣壁及び直腸壁、並びに植物起源の湿潤構成要素等の湿潤表面に付着させることができる。本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、詳細な説明を考慮して明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
一般的に、本発明のシリコーン接着剤組成物は、シリコーン樹脂と、ケイ素結合ヒドロキシ基を含有する直鎖オルガノポリシロキサン流体と、ポリジメチルシロキサン流体と、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、アクリル酸ポリマー及びヒドロキシエチルセルロースポリマーから成る群から選択される水溶性粘膜接着性ポリマーとを含む。本発明の接着剤組成物によってもたらされる湿潤表面に対する接着の改良は、水溶性粘膜接着性ポリマー構成成分の存在によって得られる。シリコーン接着剤組成物のこれらの及び他の不可欠なまた任意選択的な構成成分を以下に記載する。
【0010】
シリコーン樹脂/直鎖オルガノポリシロキサン流体
シリコーン接着剤組成物は、(i)シリコーン樹脂と、(ii)直鎖オルガノポリシロキサン流体とを含有する。シリコーン樹脂は、トリアルキル加水分解性シランとケイ酸アルキルとを共加水分解させた結果得られる反応生成物である。得られる共加水分解生成物は複数のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する。直鎖オルガノポリシロキサン流体は、末端ケイ素結合ヒドロキシ基を含有する高粘性オルガノポリシロキサン流体である。末端ケイ素結合ヒドロキシ基を含有する直鎖オルガノポリシロキサン流体の粘度は、25℃で200,000mm2/sを超えるか、代替的には25℃で200,000mm2/s〜3,000,000mm2/sである。共加水分解生成物及び直鎖オルガノポリシロキサン流体は、1重量部の共加水分解生成物と0.5〜6重量部の直鎖オルガノポリシロキサン流体とを合わせることによって相互縮合(intercondensed)され得る。これらの構成成分、及び当該構成成分を調製する方法は米国特許第2,857,356号(1958年10月21日)に詳細に記載されている。
【0011】
トリアルキルシロキシ末端化ポリジオルガノシロキサン流体
トリアルキルシロキシ末端化ポリジオルガノシロキサン流体(iii)、好ましくはトリメチルシロキシ末端化ポリジメチルシロキサン流体は、25℃で100,000〜600,000mm2/sの粘度を有する。流体は全てアルキル基を含有していてもよく、又はアルキル基及びアリール基を含有していてもよい。これらのポリジオルガノシロキサン流体は一般的に、約130,000〜260,000の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリジオルガノシロキサン流体は、ポリマー又はコポリマーであってもよく、直鎖又は分岐鎖を有していてもよいが、但し、粘度は所望の範囲内である。一般的に、ポリジオルガノシロキサン流体は、下記式に相当する構造を有し、式中、m及びnは、所望の分子量を提供するのに十分な値を有する整数を示し、Rは、同一のアルキル基又は異なるアルキル基、即ち、メチル又はエチルを示し、R1は、アルキル基又はアリール基、即ちフェニルを示す。アルキル基Rは、1〜8個の炭素原子を含有していてもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチル等であるが、Rは典型的にメチル又はエチルである。
【0012】
【化1】

【0013】
例示的なポリジオルガノシロキサン流体としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン及びポリジフェニルシロキサンが挙げられる。これらのポリジオルガノシロキサン流体は当該技術分野において既知であり、Dow Corning Corporation(Midland, Michigan)等の化学物質供給業者から市販されている。
【0014】
水溶性粘膜接着性ポリマー
本発明の構成成分(iv)は水溶性粘膜接着性ポリマーである。本明細書中で使用される場合、水溶性粘膜接着性ポリマーは、湿潤表面、特に粘膜表面に接着するにもかかわらず水溶性である任意の高分子量ポリマーを包含する。水溶性粘膜接着性ポリマーは、多くの異なる官能基から成っていてもよく、例えば、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー(PEOP)、アクリル酸系ポリマー及びヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethycellulose)ポリマーが挙げられる。この水溶性粘膜接着性ポリマーは、湿潤表面に対する接着の改善及び改良、並びに本明細書中の組成物を従来技術と区別する特徴を提供する本発明の特有の構成成分である。
【0015】
本明細書中で有用なポリ(エチレンオキシド)ポリマーは非イオン性の高分子量ポリマーである。これらのポリマーは、100,000〜8,000,000の範囲、好ましくは600,000〜4,000,000の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。一般的に、ポリ(エチレンオキシド)ポリマーは、多くの所望特性、例えば結合性、増粘性、潤滑性、接着性、増粘性及び成膜性をもたらし得ることが知られている。ポリ(エチレンオキシド)ポリマーは一般的に式H(OCH2CH2nOH(式中、nは所望の分子量を提供するのに十分な値を有する)に合致する。ポリ(エチレンオキシド)ポリマーは、Dow Chemical Company(Midland, Michigan)から商標POLYOX(登録商標)で市販されている。これらのポリマーが本明細書中の使用に最も好ましい。
【0016】
またアクリル酸ポリマーは本明細書中で有用であり、且つアリルスクロース等のアリル糖、又はアリルペンタエリスリトール等のアリル糖アルコールと架橋し得る高分子量の架橋アクリル酸系ポリマーである。それらはまた、長鎖C10〜C30アルキルアクリレートによって修飾されてもよく、アリルペンタエリスリトールで架橋されていてもよい。これらのポリマーの典型的な分子量は500,000〜4,500,000,000の範囲である。アクリル酸ポリマーは、Noveon Incorporated(Cleveland, Ohio)から商標CARBOPOL(登録商標)で市販されている。
【0017】
ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxethylcellulose)ポリマーは、本明細書中で有用な別のタイプのポリマーであり、様々な程度で重合して異なる溶解パラメータをもたらし得るセルロース由来の非イオン性水溶性ポリマーである。これらのポリマーの分子量は90,000〜1,300,000,000の範囲である。ヒドロキシエチルセルロースポリマーはHercules Incorporated(Wilmington, Delaware)から市販されている。
【0018】
任意選択的な構成成分
シリコーン接着剤は、最終シリコーン接着剤製品の物理特性の1つ若しくは複数又は粘着性を改良するように意図される他の任意選択的な構成成分を含有していてもよい。シリコーン接着剤中に使用することができる任意選択的な構成成分は、溶媒、シリコーンポリエーテル、シリコーンワックス及び種々の薬剤である。
【0019】
溶媒
シリコーン接着剤は、溶媒和シリコーン接着剤を提供する溶媒構成成分(vi)を含むことができ、この場合、シリコーン樹脂及びシリコーン流体は溶媒溶液に添加される。溶媒は好ましくは、周囲空気、強制通風又は加熱炉によって溶媒和シリコーン接着剤溶液から蒸発され得る揮発性溶媒である。得られるシリコーン接着剤は、皮膚が冷水に浸漬されていてもヒトの皮膚等の湿潤表面に対して効果的に接着することが確認された。好適な揮発性有機溶媒のいくつかの例は、ヘプタン、イソドデカン及びヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、ベンゼン及びキシレン等の揮発性芳香族炭化水素、並びに酢酸エチル等の揮発性エステルである。低分子量直鎖及び環状シリコーン化合物、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンも使用することができる。しかしながら、溶媒の使用は任意選択的であり、無溶媒シリコーン感圧接着剤が所望される場合には溶媒を省くことができる。これは、例えば調節可能な粘着性を有する無溶媒シリコーン感圧接着剤をカスタマイズする上で一般的な方法である。
【0020】
シリコーンポリエーテル
シリコーンポリエーテル(vi)は、薬剤の放出特性を調節することが望まれる場合、シリコーン接着剤に含まれ得る。本発明の方法で使用され得るシリコーンポリエーテルは好ましくは、分子中にジメチルシロキシ単位及びオキシアルキレン単位を含有する共重合性シリコーンポリエーテルである。これらのシリコーンポリエーテルは、一般的に式:
【0021】
【化2】

【0022】
に相当する構造を有する。式中、Raは1〜6個の炭素原子のアルキル基であり、Rbはラジカル−Cm2m−であり、Rcは、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基を含む末端ラジカルであり、mは2〜8の値を有し、p及びsは、オキシアルキレンセグメント−(OC24p−(OC36s−が400〜5,000の範囲の分子量を有するような値を有し、このセグメントは好ましくは50〜99モル%のオキシエチレン単位−(OC24P−と、1〜50モル%のオキシプロピレン単位−(OC36s−とを有し、xは80〜400の値を有し、yは2〜10の値を有する。1のオキシアルキレンセグメントのみ含有するシリコーンポリエーテルも使用することもできる。
【0023】
このようなシリコーンポリエーテルは当該技術分野において既知であり、市販されており、米国特許第3,402,192号(1968年9月17日)に、より最近では例えば米国特許第6,121,373号(2000年9月19日)に詳細に記載されている。所望であれば、他のタイプのシリコーンポリエーテルを使用することもできるが、本発明の利益の全てを得られない可能性がある。
【0024】
これゆえ、考慮され得る他のタイプのシリコーンポリエーテルのいくつかの代表例が、以下の特許に詳細に記載されているのが見出され得る。
(i)架橋シリコーンポリエーテル、米国特許第5,136,068号(1992年8月4日)、
(ii)ろう様シリコーンポリエーテル、米国特許第5,482,988号(1996年1月9日)、
(iii)オリゴマーシリコーンポリエーテル、米国特許第5,488,124号(1996年1月30日)、
(iv)短鎖低分子量シリコーンポリエーテル及び環状シリコーンポリエーテル、米国特許第5,623,017号(1997年4月22日)、
(v)オキシアルキレン官能性シラン、米国特許第5,707,550号(1998年1月13日)、
(vi)エラストマー系シリコーンポリエーテル、米国特許第5,811,487号(1998年9月22日)、及び
(vii)アリールアルキル基含有シリコーンポリエーテル、米国特許第6,133,370号(2000年10月17日)。
これらの特許は全て、参照により本明細書に援用されるものと考慮される。
【0025】
シリコーンワックス
シリコーンワックス(vii)は、最終シリコーン接着剤製品の粘着性を調節するように意図される場合、シリコーン接着剤に含まれ得る。これらのシリコーンワックスは一般的に、18〜45個の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルキル基が分子中に存在するアルキルメチルポリシロキサンである。典型的に、これらのシリコーンワックスは、式R3SiO(R2SiO)x(RR’SiO)ySiR3(式中、Rは1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基を示し、R’はCn2n+1(式中、nは18〜45である)であり、xは2〜200であり、yは3〜40である)を有する。シリコーンワックスは、周囲温度又は室温(20〜25℃)を超える融点を有するものとする。1つの好ましいシリコーンワックスはポリメチルステアリルシロキサンである。これらのシリコーンワックスは当該技術分野において既知であり、Dow Corning Corporation(Midland, Michigan)等の化学物質供給業者から市販されている。シリコーンワックスは、特許文献、例えば、米国特許第3,641,239号(1972年2月8日)及び米国特許第5,380,527号(1995年1月10日)に記載されている。
【0026】
薬剤
薬剤(viii)は、シリコーン接着剤を塗布する表面に薬剤を活性成分として送達することが望まれる場合、シリコーン接着剤に含まれ得る。薬剤は親水性薬剤又は親油性薬剤であってもよい。本明細書において使用される場合の用語「薬剤」は、Federal Food, Drug, and Cosmetic Act,Pub. L. No. 75-717, 52 STAT. 1040(1938), 21 USC Sec. 201.[321]の下で薬剤として定義される物質を意味すると意図される。一般的に、Sec. 201.[321](g)(1)(B)及び(C)に関する薬剤は、ヒト又は他の動物における疾患の、診断、治癒、鎮静、治療、又は予防における使用に意図される物質、並びに、食品以外の、ヒト又は他の動物の身体の構造又はいずれかの機能に影響を与えるように意図される物質である。
【0027】
このような物質のいくつかの代表例は、(i)クロザピン、リスペリドン、コルジアゼポキシド、ブスピロン、デジプラミン、マプロチリン、アミトリプチリン、チモロール、セレギリン、ナロキソン及びナルブフィン等の中枢神経系に作用する薬剤、(ii)アセタゾラミド、イソソルビド、フロセミド、クロロチアジド、アミロリド、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、ベラパミル、フェニトイン、リドカイン、プロプラノロール、アミオダロン、プラバスタチン、プロブコール及びシプロフィブレート等の腎臓及び心血管機能に影響を与える薬剤、(iii)シメチジン、オメプラゾール及びラニチジン等の消化管機能に影響を与える薬剤、(iv)チアベンダゾール及びメベンダゾール等の蠕虫病治療用薬剤、(v)トリメトプリム、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、ペニシリンG、ナフシリン、セファロチン、セファゾリン、カナマイシンA、ネオマイシン、ドキシシクリン、ミノシクリン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、フルシトシン、ケトコナゾール、フルコナゾール、アシクロビル及びガンシクロビル等の微生物疾患治療用薬剤、(vi)ダカルバジン、ブスルファン及びトリアゼン等の新生物疾患治療用薬剤、(vii)葉酸、ナイアシンアミド、アスコルビン酸及びチアミン等の栄養不良治療用薬剤、(viii)エストラジオール、エチニルエストラジオール及びノルエチンドロン等のホルモン代替治療用薬剤、(ix)コルチゾール、コルチゾン及びプレドニゾン等の副腎皮質ホルモンの合成及び作用を阻害する薬剤、(x)ベタメタゾン、ジプロピオネート、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、レチナール、トレチノイン、イソトレチノイン、ダプソン、カリポトリエン、ケトコナゾール、クロトリマゾール、イトラコナゾール、及びアロチノイド等の皮膚病治療のために皮膚科学において使用される薬剤、(xi)PGA、PGD、PGE、PGF、PGI、6−ケト−PGE、6,9−ニトリロ−PGI、6,9−メタノ−PGI2及びその誘導体等のプロスタグランジン(PG)、(xii)ニトログリセリン等の血管拡張剤、(xiii)インドメタシン及びイブプロフェン等の抗炎症剤、(xiv)ペニシリン及びエリスロマイシン等の抗生物質、(xv)フェノバルビタール等の催眠鎮静薬、(xvi)ベンゾカイン等の麻酔剤、(xvii)ペンタマイシン等の抗菌剤、(xviii)ビタミンA等のビタミン、並びに(xix)アトロピン等の抗痙攣剤である。
【0028】
賦形剤を含んでいてもよく、またこの賦形剤は、薬理学的に活性な化合物を、患者に対する投与に適した薬学的投薬形態に変換するのに使用される添加剤として、Handbook of Pharmaceutical Excipients, Ray.C.Rowe, Paul J.Weller及びArthur H.Kibbe(編)に記載される物質を意味するように意図される。このような添加剤のいくつかの代表例は、(i)アカシア、デキストリン、デキストロース、フルクトース、ラクトース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、スクロース及びキシリトール等の糖及び糖誘導体、(ii)スターチ誘導体、(iii)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース、セルロースアセテートフタレート、ナトリウムクロスカルメロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等のセルロース材料、(iv)デキストレート、グアーガム及びキサンタンガム等の多糖、(v)ポロキサマー及びポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリエーテル、(vi)ポリビニルアルコール、(vii)Carbopol、Carbomer、ポラクリリンカリウム、及びポリメタクリレート等のアクリル酸ポリマー及びメタクリル酸ポリマー、(viii)ポビドン及びクロスポビドン等のピロリドン誘導体、(ix)アルギン酸並びにこのアルギン酸カルシウム塩及びアルギン酸ナトリウム塩等のグリクロナムポリマー及び誘導体、(x)炭酸のカルシウム塩及びマグネシウム塩、リン酸カルシウム誘導体、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、塩化カリウム、並びにクエン酸カリウム等の固形稀釈剤、(xi)ステアリン酸カルシウム誘導体及びステアリン酸マグネシウム誘導体、タルク、並びに酸化亜鉛等の固形潤滑剤、(xii)カオリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭素及びシクロデキストリン等の懸濁剤、並びに(xiii)コレステロール、フマル酸、レシチン、ゼラチン、リンゴ酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム塩、ステアリルフマル酸ナトリウム、二酸化チタン、及び酸化亜鉛等の他の賦形剤用物質である。
【0029】
種々雑多な任意選択的な構成成分
ここでは、ポリビニルピロリジノンと称されることもあるポリビニルピロリドン(PVP)等のシリコーン接着剤に通常使用される他の種々雑多な任意選択的な構成成分(ix)を含んでいてもよく、これは粘着性強化剤として機能し得る。PVP(C69NO)nは一般的に10,000〜700,000の分子量を有し得る。アクリル酸ポリマー、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルプロピレン、ポリエチレングリコール、グルコース及びラクトース等の糖、より大きい多糖類、並びにセルロース起源の材料を含む親水性有機充填剤を添加し得る。例えば、シリコーン接着剤をポリアクリル酸と組み合わせる利益は、口腔内等の粘膜表面に対してより強力且つより長期間接着する能力によって示される。グリセリン、クエン酸塩、カルボフィル及び炭酸塩を含む疎水性放出調節因子を添加してもよい。また放出調節因子は、米国特許第4,591,652号(1986年5月27日)、米国特許第5,831,080号(1998年11月3日)、米国特許第6,517,933号(2003年2月11日)、国際公開第2003/50144号(2003年6月19日)及び国際公開第2004/24799号(2004年3月25日)に記載されているような糖シロキサンから成り得る。ステアリルアルコール、蜜ろう、ラノリン、鉱油、パラフィン、ワセリン及びミリスチン酸イソプロピル等の他の有機材料を含んでいてもよい。これらのタイプの構成成分は、接着剤の物理特性及び薬剤送達特性の1つ又は複数を変えるのに使用され得る。
【0030】
シリコーン接着剤の調製
シリコーン接着剤は、成分を任意の順序で混合することによって調製することができる。特に、シリコーン接着剤は、何種類かの構成成分を下記の量で組み合わせることによって生成され得る。これらの量は、特に指定がなければシリコーン接着剤組成物の総重量に基づくものである。
(i)13〜25重量%のシリコーン樹脂、
(ii)8〜20重量%の、ケイ素結合ヒドロキシ基を含有する直鎖オルガノポリシロキサン流体、
(iii)5〜30重量%のトリアルキルシロキシ末端化ポリオルガノシロキサン流体、
(iv)5〜25重量%の水溶性粘膜接着性ポリマー、
(v)0〜35重量%の溶媒、
(vi)0〜10重量%のシリコーンポリエーテル、
(vii)0〜15重量%のシリコーンワックス、
(viii)0〜35重量%の薬剤、賦形剤及び/又は活性成分、並びに
(ix)0〜50重量%の種々雑多な任意選択的な構成成分。
【0031】
シリコーン接着剤の使用
本発明のシリコーン接着剤組成物は、一般にヒト用途、獣医学的用途及び農業用途に有用であり、湿潤表面、特に湿潤生体表面に接着する接着材料をもたらす。これらの表面としては、湿潤皮膚、口腔、歯肉、鼻腔内通路を含む他の身体管及び身体開口部の粘膜内層、消化管、並びに膣壁及び直腸壁、並びに木材を含む植物起源の湿潤構成要素が挙げられる。シリコーン接着剤組成物は、義歯、ヘアピース、人工器官、造瘻、創傷被覆材又はテープ等の装置を、湿潤身体表面に付着させるのに単独で作用するように使用することができるか、又は医薬品、ビタミン及び/又は天然起源、合成起源若しくは植物起源の他の治療薬等の活性成分を送達する上での構成要素として機能し得る。シリコーン接着剤組成物はまた、付着し、及び/又は口腔パッチ及び経皮パッチ、又は他の歯科送達法、坐薬送達法、鼻腔内送達法、経耳送達法、食餌性送達法若しくは腹膜送達法等において活性成分若しくは医薬品を送達するのを助けるのに使用され得る。シリコーン接着剤組成物は、紙、布、ガラス繊維布、シリコーンゴム、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス、木材及び金属等の多くの他の基材に接着することができる。
【0032】
シリコーン接着剤の塗布
コーティングとして本発明のシリコーン接着剤組成物を基材に塗布する際、これは、(a)シリコーン接着剤組成物を、25℃を越えるコーティング可能温度に加熱すること、(b)加熱したシリコーン接着剤組成物を基材上にコーティングすること、及び(c)一般的な非流動状態となるまでコーティングされたシリコーン接着剤組成物を冷却することによって実施され得る。一般的に、シリコーン接着剤組成物を約100〜150℃の温度に加熱することによって適切な粘性が得られる。これらのコーティング温度は十分に低いため、シリコーン接着剤組成物の分解は起こらない。温度が低いほど、使用されるコーティング機器、所望の最終製品及びシリコーン接着剤の組成に応じて、コーティング可能な粘性が得られる。例えば、シリコーン接着剤の層が厚いことが望まれる場合、コーティング粘度はより高くなり得る。シリコーン接着剤組成物を裏材(backing)又は基材に塗布する場合、これは、ローラーコーティング、浸漬コーティング、押出成形、ナイフコーティング又は噴霧コーティング等の任意の従来手段を用いて達成することができる。
【0033】
例えば、シリコーン接着剤組成物を使用する際に、薬剤等の活性成分を含有する組成物を裏基材(backing substrate)に塗布する。次に、剥離ライナを、裏基材上にコーティングされた拡散性薬剤含有シリコーン接着剤マトリクス上に設ける。使用者が拡散性薬剤を治療すべき表面に塗布することを望む際に、剥離ライナを取り除いて薬剤含有マトリクスを露出させ、薬剤含有マトリクスを表面に取り付ける。マトリクスの薬剤が無くなったら、又は所定期間後に、裏基材及び使い尽くされた接着剤層を治療表面から取り除く。また、固体マトリクスよりも、放出される薬剤又は活性成分を含有する液体リザーバが使用され得る。装置が表面に施されるものである場合、装置は、裏基材に永久的に又は取外し可能に付着することができる。いくつかの例において、シリコーン接着剤組成物は、裏基材を用いることなく装置上に直接コーティングすることができる。単に剥離ライナを取り除いた後に装置を表面に配置することによって、装置を表面に接着することができる。
【0034】
一般的に、裏基材は、ポリマー、天然及び合成織布、不織布、箔、紙及びゴム等の材料のストリップ又はパッチである。裏基材は、単層材料又は2つ以上の層の積層体であってもよい。一般的に、裏基材は実質的に不透水性である。裏基材がポリマーであるとき、裏基材は単一ポリマーから成っていても、又はポリマーの混合物から成っていてもよい。好適なポリマーのいくつかの例としては、ポリエチレン、酢酸エチルビニル、エチルビニルアルコール、E.I. DuPont DeNemours and Company(DuPont)製のMylar(登録商標)等のポリエステル、及びDuPont製のTeflon(登録商標)等のフッ素樹脂が挙げられる。裏基材の厚みは一般的に、約1ミリメートル以下である。
【0035】
剥離ライナは典型的に、ポリエチレン、紙及びポリエステル等の材料の剛性シートである。剥離ライナは一般的に、ワックス、シリコーン化合物、Teflon(登録商標)等のポリエステル、及び他のタイプのフッ化ポリマーのような非粘着性材料でコーティングされる。接着剤がシリコーン接着剤組成物を含む場合、剥離ライナは好ましくはフルオロシリコーン又は他のフッ素官能性ポリマーでコーティングされる。剥離ライナは、裏基材と実質的に同じサイズ及び形状に切断され得るか、又は剥離ライナは、裏基材よりもわずかに大きく切断して、剥離ライナを裏基材から引き剥がすのにより容易で利用可能な手段をもたらすことができる。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、本発明をより詳細に例示するために記載する。実施例中に使用される接着剤組成物は、一般的に上述の米国特許第2,857,356号(1958年10月21日)に記載されているような、シラノール末端官能基を有する直鎖オルガノポリシロキサン流体と、シラノール末端化シリコーン樹脂との縮合を介して調製される接着剤であった。接着剤組成物は、その形態では容易に処理されない固形物であった。このため接着剤組成物を酢酸エチルに稀釈して、60〜65重量%の接着剤固形物を含有する溶液を生成した。接着剤組成物に他の固体構成成分及び液体構成成分を容易に取込むことができる粘度を得るように、酢酸エチルを接着剤固形物に添加した。実施例で使用されるシリコーンポリエーテルは、25℃で335mm2/sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端化メチル(プロピル)(ポリエトキシ)(ヒドロキシ)ポリシロキサンであった。実施例中、部及び%は、それぞれ重量部及び重量%として表されるものである。
【0037】
<実施例1>
本実施例における接着剤組成物は、上記のような45部の直鎖オルガノポリシロキサン流体と、55部の上記シリコーン樹脂とを使用することによって調製され、酢酸エチルに溶解して60%の接着剤固形物を含有する溶液とした。17.6グラムの60%接着剤溶液に、(i)4,000,000の平均分子量を有する2.5グラムのポリ(エチレンオキシド)ポリマー、(ii)25℃で60,000mm2/sの粘度を有する1グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン、(iii)25℃で100mm2/sの粘度を有する4.0グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン、(iv)1.25グラムのシリコーンポリエーテル、及び(v)6.91グラムのリドカインを添加した。この組成物をScotchpak9956剥離ライナ上に流し込み、溶媒を蒸発させて成膜した。前腕を25〜30℃の温度の水道水の入った浴槽に浸しながら、塗膜をヒトの前腕の皮膚に貼り付けた。塗膜を貼り付ける前に前腕を約1分間水中に置いた。塗膜が貼り付いたとき、前腕及び塗膜は水中にあった。前腕を水中に浸漬させている間に塗膜が前腕の皮膚に接着したこと、及び前腕を水浴から取り出しても塗膜が前腕上に残ったことが観察された。
【0038】
<実施例2>
本実施例における接着剤組成物は、上記のような50部の直鎖オルガノポリシロキサン流体と、50部のシリコーン樹脂とを使用することによって調製され、酢酸エチルに溶解して60%の接着剤固形物を含有する溶液とした。17.6グラムの60%接着剤溶液に、(i)4,000,000の平均分子量を有する2.5グラムのポリ(エチレンオキシド)ポリマー、(ii)25℃で60,000mm2/sの粘度を有する1グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン、(iii)25℃で100mm2/sの粘度を有する4.0グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン、(iv)1.25グラムのシリコーンポリエーテル、及び(v)6.91グラムのリドカインを添加した。この組成物をScotchpak9956剥離ライナ上に流し込み、溶媒を蒸発させて成膜した。前腕を25〜30℃の温度の水道水の入った浴槽に浸しながら、塗膜をヒトの前腕の皮膚に貼り付けた。塗膜を貼り付ける前に前腕を約1分間水中に置いた。塗膜が貼り付いたとき、前腕及び塗膜は水中にあった。前腕を水中に浸漬させている間に塗膜が前腕の皮膚に接着したこと、及び前腕を水浴から取り出しても塗膜が前腕上に残ったことが観察された。
【0039】
<実施例3>
本実施例における接着剤組成物は、上記のような45部の直鎖オルガノポリシロキサン流体と、55部のシリコーン樹脂とを使用することによって調製され、酢酸エチルに溶解して60%の接着剤固形物を含有する溶液とした。17.6グラムの60%接着剤溶液に、(i)600,000の平均分子量を有する2.5グラムのポリ(エチレンオキシド)ポリマー、(ii)25℃で60,000mm2/sの粘度を有する1グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン、(iii)25℃で100mm2/sの粘度を有する4.0グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン、(iv)1.25グラムのシリコーンポリエーテル、及び(v)6.91グラムのリドカインを添加した。この組成物をScotchpak9956剥離ライナ上に流し込み、溶媒を蒸発させて成膜した。前腕を25〜30℃の温度の水道水の入った浴槽に浸しながら、塗膜をヒトの前腕の皮膚に貼り付けた。塗膜を貼り付ける前に前腕を約1分間水中に置いた。塗膜が貼り付いたとき、前腕及び塗膜は水中にあった。前腕を水中に浸漬させている間に塗膜が前腕の皮膚に接着したこと、及び前腕を水浴から取り出しても塗膜が前腕上に残ったことが観察された。
【0040】
<実施例4>
本実施例における接着剤組成物は、上記のような50部の直鎖オルガノポリシロキサン流体と、50部のシリコーン樹脂とを使用することによって調製され、酢酸エチルに溶解して60%の接着剤固形物を含有する溶液とした。17.6グラムの60%接着剤溶液に、(i)600,000の平均分子量を有する2.5グラムのポリ(エチレンオキシド)ポリマー、(ii)25℃で60,000mm2/sの粘度を有する1グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン、(iii)25℃で100mm2/sの粘度を有する4.0グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン、(iv)1.25グラムのシリコーンポリエーテル、及び(v)6.91グラムのリドカインを添加した。この組成物をScotchpak9956剥離ライナ上に流し込み、溶媒を蒸発させて成膜した。前腕を25〜30℃の温度の水道水の入った浴槽に浸しながら、塗膜をヒトの前腕の皮膚に貼り付けた。塗膜を貼り付ける前に前腕を約1分間水中に置いた。塗膜が貼り付いたとき、前腕及び塗膜は水中にあった。前腕を水中に浸漬させている間に塗膜が前腕の皮膚に接着したこと、及び前腕を水浴から取り出しても塗膜が前腕上に残ったことが観察された。
【0041】
<実施例5>
本実施例における接着剤組成物は、上記のような60部の直鎖オルガノポリシロキサン流体と、40部のシリコーン樹脂とを使用することによって調製され、酢酸エチルに溶解して60%の接着剤固形物を含有する溶液とした。55グラムの60%接着剤溶液に、(i)25℃で100mm2/sの粘度を有する2.5グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン及び(ii)2.5グラムのシリコーンポリエーテルを添加した。(iii)2グラムのリドカインと(iv)25℃で60,000mm2/sの粘度を有する2.5グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン流体とを合わせた後、乳棒及び乳鉢においてそれらを互いに混合することによって、ペーストを調製した。このペーストを溶解した接着剤溶液に添加し、モルトミキサ(malt mixer)で混合した。5グラムの(v)ヒドロキシエチルセルロースをこの混合物に添加し、均質懸濁液が得られるまで混合した。この組成物をフッ化ポリマーでコーティングした剥離ライナ上に流し込み、120℃の強制通風炉内で溶媒を蒸発させて成膜した。前腕を25〜30℃の温度の水道水の入った浴槽に浸しながら、塗膜をヒトの前腕の皮膚に貼り付けた。塗膜を貼り付ける前に前腕を約1分間水中に置いた。塗膜が貼り付いたとき、前腕及び塗膜は水中にあった。前腕を水中に浸漬させている間に塗膜が前腕の皮膚に接着したこと、及び前腕を水浴から取り出しても塗膜が前腕上に残ったことが観察された。
【0042】
<実施例6>
本実施例における接着剤組成物は、上記のような60部の直鎖オルガノポリシロキサン流体と、40部のシリコーン樹脂とを使用することによって調製され、酢酸エチルに溶解して60%の接着剤固形物を含有する溶液とした。55グラムの60%接着剤溶液に、(i)25℃で100mm2/sの粘度を有する5グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン及び(ii)2.5グラムのシリコーンポリエーテルを添加した。(iii)2グラムのリドカインと(iv)25℃で60,000mm2/sの粘度を有する2.5グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン流体とを合わせた後、乳棒及び乳鉢においてそれらを互いに混合することによって、ペーストを調製した。このペーストを溶解した接着剤溶液に添加し、モルトミキサで混合した。5グラムの(v)アクリル酸系ポリマーをこの混合物に添加し、均質懸濁液が得られるまで混合した。この組成物をフッ化ポリマーでコーティングした剥離ライナ上に流し込み、120℃の強制通風炉内で溶媒を蒸発させて成膜した。前腕を25〜30℃の温度の水道水の入った浴槽に浸しながら、塗膜をヒトの前腕の皮膚に貼り付けた。塗膜を貼り付ける前に前腕を約1分間水中に置いた。塗膜が貼り付いたとき、前腕及び塗膜は水中にあった。前腕を水中に浸漬させている間に塗膜が前腕の皮膚に接着したこと、及び前腕を水浴から取り出しても塗膜が前腕上に残ったことが観察された。
【0043】
<実施例7>
本実施例における接着剤組成物は、上記のような60部の直鎖オルガノポリシロキサン流体と、40部のシリコーン樹脂とを使用することによって調製され、酢酸エチルに溶解して60%の接着剤固形物を含有する溶液とした。55グラムの60%接着剤溶液に、(i)25℃で100mm2/sの粘度を有する2.5グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン及び(ii)2.5グラムのシリコーンポリエーテルを添加した。(iii)2グラムのリドカインと(iv)25℃で60,000mm2/sの粘度を有する2.5グラムのメチル末端化ポリジメチルシロキサン流体とを合わせた後、乳棒及び乳鉢においてそれらを互いに混合することによって、ペーストを調製した。このペーストを溶解した接着剤溶液に添加し、モルトミキサで混合した。5グラムの(v)ポリビニルピロリドンをこの混合物に添加し、均質懸濁液が得られるまで混合した。この組成物をフッ化ポリマーでコーティングした剥離ライナ上に流し込み、120℃の強制通風炉内で溶媒を蒸発させて成膜した。前腕を25〜30℃の温度の水道水の入った浴槽に浸しながら、塗膜をヒトの前腕の皮膚に貼り付けた。塗膜を貼り付ける前に前腕を約1分間水中に置いた。塗膜が貼り付いたとき、前腕及び塗膜は水中にあった。前腕を水中に浸漬させている間に塗膜が前腕の皮膚に接着したこと、及び前腕を水浴から取り出しても塗膜が前腕上に残ったことが観察された。
【0044】
本明細書中に記載される化合物、組成物、及び方法において、本発明の本質的な特徴から逸脱することなく、他の変形形態をなすことができる。本明細書において特
に例示された本発明の実施形態は、単なる例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲に規定されるようなものを除いて、本発明の範囲における限定として意図されるものはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン接着剤組成物であって、
(i)トリアルキル加水分解性シランとケイ酸アルキルとの共加水分解生成物であるシリコーン樹脂であって、該共加水分解生成物が複数のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する、シリコーン樹脂と、
(ii)25℃で200,000mm2/sを超える粘度を有する、末端ケイ素結合ヒドロキシ基を含有する直鎖オルガノポリシロキサン流体と、
(iii)25℃で100,000〜600,000mm2/sの粘度を有するトリアルキルシロキシ末端化ポリオルガノシロキサン流体と、
(iv)100,000〜8,000,000の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)ポリマー、500,000〜4,500,000,000の分子量を有するアクリル酸ポリマー、及び90,000〜1,300,000,000の分子量を有するヒドロキシエチルセルロースポリマーから成る群から選択される水溶性粘膜接着性ポリマーと、任意に
(v)脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、揮発性直鎖及び環状シリコーン化合物から成る群から選択される溶媒と、
を含む、シリコーン接着剤組成物。
【請求項2】
シリコーンポリエーテルをさらに含む、請求項1に記載のシリコーン接着剤組成物。
【請求項3】
シリコーンワックスをさらに含む、請求項1に記載のシリコーン接着剤組成物。
【請求項4】
薬剤、賦形剤及び/又は活性成分をさらに含む、請求項1に記載のシリコーン接着剤組成物。
【請求項5】
湿潤表面に装置又は物質を接着させる方法であって、該湿潤表面にシリコーン接着剤組成物を塗布することを含み、該シリコーン接着剤組成物が、
(i)トリアルキル加水分解性シランとケイ酸アルキルとの共加水分解生成物であって、該共加水分解生成物が複数のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する、共加水分解生成物と、
(ii)25℃で200,000mm2/sを超える粘度を有する、末端ケイ素結合ヒドロキシ基を含有する直鎖オルガノポリシロキサン流体と、
(iii)25℃で100,000〜600,000mm2/sの粘度を有するトリアルキルシロキシ末端化ポリオルガノシロキサン流体と、
(iv)100,000〜8,000,000の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)ポリマー、500,000〜4,500,000,000の分子量を有するアクリル酸ポリマー、及び90,000〜1,300,000,000の分子量を有するヒドロキシエチルセルロースポリマーから成る群から選択される水溶性粘膜接着性ポリマーと、任意に
(v)脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、揮発性直鎖及び環状シリコーン化合物から成る群から選択される溶媒と、
を含む、湿潤表面に装置又は物質を接着させる方法。
【請求項6】
前記シリコーン接着剤組成物がシリコーンポリエーテルをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコーン接着剤組成物がシリコーンワックスをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコーン接着剤組成物が、薬剤、賦形剤及び/又は活性成分をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記装置が、義歯、ヘアピース、人工器官、造瘻、創傷被覆材、テープ、口腔内パッチ又は経皮パッチである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記湿潤表面が、皮膚、口腔、歯肉、鼻腔内通路の粘膜内層、消化管、膣壁及び直腸壁、並びに植物起源の湿潤構成要素である、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2009−536226(P2009−536226A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551279(P2008−551279)
【出願日】平成19年1月3日(2007.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/000062
【国際公開番号】WO2007/084266
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】