説明

溝底面の締固め装置

【課題】 溝のように狭い場所においても、掘削溝の壁面に接触せず、かつ壁際の締め固めも充分に行うことができる溝底面の締固め装置を提供する。
【解決手段】 クローラ11のうえにベースマシン13が設けられ、ベースマシンには土砂等の被締固め材料を締固めるための打設ユニット14がアーム連結体20を介して設けられ、アーム連結体は、ベースマシンに立設されたガイドポスト19に沿って上下動可能に設けられた上下可動部21と、左右方向に回動可能なようにリンク22を介して上下可動部に連結された左右可動部23と、前後方向に回動可能なように左右可動部に枢着された前後可動アーム24とを備え、打設ユニット14は打設ヘッド14aを下端に有し、前後方向に回動可能なように前後可動アームに枢着されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表面や地盤に形成された溝の底面において、土砂、粘土またはベントナイト等の建設材料を締固めるために用いられる締固め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物の処理場のために遮水壁を構築する場合には、地盤を掘削して溝を形成し、溝の底面に粘土やベントナイト等の材料を敷き均し、これら粘土やベントナイト等を高密度に締め固めている。また産業廃棄物の処理場に限らず、その他の建設物の構築時にも、路面や地盤等に溝が形成され、溝底面を締め固めることが行われている。このような締め固め工程のため、バックホーのアーム先端に油圧振動機と土砂打設ヘッドを取り付けた締固め装置を使用することが検討されている。
例えば、図4(a)〜(c)に示したような締固め装置があり、いずれも土砂打設ヘッド41を所定箇所に移動させた後に、振動機を駆動させて締め固めるものであるが、壁際の締め固めができなかったり、バックホー本体部42が掘削溝の壁面43に接触してしまうという問題がある。
【0003】
すなわち、図4(a)の装置40Aは、バックホー本体部42とクローラ44とを平行に保ちながら、アーム45aを円状に左右に動かすものであり、土砂打設ヘッド41を壁面43と平行に設置できないため、壁際の締め固めが不完全になるという問題が生じる。
また図4(b)の装置40Bは、バックホー本体部42をクローラ44に対して旋回させ、アーム45bもバックホー本体部42に対して旋回させることにより、土砂打設ヘッド41を壁面43に平行に設置可能とするものであるが、バックホー本体部42が掘削溝の壁面43に接触してしまうという問題がある。
さらに、図4(c)の装置40Cは、バックホー本体部42をクローラ44に対して旋回させ、アーム45c自体を途中で屈曲させることにより、土砂打設ヘッド41を壁面43に平行に設置可能とするものであるが、バックホー本体部42とクローラ44が壁面43に接触してしまうという問題がある。
【0004】
なお、実開昭61−76805号公報(特許文献1)には、アーム自体を途中で屈曲可能に形成された締固め装置が記載されているが、これも、図4(c)と同様に、バックホー本体部とクローラが壁面に接触してしまうような構造になっている。
【特許文献1】実開昭61−76805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の現状を鑑みて本発明の課題は、溝のように狭い場所においても、掘削溝の壁面に接触せず、かつ壁際の締め固めも充分に行うことができる溝底面の締固め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、クローラのうえにベースマシンが設けられ、ベースマシンには土砂等の建設材料を締固めるための打設ユニットがアーム連結体を介して設けられ、アーム連結体は、ベースマシンに立設されたガイドポストに沿って上下動可能に設けられた上下可動部と、ベースマシンに対して左右方向に回動可能なようにリンクを介して前記上下可動部に連結された左右可動部と、ベースマシンに対して前後方向に回動可能なように前記左右可動部に枢着された前後可動アームとを備え、前記打設ユニットは打設ヘッドを下端に有し、前後方向に回動可能なように前記前後可動アームに枢着されたものである溝底面の締固め装置が提供される。
【0007】
本発明の溝底面の締固め装置では、前記クローラと前記ベースマシンとをほぼ同じ幅に形成し、少なくともこの幅で前記打設ヘッドを左右方向に移動し得るように前記左右可動部を形成することが好ましい。このような構成により、ベースマシンの幅分だけ、左右可動部により打設ヘッドを左右に動かせば、締固め装置が掘削溝の壁面に接触することなく、溝底面を残すこと無く締め固めることができる。
【0008】
本発明の溝底面の締固め装置では、前記ベースマシンに締固め装置の各部位を駆動制御するための制御部を設け、この制御部へ無線又は有線方式により制御信号を送るための外部操作装置を備えることが好ましい。このような構成により、外部操作装置を使用すれば、作業員が掘削溝の内部に入り込む必要が無くなり、溝の外側から締固め装置を制御することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の溝底面の締固め装置では、溝のように狭い場所であっても、クローラでベースマシンを壁際に寄せて、左右可動部により打設ヘッドを動かして壁際に配置し、この打設ヘッドで溝底面を締め固めれば、締固め装置が掘削溝の壁面に接触することなく、溝底面を余すこと無く締め固め可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
本発明の締固め装置10は、図1〜図3に示したように、クローラ11のうえにベースマシン13が旋回可能に設けられ、ベースマシン13にはアーム連結体20を介して打設ユニット14が取り付けられている。
ベースマシン13は、クローラ11に旋回可能に固定されたフレーム15に各種装置が配置されている。すなわち、フレーム15の後端上側には油圧装置16aが搭載され、その下方に油圧ポンプ16bが固定され、油圧ポンプ16bの前方に伸縮自在な支持脚16cが設けられている。また油圧装置16aの前側には制御ボックス17が配置され、フレームの旋回中心付近に配線収納ボックス18aが設けられ、その配線収納ボックス18aの前側に油圧配管や油圧モータ等が収納された油圧モータボックス18bが配置され、フレーム15の前端にガイドポスト19が立設されている。ベースマシン13は、図2及び図3に示したように、クローラ11とほぼ同じ幅(機体幅)に形成され、さらに、打設ユニット14及びアーム連結体20もこの機体幅に収まるように設けられている。
【0012】
ここで、油圧装置16a及び油圧ポンプ16bは、締固め装置10に使用されている複数の油圧シリンダーの油圧を制御して伸縮させるためのものである。支持脚16cは必要に応じて締固め表面まで伸張し、打設ユニット14を稼動させる際の支持力を確保するためのものである。制御ボックス17には、クローラ11、ベースマシン13、アーム連結体20及び打設ユニット14を含む締固め装置10の各部位を制御するための制御基板等が収納されており、ここから外部操作装置(図示せず)までは制御ケーブル(図示せず)により接続されている。なお、外部操作装置は、作業員が手で携帯可能なように小型に形成されたものであり、外部操作装置と制御ボックス17とは無線方式により制御信号を送受信することも可能である。配線収納ボックス18aには、電気配線や油圧配管が収納されている。油圧モータボックス18bには、主に、アーム連結体20に設けられた油圧シリンダーに油圧制御用オイルを供給するための油圧配管や油圧モータが収納される。
【0013】
次に、アーム連結体20は、ガイドポスト19に沿って上下動可能に設けられた上下可動部21と、この上下可動部21にリンク22を介して連結された左右可動部23と、この左右可動部23に枢着された前後可動アーム24とを備え、この前後可動アーム24に打設ユニット14が前後方向に回動可能なように枢着されている。
【0014】
ここで、上下可動部21は、ガイドポスト19に上下動可能に環装された角筒体21aと、この角筒体21aに一体に固定されたブラケット21bとを備えたものであり、一方、ガイドポスト19は断面形状がほぼ正方形に形成された中空の柱状体であり、対向する2面の上下方向に長孔19aが穿設されている。ガイドポスト19の中空部内には伸縮シリンダー25が配置され、これらが固定ピン25aにより上端でそれぞれ枢着される。また伸縮シリンダー25の下端には固定ピン25bが取り付けられ、固定ピン25bがガイドポスト19の長孔19aから外側に突出して角筒体21aを枢着する。
したがって、伸縮シリンダー25を伸張すると、上下可動部21の角筒体21aがガイドポスト19に沿って下降し、伸縮シリンダー25を収縮すると上下可動部21の角筒体21aがガイドポスト19に沿って上昇し、これによりアーム連結体20の全体が昇降される。
【0015】
図3(a)〜(c)は、上下可動部21とリンク22と左右可動部23との連結状態を示すため、これら部材を前側から見た図である。なお、図3(a)〜(c)では打設ヘッド14aも併せて図示したが、この打設ヘッド14aは左右可動部23に直接連結されるものではなく、ここでは、打設ヘッド14aの配置が、伸縮シリンダー26の伸縮状態により、どのように変わるかを示したものである。また図3(a)における「左方向」、「右方向」の記載はベースマシン13からアーム連結体20を見たときの左右関係を示したものである。
上下可動部21のブラケット21bには二本のリンク22の上端がそれぞれ固定ピン22aで枢着され、リンク22の下端もそれぞれ固定ピン22bで左右可動部23に枢着されている。二本のリンク22の前側には伸縮シリンダー26が配置され、この伸縮シリンダー26も上下端が固定ピン26a,26bでそれぞれブラケット21b、左右可動部23に枢着される。伸縮シリンダー26は、図3(a)〜(c)に示したように、これを前方から見たときに、二本のリンク22に対して交差する配置で枢着しているため、左右可動部23は、伸縮シリンダー26の伸縮により左右方向に移動させることが可能である。
すなわち、伸縮シリンダー26を収縮させて最も短くすると、左右可動部23は、図3(a)のように最も左側に移動し、逆に、伸縮シリンダー26を伸張させて最も長くしたときには、左右可動部23は図3(b)のように最も右側に移動する。なお、図3(c)は、左右可動部23が中央に位置するときの、伸縮シリンダー26の伸縮状態と、リンク22の配置を示したものである。
【0016】
左右可動部23には、その先端に前後可動アーム24が固定ピン23aで枢着され、その下側に伸縮シリンダー27の後端が固定ピン27aで枢着され、この伸縮シリンダー27の先端に前後可動アーム24の下端が固定ピン27bで枢着されている。したがって、伸縮シリンダー27を伸張すると、前後可動アーム24は固定ピン23aを中心に回動して上端が後方に傾き、逆に、伸縮シリンダー27を収縮すると前後可動アーム24は固定ピン23aを中心に回動して上端が前方に傾く。
一方、前後可動アーム24の中間位置にはブラケット28を介して打設ユニット14が固定ピン28aで枢着され、このブラケット28は打設ユニット14の中間位置に固定されている。また前後可動アーム24の上端には伸縮シリンダー29が固定ピン29aで枢着され、伸縮シリンダー29の先端に打設ユニット14の上端が固定ピン29bで枢着されている。この打設ユニット14には振動機が内蔵されており、この振動機からの振動が下端に設けられた打設ヘッド14aに伝達するように構成されている。
したがって、伸縮シリンダー29を伸張すると、打設ユニット14は固定ピン28aを中心に回動して上端が前方に傾き、打設ヘッド14aは後方向に引き下げられる。逆に、伸縮シリンダー27を収縮すると、打設ユニット14は固定ピン28aを中心に回動して上端が後方に傾き、打設ヘッド14aは前方向に突き出される。
打設ユニット14の前後方向の傾斜角度を調整する方法について、さらに附言すれば、打設ユニット14は、固定ピン28aにより前後可動アーム24に枢着されたものであるため、伸縮シリンダー27を伸縮させたときには、打設ユニット14も前後可動アーム24と共に傾斜するものである。したがって、打設ユニット14の傾斜角度は、伸縮シリンダー27と伸縮シリンダー29の両方の伸縮により調整される。
【0017】
次に、締固め装置10により溝底面を締め固める方法について説明する。
路面や地盤面を掘削して形成した溝の底面に締固め装置10を設置する。このとき、締固め装置10は、図2に示したように、ほぼ同じ幅で形成されたクローラ11とベースマシン13との平面位置が重なり、機体幅は最小になるように設定されている。締固め装置10は、外部操作装置により作業員が路面や地盤面上から操作され、たとえ溝壁面が崩落しても作業員の溝内での事故を防止することができる。
溝の底面に粘土やベントナイト等の被締固め材料を敷き均した後に、締固め装置10をクローラ11により走行して締固め箇所付近まで移動する。
そして、各伸縮シリンダーを伸縮することにより、打設ヘッド14aの位置合わせを行う。すなわち、伸縮シリンダー27と伸縮シリンダー29とを伸縮させて打設ユニット14の前後方向の傾斜角度を調整し、打設ヘッド14aの底面が溝底面にほぼ平行になるようにする。また伸縮シリンダー26を伸縮させて打設ユニット14の左右方向の位置を調整する。このようにして位置合わせが終了したら、伸縮シリンダー25を伸張して打設ヘッド14aを下降させて締固め面に接地させ、打設ユニット14の振動機を稼動させる。これにより振動が打設ヘッド14aまで伝わり、溝底面に敷き均された被締固め材料が締め固められる。この後、伸縮シリンダー25を収縮して打設ヘッド14aを上昇させ、伸縮シリンダー26を伸縮させて打設ユニット14の位置を左右方向に若干ずらし、再び、打設ヘッド14aを下降させて被締固め材料を締め固める。
このようにして、溝の幅方向、すなわち左右方向の締め固めが終了したら、締固め装置10をクローラ11により走行させて打設ユニット14の位置を前後方向に若干ずらし、上記と同様にして打設ヘッド14aの上下方向の移動と左右方向の移動とを繰り返し行えば、溝底面に敷き均された被締固め材料の所要長さにわたる締め固め作業が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる締固め装置を側方から見た図である。
【図2】本発明にかかる締固め装置を上方から見た図である。
【図3】(a)〜(c)は締固め装置における上下可動部とリンクと伸縮シリンダーと左右可動部との連結状態を示すため、これら部材を前側から見た図である。
【図4】(a)〜(c)は従来の締固め装置を上方から見た図である。
【符号の説明】
【0019】
10 締固め装置
11 クローラ
13 ベースマシン
14 打設ユニット
19 ガイドポスト
20 アーム連結体
21 上下可動部
22 リンク
23 左右可動部
24 前後可動アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラのうえにベースマシンが設けられ、ベースマシンには土砂等の建設材料を締固めるための打設ユニットがアーム連結体を介して設けられ、
アーム連結体は、ベースマシンに立設されたガイドポストに沿って上下動可能に設けられた上下可動部と、ベースマシンに対して左右方向に回動可能なようにリンクを介して前記上下可動部に連結された左右可動部と、ベースマシンに対して前後方向に回動可能なように前記左右可動部に枢着された前後可動アームとを備え、
前記打設ユニットは打設ヘッドを下端に有し、前後方向に回動可能なように前記前後可動アームに枢着されたものである溝底面の締固め装置。
【請求項2】
前記クローラと前記ベースマシンとがほぼ同じ幅に形成され、少なくともこの幅で前記打設ヘッドが左右方向に移動し得るように前記左右可動部を形成したものである請求項1に記載の溝底面の締固め装置。
【請求項3】
前記ベースマシンに締固め装置の各部位を駆動制御するための制御部を設け、この制御部へ無線又は有線方式により制御信号を送るための外部操作装置を備えるものである請求項1に記載の溝底面の締固め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−186908(P2007−186908A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5981(P2006−5981)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【Fターム(参考)】