溶接方法及び溶接整形装置
【課題】溶接凝固部がハンピングビードとなることを抑制するのに有利な溶接方法及び溶接整形装置を提供する。
【解決手段】溶接方法は、第1対象物1と第2対象物2とを合わせた状態で加熱手段により加熱して溶接凝固部5を形成する。溶接凝固部5に整形手段4を接触させ、溶接凝固部5を整形する。
【解決手段】溶接方法は、第1対象物1と第2対象物2とを合わせた状態で加熱手段により加熱して溶接凝固部5を形成する。溶接凝固部5に整形手段4を接触させ、溶接凝固部5を整形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接方法及び溶接整形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビーム等の高エネルギ密度ビームで溶接して溶接品を形成する技術を例にとって背景技術について説明する。高エネルギ密度ビームによれば、単位面積当たりの投入エネルギが多いため、溶接強度を向上させるのに有利である。近年、図16及び図17に示すように、レーザビームを用いて複数の板体1X,2X同士を溶接して溶接品を形成することが行われている。
【0003】
また特許文献1(特公平2−43590号公報)には、薄鋼板の端部同士を突き合わせ状態として溶接するシーム溶接において、レーザビームを光ファイバーにより搬送し、レーザビームのスポット径を鋼板の厚みの2倍以上に、もしくは、鋼板の突き合わせ隙間の10倍以上のいずれかに設定すると共に、エネルギ密度をプラズマ発生限界より低くした状態で溶接を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開昭62−101382号公報)には、プーリのフランジ部を溶接で接合する溶接方法において、プーリのフランジの外周面(最大径部)の電極を外側から接触させ、且つ、非導電性及び耐熱性をもつリング状をなすセラミックス製の押さえ板をプーリのフランジの外側に配置してフランジをこれの厚み方向に押さえ板で挟んだ状態で、電極に溶接電流を流し、ジュール熱でフランジを溶接する技術が開示されている。
【特許文献1】特公平2−43590号公報
【特許文献2】特開昭62−101382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した背景技術によれば、図17に示すように、板体1X,2Xの合わせ面同士の境界に溶接凝固部5Xが形成されている。そして溶接強度及びその信頼性を高めることがますます要請されている。しかしながら、溶け込み深さを増加させるべく、入熱量を大きくすると、図18に示すように、溶接凝固部5Xがハンピング現象を起こし、ハンピングビードとなるおそれがある。ハンピングビードとは、溶融凝固部が厚みの不均等を発生させつつ曲走する部位をいう。
【0006】
また上記した特許文献1,2によれば、入熱量を大きくすると、溶接凝固部がハンピングビードとなることがある。
【0007】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、溶接凝固部がハンピングビードとなることを抑制するのに有利な溶接方法及び溶接整形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1様相に係る溶接方法は、第1対象物と第2対象物とを合わせた状態で加熱手段により加熱して溶接凝固部を形成する溶接方法において、溶接凝固部に整形手段を接触させ、溶接凝固部を整形することを特徴とするものである。溶接凝固部が整形手段により整形されるため、ハンピングビードが抑制される。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接凝固部の信頼性を高めることができる。
【0009】
第2様相に係る溶接整形装置は、第1対象物と第2対象物とを合わせた状態で加熱手段により加熱した溶接凝固部を整形する溶接整形装置であり、溶接凝固部に接触可能な接触面を有する整形手段を有することを特徴とするものである。溶接凝固部が整形手段により整形されるため、ハンピングビードが抑制される。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接凝固部の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
第1様相に係る溶接方法及び第2様相に係る溶接整形装置によれば、溶接凝固部が整形手段により整形されるため、ハンピングビードが抑制される。従って、第1対象物と第2対象物との間に段差が形成されている場合であっても、あるいは、加熱条件が変動するような場合等であっても、良好な溶接凝固部が形成され、溶接条件の余裕度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
加熱手段としては高エネルギ密度ビーム、アーク、通電、ガス等の公知の手段を採用することができる。高エネルギ密度ビームとしては、レーザビームまたは電子ビームが挙げられる。レーザとしてはYAGレーザ、CO2レーザ、ルビーレーザ、Arレーザ、ガラスレーザが例示される。第1対象物及び第2対象物を構成する金属としては、加熱により溶融させて接合できるものであれば良く、鉄系でも良いし、非鉄系でも良い。鉄系としては軟鋼系でも良いし、場合によっては硬鋼系でも良いし、合金鋼系でも良い。合金鋼系としてはステンレス鋼系等を例示できる。ステンレス鋼系としては、フェライト系、オーステナイト系、場合によってはマルテンサイト系でも良い。溶接品が鉄系である場合には、炭素含有量は質量比で1.0%以下、0.8%以下、0.5%以下、0.3%以下とすることができ、さらに0.1%以下、0.05%以下とすることができる。なお、鉄系の場合には、過剰焼き入れを抑制するためには、炭素含有量を抑えることが好ましい。
【0012】
第1対象物及び第2対象物は板体である形態を例示することができる。従って溶接品は、金属を基材とする複数の板体を溶接で組み付けて構成されている形態を例示することができる。この溶接品は、好ましくは、複数の板体の縁部同士を合わせると共に、加熱により溶接凝固部を介して複数の板体を接合されている。
【0013】
整形手段は、加熱手段により加熱されている部分の後方に配置されている形態を例示することができる。この場合、加熱手段で加熱される部分と整形手段との距離が可変とされている形態を例示することができる。当該距離を可変とすれば、溶接凝固部の整形の程度を調整することができる。当該距離が過剰に長くて溶接凝固部が過剰に冷えているときには、溶接凝固部の整形の程度が制限される。当該距離が過剰に短くて溶接凝固部の溶融部分が過剰に多いときには、溶融部分が流出するおそれがある。これらの事情を考慮して当該距離を設定することが好ましい。
【0014】
整形手段は、溶接凝固部に接触する接触面を有する加圧体である形態を例示することができる。加圧体としては回転体を例示できる。回転体の場合には、溶接凝固部を連続的に整形するのに有利である。回転体は、回転ローラで形成しても良いし、キャタピラーやベルト等のエンドレス体で形成しても良い。回転体は従動タイプでも良いし、駆動タイプでも良い。整形手段は、溶接凝固部を挟むように溶接凝固部に接触可能な第1加圧体と第2加圧体とを備えている形態を例示することができる。第1加圧体及び第2加圧体のうち少なくも一方は、溶接凝固部に接触する接触面を有する回転ローラである形態を例示することができる。
【0015】
溶接凝固部の厚み方向において、第1加圧体と第2加圧体との距離は可変とされている形態を例示することができる。この場合、溶接凝固部の厚みの変動に対処することができる。更に距離の変更により溶接凝固部に対する鍛造効果も調整できる。
【0016】
また整形手段は、溶接凝固部に接触する接触面を有し且つ回転体の回転に伴い溶接凝固部に接触面が接触しつつ回転するエンドレス状をなすエンドレス体と、エンドレス体を保持する保持部とを備えている形態を例示することができる。エンドレス体としてベルト、チェーン等が例示される。エンドレス体は従動タイプでも良いし、駆動タイプでも良い。
【0017】
本発明によれば、入熱量が大きいときであっても、整形手段によりハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶接を高速化することができ、かつ、溶け込み深さを大きくできる。この場合、第1対象物と第2対象物とが板体であるとき、溶接凝固部の溶け込み深さをHAミリメートルとし、第1対象物である第1板体の厚みをt1ミリメートルとしたとき、HA/t1=2〜20に設定されており、溶接凝固部の溶け込み深さ/板体の厚みの比が大きく設定されていることが好ましい。HA/t1としては、溶接品の種類に応じて設定できるものの、2.5〜20の範囲,2〜19の範囲、2〜18の範囲、2〜15の範囲、2〜10の範囲とすることができる。なお、HA/t1については、下限値としては2.2または2.5または3または3.5または4または5を例示できる。この下限値と組み合わせ得る上限値としては、20または15または10または8を例示できる。
【0018】
溶接凝固部の厚み方向の幅をWとしたとき、W≧t1に設定されている形態を例示することができる。ここで、W=t1×2とすることができる。従って、W=(t1×2)×αとすることができる。α=0.85〜1.15、あるいは、0.95〜1.05とすることができる。
【0019】
整形後の溶接凝固部は、溶け込み深さ方向に露出する露出面を有する形態を採用することができる。殊に、整形後の溶接凝固部は、異なる方向に指向すると共に外方に露出する2つの露出面を有している形態を例示することができる。従って溶接凝固部は、外方に露出すると共に第1板体の厚み方向の一方側に指向する第1露出面と、外方に露出すると共に第2板体の厚み方向の他方側に指向する第2露出面とを有する形態を例示することができる。この場合、第1露出面及び第2露出面の双方が外方に露出しているため、第1露出面及び第2露出面の双方から溶接凝固部の溶け込み深さを目視または撮像装置等で視認することができ、溶接凝固部の強度の信頼性を一層高めることができる。
【0020】
好ましい形態によれば、第1対象物と第2対象物とが板体であり、第1板体の厚みをt1とし、第2板体の厚みをt2としたとき、溶接凝固部の第1露出面は、溶接凝固部の厚み方向において、第1板体の縁部の表面の延長線に対して内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されており、かつ、溶接凝固部の第2露出面は、溶接凝固部の厚み方向において、第2板体の縁部の表面の延長線に対して内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されている形態を例示することができる。
【0021】
従って好ましい形態によれば、溶接凝固部の第1露出面は第1板体の第1縁部の表面の延長線に沿って設定されていると共に、溶接凝固部の第2露出面は第2板体の第2縁部の表面の延長線に沿って設定されている形態を例示することができる。また、溶接凝固部の露出面は整形手段により整形された跡を有する形態を例示することができる。跡が凹または凸であれば、溶接凝固部を塗装する場合、塗装膜の密着性を改善することができる。
【0022】
また溶接凝固部は、外方に露出すると共に第1板体及び第2板体のうちの一方側において外方に指向する露出面をもち、露出面と反対側の部位では、第1板体及び第2板体のうちの他方が露出している形態を採用することができる。この場合には、レーザビーム等の加熱源による加熱位置がずれたとき、あるいは、第1板体及び第2板体の厚みが均等でないときに生じ易い。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の実施例1について図1〜図6を参照して具体的に説明する。本実施例は縁継手構造に適用したものである。まず、図1に示すように、第1対象物として金属製の第1板体1を用いると共に、第2対象物として金属製の第2板体2を用いる。第1板体1の第1縁部11と第2板体2の第1板体1の第1縁部11と第2板体2の第2縁部21とを重ね合わせる。第1板体1及び第2板体2は鉄系金属(例えば質量比で炭素含有量0.3%以下、特に0.1%以下)を基材とする。第1板体1の第1縁部11の厚みはt1として、第2板体2の第2縁部21の厚みはt2として示される。ここでt1=t2またはt1≒t2とされている。但し、t1<t2でも、t1>t2でも良い。
【0024】
図1から理解できるように、レーザビーム7の照射前において、重ね合わせた第1板体1の第1縁部11の第1端面13と第2板体2の第2縁部21の第2端面23とは、同一平坦面状とされている。これによりレーザビーム7を照射させる照射均一性を高めることができ、溶接ビード部5を強度を高めるのに有利である。但し、第1端面13と第2端面23との間に段差が多少存在していても良い。
【0025】
そして、図1に示すように、加熱手段である高エネルギ密度ビームとして機能するレーザビーム7(YAG)を上方からレーザ発信器72により第1縁部11及び第2縁部21の端面13,23に照射し、溶融させる。この結果、溶融部分6を形成し凝固させ、溶接凝固部として機能する溶接ビード部5を形成する。なお、レーザビーム溶接は、単位面積当たりの入熱量が大きいため急熱を引き起こし、また、冷却速度が速いため急冷を引き起こす。なお、溶接の際には、レーザビーム7は第1縁部11及び第2縁部21に対して矢印X1方向(溶接方向、図4参照)に相対移動する。この場合、第1縁部11及び第2縁部21を固定した状態でレーザビーム7を移動させても良いし、あるいは、レーザビーム7を固定させた状態で第1縁部11及び第2縁部21を移動させても良い。
【0026】
図4に示すように、整形手段4は、レーザビーム7による入熱位置7cの後方に配置されている。後方とは、レーザビーム7が既に走査された部位をいう。整形手段4は、平滑な第1ローラ面43(第1接触面)をもつ第1回転体41(第1加圧体)と、平滑な第2ローラ面44(第2接触面)をもつ第2回転体42(第2加圧体)とを備えている。図3に示すように第1回転体41は第1基体46に回転可能に設けられている。第2回転体42は第2基体47に回転可能に設けられている。第1回転体41及び第2回転体42は駆動モータに接続されておらず、空転可能な従動タイプである。但し必要に応じて第1回転体41及び第2回転体42を駆動モータに接続し、駆動タイプとしても良い。
【0027】
第1回転体41及び第2回転体42は同一径とされている。第1回転体41の軸芯P1及び第2回転体42の軸芯P2は互いに平行とされており、縦方向に沿っている。第1回転体41及び第2回転体42は、これを冷却する冷却通路を有する構造とすることができる。但し、冷却回路を有せずとも良い。また、第1回転体41及び第2回転体42は金属で形成されていても良いし、セラミックスで形成されていても良い。第1回転体41及び第2回転体42を金属で形成すれば、熱伝導性が良好であるため、溶融部分または溶接ビード部5の早期冷却に有利である。金属の場合には、鉄系、銅系、チタン系、アルミニウム系等を例示できる。セラミックスの場合には、アルミナ、シリカ、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア等を例示できる。
【0028】
本実施例によれば、レーザビーム7による入熱位置7cと整形手段4との間の距離L1(図4参照)は、可変とされている。この場合には、レーザビーム7による入熱位置7cに対して第1基体46及び第2基体47を溶接方向(矢印X1方向)において相対的に変位させることができる。この場合、第1板体1及び第2板体2が固定であるときには、レーザビーム7を第1板体1及び第2板体2に対して相対移動させることができる。このようにレーザビーム7が移動するときには、第1回転体41と第2回転体42をレーザビーム7に追従させることが好ましい。
【0029】
またレーザビーム7が固定であるときには、第1板体1及び第2板体2をレーザビーム7に対して相対移動させることができる。この場合、第1回転体41及び第2回転体42は固定位置に配置されていても良いが、距離L1を可変とするようにレーザビーム7に対して移動可能に配置されていても良い。
【0030】
上記した距離L1(図4参照)は、第1回転体41と第2回転体42との間の距離LAが最接近している位置LBと、レーザビーム7による入熱位置7cとの距離に相当する。溶接条件等に応じて、距離L1は適宜選択できるが、0<L1<100ミリメートル、0<L1<50ミリメートル、殊に0<L1<30ミリメートルの関係にすることができる。距離L1を変化させることにより、整形手段4で整形するときにおける溶接ビード部5の温度を選択することができる。例えば、溶接ビード部5の表層及び内層が固化しているときに整形手段4で整形する形態、あるいは、溶接ビード部5の表層が固化しているものの内層が溶融状態であるときに整形手段4で整形する形態、あるいは、溶接ビード部5の表層が半凝固状態であるときに整形手段4で整形する形態等を、必要に応じて選択することができる。
【0031】
また本実施例によれば、溶接ビード部5の厚み方向において、第1回転体41の第1ローラ面43と第2回転体42の第2ローラ面44との間における距離LA(図4参照)は、可変とされている。これにより溶接ビード部5の厚みを調整できる。距離LAを調整すれば、溶接ビード部5に対する鍛造効果も期待できる。この場合、溶接ビード部5の組織の強化、ピンホール等の低減に有利である。
【0032】
上記したように溶接ビード部5が形成されたら、図3〜図5に示すように、整形手段4は溶接ビード部5にあてがわれ、溶接ビード部5を整形する。この場合、図3に示すように、第1回転体41の第1ローラ面43は、溶接ビード部5の厚み方向の一方の第1露出面51に当接する。第2回転体42の第2ローラ面44は、溶接ビード部5の厚み方向の他方の第2露出面52に当接する。このように溶接ビード部5の露出面51、52が整形手段4により整形されるため、外観が良好な溶接ビード部5を得ることができる。整形の際に、図3に示すように、第1回転体41の第1ローラ面43は第1板体1の第1表面14に当接すると共に、第2回転体42の第2ローラ面44は第2板体2の第2表面24に当接する。これにより溶融ビード部5の厚みが規制される。
【0033】
本実施例によれば、入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、整形手段4により溶接ビード部5が整形されるため、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の強度を増加させるとともに、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。
【0034】
図6は整形後の溶接ビード部5を示す。図6に示すように、整形後の溶接ビード部5は、外方に露出すると共に第1板体1の厚み方向の一方側に指向する第1露出面51と、外方に露出すると共に第2板体2の厚み方向の他方側に指向する第2露出面52と、第1露出面51及び第2露出面52に交差する第3露出面53とを有する。なお露出面51,52は溶け込み方向(レーザビーム照射方向)に沿って延設されており、外方から視認できる。
【0035】
図6に示すように、第1露出面51及び第2露出面52は、溶接ビード部5の厚み方向において互いに逆方向に指向している。第1露出面51は第1回転体41の第1ローラ面43により整形されたものであり、第1板体1の第1縁部11の第1表面14に沿った平坦状とされている。第2露出面52は第2回転体42の第2ローラ面44により整形されたものであり、第2板体2の第2縁部21の第2表面24に沿った平坦状とされている。
【0036】
上記したように溶接ビード部5の第1露出面51及び第2露出面52は、第1ローラ面43及び第2ローラ面44により整形されているため、第1ローラ面43及び第2ローラ面44の跡を有することがある。跡が凹または凸であれば、塗装する場合に塗装膜の密着性を高めることができる。
【0037】
上記した本実施例によれば、図6に示すように、溶接ビード部5の第1露出面51は第1板体1の第1縁部11の第1表面14の延長線上に設定されている。また、溶接凝固部5の第2露出面52は第2板体2の第2縁部21の第2表面24の延長線上に設定されている。
【0038】
換言すれば、第1板体1の厚みをt1とし、第2板体2の厚みをt2としたときには、溶接ビード部5の第1露出面51は、第1板体1の第1縁部11の第1表面14の延長線に対して厚み方向の内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されている。また、第2露出面52は、第2板体2の第2縁部21の第2表面24の延長線に対して厚み方向の内方または外方にt2/5(ミリメートル)以内に設定されている。
【0039】
本実施例によれば、入熱量を増加させて溶接ビード部5の溶け込み深さを深くできるため、溶接ビード部5の溶け込み深さをHAミリメートルとし、第1板体1の第1縁部11の厚みをt1ミリメートルとしたとき、HA/t1=4〜13の範囲、殊に4〜11の範囲、4〜8の範囲に設定することができる。従って、(溶接ビード部5の溶け込み深さ)/(第1板体1の厚み)の比が大きく設定されている。このように溶け込み深さを深くすることは、通常の溶接ではできない。
【0040】
更に本実施例によれば、溶接ビード部5の厚み方向の幅をW(図6参照)としたとき、W≧t1に設定されている。t1+t2=t3とすれば、W=t3、W≒t3に設定されている。よってW/t3=0.85〜1.15の範囲、殊に0.95〜1.05の範囲に設定されている。
【0041】
上記のように溶け込み深さが深い溶接ビード部5は、第1板体1及び第2板体2の第1縁部11及び第2縁部21を強固に接合している。従って第1板体1及び第2板体2とからなる中空室901をもつ容器900(図3参照)を製造することができる。
【0042】
以上説明したように本実施例によれば、整形手段4を構成する第1回転体41と第2回転体42により溶接ビード部5が整形されるため、ハンピングビードが抑制される。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。
【0043】
このように入熱量が大きいときであってもハンピングビードが抑制されるため、本実施例によれば、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。従って本実施例によれば、(溶接ビード部5の溶け込み深さ)/(第1板体1の厚みt1)の比を、通常では得られないほどに大きく設定することができる。
【0044】
また本実施例によれば、溶接ビード部5の第1露出面51及び第2露出面52は外方に露出しているため、溶接ビード部5の溶け込み深さを外方から目視または撮像装置等で視認し易い。このため溶接ビード部5の強度の信頼性を高めることができる。殊に本実施例によれば、溶接ビード部5の厚みは、重ね合わせた第1板体1の第1縁部11と第2板体2の第2縁部21との合計厚み(t3)と同程度に設定されているため、溶接ビード部5の厚みが確保され、溶接ビード部5の強度を高めることができ、溶接ビード部5の強度の信頼性を高めることができ、更に外観の見栄え性を向上させることができる。
【0045】
また本実施例によれば、溶接ビード部5が多少変形していたとしても、整形手段4である第1回転体41の第1ローラ面43及び第2回転体42の第2ローラ面44により溶接ビード部5が速やかに整形される。このため、レーザビーム7の照射前において、重ね合わせた第1板体1の第1縁部11の第1端面13と第2板体2の第2縁部21の第2端面23との間に段差が多少存在しているときであっても、その段差の影響を吸収する方向に溶接ビード部5を形成でき、良好な溶接ビード部5を形成するのに有利である。更に前述したように入熱量を大きくできるため、前記した段差があったとしても、その段差の影響を吸収する方向に溶接ビード部5を形成できる。従って溶接の際の条件余裕度を革新的に向上させることができる。
【0046】
更に溶接の際には、レーザビーム7は連続溶接のため第1板体1及び第2板体2に対して矢印X1方向(溶接方向)に相対的に移動する。この場合、レーザビーム7の相対移動に対して整形手段4を追従させて第1板体1及び第2板体2に対して相対的に移動させれば、溶接ビード部5を連続的に整形できる。このため生産性が向上し、コストダウンに適する。
【0047】
また本実施例によれば、溶接ビード部5がまだ高温である間に、溶接ビード部5が整形手段4である第1回転体41の第1ローラ面43及び第2回転体42の第2ローラ面44に接触してすばやく冷却される。このため溶接ビード部5の酸化が抑制され、防錆性が向上する。この意味では、第1回転体41の第1ローラ面43及び第2回転体42の第2ローラ面44は、熱伝導性が良好な金属(例えば銅、銅合金)で形成することができる。
【0048】
(試験例)
図7は実施例1に係る試験例の溶接品の断面の写真を示す。溶接条件としては、レーザをYAGレーザとし、レーザ出力を4.5kWとし、ビーム集光径を0.6ミリメートルとし、第1板体1及び第2板体2の材質をステンレス鋼とし、第1板体1の厚みを0.6ミリメートル、第2板体2の厚みを0.6ミリメートルとし、溶接速度を3メートル/分とし、距離L1を8ミリメートルとし、第1回転体41及び第2回転体42の材質を銅合金とし、第1回転体41の外径を45ミリメートルとし、第2回転体42の外径を45ミリメートルとした。この試験例によれば、HAは3.8ミリメートルとされている。従ってHA/t1=3.8ミリメートル/0.6ミリメートル≒6.3に設定されている。
【0049】
この試験例によれば、(溶接ビード部5の溶け込み深さ)/(第1板体の厚み)の比を大きく設定することができる。また、溶接ビード部5の厚み方向の幅をWとしたとき、Wは1.2ミリメートル程度とされているため、W≧t1であり、W=t1×2とすることができる。
【0050】
図7の写真から理解できるように、溶接ビード部の第1露出面は外方に露出しつつ、第1板体の第1縁部の第1表面のほぼ延長線上に設定されている。また溶接ビード部の第2露出面は外方に露出しつつ、第2板体の第2縁部の第2表面のほぼ延長線上に設定されている。
【実施例2】
【0051】
図8〜図10は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図10に示すように整形手段4は、平滑な第1ローラ面43(第1接触面)をもつ第1回転体41と、平滑な第2ローラ面44(第2接触面)をもつ第2回転体42とを備えている。第1回転体41は第1基体46に回転可能に設けられている。第2回転体42は第2基体47に回転可能に設けられている。第1回転体41及び第2回転体42は駆動モータに接続されておらず、空転可能な従動タイプである。第1回転体41及び第2回転体42は同一径とされている。第1回転体41の軸芯P1及び第2回転体42の軸芯P2は互いに平行とされており、横方向に沿っている。
【0052】
溶接にあたっては、図8から理解できるように、レーザビーム7の照射前において、第1板体1の第1縁部11と第2板体2の第2縁部21とを重ね合わせると共に、横方向に沿わせておく。重ね合わせた第1板体1の第1縁部11の第1端面13と第2板体2の第2縁部21の第2端面23とは、同一平坦面状とされている。これによりレーザビーム7を照射させる照射均一性を高めることができ、溶接ビード部5の強度を高めるのに有利である。但し、第1端面13と第2端面23との間に段差が多少存在していても良い。
【0053】
そして、図8に示すように、加熱手段である高エネルギ密度ビームとして機能するレーザビーム7(YAG)をレーザ発信器72から第1縁部11及び第2縁部21に横方に向けて照射し、第1端面13と第2端面23を溶融させる。この結果、溶融部分6を形成して凝固させ、溶接凝固部として機能する溶接ビード部5を形成する。
【0054】
レーザビーム7を横方から照射する場合には、溶接ビード部5が重力方向の下方向に垂れるため、溶接ビード部5を下から支えるように回転体が1個でも足りることがある。即ち、下側の第2回転体42を用いるものの、上側の第1回転体41を省くこともできる。この場合、コスト低減、治具簡素化に有利である。
【0055】
上記したように溶接ビード部5が形成されたら、図10に示すように、整形手段4は溶接ビード部5にあてがわれ、溶接ビード部5を整形する。この場合、第1回転体41の第1ローラ面43は、溶接ビード部5の第1露出面51に当接し、第2回転体42の第2ローラ面44は、溶接ビード部5の第2露出面52に当接する。このように溶接ビード部5の露出面51、52が整形手段4により整形されるため、外観が良好な溶接ビード部5を得ることができる。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。故に、入熱量を大きくして高速化すると共に溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。
【0056】
このような本実施例においては、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。従って(溶接ビード部5の溶け込み深さ)/(第1板体1の厚みt1)の比を、通常では得られないほどに大きく設定することができる。
【実施例3】
【0057】
図11は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。整形手段4は、平滑な第1ローラ面43(第1接触面)をもつ第1回転体41と、平滑な第2ローラ面44(第2接触面)をもつ第2回転体42とを備えている。第1ローラ面43及び第2ローラ面44に向けて離形剤91を塗布する塗布装置90が設けられている。この場合には、溶接ビード部5に対する第1回転体41及び第2回転体42の離形性を離形剤91により向上させ得ると共に、第1回転体41及び第2回転体42の過熱を抑制できる。
【実施例4】
【0058】
図12は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。整形手段4は、平滑な第1ローラ面43をもつ第1回転体41と、平滑な第2ローラ面44をもつ第2回転体42とを備えている。第1回転体41は、第1基体46に保持されている駆動機構としての第1駆動モータ41mにより回転駆動される。第2回転体42は、第2基体47に保持されている駆動機構としての第2駆動モータ42mにより回転駆動される。なお、第1回転体41と第2回転体42との間に回転数差を設けることができる。この場合、第1露出面51と第2露出面52とで溶接線長の異なる場合に対応し易い。また場合によっては、第1回転体41及び第2回転体42は同期回転させることができる。
【実施例5】
【0059】
図13は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。第1板体1の厚みt1よりも、第2板体2の厚みt2が厚く設定されている。溶接ビード部5は、溶け込み深さ方向に延設されていると共に第1板体1側において外方に指向する露出面51をもつ。そして、露出面51と反対側の部位では、第2板体2の表面24が露出している。図13に示すように、第1回転体41は第1露出面51に当てられると共に、第2回転体42は第2板体2の表面24に当てられている。この場合においても、第1回転体41と第2回転体42とで溶接ビード部5が挟持されるため、第1露出面51を良好に整形することができる。
【実施例6】
【0060】
図14は実施例6を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。整形手段4は、平滑な第1ローラ面43をもつ粗整形用の第1回転体41と、平滑な第2ローラ面44をもつ粗整形用の第2回転体42とを備えている。更に整形手段4は、平滑な第1ローラ面430をもつ仕上整形用の第1回転体410と、平滑な第2ローラ面440をもつ仕上整形用の第2回転体420とを備えている。粗整形の後で仕上整形を実施するため、溶接ビード部5が良好に整形される。
【実施例7】
【0061】
図15は実施例7を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図15に示すように、この整形手段4Bは、溶接ビード部5の厚みを挟むように配置されたエンドレス装置81Bと第2エンドレス装置85Bとを備えている。
【0062】
第1エンドレス装置81Bは、エンドレス状をなす第1エンドレス体82Bと、第1エンドレス体82Bを保持する第1保持部としての第1回転体83Bとを備えている。同様に、第2エンドレス装置85Bは、エンドレス状をなす第2エンドレス体86Bと、第2エンドレス体86Bを保持する第2保持部としての第2回転体87Bとを備えている。
【0063】
図15に示すように、前記した第1エンドレス体82Bは、複数の分割体820がエンドレス状に且つ相対移動可能に接続されたキャタピラ構造とされている。第1エンドレス体82Bは、溶接ビード部5に接触する第1接触面84Bを有する。第1回転体83Bの回転に伴い、第1エンドレス体82Bは、これの第1接触面84Bが溶接ビード部5に接触しつつ回転する。第2エンドレス体86Bも同様な構造とされている。
【0064】
本実施例においても、レーザビーム7により溶接ビード部5が形成されたら、図15に示すように、整形手段4Bは溶接ビード部5を整形する。つまり、第1エンドレス体82Bの第1接触面84Bは、溶接ビード部5に当接する。第2エンドレス体86Bの第2接触面88Bは、溶接ビード部5に当接する。
【0065】
このように溶接ビード部5が整形手段4Bにより整形されるため、外観が良好な溶接ビード部5を得ることができる。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の強度を増加させると共に、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。
【0066】
(その他)
実施例1では、整形手段を構成する回転体41,42は溶接ビード5のビード高さ方向の全長を押さえることにしているが、場合によっては、溶接ビード5のビード高さ方向の全長の一部(例えばビード高さ方向の全長の40%以上または50%以上)を押さえることにしても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は溶接品及び溶接方法に利用できる。本発明は、特に、レーザビーム等の高エネルギ密度ビームに代表される加熱手段により溶接した溶接品及び溶接方法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射している状態を示す構成図である。
【図2】第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射して溶融部分または溶接ビード部を形成している状態を示す構成図である。
【図3】レーザビームで形成した溶接ビード部を整形手段により整形している状態を示す構成図である。
【図4】レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図5】レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図6】溶接ビード部の断面を模式的に示す構成図である。
【図7】試験例に示す溶接ビード部の断面写真である。
【図8】実施例2に係り、第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射している状態を示す構成図である。
【図9】実施例2に係り、第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射して溶融部分または溶接ビード部を形成している状態を示す構成図である。
【図10】実施例2に係り、レーザビームで形成した溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図11】実施例3に係り、レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図12】実施例4に係り、レーザビームで形成した溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図13】実施例5に係り、レーザビームで形成した溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図14】実施例6に係り、レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図15】実施例7に係り、レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図16】従来技術に係り、第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射する状態を示す構成図である。
【図17】従来技術に係り、第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射して溶接ビード部を形成している状態を示す構成図である。
【図18】従来技術に係り、レーザビームを照射して形成された溶接ビード部がハンピングビードとなっている状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0069】
図中、1は第1板体(第1対象物)、11は第1縁部、2は第2板体(第2対象物)、21は第2縁部、4は整形手段、41は第1回転体、42は第2回転体、43は第1ローラ面、44は第2ローラ面、81Bは第1エンドレス装置、85Bは第2エンドレス装置、5は溶接ビード部(溶接凝固部)、6は溶融部分、7はレーザビーム(高エネルギ密度ビーム、加熱手段)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接方法及び溶接整形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビーム等の高エネルギ密度ビームで溶接して溶接品を形成する技術を例にとって背景技術について説明する。高エネルギ密度ビームによれば、単位面積当たりの投入エネルギが多いため、溶接強度を向上させるのに有利である。近年、図16及び図17に示すように、レーザビームを用いて複数の板体1X,2X同士を溶接して溶接品を形成することが行われている。
【0003】
また特許文献1(特公平2−43590号公報)には、薄鋼板の端部同士を突き合わせ状態として溶接するシーム溶接において、レーザビームを光ファイバーにより搬送し、レーザビームのスポット径を鋼板の厚みの2倍以上に、もしくは、鋼板の突き合わせ隙間の10倍以上のいずれかに設定すると共に、エネルギ密度をプラズマ発生限界より低くした状態で溶接を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開昭62−101382号公報)には、プーリのフランジ部を溶接で接合する溶接方法において、プーリのフランジの外周面(最大径部)の電極を外側から接触させ、且つ、非導電性及び耐熱性をもつリング状をなすセラミックス製の押さえ板をプーリのフランジの外側に配置してフランジをこれの厚み方向に押さえ板で挟んだ状態で、電極に溶接電流を流し、ジュール熱でフランジを溶接する技術が開示されている。
【特許文献1】特公平2−43590号公報
【特許文献2】特開昭62−101382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した背景技術によれば、図17に示すように、板体1X,2Xの合わせ面同士の境界に溶接凝固部5Xが形成されている。そして溶接強度及びその信頼性を高めることがますます要請されている。しかしながら、溶け込み深さを増加させるべく、入熱量を大きくすると、図18に示すように、溶接凝固部5Xがハンピング現象を起こし、ハンピングビードとなるおそれがある。ハンピングビードとは、溶融凝固部が厚みの不均等を発生させつつ曲走する部位をいう。
【0006】
また上記した特許文献1,2によれば、入熱量を大きくすると、溶接凝固部がハンピングビードとなることがある。
【0007】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、溶接凝固部がハンピングビードとなることを抑制するのに有利な溶接方法及び溶接整形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1様相に係る溶接方法は、第1対象物と第2対象物とを合わせた状態で加熱手段により加熱して溶接凝固部を形成する溶接方法において、溶接凝固部に整形手段を接触させ、溶接凝固部を整形することを特徴とするものである。溶接凝固部が整形手段により整形されるため、ハンピングビードが抑制される。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接凝固部の信頼性を高めることができる。
【0009】
第2様相に係る溶接整形装置は、第1対象物と第2対象物とを合わせた状態で加熱手段により加熱した溶接凝固部を整形する溶接整形装置であり、溶接凝固部に接触可能な接触面を有する整形手段を有することを特徴とするものである。溶接凝固部が整形手段により整形されるため、ハンピングビードが抑制される。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接凝固部の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
第1様相に係る溶接方法及び第2様相に係る溶接整形装置によれば、溶接凝固部が整形手段により整形されるため、ハンピングビードが抑制される。従って、第1対象物と第2対象物との間に段差が形成されている場合であっても、あるいは、加熱条件が変動するような場合等であっても、良好な溶接凝固部が形成され、溶接条件の余裕度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
加熱手段としては高エネルギ密度ビーム、アーク、通電、ガス等の公知の手段を採用することができる。高エネルギ密度ビームとしては、レーザビームまたは電子ビームが挙げられる。レーザとしてはYAGレーザ、CO2レーザ、ルビーレーザ、Arレーザ、ガラスレーザが例示される。第1対象物及び第2対象物を構成する金属としては、加熱により溶融させて接合できるものであれば良く、鉄系でも良いし、非鉄系でも良い。鉄系としては軟鋼系でも良いし、場合によっては硬鋼系でも良いし、合金鋼系でも良い。合金鋼系としてはステンレス鋼系等を例示できる。ステンレス鋼系としては、フェライト系、オーステナイト系、場合によってはマルテンサイト系でも良い。溶接品が鉄系である場合には、炭素含有量は質量比で1.0%以下、0.8%以下、0.5%以下、0.3%以下とすることができ、さらに0.1%以下、0.05%以下とすることができる。なお、鉄系の場合には、過剰焼き入れを抑制するためには、炭素含有量を抑えることが好ましい。
【0012】
第1対象物及び第2対象物は板体である形態を例示することができる。従って溶接品は、金属を基材とする複数の板体を溶接で組み付けて構成されている形態を例示することができる。この溶接品は、好ましくは、複数の板体の縁部同士を合わせると共に、加熱により溶接凝固部を介して複数の板体を接合されている。
【0013】
整形手段は、加熱手段により加熱されている部分の後方に配置されている形態を例示することができる。この場合、加熱手段で加熱される部分と整形手段との距離が可変とされている形態を例示することができる。当該距離を可変とすれば、溶接凝固部の整形の程度を調整することができる。当該距離が過剰に長くて溶接凝固部が過剰に冷えているときには、溶接凝固部の整形の程度が制限される。当該距離が過剰に短くて溶接凝固部の溶融部分が過剰に多いときには、溶融部分が流出するおそれがある。これらの事情を考慮して当該距離を設定することが好ましい。
【0014】
整形手段は、溶接凝固部に接触する接触面を有する加圧体である形態を例示することができる。加圧体としては回転体を例示できる。回転体の場合には、溶接凝固部を連続的に整形するのに有利である。回転体は、回転ローラで形成しても良いし、キャタピラーやベルト等のエンドレス体で形成しても良い。回転体は従動タイプでも良いし、駆動タイプでも良い。整形手段は、溶接凝固部を挟むように溶接凝固部に接触可能な第1加圧体と第2加圧体とを備えている形態を例示することができる。第1加圧体及び第2加圧体のうち少なくも一方は、溶接凝固部に接触する接触面を有する回転ローラである形態を例示することができる。
【0015】
溶接凝固部の厚み方向において、第1加圧体と第2加圧体との距離は可変とされている形態を例示することができる。この場合、溶接凝固部の厚みの変動に対処することができる。更に距離の変更により溶接凝固部に対する鍛造効果も調整できる。
【0016】
また整形手段は、溶接凝固部に接触する接触面を有し且つ回転体の回転に伴い溶接凝固部に接触面が接触しつつ回転するエンドレス状をなすエンドレス体と、エンドレス体を保持する保持部とを備えている形態を例示することができる。エンドレス体としてベルト、チェーン等が例示される。エンドレス体は従動タイプでも良いし、駆動タイプでも良い。
【0017】
本発明によれば、入熱量が大きいときであっても、整形手段によりハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶接を高速化することができ、かつ、溶け込み深さを大きくできる。この場合、第1対象物と第2対象物とが板体であるとき、溶接凝固部の溶け込み深さをHAミリメートルとし、第1対象物である第1板体の厚みをt1ミリメートルとしたとき、HA/t1=2〜20に設定されており、溶接凝固部の溶け込み深さ/板体の厚みの比が大きく設定されていることが好ましい。HA/t1としては、溶接品の種類に応じて設定できるものの、2.5〜20の範囲,2〜19の範囲、2〜18の範囲、2〜15の範囲、2〜10の範囲とすることができる。なお、HA/t1については、下限値としては2.2または2.5または3または3.5または4または5を例示できる。この下限値と組み合わせ得る上限値としては、20または15または10または8を例示できる。
【0018】
溶接凝固部の厚み方向の幅をWとしたとき、W≧t1に設定されている形態を例示することができる。ここで、W=t1×2とすることができる。従って、W=(t1×2)×αとすることができる。α=0.85〜1.15、あるいは、0.95〜1.05とすることができる。
【0019】
整形後の溶接凝固部は、溶け込み深さ方向に露出する露出面を有する形態を採用することができる。殊に、整形後の溶接凝固部は、異なる方向に指向すると共に外方に露出する2つの露出面を有している形態を例示することができる。従って溶接凝固部は、外方に露出すると共に第1板体の厚み方向の一方側に指向する第1露出面と、外方に露出すると共に第2板体の厚み方向の他方側に指向する第2露出面とを有する形態を例示することができる。この場合、第1露出面及び第2露出面の双方が外方に露出しているため、第1露出面及び第2露出面の双方から溶接凝固部の溶け込み深さを目視または撮像装置等で視認することができ、溶接凝固部の強度の信頼性を一層高めることができる。
【0020】
好ましい形態によれば、第1対象物と第2対象物とが板体であり、第1板体の厚みをt1とし、第2板体の厚みをt2としたとき、溶接凝固部の第1露出面は、溶接凝固部の厚み方向において、第1板体の縁部の表面の延長線に対して内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されており、かつ、溶接凝固部の第2露出面は、溶接凝固部の厚み方向において、第2板体の縁部の表面の延長線に対して内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されている形態を例示することができる。
【0021】
従って好ましい形態によれば、溶接凝固部の第1露出面は第1板体の第1縁部の表面の延長線に沿って設定されていると共に、溶接凝固部の第2露出面は第2板体の第2縁部の表面の延長線に沿って設定されている形態を例示することができる。また、溶接凝固部の露出面は整形手段により整形された跡を有する形態を例示することができる。跡が凹または凸であれば、溶接凝固部を塗装する場合、塗装膜の密着性を改善することができる。
【0022】
また溶接凝固部は、外方に露出すると共に第1板体及び第2板体のうちの一方側において外方に指向する露出面をもち、露出面と反対側の部位では、第1板体及び第2板体のうちの他方が露出している形態を採用することができる。この場合には、レーザビーム等の加熱源による加熱位置がずれたとき、あるいは、第1板体及び第2板体の厚みが均等でないときに生じ易い。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の実施例1について図1〜図6を参照して具体的に説明する。本実施例は縁継手構造に適用したものである。まず、図1に示すように、第1対象物として金属製の第1板体1を用いると共に、第2対象物として金属製の第2板体2を用いる。第1板体1の第1縁部11と第2板体2の第1板体1の第1縁部11と第2板体2の第2縁部21とを重ね合わせる。第1板体1及び第2板体2は鉄系金属(例えば質量比で炭素含有量0.3%以下、特に0.1%以下)を基材とする。第1板体1の第1縁部11の厚みはt1として、第2板体2の第2縁部21の厚みはt2として示される。ここでt1=t2またはt1≒t2とされている。但し、t1<t2でも、t1>t2でも良い。
【0024】
図1から理解できるように、レーザビーム7の照射前において、重ね合わせた第1板体1の第1縁部11の第1端面13と第2板体2の第2縁部21の第2端面23とは、同一平坦面状とされている。これによりレーザビーム7を照射させる照射均一性を高めることができ、溶接ビード部5を強度を高めるのに有利である。但し、第1端面13と第2端面23との間に段差が多少存在していても良い。
【0025】
そして、図1に示すように、加熱手段である高エネルギ密度ビームとして機能するレーザビーム7(YAG)を上方からレーザ発信器72により第1縁部11及び第2縁部21の端面13,23に照射し、溶融させる。この結果、溶融部分6を形成し凝固させ、溶接凝固部として機能する溶接ビード部5を形成する。なお、レーザビーム溶接は、単位面積当たりの入熱量が大きいため急熱を引き起こし、また、冷却速度が速いため急冷を引き起こす。なお、溶接の際には、レーザビーム7は第1縁部11及び第2縁部21に対して矢印X1方向(溶接方向、図4参照)に相対移動する。この場合、第1縁部11及び第2縁部21を固定した状態でレーザビーム7を移動させても良いし、あるいは、レーザビーム7を固定させた状態で第1縁部11及び第2縁部21を移動させても良い。
【0026】
図4に示すように、整形手段4は、レーザビーム7による入熱位置7cの後方に配置されている。後方とは、レーザビーム7が既に走査された部位をいう。整形手段4は、平滑な第1ローラ面43(第1接触面)をもつ第1回転体41(第1加圧体)と、平滑な第2ローラ面44(第2接触面)をもつ第2回転体42(第2加圧体)とを備えている。図3に示すように第1回転体41は第1基体46に回転可能に設けられている。第2回転体42は第2基体47に回転可能に設けられている。第1回転体41及び第2回転体42は駆動モータに接続されておらず、空転可能な従動タイプである。但し必要に応じて第1回転体41及び第2回転体42を駆動モータに接続し、駆動タイプとしても良い。
【0027】
第1回転体41及び第2回転体42は同一径とされている。第1回転体41の軸芯P1及び第2回転体42の軸芯P2は互いに平行とされており、縦方向に沿っている。第1回転体41及び第2回転体42は、これを冷却する冷却通路を有する構造とすることができる。但し、冷却回路を有せずとも良い。また、第1回転体41及び第2回転体42は金属で形成されていても良いし、セラミックスで形成されていても良い。第1回転体41及び第2回転体42を金属で形成すれば、熱伝導性が良好であるため、溶融部分または溶接ビード部5の早期冷却に有利である。金属の場合には、鉄系、銅系、チタン系、アルミニウム系等を例示できる。セラミックスの場合には、アルミナ、シリカ、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア等を例示できる。
【0028】
本実施例によれば、レーザビーム7による入熱位置7cと整形手段4との間の距離L1(図4参照)は、可変とされている。この場合には、レーザビーム7による入熱位置7cに対して第1基体46及び第2基体47を溶接方向(矢印X1方向)において相対的に変位させることができる。この場合、第1板体1及び第2板体2が固定であるときには、レーザビーム7を第1板体1及び第2板体2に対して相対移動させることができる。このようにレーザビーム7が移動するときには、第1回転体41と第2回転体42をレーザビーム7に追従させることが好ましい。
【0029】
またレーザビーム7が固定であるときには、第1板体1及び第2板体2をレーザビーム7に対して相対移動させることができる。この場合、第1回転体41及び第2回転体42は固定位置に配置されていても良いが、距離L1を可変とするようにレーザビーム7に対して移動可能に配置されていても良い。
【0030】
上記した距離L1(図4参照)は、第1回転体41と第2回転体42との間の距離LAが最接近している位置LBと、レーザビーム7による入熱位置7cとの距離に相当する。溶接条件等に応じて、距離L1は適宜選択できるが、0<L1<100ミリメートル、0<L1<50ミリメートル、殊に0<L1<30ミリメートルの関係にすることができる。距離L1を変化させることにより、整形手段4で整形するときにおける溶接ビード部5の温度を選択することができる。例えば、溶接ビード部5の表層及び内層が固化しているときに整形手段4で整形する形態、あるいは、溶接ビード部5の表層が固化しているものの内層が溶融状態であるときに整形手段4で整形する形態、あるいは、溶接ビード部5の表層が半凝固状態であるときに整形手段4で整形する形態等を、必要に応じて選択することができる。
【0031】
また本実施例によれば、溶接ビード部5の厚み方向において、第1回転体41の第1ローラ面43と第2回転体42の第2ローラ面44との間における距離LA(図4参照)は、可変とされている。これにより溶接ビード部5の厚みを調整できる。距離LAを調整すれば、溶接ビード部5に対する鍛造効果も期待できる。この場合、溶接ビード部5の組織の強化、ピンホール等の低減に有利である。
【0032】
上記したように溶接ビード部5が形成されたら、図3〜図5に示すように、整形手段4は溶接ビード部5にあてがわれ、溶接ビード部5を整形する。この場合、図3に示すように、第1回転体41の第1ローラ面43は、溶接ビード部5の厚み方向の一方の第1露出面51に当接する。第2回転体42の第2ローラ面44は、溶接ビード部5の厚み方向の他方の第2露出面52に当接する。このように溶接ビード部5の露出面51、52が整形手段4により整形されるため、外観が良好な溶接ビード部5を得ることができる。整形の際に、図3に示すように、第1回転体41の第1ローラ面43は第1板体1の第1表面14に当接すると共に、第2回転体42の第2ローラ面44は第2板体2の第2表面24に当接する。これにより溶融ビード部5の厚みが規制される。
【0033】
本実施例によれば、入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、整形手段4により溶接ビード部5が整形されるため、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の強度を増加させるとともに、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。
【0034】
図6は整形後の溶接ビード部5を示す。図6に示すように、整形後の溶接ビード部5は、外方に露出すると共に第1板体1の厚み方向の一方側に指向する第1露出面51と、外方に露出すると共に第2板体2の厚み方向の他方側に指向する第2露出面52と、第1露出面51及び第2露出面52に交差する第3露出面53とを有する。なお露出面51,52は溶け込み方向(レーザビーム照射方向)に沿って延設されており、外方から視認できる。
【0035】
図6に示すように、第1露出面51及び第2露出面52は、溶接ビード部5の厚み方向において互いに逆方向に指向している。第1露出面51は第1回転体41の第1ローラ面43により整形されたものであり、第1板体1の第1縁部11の第1表面14に沿った平坦状とされている。第2露出面52は第2回転体42の第2ローラ面44により整形されたものであり、第2板体2の第2縁部21の第2表面24に沿った平坦状とされている。
【0036】
上記したように溶接ビード部5の第1露出面51及び第2露出面52は、第1ローラ面43及び第2ローラ面44により整形されているため、第1ローラ面43及び第2ローラ面44の跡を有することがある。跡が凹または凸であれば、塗装する場合に塗装膜の密着性を高めることができる。
【0037】
上記した本実施例によれば、図6に示すように、溶接ビード部5の第1露出面51は第1板体1の第1縁部11の第1表面14の延長線上に設定されている。また、溶接凝固部5の第2露出面52は第2板体2の第2縁部21の第2表面24の延長線上に設定されている。
【0038】
換言すれば、第1板体1の厚みをt1とし、第2板体2の厚みをt2としたときには、溶接ビード部5の第1露出面51は、第1板体1の第1縁部11の第1表面14の延長線に対して厚み方向の内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されている。また、第2露出面52は、第2板体2の第2縁部21の第2表面24の延長線に対して厚み方向の内方または外方にt2/5(ミリメートル)以内に設定されている。
【0039】
本実施例によれば、入熱量を増加させて溶接ビード部5の溶け込み深さを深くできるため、溶接ビード部5の溶け込み深さをHAミリメートルとし、第1板体1の第1縁部11の厚みをt1ミリメートルとしたとき、HA/t1=4〜13の範囲、殊に4〜11の範囲、4〜8の範囲に設定することができる。従って、(溶接ビード部5の溶け込み深さ)/(第1板体1の厚み)の比が大きく設定されている。このように溶け込み深さを深くすることは、通常の溶接ではできない。
【0040】
更に本実施例によれば、溶接ビード部5の厚み方向の幅をW(図6参照)としたとき、W≧t1に設定されている。t1+t2=t3とすれば、W=t3、W≒t3に設定されている。よってW/t3=0.85〜1.15の範囲、殊に0.95〜1.05の範囲に設定されている。
【0041】
上記のように溶け込み深さが深い溶接ビード部5は、第1板体1及び第2板体2の第1縁部11及び第2縁部21を強固に接合している。従って第1板体1及び第2板体2とからなる中空室901をもつ容器900(図3参照)を製造することができる。
【0042】
以上説明したように本実施例によれば、整形手段4を構成する第1回転体41と第2回転体42により溶接ビード部5が整形されるため、ハンピングビードが抑制される。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。
【0043】
このように入熱量が大きいときであってもハンピングビードが抑制されるため、本実施例によれば、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。従って本実施例によれば、(溶接ビード部5の溶け込み深さ)/(第1板体1の厚みt1)の比を、通常では得られないほどに大きく設定することができる。
【0044】
また本実施例によれば、溶接ビード部5の第1露出面51及び第2露出面52は外方に露出しているため、溶接ビード部5の溶け込み深さを外方から目視または撮像装置等で視認し易い。このため溶接ビード部5の強度の信頼性を高めることができる。殊に本実施例によれば、溶接ビード部5の厚みは、重ね合わせた第1板体1の第1縁部11と第2板体2の第2縁部21との合計厚み(t3)と同程度に設定されているため、溶接ビード部5の厚みが確保され、溶接ビード部5の強度を高めることができ、溶接ビード部5の強度の信頼性を高めることができ、更に外観の見栄え性を向上させることができる。
【0045】
また本実施例によれば、溶接ビード部5が多少変形していたとしても、整形手段4である第1回転体41の第1ローラ面43及び第2回転体42の第2ローラ面44により溶接ビード部5が速やかに整形される。このため、レーザビーム7の照射前において、重ね合わせた第1板体1の第1縁部11の第1端面13と第2板体2の第2縁部21の第2端面23との間に段差が多少存在しているときであっても、その段差の影響を吸収する方向に溶接ビード部5を形成でき、良好な溶接ビード部5を形成するのに有利である。更に前述したように入熱量を大きくできるため、前記した段差があったとしても、その段差の影響を吸収する方向に溶接ビード部5を形成できる。従って溶接の際の条件余裕度を革新的に向上させることができる。
【0046】
更に溶接の際には、レーザビーム7は連続溶接のため第1板体1及び第2板体2に対して矢印X1方向(溶接方向)に相対的に移動する。この場合、レーザビーム7の相対移動に対して整形手段4を追従させて第1板体1及び第2板体2に対して相対的に移動させれば、溶接ビード部5を連続的に整形できる。このため生産性が向上し、コストダウンに適する。
【0047】
また本実施例によれば、溶接ビード部5がまだ高温である間に、溶接ビード部5が整形手段4である第1回転体41の第1ローラ面43及び第2回転体42の第2ローラ面44に接触してすばやく冷却される。このため溶接ビード部5の酸化が抑制され、防錆性が向上する。この意味では、第1回転体41の第1ローラ面43及び第2回転体42の第2ローラ面44は、熱伝導性が良好な金属(例えば銅、銅合金)で形成することができる。
【0048】
(試験例)
図7は実施例1に係る試験例の溶接品の断面の写真を示す。溶接条件としては、レーザをYAGレーザとし、レーザ出力を4.5kWとし、ビーム集光径を0.6ミリメートルとし、第1板体1及び第2板体2の材質をステンレス鋼とし、第1板体1の厚みを0.6ミリメートル、第2板体2の厚みを0.6ミリメートルとし、溶接速度を3メートル/分とし、距離L1を8ミリメートルとし、第1回転体41及び第2回転体42の材質を銅合金とし、第1回転体41の外径を45ミリメートルとし、第2回転体42の外径を45ミリメートルとした。この試験例によれば、HAは3.8ミリメートルとされている。従ってHA/t1=3.8ミリメートル/0.6ミリメートル≒6.3に設定されている。
【0049】
この試験例によれば、(溶接ビード部5の溶け込み深さ)/(第1板体の厚み)の比を大きく設定することができる。また、溶接ビード部5の厚み方向の幅をWとしたとき、Wは1.2ミリメートル程度とされているため、W≧t1であり、W=t1×2とすることができる。
【0050】
図7の写真から理解できるように、溶接ビード部の第1露出面は外方に露出しつつ、第1板体の第1縁部の第1表面のほぼ延長線上に設定されている。また溶接ビード部の第2露出面は外方に露出しつつ、第2板体の第2縁部の第2表面のほぼ延長線上に設定されている。
【実施例2】
【0051】
図8〜図10は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図10に示すように整形手段4は、平滑な第1ローラ面43(第1接触面)をもつ第1回転体41と、平滑な第2ローラ面44(第2接触面)をもつ第2回転体42とを備えている。第1回転体41は第1基体46に回転可能に設けられている。第2回転体42は第2基体47に回転可能に設けられている。第1回転体41及び第2回転体42は駆動モータに接続されておらず、空転可能な従動タイプである。第1回転体41及び第2回転体42は同一径とされている。第1回転体41の軸芯P1及び第2回転体42の軸芯P2は互いに平行とされており、横方向に沿っている。
【0052】
溶接にあたっては、図8から理解できるように、レーザビーム7の照射前において、第1板体1の第1縁部11と第2板体2の第2縁部21とを重ね合わせると共に、横方向に沿わせておく。重ね合わせた第1板体1の第1縁部11の第1端面13と第2板体2の第2縁部21の第2端面23とは、同一平坦面状とされている。これによりレーザビーム7を照射させる照射均一性を高めることができ、溶接ビード部5の強度を高めるのに有利である。但し、第1端面13と第2端面23との間に段差が多少存在していても良い。
【0053】
そして、図8に示すように、加熱手段である高エネルギ密度ビームとして機能するレーザビーム7(YAG)をレーザ発信器72から第1縁部11及び第2縁部21に横方に向けて照射し、第1端面13と第2端面23を溶融させる。この結果、溶融部分6を形成して凝固させ、溶接凝固部として機能する溶接ビード部5を形成する。
【0054】
レーザビーム7を横方から照射する場合には、溶接ビード部5が重力方向の下方向に垂れるため、溶接ビード部5を下から支えるように回転体が1個でも足りることがある。即ち、下側の第2回転体42を用いるものの、上側の第1回転体41を省くこともできる。この場合、コスト低減、治具簡素化に有利である。
【0055】
上記したように溶接ビード部5が形成されたら、図10に示すように、整形手段4は溶接ビード部5にあてがわれ、溶接ビード部5を整形する。この場合、第1回転体41の第1ローラ面43は、溶接ビード部5の第1露出面51に当接し、第2回転体42の第2ローラ面44は、溶接ビード部5の第2露出面52に当接する。このように溶接ビード部5の露出面51、52が整形手段4により整形されるため、外観が良好な溶接ビード部5を得ることができる。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。故に、入熱量を大きくして高速化すると共に溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。
【0056】
このような本実施例においては、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。従って(溶接ビード部5の溶け込み深さ)/(第1板体1の厚みt1)の比を、通常では得られないほどに大きく設定することができる。
【実施例3】
【0057】
図11は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。整形手段4は、平滑な第1ローラ面43(第1接触面)をもつ第1回転体41と、平滑な第2ローラ面44(第2接触面)をもつ第2回転体42とを備えている。第1ローラ面43及び第2ローラ面44に向けて離形剤91を塗布する塗布装置90が設けられている。この場合には、溶接ビード部5に対する第1回転体41及び第2回転体42の離形性を離形剤91により向上させ得ると共に、第1回転体41及び第2回転体42の過熱を抑制できる。
【実施例4】
【0058】
図12は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。整形手段4は、平滑な第1ローラ面43をもつ第1回転体41と、平滑な第2ローラ面44をもつ第2回転体42とを備えている。第1回転体41は、第1基体46に保持されている駆動機構としての第1駆動モータ41mにより回転駆動される。第2回転体42は、第2基体47に保持されている駆動機構としての第2駆動モータ42mにより回転駆動される。なお、第1回転体41と第2回転体42との間に回転数差を設けることができる。この場合、第1露出面51と第2露出面52とで溶接線長の異なる場合に対応し易い。また場合によっては、第1回転体41及び第2回転体42は同期回転させることができる。
【実施例5】
【0059】
図13は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。第1板体1の厚みt1よりも、第2板体2の厚みt2が厚く設定されている。溶接ビード部5は、溶け込み深さ方向に延設されていると共に第1板体1側において外方に指向する露出面51をもつ。そして、露出面51と反対側の部位では、第2板体2の表面24が露出している。図13に示すように、第1回転体41は第1露出面51に当てられると共に、第2回転体42は第2板体2の表面24に当てられている。この場合においても、第1回転体41と第2回転体42とで溶接ビード部5が挟持されるため、第1露出面51を良好に整形することができる。
【実施例6】
【0060】
図14は実施例6を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。整形手段4は、平滑な第1ローラ面43をもつ粗整形用の第1回転体41と、平滑な第2ローラ面44をもつ粗整形用の第2回転体42とを備えている。更に整形手段4は、平滑な第1ローラ面430をもつ仕上整形用の第1回転体410と、平滑な第2ローラ面440をもつ仕上整形用の第2回転体420とを備えている。粗整形の後で仕上整形を実施するため、溶接ビード部5が良好に整形される。
【実施例7】
【0061】
図15は実施例7を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図15に示すように、この整形手段4Bは、溶接ビード部5の厚みを挟むように配置されたエンドレス装置81Bと第2エンドレス装置85Bとを備えている。
【0062】
第1エンドレス装置81Bは、エンドレス状をなす第1エンドレス体82Bと、第1エンドレス体82Bを保持する第1保持部としての第1回転体83Bとを備えている。同様に、第2エンドレス装置85Bは、エンドレス状をなす第2エンドレス体86Bと、第2エンドレス体86Bを保持する第2保持部としての第2回転体87Bとを備えている。
【0063】
図15に示すように、前記した第1エンドレス体82Bは、複数の分割体820がエンドレス状に且つ相対移動可能に接続されたキャタピラ構造とされている。第1エンドレス体82Bは、溶接ビード部5に接触する第1接触面84Bを有する。第1回転体83Bの回転に伴い、第1エンドレス体82Bは、これの第1接触面84Bが溶接ビード部5に接触しつつ回転する。第2エンドレス体86Bも同様な構造とされている。
【0064】
本実施例においても、レーザビーム7により溶接ビード部5が形成されたら、図15に示すように、整形手段4Bは溶接ビード部5を整形する。つまり、第1エンドレス体82Bの第1接触面84Bは、溶接ビード部5に当接する。第2エンドレス体86Bの第2接触面88Bは、溶接ビード部5に当接する。
【0065】
このように溶接ビード部5が整形手段4Bにより整形されるため、外観が良好な溶接ビード部5を得ることができる。従って入熱量が小さいときであっても、入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制される。このように入熱量が大きいときであっても、ハンピングビードが抑制されるため、入熱量を大きくして溶け込み深さを大きくし、溶接ビード部5の強度を増加させると共に、溶接ビード部5の信頼性を高めることができる。
【0066】
(その他)
実施例1では、整形手段を構成する回転体41,42は溶接ビード5のビード高さ方向の全長を押さえることにしているが、場合によっては、溶接ビード5のビード高さ方向の全長の一部(例えばビード高さ方向の全長の40%以上または50%以上)を押さえることにしても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は溶接品及び溶接方法に利用できる。本発明は、特に、レーザビーム等の高エネルギ密度ビームに代表される加熱手段により溶接した溶接品及び溶接方法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射している状態を示す構成図である。
【図2】第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射して溶融部分または溶接ビード部を形成している状態を示す構成図である。
【図3】レーザビームで形成した溶接ビード部を整形手段により整形している状態を示す構成図である。
【図4】レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図5】レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図6】溶接ビード部の断面を模式的に示す構成図である。
【図7】試験例に示す溶接ビード部の断面写真である。
【図8】実施例2に係り、第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射している状態を示す構成図である。
【図9】実施例2に係り、第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射して溶融部分または溶接ビード部を形成している状態を示す構成図である。
【図10】実施例2に係り、レーザビームで形成した溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図11】実施例3に係り、レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図12】実施例4に係り、レーザビームで形成した溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図13】実施例5に係り、レーザビームで形成した溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図14】実施例6に係り、レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図15】実施例7に係り、レーザビームを照射しつつレーザビームの入熱位置よりも後方で溶接ビード部を整形している状態を示す構成図である。
【図16】従来技術に係り、第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射する状態を示す構成図である。
【図17】従来技術に係り、第1板体の第1縁部及び第2板体の第2縁部を重ね合わせた状態でレーザビームを照射して溶接ビード部を形成している状態を示す構成図である。
【図18】従来技術に係り、レーザビームを照射して形成された溶接ビード部がハンピングビードとなっている状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0069】
図中、1は第1板体(第1対象物)、11は第1縁部、2は第2板体(第2対象物)、21は第2縁部、4は整形手段、41は第1回転体、42は第2回転体、43は第1ローラ面、44は第2ローラ面、81Bは第1エンドレス装置、85Bは第2エンドレス装置、5は溶接ビード部(溶接凝固部)、6は溶融部分、7はレーザビーム(高エネルギ密度ビーム、加熱手段)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象物と第2対象物とを合わせた状態で加熱手段により加熱して前記溶接凝固部を形成する溶接方法において、前記溶接凝固部に整形手段を接触させ、前記溶接凝固部を整形することを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
請求項1において、前記加熱手段は高エネルギ密度ビーム、アーク、通電、ガスのうちのいずれかであることを特徴とする溶接方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記第1対象物及び前記第2対象物は板体であることを特徴とする溶接方法。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記整形手段は、前記加熱手段により加熱されている部分の後方に配置されていることを特徴とする溶接方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項において、前記整形手段は、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有する加圧体であることを特徴とする溶接方法。
【請求項6】
請求項4において、前記加圧体は、前記溶接凝固部を挟むように前記溶接凝固部に接触可能な第1加圧体と第2加圧体とを備えていることを特徴とする溶接方法。
【請求項7】
請求項6において、前記第1加圧体及び前記第2加圧体のうち少なくも一方は、前記溶接凝固部に接触する接触面を有する回転可能な回転体であることを特徴とする溶接方法。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項において、前記整形手段は、前記溶接凝固部に接触する接触面を有し且つ前記回転体の回転に伴い前記溶接凝固部に前記接触面が接触しつつ回転するエンドレス状をなす前記エンドレス体と、前記エンドレス体を保持する保持部とを備えていることを特徴とする溶接方法。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか一項において、前記加熱手段で加熱される部分と前記整形手段との距離が可変とされていることを特徴とする溶接方法。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項において、前記溶接凝固部は、異なる方向に指向すると共に外方に露出する2つの露出面を有していることを特徴とする溶接方法。
【請求項11】
請求項1〜9のうちのいずれか一項において、前記第1対象物は第1板体であり、前記第2対象物は第2板体であり、前記第1板体の縁部と前記第2板体の縁部とが重ね合わせた状態とされていることを特徴とする溶接方法。
【請求項12】
請求項11において、前記溶接凝固部の溶け込み深さをHAミリメートルとし、前記第1板体の厚みをt1ミリメートルとしたとき、HA/t1=2〜20に設定されており、前記溶接凝固部の溶け込み深さ/第1板体の厚みの比が大きく設定されていることを特徴とする溶接方法。
【請求項13】
請求項11及び12において、前記溶接凝固部は、外方に露出すると共に前記第1板体の厚み方向の一方側に指向する第1露出面と、外方に露出すると共に前記第2板体の厚み方向の他方側に指向する第2露出面とを有することを特徴とする溶接方法。
【請求項14】
請求項11及び12において、前記溶接凝固部は、外方に露出すると共に前記第1板体及び前記第2板体のうちの一方側において外方に指向する露出面をもち、前記露出面と反対側の部位では、前記第1板体及び前記第2板体のうちの他方が露出していることを特徴とする溶接方法。
【請求項15】
請求項14において、前記第1板体の厚みをt1としたとき、前記溶接凝固部の前記第1露出面は、溶接凝固部の厚み方向において、前記第1板体の表面の延長線に対して内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されており、かつ、前記溶接凝固部の前記第2露出面は、前記溶接凝固部の厚み方向において、前記第2板体の表面の延長線に対して内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されていることを特徴とする溶接方法。
【請求項16】
請求項14または15において、前記溶接凝固部の前記第1露出面は前記第1板体の表面の延長線に沿って設定されていると共に、前記溶接凝固部の前記第2露出面は前記第2板体の表面の延長線に沿って設定されていることを特徴とする溶接方法。
【請求項17】
第1対象物と第2対象物とを合わせた状態で加熱手段により加熱した溶接凝固部を整形する溶接整形装置であり、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有する整形手段を有することを特徴とする溶接整形装置。
【請求項18】
請求項17において、前記整形手段は、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有する加圧体であることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項19】
請求項17または18において、前記加圧体は、前記溶接凝固部を挟むように前記溶接凝固部に接触可能な第1加圧体と第2加圧体とを備えていることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項20】
請求項19において、前記溶接凝固部の厚み方向において、前記第1加圧体と前記第2加圧体との距離は可変とされていることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項21】
請求項19または20において、前記第1加圧体及び前記第2加圧体のうち少なくも一方は、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有する回転可能な回転体であることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項22】
請求項17〜21のうちのいずれか一項において、前記整形手段は、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有し且つ前記回転体の回転に伴い前記溶接凝固部に接触面が接触しつつ回転するエンドレス状をなすエンドレス体と、前記エンドレス体を保持する保持部とを備えていることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項23】
請求項17〜22のうちのいずれか一項において、前記加熱手段で加熱される部分と前記整形手段との距離が可変とされていることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項1】
第1対象物と第2対象物とを合わせた状態で加熱手段により加熱して前記溶接凝固部を形成する溶接方法において、前記溶接凝固部に整形手段を接触させ、前記溶接凝固部を整形することを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
請求項1において、前記加熱手段は高エネルギ密度ビーム、アーク、通電、ガスのうちのいずれかであることを特徴とする溶接方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記第1対象物及び前記第2対象物は板体であることを特徴とする溶接方法。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記整形手段は、前記加熱手段により加熱されている部分の後方に配置されていることを特徴とする溶接方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項において、前記整形手段は、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有する加圧体であることを特徴とする溶接方法。
【請求項6】
請求項4において、前記加圧体は、前記溶接凝固部を挟むように前記溶接凝固部に接触可能な第1加圧体と第2加圧体とを備えていることを特徴とする溶接方法。
【請求項7】
請求項6において、前記第1加圧体及び前記第2加圧体のうち少なくも一方は、前記溶接凝固部に接触する接触面を有する回転可能な回転体であることを特徴とする溶接方法。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項において、前記整形手段は、前記溶接凝固部に接触する接触面を有し且つ前記回転体の回転に伴い前記溶接凝固部に前記接触面が接触しつつ回転するエンドレス状をなす前記エンドレス体と、前記エンドレス体を保持する保持部とを備えていることを特徴とする溶接方法。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか一項において、前記加熱手段で加熱される部分と前記整形手段との距離が可変とされていることを特徴とする溶接方法。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項において、前記溶接凝固部は、異なる方向に指向すると共に外方に露出する2つの露出面を有していることを特徴とする溶接方法。
【請求項11】
請求項1〜9のうちのいずれか一項において、前記第1対象物は第1板体であり、前記第2対象物は第2板体であり、前記第1板体の縁部と前記第2板体の縁部とが重ね合わせた状態とされていることを特徴とする溶接方法。
【請求項12】
請求項11において、前記溶接凝固部の溶け込み深さをHAミリメートルとし、前記第1板体の厚みをt1ミリメートルとしたとき、HA/t1=2〜20に設定されており、前記溶接凝固部の溶け込み深さ/第1板体の厚みの比が大きく設定されていることを特徴とする溶接方法。
【請求項13】
請求項11及び12において、前記溶接凝固部は、外方に露出すると共に前記第1板体の厚み方向の一方側に指向する第1露出面と、外方に露出すると共に前記第2板体の厚み方向の他方側に指向する第2露出面とを有することを特徴とする溶接方法。
【請求項14】
請求項11及び12において、前記溶接凝固部は、外方に露出すると共に前記第1板体及び前記第2板体のうちの一方側において外方に指向する露出面をもち、前記露出面と反対側の部位では、前記第1板体及び前記第2板体のうちの他方が露出していることを特徴とする溶接方法。
【請求項15】
請求項14において、前記第1板体の厚みをt1としたとき、前記溶接凝固部の前記第1露出面は、溶接凝固部の厚み方向において、前記第1板体の表面の延長線に対して内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されており、かつ、前記溶接凝固部の前記第2露出面は、前記溶接凝固部の厚み方向において、前記第2板体の表面の延長線に対して内方または外方にt1/5(ミリメートル)以内に設定されていることを特徴とする溶接方法。
【請求項16】
請求項14または15において、前記溶接凝固部の前記第1露出面は前記第1板体の表面の延長線に沿って設定されていると共に、前記溶接凝固部の前記第2露出面は前記第2板体の表面の延長線に沿って設定されていることを特徴とする溶接方法。
【請求項17】
第1対象物と第2対象物とを合わせた状態で加熱手段により加熱した溶接凝固部を整形する溶接整形装置であり、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有する整形手段を有することを特徴とする溶接整形装置。
【請求項18】
請求項17において、前記整形手段は、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有する加圧体であることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項19】
請求項17または18において、前記加圧体は、前記溶接凝固部を挟むように前記溶接凝固部に接触可能な第1加圧体と第2加圧体とを備えていることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項20】
請求項19において、前記溶接凝固部の厚み方向において、前記第1加圧体と前記第2加圧体との距離は可変とされていることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項21】
請求項19または20において、前記第1加圧体及び前記第2加圧体のうち少なくも一方は、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有する回転可能な回転体であることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項22】
請求項17〜21のうちのいずれか一項において、前記整形手段は、前記溶接凝固部に接触可能な接触面を有し且つ前記回転体の回転に伴い前記溶接凝固部に接触面が接触しつつ回転するエンドレス状をなすエンドレス体と、前記エンドレス体を保持する保持部とを備えていることを特徴とする溶接整形装置。
【請求項23】
請求項17〜22のうちのいずれか一項において、前記加熱手段で加熱される部分と前記整形手段との距離が可変とされていることを特徴とする溶接整形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−159279(P2006−159279A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358604(P2004−358604)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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