説明

溶接電源装置

【課題】 本発明では、閉ループ構成の直流リアクトルDCLを用いた溶接電源装置において、スパッタの少ない溶接電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 直流電源回路と、直流電圧を高周波交流電圧にするインバータ回路と、溶接に適した電圧にする主変圧器と、主変圧器の出力を整流する2次整流回路と、整流された出力を平滑する閉ループの直流リアクトルと、出力電流を検出する出力電流検出回路と、出力電流を入力してPID制御するPID制御回路と、PID制御信号に基づいてインバータ回路を制御する主制御回路とを備え、直流リアクトルのインダクタンス値に対応するインダクタンス係数を生成し、出力電流に基づいてインダクタンス係数を算出するインダクタンス係数回路を設け、PID制御回路にてインダクタンス係数に基づきPID制御の比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを変更してPID制御の応答性を速くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接電源装置においてインバータ回路を出力制御するPID制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアーク溶接において、小電流領域での出力が不安定になりアーク切れが起こりやすくなる。この不具合を防止するために環状鉄心(閉ループ)構成の直流リアクトルを使用し、小電流領域でのインダクタンス値を大きしてアーク切れを抑制していた。
【0003】
図7は、従来技術の溶接電源装置の電気接続図である。同図を用いて従来技術の動作について説明する。
同図に示す直流電源回路は、三相交流商用電源ACの出力を整流して直流電圧に変換する1次整流回路DR1と、直流電圧に変換した電圧を平滑する平滑コンデンサC1とで形成される。
【0004】
図7に示すブリッジ接続されたインバータ回路は、第1のスイッチング素子TR1乃至第4のスイッチング素子TR4によって形成され、導通と遮断を繰り返して直流電圧を高周波交流電圧に変換する。
【0005】
変圧器INTは、高周波交流電圧をアーク加工に適した電圧に変換する。2次整流回路DR2は、変圧器INTの出力を整流しアーク加工に適した直流電圧に変換し、直流リアクトル(閉ループ構成を有する)DCLは整流された直流電圧を平滑して負荷に供給する。
【0006】
出力電流検出回路IDは、出力電流を検出して出力電流検出信号Idとして出力する。 出力電流設定回路IRは、予め定めた出力電流設定信号Irを設定する。
【0007】
図8に示す従来のPID(比例・積分・微分)制御回路は、出力電流検出信号Idの値と出力電流設定信号Irの値と偏差を求めて差動信号Ddとして出力する差動器DDと、差動信号Ddと予め定めた比例ゲインKpとで乗算し第1の乗算信号Md1として出力する第1の乗算器MD1と、差動信号Ddを積分して積分信号Icとして出力する積分器ICと、積分信号Icと予め定めた積分ゲインKiとで乗算し第2の乗算信号Md2として出力する第2の乗算器MD2と、差動信号Ddを微分して微分信号Icとして出力する微分器ICと、微分信号Icと予め定めた微分ゲインKiとで乗算し第3の乗算信号Md3として出力する第3の乗算器MD3と、第1の乗算信号Md1、第2の乗算信号Md2及び第3の乗算信号Md3を加算してPid制御信号として出力する加算器ADとで形成されている。
【0008】
主制御回路SCは、パルス周波数が一定でパルス幅を変調するパルス幅変調制御を行い、Pid制御信号に応じてパルス幅変調制御を行い、互いに半周期ずれた第1の出力制御信号Sc1及び第2の出力制御信号Sc2を出力する。
【0009】
インバータ駆動回路SRは、第1の出力制御信号Sc1及び第2の出力制御信号Sc2に応じてインバータ回路を駆動させる第1のスイッチング素子駆動信号Tr1乃至第4のスイッチング素子駆動信号Tr4を出力する。
【0010】
図9は、閉ループ構成を有する直流リアクトルDCLの出力電流値とインダクタンス値との特性図である。同図で小電流領域(例えば、25A)では、インダクタンス値は50μHにも増加し、この特性を利用して小電流領域でのインダクタンス値を大きくしてアーク切れを抑制していた。しかし、PID制御回路の比例ゲインKp、積分ゲインKi、微分ゲインKdは、例えば、出力電流が100Aに適合する予め定めた値に設定すると、小電流領域においてインダクタンス値が大きく変化し各ゲインの適合性が崩れてしまう。
【0011】
特許文献1のアーク溶接機の制御方法では、PID制御について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−268095
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の溶接電源装置では、小電流領域でのアーク切れを抑制するために、図9に示す特性を有する環状鉄心(閉ループ)構成の直流リアクトルを使用し、小電流領域でのインダクタンス値を大きくしてアーク切れを抑制していた。即ち、閉ループ特性を有する直流リアクトルでは、図9に示すように出力電流が小電流領域の、例えば、50A以下になるとインダクタンス値が急激に大きくなり、この直流リアクトルのインダクタンス特性を利用してアーク切れを抑制していた。
しかし、PID制御回路は比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインは、直流リアクトルのインダクタンス値が安定する、出力電流が100Aの値に適合するように設定しているので、小電流領域において直流リアクトルのインダクタンス値が急激に大きくなると、比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインの適合性が崩れてPID制御の応答性に遅れが生じる。この状態でアーク状態から短絡状態に移行した直後に出力電流を減少しスパッタの発生を抑制するとき、PID制御の応答性の遅れにより出力電流に発振が発生しスパッタ量の増加に繋がってしまう。
【0014】
そこで、本発明では、スパッタ量が少なく、且つ小電流領域でのアークが切れにくい溶接電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、商用交流電源を直流電圧に変換する直流電源回路と、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換するインバータ回路と、前記高周波交流電圧を溶接に適した交流電圧に変換する主変圧器と、前記主変圧器の出力を整流する2次整流回路と、前記整流された出力を平滑する閉ループの直流リアクトルと、前記平滑された出力電流を検出する出力電流検出回路と、前記出力電流検出値と予め定めた出力電流設定値とをPID制御しPID制御信号として出力するPID制御回路と、前記PID制御信号に基づいて前記インバータ回路を制御する主制御回路と、を備えた溶接電源装置において、前記直流リアクトルのインダクタンス値に対応するインダクタンス係数を生成し、前記出力電流検出値に基づいて前記インダクタンス係数を算出するンダクタンス係数回路を設け、前記PID制御回路は、前記インダクタンス係数に基づいて前記PID制御信号の比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを変更する、ことを特徴とする溶接電源装置である。
【0016】
請求項2の発明は、前記インダクタンス係数回路は、予め定めた第1の出力電流基準値と前記第1の出力電流基準値より大きい予め定めた第2の出力電流基準値とを有し、前記出力電流検出値が前記第1の出力電流基準値以下のとき第1のインダクタンス係数になり、前記出力電流検出値が前記第2の出力電流基準値以上のとき第2のインダクタンス係数になり、前記出力電流検出値が前記第1の出力電流基準値から前記第2の出力電流基準値に向けて増大すると前記インダクタンス係数は連続的に減少する、ことを特徴とする請求項1記載の溶接電源装置である。
【0017】
請求項3の発明は、前記PID制御回路は、前記インダクタンス値に対応するインダクタンス係数が大きくなると前記比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを大きくする、ことを特徴とする請求項1記載の溶接電源装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、閉ループの直流リアクトルを使用して出力電力をPID制御でフィードバックする溶接電源装置において、前記直流リアクトルのインダクタンス値の変化をインダクタンス係数を介して逐次検出し、このインダクタンス値の変化に応じてPID制御の比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインを変更させることで、直流リアクトルのインダクタンス値が大きくなる小電流領域でのPID制御の応答が速くなり、アーク状態から短絡状態に移行した直後に電流を小さくしてスパッタの発生を抑制するとき、PID制御の応答性が速くなり出力電流の発振が防止できる。この発振の防止によりスパッタの発生が減少し溶接の品質向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係る溶接電源装置の電気接続図である。
【図2】PID制御回路及びインダクタンス係数回路の詳細図である。
【図3】出力電流値とインダクタンス係数との相関図である。
【図4】実施形態1の動作を説明する波形図である。
【図5】実施形態2に係る溶接電源装置の電気接続図である。
【図6】実施形態2のPID制御回路の詳細図である。
【図7】従来技術の溶接電源装置の電気接続図である。
【図8】従来技術のPID制御回路の詳細図である。
【図9】閉ループの直流リアクトルの出力電流値とインダクタンス値との特性図で ある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、実施形態1の溶接電源装置の電気接続図である。同図において、図7に示す従来技術の溶接電源装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0021】
図2に示すインダクタンス係数回路LOは、出力電流検出信号Idの値に応じて変化するインダクタンス値を、インダクタンス値に対応したインダクタンス係数Lに変換して出力する。図2に示すインダクタンス係数回路LOにより、出力電流検出信号Idの値が予め定めた第1の出力電流基準値Ir1(例えば、10A)より小さいとき、インダクタンス値100μHをインダクタンス係数L=10に変換して出力し、出力電流検出信号Idの値が10A〜40Aの範囲のとき、インダクタンス係数Lを(−0.3Id+13)のインダクタンス係数変換式より算出しインダクタンス係数Lを10から1に向けて減少し、このときインダクタンス係数L=10から1に対応するインダクタンス値は100μHから10μHに向けて連続的に減少する。つぎに、出力電流検出信号Idの値が第2の出力電流基準値Ir2(例えば、40A)より大きい、インダクタンス値は10μHをインダクタンス係数L=1に変換して出力する。
【0022】
図3は、直流リアクトルのインダクタンス値をインダクタンス係数回路LOにてインダクタンス係数に変換したときの出力電流検出値とインダクタンス係数との相関図であり、出力電流検出信号Idの値が10A〜40Aの範囲のとき、出力電流検出信号Idの増加に逆比例してインダクタンス係数は10から1へと減少し、このときのインダクタンス値は100μHから10μHへと減少する。
【0023】
図2は、PID制御回路の詳細図を示し、例えば、電源投入時に出力電流検出値が100Aに対応する初期の比例ゲインをKpo、積分ゲインをKio及び微分ゲインをKdoに設定する。そして、出力電流検出値が10A〜40Aの範囲で変化すると、(−0.3Id+13)のインダクタンス係数変換式より算出したインダクタンス係数Lが、Kp=Kpo×(0.4L+0.6)の式に入力して最適な比例ゲインKpを算出し、第1の乗算器MD1により差動信号Ddと上記算出した比例ゲインKpとを乗算して第1の乗算信号Md1として出力する。続いて、積分器ICにより差動信号Ddを積分して積分信号Icとして出力し、第2の乗算器MD2により積分信号IcとKi=Kio×(0.1L+0.9)の式より算出した最適な積分ゲインKiとを乗算して第2の乗算信号Md2として出力する。さらに、微分器DCにより差動信号Ddを微分して微分信号Dcとして出力し、第3の乗算器MD3により微分信号DcとKd=Kdo×(0.2L+0.8)の式より算出した最適な微分ゲインKdとを乗算して第3の乗算信号Md3として出力する。そして、加算器ADにより第1の乗算信号Md1、第2の乗算信号Md2及び第3の乗算信号Md3を加算して行いPid制御信号として出力する。
【0024】
図4は、実施形態1の動作を説明する波形図であり、同図(A)は出力電流波形を示し、同図(B)は、短絡時の出力電流波形の拡大図を示す。
【0025】
次に、実施形態1の動作について図2から図4を用いて説明する。
図4(A)に示す時刻t=t1において、短絡状態からアーク状態に移行し出力電流検出信号Idの値が150Aになると、図2に示すインダクタンス係数回路LOは、第2の出力電流基準値Ir2(40A)より大きいとき、インダクタンス値10μHをインダクタンス係数L=1に変換して出力する。
【0026】
PID制御回路は、インダクタンス係数L=1を入力して、Kp=Kpo×(0.4L+0.6)の式より算出して比例ゲインKpを設定する。同時に、Ki=Kio×(0.1L+0.9)の式より算出して積分ゲインKiを設定する。さらに、Kd=Kdo×(0.2L+0.8)の式より算出して微分ゲインKdを設定する。このとき、時刻t=t1以前に設定した、例えば、出力電流検出値が100Aのときの、比例ゲインKpo、積分ゲインKio及び微分ゲインKdoと同一値になる。
【0027】
図4(A)に示す時刻t=t1〜t2において、アーク発生中は出力電流検出信号Idの値が50A〜150Aになり、インダクタンス係数回路LOはインダクタンス係数L=1を継続し、PID制御回路は、第1の乗算器MD1により差動信号Ddと算出した比例ゲインKpとを乗算して第1の乗算信号Md1として出力し、第2の乗算器MD2により積分信号Icと算出した積分ゲインKIとを乗算して第2の乗算信号Md1として出力し、第3の乗算器MD3により微分信号Dcと算出した微分ゲインKdとを乗算して第3の乗算信号Md3として出力する。そして、加算器ADにより第1の乗算信号Md1、第2の乗算信号Md2及び第3の乗算信号Md3を加算して行いPid制御信号として出力する。
【0028】
主制御回路SCは、Pid制御信号に応じてパルス幅変調制御を行い、互いに半周期ずれた第1の出力制御信号Sc1及び第2の出力制御信号Sc2を出力する。このとき、閉ループ構成の直流リアクトルDCLのインダクタンス値は、図9より10μHとなる。
【0029】
時刻t=t2において、アーク状態から短絡状態に移行するとき、短絡時に発生するスパッタの発生を抑制するために、短絡電流を短絡発生から所定時間、例えば、1msの間、出力電流を25Aに減少させる。このとき、従来技術では直流リアクトルDCLのインダクタンス係数は1となり、図9に示すインダクタンス値が10μHから55μHに増加してもインダクタンス係数は変化しなく、このインダクタンス値の上昇によってPID制御の応答に遅れが生じ、図4(B)に示すように、PID制御の応答の遅れにより出力電流に発振が生じてスパッタが発生しスパッタ量が増加する。
【0030】
そこで、本発明では、図4(B)に示す時刻t=t2において、アーク状態から短絡状態に移行した直後に出力電流検出信号Idの値が25Aに減少すると、インダクタンス係数回路LOは、(−0.3Id+13)のインダクタンス係数変換式よりインダクタンス係数L=1を5.5に変更する。そして、このときにインダクタンス値は55μHに増加する。
【0031】
PID制御回路は、インダクタンス係数L=5,5を入力して比例ゲインをKp=Kpo×(0.4L+0.6)の式より出力電流検出値25Aに対応した比例ゲインを求める。このときの比例ゲインKpはKp=2.8Kpoとなる。同時に、積分ゲインをKi=Kio×(0.1L+0.9)の式より出力電流検出値25Aに対応した積分ゲインを求める。このときの積分ゲインkiはKi=1.45Kioとなる。さらに、微分ゲインをKd=Kdo×(0.2L+0.8)の式より出力電流検出値25Aに対応した微分ゲインを求める。このときの微分ゲインKdはKd=1.9Kdoとなる。
【0032】
図4(A)に示す時刻t=t2〜t3において、インダクタンス係数L=5.5の増加に応じてPID制御回路は、比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを増加し、この各ゲインの増加によってPID制御の応答が速くなり、図9に示す出力電流値が25Aのとき直流リアクトルDCLのインダクタンス値が55μHに増加しても、図4(B)に示す出力電流に発振が生じなくなり、アーク状態から短絡状態に移行したときに発生するスパッタ量が減少する。
【0033】
上述より、直流リアクトルDCLのインダクタンス値に対応するインダクタンス係数に基づいてPID制御の比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインを変更することで、PID制御のフィードバックの応答性が速くなり、アーク状態から短絡状態に移行した直後に電流を小さくしてスパッタの発生を抑制するとき、PID制御の応答性の高速化で出力電流の発振が防止でき、スパッタの発生の減少につながる。
【0034】
実施形態2についての説明。
上述の実施形態1では、インダクタンス係数回路LOにより、出力電流値に基づいてインダクタンス値に対応するインダクタンス係数Lに変換し、この変換したインダクタンス係数LをPID制御回路に入力して、インダクタンス係数Lに基づいて比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを変更してPID制御の応答性を制御しているが、図6に示す電流対応PID制御回路に出力電流検出値を直接入力して比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを変更し、PID制御の応答速度を制御してもよい。
【0035】
この動作について図4から図6を用いて説明する。
図4(A)に示す時刻t=t1において、短絡状態からアーク状態に移行し出力電流検出信号Idの値が、例えば、150Aになると、図6に示す電流対応PID制御回路は、出力電流検出値150Aを入力として、比例ゲインを図6に示す、(Kpo×1)の式より算出する。このときの比例ゲインKpはKp=Kpoになる。同時に、積分ゲインを(Kio×1)の式より算出する。このときの積分ゲインKiはKi=Kioになる。さらに、微分ゲインを(Kdo×1)の式より算出する。このときの微分ゲインKdはKd=Kdoになる。
【0036】
図4(A)に示す時刻t=t1〜t2において、アーク発生中は出力電流検出信号Idの値が50A〜150Aのとき、電流対応PID制御回路は、時刻t=t1において算出した比例ゲインKp、積分ゲインKd及び微分ゲインKiとを加算してPid制御信号として出力する。
【0037】
図4(B)に示す時刻t=t2において、アーク状態から短絡状態に移行して出力電流検出信号Idの値が25Aに減少すると、電流対応PID制御回路は、出力電流検出値25Aを入力して図6に示す、Kp=Kpo×(−0.12Id+5.8)の式より算出し、このときの比例ゲインKpはKp=2.8Kpoになる。同時に、Ki=Kio×(−0.03Id+2.2)の式より算出し、このときの積分ゲインKiはKi=1.45Kioになる。さらに、Kd=Kdo×(−0.06Id+3.4)の式より算出し、このときの微分ゲインKdは、Kd=1.9Kdoになる。
【0038】
上述より、出力電流値の変化に応じて比例ゲインKp、積分ゲインKd及び微分ゲインKiの変化が実施形態1と同一になる。
【符号の説明】
【0039】
AD 加算器
C1 平滑コンデンサ
DC 微分器
Dc 微分信号
DD 差動器
Dd 差動信号
DCL 直流リアクトル(閉ループ構成)
DR1 1次整流回路
DR2 2次整流回路
ID 出力電流検出回路
Id 出力電流検出信号
INT 主変圧器
IC 積分器
Ic 積分信号
IR 出力電流設定回路
Ir 出力電流設定信号(出力電流設定値)
LO インダクタンス係数回路
L インダクタンス係数
M 被加工物
MD1 第1の乗算器
Md1 第1の乗算信号
MD2 第2の乗算器
Md2 第2の乗算信号
MD3 第3の乗算器
Md3 第3の乗算信号
PID PID制御回路(比例・積分・微分制御回路)
Pid Pid制御信号
PIDI 電流対応PID制御回路(比例・積分・微分制御回路)
SC 主制御回路
Sc1 第1の出力制御信号
Sc2 第2の出力制御信号
SR インバータ駆動回路
TH トーチ
TR1 第1のスイッチング素子
TR2 第2のスイッチング素子
TR3 第3のスイッチング素子
TR4 第4のスイッチング素子
Tr1 第1のスイッチング素子駆動信号
Tr2 第2のスイッチング素子駆動信号
Tr3 第3のスイッチング素子駆動信号
Tr4 第4のスイッチング素子駆動信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源を直流電圧に変換する直流電源回路と、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換するインバータ回路と、前記高周波交流電圧を溶接に適した交流電圧に変換する主変圧器と、前記主変圧器の出力を整流する2次整流回路と、前記整流された出力を平滑する閉ループの直流リアクトルと、前記平滑された出力電流を検出する出力電流検出回路と、前記出力電流検出値と予め定めた出力電流設定値とをPID制御しPID制御信号として出力するPID制御回路と、前記PID制御信号に基づいて前記インバータ回路を制御する主制御回路と、を備えた溶接電源装置において、前記直流リアクトルのインダクタンス値に対応するインダクタンス係数を生成し、前記出力電流検出値に基づいて前記インダクタンス係数を算出するンダクタンス係数回路を設け、前記PID制御回路は、前記インダクタンス係数に基づいて前記PID制御信号の比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを変更する、ことを特徴とする溶接電源装置。
【請求項2】
前記インダクタンス係数回路は、予め定めた第1の出力電流基準値と前記第1の出力電流基準値より大きい予め定めた第2の出力電流基準値とを有し、前記出力電流検出値が前記第1の出力電流基準値以下のとき第1のインダクタンス係数を選択し、前記出力電流検出値が前記第2の出力電流基準値以上のとき第2のインダクタンス係数を選択し、前記出力電流検出値が前記第1の出力電流基準値から前記第2の出力電流基準値に向けて増大すると前記インダクタンス係数が連続的に減少する、ことを特徴とする請求項1記載の溶接電源装置。
【請求項3】
前記PID制御回路は、前記インダクタンス値に対応するインダクタンス係数が大きくなると前記比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを大きくする、ことを特徴とする請求項1記載の溶接電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−95442(P2012−95442A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240223(P2010−240223)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】