説明

溶液製膜方法

【課題】40μm以上65μm以下の薄いフィルムを、表面が平滑となるように、かつ、高速で製造する。
【解決手段】流延バンド82の上に形成されて60秒搬送された流延膜24aの溶媒残留率が20重量%以上130重量%以下の範囲となるようなドープを流延する。そして、60秒搬送される間の流延膜24aの周辺の空気の流れにつき、流延バンド82の走行速度に対する相対的な速度が0m/秒以上1.0m/秒以下の範囲となるように制御する。形成されてから60秒経過した流延膜24aには、送風ダクト96からの乾燥空気をあてて乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液製膜方法に関し、特に、液晶ディスプレイ等の光学製品に用いられるポリマーフィルムを製造するための溶液製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の光学製品に対する要求性能は近年ますます高くなっており、中でも、液晶ディスプレイでは高輝度化を達成するための性能の向上が望まれている。高輝度化を図ると、ディスプレイの表示欠陥が顕在化しやすい。つまり、輝度を従来よりもさらに高めようとすると、従来は確認されなかった表示欠陥が認められるようになる。表示欠陥は、表示されるべき画像の一部が乱れる現象であり、中には表示されるべき画像の一部が欠けて表示されない現象もある。
【0003】
液晶ディスプレイ等の光学製品では、複数のポリマーフィルムが積層されている。ポリマーフィルムとしては、環状ポリオレフィンフィルムやセルロースアシレートフィルム等がある。そして、各ポリマーフィルムの表面が平滑で無い場合には、厚みが均一であっても、これが液晶ディスプレイの表示欠陥の原因となる。液晶ディスプレイ等に用いるポリマーフィルムの表面の平滑度を向上させるために、これまで様々な検討が行われてきており、例えば、セルロースアシレートフィルムの製造方法としては、それぞれの所定の値以上の互いに異なる粘度である複数のドープを共流延して、共流延後20秒以内の流延膜に対して10m/秒以上の風速の風を吹きつける方法が提案されている(特許文献1参照)。また、高いレタデーションをもち面内での光学的な均一性に優れたセルロースエステルフィルムを製造する方法として、所定のレタデーション上昇剤を所定量ドープに含ませて流延し、剥ぎ取り前乾燥の前半で10秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で流延膜を乾燥する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
さらに、液晶ディスプレイでは高輝度化への流れとともに、高機能化及びさらなる薄型化の流れがある。そこで、これを構成するポリマーフィルムに対しては、従来よりもさらに厚みを小さくすることが表面平滑性とともに求められている。厚みを小さくすることが求められているのは、例えば、液晶ディスプレイをこれまで構成していたポリマーフィルムにつき個々の厚みを薄くすると、他の機能をもつポリマーフィルムを増やして積層しても、液晶ディスプレイとしての厚み方向のサイズを従来と同じあるいは従来よりも小さくすることができるからである。
【特許文献1】特開2003−276037号公報
【特許文献2】特開2004−243628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献の方法により製造されたセルロースアシレートフィルムを液晶ディスプレイに用いると、従来レベルの輝度では表示欠陥が確認されることは少ないが、輝度を高めるにつれて表示欠陥が目立ってきてしまうという問題がある。
【0006】
そして、ポリマーフィルムを、より薄くつくるほど、表面に凹凸や歪みが現れやすく、さらに、表面の凹凸や歪みがわずかであってもその影響が液晶ディスプレイで出やすくなり、上記特許文献2の方法では効果が十分とはいえなくなってきた。また、特許文献1,2ともに、セルロースアシレートないしセルロースエステルのフィルムを製造する場合であり、環状ポリオレフィン等の他のポリマーに適用するには十分には記載されておらず、満足な結果は得られない。環状ポリオレフィンは、溶液製膜方法によりフィルムとする場合には、セルロースアシレートないしセルロースエステルに比べて溶媒が極めて蒸発しやすいためである。そして、環状ポリオレフィンのフィルムを従来よりもさらに薄く製造しようとすると、上記文献に記載の方法ではほとんど効果が無いと言える。さらにまた、液晶ディスプレイの急激な需要増大に応じるために、ポリマーフィルムの製造速度を小さくすることはできないという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、以上の背景から、従来よりも薄い40μm以上65μm以下の厚みであり表面が従来よりも平滑なポリマーフィルムを、製造速度を従来よりも小さくすることなく製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、ポリマーと溶媒とを含むドープを、走行する支持体の上に流延ダイから連続的に流出して流延膜を形成し、この流延膜を前記支持体から剥がして乾燥する溶液製膜方法において、形成されて60秒後の流延膜における溶媒残留率が20重量%よりも大きく130重量%よりも小さい値となるようなドープを流延する第1の工程と、前記支持体により搬送される前記流延膜の搬送速度と、形成されてから60秒以内の前記流延膜の周辺における空気の流れの前記搬送速度に対する相対的な速度との差がゼロ以上1.0m/秒以下となるように、前記流延膜周辺の空気の流れを制御する第2の工程と、この第2工程後の前記流延膜に乾燥空気を吹きつけて乾燥する工程と、を有することを特徴として構成されている。
【0009】
そして、上記の溶液製膜方法では、前記流延膜に対する前記乾燥空気の吹きつけの時間は、20秒以上100秒以下であることが好ましい。前記ポリマーは、環状ポリオレフィンであることが好ましい。そして、前記ドープは、前記ポリマーに対する重量比率が10%以上40%以下の範囲である添加剤を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来よりも薄い、すなわち40μm以上65μm以下の厚みのフィルムを、従来よりも平滑に、かつ、製造速度を従来よりも小さくすることなく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施様態について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施様態に限定されるものではない。
【0012】
[原料]
本発明では、従来の溶液製膜方法でフィルムとすることができた公知のポリマーをドープのポリマー成分とすることができる。中でも、幅方向に張力を付与することにより幅を拡げた工程がない、すなわち幅方向における延伸工程がない溶液製膜方法により得られるポリマーフィルムが5000fmol/(m・s・Pa)(単位中で「f」は「フェムト」を表す)以上の酸素透過率となるようなポリマーをフィルムとするときに本発明の効果は大きい。酸素透過率は、ポリマーの自由体積に関与する因子であるため、ポリマー中における物質の拡散速度を表す。すなわち、溶液製膜においては、流延膜からの溶媒の蒸発速度に関与する因子といえる。そして、酸素透過率が高いポリマーであるほど、流延膜からの溶媒の蒸発速度は高い。なお、酸素透過率が5000未満である場合には、流延膜の乾燥速度が遅いために、形成されてから60秒後の流延膜24aの溶媒残留率を後述のように20重量%以上130重量%以下の範囲に入らない可能性がある。このようなポリマーの中でも、環状ポリオレフィン、セルロースアシレートをドープのポリマー成分とする場合に本発明は効果が高く、環状ポリオレフィンの場合には特に効果が高い。
【0013】
酸素透過率の上記の値は、周知のモコン法による値であり、市販の酸素透過率測定装置を用い、JIS K 7126に準じて、温度20℃、湿度60%RHの条件で測定した値である。市販の測定装置としては、例えば、MOCON Inc社製の型式OX−TRAN 2/21 MLを用いる。なお、この測定装置を用いて測定する場合には、通常、測定すべきサンプルを50cmの面積のサイズとするが、本発明が特に有効な環状ポリオレフィンやセルロースアシレートのフィルムは、このサイズでは酸素透過率が高すぎて測定限界を超えてしまう。このような場合には、サンプルのサイズを5cmの面積とし、さらに測定時の雰囲気をO雰囲気ではなく乾燥空気にすることにより環境中の酸素濃度を20%とする。これにより、酸素透過率が非常に高いフィルムであっても上記測定装置で測定することができるようになる。モコン法により測定される酸素透過率は、互いに同じポリマーからなるフィルムであっても、フィルムの厚みが大きい方が低い値となる。したがって、本発明は、同じポリマーからなるフィルムであっても厚みが薄いほど後述の効果が大きい。
【0014】
特に好ましい環状ポリオレフィンについて説明する。本発明における環状ポリオレフィンとは、環状オレフィン構造を有する重合体であり、その例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の各水素化物などがある。本発明に好ましい重合体は、下記化2で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、及び、化1で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上をさらに含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンである。また、化3で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も好適に使用することができる。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
化1〜化3における各式において、mは0〜4の整数を表す。R〜Rは、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、X〜X、Y〜Yは水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CHCOOR11、−(CHOCOR12、−(CHNCO、−(CHNO、−(CHCN、−(CHCONR1314、−(CHNR1314、−(CHOZ、−(CHW、または、XとYあるいはXとYあるいはXとYから構成された(−CO)O、(−CO)NR15を示す。なお、R11〜R15は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR163−p (R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
【0019】
〜X、Y〜Yの置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、フィルムの厚さ方向レタデーション(Rth)を大きくすることができるとともに、面内レタデーション(Re)の発現性を大きくすることができる。Re、Rth発現性の大きなフィルムは、フィルム製造過程でフィルムを延伸することにより、Re値、Rth値を大きくすることができる。
【0020】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号、WO2004/070463A1号等の各公報に開示されており、ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合することによって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、次のようなジエン化合物とを付加重合して得ることもできる。ジエン化合物としては、共役ジエン、非共役ジエン、線状ジエンの各化合物等がある。共役ジエン化合物としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレンを例示することができる。非共役ジエン化合物としてはエチリデンノルボルネンを例示することができる。線状ジエン化合物としてはアクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルを例示することができる。ノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)が互いに異なる複数のグレードがある。それらは例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)、APL6015T(Tg145℃)などである。また、ポリプラスチックス(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが製品として発売されている。さらに、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
【0021】
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003‐1159767号、特開2004‐309979号等の各公報に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R〜Rは水素原子または−CHが好ましく、X及びYは水素原子、Cl、−COOCHが好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、本発明では以上のものを用いることもできる。
【0022】
[溶媒]
環状ポリオレフィンが溶解することができるもの、すなわち良溶媒であれば、溶媒は特に限定されない。好ましい例として、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素系化合物、炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトン、エーテルから選ばれる化合物が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素類の例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12の環状炭化水素類としてはシクロペンタン、シクロヘキサン及びその誘導体が挙げられる。炭素原子数が3〜12の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエステルの例としては、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトンの例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテルの例としては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶剤の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノールが挙げられる。有機溶剤の好ましい沸点は35℃以上かつ150℃以下である。なお、本発明においては、乾燥性、粘度等のドープ物性調節のために、2種以上の化合物の混合物を溶剤として用いることができ、さらに、混合物を溶媒として用いるときには、その混合物にいわゆる貧溶媒が添加されていてもよい。
【0023】
良溶媒と貧溶媒との混合物をドープの溶媒として用いる場合には、貧溶媒は、使用するポリマーの種類と良溶媒の種類との少なくともいずれか一方により適宜選択するとよい。例えば、良溶媒として塩素系有機溶剤を使用する場合には、アルコールを好適に使用することができる。アルコールとしては、直鎖、分枝、環状のいずれの構造を有していてもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールは、第一級〜第三級のいずれのものであってもよい。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なお、アルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。貧溶媒のなかでも特に1価のアルコールは、剥離抵抗の低減効果があり、好ましく使用することができる。剥離抵抗とは、流延膜を支持体から剥がす際の剥ぎ取り力である。選択する良溶剤によって特に好ましいアルコールは変化するが、乾燥負荷を考慮すると、沸点が120℃以下のアルコールが好ましく、炭素数が1〜6の1価アルコールがさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコールが特に好ましく使用することができる。環状ポリオレフィンのドープを作成する上で特に好ましい混合溶剤は、ジクロロメタンを主溶剤とし、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールあるいはブタノールから選ばれる1種以上のアルコールを貧溶媒にする組み合わせである。
【0024】
[添加剤]
環状ポリオレフィンのドープには、用途に応じた種々の添加剤及びその他の物質をフィルムの成分として加えることができる。添加剤としては、(1)劣化防止剤、(2)紫外線防止剤、(3)レタデーション(光学異方性)調節剤、(4)剥離促進剤、(5)可塑剤、(6)赤外吸収剤、(7)微粒子等が挙げられる。添加剤は、固体でも油状物でもよく、すなわち、その融点や沸点によって特に限定されるものではない。例えば、融点が20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合使用、同様に劣化防止剤の混合使用等も可能である。赤外吸収剤(赤外吸収染料)としては、例えば特開平2001−194522号公報に記載されており、それらは本発明でも使用することができる。またその添加するタイミングは環状ポリオレフィンのドープ製造工程中のいずれの工程でも良いし、またはドープ製造工程の最後に添加剤の添加工程を加えて添加をしてもよい。ドープにおける添加剤の含有率は、ポリマー成分の重量に対して10〜40重量%が好ましく、20〜30重量%がより好ましい。また、多層構造の環状ポリオレフィンフィルムを製造する場合には、各層毎に添加物の種類や添加量を変えてもよい。
【0025】
(1)劣化防止剤
用いることができる公知の劣化防止剤(酸化防止剤)としては、フェノール系やヒドロキノン系の化合物がある。例としては、n−オクタデシル−3−(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,6−ジ−t−ブチル,4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。その他の例としては、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系の化合物が挙げられる。劣化防止剤の添加量は、環状ポリオレフィン100重量部に対して、0.05〜5.0重量部が好ましい。
【0026】
(2)紫外線吸収剤
得られるフィルムを偏光板に用いる場合や液晶と組み合わせて用いる場合には、偏光板や液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤がフィルムに存在することが好ましい。そこでドープには紫外線吸収剤を添加しておくことが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、ヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
【0027】
ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤は、環状ポリオレフィンに対する重量割合が1ppm〜1.0%となるように添加されることが好ましく、10〜1000ppmとなるように添加されることがさらに好ましい。
【0028】
(3)レタデーション調節剤
環状ポリオレフィンフィルムが所定のレタデーション値を発現するように、レタデーション調節剤を用いることができる。レタデーション調節剤を使用する場合には、環状ポリオレフィン100重量部に対して10〜40重量部の範囲の割合で使用することが好ましく、15〜35重量部の範囲の割合で使用することがより好ましく、20〜30重量部の範囲の割合で使用することがさらに好ましい。なお、2種類以上のレタデーション調節剤を併用してもよい。なお、レタデーション調節剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有する化合物であることが好ましく、可視領域には実質的に吸収能を有していない化合物であることが好ましい。
【0029】
以下に、環状ポリオレフィンフィルム中に含有させる好ましいレタデーション調節剤の例を挙げる。以下の化合物は、いずれも、環状ポリオレフィンフィルムのレタデーションを低下させる作用をもついわゆるレタデーション低下剤である。
[低分子化合物]
低分子化合物としては化4の一般式(1)と化5(2)で表される化合物とのうち少なくともいずれか1種を挙げることができる。これらの総含有率は、環状ポリオレフィンに対して10〜40重量%の含有率とすることが好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
化4の式中、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R、RおよびRの炭素原子数の総和は10以上である。
【0032】
【化5】

【0033】
化5の式中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。RおよびRの炭素原子数の総和は10以上である。
【0034】
上記化4の一般式(1)において、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R、RおよびRの炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。また、化5の一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、RおよびRの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、6乃至25のものがより好ましく、6乃至20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6乃至30のものが好ましく、6乃至24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。化4または化5で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
また、レタデーション調節剤として用いることができる好ましい低分子化合物としては、以下の化11に示す化合物と化12に示す化合物と化17に示す化合物とがある。これらの環状ポリオレフィンフィルムにおける含有率は、化4及び化5に示す化合物の場合と同じである。
【0041】
【化11】

【0042】
上記化11において、R11はアリール基を表す。R12及びR13は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、少なくとも一方はアリール基である。R12がアリール基であるとき、R13はアルキル基でもアリール基でもよいが、アルキル基であることがより好ましい。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。アリール基は炭素数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
【0043】
【化12】

【0044】
上記化12において、R21、R22及びR23は、それぞれ独立にアルキル基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。R21は環状のアルキル基であることが好ましく、R22及びR23の少なくとも一方が環状のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は炭素数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。
【0045】
上記化11及び化12におけるアルキル基及びアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基及びアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基である。
【0046】
次に、化11と化12とで表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。なお、「(A− )」と付してある化合物が化11で表される化合物の具体例であり、「(B− )」と付してある化合物が化12で表される化合物の具体例である。
【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
上記の化合物は、いずれも既知の方法により製造することができる。すなわち、化11及び化12の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、又はカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0052】
次に、化17で表される化合物について説明する。
【0053】
【化17】

【0054】
上記化17において、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族基、又は置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。
【0055】
31、X32、X33及びX34は、それぞれ、単結合、−CO−及びNR35−(R35は置換もしくは無置換の脂肪族基、又は置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のもの及び/又は脂肪族基がより好ましい)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X31、X32、X33及びX34の組み合わせは、特に限定されないが、−CO−、−NR35−から選ばれることがより好ましい。a、b、c及びdは0以上の整数であり、0又は1であることが好ましく、a+b+c+dは2以上であり、2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。Z31は(a+b+c+d)価の有機基(環状のものを除く)を表す。Z31の価数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2又は3が最も好ましい。有機基とは、有機化合物からなる基をいう。
【0056】
また、上記化17で示される化合物としては、好ましくは下記の一般式(3)で表される化合物である。
一般式(3):R311 −X311 −Z311 −X312 −R312
【0057】
上記一般式(3)において、R311 及びR312 は、それぞれ、置換もしくは無置換の脂肪族基、又は置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X311 及びX312 は、それぞれ独立に、−CONR313 −又は−NR314 CO−を表し、R313 及びR314 は、置換もしくは無置換の脂肪族基、又は置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のもの及び/又は脂肪族基がより好ましい。Z311 は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR315 −(R315 は置換もしくは無置換の脂肪族基、又は置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のもの及び/又は脂肪族基がより好ましい)、アルキレン基及びアリーレン基から選ばれる、1種以上の基から形成される2価の有機基(環状のものを除く)を表す。Z311 の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR315 −、及びアルキレン基から選ばれることが好ましく、−O−、−S−及びアルキレン基から選ばれることがさらに好ましく、−O−、−S−及びアルキレン基から選ばれることが最も好ましい。
【0058】
上記一般式(3)としては、好ましくは下記の化18〜化20の各一般式で表される化合物である。
【0059】
【化18】

【0060】
【化19】

【0061】
【化20】

【0062】
上記化18から化20の各一般式において、R321 、R322 、R323 及びR324 は、それぞれ置換もしくは無置換の脂肪族基、又は置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Z321 は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR325 −(R325 は置換もしくは無置換の脂肪族基、又は置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のもの及び/又は脂肪族基がより好ましい)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Z321 の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR325 −、及びアルキレン基から選ばれることが好ましく、−O−、−S−及びアルキレン基から選ばれることがさらに好ましく、−O−、−S−及びアルキレン基から選ばれることが最も好ましい。
【0063】
以下に、上記の置換もしくは無置換の脂肪族基について説明する。脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ビシクロオクチル基、アダマンチル基、n−デシル基、t−オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ジデシル基などが挙げられる。
【0064】
以下に、上記の芳香族基について説明する。芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例な環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
【0065】
また、以下に前記の置換基Tに関して詳細に説明する。置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基など)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基など)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基など)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基など)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基など)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基など)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基など)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基など)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基など)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基など)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基など)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基など)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基など)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基など)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基など)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基など)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなど)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には、例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基など)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0066】
化17の一般式で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0067】
【化21】

【0068】
【化22】

【0069】
【化23】

【0070】
[化合物合成方法]
上述した本発明で好ましく用いられるRth低下剤およびRe低下剤は、以下の方法にてつくることができる。化11の一般式で示す化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。また、化12の一般式で示す化合物は、スルフィドの酸化反応もしくは芳香族化合物とスルホン酸クロリドのFriedel−Crafts反応により得ることができる。
【0071】
[オリゴマー]
レタデーション低下剤としてオリゴマーを用いることができる。オリゴマーとしては、スチレン系オリゴマーとアクリル系オリゴマーとが好ましい。スチレン系オリゴマーとアクリル系オリゴマーとしては次の化24の(I)と(II)との各一般式で表される化合物がある。
【0072】
【化24】

【0073】
式中R〜Rは、各々独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を表し、Rは全て同一の原子または基であっても、個々異なる原子または基であっても、互いに結合して、炭素環または複素環(これらの炭素環、複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。
【0074】
化24の一般式(I)は、芳香族ビニル系単量体から得られる構造単位である。当該芳香族ビニル系単量体の具体例としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのアルキル置換スチレン類;4−クロロスチレン、4−ブロモスチレンなどのハロゲン置換スチレン類;p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレンなどのヒドロキシスチレン類;ビニルベンジルアルコール類;p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレンなどのアルコキシ置換スチレン類;3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸などのビニル安息香酸類;メチル−4−ビニルベンゾエート、エチル−4−ビニルベンゾエートなどのビニル安息香酸エステル類;4−ビニルベンジルアセテート;4−アセトキシスチレン;2−ブチルアミドスチレン、4−メチルアミドスチレン、p−スルホンアミドスチレンなどのアミドスチレン類;3−アミノスチレン、4−アミノスチレン、2−イソプロペニルアニリン、ビニルベンジルジメチルアミンなどのアミノスチレン類;3−ニトロスチレン、4−ニトロスチレンなどのニトロスチレン類;3−シアノスチレン、4−シアノスチレンなどのシアノスチレン類;ビニルフェニルアセトニトリル;フェニルスチレンなどのアリールスチレン類、インデン類などが挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、二種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0075】
化24の一般式(II)はアクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位である。当該アクリル酸エステル系単量体の例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2または4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2または4−クロロフェニル)、アクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、メタクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来るが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、二種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが好ましい。
【0076】
前記(共)重合体は、化24の一般式(I)で表される芳香族ビニル系単量体および化24の一般式(II)で表されるアクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位を少なくとも1種含むものが好ましい。また、共重合組成を構成するそれ以外の構造として、前記単量体と共重合性に優れたものであることが好ましく、例として、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、3−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、4−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸等の酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミド結合含有ラジカル重合性単量体;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有ラジカル重合性単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
上記のような共重合体を使用する場合、共重合体組成中に於けるか化24の一般式(I)で示される基を少なくとも30モル%含むことが好ましい。また、化24の一般式(II)で示される基を少なくとも20モル%以上含むことが好ましい。また、その他の共重合成分の割合は、50モル%以下であることが好ましい。
【0078】
化24の一般式(I)または(II)で表される構造を有する化合物の重量平均分子量は500以上300000以下であることが好ましく、透明性に優れ、光学特性の良好な発現性を示すフィルムを得るためには、500以上15000以下であることがより好ましく、500以上5000以下であることが特に好ましい。本発明において、環状ポリオレフィンに含有させるオリゴマー及び後述のポリマーを指すのかの重量平均分子量は、GPC(展開溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算法)により測定した値である。
【0079】
また、化24の一般式(I)と(II)で表される構造を有するオリゴマーは、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
【0080】
化24の一般式(I)または(II)で表される構造を有するオリゴマーを添加する時期はドープ作製工程中のいずれであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0081】
レタデーション低下剤としてポリマーを用いることができる。ポリマーとしては、ポリエステルが好ましい。ポリエステルとしては、ジカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)および/またはヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主原料として、縮合反応することにより得られるものが挙げられる。
【0082】
上記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジカルボン酸は2種類以上用いてもよい。
【0083】
また、ジオールとしては炭素数2〜20の脂肪族グリコール、すなわち、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジオールは2種類以上用いてもよい。
【0084】
これらの重合体ないしは共重合体の例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ビスフェノールA(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリプロピレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレン(テレフタレート/イソフタレート)ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)(テレフタレート/イソフタレート)などが挙げられる。
【0085】
その他、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなるサーモトロピック液晶性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂を使用することもできる。
【0086】
ここでいう芳香族オキシカルボニル単位としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4´−ヒドロキシジフェニル−4−カルボン酸から生成した構造単位を、芳香族ジオキシ単位としては、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノンから生成した構造単位を、芳香族ジカルボニル単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位を、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールから生成した構造単位を例示することができる。具体例としては、p−オキシ安息香酸/ポリエチレンテレフタレート、p−オキシ安息香酸/6−オキシ−2−ナフトエ酸などのサーモトロピック液晶性ポリエステルが挙げられる。
【0087】
ポリエステルの重量平均分子量は500以上300000以下であることが好ましく、バインダーとの相溶性、製膜後のフィルムの透明性に優れ、光学特性の良好な発現性を示すフィルムを得るために、500以上15000以下であることがより好ましく、500以上5000以下であることが特に好ましい。
【0088】
本発明において、環状ポリオレフィンに含有させるポリエステルの重量平均分子量は、GPC(展開溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算法)により測定した値である。
【0089】
またこれらのポリエステルは、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
【0090】
ポリエステルを添加する時期は、ドープ作製工程中のいずれであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0091】
(4)剥離促進剤
環状ポリオレフィンフィルムの剥離抵抗を小さくする添加促進剤としては、いわゆる界面活性剤に、効果の顕著なものが多くみつかっている。好ましい添加促進剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸またはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸またはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が挙げられる。また、上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離促進剤を例示する。
【0092】
RZ−1 C17O−P(=O)−(OH)
RZ−2 C1225O−P(=O)−(OK)
RZ−3 C1225OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−4 C1531(OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−5 {C1225O(CHCHO)−P(=O)−OH
RZ−6 {C1835(OCHCHO}−P(=O)−ONH
RZ−7 (t−C−C−OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−8 (iso−C19 −C−O−(CHCHO)−P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9 C1225SONa
RZ−10 C1225OSONa
RZ−11 C1733COOH
RZ−12 C1733COOH・N(CHCHOH)
RZ−13 iso−C17−C−O−(CHCHO)−(CHSONa
RZ−14 (iso−C19−O−(CHCHO)−(CHSONa
RZ−15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16 トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17 C17 33CON(CH)CHCHSONa
RZ−18 C12 25−CSO・NH
【0093】
剥離剤の添加量は環状ポリオレフィンに対して0.05〜5重量%が好ましく、0.1〜2重量%がさらに好ましく、0.1〜0.5重量%が最も好ましい。
【0094】
(5)可塑剤
環状ポリオレフィンは、一般的に、セルロースアセテートと比較して柔軟性に乏しく、フィルムとされたときに曲げ応力やせん断応力がかけられると、フィルムに割れ等が生じ易い。また、得られたフィルムを光学製品に用いるために加工する際に、切断等をするとその切断部にひびが入りやすく、切り屑が発生しやすい。発生した切り屑は、フィルムを汚染し、光学製品の光学的欠陥の原因となっていた。そこで、この問題点を改良するために、可塑剤をドープに添加することができる。可塑剤の具体例としては、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、正リン酸エステル系、酢酸エステル系、ポリエステル・エポキシ化エステル系、リシノール酸エステル系、ポリオレフィン系、ポリエチレングリコール系の各化合物を挙げることができる。
【0095】
使用することができる可塑剤としては、常温常圧下で、液状でありかつ沸点が200℃以上の化合物が好ましい。具体的な化合物名としては、以下を例示することができる。
【0096】
脂肪族二塩基酸エステル系としては、例えばジオクチルアジペート(230℃/760mmHg(略101kPa))、ジブチルアジペート(145℃/4mmHg(略0.532kPa))、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(335℃/760mmHg(略101kPa))、ジブチルジグリコールアジペート(230〜240℃/2mmHg(略0.266kPa))、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート(220〜245℃/4mmHg(略0.532kPa))、ジ−2−エチルヘキシルセバケート(377℃/760mmHg(略101kPa))等が挙げられる。フタル酸エステル系としては、例えば、ジエチルフタレート(298℃/760mmHg(略101kPa))、ジヘプチルフタレート(235〜245℃/10mmHg(略1.33kPa))、ジ−n−オクチルフタレート(210℃/760mmHg(略101kPa))、ジイソデシルフタレート(420℃/760mmHg(略101kPa))等が挙げられる。また、ポリオレフィン系としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン等のパラフィンワックス類(平均分子量330〜600、融点45〜80℃)、流動パラフィン類(JIS規格 K2231ISOVG8、同VG15、同VG32、同VG68、同VG100等)、パラフィンペレット類(融点56〜58℃、58〜60℃、60〜62℃等)、塩化パラフィン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリイソブテン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、スクアラン等が挙げられる。
【0097】
可塑剤の添加量は、環状ポリオレフィンに対して0.5〜40.0重量%、好ましくは1.0重量%〜30.0重量%、より好ましくは3.0%〜20.0重量%である。可塑剤の添加量が0.5重量%よりも少ないと可塑効果が不十分で、加工適性が向上しない。また、40重量%よりも多いと長時間経った場合に、可塑剤が分離溶出する場合が有り、光学的ムラ、他部品の汚染等が発生し、好ましくない。
【0098】
(7)微粒子
上記の各種環状ポリオレフィンに微粒子を添加することにより、添加しない場合よりもフィルム表面の動摩擦係数を低くしてフィルムをハンドリングする時にフィルムに加わる応力を低減することができる。本発明で使用できる微粒子としては、特に限定されず、有機あるいは無機の各化合物の微粒子を使用することができる。
【0099】
微粒子として使用することができる無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等が好ましく、ケイ素を含む無機化合物や金属酸化物がさらに好ましい。フィルムの濁度を低減、つまりフィルムの透明度を維持するという観点からは二酸化ケイ素が特に好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上、すべて日本アエロジル(株)製)等の商品名の市販品が使用可能である。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の商品名の市販品が使用可能である。
【0100】
微粒子として使用することができる有機化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等がある。これらの粉砕分級物も使用することができる。また、懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物も用いることができる。
【0101】
これらの微粒子の1次平均粒子径は、フィルムのヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは1〜20000nmであり、より好ましくは1〜10000nmでありさらに好ましくは2〜1000nmであり、特に好ましくは5〜500nmである。微粒子の1次平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による粒子の平均粒径から求められる。購入した微粒子は凝集していることが多く、使用の前に公知の方法で予め分散することが好ましい。分散により二次粒子径を200〜1500nmにすることが好ましく、300〜1000nmにすることがさらに好ましい。
【0102】
微粒子の添加量は環状ポリオレフィン100重量部に対して0.01〜0.3重量部が好ましく、0.05〜0.2重量部がさらに好ましく、0.08〜0.12重量部が最も好ましい。
【0103】
微粒子を添加した環状ポリオレフィンフィルムの好ましいヘイズの範囲は2.0%以下であり、さらに好ましい範囲は1.2%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。微粒子を添加した環状ポリオレフィンフィルムの好ましい動摩擦係数は0.8以下であり、特に好ましくは0.5以下である。動摩擦係数は、JISやASTMが規定する方法に従い、鋼球を用いて測定することができる。ヘイズは日本電色工業(株)製1001DP型ヘイズ計を用いて測定することができる。
【0104】
セルロースアシレートをドープのポリマー成分とする場合には、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、つまりアシル基の置換度(以下、アシル基置換度と称する)が下記式(I)〜(III)の全ての条件を満足するものがより好ましい。なお、(I)〜(III)において、A及びBはともにアシル基置換度であり、Aにおけるアシル基はアセチル基であり、Bにおけるアシル基は炭素原子数が3〜22のものである。
2.5≦A+B≦3.0・・・(I)
0≦A≦3.0・・・(II)
0≦B≦2.9・・・(III)
【0105】
セルロースを構成しβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部がエステル化されて、水酸基の水素が炭素数2以上のアシル基に置換された重合体(ポリマー)である。なお、グルコース単位中のひとつの水酸基のエステル化が100%されていると置換度は1であるので、セルロースアシレートの場合には、2位、3位および6位の水酸基がそれぞれ100%エステル化されていると置換度は3となる。
【0106】
ここで、グルコース単位の2位のアシル基置換度をDS2、3位のアシル基置換度をDS3、6位のアシル基置換度をDS6とする。DS2+DS3+DS6で求められる全アシル基置換度は2.00〜3.00であることが好ましく、2.22〜2.90であることがより好ましく、2.40〜2.88であることがさらに好ましい。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.32以上であることが好ましく、0.322以上であることがより好ましく、0.324〜0.340であることがさらに好ましい。
【0107】
アシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上であってもよい。アシル基が2種類以上であるときには、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基の水素のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位及び6位におけるアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は2.2〜2.86であることが好ましく、2.40〜2.80であることが特に好ましい。DSBは1.50以上であることが好ましく、1.7以上であることが特に好ましい。そして、DSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましいが、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは31%以上、特に好ましくは32%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また、セルロースアシレートの6位のDSA+DSBの値が0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.85以上であることが特に好ましい。以上のようなセルロースアシレートを用いることにより、溶解性が好ましいドープや、粘度が低く、ろ過性がよいドープを製造することができる。特に非塩素系有機溶媒を用いる場合には、上記のようなセルロースアシレートが好ましい。
【0108】
炭素数が2以上であるアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどがあり、これらは、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、プロピオニル基、ブタノイル基が特に好ましい。
【0109】
ドープの原料とするセルロースアシレートは、その90重量%以上が粒径0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
【0110】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載は本発明にも適用することができる。
【0111】
また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤,光学異方性コントロール剤,染料,マット剤,剥離剤等の添加剤についても、同じく同じく特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0112】
ドープを製造するための溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが例示される。なお、ここで、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散媒に分散して得られるポリマー溶液または分散液である。
【0113】
TACの溶媒としては、これらの溶媒の中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく、ジクロロメタンが最も好ましい。そして、TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度、フィルムの光学特性等の特性の観点から、炭素原子数1〜5のアルコールを一種ないし数種類を、ジクロロメタンに混合して用いることが好ましい。このとき、アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%〜25重量%であることが好ましく、5重量%〜20重量%であることがより好ましい。アルコールの好ましい具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノール等が挙げられるが、中でも、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0114】
環境に対する影響を最小限に抑えることを目的にした場合には、ジクロロメタンを用いずにドープを製造してもよい。この場合の溶媒としては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いることがある。これらのエーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−,−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。また、溶媒は、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を化学構造中に有するものであってもよい。
【0115】
[ドープ製造方法]
図1にドープ製造設備を示す。ただし、本発明はここに示すドープ製造装置及び方法に限定されない。本実施形態では、ポリマーとして環状ポリオレフィンを用いる場合を例として挙げるが、セルロースアシレート等の他のポリマーに代えてもよい。ドープ製造設備10は、溶媒を貯留するための溶媒タンク11と、環状ポリオレフィンを供給するためのホッパ12と、添加剤を貯留するための添加剤タンク15と、溶媒と環状ポリオレフィンと添加剤とを混合して混合液16とする混合タンク17と、混合液16を加熱するための加熱装置18と、加熱された混合液16の温度を調整するための温度調整器21と、温度調整器21からの混合液16をろ過するろ過装置22と、ろ過装置22からのドープ24の濃度を調整するためのフラッシュ装置26と、濃度調整されたドープ24をろ過するためのろ過装置27とを備える。そしてドープ製造設備10には、さらに、溶媒を回収するための回収装置28と、回収された溶媒を再生するための再生装置29とが備えられてある。そして、このドープ製造設備10は、ストックタンク32を介して溶液製膜設備40に接続される。なお、送液量を調節するためのバルブ36〜38と、送液用のポンプ41,42とがドープ製造設備10には設けられるが、これらが配される位置及びポンプ数の増減については適宜変更される。
【0116】
ドープ製造設備10によりドープ24は以下の方法で製造される。バルブ37を開とすることにより、溶媒は溶媒タンク11から混合タンク17に送られる。次に、環状ポリオレフィンがホッパ12から混合タンク17に送り込まれる。このとき、環状ポリオレフィンは、計量と送出とを連続的に行う送出手段により混合タンク17に連続的に送りこまれてもよいし、計量して所定量を送出するような送出手段により混合タンク17に断続的に送り込まれてもよい。また、添加剤溶液は、バルブ36の開閉操作により必要量が添加剤タンク15から混合タンク17に送り込まれる。
【0117】
添加剤は、溶液として送り込む方法の他に、例えば添加剤が常温で液体である場合には、その液体状態のままで混合タンク17に送り込むことができる。また、添加剤が固体の場合には、ホッパ等を用いて混合タンク17に送り込む方法も可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンク15の中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、複数の添加剤タンクを用いて、それぞれに添加剤が溶解している溶液を入れ、それぞれ独立した配管により混合タンク17に送り込むこともできる。
【0118】
前述した説明においては、混合タンク17に入れる順番が、溶媒、環状ポリオレフィン、添加剤であったが、この順番に限定されない。また、添加剤は必ずしも混合タンク17で環状ポリオレフィン及び溶媒と混合することに限定されず、後の工程で環状ポリオレフィンと溶媒との混合物にインライン混合方式等で混合されてもよい。
【0119】
混合タンク17には、その外表を覆い、混合タンク17との間に伝熱媒体が供給されるジャケット46と、モータ47により回転する第1攪拌機48と、モータ51により回転する第2攪拌機52が取り付けられていることが好ましい。混合タンク17は、ジャケット46の内側に流れ込む伝熱媒体により温度調整され、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃の範囲である。第1攪拌機48,第2攪拌機52のタイプを適宜選択して使用することにより、環状ポリオレフィンが溶媒により膨潤した混合液16を得る。第1攪拌機48は、アンカー翼を有するものであることが好ましく、第2攪拌機52は、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。
【0120】
次に、混合液16は、ポンプ41により加熱装置18に送られる。加熱装置18は、管本体(図示せず)とこの管本体との間に伝熱媒体を通すためのジャケットとを有するジャケット付き管であることが好ましく、さらに、混合液16を加圧する加圧部(図示せず)を有することが好ましい。このような加熱装置18を用いることにより、加熱条件下または加圧加熱条件下で混合液16中の固形分を効果的かつ効率的に溶解させることができる。以下、このように加熱により固形成分を溶媒に溶解する方法を加熱溶解法と称する。加熱溶解法においては、混合液16を溶剤の沸点以上の温度に加熱したり、または、溶剤の臨界点まで高温高圧に加圧加熱することが好ましい。ジクロロメタンを主溶媒として使用する場合には、多くの環状ポリオレフィンは、20℃〜100℃の加熱温度下で溶解することができる。なお、環状ポリオレフィンをセルロースアシレートに代える場合には、混合液16を0℃〜97℃となるように加熱することが好ましい。
【0121】
なお、加熱溶解法に代えて冷却溶解法により固形成分を溶媒に溶解させてもよい。冷却溶解法とは、混合液16を温度保持した状態またはさらに低温となるように冷却しながら溶解を進める方法である。冷却溶解法では、ポリマーが溶剤により膨潤された混合液16を−20℃〜−100℃の温度に冷却した後に、20℃〜100℃に加熱することが好ましい。環状ポリオレフィンに代えてセルロースアシレートを用いる場合には、混合液16を−100℃〜−10℃の温度に冷却することが好ましい。以上のような加熱溶解法または冷却溶解法によりポリマーを溶媒に十分溶解させることが可能となる。
【0122】
混合液16を温度調整器21により略室温とした後に、ろ過装置22によりろ過して不純物や凝集物等の異物を取り除きドープ24とする。ろ過装置22に使用されるフィルタは、その平均孔径が100μm以下、より好ましくは50μm以下であることが好ましい。ろ過流量は、50リットル/hr.以上であることが好ましい。
【0123】
ろ過後のドープ24は、バルブ38によりストックタンク32に送られて一旦貯留された後、フィルムの製造に用いられる。
【0124】
ところで、上記のように、固形成分を一旦膨潤させてから、溶解して溶液とする方法は、ポリマーの溶液における濃度を上昇させる場合ほど、ドープ製造に要する時間が長くなり、製造効率の点で問題となる場合がある。そのような場合には、目的とする濃度よりも低濃度のドープを一旦つくり、その後に目的の濃度とする濃縮工程を実施することが好ましい。
【0125】
濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、加熱した低濃度のドープをノズルから容器内に吹き込み、ドープをノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶剤をフラッシュ蒸発させるとともに、溶剤蒸気を容器から抜き出し、高濃度とされたドープを容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等を適用することができる。
【0126】
本実施形態のフラッシュ蒸発による濃縮工程では、バルブ38により、ろ過装置22でろ過されたドープ24をフラッシュ装置26に送り、このフラッシュ装置26でドープ24の溶媒の一部を蒸発させることによりドープ24を濃縮することができる。濃縮されたドープ24はポンプ42によりフラッシュ装置26から抜き出されてろ過装置27へ送られる。ろ過の際のドープ24の温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。ろ過装置27で異物を除去されたドープ24は、ストックタンク32へ送られ一旦貯留されてからフィルム製造に用いられる。なお、濃縮されたドープ24には気泡が含まれていることがあるので、ろ過装置27に送る前に予め泡抜き処理を実施することが好ましい。泡抜き方法としては、例えばドープ24に超音波を照射する超音波照射法等の、公知の種々の方法が適用される。
【0127】
また、フラッシュ装置26でのフラッシュ蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示せず)を備える回収装置28により凝縮されて液体となり回収される。回収された溶媒は、再生装置29によりドープ製造用の溶媒として再生されて再利用される。このような回収及び再生利用により、製造コストの点での利点があるとともに、閉鎖系で実施されるために人体及び環境への悪影響を防ぐ効果がある。
【0128】
以上の製造方法により、環状ポリオレフィン濃度が18重量%〜27重量%であるドープ24を製造することができる。これにより、後述する流延膜の搬送条件下では、形成されて60秒後の流延膜における溶媒残留率を20重量%以上130重量%以下とすることができる。20重量%未満であると、流延膜が乾きすぎて後述の流延バンドから剥がれ落ちてしまうことがあり、一方、130重量%よりも大きいと、流延膜に、フィルムとして搬送するに十分な自己支持性を、流延バンドから剥がすまでにもたせることができなくなることがある。形成されて60秒後の流延膜における溶媒残留率は、30〜110重量%の範囲とすることがより好ましく、40〜100重量%の範囲とすることがさらに好ましい。環状ポリオレフィンのフィルムを製造する場合において、形成されて60秒後の流延膜における溶媒残留率を30〜110重量%の範囲とする場合には、ドープにおける環状ポリオレフィン濃度を22重量%〜32重量%とすることが好ましく、40〜100重量%の範囲とする場合には、ドープにおける環状ポリオレフィン濃度を24重量%〜30重量%とすることが好ましい。
【0129】
ドープは、添加剤の、ポリマーに対する重量比率が10〜40重量%であることが好ましい。添加剤をドープに含有させることにより、添加剤を含まず同じ固形分濃度であるドープに比べて、粘度が低くなり、これにより、フィルムの凹凸の発生を防止する効果が高い。このような効果を得るための添加剤の種類は特に限定されないが、前述のレタデーション低下剤であることが好ましい。添加剤が前述のレタデーション低下剤であって、この添加剤の、ポリマーに対する重量比率が10重量%未満である場合には、厚み方向におけるレタデーションRthを低くすることができないのみならず、凹凸発生の防止効果の向上が極めて小さく、添加剤の利用効果が大きいとはいえない。一方、添加剤の、ポリマーに対する重量比率が40重量%よりも大きい場合には、ポリマーと添加剤とが非相溶となり、得られるフィルムは白いものとなることがある。
【0130】
添加剤のポリマーに対する重量比率は、15〜35重量%であることがより好ましく、20〜30重量%であることがさらに好ましい。添加剤の濃度は、固形分全体に対して1重量%以上20重量%以下の範囲とすることが好ましい。
【0131】
なお、環状ポリオレフィンに代えてセルローストリアセテートを用いる場合の溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法、ろ過方法、脱泡、添加方法については、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落が詳しく、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0132】
[フィルム製造方法]
図2は溶液製膜設備40を示す概略図である。ただし、本発明は、この溶液製膜設備40に限定されるものではない。溶液製膜設備40には、ストックタンク32から送られてくるドープ24から異物を除去するろ過装置61と、このろ過装置61でろ過されたドープ24を流延して環状ポリオレフィンフィルム(以下、単にフィルムと称する)62とする流延室63と、フィルム62の両側端部を保持してフィルム62を搬送しながら乾燥するテンタ64と、フィルム62の両側端部を切り離す耳切装置67と、フィルム62を複数のローラ68に掛け渡して搬送しながら乾燥する乾燥室69と、フィルム62を冷却するための冷却室71と、フィルム62の帯電量を減らすための除電装置72と、側端部にエンボス加工を施すナーリング付与ローラ対73と、フィルム62を巻き取る巻取室76とが備えられる。
【0133】
ストックタンク32には、モータ77で回転する攪拌機78が取り付けられており、攪拌機78の回転によりドープ24が撹拌される。そしてポンプ80によりストックタンク32中のドープ24はろ過装置61に送られる。
【0134】
流延室63には、ドープ24を流出する流延ダイ81と、走行する支持体としての流延バンド82とを備える。流延ダイ81の材質としては、2相ステンレス鋼、または、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率は2×10−5(℃−1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有することが好ましい。流延ダイ81はコートハンガー型のダイが好ましい。
【0135】
流延ダイ81の幅は特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルム62の幅の1.1倍〜2.0倍程度であることが好ましい。また、製膜の際のドープ24の温度が所定温度に保持されるように、流延ダイ81の温度を制御する温度コントローラ(図示なし)が流延ダイ81に取り付けられることが好ましい。さらに、流延ダイ81には、流出するときのビードの厚みを調整するために、流延ダイ81のスリットの隙間を調整する厚み調整ボルト(ヒートボルト)が幅方向に所定の間隔で複数備えられることが好ましく、ヒートボルトが自動厚み調整機構により制御されることが好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)80の送液量に応じて制御され、スリットの隙間のプロファイルが設定される。なお、流延ダイ81のリップ先端には硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。
【0136】
ドープ24が流延ダイ81のリップ先端で局所的に乾燥固化することを防止するために、液をリップ先端に供給するための溶媒供給装置(図示しない)をリップ先端近傍に取り付けることが好ましい。液が供給される位置は、流延ビードの両側端部とリップ先端の両側端部と外気とにより形成される三相接触線の周辺部が好ましい。供給される液の流量は、片側それぞれに対し0.1mL/分〜1.0mL/分とすることが好ましい。この場合の液は、ドープの溶媒と同じものが好ましい。これにより、異物、例えばドープ24から析出した固形成分や外部から流延ビードに混入したものが流延膜24a中に混合してしまうことを防止することができる。なお、溶媒を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
【0137】
流延ダイ81の下方の流延バンド82は、回転ローラ85,86に掛け渡され、少なくともいずれか一方の回転ローラの駆動回転により連続的に搬送される。回転ローラ85,86は、互いに直径が同じである断面円形のローラであり、これらに掛け渡された流延バンド82は、流延膜24aを搬送する。流延バンド82は、一方の回転ローラ85から他方の回転ローラ86に至るまでの直線状の上側搬送路と、回転ローラ86から回転ローラ85に至るまでの直線状の下側搬送路と、上側搬送路と下側搬送路とを接続する円弧状の2つの搬送路とを有する。円弧状の搬送路の一方は回転ローラ85上の搬送路(以下、第1搬送路と称する)であり、他方は回転ローラ86上の搬送路(以下、第2搬送路と称する)である。
【0138】
上側搬送路は、下方から支持手段により支持されてもよい。支持手段としては、周面で流延バンド82を支持して流延バンドの走行に伴い回転することができるいわゆるフリーローラ等がある。支持手段を用いる場合には、上側搬送路は必ずしも直線状でなくてもよい。このような態様としては、例えば、フリーローラの一部周面に巻き掛けることにより一部曲線状になった上側搬送路がある。
【0139】
流延ダイ81は、第1搬送路の上方または上側搬送路の上方に配され、流延ダイから流出したドープ、つまりビードが、第1搬送路上または上側搬送路上に着地する。この着地位置から下流側の搬送路上のドープを流延膜24aと称するものとする。
【0140】
流延バンド82の幅は特に限定されるものではないが、ドープ24の流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲であることが好ましい。また、長さが20m〜200m、厚みが0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さが0.05μm以下となるように研磨されている流延バンド82が好ましく用いられる。
【0141】
回転ローラ85,86には、伝熱媒体を回転ローラ85,86に供給してローラの表面温度を制御する伝熱媒体循環装置87が取り付けられることが好ましい。本実施形態では、回転ローラ85,86に伝熱媒体流路(図示せず)が形成されており、その流路中を、所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラ85,86の温度が所定の値に保持されるものとなっている。流延バンド82の表面温度は、溶媒の種類、固形成分の種類、ドープ24の濃度等に応じて適宜設定する。
【0142】
流延バンド82、回転ローラ85,86は、表面欠陥が無いものが好ましい。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m以下であることが好ましい。
【0143】
流延ダイ81の近傍には、流延ダイ81から流延バンド82にかけて形成される流延ビードの流延バンド82走行方向における上流側のエリアを減圧するために減圧チャンバ90が備えられることが好ましい。
【0144】
第1搬送路の上方には、流延バンド82の走行方向に複数の風速風向測定装置(図示せず)が配される。各風速風向測定装置は、流延バンド82の走行によって生じる空気の流れなど、搬送されている流延膜24aの周辺の空気の流れにつき、その流れの速度と向きとをそれぞれ検出する。ここで、流延膜24aの周辺とは、流延バンド82の流延面から1cm程度離れた位置を言う。
【0145】
流延バンド82の下側搬送路近傍には、流延膜24aの近傍に乾燥空気を送り出して流延膜24aを乾燥するための送風ダクト96が備えられる。この送風ダクト96よりも下側搬送路よりも遠い位置であって、下側搬送路の走行の向きにおける上流側には送風ダクト92、下流側には送風ダクト93とが備えられる。送風ダクト92,93は流延室63の内部の気体を外部に出したり、外部の気体を内部に取り込む。流延室63には、その内部温度を所定の値に保つための温調装置97と、蒸発した有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)(図示なし)とが設けられる。このコンデンサは、送風ダクト92,93に接続した気体循環装置95の内部に配され、流延室63からの空気に含まれる気体の溶媒を凝縮する。そして、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置(図示せず)が気体循環装置95の外部に設けられてある。
【0146】
流延室63の下流の渡り部101には、送風機102が備えられる。また、耳切装置67には、切り取られたフィルム62の側端部屑を細かく切断処理するためのクラッシャ103が備えられる。
【0147】
乾燥室69には、フィルム62から蒸発して発生した溶媒ガスを吸着回収するための吸着回収装置106が取り付けられてある。乾燥室69の下流には冷却室71が設けられており、乾燥室69と冷却室71との間にフィルム62の含水量を調整するための調湿室(図示しない)がさらに設けられてもよい。除電装置72は、除電バー等のいわゆる強制除電装置であり、フィルム62の帯電圧を所定の範囲となるように調整する。除電装置72の位置は、冷却室71の下流側に限定されない。ナーリング付与ローラ対73は、フィルム62の両側端部にエンボス加工でナーリングを付与する。巻取室76の内部には、フィルム62を巻き取るための巻取ロール107と、その巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ108とが備えられている。
【0148】
次に、フィルム62を製造する方法の一例を以下に説明する。ドープ24は、ストックタンク32に送られ、この中で攪拌機78の回転により常に均一にされる。これにより、流延に供されるまで、固形分の析出や凝集が抑制される。ドープ24には、この攪拌の際にも各種添加剤を適宜混合させることができる。そして、ろ過装置61でのろ過により、所定粒径以上のサイズの異物やゲル状の異物を取り除く。
【0149】
ろ過された後のドープ24は、流延ダイ81から流延バンド82の第1搬送路または上側搬送路に流延される。流延時におけるドープ24の温度は−10〜57℃の範囲で一定、流延バンド82の表面温度は−20〜40℃の範囲で一定とされることが好ましい。流延バンド82に生じるテンションが10N/m×10N/mとなるように、回転ローラ85と回転ローラ86との相対位置、及び少なくともいずれか一方の回転速度が調整される。また、流延バンド82と回転ローラ85,86との相対速度差は、0.01m/min以下とされる。本実施形態では、流延バンドと回転ローラ85,86との相対速度差はゼロとして説明を続ける。流延バンド82の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド82が一周する際に生じる幅方向での位置ずれ、つまり蛇行は1.5mm以下とされることが好ましい。この蛇行を抑制するために、流延バンド82の側縁の位置を検出する検出器(図示しない)とこの検出器による検出データに応じて流延バンド82の位置を調整する位置調整機(図示なし)とを設けて、流延バンド82の位置をフィードバック制御することがより好ましい。さらに、流延バンド82の第1搬送路と上側搬送路とは、回転ローラ85の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以内となるようにすることが好ましい。また、流延室63の温度は、温調装置97により−10℃〜57℃とされることが好ましい。なお、流延室63の内部で蒸発した溶媒は気体循環装置に接続した回収装置(図示せず)により回収された後、再生させてドープ製造用の溶媒として再利用される。
【0150】
流延ダイ81から流延バンド82にかけては流延ビードが形成され、流延バンド82上には流延膜24aが形成される。流延ビードの様態を安定させるために、このビードに関し上流側のエリアは、所定の圧力値となるように減圧チャンバ90で制御される。ビードに関して上流側のエリアの圧力は、下流側のエリアよりも2000Pa〜10Pa低くすることが好ましい。なお、減圧チャンバ90にジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つようにすることが好ましい。この温度は、ドープの溶媒の凝縮点以上であることが好ましい。また、流延ビードを所望の形状に保つために、流延ダイ81のエッジ部に吸引装置(図示せず)を取り付けてビードの両側を吸引することが好ましい。この吸引風量は、1L/min.〜100L/min.の範囲であることが好ましい。
【0151】
各風速風向測定装置により、流延膜24aの周辺の空気の流れにつき、その速度と向きとを測定する。流延膜24aの搬送速度と、風速風向測定装置により測定された風速との相対的な値を求め、この値がゼロm/s以上1.0m/s以下の範囲となるように、流延膜24aの周辺の空気の流れを制御する。この値が1.0m/sよりも大きいと、わずかな風ムラによりフィルムの表面に凹凸が出来てしまうことがある。風ムラとは、空気の流れの向きや速さが経時的に変動したり、場所によって向きや速さが異なる状態をいう。流延バンド82の走行速度と流延膜24aの搬送速度とは同じであるので、設定された流延バンド82の走行速度が流延膜24aの搬送速度となる。そこで、流延バンド82の走行速度をV1とし、風速風向測定装置により検出された空気の流れの速度をV2とする。流延バンド82の第1搬送路における走行の向き(図2中では矢線Xで示す)と、風速風向測定装置による空気の流れの向きとが同じまたは逆向きであるときには、0(m/s)≦|V1−V2|≦0.3(m/s)となるように、流延膜24aの周辺の空気の流れを制御する。風速風向測定装置により検出された空気の流れの向きがXと交差するときには、この空気の流れをベクトルで表したときに、このベクトルのX方向の成分の大きさをV2とすることができる。
【0152】
流延膜24aの周辺の流れを制御する方法としては、例えば、送風ダクト92,93の一方から乾燥空気を出し、他方から気体を吸い込む方法や、両者からの乾燥空気の流出量または両者による気体の吸い込み量を調整する方法がある。流延膜24aの周辺の空気の流れがXの向きでありV2がV1よりも小さい場合や、流延膜24aの周辺の空気の流れがXとは逆向きの場合や、周辺の空気の流れが流延膜24aに対して追い風でありその向きがXと交差してそのベクトルのX方向の成分の大きさがV1よりも小さい場合には、流延膜24aは搬送されるにあたって周辺の空気を押すことになるため、周辺空気の流延膜24aに対する反作用の力が生じる。この場合には、下側搬送路の走行方向における上流側のダクト92から空気を出して、下流側のダクト93から気体を吸い込むことにより、流延膜24aの周辺の空気の流れをX方向に大きくする、あるいはX方向にすることができる。これに対して、流延膜24aの周辺の空気の流れがXの向きでありV2がV1よりも大きい場合や、周辺の空気の流れが流延膜に対して追い風でその向きがXと交差し、そのベクトルのX方向の成分の大きさがV1よりも大きい場合には、下流側のダクト93から空気を出して、上流側のダクト92から気体を吸い込むとよい。このように流延膜24Aの周辺の空気の流れを制御することにより、流延膜24aの表面の平滑性を乱すことなく、流延膜24aの乾燥を進めることができる。
【0153】
また、第1搬送路を覆うように温度調整機構を有するジャケットを設けることにより、流延膜24aの周辺の空気の流れを制御してもよい。このようなジャケットとしては、所定の温度の水が通過する通水路が備えられたいわゆる温水ジャケット等がある。以上のような空気の流れの制御は、形成されてから60秒以内の流延膜24aにつき、行うことが好ましいが、必ずしも流延膜が形成され始めた位置(以降、第1位置と称する)P1から60秒搬送されて達した位置(以後、第2位置)P2までの全範囲Rでなくてもよい。例えば、流延膜形成開始位置P1を空気の流れの制御の上流端とし、流延膜24aが、次工程での乾燥空気の吹きつけにより形状変形を起こさない程度にまで固まった位置を空気の流れの制御の下流端としてもよい。すなわち、この場合の下流端は第2位置P2よりも上流側となることがある。
【0154】
本発明では、前述のように、ドープの処方により、形成されてから60秒後、つまり第2位置P2での流延膜24aの溶媒残留率は20重量%以上130重量%以下とされる。製造すべきフィルムの厚みが小さい場合ほど、第2位置P2における溶媒残留率は上記範囲で小さいほどよく、大きい場合ほど溶媒残留率は上記範囲内であれば大きくてもよい。形成されてから60秒経過した以降の流延膜24aは、送風ダクト96から出される乾燥空気により乾燥される。乾燥空気は、流延膜24aに当たるように積極的に送り出されてもよいし、流延膜24aの露出面の下方で、下側搬送路に平行な追い風とされてもよい。送風ダクト96からの乾燥空気に流延膜24aが接触する時間は20秒以上100秒以下であることが好ましい。20秒よりも短い場合には、流延膜に、フィルムとして搬送するに十分な自己支持性を、流延バンドから剥がすまでにもたせることができなくなることがあり、100秒よりも長い場合には、流延膜が乾きすぎて後述の流延バンドから剥がれ落ちてしまうことがある。
【0155】
流延膜24aは、自己支持性をもつようになった後に、剥取ローラ109で支持されながら流延バンド82から剥ぎ取られる。剥ぎ取り時における流延膜24aの残留溶媒の重量は、固形分の重量を100としたときに20〜250であることが好ましい。溶媒を含んだ状態のフィルム62は、複数のローラに支持されて渡り部101を搬送された後に、テンタ64に送られる。渡り部101では、下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度よりも速くすることにより、フィルム62にドローテンションを付与させることが可能である。また、渡り部101では、送風機102から所望の温度の乾燥風がフィルム62近傍に送られ、またはフィルム62に直接吹き付けられ、フィルム62の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度は、20℃〜250℃であることが好ましい。
【0156】
テンタ64に送られたフィルム62は、その両端部がクリップ64aにより把持されて、搬送されながら乾燥される。クリップに代えてピンを用い、このピンでフィルムを突き刺して保持してもよい。また、テンタ64の内部は、フィルム62の搬送方向に区画され、区画毎に温度調整されることが好ましい。テンタ64では、フィルム62を幅方向に延伸させることが可能とされている。このように、渡り部101とテンタ64との少なくともいずれかひとつにおいては、フィルム62の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を、延伸前の寸法に対し100.5%〜300%の寸法となるように延伸することが好ましい。
【0157】
フィルム62は、テンタ64で所定の残留溶媒量まで乾燥された後、その両側端部が耳切装置67により切断除去される。切り離された両側端部はカッターブロワ(図示なし)によりクラッシャ103に送られる。クラッシャ103により、側端部は粉砕されてチップとなる。このチップはドープ製造用に再利用されるので、原料の有効利用を図ることができる。なお、この両側端部の切断工程については省略することもできるが、前記流延工程から前記フィルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
【0158】
一方、両側端部を切断除去されたフィルム62は、乾燥室69に送られて、さらに乾燥される。乾燥室69では、フィルム62はローラ68に巻き掛けられながら搬送される。乾燥室69の内部温度は、特に限定されるものではないが、50〜160℃とすることが好ましい。なお、乾燥室69は、送風温度を変えるために、複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置67と乾燥室69との間に予備乾燥室(図示せず)を設けてフィルム62を予備乾燥すると、乾燥室69でフィルム温度が急激に上昇することが防止されるので、乾燥室69でのフィルム62の形状変化を抑制することができる。乾燥室69で蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置106により吸着回収される。溶媒成分が除去された空気は、乾燥室69の内部に乾燥風として再度送られる。
【0159】
フィルム62は、冷却室71で略室温にまで冷却される。なお、乾燥室69と冷却室71との間に調湿室を設ける場合には、調湿室では所望の湿度及び温度に調整された空気をフィルム62に吹き付けることが好ましい。これにより、フィルム62のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良を抑制することができる。
【0160】
溶液製膜方法では、支持体から剥ぎ取られたフィルムを巻き取るまでの間に、乾燥工程や側端部の切除除去工程などの様々な工程が行われている。これらの各工程内、あるいは各工程間では、フィルムは主にローラにより支持または搬送されている。これらのローラには、駆動ローラと非駆動ローラとがあり、非駆動ローラは、主に、フィルムの搬送路を決定するとともに搬送安定性を向上させるために使用される。
【0161】
除電装置72により、フィルム62が搬送されている間の帯電圧を所定の値とする。除電後の帯電圧は−3kV〜+3kVとされることが好ましい。さらに、フィルム62は、ナーリング付与ローラ対73によりナーリングが付与されることが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸の高さが1μm〜200μmであることが好ましい。
【0162】
フィルム62は、巻取室76の巻取ロール107で巻き取られる。プレスローラ108で所望のテンションをフィルム62に付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましく、これによりフィルムロールにおける過度な巻き締めを防止することができる。巻き取られるフィルムの長さは100m以上とすることが好ましい。巻き取られるフィルム62の幅は600mm以上であることが好ましく、1400〜2500mm以下であることが好ましい。しかし、2500mmよりも幅が大きい場合でも本発明は適用される。また、本発明は、厚みが40μm以上65μm以下の薄いフィルムを製造する場合に特に効果がある。本発明は、また、流延バンド82の走行速度を20m/分以上90m/分以下とする場合に効果が大きく、流延バンド82の走行速度が30m/分以上50m/分以下とする場合に特に効果が大きい。
【0163】
本発明では、ドープ24を流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させる方法を用いてもよい。同時積層共流延を行う際には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。共流延により多層からなるフィルムは、表面に露出する2層のうちいずれか一方の厚さが、フィルム全体の厚みの0.5%〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれて流延されるように各ドープの濃度を予め調整しておくことが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合には、ダイスリットから支持体にかけて形成されるビードのうち、外界と接する、つまり露出するドープが内部のドープよりも貧溶媒の比率が大きい処方とされることが好ましい。
【0164】
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取り方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載は本発明に適用することができる。
【0165】
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたフィルムの性能及びそれらの測定法としては、特開2005−104148号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている方法を用いることができる。
【0166】
(用途)
以上のようにつくられたフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。環状ポリオレフィンフィルムを偏光子に貼り合わせて偏光板とし、液晶表示装置は、通常は、液晶層が2枚の偏光板で挟まれる構造である。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、周知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号公報には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されており、これは、本発明にも適用することができる。
【0167】
さらにテレビ用途などの液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フィルムとしても本発明によるポリマーフィルムは使用することができる。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどにも用いられる。また、前記偏光板保護膜用フィルムを用いて偏光板を構成しても良い。
【実施例1】
【0168】
次に、本発明の実施例を説明する。ポリマー成分が互いに異なる4種類のドープをドープ製造設備10によりつくった。各ポリマー成分は以下のポリマーA〜Dの4つである。ポリマーAをポリマー成分とし、以下の処方とされたドープ24を以下の説明においては「ドープA」とする。また、ドープAのポリマー成分であるポリマーAをポリマーBに代えたものをドープB、ポリマーCに代えたものをドープC、ポリマーDに代えたものをドープDとする。
【0169】
(ドープA)
・ポリマーA(環状ポリオレフィン) 150重量部
・ジクロロメタン(溶媒の第1成分) 414重量部
・メタノール(溶媒の第2成分) 36重量部
【0170】
ポリマーAは、以下の方法でつくった化合物である。精製トルエン100重量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100重量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni25mmol%(対モノマー)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対モノマー)及びトルエンに溶解したトリエチルアリミニウム0.25mol%(対モノマー)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物の沈殿を生成させた。沈殿を精製して真空乾燥で65℃24時間乾燥し、ポリマーAを得た。
【0171】
得られたポリマーAをテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーエミションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は79,000、重量平均分子量は205,000であった。得られたポリマーAをアッベの屈折計で測定した屈折率は1.52であった。
【0172】
ポリマーBは、以下の方法でつくった化合物である。精製トルエン100重量部とノルボルネンブチル100重量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni25mmol%(対モノマー)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対モノマー)及びトルエンに溶解したトリエチルアリミニウム0.25mol%(対モノマー)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物の沈殿を生成させた。沈殿を精製して真空乾燥で65℃24時間乾燥し、ポリマーBを得た。
【0173】
得られたポリマーBをテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーエミションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は68,000、重量平均分子量は198,000であった。得られたポリマーBをアッベの屈折計で測定した屈折率は1.52であった。
【0174】
ポリマーCは、Appear3000(Ferrania製)である。
【0175】
ポリマーDは、ARTON G(JSR(株)製)である。
【0176】
図2に示す溶液製膜設備40を用いて、各ドープA,B,C,Dからフィルムを製造した。流延バンド82の走行速度は40m/分とした。製造条件を変えて、本発明である実験1〜19と、本発明に対する比較実験としての比較実験1〜5とを実施した。各実験1〜19及び比較実験1〜5の製造条件と得られたフィルムの評価結果とは、表1に示す。なお、表1における項目番号は、以下の通りである。
【0177】
項目番号1・・・用いたドープ24の種類。表1中で、「A」はドープA、「B」はドープB、「C」はドープC、「D」はドープDを示す。
項目番号2・・・フィルムの目標厚み(単位;μm)
項目番号3・・・流延バンド82の走行速度と、風速風向測定装置により測定された風速との相対的な値(m/s)
項目番号4・・・流延膜24aの第2位置P2における溶媒残留率(単位;重量%)
項目番号5・・・延伸されずにつくられたフィルムにおける酸素透過率(単位;fmol/(m・s・Pa))
項目番号6・・・乾燥空気の吹き付け時間(単位;s)
項目番号7・・・得られたフィルムを目視で観察し、フィルムの凹凸の有無を評価した。
表1では、以下の評価基準により結果を記載する。
○;凹凸が確認されない場合
×;凹凸がある
項目番号8・・・流延バンド82からの流延膜の剥ぎ取り性を剥離抵抗により評価した。
○;剥離抵抗が300×9.8(Pa)以下である場合である。
×;300×9.8(Pa)よりも大きい場合である。
【0178】
【表1】

【実施例2】
【0179】
実施例1で用いたポリマーAをポリマー成分とし、互いに異なる化合物を添加剤として用い、互いに異なる23種類のドープをドープ製造設備10によりつくった。23種類の添加剤を以下の説明においては添加剤a〜wと称する。ポリマー成分をポリマーAとし、添加剤aを用いたドープを「ドープAa」、ドープaの添加剤aを添加剤bに代えたドープを「ドープAb」とし、以下同じように、添加剤aを添加剤wに代えたドープを「ドープAw」と称する。ポリマー成分と添加剤成分と溶媒成分との配合は、23種のドープAa〜Awいずれも同じであるので、ドープAaの配合のみを以下に示す。
【0180】
(ドープAa)
・ポリマーA 150重量部
・ジクロロメタン(溶媒の第1成分) 414重量部
・メタノール(溶媒の第2成分) 36重量部
・添加剤a 上記ポリマーAの重量に対して30%の重量
なお、ポリマーAは環状ポリオレフィンである。
【0181】
添加剤a〜wは、フィルムの厚み方向におけるレタデーション値Rthを低下させるために用いられるレタデーション調節剤である。添加剤a〜wは、それぞれ以下の通りである。
添加剤a・・・品名;アクトフローUMM1001、
重量平均分子量(以下、Mwと記載する)=1000、日本総研化学製
添加剤b・・・品名;ARUFON UP−1010、
Mw=1700、東亜合成(株)製
添加剤c・・・ポリメチルメタクリレート、
Mw=10000
添加剤d・・・ポリスチレン、
Mw=800、Aldrich社製
添加剤e・・・ポリスチレン、
Mw=2500、Aldrich社製。
【0182】
添加剤f・・・ポリスチレン、
Mw=14000、Aldrich社製
添加剤g・・・ポリスチレン−メタクリレート共重合体、
ポリスチレン/メタクリレート=40/60
Mw=130000、Aldrich社製
添加剤h・・・ポリ(スチレン−無水マレイン酸)共重合体、
ポリスチレン/無水マレイン酸=86/14
Mw=180000、Aldrich社製
添加剤i・・・商品名;ARUFON UH−2041
Mw=2500、東亜合成製
添加剤j・・・ポリ(スチレン−無水マレイン酸)共重合体、一部プロピルエステル、
Aldrich社製。
【0183】
添加剤k・・・商品名;アクトフローCBB3098
Mw=2000、日本総研化学製
添加剤l・・・商品名;アクトフローCB3098
Mw=2000、日本総研化学製
添加剤m・・・商品名;アクトフローAS301
Mw=1300、日本総研化学製
添加剤n・・・商品名;アクトフローUME2005
Mw=3500、日本総研化学製
添加剤o・・・エクスロンV120
Mw=730、新日鐵化学(株)製。
【0184】
添加剤p・・・UH2180
Mw=8000、東亜合成製
添加剤q・・・GMS301、
Mw=3000、(株)岐阜セラツク製造所
添加剤r・・・(添加剤iの重量):(添加剤pの重量)=3:7のブレンド
添加剤s・・・(添加剤iの重量):(添加剤pの重量)=5:5のブレンド
添加剤t・・・(添加剤iの重量):(添加剤pの重量)=7:3のブレンド。
【0185】
添加剤u・・・(添加剤lの重量):(添加剤qの重量)=3:7のブレンド
添加剤v・・・(添加剤lの重量):(添加剤qの重量)=5:5のブレンド
添加剤w・・・(添加剤lの重量):(添加剤qの重量)=7:3のブレンド。
【0186】
図2に示す溶液製膜設備40を用いて、各ドープAa〜Awからフィルムを製造した。流延バンド82の走行速度は40m/分とした。製造条件を変えて、本発明である実験1〜23と、本発明に対する比較実験としての比較実験1〜6とを実施した。各実験1〜23及び比較実験1〜6の製造条件と得られたフィルムの評価結果とは、表2及び表3に示す。なお、表2と表3とにおける項目番号は、表1の各項目番号と同じ意味であり、項目番号1の(1)における「Aa」〜「Aw」はそれぞれドープAa〜Awを意味し、(2)における数値は添加剤成分のポリマーに対する重量比(単位;重量%)である。
【0187】
【表2】

【0188】
【表3】

【実施例3】
【0189】
ポリマー成分をポリマーAとし、添加剤成分を添加剤tとし、添加剤の含有率が互いに異なる2種類のドープをドープ製造設備10によりつくった。2種類のドープとは、添加剤tのポリマーAに対する重量比を10%としたものと、40%としたものとの2つであり、ポリマー成分と溶媒の第1成分と溶媒の第2成分との配合は、実施例2と同じである。
【0190】
実施例1と同様に、各ドープAtからフィルムをつくった。製造条件を変えて、本発明である実験1,2を実施した。各実験1,2の製造条件と得られたフィルムの評価結果とは、表4に示す。なお、表4における項目番号は、表2及び表3の各項目番号と同じ意味であり、項目番号1の(2)における数値は添加剤tのポリマーAに対する重量比(単位;重量%)である。
【0191】
【表4】

【0192】
以上の実施例1〜3の結果より、添加剤を含まないフィルムと添加剤を含むフィルムとのいずれであっても、本発明により、従来よりも薄い、すなわち40μm以上65μm以下の厚みのフィルムを、従来よりも平滑に、かつ、製造速度を従来よりも小さくすることなく製造することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】ドープ製造設備の概略図である。
【図2】溶液製膜設備の概略図である。
【符号の説明】
【0194】
24 ドープ
24a 流延膜
62 環状ポリオレフィンフィルム
82 流延バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと溶媒とを含むドープを、走行する支持体の上に流延ダイから連続的に流出して流延膜を形成し、この流延膜を前記支持体から剥がして乾燥する溶液製膜方法において、
形成されて60秒後の前記流延膜における溶媒残留率が20重量%よりも大きく130重量%よりも小さい値となるようなドープを流延する第1工程と、
前記支持体により搬送される前記流延膜の搬送速度と、形成されてから60秒以内の前記流延膜の周辺における空気の流れの前記搬送速度に対する相対的な速度との差がゼロ以上1.0m/秒以下となるように、前記流延膜周辺の空気の流れを制御する第2工程と、
第2工程後の前記流延膜に乾燥空気を吹きつけて乾燥する第3工程と、
を有することを特徴とする溶液製膜方法。
【請求項2】
前記流延膜に対する前記乾燥空気の吹きつけの時間は、20秒以上100秒以下であることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
【請求項3】
前記ポリマーは、環状ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
【請求項4】
前記ドープは、前記ポリマーに対する重量比率が10%以上40%以下の範囲である添加剤を含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の溶液製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−83149(P2009−83149A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252659(P2007−252659)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】