説明

溶液製膜設備のバンド位置制御装置及び方法

【課題】バンドの蛇行を精度良く迅速に抑える。
【解決手段】第1ドラム21と第2ドラム22との間にバンド23を掛け巡らす。第1ドラム21をモータ29により回転させ、バンド23を第1方向Aに走行させる。第1ドラムBEPセンサ41により、第1ドラム21近くでバンド23の一方のエッジ位置をバンド幅方向である第2方向Bにおいて検出する。第1ドラム21と第2ドラム22との間で第1ドラム21の近くにステアリングロール40を設ける。ステアリングロール40を下側バンド23Bの内周面23Cに接触させる。第1ドラムBEPセンサ41のBEP信号に基づきステアリングロール40を第2方向で傾斜させ、バンド23の蛇行を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液製膜設備のバンド位置制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺の光学フィルムの代表的な製造方法としては、連続方式の溶液製膜方法がある。溶液製膜方法は、周知のように、ポリマが溶剤に溶解している溶液(ドープ)を、走行する流延支持体の上に流延し、流延により膜状になったドープ、すなわち流延膜を流延支持体から剥がして乾燥することによりフィルムを製造する方法である。
【0003】
流延支持体には金属製のバンドやドラムがある。ドラムの場合には流延から剥がされるまでの距離がバンドに比べて短くなるため、流延膜が支持体から剥がせる程度の自己支持性を備えるように乾燥させる場合には不利である。このため、流延膜を長い距離で支持することができるバンド方式が多く利用されている。ところで、製造することができるフィルムの幅はバンドの幅に制約される。より広い幅のフィルムを製造するには、より広い幅のバンドが必要となる。しかし、これまで、バンドの製造技術上の問題から、幅が2m程度までのバンドしか得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−297486号公報
【特許文献2】特開2002−254452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、以下のようにしてフィルム製造装置における蛇行を制御している。先ず、エンドレスベルト(バンド)が正規走行路より右方に位置ずれを起こした際に、この位置ずれを第1検知手段で検知する。第1検知手段は位置ずれを検出したときに、右側修正指令信号を出力して右側伸縮手段により右側軸受部材を固定する。この状態では左側軸受部材はフリー状態が維持されるため、位置ずれを起こしたバンドからの張力により、ターンプーリ(ターンドラム)の回転軸が傾斜する。この傾斜によりバンドが張力の小さい方に移動し、バンドの位置ずれが修正される。同様にして、バンドが正規走行路より左方に位置ずれを起こした際にも、第2検知手段がこれを検知して同様の動作を行うことにより、位置ずれが修正される。
【0006】
特許文献2では、エンドレスベルトを保持する第1ドラムの近くに、ベルトエッジの位置を検出する第1ベルト位置検出手段と、第2ドラムの近くにベルトエッジの位置を検出する第2ベルト位置検出手段とを設け、各検出手段の位置検出情報と基準位置との差に応じて、ベルト位置調整機構を制御する。ベルト位置調整機構は、第2ドラムの一端部をシリンダによって変位させてドラム軸を傾斜させ、特許文献1と同様に蛇行を抑えている。
【0007】
ところで、従来は広幅の要求がなかったため、バンドの蛇行量としてはバンドの幅方向に、例えば2mのバンド幅の場合に50mm程度は許されていた。したがって、上記のような蛇行制御方法によっても対応が可能である。しかしながら、広幅化の要請によって、上記非流延領域を狭くしていくと、例えば2mのバンド幅の場合にはその蛇行量を2mm程度に抑える必要が出てくる。このため、例えば先行文献1,2に記載のように、一方の軸端部を変位させてターンドラム軸を傾斜させ、バンドの張力を利用しターンドラム上でバンドを移動させて位置ずれを修正する方法では、迅速に且つ精度良く位置ずれを修正することができず、広幅化の要請に対応することができないという問題がある。
【0008】
また、流延ダイのバンド走行方向上流側には、流延ダイからバンドに至るドープ流れであるビードを安定させるために、内部を負圧にした減圧チャンバを設けている。この減圧チャンバにおいて、負圧を一定に保つためには、バンドとの隙間を一定に保つ必要がある。したがって、バンドの蛇行量が大きくなると、減圧チャンバ内にバンドの側縁が位置してしまうこともある。この場合には、バンドの厚み分の隙間が減圧チャンバの側縁部にできてしまい、負圧の急激な変動が発生してビードが不安定になってしまうという問題がある。
【0009】
さらに、溶液製膜設備において、長期間のバンドの使用によってフィルムに厚みムラや表面特性ムラが発生することがある。鋭意研究を重ねた結果、この厚みムラ等はバンドを長期間使用することによって発生すること、特にバンドのドラム上における蛇行に起因するストレスによることが判明した。すなわち、バンドが蛇行する場合には、例えばドラムの周面上で、バンドがドラムの回転軸方向に滑って移動する。このドラム周面上におけるドラム回転軸方向への移動によって、バンドにはストレスがかかり、主に裏面に、走行方向に長い筋状の厚みムラ(ピーク)が発生し、このバンドの厚みムラは、バンド上の流延膜に転写され、フィルムの厚みムラ、表面特性ムラとなって現れることが判った。このため、バンドへのストレスを軽減するために、バンドの蛇行を効果的に抑える必要がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2に示されるように、従来の蛇行制御では、駆動ドラムとは反対側のフリー回転するドラムの回転軸の傾斜角度を変更することにより、流延位置でのバンドの蛇行を抑えるため、的確な制御を行ったとしても、ドラム間距離が例えば数十メートル程度と長い場合には応答性が低下し、精度の良い蛇行制御が行えないという問題がある。また、何トンもあるドラムをシフトさせて蛇行制御を行う必要があり、摩擦の影響を受けて軸受を円滑に動かすことが困難である。しかも、摩擦の影響などによるメカロスや、軸受をシフトさせる駆動部材の撓みなどの影響によって蛇行制御の精度が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は、フィルムの広幅化にも容易に対応可能であり、精度の良い蛇行制御が行える溶液製膜設備のバンド位置制御装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、第1ドラムと第2ドラムとの間に掛け渡されて、前記第1ドラムから前記第2ドラムに向かう第1方向に走行するバンド上に、ポリマが溶剤に溶解したドープを流延ダイから流延して前記バンドに流延膜を形成し、前記流延膜をバンドから剥がして乾燥させフィルムにする溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置において、前記バンドの幅方向である第2方向におけるエッジ位置を前記第1ドラムにて検出する第1ドラムバンドエッジ位置センサと、前記第1ドラム及び第2ドラム間の下側バンドの内周面に接触するステアリングロールと、前記ステアリングロールを変位させ、前記下側バンドを前記第2方向に傾斜させるステアリングロール傾斜機構と、前記第1ドラムバンドエッジ位置センサのバンドエッジ位置に基づき、前記バンドエッジ位置の変動を抑えるように、前記ステアリングロールの傾斜角度を制御するバンドエッジ位置コントローラとを有することを特徴とする。
【0013】
前記ステアリングロールは前記第1ドラムのバンド入口近くに配置され、前記ステアリングロール傾斜機構は、前記ステアリングロールの両端部を回転自在に保持するロール軸受と、前記ロール軸受を前記下側バンドの内周面に交差する方向に個別にシフトさせる縦シフト部とを有するか、前記ステアリングロール傾斜機構は、前記ステアリングロールの両端部を回転自在に保持するロール軸受と、前記ステアリングロールを前記バンドに接触させた状態で前記ロール軸受を前記下側バンドの内周面に平行な方向に個別にシフトさせる横シフト部とを有することが好ましい。さらには、前記ステアリングロール傾斜機構は、前記ロール軸受を前記下側バンドの内周面に平行な方向に個別にシフトさせる横シフト部を有することが好ましい。
【0014】
前記バンドエッジ位置コントローラは、前記第1ドラムバンドエッジ位置センサからのバンドエッジ位置信号に基づき前記第2方向におけるバンドエッジの移動速度を求め、前記バンドエッジ移動速度と前記バンドの走行速度とに基づき、前記ステアリングロール傾斜機構を制御して、前記バンドエッジの移動速度を小さくする方向に前記ステアリングロールを傾斜させることが好ましい。
【0015】
前記第2ドラムの両軸端部を回転自在に支持するドラム軸受と、前記ドラム軸受を前記第1方向にシフトさせるシフト機構と、前記バンドのテンションを検出するテンションセンサと、前記テンションセンサのテンション信号に基づき前記シフト機構を作動させてテンションを一定にするテンションコントローラとを有することが好ましい。また、前記テンションセンサは、前記第1ドラムと前記第2ドラムとの中間位置に設けられ、下側のバンドの懸垂量からテンションを検出することが好ましい。また、前記第2ドラムの両軸端部を回転自在に支持するドラム軸受と、前記ドラム軸受を前記第1方向に個別にシフトさせる右側シフト機構及び左側シフト機構と、前記ドラム軸受の前記第1方向における位置を検出する第2ドラム右側位置センサ及び第2ドラム左側位置センサと、前記第2方向におけるバンドエッジ位置を前記第2ドラムにて検出する第2ドラムバンドエッジ位置センサと、前記ドラム軸受及び前記シフト機構の間にそれぞれ設けられる右側テンションセンサ及び左側テンションセンサと、前記テンションセンサのテンション信号に基づきバンドのテンションを一定に保持するとともに、前記第2ドラムにおけるバンドエッジ位置の変動を抑えるための軸受位置補正信号を前記右側シフト機構及び左側シフト機構に出力するテンションコントローラとを有することが好ましい。
【0016】
本発明の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法では、前記第1ドラムにて前記バンドの幅方向である第2方向におけるエッジ位置を検出し、前記第1ドラム及び第2ドラム間の下側バンドの内周面に接触するステアリングロールにより、前記バンドエッジ位置の検出信号に基づき、前記バンドエッジ位置の変動を抑える方向に前記下側バンドを前記第2方向に傾斜させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1ドラム及び第2ドラム間の下側バンドの内周面に接触するようにステアリングロールを配置し、第1ドラムにおけるバンドエッジ位置信号に基づきステアリングロールの傾斜角度を変えるため、第1ドラムでのバンドの蛇行を迅速に且つ精度良く抑えることができる。したがって、バンドの位置制御が精度良く行え、例えば2000mm幅のバンドに対して2〜3mm程度の振れ幅に抑えることができる。これにより、バンドのドラム軸方向での移動量が少なくなり、バンドの両側縁と流延膜の両側縁との間の非流延領域の幅を狭くすることができ、広幅の長尺フィルムを効率良く製造することができる。しかも、ステアリングロールによってバンドの蛇行を抑制するため、迅速且つ精度良くバンドの蛇行を抑えることができ、蛇行制御時のドラム上でのバンドシフト量も小さくて済む。したがって、バンドの蛇行に起因する経年変化によって、バンドに筋状のピークが発生することが抑えられる。これにより、バンドの長寿命化と、製膜されるフィルムの厚みムラを無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】溶液製膜設備の概略図である。
【図2】バンドエッジ位置制御装置を平面から見たブロック図である。
【図3】同じく側面から見たブロック図である。
【図4】同じく正面から見たブロック図である。
【図5】ステアリングロールの動作を説明するための正面図である。
【図6】別実施形態のステアリングロールの動作を説明するための平面図である。
【図7】同側面図である。
【図8】別実施形態のステアリングロールの動作を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、溶液製膜設備10は、流延装置11と、第1テンタ12と、ロール乾燥装置13と、第2テンタ14と、スリッタ15と、巻取装置16とを上流側から順に直列に接続して構成される。
【0020】
流延装置11は、ドラム21,22に掛け巡らされたバンド23と、流延ダイ24と、ダクト25と、減圧チャンバ26と、剥ぎ取りロール27と、バンドエッジ位置(BEP)の制御装置(以下、BEP制御装置という)28とを備える。バンド23は、環状に形成されたエンドレスの金属製流延支持体であり、第1ドラム21と第2ドラム22との周面に巻き掛けられる。各ドラム21,22の上側に位置するバンド23を上側バンド23Aと言い、下側に位置するバンド23を下側バンド23Bと言う。第1ドラム21はモータ(図2参照)29により回転駆動され、これによりバンド23が矢印Aで示す第1方向に走行する。
【0021】
第1ドラム21の上方には流延ダイ24が配置される。流延ダイ24は、走行しているバンド23に対し、ドープ30を連続的に流す。これにより、バンド23上には流延膜31が形成される。ドープ30は、例えばセルロースアシレートを溶剤に溶解したものであり、図示しないドープ製造ラインで製造され、流延ダイ24に供給される。
【0022】
流延ダイ24からのビード34に対して、バンド23の走行方向における上流には、減圧チャンバ26が設けられる。この減圧チャンバ26は、ビード34の上流側エリアの雰囲気を吸引して前記エリアを減圧し、ビード34の振動を減少させる。
【0023】
製造速度を向上するために、剥ぎ取りロール27に向かう流延膜31は、第2ドラム22及びバンド23により加熱される。また、流延位置では、バンド23が過度に昇温することがないように、第1ドラム21によりバンド23が冷却される。このため、各ドラム21,22は図示しない温度調節装置を有する。
【0024】
ダクト25はバンド23の走行路に沿って、複数が並べて設けられる。各ダクト25はそれぞれ送風機を有する温風コントローラ(共に図示無し)に接続され、流出口から乾燥風を吹き出す。温風コントローラは、乾燥風の温度、湿度、流量を独立して制御する。乾燥風の温度及び流量の制御と、ドラム21,22自体の温度調節装置による温度制御とにより、流延膜31の温度が調節され、流延膜31の乾燥が進行する。そして、第1テンタ12での搬送が可能な程度にまで流延膜31が固化されて自己支持性が付与される。
【0025】
第1ドラム21の流延ダイ24の走行方向上流側には、剥ぎ取りロール27が設けられる。剥ぎ取りロール27は、溶剤を含む状態の乾燥が進行した流延膜31をバンド23から剥がす際に、流延膜31を支持する。剥ぎ取られた流延膜31、すなわちフィルム32は、第1テンタ12に案内される。
【0026】
第1テンタ12では、クリップ33によりフィルム32の両側縁部を把持して、フィルム32を搬送しながら、矢印Bで示す第2方向(フィルム幅方向)への張力を付与し、フィルム32の幅を拡げる。第1テンタ12には、上流側から順に、予熱エリア、延伸エリア、及び緩和エリアが形成される。なお、緩和エリアは必要に応じて設けられる。
【0027】
第1テンタ12は、1対のレール及びチェーン(共に図示無し)を有する。レールはフィルム32の搬送路の両側に、所定の間隔で離間して配される。このレール間隔は、予熱エリアでは一定であり、延伸エリアでは下流に向かうに従って次第に広くなり、緩和エリアでは一定、または下流に向かうに従って次第に狭くなっている。チェーンには一定間隔でクリップ33が取り付けられる。
【0028】
予熱エリア、延伸エリア、緩和エリアは、ダクト35からの乾燥風の送り出しによって空間として形成されるもので、これら各エリアの間に明確な境界はない。ダクト35のスリットからは、所定の温度や湿度に調整した乾燥風がフィルム32に向けて送られる。
【0029】
ロール乾燥装置13では、多数のロール36にフィルム32が巻き掛けられて搬送される。ロール乾燥装置13の内部の雰囲気は、温度や湿度などが図示しない温調機により調節されており、フィルム32が搬送されている間に、フィルム32から溶剤が蒸発する。
【0030】
第2テンタ14は、第1テンタ12と同様の構造であり、クリップ38及びダクト39を有する。第2テンタ14は、フィルム32をクリップ38により保持して延伸する。この延伸により、所望の光学特性を有するフィルム32となる。得られるフィルム32は、例えば液晶ディスプレイ用の位相差フィルムとして利用することができる。なお、フィルム32の光学特性によっては、第2テンタ14は用いなくてもよい。
【0031】
スリッタ15は、第1テンタ12や第2テンタ14の各クリップ33,38による保持跡を含む側部を切除する。側部が切除されたフィルム32は、巻取装置16によりロール状に巻き取られる。
【0032】
図2及び図3に示すように、第1ドラム21は軸受17によってドラム回転軸21Aの両端部が回転自在に支持される。また、一端部にはドラム回転モータ29が接続される。ドラム回転モータ29にはTG(タコジェネレータ)18が接続され、このTG18は第1ドラム21の回転速度を検出する。ドラム回転モータ29はドライバ19を介してシステムコントローラ20に接続される。また、TG18もシステムコントローラ20に接続される。システムコントローラ20は、バンド23が一定速度で回転するように、ドラム回転モータ29の回転を制御する。なお、システムコントローラ20は、製膜条件に応じてバンド23の走行速度や乾燥温度を変更する。
【0033】
図3及び図4に示すように、BEP制御装置28は、第1BEP制御ユニット28Aと、第2BEP制御ユニット28Bとを有する。第1BEP制御ユニット28Aは、ステアリングロール40、第1ドラムバンドエッジ位置センサ(以下、第1ドラムBEPセンサという)41、ステアリングロール傾斜機構42、BEPコントローラ43を有する。BEPコントローラ43は、第1ドラムBEPセンサ41の信号に基づき、ステアリングロール40を鉛直面内で第2方向B(図2参照)に傾斜させることにより、BEPを一定に保持する。
【0034】
図2及び図3に示すように、第2BEP制御ユニット28Bは、シフト機構45R,45Lと、第2ドラム22の軸受位置センサ46R,46Lと、テンションセンサ47R,47Lと、第2ドラムバンドエッジ位置センサ(以下、第2ドラムBEPセンサという)48と、テンションコントローラ51とを有する。
【0035】
図2に示すように、テンションコントローラ51は、第2ドラム22の中心線CL2を水平面内で基準線BL2に対し傾斜角度θ2で傾斜させる。これにより、バンド23の左右のテンション差を無くすようにして、テンション差に起因する第2ドラム22におけるバンド23の蛇行が抑えられ、第2ドラム22におけるBEPを一定に保持する。なお、本実施形態では、左右を識別して説明する必要がある部材に関しては、第1方向Aに向かったときを基準にして、右側にある部材には各部材の符号に「R」が付してあり,左側にある部材には各部材の符号に「L」が付してある。
【0036】
図4に示すように、ステアリングロール40は、下側バンド23Bの内周面23Cに接触して回転する。ステアリングロール40は金属製であり、必要に応じて、ゴムライニングなどの表面加工したものが用いられる。ステアリングロール傾斜機構42は、ロール軸受40BR,40BLと、これら両ロール軸受40BR,40BLをシフトするシフト部55R,55Lとを有する。ロール軸受40BR,40BLは、ステアリングロール40の両軸端に取り付けられ、ステアリングロール40を回転自在に支持する。シフト部55R,55Lは、各ロール軸受40BR,40BLを、下側バンド23Bの内周面23Cに交差する鉛直方向に個別にシフトさせる。これにより、第2方向の基準線BL1に対してステアリングロール40の中心線CL1を傾斜角度θ1で傾斜させる。ステアリングロール40が傾斜することにより、ステアリングロール40に内周面23Cが接触する下側バンド23Bが、ステアリングロール40の傾斜角度θ1に応じてステアリングロール40上で移動する。この移動により、下側バンド23Bの第1ドラム21上における蛇行が抑えられる。
【0037】
BEPコントローラ43は、第1ドラムBEPセンサ41からのBEP信号に基づき、各シフト部55R,55Lを作動させて、第1ドラムBEPセンサ41におけるBEPを一定位置に保つようにし、蛇行の発生を抑える。このため、BEPコントローラ43には、システムコントローラ20からバンド走行速度指令信号とBEP位置指令信号とが入力される。
【0038】
BEPコントローラ43は、第1ドラムBEPセンサ41からのBEP信号に基づき、第1ドラム21における第2方向Bでのバンドエッジ移動速度Ve1を求める。そして、このBE移動速度Ve1とシステムコントローラ20からの速度指令信号とに基づき、BE移動速度Ve1が「0」になり且つ目標BEPとなるように、ステアリングロール40の目標傾斜角度を求める。そして、求めた目標傾斜角度に基づき各シフト部55R,55Lのシフト量を算出し、このシフト量となるように、各シフト部55R,55Lにシフト制御信号を送る。シフト部55R,55Lでは、このシフト制御信号に基づきシフト量が調節される。これにより、現在のBEPに基づきこれを目標BEPに近づける修正がなされる。なお、BE移動速度Ve1とバンド走行速度VBと傾斜角度θ1との関係は予め実機により実験により求められており、これらの関係が例えばルックアップテーブルデータとして記憶されている。
【0039】
例えば、図5に示すように、第1ドラムBEPセンサ41の信号に基づき下側バンド23Bが第1ドラム21上で右側へ移動し始めていることが検出されたときには、これを修正すべく、シフト部55R,55Lは、軸受40BLを下げ、軸受40BRを上げて、ステアリングロール40を傾斜させる。これにより、下側バンド23Bがステアリングロール40上で左側にシフトし、第1ドラム21におけるBEPが目標BEPに迅速に位置決めされる。したがって、第1ドラム21上におけるバンド23の蛇行が迅速且つ効率良く抑えられる。そして、バンドエッジ移動速度Ve1が高いときはステアリングロール40の傾斜角度θ1を大きくし、バンドエッジ移動速度Ve1が低いときは傾斜角度θ1を小さくする。
【0040】
このように、ステアリングロール40によって、流延位置に近い第1ドラム近くでBEPの位置を修正することができ、従来の流延装置のように第2ドラム22の回転軸22Aを傾斜させてバンドの蛇行を抑えるものに比べて、迅速且つ容易に蛇行を抑えることができる。すなわち、従来のように、第2ドラム22の回転軸22Aを傾斜させて、バンド23の蛇行を抑えようとすると、第1及び第2ドラム21,22間の距離が例えば数十メートルと長い場合には、バンド23が長くなる分だけメカロスや撓みなどが大きくなる。第2ドラムの軸受に掛かる荷重は例えば5トン程度になり、これをシフト機構45R,45Lで動かす場合に、摩擦が高くなり動きにくい。しかも、メカロスや撓み量などの発生により、再現性が低くなり、蛇行抑制の精度が低下する他に迅速に蛇行を抑制することができない。これに対して、本実施形態では、第1ドラム21の近傍で、ステアリングロール40にて下側バンド23Bの蛇行を修正するため、迅速に蛇行を修正することができる。しかも、第1ドラム21のバンド入口側にてステアリングロール40によりバンド23を傾斜させて蛇行を修正するため、少ないシフト量にて、しかも第2ドラム回転軸22Aを傾斜させるのに比べて小さい力にて蛇行を効率良く修正することができ、迅速且つ精度の良い蛇行制御が可能になる。
【0041】
図2に示すように、第2BEP制御ユニット28Bでは、第2ドラム22のドラム回転軸22Aの両端部を、軸受52R,52Lによって回転自在に支持する。これら軸受52R,52Lは各ドラム回転軸21A,22Aを含む水平面内で、第1ドラム21に向かう第1方向Aに移動自在に設けられる。そして、シフト機構45R,45Lによって、それぞれ個別に第1方向Aに変位する。なお、シフト機構45R,45Lや、第1BEP制御ユニット28Aのシフト部55R,55Lは、各軸受52R,52L、40BR,40BLを移動させることができるものであればよく、油圧シリンダを用いたものや、ウォーム軸やネジ棒の回転駆動によるものなどが、適宜選択される。
【0042】
右側軸受52Rには右側軸受位置センサ46Rが、また左側軸受52Lには左側軸受位置センサ46Lが取り付けられる。これら軸受位置センサ46R,46Lは、各軸受52R,52Lの第1方向Aでの位置を検出する。なお、軸受位置センサ46R,46Lにより各軸受位置を検出する代わりに、第2ドラム22の軸端部の変位を第1方向で検出することができるものであればよく、検出位置や検出方法については、特に限定されない。
【0043】
各軸受52R,52Lとシフト機構45R,45Lとの間には、右側テンションセンサ47R及び左側テンションセンサ47Lが取り付けられる。これら右側テンションセンサ47R及び左側テンションセンサ47Lは、バンド23のテンションをそれぞれ検出し、テンション信号として出力する。
【0044】
第2ドラム22上には第2ドラムバンドエッジ位置センサ(以下、第2ドラムBEPセンサという)48が設けられる。第2ドラムBEPセンサ48は、バンド23の一方の側縁、例えば左エッジ位置をフィルム幅方向(第2方向B)において検出し、第2ドラムにおける第2バンドエッジ位置信号(以下、第2BEP信号という)として出力する。
【0045】
テンションコントローラ51は、軸受位置センサ46R,46L、テンションセンサ47R,47L、第2ドラムBEPセンサ48の各信号に基づき、左右のテンション差を無くし、各テンションが一定値になるようにシフト機構45R,45Lを作動させる。このため、左右のテンションセンサ47R,47Lの信号の和をバンドテンションとして用い、システムコントローラ20からのテンション指令に基づきバンドテンションを一定に保持する。また、左右のテンションセンサ47R,47Lの信号の差をバンドの左右テンション差として用い、この左右テンション差に基づき蛇行を制御する。
【0046】
シフト機構45R,45Lは、第1方向Aへの各軸受52R,52Lの個別の変位により、第2ドラム22を水平面内において、基準線BL2に対して任意の傾斜角度θ2で傾斜させる。この傾斜によって、第2方向Bにおけるテンションムラが解消され、このテンションムラに起因するバンドの蛇行が抑制される。また、シフト機構45R,45Lによる軸受52R,52Lの個別移動によって、バンド23の張り(テンション)も一定値になるように調節される。
【0047】
テンション差に基づくバンド23の蛇行を抑えるための各シフト機構45R,45Lのシフト量は、バンド走行速度に対応させて、予め実機において実験やシミュレーションなどにより求められており、これがルックアップテーブル形式でメモリに記憶されている。したがって、左右のテンション信号、バンド走行速度が入力されると、これらテンション差に基づく蛇行を抑えるためのシフト量が算出される。そして、このシフト量になるように各シフト機構45R,45Lが作動する。
【0048】
また、テンションコントローラ51は、システムコントローラ20からのテンション指令信号に基づき各シフト機構45R,45Lを作動させて、バンド23のテンションが指令信号で指示された値になるようにテンション制御を行う。例えば、バンドテンションが小さいときには各シフト機構45R,45Lのシフト量を増やし、バンドテンションが大きいときには各シフト機構45R,45Lのシフト量を減らすことにより、テンションを一定に保持する。
【0049】
以上のように、第2BEP制御ユニット28Bでは、第2ドラム22の各軸受52R,52Lを個別にシフトさせてテンションを制御することにより、バンド23の温度分布が不安定な時期でのテンション変動が効率良く抑えられるため、流延開始時や、流延速度の変更、流延膜の乾燥温度の変更などにおいて、バンド23の蛇行が効率よく抑えられる。
【0050】
テンション変動に起因するバンド23の蛇行補正制御は、流延開始時に特に有効である。流延開始時は定常時と異なり、バンド23の幅方向温度分布が均一になっていないため、この温度分布の不均一によりバンド23の第1方向長さが第2方向において部分的に変動しやすい。この部分的なテンション変動を左右のテンションセンサ47R,47Lによって、蛇行要因成分としてとらえることができ、バンド23の温度分布むらに起因する蛇行を効果的に取り除くことができる。したがって、流延開始時の蛇行制御を精度良く行うことができる。なお、左右のテンション差が所定範囲内になり、左右テンション差に起因する蛇行の影響が少なくなったときには、第2ドラム回転軸22Aを傾斜させて蛇行を抑える制御を停止し、第1BEP制御ユニット28Aのみによって蛇行を抑えてもよい。
【0051】
上記第1実施形態では、第2BEP制御ユニット28Bにより、バンドテンションを一定に保持するテンション制御の他に、左右テンション差に基づく蛇行抑制を行い、それでも抑制できない蛇行を第1BEP制御ユニット28Aにより取り除くようにして、精度の良い蛇行制御を行っているが、これに代えて、第2BEP制御ユニット28Bでは、バンドテンションを一定に保持する制御のみを行ってもよい。
【0052】
さらには、第2BEP制御ユニット28Bで、左右のテンションセンサ47R,47Lからの信号の和に基づきバンドテンションを検出することに代えて、または加えて、バンド走行方向の中間位置における下側バンド23Bの懸垂量に基づくテンションセンサ49(図3参照)からの信号に基づき、テンション変動を抑えてもよい。
【0053】
この場合には、第1ドラム21と第2ドラム22との中間位置で下側バンド23Bの左側縁部近くに、中間部テンションセンサ49を設ける。この中間部テンションセンサ49は、バンド23のテンションを下側バンド23Bの中央位置での懸垂量から求める。バンド23のテンションと懸垂量との間には、テンションが大きくなると懸垂量が小さくなる関係がある。式(1)はこの関係を表すもので、Tはバンドのテンション(N)、Ldはドラム中心間の距離(m)、Wbはバンドの幅(mm)、tはバンドの厚み(mm)、γはバンドの密度(kg/dm)、gは重力加速度(9.81m/s)、Dはドラム中間位置における自然な懸垂量(mm)である。
T=(Ld・Wb・t・γ・g)/(8・D) ・・・・(1)
【0054】
なお、バンド中央部の懸垂量は、上記のように、バンド自体の重みによる自然な懸垂量であってもよいし、または押さえロールなどにより下方に付勢した状態での懸垂量であってもよい。この場合には上記(1)式で求めたものに押圧力に応じた補正量を加味して算出する。この中間部テンションセンサ49からのテンション信号が一定になるように、各軸受52R,52Lの変位量を変化させることにより、常に一定範囲内に懸垂量を収めることができ、バンド23のテンションも略一定に保つことができる。
【0055】
さらには、右側及び左側のテンションセンサ47R,47Lのテンション信号の他に、中間部テンションセンサ49のテンション信号をテンションコントローラ51に入力し、中間部テンションセンサ49のテンション信号を加味して蛇行制御してもよい。この場合には、右側及び左側のテンションセンサ47R,47Lのテンション信号と、中間部テンションセンサ49のテンション信号との重み付けを変えて加算することで、蛇行制御をより精度よく行うことができる。
【0056】
また、第2ドラム回転軸22Aの軸受52R,52Lをシフトさせることによりバンド23のテンション制御を行う方法に代えて、第1BEP制御ユニット28Aのステアリングロール40の傾斜によってバンドテンションを制御してもよい。この場合には、蛇行抑制分のシフト量に、バンドテンションを一定に保持するためのシフト量を加えることで、バンドテンション制御も蛇行制御と一緒に行うことができる。
【0057】
なお、図2〜図4に示す上記第1実施形態では、第1BEP制御ユニット28Aと第2BEP制御ユニット28Bからなる新設の流延装置を例に説明したが、既存の流延装置に対して、第1BEP制御ユニット28Aを新設することにより、同様にして、既存の設備に対しても、精度の良い蛇行制御が可能になる。この場合には、既存の蛇行制御は停止してテンション制御のみ行い、第1BEP制御ユニット28Aにより蛇行制御を行う。また、既存の蛇行制御で第2ドラム上のバンド位置制御も行った上で、それでも発生する突発的な蛇行を第1BEP制御ユニット28Aにより抑制してもよい。
【0058】
図4及び図5に示すように、上記実施形態では、ステアリングロール40は下側バンド23Bの内周面23Cに接触する全幅ロールを用いたが、ロール40はバンド23の全幅において接触する全幅ロールの他に、バンド23の幅方向の一部に互いに離間して接触する複数のローラを軸方向に並べたものであってもよい。また、バンド23に対して抵抗を少なくして摺動することができるものであればよく、特にロール形態に限定されるものでもなく、バンド23を傾斜させて蛇行を抑制することができるステアリングガイドを用いてもよい。
【0059】
ステアリングロール傾斜機構42は、ステアリングロール40を下側バンド23Bの内周面23Cに垂直な鉛直面内で変位させ、下側バンド23Bを第2方向Bで傾斜させるようにしたが、軸受40BR,40BLのシフト方向は鉛直面に限られるものではなく、下側バンド23Bの内周面23Cに交差する任意方向に変位するものであればよい。
【0060】
図6及び図7は別実施形態のステアリングロール傾斜機構62を示しており、横シフト部60及び縦シフト部61を有する。縦シフト部61は、ステアリングロール40を下側バンド23Bの内周面23Cに接触させて、ステアリングロール40に下側バンド23Bを所定の範囲で巻き掛ける。次に、横シフト部60により、軸受40BR,40BLを個別に変位させて、ステアリングロール40を水平面内にて揺動させる。このようにして、軸受40BR,40BLの鉛直方向シフト量及び水平方向シフト量を蛇行量に応じて変更することにより、蛇行を効率良く抑制することができる。なお、図6及び図7では、ステアリングロール40と縦シフト部61とを一括して横シフト部60によりシフトさせているが、各シフト部60,61の接続順序は逆でもよく、この逆順序で接続した場合には、ステアリングロール40と横シフト部60とを一括して縦シフト部61によりシフトする。したがって、ステアリングロール40を横シフト部60により水平面内で揺動させた状態で縦シフト部61により縦方向シフト量が任意に設定される。また、縦シフト部61は省略して、ステアリングロール40が所定の巻き掛け角度で下側バンド23Bに接触するような状態に保持した状態で、横シフト部60のみによりステアリングロール40を水平面内で揺動させてもよい。
【0061】
図8は、横シフト部60及び縦シフト部61を用いる代わりに、スイングアーム65を有するスイング機構66により軸受40BR,40BLを個別に円弧状軌跡67内の任意位置に変位させるようにしたステアリングロール傾斜機構68を示している。このステアリングロール傾斜機構68により、ステアリングロール40を所望の方向に傾斜させることができ、この傾斜によってバンド23の蛇行が上記同様の作用により抑制される。
【0062】
上記実施態様では、流延位置が第1ドラム21に対するバンド23の巻き掛け領域上になるように流延ダイ24を設けたが、流延ダイ24の位置は適宜変更してよい。例えば、流延位置が第1ドラム21から第2ドラム22に向かうバンド23上になるように、両ドラム21,22の間に流延ダイ24を設けてもよい。この場合には、ドラム21からドラム22へ向かうバンド23の下に支持ロールを設け、支持ロール上のバンド23に対向するように流延ダイ24を配置することが好ましい。この場合に、第1ドラムBEPセンサ41を第1ドラム21近くに設ける代わりに、流延位置近くに設けてもよい。
【0063】
バンド23の幅は特に限定されるものではないが、幅Wbが1500mm以上2100mm以下のものが好ましく用いられ、製造するフィルム32の広幅化の要請からは幅が広いものが用いられる。バンド23の長さは、流延速度や乾燥条件などに応じて決定される。
【0064】
バンド23上に流延されるドープは溶液製膜が可能なポリマを溶剤に溶解させたドープであればよいが、セルロースアシレートが好ましく用いられる。セルロースアシレートのアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基を有していても良い。アシル基が2種以上であるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
【0065】
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 1.0≦ A ≦3.0
(III) 0 ≦ B ≦2.0
【0066】
アシル基の全置換度A+Bは、2.20以上2.90以下であることがより好ましく、2.40以上2.88以下であることが特に好ましい。また、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度Bは、0.30以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。中でも、セルロースアシレートとしてセルロースジアセテート(DAC)が好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0067】
10 溶液製膜設備
11 流延装置
21 第1ドラム
22 第2ドラム
21A,22A ドラム回転軸
23 バンド
30 ドープ
31 流延膜
32 フィルム
40 ステアリングロール
40BR,40BL 軸受
41 第1ドラムBEP(バンドエッジ位置)センサ
42,62,68 ステアリングロール傾斜機構
43 BEPコントローラ
45R,45L シフト機構
46R,46L 軸受位置センサ
47R,47L テンションセンサ
48 第2ドラムBEPセンサ
51 テンションコントローラ
52R,52L 軸受
55R,55L シフト部
60 横シフト部
61 縦シフト部
66 スイング機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ドラムと第2ドラムとの間に掛け渡されて、前記第1ドラムから前記第2ドラムに向かう第1方向に走行するバンド上に、ポリマが溶剤に溶解したドープを流延ダイから流延して前記バンドに流延膜を形成し、前記流延膜をバンドから剥がして乾燥させフィルムにする溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置において、
前記バンドの幅方向である第2方向におけるエッジ位置を前記第1ドラムにて検出する第1ドラムバンドエッジ位置センサと、
前記第1ドラム及び第2ドラム間の下側バンドの内周面に接触するステアリングロールと、
前記ステアリングロールを変位させ、前記下側バンドを前記第2方向に傾斜させるステアリングロール傾斜機構と、
前記第1ドラムバンドエッジ位置センサのバンドエッジ位置に基づき、前記バンドエッジ位置の変動を抑えるように、前記ステアリングロールの傾斜角度を制御するバンドエッジ位置コントローラとを有することを特徴とする溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置。
【請求項2】
前記ステアリングロールは前記第1ドラムのバンド入口近くに配置され、
前記ステアリングロール傾斜機構は、前記ステアリングロールの両端部を回転自在に保持するロール軸受と、前記ロール軸受を前記下側バンドの内周面に交差する方向に個別にシフトさせるシフト部とを有することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置。
【請求項3】
前記ステアリングロール傾斜機構は、前記ロール軸受を前記下側バンドの内周面に平行な方向に個別にシフトさせる横シフト部を有することを特徴とする請求項2記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置。
【請求項4】
前記ステアリングロールは前記第1ドラムのバンド入口近くに配置され、
前記ステアリングロール傾斜機構は、前記ステアリングロールの両端部を回転自在に保持するロール軸受と、前記ステアリングロールを前記バンドに接触させた状態で前記ロール軸受を前記下側バンドの内周面に平行な方向に個別にシフトさせる横シフト部とを有することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置。
【請求項5】
前記バンドエッジ位置コントローラは、前記第1ドラムバンドエッジ位置センサからのバンドエッジ位置信号に基づき前記第2方向におけるバンドエッジの移動速度を求め、前記バンドエッジ移動速度と前記バンドの走行速度とに基づき、前記ステアリングロール傾斜機構を制御して、前記バンドエッジの移動速度を小さくする方向に前記ステアリングロールを傾斜させることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置。
【請求項6】
前記第2ドラムの両軸端部を回転自在に支持するドラム軸受と、
前記ドラム軸受を前記第1方向にシフトさせるシフト機構と、
前記バンドのテンションを検出するテンションセンサと、
前記テンションセンサのテンション信号に基づき前記シフト機構を作動させてテンションを一定にするテンションコントローラとを有することを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置。
【請求項7】
前記テンションセンサは、前記第1ドラムと前記第2ドラムとの中間位置に設けられ、下側のバンドの懸垂量からテンションを検出することを特徴とする請求項6記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置。
【請求項8】
前記第2ドラムの両軸端部を回転自在に支持するドラム軸受と、
前記ドラム軸受を前記第1方向に個別にシフトさせる右側シフト機構及び左側シフト機構と、
前記ドラム軸受の前記第1方向における位置を検出する第2ドラム右側位置センサ及び第2ドラム左側位置センサと、
前記第2方向におけるバンドエッジ位置を前記第2ドラムにて検出する第2ドラムバンドエッジ位置センサと、
前記ドラム軸受及び前記シフト機構の間にそれぞれ設けられる右側テンションセンサ及び左側テンションセンサと、
前記テンションセンサのテンション信号に基づきバンドのテンションを一定に保持するとともに、前記第2ドラムにおけるバンドエッジ位置の変動を抑えるための軸受位置補正信号を前記右側シフト機構及び左側シフト機構に出力するテンションコントローラと
を有することを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御装置。
【請求項9】
第1ドラムと第2ドラムとの間に掛け渡されて、前記第1ドラムから前記第2ドラムに向かう第1方向に走行するバンド上に、ポリマが溶剤に溶解したドープを流延ダイから流延して前記バンドに流延膜を形成し、前記流延膜をバンドから剥がして乾燥させフィルムにする溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法において、
前記第1ドラムにて前記バンドの幅方向である第2方向におけるエッジ位置を検出し、
前記第1ドラム及び第2ドラム間の下側バンドの内周面に接触するステアリングロールにより、前記バンドエッジ位置の検出信号に基づき、前記バンドエッジ位置の変動を抑える方向に前記下側バンドを前記第2方向に傾斜させることを特徴とする溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法。
【請求項10】
前記ステアリングロールは前記第1ドラムのバンド入口近くに配置され、
前記ステアリングロールの両端部を回転自在に軸受により支持し、前記軸受を前記バンド面に交差する方向にシフト部によりシフトさせて、前記下側バンドを前記第2方向に傾斜させることを特徴とする請求項9記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法。
【請求項11】
前記シフト部は、前記ロール軸受を前記下側バンドの内周面に平行な方向に個別にシフトさせることを特徴とする請求項10記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法。
【請求項12】
前記ステアリングロールは前記第1ドラムのバンド入口近くに配置され、
前記ステアリングロールの両端部を回転自在に軸受により支持し、前記ステアリングロールを前記バンドに接触させた状態で前記軸受を前記バンド面に平行な方向にシフト部によりシフトさせて、前記下側バンドを前記第2方向に傾斜させることを特徴とする請求項9記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法。
【請求項13】
前記第1ドラムバンドエッジ位置に基づき前記第2方向におけるバンドエッジの移動速度を求め、前記バンドエッジ移動速度と前記バンドの走行速度とに基づき、前記バンドエッジの移動速度を小さくする方向に前記ステアリングロールを傾斜させることを特徴とする請求項9から12いずれか1項記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法。
【請求項14】
前記第2ドラムの両軸端部をドラム軸受により回転自在に支持し、
前記バンドのテンションをテンションセンサにより検出し、
前記テンションセンサのテンション信号に基づきシフト機構により前記ドラム軸受を第1方向にシフトさせテンションを一定にすることを特徴とする請求項9から13いずれか1項記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法。
【請求項15】
前記第1ドラムと前記第2ドラムとの中間位置における下側のバンドの懸垂量からテンションを検出することを特徴とする請求項14記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法。
【請求項16】
前記第2ドラムの両軸端部を回転自在にドラム軸受により支持し、
前記ドラム軸受の前記第1方向における位置を第2ドラム右側位置センサ及び第2ドラム左側位置センサにより検出し、
前記ドラム軸受を前記第1方向に個別に右側シフト機構及び左側シフト機構によりシフトさせ、
前記第2方向におけるバンドエッジ位置を第2ドラムバンドエッジ位置センサにより前記第2ドラムにて検出し、
テンションコントローラにより、前記ドラム軸受及び前記シフト機構の間にそれぞれ設けられる右側テンションセンサ及び左側テンションセンサのテンション信号に基づきバンドのテンションを一定に保持するとともに、前記第2ドラムにおけるバンドエッジ位置の変動を抑えるための軸受位置補正信号を前記右側シフト機構及び左側シフト機構に出力することを特徴とする請求項9から13いずれか1項記載の溶液製膜設備のバンドエッジ位置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−43307(P2013−43307A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181179(P2011−181179)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】