溶融樹脂整流用ユニット
【課題】押出成形装置の流路内における溶融樹脂の滞留を十分に解消すること。
【解決手段】本発明に係る溶融樹脂整流用ユニット20は、押出成形装置の流路に設けられるものであって、濾材15を保持する第1の面S1からその裏面である第2の面S2に向けて貫通する複数の貫通孔12Bを有するブレーカープレート10Bと、ブレーカープレート10Bの第2の面S2と当接する第3の面S3に形成された溝23A及び第3の面S3からその裏面である第4の面S4に向けて貫通する排出孔28を有する整流プレート21Aとを備える。溝23Aはブレーカープレート10Bの貫通孔12Bの開口13に対向する位置に設けられており、当該溝23Aとブレーカープレート10Bの第2の面S2とによって構成される滞留防止用流路25が排出孔28と連通している。
【解決手段】本発明に係る溶融樹脂整流用ユニット20は、押出成形装置の流路に設けられるものであって、濾材15を保持する第1の面S1からその裏面である第2の面S2に向けて貫通する複数の貫通孔12Bを有するブレーカープレート10Bと、ブレーカープレート10Bの第2の面S2と当接する第3の面S3に形成された溝23A及び第3の面S3からその裏面である第4の面S4に向けて貫通する排出孔28を有する整流プレート21Aとを備える。溝23Aはブレーカープレート10Bの貫通孔12Bの開口13に対向する位置に設けられており、当該溝23Aとブレーカープレート10Bの第2の面S2とによって構成される滞留防止用流路25が排出孔28と連通している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形装置の流路に設けられる溶融樹脂整流用ユニットに関し、より詳細にはブレーカープレートとその下流側に配置される整流プレートとを備えたユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融樹脂からフィルムやペレットを製造するにあたり、押出成形装置が一般に使用される。押出成形装置は、溶融樹脂を可塑化する円筒状のシリンダと、溶融樹脂が押し出されるダイスとを備える。図13は従来の押出成形装置の内部構造を部分的に示す模式断面図である。同図に示すように、シリンダ50の内部には、溶融樹脂を混練して可塑化するとともに、これをダイスへと連続的に送るためのスクリュー52が設けられている。スクリュー52とダイス(図示せず)の間には、ブレーカープレートと称される部材が設けられる。図13〜15に示すブレーカープレート10Aは、多数の貫通孔12Aを有し、溶融樹脂がこれらの貫通孔12Aを通過することで、スクリュー52の回転に起因する旋回流を層流に変化させるとともにシリンダ50内に背圧をかけることができる。なお、ブレーカープレート10Aの表面上に濾材15を装着することにより溶融樹脂に混入した異物(樹脂の架橋物を含む)等を取り除くことができる。
【0003】
通常、ブレーカープレートとして平板に多数の貫通孔を形成したものが用いられる(図14参照)。かかる構成のブレーカープレートを使用した場合、図15に示すように、貫通孔12Aが設けられていない部分の近傍に溶融樹脂が滞留する箇所Vが生じやすい。溶融樹脂の滞留が生じると、その箇所で樹脂の熱劣化が進行するおそれがある。熱劣化した成分は、樹脂組成物から製造されるフィルムや成形品の外観不良(例えば、いわゆるフィッシュアイ)の原因となる。
【0004】
溶融樹脂の滞留は、溶融樹脂の流れ方向Fとブレーカープレート10Aの面Sとが直交していることが主因と考えられる。そこで、ブレーカープレートの貫通孔の端部をテーパー状に形成する等して、溶融樹脂の流れ方向と直交する面の面積を低減して溶融樹脂の滞留を低減させるといった技術が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−315967号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、溶融樹脂の流れ方向と直交する面の面積を低減するにも限界があるため、溶融樹脂の滞留に起因する不具合を十分に解消するには未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、押出成形装置の流路内における溶融樹脂の滞留を十分に解消するのに有用な溶融樹脂整流用ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る溶融樹脂整流用ユニットは、押出成形装置の流路に設けられるものであって、溶融樹脂を濾過するための濾材を保持する第1の面からその裏面である第2の面に向けて貫通する複数の貫通孔を有するブレーカープレートと、ブレーカープレートの第2の面と当接する第3の面に形成された溝及び第3の面からその裏面である第4の面に向けて貫通する排出孔を有する整流プレートとを備える。整流プレートの溝は、第2の面と第3の面とを当接させた際、ブレーカープレートの貫通孔の開口に対向する位置に設けられており、当該溝とブレーカープレートの第2の面とによって構成される滞留防止用流路が排出孔と連通している。
【0009】
上記ユニットによれば、ブレーカープレートの貫通孔を通過した溶融樹脂はその直後に滞留防止用流路に流入する。この滞留防止用流路は、上述の通り、整流プレートの第3の面(上流側の面)に形成された溝によって画されるものであるため、ブレーカープレートの第2の面(下流側の面)に沿う方向に溶融樹脂が流れる。これにより、図15に示すような溶融樹脂の滞留を十分に低減できる。また、従来の押出成形装置に上記ユニットを装着した場合であっても、ブレーカープレートからダイスまでの行路容積を大幅に増大させるものではなく、当該ユニットの下流側の配管を工夫することで行路容積を削減することも可能である。
【0010】
上記滞留防止用流路は、ブレーカープレートの第2の面における貫通孔の複数の開口のうちの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通し且つ排出孔が設けられた整流プレートの中心部の方向に延在する部分を有することが好ましい。かかる構成を採用することにより、ブレーカープレートの半径方向外側の開口から流出した溶融樹脂と、これよりも中心部側の開口から流出した溶融樹脂とを合流させて整流プレートの排出孔へと移送することができる。
【0011】
上記滞留防止用流路は、圧力損失低減の観点から、ブレーカープレートの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通する部分を複数有し、これらの部分が下流側から上流側に向けてそれぞれ分岐していることが好ましい。
【0012】
上記ブレーカープレートは、当該ブレーカープレートの中心部側の内壁面が滞留防止用流路の下流方向に湾曲した貫通孔を有することが好ましい。かかる構成を採用することにより、ブレーカープレートの貫通孔から滞留防止用流路へと至る溶融樹脂の流線が描く曲線の曲率半径が大きくなるため、溶融樹脂の滞留をより一層低減できる。なお、溶融樹脂が流れる流路が直角やこれに近い角度で折れ曲る部分を有するものであると、その近傍に滞留が生じやすい。また、ブレーカ貫通孔の湾曲は、隣接する貫通孔に干渉しない程度のものであってもよく、一部又は全てが隣接する貫通孔に干渉していてもよい。
【0013】
上記滞留防止用流路は、上流側から下流側に向かうに従って流路断面積が大きくなることが好ましい。滞留防止用流路の流路断面積を適宜設定して圧力損失を調整することにより、ブレーカープレートの各貫通孔を通過する溶融樹脂の量が十分均一となるように調整できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押出成形装置の流路内における溶融樹脂の滞留を十分に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の溶融樹脂整流用ユニットが装着された押出成形装置の内部構造を部分的に示す模式断面図である。
【図2】本発明の溶融樹脂整流用ユニットの好適な実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の溶融樹脂整流用ユニットが備える整流プレートの好適な例を示す斜視図である。
【図4】図3の整流プレートの表面に設けられた溝の構成を示す平面図である。
【図5】(a)は図2に示すものと異なる構成のブレーカープレートを備える溶融樹脂製流用ユニットを示す断面図であり、(b)はこのブレーカープレートの開口と整流プレートの溝との位置関係を示す平面図である。
【図6】(a)は図2に示すものと異なる構成のブレーカープレートを備える溶融樹脂製流用ユニットを示す断面図であり、(b)はこのブレーカープレートの開口と整流プレートの溝との位置関係を示す平面図である。
【図7】(a)は整流プレートの表面に設けられた溝の他の構成を示す斜視図であり、(b)は当該溝の構成を示す平面図である。
【図8】(a)は図4に示す整流プレートのA−A’線の一形状の断面図であり、(b)は図4に示す整流プレートのB−B’線の一形状の断面図であり、(c)は図4に示す整流プレートのC−C’線の一形状の断面図である。
【図9】(a)は図4に示す整流プレートのA−A’線の他の形状の断面図であり、(b)は図4に示す整流プレートのB−B’線の他の形状の断面図であり、(c)は図4に示す整流プレートのC−C’線の他の形状の断面図である。
【図10】(a)は整流プレート及びその表面に設けられた溝の一態様を示す部分断面図であり、(b)は整流プレート及びその表面に設けられた溝の他の態様を示す部分断面図である。
【図11】整流プレートの他の例を示す斜視図である。
【図12】整流プレートの表面に設けられた溝の他の態様を示す平面図である。
【図13】従来のブレーカープレートが装着された押出成形装置の内部構造を部分的に示す模式断面図である。
【図14】従来のブレーカープレートの一例を示す斜視図である。
【図15】従来のブレーカープレートを使用した場合に生じる滞留を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。図1に示す通り、本実施形態に係る溶融樹脂整流用ユニット20(以下、単に「ユニット20」と記載することがある。)は、押出成形装置のシリンダ50の先端に装着できるようになっており、スクリュー52の下流側に設けられる。ユニット20は、ブレーカープレート10Bと整流プレート21Aとを備え、これを押出成形装置の流路に設けることで以下のような効果が奏される。すなわち、図2に示す通り、ブレーカープレート10Bの貫通孔12Bを通過した溶融樹脂の流れ方向Fを、ブレーカープレート10Bの下流側の面(第2の面)S2に垂直な方向からこれに沿う方向に変えることができ、面S2の近傍における溶融樹脂の滞留を高度に低減できる。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0017】
ブレーカープレート10Bは、上流側に配置される面(第1の面)S1から下流側に配置される面(第2の面)S2にかけて貫通する多数の貫通孔12Bを有する。ブレーカープレート10Bは、貫通孔の形状が異なることの他は、図14に示したブレーカープレート10Aと同様の構成を有する。すなわち、ブレーカープレート10Aの貫通孔12Aは内径が一定であるのに対し、ブレーカープレート10Bの貫通孔12Bは、図2に示す通りブレーカープレート10Bの中心部側の内壁面が滞留防止用流路の下流方向に湾曲した形状となっている。貫通孔12Bがこのような形状を有することで溶融樹脂の流線が描く曲線の曲率半径が大きくなり、溶融樹脂の滞留をより一層低減できる。ただし、ブレーカープレート10Bの中心に設けられた貫通孔12Cは内径が一定である。また、貫通孔12Bの湾曲は、図4に図示するように隣接する貫通孔に干渉しない程度のものであってもよく、図5及び図6に示すように一部又は全てが隣接する貫通孔に干渉していてもよい。
【0018】
ブレーカープレート10Bによれば、スクリュー52の回転に起因する旋回流を層流に変化させるとともにシリンダ50内に背圧をかけることができる。また、ブレーカープレート10Bの面S1上に濾材15を装着することで、溶融樹脂に混入した異物(樹脂の架橋物を含む)等を取り除くことができる。なお、本発明において、ブレーカープレート又は整流プレートの表面の中心から外側に向かう方向を半径方向(R)といい、ブレーカープレート又は整流プレートの表面の中心とする円に沿う方向を周方向(C)という(図14参照)。
【0019】
整流プレート21Aは、ブレーカープレート10Bの下流側の面S2と当接する上流側の面(第3の面)S3に溝23Aを有する。この溝23Aは、ブレーカープレート10Bの面S2とともに滞留防止用流路25を構成するものであり、ブレーカープレート10Bの面S2と整流プレート21Aの面S3とを当接させた際、ブレーカープレート10Bの貫通孔12Bの開口13に対向する位置に設けられている。図4に示す略楕円形の破線はブレーカープレート10Bの開口13の位置を示すものである。
【0020】
図4に示す通り、滞留防止用流路25を画する溝23Aは、ブレーカープレート10Bの複数の開口13のうちの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通し且つ整流プレート21Aの中心部の方向に延在する部分を有する。また、滞留防止用流路25は圧力損失の低減の観点からブレーカープレート10Bの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通する部分を複数有し、これらの部分が下流側から上流側に向けてそれぞれ分岐している。かかるパターンからなる溝23Aを設けることで、ブレーカープレート10Bの半径方向外側の開口から流出した溶融樹脂と、これよりも中心部側の開口から流出した溶融樹脂とを合流させて下流側へと移送することができる。2つの流路が合流する部分は一方の流路を中心方向にカーブさせることで、当該箇所における溶融樹脂の滞留をより一層確実に防止できる。なお、図7に、整流プレート21Aとは溝のパターンが異なる整流プレート21Bを示す。整流プレート21Bの面S3には途中で分岐した溝23Bが形成されている。
【0021】
滞留防止用流路25の各部分は、溶融樹脂の滞留防止及び圧力損失低減の観点から、いずれも整流プレート21Aの中心方向に延在していることが好ましい。ただし、ブレーカープレートの開口の配置によっては、図4に示すようにすべての部分を中心方向に延在させることは困難である。このような場合にあっては流路の延在方向と半径方向とのなす角度は好ましくは60°以内であり、より好ましくは45°以内であり、更に好ましくは30°以内である。
【0022】
図4に示す通り、滞留防止用流路25の最も上流側の位置とブレーカープレート10Bの開口位置が一致するように溝23Aを形成することが好ましい。このように溝23Aを形成することで、滞留防止用流路25において溶融樹脂が滞留する部分を極力排除できる。同様の観点から、溝23Aの幅とブレーカープレート10Bの開口の幅とを一致させることが好ましい。
【0023】
図8(a)は図4に示す整流プレートのA−A’線の断面図であり、図8(b)は図4に示す整流プレートのB−B’線の断面図であり、図8(c)は図4に示す整流プレートのC−C’線の断面図である。図8(a),(c)に示すように、溝23Aの深さは上流側から下流側に向けて一定であってもよいが、圧力損失の観点から図9に示すように上流側から下流側に向けて溝の深さが徐々に深くなるように設定することが好ましい。
【0024】
すなわち、図4に示すように、滞留防止用流路25には複数の貫通孔12Bが連通しており、下流に進むにつれて滞留防止用流路25を流れる溶融樹脂の流量が増加する。流量の増加に見合う程度に溝23Aを徐々に深くしていくことで、滞留防止用流路25における過大な圧力損失の発生を防止できる。滞留防止用流路25において過大な圧力損失が生じると複数の貫通孔12Bの入口側の圧力が大きくばらつくことに起因して半径方向の外側に位置する貫通孔12Bの流量が低下して当該貫通孔における溶融樹脂の滞留が生じやすくなる。溝23Aの深さを適宜設定して滞留防止用流路25における圧力損失を低くすることにより、かかる問題の発生を防止することができる。
【0025】
溝23Aの深さは、溶融樹脂の粘弾性、単位時間当りの流量などに応じて適宜設定すればよい。例えばシリンダ直径40mmの単軸押出機を使用する場合、上流側の深さが1mm〜5mmであり、下流に向かうに従って徐々に深くなり下流側の深さが2mm〜20mmの場合を例示することができる。
【0026】
滞留防止用流路25の流路断面積が小さすぎると滞留防止用流路25における圧力損失が過大になり、半径方向の外側に位置する貫通孔12Bの流量が低下して当該貫通孔における溶融樹脂の滞留が生じやすくなる。他方、滞留防止用流路25の流路断面積が大きすぎると滞留防止用流路25内における滞留や行路容積の増大による熱劣化が生じやすくなる。
【0027】
整流プレート21Aの中心部には面S3からその裏面である下流側の面(第4の面)S4に向けて貫通する排出孔28が形成されている(図8(b),図9(b)参照)。この排出孔28は、上記の滞留防止用流路25と連通しており、排出孔28を通じて下流側の配管29へと溶融樹脂を移送できるようになっている。
【0028】
排出孔28の内径(最も細い部分)も溶融樹脂の粘弾性、単位時間当りの流量などに応じて適宜設定するが、例えばシリンダ直径40mmの単軸押出機を使用する場合、0.5mm〜15mmの場合を例示することができる。排出孔28の内径が小さすぎると、排出孔28における圧力損失が過大になり、生産性が不十分となりやすい。他方、排出孔28の内径が大きすぎるとブレーカープレート10Bの面S2に沿う方向の溶融樹脂の流れが十分に発生せず、滞留防止効果が不十分となりやすい。
【0029】
図10(a),(b)は、溝23Aの流路断面の形状をそれぞれ示したものである。溝23Aにおける溶融樹脂の滞留をより一層低減するには、図10(a)に示す通り溝23Aのコーナー部23aをR形状とすることが好ましい。
【0030】
溶融樹脂がユニット20の内部をスムーズに流れるためにはブレーカープレート10Bの開口13と整流プレート21Aの溝23Aとの位置を合わせる必要がある。両者の位置合わせを容易に行うには、例えば、ブレーカープレート10Bの面S2及び整流プレート21Aの面S3の一方の突起を設け、他方にこれを嵌め込む凹部を設けるなどすればよい。なおブレーカープレート10Bと整流プレート21Aとを溶接などにより完全に一体化してもよいが、掃除のしやすさの点から両者は分離可能であることが好ましい。
【0031】
ブレーカープレート10Bに装着する濾材15としては、各種金網や金属繊維焼結フィルターなどを例示することができ、これらを単独で使用してもよいし、2枚以上重ねた積層体にして使用してもよい。
【0032】
本実施形態に係るユニット20をシリンダ50に装着するには、例えばシリンダ50のフランジ50a,50bにボルト等の締め付け具(図示せず)を設ければよい。フランジ50a,50bの間にユニット20を配置してボルトを締め付けることによってユニット20を挟持するとともに溶融樹脂が漏洩しないように密閉することができる。
【0033】
本実施形態に係るユニット20を通過させる溶融樹脂は、特に限定しないが、例えばポリエチレンやポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・脂肪酸エステル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、複数のα−オレフィンの共重合体、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリカーボネートなどを例示することができる。
【0034】
また、ユニット20は、例えば、インフレーションフィルムやTダイフィルムなどのフィルム押出成形装置やシート成形装置、押出ラミネーション装置など、公知の樹脂製品の成形加工装置に用いることができる。押出成形装置としては、市販の押出機を使用することができ、具体的には、単軸押出機、同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機等を用いることができる。同方向回転二軸押出機としては、東芝機械(株)製のTEM(登録商標)、日本製鋼所(株)製のTEX(登録商標)及びCMP(登録商標)などを例示できる。異方向回転二軸押出機としては、日本製鋼所(株)製のTEX(登録商標)及びCMP(登録商標)、並びに、神戸製鋼所(株)製のFCM(登録商標)、NCM(登録商標)及びLCM(登録商標)等を例示できる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、特に好適な例として図4に示すパターンの溝23Aが形成された整流プレート21Aを示したが、ブレーカープレートの形状や押出成形機のタイプに応じて溝のパターンを適宜変更してもよい。
【0036】
図11に示す整流プレート21Cの溝23Cは、ブレーカープレートの半径方向外側の開口位置から渦を描くように中心方向に形成されており、排出孔28へと連通している。
【0037】
図12(a)に示す整流プレートの溝23Dは、ブレーカープレートの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを直線的に連通して排出孔28に至る1本の流路と、この流路に溶融樹脂が合流するように設けられた複数の同心円状の流路とを有する。図12(b)に示す整流プレートの溝23Eは、ブレーカープレートの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを直線的に連通して排出孔28に至る6本の流路と、これらの流路に溶融樹脂が合流するようにそれぞれ設けられ、周方向に分岐する複数の流路とを有する。
【0038】
また、上記実施形態においては、溶融樹脂の滞留防止の点で好ましいという理由で貫通孔12Bの内壁面が湾曲したブレーカープレート10Bを使用する場合を例示したが、場合によってはこれの代わりに図14に示すブレーカープレート10Aを使用してもよい。また、ブレーカープレートの外形は矩形に限られず、円板状であってもよく、貫通孔の数や配置も上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
10A,10B…ブレーカープレート、12A,12B,12C…貫通孔、13…ブレーカープレートの開口、15…濾材、20…溶融樹脂整流用ユニット、21A,21B,21C…整流プレート、23A,23B,23C,23D,23E…溝、25…滞留防止用流路、28…排出孔、29…配管、50…シリンダ、52…スクリュー、F…溶融樹脂の流れ方向、S1…ブレーカープレートの上流側の面(第1の面)、S2…ブレーカープレートの下流側の面(第2の面)、S3…整流プレートの上流側の面(第3の面)、S4…整流プレートの下流側の面(第4の面)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形装置の流路に設けられる溶融樹脂整流用ユニットに関し、より詳細にはブレーカープレートとその下流側に配置される整流プレートとを備えたユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融樹脂からフィルムやペレットを製造するにあたり、押出成形装置が一般に使用される。押出成形装置は、溶融樹脂を可塑化する円筒状のシリンダと、溶融樹脂が押し出されるダイスとを備える。図13は従来の押出成形装置の内部構造を部分的に示す模式断面図である。同図に示すように、シリンダ50の内部には、溶融樹脂を混練して可塑化するとともに、これをダイスへと連続的に送るためのスクリュー52が設けられている。スクリュー52とダイス(図示せず)の間には、ブレーカープレートと称される部材が設けられる。図13〜15に示すブレーカープレート10Aは、多数の貫通孔12Aを有し、溶融樹脂がこれらの貫通孔12Aを通過することで、スクリュー52の回転に起因する旋回流を層流に変化させるとともにシリンダ50内に背圧をかけることができる。なお、ブレーカープレート10Aの表面上に濾材15を装着することにより溶融樹脂に混入した異物(樹脂の架橋物を含む)等を取り除くことができる。
【0003】
通常、ブレーカープレートとして平板に多数の貫通孔を形成したものが用いられる(図14参照)。かかる構成のブレーカープレートを使用した場合、図15に示すように、貫通孔12Aが設けられていない部分の近傍に溶融樹脂が滞留する箇所Vが生じやすい。溶融樹脂の滞留が生じると、その箇所で樹脂の熱劣化が進行するおそれがある。熱劣化した成分は、樹脂組成物から製造されるフィルムや成形品の外観不良(例えば、いわゆるフィッシュアイ)の原因となる。
【0004】
溶融樹脂の滞留は、溶融樹脂の流れ方向Fとブレーカープレート10Aの面Sとが直交していることが主因と考えられる。そこで、ブレーカープレートの貫通孔の端部をテーパー状に形成する等して、溶融樹脂の流れ方向と直交する面の面積を低減して溶融樹脂の滞留を低減させるといった技術が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−315967号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、溶融樹脂の流れ方向と直交する面の面積を低減するにも限界があるため、溶融樹脂の滞留に起因する不具合を十分に解消するには未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、押出成形装置の流路内における溶融樹脂の滞留を十分に解消するのに有用な溶融樹脂整流用ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る溶融樹脂整流用ユニットは、押出成形装置の流路に設けられるものであって、溶融樹脂を濾過するための濾材を保持する第1の面からその裏面である第2の面に向けて貫通する複数の貫通孔を有するブレーカープレートと、ブレーカープレートの第2の面と当接する第3の面に形成された溝及び第3の面からその裏面である第4の面に向けて貫通する排出孔を有する整流プレートとを備える。整流プレートの溝は、第2の面と第3の面とを当接させた際、ブレーカープレートの貫通孔の開口に対向する位置に設けられており、当該溝とブレーカープレートの第2の面とによって構成される滞留防止用流路が排出孔と連通している。
【0009】
上記ユニットによれば、ブレーカープレートの貫通孔を通過した溶融樹脂はその直後に滞留防止用流路に流入する。この滞留防止用流路は、上述の通り、整流プレートの第3の面(上流側の面)に形成された溝によって画されるものであるため、ブレーカープレートの第2の面(下流側の面)に沿う方向に溶融樹脂が流れる。これにより、図15に示すような溶融樹脂の滞留を十分に低減できる。また、従来の押出成形装置に上記ユニットを装着した場合であっても、ブレーカープレートからダイスまでの行路容積を大幅に増大させるものではなく、当該ユニットの下流側の配管を工夫することで行路容積を削減することも可能である。
【0010】
上記滞留防止用流路は、ブレーカープレートの第2の面における貫通孔の複数の開口のうちの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通し且つ排出孔が設けられた整流プレートの中心部の方向に延在する部分を有することが好ましい。かかる構成を採用することにより、ブレーカープレートの半径方向外側の開口から流出した溶融樹脂と、これよりも中心部側の開口から流出した溶融樹脂とを合流させて整流プレートの排出孔へと移送することができる。
【0011】
上記滞留防止用流路は、圧力損失低減の観点から、ブレーカープレートの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通する部分を複数有し、これらの部分が下流側から上流側に向けてそれぞれ分岐していることが好ましい。
【0012】
上記ブレーカープレートは、当該ブレーカープレートの中心部側の内壁面が滞留防止用流路の下流方向に湾曲した貫通孔を有することが好ましい。かかる構成を採用することにより、ブレーカープレートの貫通孔から滞留防止用流路へと至る溶融樹脂の流線が描く曲線の曲率半径が大きくなるため、溶融樹脂の滞留をより一層低減できる。なお、溶融樹脂が流れる流路が直角やこれに近い角度で折れ曲る部分を有するものであると、その近傍に滞留が生じやすい。また、ブレーカ貫通孔の湾曲は、隣接する貫通孔に干渉しない程度のものであってもよく、一部又は全てが隣接する貫通孔に干渉していてもよい。
【0013】
上記滞留防止用流路は、上流側から下流側に向かうに従って流路断面積が大きくなることが好ましい。滞留防止用流路の流路断面積を適宜設定して圧力損失を調整することにより、ブレーカープレートの各貫通孔を通過する溶融樹脂の量が十分均一となるように調整できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押出成形装置の流路内における溶融樹脂の滞留を十分に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の溶融樹脂整流用ユニットが装着された押出成形装置の内部構造を部分的に示す模式断面図である。
【図2】本発明の溶融樹脂整流用ユニットの好適な実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の溶融樹脂整流用ユニットが備える整流プレートの好適な例を示す斜視図である。
【図4】図3の整流プレートの表面に設けられた溝の構成を示す平面図である。
【図5】(a)は図2に示すものと異なる構成のブレーカープレートを備える溶融樹脂製流用ユニットを示す断面図であり、(b)はこのブレーカープレートの開口と整流プレートの溝との位置関係を示す平面図である。
【図6】(a)は図2に示すものと異なる構成のブレーカープレートを備える溶融樹脂製流用ユニットを示す断面図であり、(b)はこのブレーカープレートの開口と整流プレートの溝との位置関係を示す平面図である。
【図7】(a)は整流プレートの表面に設けられた溝の他の構成を示す斜視図であり、(b)は当該溝の構成を示す平面図である。
【図8】(a)は図4に示す整流プレートのA−A’線の一形状の断面図であり、(b)は図4に示す整流プレートのB−B’線の一形状の断面図であり、(c)は図4に示す整流プレートのC−C’線の一形状の断面図である。
【図9】(a)は図4に示す整流プレートのA−A’線の他の形状の断面図であり、(b)は図4に示す整流プレートのB−B’線の他の形状の断面図であり、(c)は図4に示す整流プレートのC−C’線の他の形状の断面図である。
【図10】(a)は整流プレート及びその表面に設けられた溝の一態様を示す部分断面図であり、(b)は整流プレート及びその表面に設けられた溝の他の態様を示す部分断面図である。
【図11】整流プレートの他の例を示す斜視図である。
【図12】整流プレートの表面に設けられた溝の他の態様を示す平面図である。
【図13】従来のブレーカープレートが装着された押出成形装置の内部構造を部分的に示す模式断面図である。
【図14】従来のブレーカープレートの一例を示す斜視図である。
【図15】従来のブレーカープレートを使用した場合に生じる滞留を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。図1に示す通り、本実施形態に係る溶融樹脂整流用ユニット20(以下、単に「ユニット20」と記載することがある。)は、押出成形装置のシリンダ50の先端に装着できるようになっており、スクリュー52の下流側に設けられる。ユニット20は、ブレーカープレート10Bと整流プレート21Aとを備え、これを押出成形装置の流路に設けることで以下のような効果が奏される。すなわち、図2に示す通り、ブレーカープレート10Bの貫通孔12Bを通過した溶融樹脂の流れ方向Fを、ブレーカープレート10Bの下流側の面(第2の面)S2に垂直な方向からこれに沿う方向に変えることができ、面S2の近傍における溶融樹脂の滞留を高度に低減できる。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0017】
ブレーカープレート10Bは、上流側に配置される面(第1の面)S1から下流側に配置される面(第2の面)S2にかけて貫通する多数の貫通孔12Bを有する。ブレーカープレート10Bは、貫通孔の形状が異なることの他は、図14に示したブレーカープレート10Aと同様の構成を有する。すなわち、ブレーカープレート10Aの貫通孔12Aは内径が一定であるのに対し、ブレーカープレート10Bの貫通孔12Bは、図2に示す通りブレーカープレート10Bの中心部側の内壁面が滞留防止用流路の下流方向に湾曲した形状となっている。貫通孔12Bがこのような形状を有することで溶融樹脂の流線が描く曲線の曲率半径が大きくなり、溶融樹脂の滞留をより一層低減できる。ただし、ブレーカープレート10Bの中心に設けられた貫通孔12Cは内径が一定である。また、貫通孔12Bの湾曲は、図4に図示するように隣接する貫通孔に干渉しない程度のものであってもよく、図5及び図6に示すように一部又は全てが隣接する貫通孔に干渉していてもよい。
【0018】
ブレーカープレート10Bによれば、スクリュー52の回転に起因する旋回流を層流に変化させるとともにシリンダ50内に背圧をかけることができる。また、ブレーカープレート10Bの面S1上に濾材15を装着することで、溶融樹脂に混入した異物(樹脂の架橋物を含む)等を取り除くことができる。なお、本発明において、ブレーカープレート又は整流プレートの表面の中心から外側に向かう方向を半径方向(R)といい、ブレーカープレート又は整流プレートの表面の中心とする円に沿う方向を周方向(C)という(図14参照)。
【0019】
整流プレート21Aは、ブレーカープレート10Bの下流側の面S2と当接する上流側の面(第3の面)S3に溝23Aを有する。この溝23Aは、ブレーカープレート10Bの面S2とともに滞留防止用流路25を構成するものであり、ブレーカープレート10Bの面S2と整流プレート21Aの面S3とを当接させた際、ブレーカープレート10Bの貫通孔12Bの開口13に対向する位置に設けられている。図4に示す略楕円形の破線はブレーカープレート10Bの開口13の位置を示すものである。
【0020】
図4に示す通り、滞留防止用流路25を画する溝23Aは、ブレーカープレート10Bの複数の開口13のうちの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通し且つ整流プレート21Aの中心部の方向に延在する部分を有する。また、滞留防止用流路25は圧力損失の低減の観点からブレーカープレート10Bの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通する部分を複数有し、これらの部分が下流側から上流側に向けてそれぞれ分岐している。かかるパターンからなる溝23Aを設けることで、ブレーカープレート10Bの半径方向外側の開口から流出した溶融樹脂と、これよりも中心部側の開口から流出した溶融樹脂とを合流させて下流側へと移送することができる。2つの流路が合流する部分は一方の流路を中心方向にカーブさせることで、当該箇所における溶融樹脂の滞留をより一層確実に防止できる。なお、図7に、整流プレート21Aとは溝のパターンが異なる整流プレート21Bを示す。整流プレート21Bの面S3には途中で分岐した溝23Bが形成されている。
【0021】
滞留防止用流路25の各部分は、溶融樹脂の滞留防止及び圧力損失低減の観点から、いずれも整流プレート21Aの中心方向に延在していることが好ましい。ただし、ブレーカープレートの開口の配置によっては、図4に示すようにすべての部分を中心方向に延在させることは困難である。このような場合にあっては流路の延在方向と半径方向とのなす角度は好ましくは60°以内であり、より好ましくは45°以内であり、更に好ましくは30°以内である。
【0022】
図4に示す通り、滞留防止用流路25の最も上流側の位置とブレーカープレート10Bの開口位置が一致するように溝23Aを形成することが好ましい。このように溝23Aを形成することで、滞留防止用流路25において溶融樹脂が滞留する部分を極力排除できる。同様の観点から、溝23Aの幅とブレーカープレート10Bの開口の幅とを一致させることが好ましい。
【0023】
図8(a)は図4に示す整流プレートのA−A’線の断面図であり、図8(b)は図4に示す整流プレートのB−B’線の断面図であり、図8(c)は図4に示す整流プレートのC−C’線の断面図である。図8(a),(c)に示すように、溝23Aの深さは上流側から下流側に向けて一定であってもよいが、圧力損失の観点から図9に示すように上流側から下流側に向けて溝の深さが徐々に深くなるように設定することが好ましい。
【0024】
すなわち、図4に示すように、滞留防止用流路25には複数の貫通孔12Bが連通しており、下流に進むにつれて滞留防止用流路25を流れる溶融樹脂の流量が増加する。流量の増加に見合う程度に溝23Aを徐々に深くしていくことで、滞留防止用流路25における過大な圧力損失の発生を防止できる。滞留防止用流路25において過大な圧力損失が生じると複数の貫通孔12Bの入口側の圧力が大きくばらつくことに起因して半径方向の外側に位置する貫通孔12Bの流量が低下して当該貫通孔における溶融樹脂の滞留が生じやすくなる。溝23Aの深さを適宜設定して滞留防止用流路25における圧力損失を低くすることにより、かかる問題の発生を防止することができる。
【0025】
溝23Aの深さは、溶融樹脂の粘弾性、単位時間当りの流量などに応じて適宜設定すればよい。例えばシリンダ直径40mmの単軸押出機を使用する場合、上流側の深さが1mm〜5mmであり、下流に向かうに従って徐々に深くなり下流側の深さが2mm〜20mmの場合を例示することができる。
【0026】
滞留防止用流路25の流路断面積が小さすぎると滞留防止用流路25における圧力損失が過大になり、半径方向の外側に位置する貫通孔12Bの流量が低下して当該貫通孔における溶融樹脂の滞留が生じやすくなる。他方、滞留防止用流路25の流路断面積が大きすぎると滞留防止用流路25内における滞留や行路容積の増大による熱劣化が生じやすくなる。
【0027】
整流プレート21Aの中心部には面S3からその裏面である下流側の面(第4の面)S4に向けて貫通する排出孔28が形成されている(図8(b),図9(b)参照)。この排出孔28は、上記の滞留防止用流路25と連通しており、排出孔28を通じて下流側の配管29へと溶融樹脂を移送できるようになっている。
【0028】
排出孔28の内径(最も細い部分)も溶融樹脂の粘弾性、単位時間当りの流量などに応じて適宜設定するが、例えばシリンダ直径40mmの単軸押出機を使用する場合、0.5mm〜15mmの場合を例示することができる。排出孔28の内径が小さすぎると、排出孔28における圧力損失が過大になり、生産性が不十分となりやすい。他方、排出孔28の内径が大きすぎるとブレーカープレート10Bの面S2に沿う方向の溶融樹脂の流れが十分に発生せず、滞留防止効果が不十分となりやすい。
【0029】
図10(a),(b)は、溝23Aの流路断面の形状をそれぞれ示したものである。溝23Aにおける溶融樹脂の滞留をより一層低減するには、図10(a)に示す通り溝23Aのコーナー部23aをR形状とすることが好ましい。
【0030】
溶融樹脂がユニット20の内部をスムーズに流れるためにはブレーカープレート10Bの開口13と整流プレート21Aの溝23Aとの位置を合わせる必要がある。両者の位置合わせを容易に行うには、例えば、ブレーカープレート10Bの面S2及び整流プレート21Aの面S3の一方の突起を設け、他方にこれを嵌め込む凹部を設けるなどすればよい。なおブレーカープレート10Bと整流プレート21Aとを溶接などにより完全に一体化してもよいが、掃除のしやすさの点から両者は分離可能であることが好ましい。
【0031】
ブレーカープレート10Bに装着する濾材15としては、各種金網や金属繊維焼結フィルターなどを例示することができ、これらを単独で使用してもよいし、2枚以上重ねた積層体にして使用してもよい。
【0032】
本実施形態に係るユニット20をシリンダ50に装着するには、例えばシリンダ50のフランジ50a,50bにボルト等の締め付け具(図示せず)を設ければよい。フランジ50a,50bの間にユニット20を配置してボルトを締め付けることによってユニット20を挟持するとともに溶融樹脂が漏洩しないように密閉することができる。
【0033】
本実施形態に係るユニット20を通過させる溶融樹脂は、特に限定しないが、例えばポリエチレンやポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・脂肪酸エステル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、複数のα−オレフィンの共重合体、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリカーボネートなどを例示することができる。
【0034】
また、ユニット20は、例えば、インフレーションフィルムやTダイフィルムなどのフィルム押出成形装置やシート成形装置、押出ラミネーション装置など、公知の樹脂製品の成形加工装置に用いることができる。押出成形装置としては、市販の押出機を使用することができ、具体的には、単軸押出機、同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機等を用いることができる。同方向回転二軸押出機としては、東芝機械(株)製のTEM(登録商標)、日本製鋼所(株)製のTEX(登録商標)及びCMP(登録商標)などを例示できる。異方向回転二軸押出機としては、日本製鋼所(株)製のTEX(登録商標)及びCMP(登録商標)、並びに、神戸製鋼所(株)製のFCM(登録商標)、NCM(登録商標)及びLCM(登録商標)等を例示できる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、特に好適な例として図4に示すパターンの溝23Aが形成された整流プレート21Aを示したが、ブレーカープレートの形状や押出成形機のタイプに応じて溝のパターンを適宜変更してもよい。
【0036】
図11に示す整流プレート21Cの溝23Cは、ブレーカープレートの半径方向外側の開口位置から渦を描くように中心方向に形成されており、排出孔28へと連通している。
【0037】
図12(a)に示す整流プレートの溝23Dは、ブレーカープレートの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを直線的に連通して排出孔28に至る1本の流路と、この流路に溶融樹脂が合流するように設けられた複数の同心円状の流路とを有する。図12(b)に示す整流プレートの溝23Eは、ブレーカープレートの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを直線的に連通して排出孔28に至る6本の流路と、これらの流路に溶融樹脂が合流するようにそれぞれ設けられ、周方向に分岐する複数の流路とを有する。
【0038】
また、上記実施形態においては、溶融樹脂の滞留防止の点で好ましいという理由で貫通孔12Bの内壁面が湾曲したブレーカープレート10Bを使用する場合を例示したが、場合によってはこれの代わりに図14に示すブレーカープレート10Aを使用してもよい。また、ブレーカープレートの外形は矩形に限られず、円板状であってもよく、貫通孔の数や配置も上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
10A,10B…ブレーカープレート、12A,12B,12C…貫通孔、13…ブレーカープレートの開口、15…濾材、20…溶融樹脂整流用ユニット、21A,21B,21C…整流プレート、23A,23B,23C,23D,23E…溝、25…滞留防止用流路、28…排出孔、29…配管、50…シリンダ、52…スクリュー、F…溶融樹脂の流れ方向、S1…ブレーカープレートの上流側の面(第1の面)、S2…ブレーカープレートの下流側の面(第2の面)、S3…整流プレートの上流側の面(第3の面)、S4…整流プレートの下流側の面(第4の面)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形装置の流路に設けられる溶融樹脂整流用ユニットであって、
溶融樹脂を濾過するための濾材を保持する第1の面からその裏面である第2の面に向けて貫通する複数の貫通孔を有するブレーカープレートと、
前記ブレーカープレートの前記第2の面と当接する第3の面に形成された溝と、前記第3の面からその裏面である第4の面に向けて貫通する排出孔とを有する整流プレートと、
を備え、
前記溝は、前記第2の面と前記第3の面とを当接させた際、前記ブレーカープレートの前記貫通孔の開口に対向する位置に設けられており、当該溝と前記ブレーカープレートの前記第2の面とによって構成される滞留防止用流路が前記排出孔と連通していることを特徴とするユニット。
【請求項2】
前記滞留防止用流路は、前記第2の面における前記貫通孔の複数の開口のうちの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通し且つ前記排出孔が設けられた前記整流プレートの中心部の方向に延在する部分を有することを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項3】
前記滞留防止用流路は、前記ブレーカープレートの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通する部分を複数有し、これらの部分が下流側から上流側に向けてそれぞれ分岐していることを特徴とする請求項1又は2に記載のユニット。
【請求項4】
前記ブレーカープレートは、当該ブレーカープレートの中心部側の内壁面が前記滞留防止用流路の下流方向に湾曲した前記貫通孔を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット。
【請求項5】
前記滞留防止用流路は、上流側から下流側に向かうに従って流路断面積が大きくなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のユニット。
【請求項1】
押出成形装置の流路に設けられる溶融樹脂整流用ユニットであって、
溶融樹脂を濾過するための濾材を保持する第1の面からその裏面である第2の面に向けて貫通する複数の貫通孔を有するブレーカープレートと、
前記ブレーカープレートの前記第2の面と当接する第3の面に形成された溝と、前記第3の面からその裏面である第4の面に向けて貫通する排出孔とを有する整流プレートと、
を備え、
前記溝は、前記第2の面と前記第3の面とを当接させた際、前記ブレーカープレートの前記貫通孔の開口に対向する位置に設けられており、当該溝と前記ブレーカープレートの前記第2の面とによって構成される滞留防止用流路が前記排出孔と連通していることを特徴とするユニット。
【請求項2】
前記滞留防止用流路は、前記第2の面における前記貫通孔の複数の開口のうちの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通し且つ前記排出孔が設けられた前記整流プレートの中心部の方向に延在する部分を有することを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項3】
前記滞留防止用流路は、前記ブレーカープレートの半径方向外側の開口とこれよりも中心部側の開口とを連通する部分を複数有し、これらの部分が下流側から上流側に向けてそれぞれ分岐していることを特徴とする請求項1又は2に記載のユニット。
【請求項4】
前記ブレーカープレートは、当該ブレーカープレートの中心部側の内壁面が前記滞留防止用流路の下流方向に湾曲した前記貫通孔を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット。
【請求項5】
前記滞留防止用流路は、上流側から下流側に向かうに従って流路断面積が大きくなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−148188(P2011−148188A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11191(P2010−11191)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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