説明

溶融炉の排ガス処理装置

【課題】 ごみ焼却炉から排出される焼却灰や飛灰等の被溶融物を溶融処理する際に用いられる溶融炉の排ガス処理装置に於て、燃焼室のショートパスを防止し、可燃性ガスやDXN類を確実に燃焼させる。
【解決手段】 溶融炉炉体51からの排ガスCを燃焼させる燃焼室58と、これからの排ガスCを冷却させる減温塔59と、燃焼室58と減温塔59からのダストDを排出させるダスト排出装置62と、これに温風Eを挿入する為の温風挿入装置2とで構成し、とりわけ温風挿入装置2を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばごみ焼却炉から排出される焼却灰や飛灰等の被溶融物を溶融処理する際に用いられる溶融炉の排ガス処理装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の溶融炉としては、例えば特許文献1〜2に記載されて図4に示したものが知られている。
当該溶融炉50は、炉体51と、これに設けられて被溶融物Aを供給する被溶融物供給装置52と、炉体51の頂部に昇降可能に設けられた主電極53と、炉体51の底部に設けられて主電極53との間でアークを発生させて被溶融物Aを溶融させる炉底電極54と、溶融したスラグBを溢流させる流出口55と、炉体51からの排ガスCを処理する排ガス処理装置56と、炉体51を冷却させる炉体空冷装置57と、から構成されている。
【0003】
排ガス処理装置56は、炉体51からの排ガスCを燃焼させる燃焼室58と、これからの排ガスCを冷却させる減温塔59と、これからの排ガスC中の溶融飛灰を捕捉するバグフィルタ60と、これからの清浄ガスを誘引して煙突から大気中へ放出する誘引通風機61と、燃焼室58と減温塔59からのダストDを排出させるダスト排出装置62とを備えている。
【0004】
炉体空冷装置57は、炉体51の底部に設けられた冷却管路63と、これに冷却空気を供給したのちに大気中に放出する為の冷却送風機64と、大気中に放出する温風の一部を燃焼室58と減温室59に供給する為の供給管路65とを備えている。
ダスト排出装置62は、燃焼室58と減温塔59から排出されるダストDを搬送するダストコンベヤ66と、これと減温塔59との間に介設されて減温塔59からのダストDを密封しながら排出する二重ダンパ67と、ダストコンベヤ66からのダストDを粉砕する解砕機68と、これからのダストDを搬送する第2ダストコンベア69と、これからのダストDを密封状態で排出する第2二重ダンパ70とを備えている。
【0005】
ところが、ダスト排出装置62の二重ダンパ67は、ガスリークの防止に限界があるので、図4の鎖線矢印に示す如く、溶融炉炉体51から排出された排ガスCの一部が燃焼室58をショートパスし、ダストコンベヤ66及び二重ダンパ67を経由して減温塔59の出口部に流入してしまう。とりわけ、燃焼室58及び減温塔59の内部にダストDが付着して閉塞気味になり、燃焼室58の入口部と減温塔59の出口部との圧力差が大きくなると、ショートパスするガス量が増加すると共に、二重ダンパ67でのダストDの噛み込みやこれの駆動装置の不良に依りシール性が低下した場合も同様であった。
【0006】
減温塔59の出口部に流入した排ガスCのうちの可燃性ガス(CO,H2 )は、以降の機器等に於て燃焼される事なく煙突から排出され、とりわけ、COに就いては、排出規制値を上回る事があった。DXN類(ダイオキシン類)に就いては、活性炭の吹込みとバグフィルタ60に依って大部分が除去されるものの、燃焼室58のショートパスに依り減温塔59の出口部に計画値を越える濃度のDXN類が流入した場合には、これが排出規制値を上回る濃度で煙突から排出されてしまう。又、ショートパスした未燃の炭化水素等に依り減温塔59の下流でもDXN類が再合成する可能性があった。
【0007】
特許文献2に示す如く、二重ダンパの代わりにロータリバルブを使用した場合も、これのガスリークの防止に限界があるので、前述と同様の問題があった。加えて、ロータリバルブでのロータの回転は、ダストを攪拌させて付着を増加させるので、ロータリバルブが過負荷停止する事があった。
【0008】
又、燃焼室からのガスが図4の鎖線矢印に示す如く、ダスト排出装置62に流れ、装置内部で結露し、ダストが付着する事があった。
【0009】
【特許文献1】特開2001−132929号公報
【特許文献2】特許第3643775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
要するに、従来のものは、溶融炉炉体から燃焼室に流入した排ガスの一部が燃焼室をショートパスし、燃焼室と減温塔の共有のダスト排出装置を経由して減温塔に流入し、可燃性ガスやDXN類が燃焼せずに系外に排出される問題があった。
【0011】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、燃焼室のショートパスを防止し、可燃性ガスやDXN類を確実に燃焼させる様にした溶融炉の排ガス処理装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の溶融炉の排ガス処理装置は、基本的には、溶融炉炉体からの排ガスを燃焼させる燃焼室と、燃焼室からの排ガスを冷却させる減温塔と、燃焼室と減温塔からのダストを排出させるダスト排出装置と、ダスト排出装置に温風を挿入する為の温風挿入装置と、から構成した事に特徴が存する。
【0013】
溶融炉炉体からの排ガスは、燃焼室に依り燃焼されると共に、燃焼室からの排ガスは、減温塔に依り減温される。燃焼室と減温塔からのダストは、ダスト排出装置に依り排出される。
温風挿入装置に依り挿入された温風は、ダスト排出装置を経由して減温塔側から燃焼室側に流れているので、溶融炉内で発生した排ガスが燃焼室をショートパスして減温塔へ流入するのが防止される。従って、溶融炉炉体からの排ガス中の可燃性ガスやDXN類を燃焼室で確実に燃焼処理する事ができる。ダスト排出装置には、温風挿入装置に依り温風が挿入されているので、ダスト排出装置での結露を防止する事ができる。
【0014】
温風挿入装置は、炉体空冷装置からの温風を用いるのが好ましい。この様にすれば、既存のものを利用できるので、費用を節減できる。
【0015】
温風挿入装置は、バグフィルタ出口からの清浄ガスを用いるのが好ましい。この様にすれば、既存のものを利用できるので、費用を節減できる。
【0016】
温風挿入装置は、温風発生装置からの温風を用いるのが好ましい。この様にすれば、既存のものに負担を掛ける事がなく、所要の温風を確保できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 燃焼室、減温塔、ダスト排出装置、温風挿入装置とで構成され、とりわけダスト排出装置に温風を挿入する為の温風挿入装置を設けたので、溶融炉内で発生した排ガスが燃焼室をショートパスする事を防止できる。その結果、溶融炉炉体から排出された可燃性ガス(CO,H2 )やDXN類の全量を燃焼室で完全燃焼できる。
(2) ダスト排出装置に温風を挿入する為の温風挿入装置を設けたので、ダスト排出装置での結露を防止できると共に、ダストの付着を低減できる。その結果、ダスト排出装置の過負荷停止や内部清掃や腐食等の問題を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の溶融炉の排ガス処理装置を示す概要図である。
【0019】
本発明の排ガス処理装置1は、燃焼室58、減温塔59、ダスト排出装置62、温風挿入装置2とからその主要部が構成されて居り、プラズマ溶融炉等の溶融炉50に適用される。
【0020】
溶融炉50は、炉体51と、これに設けられて被溶融物Aを供給する被溶融物供給装置52と、炉体51の頂部に昇降可能に設けられた主電極53と、炉体51の底部に設けられて主電極53との間でアークを発生させて被溶融物Aを溶融させる炉底電極54と、溶融したスラグBを溢流させる流出口55と、炉体51からの排ガスCを処理する排ガス処理装置1と、炉体51を冷却させる炉体空冷装置57と、から構成されている。
【0021】
排ガス処理装置1は、炉体51からの排ガスCを燃焼させる燃焼室58と、これからの排ガスCを冷却させる減温塔59と、これからの排ガスC中の溶融飛灰を捕捉するバグフィルタ60と、これからの清浄ガスを誘引して煙突から大気中へ放出する誘引通風機61と、燃焼室58と減温塔59からのダストDを排出させるダスト排出装置62と、これに温風を挿入する為の温風挿入装置2とを備えている。
【0022】
炉体空冷装置57は、炉体51の底部に設けられた冷却管路63と、これに冷却空気を供給したのちに大気中に放出する為の冷却送風機64と、大気中に放出する温風の一部を燃焼室58と減温塔59に供給する為の供給管路65とを備えている。
【0023】
ダスト排出装置62は、燃焼室58と減温塔59から排出されるダストDを搬送するダストコンベヤ66と、これと減温塔59との間に介設されて減温塔59からのダストDを密封しながら排出する二重ダンパ67と、ダストコンベヤ66からのダストDを粉砕する解砕機68と、これからのダストDを搬送する第2ダストコンベア69と、これからのダストDを密封状態で排出する第2二重ダンパ70とを備えている。
【0024】
温風挿入装置2は、この例では、炉体空冷装置57から排出される温風Eを用いて居り、炉体空冷装置57の冷却送風機64と、これから大気中に放出する温風の一部をダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部及び中間部に導く為の挿入管路3とを備えている。
【0025】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
ごみ焼却炉から排出される焼却灰や飛灰等の被溶融物Aは、被溶融物供給装置52に依り溶融炉50の炉体51内に連続的に供給される。溶融炉50の主電極53と炉底電極54との間には、直流電圧が印加されてアークが発生されるので、被溶融物Aが溶融されてスラグにされる。つまり、被溶融物Aの溶融に依ってこの中にあった揮発成分や炭素がガス化し、一酸化炭素を含んだガスとなり、一方、鉄を始めとする金属、ガラス、砂等の不燃性成分が溶融状態となる。
【0026】
溶融されたスラグBは、流出口55から連続的に溢出され、図略しているが、スラグ水冷槽内に落下されて水砕スラグとなり、スラグ搬出コンベアに依ってスラグだめに送られる。
【0027】
溶融炉50内で発生した排ガスCは、炉体51の上部から排ガス処理装置1の燃焼室58に入り、ここで可燃性ガスが完全燃焼される。燃焼室58からの排ガスCは、減温塔59に依り冷却されると共に、バグフィルタ60に依り排ガスC中の溶融飛灰が捕捉されて清浄ガスになり、これが誘引送風機61に依り誘引されて煙突から大気中へ排出される。
【0028】
燃焼室58で排ガスCから分離されたダストDは、下方に落下してダスト排出装置62のダストコンベヤ66に依り搬送されると共に、減温塔59で排ガスCから分離されたダストDは、ダスト排出装置62の二重ダンパ67を介してダストコンベヤ66に依り搬送され、これらは解砕機68に依り粉砕された後、第2ダストコンベヤ69、第2二重ダンパ70を介して排出され、図略しているが、溶融集塵灰貯留槽へ貯留される。溶融集塵灰貯留槽に貯留されたダストDは、キレート処理された後に系外に排出される。
【0029】
溶融炉50が運転されると、炉体空冷装置57と温風挿入装置2を構成する冷却送風機64も運転され、冷却管路63に冷却空気が供給されて炉体51が冷却される。冷却後の温風Eは、供給管路65に依り燃焼室58と減温塔59に供給されると共に、温風挿入装置2の挿入管路3に依りダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部及び中間部に挿入され、残りが大気に放出される。
【0030】
ダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部及び中間部に温風Eが挿入されると、図1の鎖線矢印に示す如く、ダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部及び中間部とダストコンベヤ66を経由して減温塔59側から燃焼室58側に温風E´が流れるので、溶融炉50内で発生した排ガスCが燃焼室58をショートパスして減温塔59へ流入するのが防止される。
従って、溶融炉炉体51からの排ガスC中の可燃性ガスやDXN類を燃焼室58で確実に燃焼処理する事ができる。
【0031】
ダスト排出装置62の二重ダンパ67の中間部には、温風挿入装置2に依り温風Eが挿入されているので、二重ダンパ67の結露が防止されてダストDの付着が低減される。その結果、二重ダンパ67の過負荷停止、清掃、腐食等の問題を軽減できる。
ダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部には、温風挿入装置2に依り温風Eが挿入されているので、鎖線矢印に示す如く、ダスト排出装置62を構成するダストコンベヤ66、解砕機68、第2ダストコンベヤ69、第2二重ダンパ70にも温風が流れ、これらの結露も防止されてダストDの付着が低減される。その結果、これらの過負荷停止、清掃、腐食等の問題も軽減できる。
溶融炉50の運転中は、温風挿入装置2の冷却送風機64が運転されてダスト排出装置62に温風Eが常に挿入されるので、電磁弁等に依る温風Eの制御が不要になる。
【0032】
尚、温風挿入装置2は、先の例では、炉体空冷装置57からの温風Eを用いたが、これに限らず、例えばバグフィルタ60出口からの清浄ガスを用いたり、市販の温風発生装置からの温風を用いても良い。
バグフィルタ60出口からの清浄ガスを用いる場合は、図2の実線で示す如く、誘引通風機61の出口側とダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部及び中間部とを挿入管路3で接続したり、図2の二点鎖線で示す如く、バグフィルタ60の出口側とダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部及び中間部とを挿入管路3で接続すると共に、この挿入管路3に新たなファン4を設置したり、図2の一点鎖線で示す如く、図示していない温風循環ヒータとともに休炉中のバグフィルタろ布の結露防止の為に温風を循環させる温風循環ファン5の出口配管を分岐させ、ダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部および中間部とを挿入管路3で接続し、炉運転中は温風循環ファン5のみを運転し、バグフィルタ60出口の清浄ガスを挿入する。
市販の温風発生装置からの温風を用いる場合は、図3に示す如く、新たに温風発生装置6を設置すると共に、これとダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部及び中間部とを挿入管路3で接続する。
【0033】
温風Eの挿入位置は、先の例では、ダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部及び中間部であったが、これに限らず、例えばダスト排出装置62の二重ダンパ67の下部だけにしたり、ダスト排出装置62のダストコンベヤ66、解砕機68、第2ダストコンベヤ69、第2二重ダンパ70の何れか一つ又は複数箇所にしても良い。又、温風の替わりに大気を挿入しても良いが、各所の温度が低下するので、更なる温度管理が必要になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の排ガス処理装置を示す概要図。
【図2】本発明の排ガス処理装置の他の例を示す概要図。
【図3】本発明の排ガス処理装置の更に他の例を示す概要図。
【図4】従来の排ガス処理装置を示す概要図。
【符号の説明】
【0035】
1…排ガス処理装置、2…温風挿入装置、3…挿入管路、4…ファン、5…温風循環ファン、6…温風発生装置、50…溶融炉、51…炉体、52…被溶融物供給装置、53…主電極、54…炉底電極、55…流出口、56…排ガス処理装置、57…炉体空冷装置、58…燃焼室、59…減温塔、60…バグフィルタ、61…誘引通風機、62…ダスト排出装置、63…冷却管路、64…冷却送風機、65…供給管路、66…ダストコンベヤ、67…二重ダンパ、68…解砕機、69…第2ダストコンベヤ、70…第2二重ダンパ、A…被溶融物、B…スラグ、C…排ガス、D…ダスト、E,E´…温風。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融炉炉体からの排ガスを燃焼させる燃焼室と、燃焼室からの排ガスを冷却させる減温塔と、燃焼室と減温塔からのダストを排出させるダスト排出装置と、ダスト排出装置に温風を挿入する為の温風挿入装置と、から構成した事を特徴とする溶融炉の排ガス処理装置。
【請求項2】
温風挿入装置は、炉体空冷装置からの温風を用いる請求項1に記載の溶融炉の排ガス処理装置。
【請求項3】
温風挿入装置は、バグフィルタ出口からの清浄ガスを用いる請求項1に記載の溶融炉の排ガス処理装置。
【請求項4】
温風挿入装置は、温風発生装置からの温風を用いる請求項1に記載の溶融炉の排ガス処理装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−14214(P2009−14214A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173666(P2007−173666)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】