説明

溶融金属への原材料投入装置

【課題】 上蓋の設置された保持容器に収容される溶融金属に、上蓋を外すことなく且つ熱エネルギーロスを最小限に抑えて原材料を投入するこののできる投入装置を提供する。
【解決手段】 上記課題は、その上部に吊り手5を備え、その下部に原材料を吊るための回転フック6を備える外ケース2と、外ケースの内側に外ケースに対して移動可能に配置される中子3と、中子と一体的に構成される防熱板4と、を具備した原材料投入装置1であって、原材料投入装置を、吊り手を介して上蓋21の開口部に向けて下降させたとき、防熱板4が上蓋21に接触して下降を停止した後も外ケースのみ下降を継続し、これによって回転フックと中子との接触が絶たれ、中子との接触が絶たれた回転フックが原材料の重力によって回転して回転フックから原材料が外れ、回転フックから外れた原材料が溶融金属に投入されることを特徴とする原材料投入装置によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋や溶銑鍋などの保持容器に収容された溶融金属に、成分調整用合金材、精錬用造滓剤、鉄スクラップ、スラグカット用耐火物などの原材料を投入するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転炉や電気炉で精錬された溶鋼には、通常、転炉や電気炉からの出鋼時に炉周辺に設けられた原材料投入装置を介して、所定の量の成分調整用の合金鉄や金属並びに生石灰などの造滓剤が、自動的に切り出され、添加されている。しかし、添加量が少ない場合や、稀にしか添加せずしかも添加量が少ない場合には、出鋼後、取鍋などの保持容器に収容された溶鋼に投入することがある。また、連続鋳造工程において、鋳造末期に取鍋内のスラグがタンディッシュ内に流出することを防止するために使用されるスラグカット用耐火物は、出鋼時に投入すると溶鋼及びスラグと強攪拌されて溶融し、その機能を発揮し難くなることから出鋼時には投入することができず、出鋼後、取鍋に収容された溶鋼上に投入されている。
【0003】
これら合金材やスラグカット用耐火物などの原材料は重量物であり、また投入時にスプラッシュなどが発生することから作業者が保持容器の近くに寄って投入することは危険であるので、従来、クレーンで吊り上げた後に保持容器内に吊り下ろして投入されることがほとんどである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公昭63−11158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球環境の保全のみならず、熱エネルギー削減による製造コスト削減の観点から、省エネルギーが図られており、溶鋼などを収容する保持容器には、保持容器の開口部を覆う上蓋が設置されるようになった。
【0005】
保持容器内の溶鋼に原材料を投入するに当たり、上蓋を取り外せば、原材料を保持容器内の所定の位置に容易に投入することができるが、熱エネルギーのロスが大きくなり好ましくない。当然ながら上蓋が設置されたままでは投入することができない。そこで、上蓋に開口部を設け、開口部を介して吊り下げることが行われるようになってきた。
【0006】
しかしながら、開口部から吊り下げて投入する場合には、クレーンで吊った原材料を目視で観察する必要があり、目視観察のためには開口部を大きくせざるを得ず、熱エネルギーのロスが大きくなるという問題があった。また、遠隔から操作しなければならず、クレーンを操作する操作員の熟練度に応じて作業時間が大幅に変わるという問題もあった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上蓋の設置された保持容器に収容される溶融金属に、成分調整用の合金材やスラグカット用耐火物などの原材料を投入するに当たり、上蓋を取り外すことなく且つ熱エネルギーロスを最小限に抑え、しかも、クレーンなどを操作する操作員の熟練度に拘わることなく容易に投入することのできる、溶融金属への原材料投入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発明に係る溶融金属への原材料投入装置は、その上部に吊り上げられて運搬されるための吊り手を備え、その下部に原材料を吊るための回転フックを備える外ケースと、該外ケースの内側に外ケースに対して移動可能に配置される中子と、該中子と一体的に構成される防熱板と、を具備し、上蓋の設置された保持容器内に収容される溶融金属に原材料を投入するための原材料投入装置であって、該原材料投入装置を、前記吊り手を介して上蓋の開口部に向けて下降させたとき、前期防熱板が上蓋に接触して下降を停止した後も外ケースのみ下降を継続し、これによって回転フックと中子との接触が絶たれ、中子との接触が絶たれた回転フックが原材料の重力によって回転して回転フックから原材料が外れ、回転フックから外れた原材料が溶融金属に投入されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る原材料投入装置を用いることで、成分調整用合金材、精錬用造滓剤、鉄スクラップ、スラグカット用耐火物などの原材料を、上蓋の設置された保持容器に収容される溶融金属に投入するに当たり、上蓋を取り外すことなく且つ熱エネルギーロスを最小限に抑え、しかも、クレーンなどを操作する操作員の熟練度に拘わることなく容易に且つ確実に投入することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、取鍋に収容された溶鋼に原材料を投入する場合を例として、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1〜3は、本発明の実施の形態を示す図であって、図1は、本発明に係る原材料投入装置を用いて原材料を取鍋内に投入する状況を示す概略図、図2は、本発明に係る原材料投入装置の斜視図、図3は、本発明に係る原材料投入装置の半断面図である。
【0011】
図1〜3に示すように、本発明に係る原材料投入装置1は、大別すると外ケース2と、中子3と、防熱板4と、の3つの部分で構成されている。外ケース2は、内部が空洞になっており、その上端部には、クレーン或いはホイストなどのフック27を掛けるための吊り手5が設置され、また、その下端部には、ワイヤー25などを介して原材料26を吊るための回転フック6が設置されている。回転フック6は、外ケース2に固定されるピン13によって取り付けられており、ピン13に対して自在に回転するようになっている。但し、回転フック6は、図4に示すように、円形の場合に対して1/3程度の部分が欠落しており、従って、回転フック6の重心はピン13に対して偏心した位置にあり、そのため、切り欠け部を上側にしようと回転する。図4は、回転フック6の拡大図である。
【0012】
外ケース2の下端部には、回転フック6に掛けたワイヤー25などがクレーン、ホイストなどによって原材料投入装置1を搬送する際に回転フック6から外れないようにするための外れ止め8が、外ケース2に取り付けられたピン14を介して設置されている。外れ止め8もピン14に対して回転自在になっているが、外ケース2の下端部には、外れ止めストッパー11が設置されており、外れ止め8は、外れ止めストッパー11によって回転範囲が制限されている。つまり、外れ止め8は、外れ止めストッパー11に接するまでは回転するが、それよりも回転することはできず、従って、外れ止め8が回転フック6から外れないように構成されている。また、外ケース2の内面側下部には、中子3の移動を制限するための下限ストッパー7が設置されている。
【0013】
このような外ケース2の内部には、中子3が設置されている。中子3は、防熱板4に設置された枠15を貫通して配置される連結ピン9と、連結ピン9に取り付けられた金具16に設置されるピン12とによって、防熱板4と一体的に構成されている。中子3の下端部には、繋止板10が設置されている。この繋止板10は、回転フック6の切り欠け部と噛み合うようになっている。中子3は、外ケース2の内部空洞を移動可能であるが、下限ストッパー7によって移動範囲が制限されている。つまり、下限ストッパー7と、中子3の下端部3Aとが接触することで、中子3は下限ストッパー7を超えては移動しないようになっている。
【0014】
防熱板4は、これらの図では円形であるが、その形状はどのようであっても構わない。また、その大きさも、上蓋21の開口部21Aを覆う大きさ以上であるならば、どのようであっても構わない。
【0015】
このように構成される本発明に係る原材料投入装置1を用いて、合金鉄、造滓剤、鉄スクラップ、スラグカット用耐火物などの原材料26を、取鍋20に収容された溶鋼24に投入する方法を説明する。
【0016】
先ず、投入しようとする原材料26をワイヤー25で吊り上げることができるようにするために、原材料26をワイヤー25に繋ぐ。ここではワイヤー25を使用しているが、ワイヤー25に限るものではなく、原材料26を吊り上げられるものである限り、どのようなものであっても構わない。但し、高温雰囲気で使用することから、耐熱性及び防火性に優れるものが好ましい。そして、ワイヤー25を回転フック6の切り欠け部に掛ける。
【0017】
次いで、クレーン或いはホイストなどの搬送設備のフック27を原材料投入装置1の吊り手5に掛け、クレーン或いはホイストなどの搬送設備によって原材料投入装置1を巻き上げる。吊り手5は外ケース2に設置されており、外ケース2はクレーンなどの搬送設備によって吊り上げられることで、フック27の上昇と同時に上昇する。中子3は、外ケース2の内部を移動するが、その下端部3Aが下限ストッパー7と当接することで外ケース2に保持され、図3に示すように、下限ストッパー7と接触した状態で外ケース2とともに吊り上げられる。中子3は、下限位置に存在するので、中子3の先端部の繋止板10は、回転フック6の切り欠け部と噛み合った状態になる。
【0018】
クレーンなどの搬送設備の巻き上げを続けることで、やがて、原材料26も空間に吊り上げられる。原材料26が空間に吊り上げられると、ワイヤー25は回転フック6の中心よりも偏心した位置に載っているので、原材料26の重力によって回転フック6は回転しようとするが、回転フック6の切り欠け部の端面6Aが、図3に示すように繋止板10と接触し、回転フック6の回転は停止され、原材料26を吊るワイヤー25は、回転フック6のフック凹部6Bの近傍に保持される。つまり、原材料26が空間に吊り上げられた状態では、ワイヤー25はフック凹部6Bの近傍位置に存在し、原材料26の重力によって、回転フック6にはピン13に対して図4においては時計周りのモーメント、即ち原材料26が回転フック6から外れようとするモーメントが作用する。
【0019】
原材料26を吊り上げた状態で、クレーン或いはホイストなどの搬送設備を、上蓋21を設置した取鍋20の上方所定位置に移動させ、図1に示すように、上蓋21の開口部21Aに向けて原材料投入装置1を吊り下ろす。上蓋21は、鉄皮22と耐火物23とで構成されている。尚、上蓋21には、クレーン或いはホイストなどの搬送設備で吊り上げるための吊り手が設置されているが、図1では省略している。
【0020】
開口部21Aを通って原材料投入装置1を下降させる。原材料投入装置1の防熱板4が上蓋21に接すると、防熱板4と一体的に構成された中子3は、防熱板4とともに下降を停止する。防熱板4が上蓋21に接してからも、クレーン或いはホイストなどの搬送設備の巻き下げを続けて行う。搬送設備の巻き下げを継続することで、外ケース2のみが下降を継続する。外ケース2の下降とともに回転フック6も下降し、繋止板10の下端よりも回転フック6の位置が鉛直方向下方になった時点で、回転フック6の端面6Aと繋止板10との接触が絶たれ、回転フック6は原材料26の重力によるモーメントで回転する。これにより、ワイヤー25は回転フック6から外れ、原材料26が溶鋼24に投入される。回転フック6は原材料26の投入後は切り欠け部を上方にするべく回転する。クレーンなどの搬送設備の巻き下げが過剰になっても、外ケース2は、中子3の上端部に接触するため、それ以上に外ケース2は下降することがない。
【0021】
原材料26の投入後、クレーン或いはホイストなどの搬送設備の巻き上げを開始する。この巻上げにより外ケース2が上昇し、回転フック6は繋止板10に噛み合わさる。そして、外ケース2の上昇によって下限ストッパー7が中子3に接触し、中子3及び防熱板4も一体となって開口部21Aから吊り上げられる。
【0022】
このように、本発明に係る原材料投入装置1は、開口部21Aを有する上蓋21を設置した取鍋20などの保持容器において使用することを前提とするが、上蓋21が設置されていなくても、上蓋21に代わるものが設置されていれば、使用することができる。投入の際に、上蓋21の開口部21Aは、防熱板4によって覆われるため、熱エネルギーのロスを抑制することができる。開口部21Aに原材料投入装置1が挿入されていないときには、熱エネルギーロスを防止するために、防熱板4に相当するものを用いて開口部21Aを覆っておくことが好ましい。上蓋21に、開口部21Aを覆うためのハッチ式の蓋などを設置しておいてもよい。
【0023】
以上説明したように、本発明に係る原材料投入装置1を用いて、成分調整用合金材、精錬用造滓剤、鉄スクラップ、スラグカット用耐火物などの原材料26を、上蓋21の設置された取鍋20に収容される溶鋼24に投入することで、上蓋21を取り外すことなく且つ熱エネルギーロスを最小限に抑え、しかも、クレーンなどを操作する操作員の熟練度に拘わることなく容易に且つ確実に投入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る原材料投入装置を用いて原材料を取鍋内に投入する状況を示す概略図である。
【図2】本発明に係る原材料投入装置の斜視図である。
【図3】本発明に係る原材料投入装置の半断面図である。
【図4】本発明に係る原材料投入装置を構成する回転フックの拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
1 原材料投入装置
2 外ケース
3 中子
4 防熱板
5 吊り手
6 回転フック
7 下限ストッパー
8 外れ止め
9 連結ピン
10 繋止板
11 外れ止めストッパー
12 ピン
13 ピン
14 ピン
15 枠
16 金具
20 取鍋
21 上蓋
22 鉄皮
23 耐火物
24 溶鋼
25 ワイヤー
26 原材料
27 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上部に吊り上げられて運搬されるための吊り手を備え、その下部に原材料を吊るための回転フックを備える外ケースと、該外ケースの内側に外ケースに対して移動可能に配置される中子と、該中子と一体的に構成される防熱板と、を具備し、上蓋の設置された保持容器内に収容される溶融金属に原材料を投入するための原材料投入装置であって、該原材料投入装置を、前記吊り手を介して上蓋の開口部に向けて下降させたとき、前期防熱板が上蓋に接触して下降を停止した後も外ケースのみ下降を継続し、これによって回転フックと中子との接触が絶たれ、中子との接触が絶たれた回転フックが原材料の重力によって回転して回転フックから原材料が外れ、回転フックから外れた原材料が溶融金属に投入されることを特徴とする、溶融金属への原材料投入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−234360(P2006−234360A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53286(P2005−53286)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】