説明

溶解物濃度の測定方法及び測定装置、並びに色調の検出方法及び検出装置

【課題】 光の透過率又は吸光度に基づいて試料中の溶解物濃度を測定するに当たり、装置の小型化や低コスト化を達成できるとともに、発光体に起因した測定誤差も生じにくい溶解物濃度の測定方法を提供する。
【解決手段】 試料への試薬の添加により発色した被測定液S1等に発光体3からの光を透過させ、この透過光を、被測定液S1を挟むように、発光体3に対向して置かれた受光体4にて受光することにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、試料中の溶解物濃度を測定する溶解物濃度の測定方法であって、発光体3は可視光域を含んだ光を発するとともに、受光体4は、被測定液S1を透過した発光体3からの光のうち、可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光、グリーン領域成分の光、及びブルー領域成分の光の何れかを受光するか、又はこれらを組み合わせた複数の色領域成分の光をそれぞれ受光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過率又は吸光度に基づいて試料中の溶解物濃度を測定する溶解物濃度の測定方法及び測定装置に関するものである。また、本発明は、被検出液による光の吸収作用に基づいて、この被検出液の色調を検出する色調の検出方法及び検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体中に溶解している溶解物の濃度は、吸光光度法により求められる場合も多い。この吸光光度法では、例えば、溶解物を有する試料に試薬を添加し、この試料を発色させて被測定液とした後、この被測定液を透明な測定セル中に収容する。つぎに、この被測定液に、測定セルを介して、発光体からの、吸収度合いの高い特定波長の光を透過させて、この被測定液に一部の光を吸収させた後、この透過光を受光体で受光し、このときの透過光強度を計測する。つづいて、このとき測定した透過光強度と、別に測定した、例えば透明液に対する特定波長の光の透過光強度とから吸光度(又は透過率)を求めることにより、この溶解物に関して予め既知濃度の試料により作成した、吸光度(又は透過率)と溶解物濃度との関係を示す検量グラフを用いて、試料中の溶解物濃度を求める。
【0003】
ここで、種類の異なる複数の溶解物の濃度を調べる場合には、それぞれ波長の異なる光を発する複数の発光体を使用して、溶解物の濃度を測定したり(特許文献1参照)、光源からの光を複数の特定波長に調整できる発光体を使用して、溶解物の濃度を測定している。また、溶解物の濃度によって被測定液が色変わりする場合にも、それぞれ波長の異なる光を発する複数の発光体を使用して、溶解物の濃度を測定している。
【0004】
【特許文献1】特開2006−275753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、波長の異なる複数の発光体を使用すると、受光体の数も複数必要となるため、装置の高コスト化や大型化を招いてしまうという問題があった。また、複数の発光体を同時使用すると、光が相互に干渉しやすく、測定値に誤差が出やすいという問題があった。さらに、発光体として特定波長のLEDを使用した場合、その光の波長は、製造ロット毎に違いが生じたり、出力の大小によっても変動しやすいため、測定値に誤差が出やすいという問題があった。
【0006】
また、光源からの光を複数の特定波長に調整できる発光体を使用した場合も、装置の高コスト化や大型化を招いてしまうという問題があった。
【0007】
一方、発光体からの光を被検出液に当て、この被検出液からの透過光強度を受光体で計測することにより、光の吸収作用に基づいて被検出液の色調を検出する場合でも、上記溶解物濃度を測定する場合と同様な問題が生じる。
【0008】
この発明は、以上の点に鑑み、光の透過率又は吸光度に基づいて試料中の溶解物濃度を測定するに当たり、装置の低コスト化や小型化を達成できる溶解物濃度の測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。また、この発明は、被検出液による光の吸収作用に基づいて、この被検出液の色調を検出するに当たり、装置の低コスト化や小型化を達成できる色調の検出方法及び検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の請求項1記載の発明は、試料への試薬の添加により発色した被測定液、又は溶解物によって着色している試料である被測定液に発光体からの光を透過させ、この透過光を、前記被測定液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた受光体にて受光することにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、前記試料中の溶解物濃度を測定する溶解物濃度の測定方法であって、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被測定液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光、グリーン領域成分の光、及びブルー領域成分の光の何れかを受光するか、又はこれらを組み合わせた複数の色領域成分の光をそれぞれ受光することを特徴とする。
【0010】
この発明では、受光体は、被測定液を透過した発光体からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光とグリーン領域成分の光とブルー領域成分の光の、何れかを受光して、その光の強度を計測する。このため、例えば、試薬の添加により被測定液が溶解物によって黄色に発色する場合には、受光体により、黄色の補色である青色、すなわち、ブルー領域成分の光の強度を計測し、この光の吸光度等を算出することにより、被測定液中等の溶解物濃度を容易に求めることができる。
【0011】
また、この発明では、受光体は、被測定液を透過した発光体からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光とグリーン領域成分の光とブルー領域成分の光とを組み合わせた、複数の色領域成分の光を受光して、それぞれの光の強度を計測している。このため、例えば、被測定液の色が、溶解物濃度の大小によって、赤色の補色から青色の補色に変わるように変化する場合には、受光体により、レッド領域成分の光とブルー領域成分の光の強度をそれぞれ計測し、これらの光の吸光度等を算出することにより、被測定液中の溶解物濃度を容易に求めることができる。もちろん、被測定液の色が単純で無い場合や、被測定液の色が溶解物濃度によって種々に変化する場合には、受光体により、レッド領域成分の光とグリーン領域成分の光とブルー領域成分の光の、何れをも受光し、3つの領域成分の光の吸光度等をそれぞれ算出して、被測定液中の溶解物濃度を求める。
【0012】
この発明の請求項2記載の発明は、試料への試薬の添加により発色した被測定液、又は溶解物によって着色している試料である被測定液に発光体からの光を透過させ、この透過光を、前記被測定液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた受光体にて受光することにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、前記試料中の溶解物濃度を測定する溶解物濃度の測定装置であって、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被測定液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光、グリーン領域成分の光、及びブルー領域成分の光の何れかの強度を計測するためのフィルタか、又はこれらを組み合わせた複数の色領域成分の光の強度をそれぞれ計測するためのフィルタを有していることを特徴とする。
【0013】
この発明の請求項3記載の発明は、被検出液中を透過した発光体からの光を、前記被検出液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた受光体にて受光することにより、前記被検出液の色調を検出する色調の検出方法であって、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被検出液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光と、グリーン領域成分の光と、ブルー領域成分の光の、それぞれの強度を計測することを特徴とする。
【0014】
この発明では、受光体は、被検出液を透過した発光体からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光とグリーン領域成分の光とブルー領域成分の光とを別々に受光して、それぞれの光の強度を計測しているので、光の3原色に対応すると考えられる、これら3つ色領域成分の光の強度を用いて、被検出液による光の吸収作用により、被検出液の色調を容易に求めることができる。
【0015】
この発明の請求項4記載の発明は、被検出液中を透過した発光体からの光を、前記被検出液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた受光体にて受光することにより、前記被検出液の色調を検出する色調の検出装置であって、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被検出液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光と、グリーン領域成分の光と、ブルー領域成分の光の強度をそれぞれ計測するためのフィルタを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明の請求項1及び請求項2記載の発明によれば、どのような溶解物の濃度を測定する場合でも、簡単な1組の発光体と受光体があればよく、例えば従来のように、溶解物の種類毎に波長の異なる発光体を使用したり、濃度によって色変わりを生じる溶解物濃度を測定する場合に複数組の発光体や受光体を使用する必要がないので、測定コストの低減や測定装置の小型化を図ることができる。このため、複数の発光体を同時に使用する場合に生じる光の相互干渉を生じさせることもない。また、この発明によれば、発光体は、可視光域を含む光を発すればよく、従来のもののように特定波長の光のみを発する必要がないので、発光体(例えば、LED)の製品ロットによる波長のばらつきや、出力の経時変化による影響を受けにくく、いつも精度の良い測定を行うことができる。
【0017】
この発明の請求項3及び請求項4記載の発明によれば、被検出液の色調がどのようなものであっても、色調の検出には1組の発光体と受光体とがあればよく、検出する色調の数によって複数組の発光体や受光体を用いたり、色変わりを生じる色調を検出する場合に複数組の発光体や受光体を用いる必要がないので、検出コストの低減や検出装置の小型化を図ることができる。このため、複数の発光体を同時に使用する場合に生じる光の相互干渉を生じさせることもない。また、この発明によれば、発光体は、可視光域を含む光を発すればよく、特定波長の光のみを発する必要がないので、発光体(例えば、LED)の製品ロットによる波長のばらつきや、出力の経時変化による影響を受けにくく、いつも精度の良い色調の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
実施形態1.
図1はこの発明の一実施の形態に係る濃度測定装置の主要部を示しており、図2はこの濃度測定装置の作用説明図である。
【0019】
濃度測定装置1は、例えば、工業用水や生活用水等に溶解する、溶存酸素、リン酸、アルカリ度成分、硬度成分、シリカといった溶解物の濃度を、光の透過率や吸光度を用いて簡便に測定するものである。この濃度測定装置1は、図1で示されるように、内部に被検出液S1や調整液S0が通される測定セル2と、測定セル2の一方の側面側に設けられ、この測定セル2内に計測用の光を発する発光体3と、測定セル2の他方の側面側に設けられ、この測定セル2を透過した発光体3からの光を受光する受光体4と、発光体3や受光体4に対する入出力部5と、測定セル2に被検出液S1や調整液S0を供給する液供給ライン6と、測定セル2からの被検出液S1や調整液S0を排出する液排出ライン7と、入出力部5からの出力信号(透過光強度信号)が入力される演算処理装置8とを有している。なお、液供給ライン6には、チューブポンプ60とストレーナ61とが設けられている。
【0020】
測定セル2は、図1及び図2で示されるように、左側面部21と右側面部22と前面部と後面部との間に、被測定液S1や調整液S0が通される、一定断面の流路20が形成されているとともに、下面部に、液供給ライン4が連結され、上面部に、液排出ライン5が連結されている。また、測定セル2には、左側面部21と右側面部22の中央部の、互いに対向する位置に、円形の透明部21a,22aが形成されている。そして、例えば、測定セル2の透明部22a側に、発光体3が配置され、この発光体3に対向するように光軸を一致させて、測定セル2の透明部21a側に、受光体4が配置されている。
【0021】
発光体3は、測定セルG内に光を発し、この光を、測定セル2内の被測定液S1中や調整液S0中に透過させるものである。この発光体3には、可視光域を含んだ光(白色光)を発する、例えば、発光ダイオード(LED)のような光源が使用される。
【0022】
受光体4は、発光体3から発せられ、測定セル2を介して、被測定液S1中や調整液S0中を透過した透過光を受光して、これらの透過光の強度を計測するものである。この受光体4は、3つのフォトダイオードと、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光(以下赤色帯域光という)、グリーン領域成分の光(以下緑色帯域光という)、及びブルー領域成分の光(以下青色帯域光という)のみをそれぞれ透過させる3つのカラーフィルタF、すなわち、赤色(R)フィルタ、緑色(G)フィルタ、青色(B)フィルタとを有している。すなわち、この受光体4には、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1と、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2と、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3とを有したRGBカラーセンサが使用されており(図3参照)、この受光体4により、被測定液S1等を透過した光のうち、各フィルタを透過した赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度が同時に計測される。なお、Rフィルタは、赤色帯域光のうち赤色光を最も透過し、Gフィルタは、緑色帯域光のうち緑色光を最も透過し、Bフィルタは、青色帯域光のうち青色光を最も透過する。
【0023】
入出力部5は、発光体3と受光体4用の制御回路を備えている。図3は発光体3と受光体4とを含めた入出力部5内の回路図である。図中、符号D1は、Rフィルタを備えたフォトダイオードであり、符号D2は、Gフィルタを備えたフォトダイオードであり、符号D3は、Bフィルタを備えたフォトダイオードであり、これらが一体になって、受光体4を形成している。また、図中、符号Lは、発光体3となる発光ダイオード(LED)であり、符号C1,C2,C3は、各フォトダイオードD1,D2,D3用の主回路であり、符号O1,O2,O3は、各フォトダイオードD1,D2,D3用のオペアンプ(演算増幅器)である。受光体4から出力された各帯域光の透過光強度の信号は、オペアンプO1,O2,O3を通って、演算処理装置8に伝達される。
【0024】
演算処理装置8は、受光体4から出力された、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の光の強度信号に基づいて、各帯域光についての時間平均強度を算出したり、特定色が吸収された光の透過光強度と吸収のない光の透過光強度とを用いて、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率を算出したり、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率から溶解物濃度を算出する演算部を有すとともに、溶解物の種類毎に、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率と溶解物濃度との関係を示す表等を記憶する記憶部や、溶解物濃度等を表示する表示部を有している。
【0025】
つぎに、この濃度測定装置1を用いて試料中の溶解物(例えば、リン酸イオン)の濃度を測定する手順について説明する。
まず、リン酸3ナトリウム(Na3PO4)を溶解した一定量(40mL)の試料に、試薬(モリブデン酸アンモニウムとアステル酸の混合液)を一定量(例えば4mL)添加後、この試料を、20〜40℃の状態で約15分間放置し充分に発色させて、被測定液S1を作る。この場合、被測定液S1の色は、溶解物(リン酸イオン)の濃度によって濃淡が異なる。
【0026】
つづいて、光の吸収が生じない透明な調整液S0(例えば、純水や発色前の透明な試料)を、チューブポンプ50(例えば、EYELA製SMP21)を使用して、液排出ライン6から測定セル2に、10mL/分の流量で3分間程度通水した後、通水を止め、1分間の間、発光体3からの光を、測定セル2の透明部21a,22aを通して、被測定液S1中に照射(発射)させる。このことにより、発光体3からの可視光域を含んだ光は、被測定液S1を透過して受光体4により受光される。この場合、受光体4は、発光体3からの被測定液S1の透過光を、RGBの3つのカラーフィルタFを介して受光するので、受光体4は、可視光域の光の波長帯を略3分割した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度を同時に計測する。そして、演算処理装置8は、1分間にわたる受光体4からの出力値を平均して、被測定液S1による光の吸収が無い場合(透過率100%)の、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均の光強度を算出する。
【0027】
つぎに、試薬を加えて一定時間放置し、充分に発色した被測定液S1を、上記調整液S0の場合と同様に、測定セル2に10mL/分の流量で3分間通水して、通水を止め、その後1分間の間、発光体3からの光を、被測定液S1中に透過させて、受光体4により受光させる。受光体4は、受光時に、被測定液S1により一部の光の吸収がなされた、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度を計測する。演算処理装置8は、1分間にわたる受光体4からの出力値を平均して、被測定液S1により一部の光の吸収がなされた、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均光強度を算出した後、透過率100%の調整液S0を用いて計測された、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均光強度を用いて、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光についての、それぞれの吸光度(又は透過率)を算出する。そして、演算処理装置8は、特定の溶解物(リン酸イオン)について記憶している、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光についての、それぞれの吸光度(又は透過率)と溶解物の濃度との関係から、試料中の溶解物の濃度を算出して表示する。
【0028】
ここで、被測定液S1は、例えば、溶解物の濃度に比例するような色の濃さを示しており、発色した色光の補色光を、この濃さに比例する割合で吸収する。したがって、被測定液S1を透過した光のうち、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)と、被測定液S1中の溶解物の濃度との関係を事前に求めておけば、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)により、試料中の溶解物濃度は容易に算出できる。
【0029】
なお、被測定液S1が、試薬の添加により、例えば黄色に発色している場合は、この被測定液S1は、赤色帯域光と緑色帯域光をほとんど吸収せず、補色光である青色帯域光のみを吸収すると考えられるので、光の強度は、Bフィルタを備えたフォトダイオードにより計測される青色帯域光のみを考慮すればよい。また、被測定液S1が、例えば、青色に発色している場合は、この被測定液S1は青色帯域光をほとんど吸収せず、赤色帯域光と緑色帯域光を吸収すると考えられるので、光の強度は、RフィルタとGフィルタとを備えたフォトダイオードにより計測される赤色帯域光と緑色帯域光の強度を考慮すればよい。
【0030】
また、被測定液S1の色は、例えば、溶解物の濃度に従って、特定色から他の色にしだいに色変わりする場合もある。この場合でも、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)と、被測定液S1中の溶解物の濃度との関係を事前に求めておけば、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)により、被測定液S1中の溶解物濃度は容易に算出できる。
【0031】
つぎに、濃度測定装置1を用いて試料中の溶解物濃度を測定する方法(以下、濃度測定方法という)の作用効果について説明する。
【0032】
この濃度測定方法では、受光体4が、被測定液S1を透過した発光体3からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とを受光して、それぞれの光の強度を計測し、このことによって、これらの色帯域光の吸光度(又は透過率)を算出している。このため、この濃度測定方法では、どのような溶解物濃度を測定する場合でも(例えば、被測定液S1の色が何色であっても、又は、被測定液S1の色が、溶解物の濃度の大小によって特定色から他の色に変化する場合でも)、簡単な1組の発光体3と受光体4があればよく、例えば従来のように、溶解物の種類毎に波長の異なる発光体を使用したり、濃度によって色変わりを生じる溶解物濃度を測定する場合に複数組の発光体や受光体を使用する必要がないので、測定コストの低減や測定装置の小型化を図ることができる。このため、複数の発光体を同時に使用する場合に生じる光の相互干渉を生じさせることもない。
【0033】
また、この濃度測定方法では、発光体3は、可視光域を含む光を発すればよく、従来のもののように特定波長の光のみを発する必要がないので、発光体(例えば、LED)の製品ロットによる波長のばらつきや、出力の経時変化による影響を受けにくく、この発光体3を用いて、いつも精度の良い測定を行うことができる。
【0034】
また、この濃度測定方法では、発光体3や受光体4の受発光部に汚れや泡等が付着して光の減衰効果が生じても、従来の測定方法で使用される、発光体(特定波長の光を発する)や受光体に比べて、その影響を受けにくく、測定に支障を生じさせにくい。
【0035】
なお、受光体4は、被測定液S1の色が、赤色の補色、緑色の補色、又は青色の補色のみを示す場合には、それぞれ、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3のうち、何れか1つを有しておればよい。また、受光体4は、被測定液S1の色が上記3つの補色の中間色を示す場合、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3のうち、何れか2つのものを有しておればよい。
【0036】
さらに、受光体4には、RGBカラーセンサ以外に、CCDセンサやCMOSセンサを用いたものであってもよい。
【0037】
また、濃度測定方法に関する以上の説明は、濃度測定装置1についても、同様に当てはまる。
【0038】
さらに、図4で示されるように、液排出ライン6に、ストレーナ61とともに定流量弁62や電磁弁63を設け、これらを使用して、被測定液S1を測定セル2に供給するようにしてもよい。また、図4で示されるように、測定せる2に試薬供給ライン9を設け、ポンプ90を用いて、タンク91中の試薬を直接、測定セル2に供給して、この試薬と液供給ライン6から供給された試料とを測定セル2中で撹拌し、この測定セル2中で、試薬により発色した被測定液S1を作るようにしてもよい。
【0039】
また、以上の説明では、試料へ試薬を添加することにより、溶解物濃度に従って発色させた被測定液S1について述べているが、試料自身が溶解物により着色し、その濃淡等がこの溶解物濃度に従って定まる場合には、試料自身が被測定液S1となり、試薬の添加は不要である。
【0040】
つぎに、この濃度測定方法による濃度の測定結果と、分光光度計を用いたJIS分析法による濃度の測定結果とを、具体的な測定データを示しつつ比較説明する。なお、この濃度測定方法による測定データは、被測定液S1を透過した発光体3からの光を、この発光体3に対向して置かれた反射板で反射して、この反射光を、被測定液S1中に再度透過させた後、発光体3側にある受光体4で受光して得られたものであるが、光の透過に関するデータとしてはほぼ同一視できるので、この場合の測定データを、この濃度測定方法による測定データとして説明する。
[測定例1]
まず、リン酸イオン濃度の測定について説明する。
【0041】
リン酸3ナトウムを純水に溶解して、リン酸イオン濃度が、0、1、2、3、4、5mg/Lとなるように調整した試料を準備し、これに、JIS8224−1993のモリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法(光源の波長は880nm)に基づき、試薬を添加し、この試料を発色させて被測定液S1を作る。つづいて、これらの被測定液S1の吸光度を、同上のJIS8224−1993に基づき、分光光度計(島津製作所製UV1700)を用いて測定した。この場合、参考として、赤色光、緑色光、青色光に対応する、波長が、630nm、550nm、470nmの光源を用いた吸光度の測定も行った。つづいて、これらの被測定液S1の吸光度を、濃度測定装置1を使用した、この濃度測定方法により、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とについて、それぞれ測定した。この場合、測定セル2に試薬添加前の透明な試料を通液した際の発光体3からの光を受光体4で受光した場合の各帯域光の強度を、透過率100%のものとした。この透過率100%に関する測定は、溶解物の複数の濃度に対して1回だけ行ってもよいが、測定精度を上げるためには、濃度毎に行うのがよい。
【0042】
図5の(a)は、この濃度測定方法と分光光度計を用いた方法とで測定された、種々のリン酸イオン濃度に対する吸光度の値を示している。また、図5の(b)は、この濃度測定方法で測定された赤色帯域光と、分光光度計を用いた方法で測定された、波長が880nmと630nmの光とについての、吸光度とリン酸イオン濃度との関係をグラフで示している。
【0043】
図5の(a)から、分光光度計を用いた方法では、光源の波長が880nm(赤外光)の場合に、リン酸イオン濃度に対して吸光度の変化が大きく、特定の光源を1つ選択する場合には、波長が880nmの光源を選択することが好ましいことがわかる。また、図5の(a)から、この濃度測定方法では、赤色帯域光の場合が、緑色帯域光や青色帯域光の場合に比べて、リン酸イオン濃度に対して吸光度の変化が大きく、特定の帯域光を1つ選択する場合には、赤色帯域光を選択することが好ましいことがわかる。また、図5の(b)から、赤色帯域光や波長が630nmの光の場合でも、リン酸イオン濃度に対する吸光度の変化が大きい(グラフの傾きが大きい)ので、これらの光を用いた場合でも、リン酸イオン濃度の測定に支障がないことがわかる。なお、赤色帯域光の場合は、波長が630nmよりも長い波長領域の光の影響をうけることにより、波長が630nmの光の場合より、吸光度の変化が大きくなっていると考えられる。
【0044】
[測定例2]
つぎに、カルシウム硬度の測定について説明する。なお、カルシウム硬度成分が溶解している試料は、試薬(トリエタノールアミン80%、エタノール20%、エリオクロムブラックT0.025%)を添加すると発色するが、その色は、硬度の値(濃度)によって変化する。
【0045】
塩化カルシウム2水和物を純水に溶解して、カルシウム硬度として、0、2、5、10mgCaCO3/Lに調整した試料を準備し、これらの試料50mgに4mgの試薬を添加し、充分に撹拌・発色させて被測定液S1を作る。つぎに、これらの被測定液S1の吸光度を、波長が、630nm、550nm、470nmの光を用いて、分光光度計(島津製作所製UV1700)により測定した。つづいて、これらの被測定液S1の吸光度を、濃度測定装置1を使用した、この濃度測定方法により、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とについて、それぞれ測定した。この場合、測定セル2に試薬添加前の透明な試料を通液した際の発光体3からの光を受光体4で受光した場合の各帯域光強度を、透過率100%のものとした。
【0046】
図6の(a)は、この濃度測定方法と分光光度計を用いた方法とで測定された、種々のカルシウム硬度に対する吸光度を示し、図6の(b)は、この濃度測定方法と分光光度計を用いた方法で測定された吸光度と、カルシウム硬度との関係をグラフで示している。
【0047】
図6の(b)から、分光光度計を用いた方法では、波長が630nmの光の場合、カルシウム硬度の上昇に対し吸光度が減少するようにグラフN1が変化し、波長が550nmの光の場合、カルシウム硬度の上昇に対し吸光度が上昇するようにグラフN2が変化し、かつ、カルシウム硬度が一定値を超えると、グラフN1とグラフN2とが交差して、波長550nmの光の吸光度が波長630nmの光の吸光度より大きくなることが分かる。一方、この濃度測定方法でも、吸光度のグラフに関して、赤色帯域光の場合のグラフM1をグラフN1に近づけることができ、緑色帯域光の場合のグラフM2をグラフN2に近づけることができるので、事前にカルシウム硬度に関する吸光度の検量グラフを赤色帯域光と緑色帯域光について作成しておけば、赤色帯域光と緑色帯域光の各吸光度から、カルシウム濃度を容易に算出できる。なお、(赤色帯域光の吸光度/緑色帯域光の吸光度)の値とと、カルシウム硬度との関係を示す検量グラフを作成しておけば、これらの帯域光の吸光度の比の値を求めることにより、カルシウム硬度を簡易に算出できる。
【0048】
実施形態2.
ところで、濃度測定装置1は、被検出液S2の色調(色合い)を検出する場合にも使用できる。そこで、以下に、この濃度測定装置1と同様な色調検出装置1Aを使用した、被検出液S2の色調の検出方法(以下、色調検出方法という)について説明する。なお、色調検出装置1Aについて、濃度測定装置1と同一機能を有する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
まず、色調検出装置1Aと濃度測定装置1との違いについて説明する。
色調検出装置1Aは、種々の色調を検出する必要があることから、その受光体4は、例えば、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1と、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2と、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3の、3つのフォトダイオードを有している必要がある。また、色調検出装置1Aの演算処理装置8Aは、被検出液S2の種々の色調に対して、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率との関係を示す表等を記憶する記憶部と、受光体4から出力された、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各光強度信号に基づいて、時間平均の光強度を算出したり、特定色が吸収された光の強度と吸収のない光の強度(代表的な値を記憶しておいてもよい)とを用いて、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率を算出する演算部と、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率に基づいて、被検出液S2の色調を上記記憶部から選択する選択部と、選択された色調を色番号や色見本等で表示する表示部とを有している。
【0050】
なお、色調検出装置1Aが特定色調の検出に特化されている場合には、演算処理装置8Aは、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光について、吸光度や透過率を算出せず、それぞれの光の強度につき一定の演算(例えば、赤色帯域光強度/緑色帯域光強度、赤色帯域光強度/青色帯域光強度など)を行って、その演算値をもとに、被検出液が特定色調をしているか否かの検出を行うようにしてもよい。
【0051】
この色調検出方法では、測定セル2に通された後、測定セル2中で静止した被検出液S2に、発光体3からの光を当てて透過させ、一部の光が被検出液S2に吸収された透過光を、受光体4にて受光することにより、被検出液S2の色調を検出する。この場合、受光体4は、被測定液S1を透過した発光体3からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とを受光して、それぞれの光の強度を計測する。このため、この色調検出方法では、どのような色調を検出する場合でも、又は、時間とともに変化する色調を検出する場合でも、簡単な1組の発光体3と受光体4があればよく、検出する色調の数によって波長の違う複数の発光体を用いる必要がないので、検出コストの低減や検出装置の小型化を図ることができる。このため、複数の発光体を同時に使用する場合に生じる光の相互干渉を生じさせることもない。
【0052】
また、この色調検出方法では、発光体3は、可視光域を含む光を発すればよく、特定波長の光のみを発する必要がないので、発光体(例えば、LED)の製品ロットによる波長のばらつきや、出力の経時変化による影響を受けにくく、この発光体3を用いて、いつも精度の良い測定を行うことができる。
【0053】
さらに、この色調検出方法では、発光体3や受光体4の受発光部に汚れや泡等が付着して光の減衰効果が生じても、従来の測定方法で使用される、発光体(特定波長の光を発する)や受光体に比べて、その影響を受けにくく、測定に支障を生じさせにくい。
【0054】
なお、色調検出方法に関する以上の説明は、色調測定装置1Aについても、同様に当てはまる。
【0055】
また、受光体4は、RGBカラーセンサ以外に、CCDセンサやCMOSセンサを用いたものであってもよく、色フィルタについても、赤、青、緑以外の帯域のものを用いても同様な効果を得ることができる。
【0056】
さらに、この色調検出方法により、着色液(例えば、不凍液)のプロセス側へのリーク検知や、染色工場、食品工場(お茶など)、メッキ工場、塗装ブースなどの排水処理水の管理や、紙パルプ工場におけるスメルト溶解液(緑液)のクラリファイヤー処理(清澄処理)時の良不良(良好なら、上澄み液は緑色を呈するが、不良(不十分)なら、緑色から赤味を帯びるように変色してくる)の検知等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の一実施の形態に係る濃度測定装置の全体構成を示す図である。
【図2】濃度測定装置の作用説明図である。
【図3】入出力部内等の電気配線図である。
【図4】他の濃度測定装置の説明図である。
【図5】濃度測定装置を使用した場合と分光光度計を使用した場合における、リン酸イオン濃度に対する吸光度の測定値を示す図であり、(a)はリン酸イオン濃度と吸光度の値とを表にまとめたものであり、(b)はリン酸イオン濃度と吸光度との関係をグラフで示したものである。
【図6】濃度測定装置を使用した場合と分光光度計を使用した場合における、カルシウム硬度に対する吸光度の測定値を示す図であり、(a)はカルシウム硬度と吸光度の値とを表にまとめたものであり、(b)はカルシウム硬度と吸光度との関係をグラフで示したものである。である。
【符号の説明】
【0058】
1 濃度測定装置
1A 色調測定装置
3 発光体
4 受光体
F フィルタ
H1 被測定液
H2 被検出液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料への試薬の添加により発色した被測定液、又は溶解物によって着色している試料である被測定液に発光体からの光を透過させ、この透過光を、前記被測定液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた受光体にて受光することにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、前記試料中の溶解物濃度を測定する溶解物濃度の測定方法であって、
前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被測定液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光、グリーン領域成分の光、及びブルー領域成分の光の何れかを受光するか、又はこれらを組み合わせた複数の色領域成分の光をそれぞれ受光することを特徴とする溶解物濃度の測定方法。
【請求項2】
試料への試薬の添加により発色した被測定液、又は溶解物によって着色している試料である被測定液に発光体からの光を透過させ、この透過光を、前記被測定液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた受光体にて受光することにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、前記試料中の溶解物濃度を測定する溶解物濃度の測定装置であって、
前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被測定液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光、グリーン領域成分の光、及びブルー領域成分の光の何れかの強度を計測するためのフィルタか、又はこれらを組み合わせた複数の色領域成分の光の強度をそれぞれ計測するためのフィルタを有していることを特徴とする被測定液中の溶解物濃度の測定装置。
【請求項3】
被検出液中を透過した発光体からの光を、前記被検出液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた受光体にて受光することにより、前記被検出液の色調を検出する色調の検出方法であって、
前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被検出液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光と、グリーン領域成分の光と、ブルー領域成分の光の、それぞれの強度を計測することを特徴とする色調の検出方法。
【請求項4】
被検出液中を透過した発光体からの光を、前記被検出液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた受光体にて受光することにより、前記被検出液の色調を検出する色調の検出装置であって、
前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被検出液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光と、グリーン領域成分の光と、ブルー領域成分の光の強度をそれぞれ計測するためのフィルタを有していることを特徴とする色調の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−151605(P2010−151605A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329877(P2008−329877)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】