説明

溶質−配位子錯体による飲料の貯蔵安定性の延長

本発明は、飲料の保存料系およびこの飲料の保存料系を含む飲料製品を提供する。この飲料の保存系は、少なくとも16週間の期間に亘り密封容器内の飲料における微生物による腐敗を防ぐ。本発明は、健康および/または環境の懸念を引き起こす従来の保存料の使用を減少させるかまたはなくす。特に、本発明は、シクロデキストリン−抗菌剤錯体を含む飲料製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本発明は、ここにその全てを引用する、2009年8月7日に出願された仮特許出願第61/086850号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、飲料の保存料系およびこの飲料の保存料系を含む飲料製品に関する。特に、本発明は、健康によい成分および環境にやさしい成分に対する消費者の需要を満たすのに適した配合を有する飲料の保存料系に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの食品および飲料製品は、長期間にわたり製品において腐敗性微生物(例えば、かび、酵母、細菌)の増殖を阻止することにより製品の保存期間を延長させるために化学保存料を含んでいる。しかしながら、現在使用されているある種の保存料は、健康および/または環境に有害な作用を有することが分かっているか、または十分に安定ではない。したがって、これらの有害な保存料を含まないが、それでも長期の保存期間を有する食品および飲料製品の市場需要がある。また、食品および飲料製品における天然成分の消費者需要もある。
【0004】
例えば、安息香酸およびその塩が、保存料として飲料製品に一般に使用されている。しかしながら、安息香酸およびその塩は、アスコルビン酸(ビタミンC)と反応して、発ガン性物質であるベンゼンを形成し得る。熱と光がこの反応の速度を上昇させ、よって、高温条件下または明るい条件下に置かれた飲料製品の製造および貯蔵がベンゼンの形成を加速させる。飲料水中のベンゼンの摂取は公衆衛生上の懸念であり、世界保健機関(WHO)および米国と欧州連合の政府機関を含むいくつかの管理機関が、飲料水中のベンゼン含有量の上限を、それぞれ、10ppb、5ppbおよび1ppbに設定した。
【0005】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩も一般的な飲料製品の保存料である。EDTAは、金属イオンを封鎖し、触媒酸化反応に金属イオンが関与するのを防ぐ金属イオンキレート剤である。高濃度のEDTAは、細菌の外膜において必要な金属が封鎖されるために、細菌にとって毒性である。しかしながら、EDTAは、生分解性でもなく、従来の廃水処理中に除去もされない。EDTAなどの扱いにくいキレート剤は、主にその持続性と強力な金属キレート化特性のために、環境上の懸念である。EDTAの広範な使用と多くの環境条件下でのおそい除去のために、多くの欧州の表層水中の最も豊富な人為的化合物との地位が確立された。欧州におけるEDTAの河川濃度が10〜100μg/Lの範囲にあると報告され、EDTAの湖沼濃度が1〜10μg/Lの範囲にあると報告されている。廃水の流出を受けた米国の地下水におけるEDTA濃度は1〜72μg/Lの範囲にあると報告され、EDTAは排水の影響を受けたトレーサであることが分かった。高濃度のEDTAは、飲料水生成井戸中の回収水の比率が多いことに相当する。
【0006】
廃水および表層水中にキレート剤が高濃度で存在すると、河川の堆積物および処理汚泥から重金属を再結集させる可能性があるが、低濃度および環境に関連する濃度では、金属溶解性に非常にわずかしか影響がないようである。高濃度のキレート剤は、土壌における金属(例えば、Zn,Cd,Ni,Cr,Cu,Pb,Fe)の輸送を向上させ、埋立地から放射性金属の望ましくない輸送を向上させてしまう。低濃度のキレート剤は、プランクトンや藻類の増殖を刺激するかまたは減少させるかもしれないのに対し、高濃度では常に活性を阻止する。キレート剤は、急性曝露の際には多くの形態の生命に対して非毒性である。長期間にわたる低レベル曝露の影響は知られていない。ほ乳類による高濃度のEDTAの摂取は、金属の排出を変え、細胞膜の浸透性に影響を与え得る。
【0007】
ポリリン酸塩は、別の一般的な飲料製品の保存料である。しかしながら、ポリリン酸塩は、水溶液中では安定ではなく、周囲温度で急激に分解してしまう。ポリリン酸塩の分解により、酸性度の変化などの、飲料製品中に不満足な知覚問題が生じてしまう。また、低下した濃度のポリリン酸塩により抗菌作用が減少するために、飲料製品の保存期間が損なわれてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
微生物に対して非常に効果的なある種の抗菌剤があるが、その抗菌剤は、溶液にならないので、飲料においては効果的ではない。本発明は、飲料中で効果的であるように抗菌剤を可溶化させる、飲料に使用するための新規の保存料系の提供に関する。
【0009】
本発明は、健康上および/または環境上の有害な影響を有する、または十分な安定性のない、現在使用されている保存料少なくとも1種類の代替品としての、飲料に使用するための新規な保存料系の提供に関する。本発明はさらに、知覚の影響力が改善された新規な飲料の保存料系を提供する。本発明はさらに、ソルビン酸の濃度が減少したおよび/または安息香酸を含まない保存料系を提供する。いくつかの国々には、食品および飲料製品におけるソルビン酸の使用に規制による制限があり、ここでは、許容濃度は、腐敗性微生物の増殖をそれ自体で阻止するのに必要な量より少ない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様によれば、シクロデキストリンおよびこのシクロデキストリンと錯体を形成できる抗菌剤を含む、抗菌の効果的な量のシクロデキストリン−抗菌剤錯体を含み、pHが2.5から7.5である飲料の保存料系であって、少なくとも16週間の期間に亘り密封容器内の飲料の微生物による腐敗を防ぐ飲料の保存料系が提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、飲料成分と、シクロデキストリンおよびこのシクロデキストリンと錯体を形成できる抗菌剤を含む、抗菌の効果的な量のシクロデキストリン−抗菌剤錯体を含み、pHが2.5から7.5である飲料の保存料系であって、少なくとも16週間の期間に亘り密封容器内の飲料の微生物による腐敗を防ぐ飲料の保存料系とを含む飲料製品が提供される。
【0012】
本発明のまたは本発明のある実施の形態のこれらと他の態様、特徴、および利点が、以下の開示および例示の実施の形態の説明から当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、pH7.5以下のpHを有し、少なくとも16週間に亘り保存される飲料に特に適した保存料系に関する。この保存料系は、シクロデキストリン−抗菌剤錯体を含む。特定の水不溶性抗菌剤を可溶化するためにシクロデキストリンを使用して、効果的な保存料系を提供できることを発見した。本発明に有用なそのような不溶性抗菌剤の例としては、プロピルパラベン、メトキシケイ皮酸エステル、およびトランス,トランス−2,4−デカジエナールが挙げられる。
【0014】
本発明は、植物性菌糸または飲料中に懸濁されたときに植物性形態へと発芽できるカビ胞子のいずれかによって起こり得る飲料の腐敗を防ぐのに特に効果的である。この保存料系によって阻止される菌類形態としては、酵母、カビおよびヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)およびことによるとブレタノマイセス属(Brettanomyces)に生じるような菌類の二形性形態が挙げられる。カビ胞子は、本発明の保存料系の存在によって不活化されないかもしれないが、それらの胞子は、本発明の保存料系の存在下で発芽が制止されるか、もしくは発芽の際に生じるカビの植物性形態が、少数の細胞周期複製を超えた増殖が制止されるかのいずれかである。
【0015】
本発明は、飲料の保存料系およびその保存料系を含む飲料製品に関する。この保存料系は、微生物の表面への特定の活性抗菌剤の有効性を向上させるために、賦形剤(シクロデキストリン)を利用する。どのような分子の抗菌活性も賦形剤の恩恵を受け、低いトポロジカル極性表面積(TPSA)を示す。言い換えると、分子が示す極性が低いほど、抗菌剤として機能する可能性が高くなる。飲料の保存に関して、低い極性の化学物質は減少した水溶性を示すという点で、低い極性は問題を示す。水は、その極性のために良好な溶媒である。水分子のサイズが比較的小さいために、典型的に、多くの水分子が溶質の1つの分子を取り囲むことができる。水の部分的に負の双極子は、溶質の正に帯電した成分に引きつけられる。同様に、負に帯電した溶質は、水の部分的に正の双極子に引きつけられる。それゆえ、イオン性または極性物質(酸、アルコールおよび塩)は、水相中に極めて溶けやすい。非極性分子は、水分子との相互作用から「除外」される。水分子には、非極性物質を「囲い込む」様式で互いに相互作用する傾向がある。この現象は、水分子が、非極性表面とのファン・デル・ワールスの相互作用に関与するよりも、互いに水素結合することがエネルギー的により好ましいことを反映している。分子の極性が低いほど、水溶液系(飲料)中に懸濁されたときに、その分子が合体するまたは凝集する傾向が大きくなる。あるタイプの化合物について、凝集は空気と水の界面で生じ得、ここで、その分子のより無極の部分が実際に、表面から空気中に突出する。
【0016】
そのような凝集が生じる場合、凝集現象(相分離または沈殿物)の開始の一般に認識された分析的または巨視的証拠はないであろう。そのような状況下で、その物質は、実際にそうであるよりも「溶けやすく」見えるであろう。凝集体は、溶液中に均一に分布している(均質に)かもしれないが、個々の分子はそうではない。分子が抗菌活性を有する場合、これらの現象は、化合物の最小発育阻止濃度がその化合物の計算された可溶性限界を超えるという外見上は矛盾した所見に集合的に反映されるであろう。分子レベルでは、その矛盾は、1)化合物の非凝集形態が抗菌活性を示すが、凝集した分子は示さない場合、および2)凝集体における分子の数が非凝集分子の数をはっきり超えている場合には、容易に説明される。この現象が生じた場合、異なる溶媒(水、DMSOおよびエタノール)の存在下での化合物に関するはっきりと異なるMIC値を定義することができるかもしれない。DMSOおよびエタノールは、水よりも極性が多少小さく、よって、分子が凝集する傾向が小さいはずである。
【0017】
そのような凝集体が形成した証拠が存在する。熱力学的制約により、凝集体は、特定の密度の溶質が得られたときにだけ形成でき、凝集体が100分子の数を超えることが指示される。そのように凝集した分子は、有機体の表面でかき乱されない境界層を貫通するとは予測されないであろう。ある場合において、シクロデキストリンの添加により、凝集体における分子の分散が可能になり、微生物の表面でのかき乱されない境界層を横切る通過が促進されるであろう。
【0018】
そうでなければ不溶性の抗菌剤がシクロデキストリンを含む錯体の一部である場合、溶液中で可溶化して、腐敗性微生物の生長を防ぐようにその微生物の代謝を中断するように働く、続いて起こる生物物理学的相互作用を生じさせることができるであろう。シクロデキストリンを含む錯体により、抗菌剤が飲料中に可溶化できるであろうから、密封容器内の飲料中の腐敗性微生物の増殖が、少なくとも16週間の期間に亘り阻止されるであろう。その上、シクロデキストリンにより抗菌剤が溶液中に入れるであろうから、従来の保存料を使用した場合よりも低濃度の抗菌剤しか必要とされない。それゆえ、飲料中の保存料系の風味の影響を減少させるかまたは最小にでき、本発明の飲料製品は、従来の保存料を使用した飲料と比べて、優れた風味、芳香、および品質を含む、驚くほど優れた知覚の影響を有する。
【0019】
食品および飲料に全て天然物質を使用するという需要が高まっている。シクロデキストリンは天然物質である。シクロデキストリンと錯体を形成するであろう化合物もまた、全て天然の状態で入手できる。
【0020】
本発明の態様は、シクロデキストリン(配位子またはホスト)と抗菌活性を備えた物質(基質またはゲスト)との間の、錯体を生成する相互作用に関し、ここで、錯体は、少なくとも16週間の期間に亘り飲料の保存料系における幅広い腐敗性微生物の生長を防ぐための作用物として、その物質自体よりも錯体の使用が有利に働くという特徴を示す。
【0021】
シクロデキストリンは、錯体薬物のために医薬および化粧品産業にしばしば用いられる。シクロデキストリンは、溶解を向上させたり、溶解性を向上させたり、もしくは有害な化学反応から物質を保護するための、またはシクロデキストリン保存料との錯体において化学物質の知覚上の影響を緩和するための効力を向上させたりするであろう。例えば、ニコチンの好ましくない味覚がシクロデキストリンとの錯体により緩和され、タバコの渇望を減少させるために用いられる薬物組成物にその物質を使用することが可能になる。それに加え、シクロデキストリンは、それと錯体を形成する揮発性物質の見掛けのまたは観測された蒸気圧を減少させることができる。
【0022】
特定の抗菌性化合物が、飲料の保存料としての使用に適するであろう様式でシクロデキストリンと錯体を形成するとは予測されていなかった。この化合物は、保存料として働くのに十分な量でシクロデキストリンと錯体を形成する必要があるだけでなく、保存料として機能するのに必要な期間に亘り安定なままであり、製品の味覚または他の知覚属性に悪影響を及ぼさない必要があるであろう。例えば、ある分子は、シクロデキストリンに容易に結合する(より可溶性である)かもしれないが、一度、溶解状態になると、微生物を殺すのに十分な量で、シクロデキストリンから放出さないかもしれない。
【0023】
本発明の態様は、改善された抗菌効力、製品の安定化に必要な保存料の低下した濃度、抗菌性物質の改善された知覚への影響、および濃縮溶液、ブレンド操作または完成飲料中への抗菌剤の改善された溶解速度を提供する。
【0024】
本発明の態様によれば、表Iからの1種類以上の化学物質が、表IIに列記された1種類以上のシクロデキストリンと錯体を形成する。表Iからの物質の抗菌効果が、シクロデキストリンを含まない同じ化学物質に観察されるものよりも向上している。さらに、表Iからの物質の化学的安定性は、シクロデキストリンを含まない同じ化学物質に観察されるものよりも向上している。例えば、ソルビン酸は水溶液中で急激に分解することが知られている。シクロデキストリンとの錯体におけるソルビン酸はより安定であることが実証されており、これにより、保存料としてより低濃度のソルビン酸の使用が可能になるであろう。
【0025】
さらに、表Iからの物質の好ましくない知覚特徴は、シクロデキストリンを含まない同じ化学物質に観察されたものと比べて緩和されるであろう。
【0026】
表Iからの物質の溶解速度は、シクロデキストリンを含まない同じ化学物質に観察されたものと比べて向上しているであろう。例えば、酸としてのソルビン酸は、そのまま水に入れられたときでさえ、溶液に入るのが非常に遅い。時には、安息香酸、ソルビン酸またはケイ皮酸などの弱酸保存料が、他の成分(酸など)が急激に加えられたときに、溶液から「塩析」する。ソルビン酸は水溶液中で急激に分解する。シクロデキストリンとの錯体における物質は、一般に、溶液に入り、より急激な速度でそうなる傾向にある。
【0027】
シクロデキストリンは、ドーナッツに見られる構造にそっくりの、中空の錐状構造を有する環状オリゴ糖類(砂糖)である。サイズ、疎水性、極性および表面積に関する特定の物理的性質を有する化学物質は、ゲスト分子がシクロデキストリンの環またはドーナツにより取り囲まれるように、シクロデキストリンの中空部内に収容された官能基と相互作用させることができる。しばしば、この相互作用は、そのゲスト分子の1つ以上の物理的または化学的特徴を遮蔽するように働く。遮蔽された特徴が特定の機能に関して好ましくない程度まで、その錯体は、錯体を形成していない分子よりも優れた利点を提供する。時には、ゲスト分子は、シクロデキストリンの外部にある側基とも相互作用するかもしれない。この相互作用により、錯体が形成される。ここでは、シクロデキストリンは配位子またはホストと称され、シクロデキストリンと相互作用する分子は、ゲストまたは溶質である。ホストのゲストに対する比は、一般に、1:1または2:1であるが、他の比も可能である。
【0028】

特定の化合物は、抗菌剤としての活性を有するが、その基本的機能が飲料の規定の保存期間中に腐敗性微生物の生長を防ぐことであろう、飲料中の成分としての使用が好ましくない二次的特徴も有する。例えば、ある物質は、飲料中での溶解度を超える濃度で抗菌活性を有するであろう。別の化合物は、抗菌活性を有するかもしれないが、全ての潜在的な腐敗性微生物の破壊を行うことのできるよりも速く、水溶液系中で分解するであろう。
【0029】
シクロデキストリンは、これらと他の欠点(味覚、安定性、光に対する過敏性)を克服し、少なくとも16週間の期間に亘り腐敗性微生物の生長を防ぐために、シクロデキストリンとの錯体において特定の分子を使用することができる。
【0030】
シクロデキストリンの化学的性質は十分に確立されているが、ある分子がシクロデキストリン分子と相互作用して錯体を形成するか否か、およびその相互作用の程度をどのように予測するかについては、当該技術分野における専門家の中でも理解の程度は限られている。ある錯体が、所望の最終結果に対するゲスト分子の特定の欠点を克服する程度についての理解はずっと限られている。ある錯体(ホストおよびゲスト)がその系内に含まれる他の成分とどのように相互作用するかについては、さらに理解されていない。これらの事実に基づいて、保存料として使用するためのここに定義されたホストとゲストの関係は、特有であり、自明ではない。
【0031】
本発明の態様は、2.5から7.5、特に2.5から4.5のpHを有する幅広い飲料製品を、酵母、カビおよび様々な酸耐性細菌による腐敗に対して保存することに関する。製品の保存は、単に、ここに記載された化学物質の添加によって行うことができるが、その化学物質の働きを、熱、様々な波長の照射、圧力またはそれらの組合せなどの保存の純粋に物理的な形態で補うことも可能である。
【0032】
それ自体の保存料系のpHは、特に関係ない。ほんの微量が飲料に加えられ、その飲料のpHが支配する。この保存料系を含有する飲料のpHは、任意の規定の値に調節することができる。この保存料系は、その規定のpHで機能的であるべきである。シクロデキストリン、抗菌性物質、およびその含有錯体は、一般に、pHのみの結果として、分解されないが、「含まれる」抗菌剤の一部分はpHの影響を受けるであろう。
【0033】
2つの化学物質が、錯体の形成をもたらすような様式で一緒に引き合わされる。錯体における化学物質の一方は、表Iに列記されたタイプのシクロデキストリンである。錯体における他方の化学物質は、表IIに列記されたような公知の抗菌活性を有する物質である。しかしながら、列記された抗菌剤の全てが、全ての温度範囲に適しているわけではないであろう。特定の抗菌剤は、錯体を形成するのに特に適しており、その錯体形態における飲料の保存料として効果的であることが分かった。
【0034】
一般に、錯体は、抗菌剤のシクロデキストリンに対する比が1:1となるように存在する。しかしながら、1:2、1:3、1:4、2:1、2:3、および3:1を含む他の比も存在することが可能である。1:1のタイプの錯体が図1に示されており、ここでは、表IIからの化学物質の1つの分子(例示の環構造)が、表Iのリストからの1つの分子(中空錐状体)の空洞内に嵌る。
【表1】

【表2】

【0035】

【0036】
文字Lは表Iからの化合物を表し、文字Sは表IIからの化合物を表し、錯体はLn:Snと表すことができ、ここで、下付文字nは、錯体に関与したLまたはSいずれかの数である。Lの1分子がSの1分子との錯体を形成する場合、その錯体はLおよびSに関して1:1であり、この錯体はL11と略書きされる。一般的に言えば、形態L11が優位を占めるが、表Iからの化合物の表IIからの化合物に対する比にわずかに変動が生じても差し支えない。他の錯体形態の非包括的な例としては、L1213、またはL2131またはL22およびL33である。
【0037】
錯体に関与しているときに、表IIからの化学物質は、同じ化学物質の同じ錯体を形成していない形態とは異なる特徴を示す。シクロデキストリンとの錯体にあるときに、表IIからの化合物が示すであろう特徴としては、1)その化学物質の遊離形態と比べてその化合物の向上した抗菌活性、2)向上した溶解性、3)水溶液中への向上した溶解速度、および4)飲料中の化学物質の向上した安定性が挙げられる。向上した安定性は、酵素分解からの保護、光化学反応からの保護、または熱または圧力などの物理的作用因子からの保護を反映するであろう。5)改善されたまたはより好ましい知覚特徴(芳香または風味)。
【0038】
これらの5つの特徴の内の1つ以上を示すことが、飲料製品における保存料系としてのシクロデキストリン−抗菌剤錯体の用途において好ましい。
【0039】
本発明において、抗菌剤は、約10mg/Lと約1000mg/Lとの間、約20mg/Lと約800mg/Lとの間、約30mg/Lと約600mg/Lとの間、約50mg/Lと約500mg/Lとの間、約75mg/Lと約250mg/Lとの間、および約100mg/Lと約200mg/Lとの間の濃度で飲料中に存在する。
【0040】
当該技術分野において一般に理解されるように、「保存する」、「保存料」、および「保存」という用語は、保存すべき物が、腐敗、分解、または変色からどれだけ長く維持されるかに関する標準的な期間は与えない。「保存」の期間は、素材に応じて幅広く様々であって差し支えない。期間が述べられていない場合、ある組成物が「保存料」として作用するのに必要とされる期間を推測することは難しいまたは不可能である。
【0041】
ここに用いたように、「保存する」、「保存料」、および「保存」という用語は、少なくとも16週間の期間に亘り、腐敗性微生物の増殖に対して保護される食品または飲料製品、またはその増殖を阻止できる組成物を称する。一般に、その製品は、任意の所定の温度への曝露時間に制限することなく、貯蔵、輸送、および陳列中に経験する全温度範囲(例えば、0℃から40℃、10℃から30℃、20℃から25℃)を含む周囲条件下で保存される。
【0042】
「最小発育阻止濃度」(MIC)は、定義に標準的な期間が含まれていない別の用語である。一般に、MICは、ある物質を含まない正の対照と比べて、1つのタイプの微生物の増殖をはっきりと阻止する、その物質の濃度を表す。任意の所定のMICは、阻止が行われる必要のある規定の期間を意味するものではない。ある物質は、実験の最初の24時間における観察可能なMICを示すが、48時間後の正の対照に対してはっきりしたMICを示さないかもしれない。
【0043】
一般に、本発明の飲料の保存料系または飲料製品は、約1.0mM以下、例えば、約0.5mMから約0.75mM、約0.54mM以下、の範囲の、クロム、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、カルシウム、マグネシウム、および鉄の陽イオンの総濃度を有するべきである。本発明は、必要に応じて、金属陽イオンを除去するように処理された付加水を有してよい。米国特許第6268003号明細書の教示とは反対に、好ましい処理方法は、逆浸透および/または電気脱イオンなどの物理的プロセスによるものである。米国特許第6268003号明細書に教示された化学的手段による処理は、許容されるが、好ましくない。水の硬度を減少させるために化学的手段を使用すると、しばしば、ここに記載した本発明を損なうように働く特定の一価の陽イオン、例えば、カリウム陽イオンの濃度が増加してしまう。ある例示の実施の形態において、付加水は、クロム、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、カルシウム、マグネシウム、および鉄の金属陽イオンの総濃度を約1.0mM以下に減少させるために、逆浸透、電気脱イオンまたはその両方により処理されたものである。
【0044】
本発明のある例示の実施の形態は、フローサイトメトリーなどの方法によって検定される細胞機能を崩壊させることが分かった、モノテルペンおよび/または弱酸を含み、各々は、1.1から5.0の範囲のオクタノール/水分配係数LogPを有する。この弱酸は、主に、4未満のpHでプロトン化形態で存在するはずである。そのような弱酸の非限定的例は、トランス−ケイ皮酸およびソルビン酸である。それに加え、ヒドロキシ安息香酸エステルが含まれてもよい。本発明の飲料の保存料系および飲料製品中に金属イオン封鎖剤と共に含まれた場合、保存料の効果のためには、予測されるよりも低い濃度のモノテルペンおよび/または弱酸しか必要ない。次いで、金属イオン封鎖剤により拘束される金属陽イオンは、モノテルペンおよび/または弱酸を分解するのに利用できなくなり、微生物の細胞膜が、これらの抗菌性化合物に対してより浸透性になる。本発明のある例示の実施の形態は、約500mg/L以下、例えば、約150mg/L以下、約25mg/Lから約200mg/Lの範囲の濃度でモノテルペン、弱酸、またはそれらの混合物を含む。本発明のある例示の実施の形態は、約50mg/Lから約150mg/Lの範囲の濃度でトランス−ケイ皮酸を含む。本発明のある例示の実施の形態は、約500mg/Lから約800ppmの範囲の濃度でソルビン酸を含む。
【0045】
本発明の飲料の保存料系または飲料製品のある例示の実施の形態は、最小レベルのカリウム陽イオンを有する。カリウム陽イオンがないことは、微生物が、モノテルペン、弱酸、およびヒドロキシ安息香酸エステルなどの保存料を積極的に追い出すのを妨げ、それゆえ、これらの保存料の抗菌効果を向上させる。この要因は、付加水の処理が、カリウムイオンの濃度の増加の原因となり得るイオン交換などの化学的方法を含まないべきであることが何故好ましいかの理由の内の1つである。ある例示の実施の形態において、カリウムイオンの濃度は約150mg/L以下、例えば、約75mg/L以下、約15mg/L以下である。
【0046】
本発明による飲料製品は、非発泡性(still)飲料と炭酸飲料の両方を含む。ここで、炭酸飲料という用語は、アルコールを含まない液体として摂取されることが意味され、CO2の0.2体積以上の二酸化炭素濃度を有するように作製された、水、果汁、香味料および甘味料の任意の組合せを含む。「CO2の体積」という用語は、液体中に吸収された二酸化炭素の量を意味するものと理解され、ここで、1体積のCO2が、25℃で製品1リットル当たり1.96グラムの二酸化炭素(CO2)(0.0455M)と等しい。炭酸飲料の非包括的な例としては、ソフトドリンクの様式で炭酸化された風味の付いたセルツァー(登録商標)炭酸水(seltzer waters)、ジュース、コーラ、レモンライム、ジンジャーエール、およびルートビア飲料、並びにビタミン類、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、脂質、またはそれらの高分子などの、代謝活性物質の存在から健康またはウェルネスの恩恵を提供する飲料が挙げられる。そのような飲料を、1種類以上の栄養補給食品を含有するように配合することも可能である。ここで、「栄養補給食品」は、専門誌または教科書において立証されたような一般的なまたは特定の健康の恩恵またはウェルネスの意識のいずれかを最小に有することが示された物質である。しかしながら、栄養補給食品は、必ずしも、特定のタイプの病状を治療または予防のいずれかを行うように働く必要はない。
【0047】
ここで、「非発泡性飲料」という用語は、アルコールを含まない液体飲料の様式で摂取されることを意味され、0.2体積以下しか二酸化炭素を含まない、水と成分との任意の組合せである。非発泡性飲料の非包括的な例としては、風味の付いた水、紅茶、コーヒー、ネクター、ミネラルドリンク、スポーツ飲料、ビタミン水、果汁含有飲料、パンチまたはこれらの飲料の濃縮形態、並びに少なくとも約45質量%の果汁を含有する飲料濃縮物が挙げられる。そのような飲料は、ビタミン類、アミノ酸、タンパク質系、炭水化物系または脂質系の物質が補給されていてもよい。上述したように、本発明は、炭酸または非発泡性の、果汁含有製品を含む。「果汁含有飲料」または「ジュース飲料」は、炭酸であるか、または非発泡性であるかにかかわらず、果物などの天然の液体分画中に懸濁できるか、または可溶性にできる、果物、野菜または木の実もしくはそれらの混合物の成分のいくつかまたは全てを含有する製品である。
【0048】
「野菜」という用語は、ここに用いたように、果実および非果実の両方であるが、塊茎、葉、外皮、およびそうではないと記載されない限り、果汁または飲料香味料として提供される任意の穀物、木の実、豆および芽などの植物の可食性部分を含む。地域の、国の、または地区の規制機関により指示されない限り、特定の物質(果肉、ペクチンなど)の選択的な除去は、果汁の改質と考えられない。
【0049】
例として、果汁製品およびジュース飲料は、リンゴ、クランベリー、洋ナシ、ピーチ、プラム、アプリコット、ネクタリン、ブドウ、チェリー、干しブドウ、ラズベリー、西洋スグリ、ブラックベリー、ブルーベリー、イチゴ、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、パッションフルーツ、マンダリン、ミラベル、トマト、レタス、セロリ、ほうれん草、キャベツ、クレソン、タンポポ、大黄、ニンジン、砂糖大根、キュウリ、パイナップル、カスタードアップル、ココナツ、ザクロ、グアバ、キウイ、マンゴー、パパイヤ、スイカ、羅漢果、カンタロープ、バナナまたはバナナピューレ、ライム、タンジェリン、およびそれらの混合物の果物から得ることができる。好ましい果汁は柑橘類の果汁であり、最も好ましいものは、非柑橘類果汁、リンゴ、洋ナシ、クランベリー、イチゴ、ブドウ、パパイヤ、マンゴーおよびチェリーである。
【0050】
様々な果汁濃縮物の全てを利用できるわけではない。本発明は、少なくとも特定の金属陽イオン種の存在が度を超えない場合、実質的に100%の果汁である配合物を保存するために使用できる。別の可能性は、特定の金属陽イオン種の濃度を低下させるような様式でその果汁を処理することであろう。同様の課題が、典型的に少なくとも95%の果汁を含有する果汁飲料に生じる。10%ほどの高い果汁濃度を含有する配合物が本発明により保存されるであろうし、10%未満または5%未満の果汁を含有する飲料が本発明により保存される可能性が高いであろう。飲料濃縮物が望ましい場合、果汁は約20°Brixから約80°Brixまで従来の手段によって濃縮される。飲料濃縮物は、通常、40°Brix以上(約40%から約75%の砂糖固形物)である。
【0051】
典型的に、飲料は、特定の範囲の酸性度を有する。飲料の酸性度は、主に、酸味料のタイプ、その濃度、および酸が溶液に入れられたときに酸から解離する、酸と結合したプロトンの傾向によって決まる。0〜14の間の適度なpHを有する任意の溶液が、ある程度の酸性度を有している。しかしながら、7未満のpHを有するそれらの溶液は一般に酸性であると理解され、pH7を超えるものが塩基性であると考えられる。酸味料は有機であっても無機であっても差し支えない。有機酸の包括的な例には、クエン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸およびコハク酸がある。無機酸の包括的な例には、リン酸化合物およびこれらの酸の一および二カリウム塩がある(リン酸の一および二カリウム塩は、酸性度に寄与できるプロトンを少なくとも1つ有する)。
【0052】
様々な酸は、飲料のpHまたは緩衝能を特定のpHまたはpH範囲にやりくりするために、同じ酸または異なる酸の塩と組み合わせることができる。本発明は、2.6ほど低いpHで機能できるが、本発明は、pHが2.6から3.8まで増加するにつれて、最良に機能する。本発明は、製品の最終的なpHがpH4.5を超えない限り、製品を酸性にするのに用いられる酸味料のタイプによって制限されない。食用であり、嫌な臭いがしない限り、実質的に任意の有機酸の塩を使用して差し支えない。塩または塩の混合物の選択は、可溶性および味覚によって決まる。クエン酸塩、マレイン酸塩およびアスコルビン酸塩は、その風味が、特に果汁飲料において、極めて満足であると判断される摂取可能な錯体を生成する。酒石酸は、特にブドウ果汁飲料において受け入れられ、乳酸もそうである。長鎖脂肪酸を使用してもよいが、風味と水溶性に影響し得る。実質的に全ての目的に関して、マレイン酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩およびアスコルビン酸塩の部分が満足である。
【0053】
本発明の飲料製品の特定のある例示の実施の形態は、スポーツ(電解質バランス)飲料(炭酸または非発泡性)を含む。典型的なスポーツ飲料は、水、ショ糖シロップ、ブドウ糖果糖シロップ、および天然または人工香味料を含有する。これらの飲料は、塩化ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸一カリウム、並びに発汗中に失われる電解質の残りを補充するように働く他の天然または人工物質も含有して差し支えない。
【0054】
ある例示の実施の形態において、本発明は、脂溶性ビタミン類が補給された飲料配合物も含む。ビタミン類の包括的な例としては、ビタミンEまたはそのエステル、ビタミンAまたはそのエステル、ビタミンK、およびビタミンD3、特にビタミンEおよび酢酸ビタミンEが挙げられる。その補給物の形態は、粉末、ゲルまたは液体、もしくはそれらの組合せであって差し支えない。脂溶性ビタミン類は、元気を回復させる量、すなわち、ジュースまたは牛乳などの飲料中に天然に存在する、加工中に失われたり、不活化されたかもしれないビタミン類に取って代わるのに十分な量で加えてよい。脂溶性ビタミン類は、栄養補給する量、すなわち、RDAおよびそのような他の基準に基づいて子供または大人が摂取するのが推奨されると考えられるビタミンの量、好ましくは、RDA(一日当たりの推奨摂取量)の約1倍から3倍の量で加えてもよい。飲料に加えても差し支えない他のビタミン類としては、ビタミンBナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB、およびチアミンが挙げられる。これらのビタミン類は、RDAの10%から300%のレベルで加えて差し支えない。あるタイプのゲスト分子または錯体が、特定のタイプのミセル、リポソーム、または脂肪球中に捕捉される可能性があるが、これは、ケースバイケースの基準でしか特徴付けられないことが認識されよう。
【0055】
補給物:本発明は、特定のタイプの補給物の存在により損なわれ得るが、これは、絶対的なものではなく、飲料配合物毎に異なるであろう。本発明が損なわれる程度は、補給物の性質および補給物の存在の結果として飲料中の特定の金属陽イオンの結果として生じた濃度に依存する。例えば、カルシウム補給物は、本発明を損ない得るが、クロム補給物と同じ程度までではない。カルシウム補給物は、総カルシウム濃度の臨界値を超えない程度(例えば、飲料中の二リン酸のモル濃度の1/3から1/2)まで加えてよい。本発明に適合するカルシウム源としては、カルシウム有機酸錯体が挙げられる。好ましいカルシウム源の中に、Nakel等に発行された米国特許第4786510号および同第4786518号(1988)、並びにHackertに発行された米国特許第4722847号(1988)の各明細書に記載されているような、「クエン酸−マレイン酸カルシウム」が挙げられる。本発明に適合する他のカルシウム源としては、酢酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、オロチン酸カルシウム、およびそれらの混合物が挙げられる。塩化カルシウムおよび硫酸カルシウムを含ませても差し支えないが、高レベルでは、それらは渋い味がする。
【0056】
フレーバ成分:本発明による飲料製品は、どのようなタイプの香味料を含有しても差し支えない。本発明のフレーバ成分としては、人工香味料、天然香味料、植物香味料、果物香味料、およびそれらの混合物から選択される香味料を含有する。「植物香味料」という用語は、果物以外の植物の部分から由来する、すなわち、豆、木の実、樹皮、根および葉から由来の香味料を称する。また、「植物香味料」という用語には、天然源由来の植物香味料に似せて作られた合成により調製された香味料も含まれる。そのような香味料の例としては、ココア、チョコレート、バニラ、コーヒー、コーラ、紅茶などが挙げられる。植物香味料は、植物性揮発油およびエキスなどの天然源から由来して差し支えない。「果物香味料」という用語は、種子植物、特に、趣旨に関連する甘い果肉を有するものの食用の再生部から由来する香味料を称する。「果物香味料」という用語には、天然源から由来する果物香味料に似せて作られた合成により調製された香味料も含まれる。
【0057】
人工香味料を使用しても差し支えない。人工香味料の包括的な例としては、チョコレート、イチゴ、バニラ、コーラ、または果物のような味がするように風味が付けられた非発泡性または炭酸飲料を配合するのに使用できる天然香味料に似た人工香味料が挙げられる。本発明の飲料ミックスに風味の特徴を与えるのに効果的なフレーバ成分の特定の量(「風味向上」)は、選択された香味料、所望の風味の感じ、およびフレーバ成分の形態に依存し得る。フレーバ成分は、飲料組成物の少なくとも0.005質量%を構成し得る。
【0058】
ケースバイケースの基準で、本発明による飲料の保存料系は、水性エキスを含有するように配合された飲料に適合する。ここに用いたように、「水性エッセンス」という用語は、果汁に由来する水溶性芳香およびフレーバ材料を称する。水性エッセンスは、分留、濃縮または混合エッセンスであって、または追加成分を補充しても差し支えない。ここに用いたように、「エッセンスオイル(essence oil)」という用語は、果汁から得られた芳香およびフレーバ揮発性物質の油または水不溶性分画を称する。オレンジエッセンスオイルは、オレンジ果汁の蒸発により得られた水性エッセンスから分離された油性分画である。エッセンスオイルは、分留されても、濃縮されても、または補充されても差し支えない。ここに用いたように、「ピールオイル(peel oil)」という用語は、オレンジおよび他の柑橘系果物に由来の芳香および香味料を称し、主に、テルペン炭化水素、例えば、アジピン酸アルデヒドおよびケトン、酸素化テルペンおよびセスキテルペンからなる。柑橘風味のジュースには、約0.002%から約1.0%の水性エッセンスおよびエッセンスオイルが使用される。
【0059】
甘味料成分:本発明は、甘味料のタイプや濃度により影響を受けない。甘味料は、飲料に一般に使用されているどのような甘味料であってもよい。甘味料は、単糖類または二糖類を含んで差し支えない。金属陽イオンによるある程度の純度の汚染が予測される。甘味を有するペプチドも認められる。最も一般に用いられる糖類としては、ショ糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖および乳糖並びに転化糖が挙げられる。これらの糖類の混合物を使用することができる。多かれ少なかれ甘味が望ましい場合には、他の天然炭水化物を使用して差し支えない。炭素、水素および酸素から構成される他のタイプの天然甘味料、例えば、レバウディオサイドA、ラカンカ、モグロシドV、モナチンを使用して差し支えない。本発明は、人工甘味料にも適合している。例として、人工甘味料としては、サッカリン、チクロ、アセスルファム、モグロシド、L−アスパルチル−L−フェニルアラニン低級アルキルエステル甘味料(例えば、アスパルテーム)、Brennan等の米国特許第4411925号(1983)明細書に開示されているようなL−アスパルチル−D−アラニンアミド、Brennan等の米国特許第4399163号(1983)明細書に開示されているようなL−アスパルチル−D−セリンアミド、1982年12月21日に発行されたBrandの米国特許第4338346号明細書に開示されているようなL−アスパルチル−L−1−ヒドロキシメチルアルカンアミド甘味料、Rizziの米国特許第4423029号(1983)明細書に開示されているようなL−アスパルチル−1−ヒドロキシエチルアルカンアミド甘味料、1986年1月15日に発行されたJ.M.Januszの欧州特許出願公開第168112号明細書に開示されているようなL−アスパルチル−D−フェニルグリシンエステルおよびアミド甘味料などが挙げられる。特に好ましい甘味料はアスパルテームである。本発明の飲料ミックスにおいて効果的な甘味料の量は、使用される特定の甘味料および所望の甘味強度に依存する。
【0060】
ヘッドスペースの雰囲気:飲料製品におけるヘッドスペース中の空気の存在は、本発明の組成物に重大な影響はない。二酸化炭素ガスまたは飲料から酸素を排除する他のガス(窒素、亜酸化窒素など)の存在により、金属イオン封鎖剤と共に要される化学保存料を減少した濃度で使用可能になるであろう。必要とされる金属イオン封鎖剤の濃度は、飲料製品中に存在する金属陽イオンのタイプおよび量によってしか決定されない。
【0061】
以下の実施例は、本発明の特定の実施の形態であるが、本発明を制限することを意図していない。ここに引用された任意の特許文献は、全ての目的のためにその全てが含まれる。
【実施例】
【0062】
本発明により、シクロデキストリンと抗菌活性を示す分子との間の相互作用に関する多くの基準が認識される。実施例の調製において、以下を考慮する。
【0063】
第1に、シクロデキストリンに含まれるべき分子は、抗菌活性を示すことが明らかになっていなければならない。本発明の意図は、製品が16週間に亘り安定であるという要件を妥協せずに可能になるように、これらの化合物を最低濃度で使用することにある。本発明の別の特徴は、抗菌活性を示す化合物の知覚上の影響を遮蔽することであろう。
【0064】
第2に、その分子は、シクロデキストリンの空洞内で利用できる容積に合う容積寸法を有さなければならない。3つの群のシクロデキストリンの立方オングストローム(Å3)の計算容積は、α,βおよびγ−シクロデキストリンについて、それぞれ、174、262および472である。表IIIに列記された全ての化合物は、230Å3未満の計算容積を有している。
【0065】
第3に、候補の化合物は、ある程度の無極構造を示さなければならない。それは、平方オングストローム(Å2)の単位で表される位相幾何学的極性表面積(TPSA)の計算の結果から推測できる。TPSAは、極性原子(通常は、酸素、窒素および付着した水素)の表面寄与の合計である。TPSAは、分子の物理的状態または活性を決定できる多くの定量的構造活性相間(QSAR)要因の内の1つである。TPSAの最も好ましい値は、1および40Å2の間である。それほど好ましくはないが、適度に許容されるのは、40〜100Å2のTPSA値である。好ましくはないが、100を超えるTPSAにより、分子の候補が考慮から完全に外されるわけではない。例えば、クロラムフェニコールなどの分子は、比較的高いTPSA値(115.378)を示すが、他のQSAR要因により、クロラムフェニコールのβシクロデキストリンとの比較的良好な嵌め合いが可能である。表IIIの任意の化合物の最高のTPSA値は、60Å2である。大半の化合物は、40Å2未満のTPSAを示す。
【0066】
第4に、候補の化合物は、一般に、比較的低い水溶性を示す。候補の化合物の可溶性は、最初に、一般溶解度式(Yalkowsky)を用いた計算によって特徴付けられる。錯化の候補の化合物は、
−5<LogS<−3
の範囲にある溶解度値(LogS)を有するべきである。
それほど好ましくはないが、まだ適度に許容されるのは、LogSの範囲
−5<LogS<−2.0
である。それほど好ましくはないが、まだ許容されるのは、
−5<LogS<−1.0
となるようなLogSの範囲である。候補の化合物の内のほぼ3つが、−3.00未満のLogSを示す。化合物のほぼ半分が、−2.00未満のLogSを示し、候補の化合物の残りは、−2<LogS<−1.0を示す。
【0067】
以下の実施例の各々において、定温培養期間は、周囲温度で流通される飲料の標準的な保存期間に関する16週間である。ある化学物質が、16週間未満の期間しか増殖を遅らせられない場合、それは、製造業者の要望を満たさない。腐敗を妨げるために使用される化学物質の濃度は、しばしば、最小発育阻止濃度(MIC)と報告される。飲料の保存料として使用するための候補の化合物のMIC値は、飲料が16週間の期間に亘り腐敗しないままでいられるその候補の化合物の濃度である。植物性揮発油などの、抗菌活性を有する多くの天然物質は、飲料などの水溶液系中に限られた溶解度しか示さない傾向がある。多くのそのような化合物の溶解度の制限により、保存料としてのそれらの使用が妨げられる。言い換えれば、MIC値が溶解度の限界を超えている。本発明により、そうしなければ利用できない天然または合成の抗菌性物質を保存料として使用することか可能になる。
【0068】
実施例1
10%の果汁含有量のモデルの高酸飲料系(pH<4.6)を調製して、非錯体形態、もしくはアルファ(α)またはベータ(β)−シクロデキストリンを含む(錯体)形態のいずれかでのプロピルパラベンの効力を試験した。1リットル当たりのモデル飲料の基本組成は以下のとおりである:

上述したモデル飲料系(pH3.4)において、プロピルパラベンは368mg/Lの溶解限度を示した。この濃度では、プロピルパラベンは、試験飲料における単独の化学保存料として効果的ではなかった。アルファまたはベータシクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、プロピルパラベンの溶解度は、780mg/Lほど高くまで増加した。3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な、シクロデキストリンとの錯体におけるプロピルパラベンの量は、β−シクロデキストリンとの錯体においては600mg/L、α−シクロデキストリンとの錯体においては510mg/Lである。腐敗性微生物の生長を阻止するのに十分な、錯体の形態にあるプロピルパラベンの濃度には、15ミリモル(1.45%)のα−シクロデキストリンまたは4ミリモル(0.56%)のβ−シクロデキストリンが必要である。この研究に使用した酵母の菌株は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ジゴサッカロマイセス・ブラリー(Zygosaccharomyces balii)およびジゴサッカロマイセス・ビスポルス(Zygosaccharomyces bisporus)であった。
【0069】
実施例2
水分活性の高い(>0.97)モデルの低酸飲料系(pH≧4.6)を調製して、非錯体形態、もしくはアルファ(α)またはベータ(β)シクロデキストリンを含む(錯体)形態のいずれかでのプロピルパラベンの効力を試験した。1リットル当たりのモデル飲料の基本組成は以下のとおりである:

上述したモデル飲料系(pH5.8)において、プロピルパラベンは426mg/Lの溶解限度を示した。この濃度では、プロピルパラベンは、試験飲料における単独の化学保存料として効果的ではなかった。アルファまたはベータシクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、プロピルパラベンの溶解度は、750mg/Lほど高くまで増加した。3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な、シクロデキストリンとの錯体におけるプロピルパラベンの量は、β−シクロデキストリンとの錯体においては650mg/L、α−シクロデキストリンとの錯体においては510mg/Lである。腐敗性微生物の生長を阻止するのに十分な、錯体の形態にあるプロピルパラベンの増大には、15ミリモル(1.45%)のα−シクロデキストリンまたは4ミリモル(0.56%)のβ−シクロデキストリンが必要である。この研究に使用した酵母の菌株は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ジゴサッカロマイセス・ブラリー(Zygosaccharomyces balii)およびジゴサッカロマイセス・ビスポルス(Zygosaccharomyces bisporus)であった。
【0070】
実施例3
10%の果汁含有量のモデルの高酸飲料系(pH<4.6)を調製して、非錯体形態、もしくはアルファ(α)またはベータ(β)シクロデキストリンを含む(錯体)形態のいずれかでのメトキシケイ皮酸エステルの効力を試験した。1リットル当たりのモデル飲料の基本組成は以下のとおりである:

上述したモデル飲料系(pH3.4)において、メトキシケイ皮酸エステルは498mg/Lの溶解限度を示した。この濃度では、メトキシケイ皮酸エステルは、試験飲料における単独の化学保存料として効果的ではなかった。アルファまたはベータシクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、メトキシケイ皮酸エステルの溶解度は、3690mg/Lほど高くまで増加した。3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な、シクロデキストリンとの錯体におけるメトキシケイ皮酸エステルの量は、α−シクロデキストリンとの錯体においては800mg/L、β−シクロデキストリンとの錯体においては420mg/Lである。シクロデキストリン錯体として与えた場合、抗真菌剤は向上した効力を示すという前例が存在する。腐敗性微生物の生長を阻止するのに十分な濃度まで、錯体の形態にあるメトキシケイ皮酸エステルの溶解度を増大させるには、15ミリモル(1.45%)のα−シクロデキストリンまたは4ミリモル(0.56%)のβ−シクロデキストリンが必要である。
【0071】
十分な濃度のメトキシケイ皮酸エステルを提供するには、10ミリモル(0.9%)のα−シクロデキストリンまたは3ミリモル(0.34%)のβ−シクロデキストリンが必要である。この研究に使用した酵母の菌株は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ジゴサッカロマイセス・ブラリー(Zygosaccharomyces balii)およびジゴサッカロマイセス・ビスポルス(Zygosaccharomyces bisporus)であった。
【0072】
実施例4
水分活性の高い(>0.97)モデルの低酸飲料系(pH≧4.6)を調製して、非錯体形態、もしくはアルファ(α)またはベータ(β)シクロデキストリンを含む(錯体)形態のいずれかでのメトキシケイ皮酸エステルの効力を試験した。1リットル当たりのモデル飲料の基本組成は以下のとおりである:

上述したモデル飲料系(pH5.3)において、メトキシケイ皮酸エステルは600mg/Lの溶解限度を示した。この濃度では、メトキシケイ皮酸エステルは、試験飲料における単独の化学保存料として効果的であるとは実証されなかった。アルファ(α)またはベータ(β)シクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、メトキシケイ皮酸エステルの溶解度は、3411mg/Lほど高くまで増加した。3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な、シクロデキストリンとの錯体におけるメトキシケイ皮酸エステルの量は、α−シクロデキストリンとの錯体においては800mg/L、β−シクロデキストリンとの錯体においては420mg/Lである。シクロデキストリン錯体として与えた場合、抗真菌剤は向上した効力を示すという前例が存在する。十分な濃度のメトキシケイ皮酸エステルを提供するには、10ミリモル(0.9%)のα−シクロデキストリンまたは3ミリモル(0.34%)のβ−シクロデキストリンが必要である。この研究に使用した酵母の菌株は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ジゴサッカロマイセス・ブラリー(Zygosaccharomyces balii)およびジゴサッカロマイセス・ビスポルス(Zygosaccharomyces bisporus)であった。
【0073】
実施例5
10%の果汁含有量のモデルの高酸飲料系(pH<4.6)を調製して、非錯体形態、もしくはアルファ(α)またはベータ(β)シクロデキストリンを含む(錯体)形態のいずれかでのトランス,トランス−2,4−デカジエナールの効力を試験した。1リットル当たりのモデル飲料の基本組成は以下のとおりである:

上述したモデル飲料系(pH3.4)において、トランス,トランス−2,4−デカジエナールは5.4mg/Lの溶解限度を示した。この濃度では、トランス,トランス−2,4−デカジエナールは、試験飲料における単独の化学保存料として効果的ではなかった。アルファまたはベータシクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、トランス,トランス−2,4−デカジエナールの溶解度は、280mg/Lほど高くまで増加した。3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な、シクロデキストリンとの錯体におけるトランス,トランス−2,4−デカジエナールの量は、α−シクロデキストリンとの錯体においては60mg/L、β−シクロデキストリンとの錯体においては125mg/Lである。腐敗性微生物の生長を阻止するのに十分な、錯体の形態にあるトランス,トランス−2,4−デカジエナールの濃度には、15ミリモル(1.45%)のα−シクロデキストリンまたは4ミリモル(0.56%)のβ−シクロデキストリンが必要である。この研究に使用した酵母の菌株は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ジゴサッカロマイセス・ブラリー(Zygosaccharomyces balii)およびジゴサッカロマイセス・ビスポルス(Zygosaccharomyces bisporus)であった。
【0074】
実施例6
水分活性の高い(>0.97)モデルの低酸飲料系(pH≧4.6)を調製して、非錯体形態、もしくはアルファ(α)またはベータ(β)シクロデキストリンを含む(錯体)形態のいずれかでのトランス,トランス−2,4−デカジエナールの効力を試験した。1リットル当たりのモデル飲料の基本組成は以下のとおりである:

上述したモデル飲料系(pH5.3)において、トランス,トランス−2,4−デカジエナールは5.8mg/Lの溶解限度を示した。この濃度では、トランス,トランス−2,4−デカジエナールは、試験飲料における単独の化学保存料として効果的であるとは実証されなかった。アルファ(α)またはベータ(β)シクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、トランス,トランス−2,4−デカジエナールの溶解度は、280mg/Lほど高くまで増加した。3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な、シクロデキストリンとの錯体におけるトランス,トランス−2,4−デカジエナールの量は、α−シクロデキストリンとの錯体においては57mg/L、β−シクロデキストリンとの錯体においては123mg/Lである。十分な濃度のトランス,トランス−2,4−デカジエナールを提供するには、α−シクロデキストリンの15ミリモル(1.45%)またはβ−シクロデキストリンの4ミリモル(0.56%)が必要である。この研究に使用した酵母の菌株は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ジゴサッカロマイセス・ブラリー(Zygosaccharomyces balii)およびジゴサッカロマイセス・ビスポルス(Zygosaccharomyces bisporus)であった。
【0075】
実施例の要約
プロピルパラベンは、368〜426mg/Lの飲料中における溶解度の限度を示した。この濃度では、プロピルパラベンは試験飲料中の単独の化学保存料として効果的ではなかった。アルファまたはベータシクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、プロピルパラベンの溶解度は750mg/Lほど高くまで増加し、これは、3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な錯体中のプロピルパラベンの量(510〜600ppm)を超えている。
【0076】
メトキシケイ皮酸エステルは、498〜600mg/Lの飲料中における溶解度の限度を示した。この濃度では、メトキシケイ皮酸エステルは試験飲料中の単独の化学保存料として効果的ではなかった。アルファまたはベータシクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、メトキシケイ皮酸エステルの溶解度は3600mg/Lほど高くまで増加し、これは、3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な錯体中のプロピルパラベンの量(400〜807ppm)を超えている。βシクロデキストリンとの錯体にあるときに、600mgL超から400mg/LまでMICが明白に減少することは、先例のないことではない。理論により拘束するものではないが、シクロデキストリンとの錯体における化合物は、腐敗性微生物を被包する、影響を受けない水(境界)層をより容易に渡ることができると述べられてきた。
【0077】
トランス,トランス−2,4−デカジエナールは、57mg/Lの飲料中における溶解度の限度を示した。この濃度では、トランス,トランス−2,4−デカジエナールは試験飲料中の単独の化学保存料として効果的ではなかった。アルファまたはベータシクロデキストリンとの錯体の形態で飲料に与えた場合、トランス,トランス−2,4−デカジエナールの溶解度は280mg/Lほど高くまで増加し、これは、3種類の異なる腐敗性酵母の増殖を阻止するのに必要な錯体中のトランス,トランス−2,4−デカジエナールの量(57〜124ppm)を超えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料において、
飲料成分、
シクロデキストリンおよび該シクロデキストリンと錯体を形成できる抗菌剤を含む、抗菌効果のある量のシクロデキストリン−抗菌剤の錯体、および
2.5から7.5のpH、
を有する飲料であって、
該飲料が、密封容器内に入れられたときに、少なくとも16週間の期間に亘り微生物によって実質的に腐敗しないことを特徴とする飲料。
【請求項2】
前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、無作為にメチル化されたβ−シクロデキストリン、マルトシル/ジマルトシルβ−シクロデキストリンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項3】
前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンおよびα−シクロデキストリンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項4】
前記抗菌剤が、トランス,トランス−2,4−デカジエナール、プロピルパラベン、およびメトキシケイ皮酸エステルからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項5】
前記抗菌剤が、ブチルパラベン、ソルビン酸、およびケイ皮酸からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項6】
2.5から5.6の範囲のpHを有することを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項7】
2.5から4.6の範囲のpHを有することを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項8】
前記抗菌剤が少なくとも約10mg/Lから約1000mg/Lの量で存在することを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項9】
前記抗菌剤が少なくとも約25mg/Lから約250mg/Lの量で存在することを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項10】
金属イオン封鎖剤をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項11】
前記金属イオン封鎖剤がEDTAまたはEDDSもしくはそれらの混合物であることを特徴とする請求項10記載の飲料。
【請求項12】
少なくとも1種類のポリリン酸または二リン酸をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項13】
クロム、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、カルシウム、マグネシウム、および鉄の金属陽イオンが、1.0mM以下の総濃度で存在することを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項14】
クロム、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、カルシウム、マグネシウム、および鉄の金属陽イオンが、0.5mMから0.75mMの範囲の総濃度で存在することを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項15】
カリウム陽イオンが150mg/L以下の範囲の濃度で存在することを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項16】
前記飲料成分が、付加水、果汁、香味料、甘味料、酸味料、着色料、ビタミン類、緩衝剤、増粘剤、乳化剤、および消泡剤の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項17】
前記果汁が、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、タンジェリン、リンゴ、ブドウ、クランベリー、ラズベリー、ブルーベリー、イチゴ、パイナップル、洋ナシ、モモ、ザクロ、プルーン、チェリー、マンゴー、パパイヤ、ライチ、およびグアバの内の少なくとも1つからの果汁であることを特徴とする請求項16記載の飲料。
【請求項18】
炭酸飲料、非発泡性飲料、ソフトドリンク、フルーツジュース、フルーツジュース風味ドリンク、果物風味ドリンク、エネルギードリンク、水分補給ドリンク、スポーツドリンク、健康ドリンク、ドリンクサーバー向け飲料、フローズンタイプの直ぐ飲めるドリンク、フローズンタイプの炭酸飲料、液体濃縮物、コーヒー飲料、紅茶飲料、乳飲料、大豆飲料、野菜ドリンク、風味付け水、強化水、またはアルコール飲料であることを特徴とする請求項1記載の飲料。

【公表番号】特表2011−530286(P2011−530286A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522111(P2011−522111)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/051803
【国際公開番号】WO2010/017050
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(593203701)ペプシコ,インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PepsiCo Inc.
【Fターム(参考)】