説明

滑り止めマット及びその使用方法

【課題】安価で施工性がよく、且つ傾斜面でも優れた滑り止め効果を得ることができるようにする。
【解決手段】路面に固定される枠体2に、歩行者が足を踏み入れるための踏み込み空間3と、前記路面と前記枠体2とを固定させるペグが挿通されるペグ孔4とが形成されている。前記枠体2の上面には、滑り止め用の凸状部5が形成されている。また、前記枠体2の下面には、路面に係着可能なアンカが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山道等の滑りやすい路面において、人の歩行を支援するための道具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
急勾配の山道等は、路面が滑りやすく歩行者にとって危険なものである。例えば、架空送電線路の山野部の巡視、点検、作業等においては、作業員が荷物を背負ったまま山道を歩くことが要求され、作業員の転倒等が発生する恐れがあった。このため、山道に鍬入れをしたり、路面を階段状にしたりする作業が行われることがあるが、多くの場合は作業員が慎重な歩行を心がけるしかなかった。
【0003】
上記のような問題に関わる従来技術として、傾斜した地面に段板を接地させた状態で設置する階段において、蹴込部と踏み面部を一体的に形成した段板が、その蹴込部から踏み面部にかけて弧状に湾曲した形状に成形されると共に、その左右両端部に回動自在に取り付けるアームロッドを介して所定のピッチで連結されたものが開示されている(特許文献1参照)。また、他の従来技術として、表裏面の略前面にわたって複数貫通形成された土壌挿通穴12と、各土壌挿通穴の周囲表面に形成された滑り止め用突起と、表裏面の縁に貫通形成された固定用穴と、側面に形成された連結用の穴とを有する路面用マットが開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平6−63629号公報
【特許文献2】特開平8−41810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような鍬入れや階段作成の作業には、大きな労力、費用、技術等が必要であり、また階段状にすることによって、運搬機等が通行できなくなるという問題があった。また、上記特許文献1に開示されるような階段は、歩行には適するが、構造が複雑であるため、施工作業、費用等の面で難点があり、更に運搬機等の走行ができなくなるといった問題もある。また、上記特許文献2に開示されるような路面用マットは、遊歩道や平坦の道路においては適するが、山道等の滑りやすい傾斜面では歩行者の体重を支えることができないといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、安価で施工性がよく、且つ傾斜面でも優れた滑り止め効果を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決を図る本発明は、路面に固定される枠体に、歩行者が足を踏み入れるための踏み込み空間と、前記路面と前記枠体とを固定させるペグが挿通されるペグ孔とが形成されていることを特徴とする滑り止めマットである(請求項1)。
【0007】
この構成により、歩行者は路面に設置された滑り止めマット(枠体)の踏み込み空間、又は枠体の淵に足を掛けながら前進することができる。また、枠体はペグによって路面に確実に固定されるので、山道等の滑りやすい急傾斜地であっても、歩行者の体重をしっかりと支えることができ、高い安全性を得ることができる。また、本発明に係る滑り止めマットは、簡素な構造及び安価な材料により構成することができるので、コストの面でも有利である。更に、本発明に係る滑り止めマットにおいては、枠体は歩行者の爪先や踵が掛けられればよく、それ程厚みのない板状の部材を用いることができるので、設置時において路面から大きく突出することがない。これにより、運搬機等の通行を妨げることがない。更にまた、取り外し、運搬が容易であることから、設置場所の変更や微調整を手軽に行うことができる。
【0008】
また、上記請求項1記載の構成において、前記枠体の上面に、滑り止め用の凸状部が形成されていることが好ましい(請求項2)。
【0009】
これにより、歩行者に対する安全性をより向上させることができる。凸状部の形状としては、柱状に立設したものや、突条のもの等がよい。
【0010】
また、上記請求項2記載の構成において、前記凸状部は、少なくとも前記枠体の対面する二辺に形成されていることが好ましい(請求項3)。
【0011】
凸状部が形成された二辺が歩行者の進行方向前後となるように枠体を設置することにより、歩行者が枠体の踏み込み空間に足を踏み入れた時に、爪先と踵の近くに凸状部がある状態にすることができる。歩行を進める時には、爪先と踵に力が入るものであるから、このような構成とすることにより、滑り止めの効果を十分に発揮させることができる。
【0012】
また、上記請求項1〜3のいずれか1つに記載の構成において、前記枠体の下面に、路面に係着可能なアンカが形成されていることが好ましい(請求項4)。
【0013】
これにより、滑り止めマット(枠体)を路面に確実に固定することができると共に、枠体をペグが打ち込まれるまで路面に仮止めしておくことができるので、施工性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の滑り止めマットの使用方法であって、複数の前記枠体の一部を重ね合わせ、該重ね合わされた枠体の前記ペグ孔の位置を整合させ、該整合されたペグ孔に前記ペグを挿通することにより、複数の前記枠体を連結した状態で路面に固定することを特徴とするものである(請求項5)。
【0015】
この使用方法によれば、複数の滑り止めマットが梯子状に連なって路面に固定される。これにより、それぞれの滑り止めマットと路面との固定力が大きくなるので、強い滑り止め効果を得ることができ、また歩行者の歩きやすさも向上する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、山道等の滑りやすい急傾斜地であっても、歩行者の体重をしっかりと支えることができるので、歩行者の転倒等の災害を防ぐことができる。また、本発明に係る滑り止めマットは、簡素な構造及び安価な材料により構成することができるので、コストの面でも有利である。更に、本発明に係る滑り止めマットは、設置時に路面から大きくせり出すことがないので、運搬機等の通行を妨げることがない。更にまた、取り外し、運搬が容易であることから、設置場所の変更や微調整を手軽に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を用いて本発明の実施例を説明する。尚、異なる実施例において、同一又は同様の作用効果を奏する箇所については、その説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
図1において、本実施例に係る滑り止めマット1の平面図が示されている。この滑り止めマット1は、山道等の滑りやすい傾斜面に設置され、人の歩行を補助するためのものである。
【0019】
滑り止めマット1は、平面視矩形状の枠体2を有して構成される。この枠体2は、歩行者の体重を支えるための強度、運搬しやすくするための軽量性、多少の地形の変化に対応するための可撓性を有する材料から形成されることが好ましく、廃プラスチック等の合成樹脂材料がコスト、リサイクル等の面からも適している。また、枠体2の幅Aは、100mm程度であることが好ましい。
【0020】
枠体2の内部には、歩行者が足を踏み入れるための矩形状の踏み込み空間3が画成されている。この踏み込み空間3の寸法は、長辺の長さBが400mm、短辺の長さCが300mm程度であることが好ましい。
【0021】
また、枠体2には、該枠体2(滑り止めマット1)を路面に固定するためのペグ10(図3参照)が挿通される複数のペグ孔4が穿設されている。本実施例においては、ペグ孔4は8つ形成されている。
【0022】
更に、枠体2の上面(設置時に天を向く面)側には、滑り止めのための柱状に立設された複数の凸状部5が形成されている。本実施例においては、これらの凸状部5は、枠体2の対面する長辺部2a,2bのペグ孔4の間に設けられている。ペグ孔4の間隔Dは、150mm程度であることが好ましい。
【0023】
また、図2において、図1のX−X断面図が示されている。図2に示すように、枠体2の下面(設置時に地表に接する面)2c側には、断面三角形状のアンカ7が形成されている。このアンカ7は、路面への固定力を高めると共に、設置時においてペグ10を打ち込むまでの仮止めとして路面に係着させる作用を奏する。特にアンカ7の一面を枠体2の下面に対して略直角とすることで、路面への係着を強固にでき、傾斜のある路面に設置する場合にその垂直面を下(谷)側とすることで、確実な係着状態を得ることができる。図2において、枠体2の厚さEは10mm程度、凸状部5の高さFは5mm程度、隣り合う凸状部5の中心部の間隔Gは20mm程度、アンカ7の高さHは10mm程度、アンカ7の長さIは20mm程度であることが好ましい。
【0024】
図3及び図4において、ペグ10の構造例が示されている。図3はペグ10の正面図、図4は同ペグ10の下面図である。ペグ10は、差し込み部11と打ち込み部12とを有して構成される。差し込み部11は路面に埋め込まれる部分であり、両図が示すように、先端に向かって徐々に幅が狭まる十字形状を有している。打ち込み部12は、ハンマ等により打ち込まれる傘状の部分であり、この傘形状の円径は前記ペグ孔4よりも大きくなっている。尚、ここで示したペグ10は一例であり、他にも様々な構造のもの(例えばテント固定用ペグ等)を利用することができる。
【0025】
図5及び図6において、上記構成の滑り止めマット1を山道15に設置する場合の使用例が示されている。図5に示すのは、標準的な使用例であり、この例においては滑り止めマット1が歩行者の歩幅に合わせて一つずつ、且つ山道15の傾斜方向に沿って矩形状となるように設置されている。この際、凸状部5が形成されている枠体2の対面する長辺部2a,2bを進行方向前後となるように設置するとよい。これにより、歩行者は設置された滑り止めマット1の踏み込み空間3(図1参照)、凸状部5、又は枠体2の淵に足を掛けながら前進することができるので、滑りやすい山道15等であっても、安全に歩行することができる。また、足を踏み込み空間3に踏み入れた時に、爪先と踵の近くに凸状部5がある状態となるため、歩みを進めやすくなる。
【0026】
図6に示すのは、上記よりも強い滑り止め効果を得たい時の使用例である。この例においては、滑り止めマット1が山道15の傾斜方向に沿って菱形となるように設置されている。これにより、滑り止めマット1が谷側へのずれるのを止める力が大きくなるので、より強い滑り止め効果を得ることができる。
【0027】
また、上記本発明の滑り止めマット1は、路面から大きくせり出すことがないので、運搬機等の通行を妨げない。また、取り外し、運搬が容易であることから、設置場所の変更や微調整を手軽に行うことができる。
【実施例2】
【0028】
図7において、本発明の他の実施例に係る滑り止めマット21の平面図が示されている。この滑り止めマット21は、上記実施例1と同様の作用目的を有する枠体22、踏み込み空間23、ペグ孔24を有している。
【0029】
図7及び図8に示すように、本実施例に係る枠体22の上面側には、滑り止めのための凸状部25が形成されている。本実施例においては、これらの凸状部25は、枠体22の対面する長辺部22a,22bのペグ孔24の間に、長辺部22a,22bの長手方向に沿って前後に2本ずつ設けらた突条として形成されている。この凸状部25によって、上記実施例1に係る凸状部5と同様に、歩行者に対する滑り止め効果を得ることができる。また、本実施例においては、枠体22の下面側には、上記実施例1におけるアンカ7に相当するものが形成されていない。
【0030】
図9及び図10において、上記構成の滑り止めマット21を山道15に設置する場合の使用例が示されている。図9及び図10に示す両例共に、強い滑り止め効果を望む場合の例であるが、図10の例は図9の例よりも更に強い滑り止め効果を望む場合である。図9に示す例においては、複数の滑り止めマット21が、枠体22の前(山)側の長辺部22aと後(谷)側の長辺部22bとが重なるように並べられ、これらの重ねられた長辺部22a,22bに形成され上下(天地)方向に連なるように整合された2つにペグ孔24に、1つのペグ10が打ち込まれて固定されている。即ち、隣り合う滑り止めマット21どうしが互いに長辺部22a,22bで連結され、梯子状になって路面に固定されている。これにより、それぞれの滑り止めマット21と路面との固定力が大きくなるので、強い滑り止め効果を得ることができ、歩行者の歩きやすさも向上する。また、広範囲にわたって路面がぬかるんでいるような場合にも適している。
【0031】
図10に示す例においては、滑り止めマット21の中間に形成されたペグ孔24aと、隣り合う滑り止めマット21の前側の長辺部22aに形成されたペグ孔24とが重ねられ、これらが1つのペグ10によって固定されている。これにより、上記図9に示す例よりも更に強い滑り止め効果を得ることができる。
【0032】
また、本実施例に係る滑り止めマット21を、上記実施例1において図5及び図6で示したように使用することは差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1に係る滑り止めマットの構造を示す平面図である。
【図2】図1に示す滑り止めマットのX−X断面図である。
【図3】滑り止めマットに使用されるペグの構造を示す正面図である。
【図4】図3に示すペグの下面図である。
【図5】実施例1に係る滑り止めマットの使用例を示す図である。
【図6】実施例1に係る滑り止めマットの使用例を示す図である。
【図7】実施例2に係る滑り止めマットの構造を示す平面図である。
【図8】図7に示す滑り止めマットのY−Y断面図である。
【図9】実施例2に係る滑り止めマットの使用例を示す図である。
【図10】実施例2に係る滑り止めマットの使用例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1,21 滑り止めマット
2,22 枠体
3,23 踏み込み空間
4,24 ペグ孔
5 凸状部
7 アンカ
10 ペグ
15 山道
25 凸状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に固定される枠体に、
歩行者が足を踏み入れるための踏み込み空間と、
前記路面と前記枠体とを固定させるペグが挿通されるペグ孔と、
が形成されていることを特徴とする滑り止めマット。
【請求項2】
前記枠体の上面に、滑り止め用の凸状部が形成されていることを特徴とする請求1記載の滑り止めマット。
【請求項3】
前記凸状部は、少なくとも前記枠体の対面する二辺に形成されていることを特徴とする請求項2記載の滑り止めマット。
【請求項4】
前記枠体の下面に、路面に係着可能なアンカが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の滑り止めマット。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の滑り止めマットの使用方法であって、
複数の前記枠体の一部を重ね合わせ、該重ね合わされた枠体の前記ペグ孔の位置を整合させ、該整合されたペグ孔に前記ペグを挿通させることにより、複数の前記枠体を連結させた状態で路面に固定することを特徴とする滑り止めマットの使用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−261112(P2008−261112A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103419(P2007−103419)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】