説明

滑水性被膜を得るための処理剤及び滑水性被膜の作製法

【課題】
加熱工程を必要とせず、処理剤の基材への乾燥、及び乾燥後の払拭作業で被膜を形成で
き、得られる被膜の撥水性、滑水性及び耐久性を優れたものとすること。
【解決手段】
少なくとも一つの末端に加水分解可能な官能基を2個又は3個有し、且つジメチルシロ
キサンユニット(Si(CHO)の数が30〜400である直鎖状ポリジメチルシ
ロキサン、及び加水分解可能な官能基を有し、且つフルオロカーボンユニット(CF
はCF)の数が6〜12であるフルオロアルキルシラン、そして少なくとも有機溶媒、
酸、及び水を有する溶液を混合してなる処理剤であり、処理剤の総量に対し、重量濃度で
前記直鎖状ポリジメチルシロキサンが0.2〜3.0重量%、前記フルオロアルキルシラ
ンが0.2〜2.0重量%、さらに、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンと前記フルオロ
アルキルシランとの総量が0.5〜3.5重量%混入されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材への被膜の形成が室温程度の乾燥で可能な滑水性被膜を得るための処理
剤、及び滑水性被膜を得るための製法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の窓ガラスやサイドミラーに水滴等が付着し、雨中での走行がしづらくなる現象
が日常的に発生している。このような問題点を解消するために、撥水性又は滑水性の高い
被膜をガラス等の基材上に形成させる等の手段がとられている。しかしながら、当該被膜
の寿命は永久的ではないので、使用中に被膜の撥水性又は滑水性は初期の性能を維持でき
ない場合が発生しうる。このような場合、劣化した被膜上、又は当該被膜を除去した基材
上に処理剤を塗布して撥水性又は滑水性の機能を回復させることが要求される。
【0003】
そして、撥水性、滑水性の機能と耐久性とを満足させるために、処理剤を基材に塗布後
、100℃以上で加熱することが望ましいが、車両等に組み付けられた窓ガラスに対して
室温程度の処理で被膜を形成させる場合には、処理剤を工夫する必要が生じる。
【0004】
特許文献1では、パーフルオロアルキルシラン、オルガノポリシロキサン等を有する車
両ガラス用表面処理剤が開示され、当該処理剤にて室温で乾燥して形成された被膜は、撥
水性、滑水性に優れ、ジャダーの発生を抑制することが示されている。
【0005】
しかしながら、このような処理剤から得られる被膜の撥水性、滑水性及び耐久性は、処
理剤中のパーフルオロアルキルシランやオルガノポリシロキサンの濃度や反応性によって
大きく変化する。又、このような処理剤を用いると、処理後に被膜の形成に関与しなかっ
た撥水性、滑水性等の機能を生じせしめる機能成分が余剰分として乾固するので、得られ
る被膜の透光性、撥水性、滑水性等の機能に悪影響を与える。そして、布等の払拭で該余
剰分を除去する際、除去のし易さは、パーフルオロアルキルシランやオルガノポリシロキ
サンの処理剤中の濃度や反応性に依存する。しかしながら、特許文献1ではこれらの点に
ついての検討はなされていない。
【0006】
特許文献2では、末端に加水分解可能な官能基を有し、他端にフルオロアルキル基を有
するシリコーンを酸、水等を含有する溶液に混合してなる処理剤が開示され、当該処理剤
にて得られる被膜は、撥水性、滑水性に優れることが示されている。しかしながら、特許
文献2で開示されている処理剤は、基材に塗布後、100℃以上の加熱を必要とするので
、車両等に組み付けられた窓ガラスに対して被膜を形成させる場合や、すでに処理されて
いる被膜の撥水性、滑水性を回復させる場合には、不向きである。
【特許文献1】特開平2−233535号公報
【特許文献2】特開2000−144056公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば既存の車両の窓等に後付けで被膜を形成できるような、加熱工程を実
施しなくても、処理剤の塗布で撥水性、滑水性及び耐久性に優れる被膜を形成でき、さら
に処理後に被膜の形成に関与しなかった撥水性、滑水性等の機能を生じせしめる機能成分
による余剰な乾固物の除去が容易な処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の滑水性被膜を得るための処理剤は、少なくとも一つの末端に加水分
解可能な官能基を2個又は3個有し、且つジメチルシロキサンユニット(Si(CH
O)の数が30〜400である直鎖状ポリジメチルシロキサン、及び加水分解可能な官
能基を有し、且つフルオロカーボンユニット(CF又はCF)の数が6〜12である
フルオロアルキルシラン、そして有機溶媒、酸、及び水を有する溶液を混合してなる処理
剤であり、処理剤の総量に対し、重量濃度で前記直鎖状ポリジメチルシロキサンが0.2
〜3.0重量%、前記フルオロアルキルシランが0.2〜2.0重量%、さらに、前記直
鎖状ポリジメチルシロキサンと前記フルオロアルキルシランとの総量が0.5〜3.5重
量%混入されたことを特徴とする。(以降、本明細書において、直鎖状ポリジメチルシロ
キサン、フルオロアルキルシランの双方を示す場合、「機能成分」と表記する。また、直
鎖状ポリジメチルシロキサンとフルオロアルキルシランとの総量を示す場合、「機能成分
の総量」と表記する。)
【0009】
前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、滑水性に優れジメチルシロキサン鎖を有するの
で、得られる被膜の滑水性を向上させる。一方、前記フルオロアルキルシランは、耐久性
に優れたフルオロアルキル鎖を有するので、得られる被膜の耐久性を向上させる。
【0010】
前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、少なくとも一つの末端に加水分解可能な官能基
を2個又は3個有し、前記フルオロアルキルシランも加水分解可能な官能基を有する。加
水分解可能な官能基は、処理剤に含まれる酸と水によって加水分解し、反応性の高いシラ
ノール基を形成する。これにより処理剤を基材に塗布すると、基材表面とシラノール基が
反応し、該直鎖状ポリジメチルシロキサン及び該フルオロアルキルシランは基材と強固に
結合し、結果として得られる滑水性被膜の耐久性が改善する。
【0011】
さらに又、前記酸と水は、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンや前記フルオロアルキル
シランの加水分解可能な官能基を加水分解させて基材と結合可能なシラノール基を生成さ
せる効果がある。
【0012】
さらに本発明の滑水性被膜を得るための処理方法は、請求項1乃至請求項6のいずれか
に記載の処理剤を基材に塗布する工程、処理剤が塗布された基材を乾燥する工程、及び乾
燥後に遊離状態にある被膜形成に関与しなかった未反応の又は加水分解した若しくは縮合
した機能成分(以降「余剰分」と表記する)を除去する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の滑水性被膜を得るための処理剤は、基材に処理後、乾燥させることで優れた撥
水性、滑水性及び耐久性を示す。このため、車両等に組み付けられた窓ガラス、サイドミ
ラーのように熱処理が実施できない基材へ処理するための処理剤として最適である。さら
に、処理後の余剰分の除去が容易であることから、作業の負荷が小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の滑水性被膜を得るための処理剤は、少なくとも一つの末端に加水分解可能な官
能基を2個又は3個有し、且つジメチルシロキサンユニット(Si(CHO)の数
が30〜400である直鎖状ポリジメチルシロキサン、及び加水分解可能な官能基を有し
、且つフルオロカーボンユニット(CF又はCF)の数が6〜12であるフルオロア
ルキルシラン、そして有機溶媒、酸、及び水を有する溶液を混合してなる処理剤であり、
処理剤の総量に対し、重量濃度で前記直鎖状ポリジメチルシロキサンが0.2〜3.0重
量%、前記フルオロアルキルシランが0.2〜2.0重量%、さらに、機能成分の総量が
0.5〜3.5重量%混入されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の処理剤に使用される直鎖状ポリジメチルシロキサンは、ジメチルシロキサンユ
ニット(Si(CHO)の数を30〜400とすることが重要である。
【0016】
前記直鎖状ポリジメチルシロキサンのジメチルシロキサンユニット数が400を超える
と、直鎖状ポリジメチルシロキサンの加水分解可能な官能基の数がジメチルシロキサンユ
ニットに対して相対的に減少することになり、ポリジメチルシロキサンの反応性が低下す
る。この結果、得られる被膜は、基材との結合が弱くなり、被膜の耐光性や耐泥水研磨性
が低下し、得られる滑水性被膜の劣化が早くなる。
【0017】
本発明の処理剤を用いて作製した滑水性被膜を有する基材は屋外で使用されることが多
く、太陽光に暴露される機会が多い。そして、砂埃が付着する機会が多いので、清掃時に
雑巾やワイパー等での払拭時に泥水研磨されることになる。耐光性や耐泥水研磨性に優れ
る被膜の形成は、実用の観点から非常に重要であり、車両の窓に被膜を形成するにあたっ
ては、これらは特に重要となる。
【0018】
一方、本発明の処理剤を基材に処理すると、処理剤中の機能成分の加水分解可能な官能
基と基材表面に存在するシラノール基に代表される水酸基等の反応性基が反応して結合す
ることにより機能成分が基材に固定される。従って、該ユニット数が少なくなると、基材
上に固定されるジメチルシロキサンユニット数が減少することになる。本発明での検討の
結果、形成される被膜の耐泥水研磨性は、該ユニット数に影響されることが判明した。そ
して、該ユニット数を30以上とするとこれら特性が顕著に向上し、得られる被膜の長期
使用に奏功する。
【0019】
又、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、少なくとも一つの末端に加水分解可能な官
能基を2個又は3個有することが重要である。両末端の加水分解可能な官能基の数が1個
以下である場合、該ポリジメチルシロキサンの反応性が大幅に低下し、基材との結合が弱
くなる。これにより得られる滑水性被膜の耐光性が低下し、被膜の劣化が早くなるので好
ましくない。
【0020】
さらに、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、処理剤の総量に対し0.2〜3.0重
量%混入されることが重要である。一般的に撥水剤としては、パーフルオロアルキルシラ
ンが機能成分に用いられているが、これは滑水性が低く、50μlの水滴が滑落できる最
小傾斜角度(以降、転落角と表記する)も25〜27°と大きい。
【0021】
滑水性被膜を実際に使用するあたり、滑水性の指標となるこの転落角が20°前後で、
水滴の被膜からの滑落性、又は飛散性に違いがあることが体感される。そして、滑水性被
膜を車両の窓に使用した場合には、このことは顕著に体感される。
【0022】
そして、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンが、処理剤の総量に対し0.2重量%未満
の場合、得られる被膜の転落角が20°を超えるので、被膜の滑水性が低いものとなる。
【0023】
又、処理剤を基材に塗布、そして乾燥後には、余剰分が乾固物となって基材上に残留す
る。処理剤の総量に対する前記直鎖状ポリジメチルシロキサンの濃度が3.0重量%を超
えると、被膜形成の際、乾固物の量が増加し、この除去工程に負荷がかかり、時間を要す
るようになる。この長時間の払拭は、被膜を擦傷する可能性を高め、滑水性、耐久性等に
悪影響を与える危険性を高める。
【0024】
さらには、処理剤の使用環境を考慮すると、この除去工程は、手作業による払拭である
場合が多いので、除去工程の時間(負荷)が大きい場合には、結果として、乾固物を除去
しきれず、被膜上に残留する場合が多くなる。余剰分が残留すると、水滴が余剰分に引っ
かかりスムーズに移動できなくなるため、滑水性が低下する。さらに、余剰分は白くまだ
らに被膜表面に残留するため、被膜の透光性の低下をもたらす。
【0025】
除去工程について、普通乗用車のフロントウィンドウに処理剤を塗布、乾燥後に、紙タ
オル、布、ワイパー等を用いる手作業による払拭を行って検討したところ、除去工程の時
間が6分を超えると相当な疲労を体感し、余剰分の除去が十分行えなくなることが判明し
た。
【0026】
そして、検討の結果、処理剤の総量に対する前記直鎖状ポリジメチルシロキサンの濃度
を3.0重量%以下とすれば、上記点についても考慮した処理剤とすることができること
がわかった。又、上記除去工程は、より短時間となることが好ましく、具体的には3分以
内であればなおよい。この点を考慮すると前記直鎖状ポリジメチルシロキサンは、処理剤
の総量に対し2.5重量%以下にすることが好ましい。
【0027】
前記直鎖状ポリジメチルシロキサンとしては、下記一般式[1]で示されるポリジメチ
ルシロキサンが好適に用いられる。
【0028】
【化1】

ここで、X及びXは、それぞれ、1価の加水分解可能な官能基であり、A及びA
は、それぞれ、2価の炭化水素基、-(CH)-NH-CO-O-基([i]は0〜9の整
数)、若しくは、酸素である。又、[n]は30〜400の整数でジメチルシロキサンユ
ニットの数を表す。さらに、[a]及び[b]は、それぞれ、0〜3の整数であり、[a
]又は[b]の少なくとも一方は2又は3でなければならない。
【0029】
又、前記一般式[1]で示されるポリジメチルシロキサンのA及びAは、加水分解
可能な官能基と撥水性や滑水性を発現するジメチルシロキサン鎖を繋ぐ部位である。従っ
て、この部位の安定性が低下すると、滑水性被膜からジメチルシロキサン鎖が容易に脱落
するようになり、被膜の耐久性が低下する。このことから、前記一般式[1]で示される
ポリジメチルシロキサンのA及びAは安定性に優れる2価の炭化水素基や酸素が好ま
しい。
【0030】
又、本発明の処理剤に使用される前記フルオロアルキルシランは、加水分解可能な官能
基を有し、さらに分子中にフルオロカーボンユニット(CF又はCF)の数が6〜1
2であるパーフルオロアルキル基(CF(CFt−1−)またはパーフルオロアル
キレン基(−(CF−)を有するものが用いられる。フルオロカーボンユニット(
CF又はCF)の数が増加すると、得られる滑水性被膜の耐光性や耐泥水研磨性が増
加する。ここで、前記t、及びuは整数を表している。
【0031】
しかしながら、フルオロカーボンユニットの数が増加すると、該フルオロアルキルシラ
ンの凝固点が常温以上にまで上昇するため、機能成分が凝固しやすくなって塗布が困難に
なるほか、該フルオロアルキルシランが余剰分となった場合には、これらが基材表面によ
り強固に固着するようになり、余剰分の除去に要する負荷が増加する。
【0032】
従って、得られる被膜の耐光性や耐泥水研磨性を向上させ、且つ処理剤の塗布を容易に
せしめ、さらに乾燥後の余剰分を容易にせしめ、普通乗用車のフロントウィンドウにおけ
る余剰分の除去に要する時間を6分以下にするためには、フルオロカーボンユニットの数
は6〜12とすることが重要である。
【0033】
さらに又前記フルオロアルキルシランは、その混入量を、処理剤の総量に対し、重量濃
度で0.2〜2.0重量%とすることが重要である。0.2重量%未満では耐光性や耐泥
水研磨性が著しく低下する。又、2.0重量%を超えると滑水性が大幅に低下し、転落角
が20°を超える。そして、より高い滑水性(転落角;18°以下)と耐久性を得るため
には、その混入量を、重量濃度で0.5〜1.6重量%とすることが好ましい。
【0034】
前記フルオロアルキルシランとしては、下記一般式[2]で示される片側末端に加水分
解可能な官能基を有するフルオロアルキルシランや下記一般式[3]で示される両側末端
に加水分解可能な官能基を有するフルオロアルキルシランが好適に用いられる。
【0035】
【化2】

ここで、Yは1価の加水分解可能な官能基である。さらに、[m]は6〜12の整数で
あり、フルオロカーボンユニット(CF又はCF)の数を表す。さらに、[p]は1
〜3の整数であり、加水分解可能な官能基の数を表す。
【0036】
【化3】

ここで、Y及びYは、それぞれ、1価の加水分解可能な官能基である。さらに、[m
]は6〜12の整数であり、フルオロカーボンユニットの数を表す。さらに、[q]及び
[r]は、それぞれ、1〜3の整数である。
【0037】
前記フルオロアルキルシランとしては、片側末端に加水分解可能な官能基を有するフル
オロアルキルシランとしてCF3(CF211CH2CH2Si(OCH33、CF3(CF2
11CH2CH2SiCH3(OCH32、CF3(CF211CH2CH2Si(CH32
CH3、CF3(CF29CH2CH2Si(OCH33、CF3(CF29CH2CH2Si
CH3(OCH32、CF3(CF29CH2CH2Si(CH32OCH3、CF3(CF2
7CH2CH2Si(OCH33、CF3(CF27CH2CH2SiCH3(OCH32
CF3(CF27CH2CH2Si(CH32OCH3、CF3(CF25CH2CH2Si(
OCH33、CF3(CF25CH2CH2SiCH3(OCH32、CF3(CF25CH2
CH2Si(CH32OCH3、CF3(CF211CH2CH2SiCl3、CF3(CF21
1CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(CF211CH2CH2Si(CH32Cl、CF3
CF29CH2CH2SiCl3、CF3(CF29CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(C
29CH2CH2Si(CH32Cl、CF3(CF27CH2CH2SiCl3、CF3
CF27CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(CF27CH2CH2Si(CH32Cl、
CF3(CF25CH2CH2SiCl3、CF3(CF25CH2CH2SiCH3Cl2、C
3(CF25CH2CH2Si(CH32Cl等のものが使用でき、さらに、両側末端に
加水分解可能な官能基を有するフルオロアルキルシランとしては、(CH3O)3SiCH
2CH2(CF212CH2CH2Si(OCH33、(CH3O)2CH3SiCH2CH2(C
212CH2CH2SiCH3(OCH32、CH3O(CH32SiCH2CH2(CF2
12CH2CH2Si(CH32OCH3、(CH3O)3SiCH2CH2(CF210CH2
2Si(OCH33、(CH3O)2CH3SiCH2CH2(CF210CH2CH2SiC
3(OCH32、CH3O(CH32SiCH2CH2(CF210CH2CH2Si(CH3
2OCH3、(CH3O)3SiCH2CH2(CF28CH2CH2Si(OCH33、(C
3O)2CH3SiCH2CH2(CF28CH2CH2SiCH3(OCH32、CH3O(
CH32SiCH2CH2(CF28CH2CH2Si(CH32OCH3、(CH3O)3
iCH2CH2(CF26CH2CH2Si(OCH33、(CH3O)2CH3SiCH2CH
2(CF26CH2CH2SiCH3(OCH32、CH3O(CH32SiCH2CH2(C
26CH2CH2Si(CH32OCH3、Cl3SiCH2CH2(CF212CH2CH2
SiCl3、Cl2CH3SiCH2CH2(CF212CH2CH2SiCH3Cl2、Cl(C
32SiCH2CH2(CF212CH2CH2Si(CH32Cl、Cl3SiCH2CH2
(CF210CH2CH2SiCl3、Cl2CH3SiCH2CH2(CF210CH2CH2
iCH3Cl2、Cl(CH32SiCH2CH2(CF210CH2CH2Si(CH32
l、Cl3SiCH2CH2(CF28CH2CH2SiCl3、Cl2CH3SiCH2CH2
CF28CH2CH2SiCH3Cl2、Cl(CH32SiCH2CH2(CF28CH2
2Si(CH32Cl、Cl3SiCH2CH2(CF26CH2CH2SiCl3、Cl2
3SiCH2CH2(CF26CH2CH2SiCH3Cl2、Cl(CH32SiCH2CH
2(CF26CH2CH2Si(CH32Cl等が使用できる。
【0038】
ただし、両側末端に加水分解可能な官能基を持ったフルオロアルキルシランは、両側末
端に加水分解可能な官能基を持つが故に、縮合が進みやすく、このため処理剤の塗布が困
難となる傾向がある。さらに、余剰分となった場合には縮合した余剰分となりやすいため
余剰分は基材に強固に固着し、乾燥後の余剰分の除去が困難となる。この点を考慮すると
、片側末端のみに加水分解可能な官能基を有するフルオロアルキルシランとすることが好
ましい。
【0039】
又、機能成分での加水分解可能な官能基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキ
シ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基又はイソシアネート基
等を用いることができる。ただし、加水分解可能な官能基の反応性が高すぎると、処理剤
を調合する時の取扱いが難しくなるだけでなく、処理剤のポットライフが短くなる。一方
、反応性が低すぎると、加水分解反応が十分進行しなくなり、生成するシラノール基の量
が十分でなくなるため、基材と得られる滑水性被膜の結合が十分でなくなり、被膜の耐久
性が低くなる。取扱いの容易さ、処理剤のポットライフ、得られる滑水性被膜の耐久性を
考慮すると、加水分解可能な官能基としてはアルコキシ基が好ましく、中でもメトキシ基
、エトキシ基が特に好ましい。
【0040】
又、機能成分の総量は、処理剤の総量に対し、重量濃度で0.5〜3.5重量%混入さ
れることが重要である。0.5重量%未満では得られる被膜の耐光性や耐泥水研磨性が低
下する。一方、3.5重量%を超える場合では余剰分の除去性が低下し、処理剤の塗布、
乾燥後の余剰分の除去工程において、紙タオル、布、ワイパー等を用いる手作業による払
拭時間が普通乗用車のフロントウィンドウにおいて6分を超える。そして、被膜の耐久性
をより高いものとし、処理剤の塗布・乾燥後の余剰分の除去を容易なものとするためには
、0.8〜3.0重量%とすることが好ましい。
【0041】
又、前記ポリジメチルシロキサンは、少なくとも一つの末端に加水分解可能な官能基を
2個又は3個有していれば良いが、そのようなものとして、加水分解可能な官能基を片側
末端のみに有するもの、あるいは、両側末端に加水分解可能な官能基を有しているものを
用いることができる。片側末端のみに反応性基を有するものは、他端が疎水性の高いアル
キル基であるため、より転落性の向上が望める。また、生成するシラノール基の数が少な
く反応性が低い。このため、縮合した余剰分の生成が少ないので、結果、被膜に強固に固
着する乾固物の生成が少なく、塗布、乾燥後の余剰分の除去が容易となる傾向があるが、
基材とも反応しにくくなる。従って、片側末端のみに加水分解可能な官能基を有するもの
を使用する場合は、処理剤中の該ポリジメチルシロキサンや前記フルオロアルキルシラン
の量を多くすることが好ましく、具体的には処理剤の総量に対し、その混入量を、重量濃
度で直鎖状ポリジメチルシロキサンを0.5〜2.5重量%、フルオロアルキルシランを
0.6〜1.6重量%、さらに、機能成分の総量を1.2〜3.0重量%とすることが好
ましい。
【0042】
他方、両側末端に加水分解可能な官能基を有するものは反応性が高くなる。このため、
基材と強固に結合しやすく、結果として耐久性に優れた滑水性被膜が得られるが、縮合さ
れた余剰分が生成しやすいので、処理剤を塗布・乾燥後の余剰分の除去性が悪くなる傾向
がある。従って、両側末端に加水分解可能な官能基を有するものを使用する場合は、処理
剤中の該ポリジメチルシロキサンや前記フルオロアルキルシランの量を少なくすることが
好ましく、具体的には処理剤の総量に対し、その混入量を、重量濃度で直鎖状ポリジメチ
ルシロキサンが0.2〜2.0重量%、フルオロアルキルシランが0.5〜1.4重量%
、さらに、機能成分の総量が0.8〜2.5重量%とすることが好ましい。
【0043】
処理剤に用いる溶媒には、他の成分(直鎖状ポリジメチルシロキサン、フルオロアルキ
ルシラン、水、酸)を溶解させる有機溶媒を用いることができ、これらにはエチルアルコ
ール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブ
チルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン、トルエン
、ベンゼン、キシレン等の炭化水素溶媒類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル
等のエーテル類やそれらの混合物を用いることが好ましい。中でも、メチルエチルケトン
、酢酸エチル、ヘキサン、ジエチルエーテル及びジイソプロピルエーテルの中から選ばれ
る一種以上の溶媒とエチルアルコールやイソプロピルアルコール等の低級アルコールの混
合溶媒は、直鎖状ポリジメチルシロキサン、フルオロアルキルシラン、水及び酸の溶解性
が高く、さらに、処理剤の塗布性(塗り伸ばしやすさ)や処理剤の乾燥時間(作業時間)
が適度になるので特に好ましい。
【0044】
又、本発明の処理剤に使用される水は、前記直鎖状ポリジメチルシロキサン及び前記フ
ルオロアルキルシランが有する加水分解可能な官能基の数に対して、分子数で1倍〜10
0倍とするのが好ましい。1倍未満では、加水分解反応が進行せず、シラノール基が十分
に生成しにくく、得られる滑水性被膜の耐久性が低下し、好ましくない。又、100倍を
超えると、前記直鎖状ポリジメチルシロキサン、前記フルオロアルキルシラン及び水が処
理剤内で均一に溶解することが難しくなり好ましくない。又、水の量が増えると、反応速
度が大きくなり、結果として処理剤のポットライフが短くなる。従って、ポットライフを
考慮すると50倍以下であることがより好ましい。
【0045】
さらに処理剤に使用される酸は、機能成分の加水分解反応を促進させる触媒的な役割を
し、硝酸、塩酸、酢酸、硫酸、その他有機酸等を使用することができる。そして、前記水
と混合した状態でpH値が0〜5、好ましくは、0〜2となるように混合される。
【0046】
次に滑水性被膜を得るため処理剤の好ましい調製方法について説明する。滑水性被膜を
得るため処理剤は、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンと前記フルオロアルキルシランと
溶媒の混合物に、加水分解反応を起こさせるための水と酸を添加、混合し、前記直鎖状ポ
リジメチルシロキサンと前記フルオロアルキルシランとを加水分解させることにより得ら
れる。ここで、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルオロアルキルシランとを先に混合す
るのは、両成分を処理剤中に均質に混合させるためである。しかしながら、酸、水、直鎖
状ポリジメチルシロキサン及びフルオロアルキルシランを同時に混合しても良い。
【0047】
次に、得られた処理剤を使用して、滑水性被膜を得る方法について説明する。
【0048】
上記で得られた塗布液を基材表面に塗布する塗布方法としては、手塗り、ノズルフロー
コート法、ディッピング法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法、フロ
ーコート法、スピンコート法、それらの併用等各種被膜の形成方法が適宜採用し得る。
【0049】
処理剤が塗布される基材は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス基材の場
合には、建築物用窓ガラスや鏡に通常使用されているフロ−ト板ガラス、又はロ−ルアウ
ト法で製造されたソーダ石灰ガラス等無機質の透明性がある板ガラスを使用できる。当該
板ガラスには、無色のもの、着色のもの共に使用可能で、他の機能性膜との組み合わせ、
ガラスの形状等に特に限定されるものではない。平板ガラス、曲げ板ガラスはもちろん風
冷強化ガラス、化学強化ガラス等の各種強化ガラスの他に網入りガラスも使用できる。さ
らには、ホウケイ酸塩ガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス、低膨張結晶化ガラス、ゼ
ロ膨張結晶化ガラス等の各種ガラス基材を用いることができる。
【0050】
ガラス基材は単板で使用できるとともに、複層ガラス、合わせガラス等としても使用で
きる。又、前記被膜の形成は基材の片面であっても両面であってもかまわないし、基材表
面の全体であっても、一部分であってもかまわない。
【0051】
本発明の処理剤から得られる被膜は、可視光透過性に優れるものであるが、可視光透過
性を要求されない用途であっても使用することができ、その場合、セラミックス、金属等
の基材を使用してもよい。
【0052】
又、本発明の処理剤は特に加熱を必要としないので、ポリカーボネート、ポリエチレン
テレフタレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、その他
のプラスチック基材を使用することが可能である。
【0053】
さらに、基材には、官能基を4個有するケイ素化合物が添加された溶液を基材に塗布し
、そして固化することで前記ケイ素化合物由来のプライマ−層が形成されたものを使用し
ても良い。該プライマ−層は、被膜との結合サイト、すなわちシラノール基の数を基材そ
のものに比べて、多くすることができる。かくして、該プライマ−層が形成された基材を
使用して形成された滑水性被膜は、更なる耐久性向上が期待できる。そして、前記プライ
マ−層は、単分子でなる層としてもよい。
【0054】
前記官能基を4個有するケイ素化合物としては、テトライソシアネートシラン、テトラ
ハロゲン化シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を使用できる。そし
て、これら化学種を、溶媒に添加し、基材表面に塗布するための溶液を調製する。該溶媒
には、アルコール類、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール
、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、又は、パラフィン系炭化水素や芳香族炭
化水素の一般有機溶剤、例えばn−ヘキサン、トルエン、クロロベンゼン等、又はこれら
の混合物を使用することができる。
【0055】
前記溶液のpHを0〜5と調整するために、塩酸、硝酸、酢酸などの酸を導入してもよ
く、前記化学種の加水分解反応を促進させるために少量の水を導入してもよい。又、プラ
イマ−層を効率的に形成させるために、前記化学種を、溶媒に対して、0.5重量%乃至
2重量%、好適には0.7重量%乃至1.5重量%、より好適には0.9重量%乃至1.
2重量%添加し、前記溶液を調整することが好ましい。
【0056】
上記塗布液をガラス基材表面に塗布する方法としては、スプレーコート法、バーコート
法、ロールコート法、スピンコート法、刷毛塗り、ディップコート法等の公知手段を使用
することができる。そして、プライマ−層の形成のしやすさ、溶液の調製のしやすさ、そ
して、シラノール基の形成数等を考慮すると、前記化学種には、テトライソシアネートシ
ランを使用することが好ましい。
【0057】
基材との密着性を高めるために、前記溶液を基材に塗布後に50℃〜350℃、好適に
は、100℃〜300℃で焼成してもよい。そして、プライマ−層形成後すぐに本発明の
処理剤を塗布し滑水性被膜を形成してもよい。又、プライマ−層が形成された基材を保管
、流通等がされた後に本発明の処理剤を基材に塗布する場合、プライマ−層上のシラノー
ル基が、有機物や大気中に存在する水分等の影響で消失し、失活することが起こりうるの
で、失活したプライマ−層への酸性溶液の接触、又は紫外線照射等により、シラノール基
を復活させ、プライマ−層を再度活性な状況とすることが好ましい。
【0058】
次ぎに処理剤を基材に塗布後の処理について述べる。基材に処理剤を塗布後、乾燥させ
ることで、前記ポリジメチルシロキサン及び前記フルオロアルキルシランを基材と結合さ
せる。乾燥手段は、風乾でよく、室温で、例えば、15℃〜30℃、相対湿度30%〜6
0%の環境で、5分間〜20分間で放置するだけでよい。乾燥時間を短くするために、汎
用のドライヤー等で熱風を吹き付けてもよく、基材を加熱できる環境であれば、80℃〜
250℃で加熱してもよい。
【0059】
最後に、余剰分が乾固物となって被膜上に残留するので、この余剰分を有機溶剤で湿ら
した紙タオルや布および/または乾いた紙タオルや布で払拭することにより滑水性被膜が
形成された基材が得られる。
【0060】
本発明における滑水性とは、実施例の評価方法で述べるような方法で評価されるもので
、サンプル表面上に50μlの純水を滴下した後、該サンプルを徐々に傾けていき、水滴
が動き始める時点の傾斜角度を測定することで評価するものである。尚、該傾斜角度を転
落角(°)とし、転落角は協和界面科学製CA−A型を用いて大気中(約25℃)で測定
した。
【実施例】
【0061】
以下に本発明の実施例について説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるも
のではない。滑水性被膜の評価方法を以下に示す。
【0062】
〔滑水性被膜の評価方法〕
【0063】
(1)接触角
滑水性被膜を有するサンプル表面に、純水約2μlを置いたときの水滴とサンプル表面
とのなす角を接触角計で測定した。尚、接触角計には協和界面科学製CA−X型を用い、
大気中(約25℃)で測定した。
【0064】
(2)転落角
サンプルを水平に保持した状態で、サンプル表面上に50μlの純水を滴下した後、サ
ンプルを徐々に傾けていき、水滴が動き始める時点の傾斜角度を転落角(°)とした。尚
、転落角は協和界面科学製CA−A型を用いて大気中(約25℃)で測定した。転落角の
初期性能が、20°以下のものを滑水性の指標に関し合格(表1又は表2中で○と表記)
、18°以下のものを特に優れるとした(表1又は表2中で◎と表記)。尚、20°超の
ものは不合格とし、表1又は表2中にて×と表記した。
【0065】
(3)余剰分の除去性
処理剤を塗布して風乾させた後、目視で白くまだらに残留している余剰分をイソプロピ
ルアルコールを湿らした紙タオル(品名:キムタオル)で拭き上げて透明なサンプル(普
通自動車のフロントウィンドウ)を作製する際に、透明サンプルを得るのに要する時間を
測定した。余剰分の除去時間(拭き取り時間)が6分以下であるものを合格とした(表1
又は表2中に○と表記)。さらに3分以内で完了するものは特に余剰分の除去性が特に優
れると判断した(表1又は表2中で◎と表記)。尚、除去時間に6分超要したものは不合
格とし、表1中にて×と表記した。
【0066】
(4)耐泥水研磨性(セリア研磨性)
ガラス用研磨剤ミレークA(T)(三井金属鉱業製)を水道水に分散させたセリア懸濁液
(10重量%)を染み込ませた綿布で、サンプル表面を約1.5kg/cmの強さで研
磨した。研磨領域の70%が親水化するまでの研磨回数(往復)を評価した。ここでは、
40回以上を合格(表1中又は表2で○と表記)、50回以上を良(表1中又は表2で◎
と表記)、60回以上を優(表1又は表2中で◎+と表記)とした。尚、40回未満のも
のを不合格とし、表1又は表2中で×と表記した。
【0067】
(5)耐光性
メタルハライドランプの強力なUV光を以下の条件でサンプルに2時間照射した後の接
触角(°)を測定して評価した。ここでは試験後の水滴の接触角が70°以上を合格(表
1中で○と表記)、80°以上を良(表1又は表2中で◎と表記)、100°以上を優(
表1又は表2中で◎+と表記)とした。尚、70°未満のものを不合格とし、表1中で×
と表記した。
【0068】
・ ランプ:アイグラフィックス製M015−L312
・ ランプ強度:1.5kW
・ 照度:下記条件における測定値が128mW/cm
・ 測定装置:紫外線強度計(ミノルタ製、UM−10)
・ 受光部:UM−360
(受光波長域;310〜400nm、ピーク波長;365±5nm)
・ 測定モード:放射照度測定
【0069】
本発明の処理剤を処理した滑水性被膜が被覆された基材は屋外で使用されることが多く
、太陽光に暴露される。また、砂埃も付着しやすいため、清掃時の雑巾払拭や車両用ガラ
スに使用した場合のガラスの上げ下げ、ワイパー払拭時には乾燥した、あるいは、水を含
んだ砂埃によって表面が研磨される。このようなことを考慮すると、耐光性や耐泥水研磨
性を改善させることは被膜の寿命を長くするためには重要である。
【0070】
実施例1
(1)処理剤の調製
処理剤は、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルオロアルキルシランを混合して得られ
た混合物に酸性水溶液を添加、攪拌することによって得た。図1に処理剤の調製手順と各
薬液の混入割合(重量比)を示す。又、サンプルの作製条件と結果物の評価結果を表1に
示す。
【0071】
先ず、ジメチルシロキサンユニットの数が250の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状
ポリジメチルシロキサン〔(CHO)SiCHCH{Si(CHO}250
Si(CHCHCHSi(OCH〕;0.50g、メチルエチルケトン
;48.85g、フルオロカーボンユニットの数が8のフルオロアルキルシラン〔CF
(CFCHCHi(OCH〕;0.80gとイソプロピルアルコール;
48.85gを混合し、約5分間攪拌した。次いで、0.5N硝酸水溶液;1.0gを添
加し、約2時間室温で攪拌した。以上の方法により、処理剤の総量に対し、混入された直
鎖状ポリジメチルシロキサンの重量濃度(以降「ポリジメチルシロキサン濃度」と記載す
る)が0.5重量%、処理剤の総量に対し、混入されたフルオロアルキルシランの重量濃
度(以降「フルオロアルキルシラン濃度」と記載する)が0.8重量%の処理剤を得た。
【0072】
(2)ガラス基板の洗浄
300mm×300mm×2mm厚サイズのフロートガラス、又は普通自動車のフロン
トウィンドウの表面を研磨液を用いて研磨し、水洗及び乾燥した。なお、ここで用いた研
磨液は、ガラス用研磨剤ミレークA(T)(三井金属鉱業製)を水に混合した2wt%の
セリア懸濁液を用いた。
【0073】
(3)滑水性被膜の形成
上記(1)で調製した処理剤;1.0ml(300mm×300mm×2mm厚サイズ
)、又は10ml(フロントウィンドウ)をガラス基板上に滴下し、綿布(商品名;ベン
コット)でガラス全面に十分引き伸ばした後、5分程度風乾した。その後、目視で白くま
だらに残留している余剰分をイソプロピルアルコールで湿らした紙タオルで拭き上げて透
明なサンプルを得た。
【0074】
上記[滑水性被膜の評価方法]に記載した要領で評価したところ、表1に示すとおり、
余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角は18°と良好な水滴転落性を示し
、セリア研磨試験においては70%を親水化させるのに50往復を要し、さらに耐光性試
験では2h照射後の接触角が85°と高く、耐久性に優れていた。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例2
ジメチルシロキサンユニットの数が400の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジ
メチルシロキサン〔(CHO)SiCHCH{Si(CHO}400Si(
CHCHCHSi(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとし
た。
【0077】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は18°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に45往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が80°と高く、耐久性に
優れていた。
【0078】
実施例3
ジメチルシロキサンユニットの数が100の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジ
メチルシロキサン〔(CHO)SiCHCH{Si(CHO}100Si(
CHCHCHSi(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとし
た。
【0079】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は17°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に50往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が84°と高く、耐久性に
優れていた。
【0080】
実施例4
ジメチルシロキサンユニットの数が50の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ
チルシロキサン〔(CHO)SiCHCH{Si(CHO}50Si(CH
CHCHSi(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0081】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は18°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に50往復を要し、さらに耐光性試験では試験後の接触角が80°と高く、耐久性に優れ
ていた。
【0082】
実施例5
ジメチルシロキサンユニットの数が250の両末端ジアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ
チルシロキサン〔(CHO)(HC)SiCHCH{Si(CHO}25
Si(CHCHCHSi(CH)(OCH〕を用いた以外はすべて
実施例1と同じとした。
【0083】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は16°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に50往復を要し、耐久性に優れていた。さらに、耐光性試験では2h照射後の接触角が
76°であった。
【0084】
実施例6
ジメチルシロキサンユニットの数が250の片末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジ
メチルシロキサン〔(CHSiO{Si(CHO}250Si(CH
CHSi(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0085】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は16°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に55往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が80°と高く、耐久性に
優れていた。
【0086】
実施例7
フルオロアルキルシラン濃度を1.6重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした

【0087】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好で、初期転落角は20°
であった。又、セリア研磨試験においては70%を親水化させるのに55往復を要し、さ
らに耐光性試験では試験後の接触角が83°と高く、耐久性に優れていた。
【0088】
実施例8
フルオロアルキルシラン濃度を0.4重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした

【0089】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は18°と良好な水滴転落性を示した。さらに又、セリア研磨試験においては70%を親
水化させるのに40往復、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角は75°であった。
【0090】
実施例9
フルオロカーボンユニットの数が10のフルオロアルキルシラン〔CF(CF
CHCHSi(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0091】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は17°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に50往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角は106°と高く、耐久性
に優れていた。
【0092】
実施例10
フルオロカーボンユニットの数が6のフルオロアルキルシラン〔CF(CF
CHSi(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0093】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好で、初期転落角は18°
であった。又、セリア研磨試験においては70%を親水化させるのに45往復を要し、耐
久性に優れていた。又さらに耐光性試験では2h照射後の接触角は74°であった。
【0094】
実施例11
フルオロカーボンユニットの数が6であり、両末端トリアルコキシタイプのフルオロア
ルキルシラン〔(CHO)SiCHCH(CFCHCHSi(OCH
〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0095】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は良好であり、初期転落角は20°で
あった。又、セリア研磨試験においても70%を親水化させるのに40往復必要であった
。さらに耐光性試験では2h照射後の接触角は88°と高く、耐久性に優れていた。
【0096】
実施例12
ポリジメチルシロキサン濃度を1.3重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした

【0097】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は17°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に45往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が82°と高く、耐久性に
優れていた。
【0098】
実施例13
ポリジメチルシロキサン濃度を1.0重量%、フルオロアルキルシラン濃度を1.6重
量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルオロアルキルシランの総量を処理
剤の総量に対して2.6重量%とした以外はすべて実施例6と同じとした。
【0099】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は18°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に45往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が80°と高く、耐久性に
優れていた。
【0100】
実施例14
ポリジメチルシロキサン濃度を2.5重量%とした以外はすべて実施例6と同じとした

【0101】
結果、物性は表1に示すとおり、良好であった。又初期転落角は13°と良好な水滴転
落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるのに45往復を要し、さら
に耐光性試験では2h照射後の接触角が82°と高く、耐久性に優れていた。
【0102】
実施例15
ポリジメチルシロキサン濃度を0.25重量%とした以外はすべて実施例1と同じとし
た。
【0103】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は18°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるの
に45往復を要し、さらに耐光性試験では試験後の接触角が82°と高く、耐久性に優れ
ていた。
【0104】
実施例16
ポリジメチルシロキサン濃度を1.0重量%、フルオロアルキルシラン濃度を1.6重
量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルオロアルキルシランの総量を処理
剤の総量に対して2.6重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。
【0105】
結果、物性は表1に示すとおり、良好であり、初期転落角は20°であった。又、セリ
ア研磨試験においては70%を親水化させるのに45往復を要し、さらに耐光性試験では
試験後の接触角が81°と高く、耐久性に優れていた。
【0106】
実施例17
ポリジメチルシロキサン濃度を0.25重量%、フルオロアルキルシラン濃度を0.4
重量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルオロアルキルシランの総量を処
理剤の総量に対して0.65重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。
【0107】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性は非常に良好であった。又初期転落角
は18°と良好な水滴転落性を示した。さらに又、セリア研磨試験においては70%を親
水化させるのに40往復、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角は70°であった。
【0108】
実施例18
基材にプライマ−層が形成されたものを使用した以外は、実施例1と同様とした。基材
上へのプライマ−層の形成方法について次ぎに述べる。テトライソシアネートシラン〔S
i(NCO)、松本製薬(株)製〕0.2gを酢酸エチル〔CH3COOC〕20
gと混合し、テトライソシアネートシランが1.0重量%添加された溶液を得た。該溶液
を綿布(商品名;ベンコット)にしみ込ませ、その綿布でセリア研磨されたガラス基材上
を二度塗りにならないよう拭き上げた。その後、室温で5分程度乾燥させた後、炉内で1
80℃、13分間(炉出し時板温150℃)熱処理し、シリカ膜のプライマ−層が形成さ
れたガラス基材を得た。
【0109】
その後、すぐに実施例1と同様に処理剤の塗布、拭き上げを行い透明なサンプルを得た
。上記[高滑水性被膜の評価方法]に記載した要領で評価したところ、表1に示すとおり
、余剰分の除去性は良好であった。また初期転落角は20°と良好な水滴転落性を示し、
セリア研磨試験においては70%を親水化させるのに70往復を要し、さらに耐光性試験
では2h照射後の接触角が108°と高く、耐久性に優れていた。表2にプライマ−層が
形成された基材を使用して形成されたサンプルの作製条件と結果物の評価結果を表1に示
す。
【表2】

【0110】
実施例19
プライマー層を得るための熱処理温度を300℃で13分間(炉出し時板温250℃)
とした以外は実施例19と同様である。結果は、初期転落角は17°と良好な水滴転落性
を示し、セリア研磨試験においては70%を親水化させるのに75往復を要し、さらに耐
光性試験では2h照射後の接触角が102°と高く、耐久性に優れていた。
【0111】
実施例20
プライマー層を形成後、3時間大気中に放置した。それ以外は、実施例19と同様であ
る。結果は、初期転落角は18°と良好な水滴転落性を示し、セリア研磨試験においては
70%を親水化させるのに65往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が
108°と高く、耐久性に優れていた。
【0112】
実施例21
プライマー層を形成後、4日間大気中に放置した。その後、基材を0.5規定硝酸に2
時間浸漬した。それ以外は、実施例19と同様である。結果は、セリア研磨試験において
70%を親水化させるのに65往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が
106°と高く、耐久性に優れていた。
【0113】
実施例22
プライマー層を形成後4日間大気中に放置した。その後、コロナ放電装置を用いて紫外
線照射を行った。それ以外は、実施例19と同様である。結果は、セリア研磨試験におい
て70%を親水化させるのに65往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角
が98°と高く、耐久性に優れていた。
【0114】
実施例23
ジメチルシロキサンユニットの数が30の片末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ
チルシロキサン〔(HC)SiCHCH{Si(CHO}30Si(CH
CHCHSi(CH)(OCH〕を用いた以外は実施例19と同様であ
る。結果は、転落角は15°と非常に良い値を示しつつ、セリア研磨試験において70%
を親水化させるのに50往復を要し、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が97°
と高く、耐久性にも優れていた。
【0115】
実施例24
プライマー層を得るための溶液を塗布後の熱処理を行わなかった以外は、実施例19と
同様とした。結果、セリア研磨試験では70%親水化するまでの回数は45往復とプライ
マー層を形成しなかった実施例1等とほぼ同様であった。
【0116】
実施例25
プライマー塗布後の熱処理を70℃で13分間(炉出し時板温50℃)で行った以外は
、実施例19と同様とした。結果、セリア研磨試験では70%親水化するまでの回数は5
5往復であった。
【0117】
実施例26
プライマー層を得るため塗布液において、テトライソシアネートシランの添加量を0.
5重量%とした以外は、実施例19と同様とした。結果、セリア研磨試験では70%親水
化するまでの回数は40往復であった。
【0118】
実施例27
プライマー層を形成後、4日間大気中に放置した。それ以外は、実施例19と同様であ
る。結果は、セリア研磨試験においては70%を親水化させるのに50往復、さらに耐光
性試験では2h照射後の接触角が90°であった。
【0119】
比較例1
ジメチルシロキサンユニットの数が22の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジメ
チルシロキサン〔(CHO)SiCHCH{Si(CHO}22Si(CH
CHCHSi(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0120】
結果、物性は表1に示すとおり、セリア研磨試験において35往復で70%が親水化し
、耐久性が低かった。
【0121】
比較例2
ジメチルシロキサンユニットの数が500の両末端トリアルコキシタイプ直鎖状ポリジ
メチルシロキサン〔(CHO)SiCHCH{Si(CHO}500Si(
CHCHCHSi(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとし
た。
【0122】
結果、物性は表1に示すとおり、セリア研磨試験において35往復で70%が親水化し
、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が63°となり、耐久性が低かった。
【0123】
比較例3
フルオロアルキルシラン濃度を2.5重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした

【0124】
結果、物性は表1に示すとおり、初期転落角は25°と水滴転落性は低かった。
【0125】
比較例4
フルオロアルキルシラン濃度を0.1重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした

【0126】
結果、物性は表1に示すとおり、セリア研磨試験において20往復で70%が親水化し
、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が50°となり、耐久性が低かった。
【0127】
比較例5
フルオロカーボンユニットの数が1のフルオロアルキルシラン〔CFCHCH
i(OCH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0128】
結果、物性は表1に示すとおり、セリア研磨試験において10往復で70%が親水化し
、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が65°となり、耐久性が低かった。
【0129】
比較例6
ポリジメチルシロキサン濃度を3.5重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした

【0130】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性が悪く、容易に透明なものが得られな
かった。
【0131】
比較例7
ポリジメチルシロキサン濃度を0.1重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした

【0132】
結果、物性は表1に示すとおり、初期転落角は23°と水滴転落性は低かった。
【0133】
比較例8
ポリジメチルシロキサン濃度を2.0重量%、フルオロアルキルシラン濃度を2.0重
量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルオロアルキルシランの総量を処理
剤の総量に対して4.0重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。
【0134】
結果、物性は表1に示すとおり、余剰分の除去性が悪く、容易に透明なものが得られな
かった。
【0135】
比較例9
ポリジメチルシロキサン濃度を0.2重量%、フルオロアルキルシラン濃度を0.2重
量%、すなわち、直鎖状ポリジメチルシロキサンとフルオロアルキルシランの総量を処理
剤の総量に対して0.4重量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。
【0136】
結果、物性は表1に示すとおり、セリア研磨試験において70%を親水化させるのに2
5往復、さらに耐光性試験では2h照射後の接触角が55°なりと耐久性が低かった。
【0137】
比較例10
ジメチルシロキサンユニットの数が250の両末端モノアルコキシタイプ直鎖状ポリジ
メチルシロキサン〔CHO{Si(CHO}250Si(CHOCH〕を
用いた以外はすべて実施例1と同じとした。
【0138】
結果、物性は表1に示すとおり、耐光性試験では2h照射後の接触角が66°となり耐
久性が低かった。
【0139】
比較例11
ジメチルシロキサンユニットの数が250のトリメチル封鎖タイプ直鎖状ポリジメチル
シロキサン〔CH{Si(CHO}250Si(CH〕を用いた以外はすべ
て実施例1と同じとした。
【0140】
結果、物性は表1に示すとおり、耐光性試験では2h照射後の接触角が61°となり耐
久性が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】実施例1における処理剤の調製手順を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの末端に加水分解可能な官能基を2個又は3個有し、且つジメチルシロキ
サンユニット(Si(CHO)の数が30〜400である直鎖状ポリジメチルシロ
キサン、及び加水分解可能な官能基を有し、且つフルオロカーボンユニット(CF又は
CF)の数が6〜12であるフルオロアルキルシラン、そして、有機溶媒、酸、及び水
を有する溶液を混合してなる処理剤であり、処理剤の総量に対し、重量濃度で前記直鎖状
ポリジメチルシロキサンが0.2〜3.0重量%、前記フルオロアルキルシランが0.2
〜2.0重量%、そして、前記直鎖状ポリジメチルシロキサンと前記フルオロアルキルシ
ランとの総量が0.5〜3.5重量%混入されたことを特徴とする滑水性被膜を得るため
の処理剤。
【請求項2】
直鎖状ポリジメチルシロキサンが加水分解可能な官能基を片側末端のみに有することを特
徴とする請求項1に記載の滑水性被膜を得るための処理剤。
【請求項3】
処理剤の総量に対し、重量濃度で前記直鎖状ポリジメチルシロキサンが0.5〜2.5重
量%、前記フルオロアルキルシランが0.6〜1.6重量%、そして、直鎖状ポリジメチ
ルシロキサンとフルオロアルキルシランとの総量が1.2〜3.0重量%混入されたこと
を特徴とする請求項2に記載の滑水性被膜を得るための処理剤。
【請求項4】
直鎖状ポリジメチルシロキサンが加水分解可能な官能基を両側末端に有することを特徴と
する請求項1に記載の滑水性被膜を得るための処理剤。
【請求項5】
処理剤の総量に対し、重量濃度で前記直鎖状ポリジメチルシロキサンが0.2〜2.0重
量%、前記フルオロアルキルシランが0.5〜1.4重量%、さらに、直鎖状ポリジメチ
ルシロキサンとフルオロアルキルシランとの総量が0.8〜2.5重量%混入されたこと
を特徴とする請求項4に記載の滑水性被膜を得るための処理剤。
【請求項6】
加水分解可能な官能基がアルコキシ基であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のい
ずれかに記載の滑水性被膜を得るための処理剤。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の処理剤を基材に塗布する工程、処理剤が塗布さ
れた基材を乾燥する工程、及び乾燥後に遊離状態にある未反応の又は加水分解した若しく
は縮合した直鎖状ポリジメチルシロキサン及びフルオロアルキルシランを除去する工程を
有することを特徴とする滑水性被膜の作製法。
【請求項8】
基材が、官能基を4個有するケイ素化合物が添加された溶液を基材に塗布し、そして固化
することで前記ケイ素化合物由来のプライマ−層が形成されたものであることを特徴とす
る請求項7に記載の滑水性被膜の作製法。
【請求項9】
官能基を4個有するケイ素化合物がテトライソシアネートシランであることを特徴とする
請求項8に記載の滑水性被膜の作製法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−144019(P2006−144019A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335253(P2005−335253)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【分割の表示】特願2005−43682(P2005−43682)の分割
【原出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】