説明

漂白助剤、および該漂白助剤を含有する漂白助剤粒子

【課題】微量で過酸化水素系化合物の漂白効果を促進できる漂白助剤、および該漂白助剤を含有する漂白助剤粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の漂白助剤は、(a)配位座が5以下のキレート剤および/または該キレート剤から生じた陰イオンと、(b)銅および/またはマンガン化合物とを含有することを特徴とする。また、本発明の漂白助剤粒子は、前記漂白助剤、および(c)バインダー化合物を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漂白助剤、および該漂白助剤を含有する漂白助剤粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から衣料、住居等の衛生処理には、漂白効果を有する物質を含有した漂白剤組成物が使用されている。このような組成物の漂白効果は、通常、酸化反応によって発揮され、酸化反応を担う酸化反応成分としては、過酸化水素系の化合物(過酸化水素、水に溶解して過酸化水素を発生する過酸化物など)や、用途によっては、塩素系化合物(次亜塩素酸ナトリウムなど)などが用いられる場合もある。これらのなかでは、特に最近では、簡便に使用できる点などから過酸化水素系の化合物が注目されている。
【0003】
過酸化水素系漂白剤は、色柄物に使用できるといった特徴を有し、衣料用漂白剤の主流となってきているが、その一方で、漂白力の点で塩素系漂白剤に劣っているという問題がある。そのため、従来の漂白剤組成物においては、例えば低温条件下における漂白効果が不十分なことがあり、酸化反応成分とともに、その酸化反応を促進する特性を有する有機過酸前駆体や金属錯体等の漂白助剤を使用することが提案されている
【0004】
過酸化水素系漂白剤の漂白力を高めるために、過酸化水素と金属原子を含有する錯体(金属錯体)を併用する方法として、例えば非特許文献1、2には、金属錯体における中心金属の酸化状態の変化を利用して漂白効果を得る方法が開示されている。金属錯体は洗浄液中で過酸化水素により中心金属の酸化状態が変化して、高い酸化力を示す金属錯体となり汚れに作用して漂白効果を奏する。汚れに作用して中心金属の酸化状態が元に戻った金属錯体は、再び過酸化水素と反応するといった触媒的なメカニズムを示すため、少量の金属錯体で高い漂白力を得ることができる。このように、触媒的なメカニズムを示し、効率的に過酸化水素を活性化できる特徴を持つ金属錯体は、漂白活性化触媒とも呼ばれ、低濃度で漂白効果を示すことから経済的にも、環境的にも好ましいという利点を有する。
【0005】
金属錯体による漂白効果はその中心金属と配位子の組み合わせによって異なるため、種々の配位子と遷移金属の組み合わせが研究されている。例えば、特許文献1,2には、ヒドロキシカルボン酸を配位子とするマンガン錯体が記載されており、特許文献3には環状ポリアミンを配位子とするマンガン錯体が記載されており、特許文献4には置換されたジアミンを配位子とする銅錯体が記載されている。
また、特許文献5には、金属錯体による染着を抑制するために、金属錯体からなる漂白活性化触媒と界面活性剤とバインダー化合物を含有する造粒物の形態とすることが記載されている。
【非特許文献1】Nature,VOL.369(1994)637〜639頁
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc,VOL.115(1993)1772〜1773頁
【特許文献1】特公平6−33431号公報
【特許文献2】特公平6−70240号公報
【特許文献3】特開平5−263098号公報
【特許文献4】米国特許第5021187号明細書
【特許文献5】特開2005−206835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の漂白剤組成物はいずれも、漂白性能の向上と良好な保存安定性をともに満足できるものではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、微量で過酸化水素系化合物の漂白効果を促進できる漂白助剤、および該漂白助剤を含有する漂白助剤粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、によって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第一の態様は、(a)配位座が5以下のキレート剤および/または該キレート剤から生じた陰イオンと、(b)銅および/またはマンガン化合物を含有することを特徴とする漂白助剤である。
また、本発明の漂白助剤は、前記(a)が下記一般式(I)〜(III)のいずれかの構造で示される化合物であることが好ましい。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xは水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。pは1または2の整数を表し、pが2の場合、Xは同一のものでも、異なるものでも良い。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、X〜Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基からなる群より選ばれる1種を表し、Qは水素原子またはアルキル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表し、nは0または1である。)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Yはアルキル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、水酸基、または水素原子を表し、X〜Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基からなる群より選ばれる1種を表し、nは0から5の整数を表す。)
また、本発明の漂白助剤は、前記(a)が前記(b)よりもモル比において、1等量以上であることが好ましい。
また、本発明の第二の態様は、上記のいずれか一項に記載の漂白助剤と、(c)バインダー化合物を含有することを特徴とする漂白助剤粒子である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微量で過酸化水素系化合物の漂白効果を促進し、かつ、過酸化水素系化合物の分解抑制効果に優れた漂白助剤、および該漂白助剤を含有する漂白助剤粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
<漂白助剤(A)>
本発明の漂白助剤(以下、漂白助剤(A)と呼ぶ。)は、例えば漂白剤組成物などにおいて、漂白効果を奏する酸化反応成分とともに使用されることによって、酸化促進効果を発揮するものであって、(a)配位座が5以下のキレート剤および/または該キレート剤から生じた陰イオン(以下、(a)成分と略す。)と、(b)銅および/またはマンガン化合物(以下、(b)成分と略す。)とを含有して構成される。
なお、本明細書において「漂白効果」とは、例えば紅茶などの色素が沈着して形成された染みを薄く、または除去できる効果のことを言う。
【0016】
本発明の漂白助剤(A)は、少なくとも上述した(a)成分と、(b)成分とを含んでいればよく、これらを含む単なる混合物であってもよいし、(a)成分が配位子として配位し、錯形成した錯体であってもよい。また、これらが混在した状態のものであってもよい。
【0017】
「(a)成分」
本発明の漂白助剤(A)を構成する(a)成分は、配位座が5以下のキレート剤および/または該キレート剤から生じた陰イオンであり、1個の分子中に金属への配位可能な配位座を5以下有する化合物であれば特に限定されることはなく、例えば下記の化合物が挙げられる。
トリポリリン酸塩等の無機ポリリン酸塩化合物;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1−ジホスホン酸またはそれらの塩等のホスホン酸類;シュウ酸、コハク酸、またはそれらの塩等のポリカルボン酸類;クエン酸、リンゴ酸、またはそれらの塩等のヒドロキシカルボン酸類;イソセリンジ酢酸またはそれらの塩等のアミノポリカルボン酸類が好ましく用いられ、特に以下に示す(I)〜(III)式で表される化合物であることが好ましい。
(I)式で表される化合物としては、2−ピリジンカルボン酸や、2,6−ピリジンジカルボン酸(ジピコリン酸)またはそれらの塩、(II)式で表される化合物は、イミノジコハク酸や3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸またはそれらの塩、(III)式で表される化合物は、ニトリロトリ酢酸、メチルグリシンジ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、セリン二酢酸またはそれらの塩等が挙げられ、特にイミノジコハク酸が好ましい。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられ、ナトリウム塩、またはカリウム塩が特に好ましい。
【0018】
本発明の漂白助剤(A)を構成する(a)成分は、配位座が5以下のキレート剤および/または該キレート剤から生じた陰イオンであればよいが、下記一般式(I)〜(III)のいずれかの構造で示される化合物(以下、化合物(B)〜(D)という。)であることが好ましい。
【0019】
(化合物(B))
化合物(B)は、下記一般式(I)で示される。
【0020】
【化4】

【0021】
化合物(B)において、Xは水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。
アルカリ金属としてはNa、K等が挙げられる。アルカリ土類金属としてはCa(このとき「−C(O)O−X」は「−C(O)O−Ca1/2」となる)等が挙げられる。
Xがアルカリ金属やアルカリ土類金属である場合を、「−C(O)O−M」(Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。)と示すこととし、化合物(A)を水等の溶媒中に投入すると、「−C(O)O−M」のうちの一部または全部が「−C(O)O」とアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンとなる。そして、「−C(O)O」は「遷移金属イオン」と錯体を形成する。
そのため、Xがアルカリ金属またはアルカリ土類金属であっても、本発明を構成する(a)成分として用いることができる。中でもXは水素原子であることが好ましい。
【0022】
また、化合物(B)において、「−COOX」基の数を表すpは1または2の整数を表し、2であることがより好ましい。pが2の場合、Xは同一のものでも、互いに異なるものでもよい。
pが1のとき、「−COOX」基のピリジン環への結合位置は窒素原子に対してα位であることが好ましい。pが2のときも、少なくとも1つの「−COOX」基はα位に結合していることが好ましい。残りの「−COOX」基はα〜γ位のいずれに結合していてもよいが、もう一方のα位についていることが、より好ましい。
化合物(B)の具体例としては、下記化学式(1)、(2)で表される化合物が挙げられる。なお、化学式(1)、(2)においては、代表的な例として、Xは水素Hとして標記しているが、化合物(A)はこの構造に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
【化5】

【0024】
また、化合物(B)のようにピリジン環を有する構造の(a)成分として、一般式(I)において、「−COOX」基がスルホ基(SOH)、アミノ基(NH)、水酸基(OH)、ニトロ基(NO)、カルボキシル基(COOH)、または置換基を有していてもよいアルキル基(C2n+1)などに置換された構造からなる化合物であってもよい。
アルキル基は直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜30、より好ましくは1〜18である。アルキル基は、その水素原子の一部が置換基にて置換されていてもよい。この置換基としては、スルホ基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0025】
具体例としては、下記化学式(3)〜(10)で表される化合物が挙げられる。本発明はこの構造に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、代表的な例として、Xは水素Hとして標記している。
配位が安定し漂白性能が向上する点から、「−COOX」基であることが好ましい。
【0026】
【化6】

【0027】
(化合物(C))
化合物(C)は、下記一般式(II)で示される。
【0028】
【化7】

【0029】
化合物(C)において、X〜Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基からなる群より選ばれる1種を表す。
〜Xが上記のものであると、本発明の漂白助剤を液状混合物などの形態として製造するにあたって、この化合物(C)を水などの溶媒に投入した場合に、−COOX、−COOX、−COOX、−COOXが電離して、それぞれ−COOとなり、下記化学式(11)で表される陰イオンを生成する。そして、この陰イオンの−COOの部分が(b)成分の銅および/またはマンガン元素と錯形成可能となる。
好ましくは、X〜Xはいずれもナトリウムまたはカリウムである。なお、X〜Xのうちの1種以上がアルカリ土類金属Mである場合には、その部分は−COOM1/2と示されることとなる。
また、Qは水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは水素原子である。Rは水素原子または水酸基を表し、好ましくは水酸基である。nは0または1の整数を表し、好ましくは1である。
【0030】
【化8】

【0031】
化合物(C)の具体例としては、下記化学式(12)〜(15)で表される化合物が挙げられる。なお、これら化学式(12)〜(15)においては、代表的な例として、X〜Xがいずれも水素Hである場合を示しているが、化合物(C)はこれらの構造に限定されるものではなく、目的に応じて適宣選択することができる。
【0032】
【化9】

【0033】
また、化合物(C)と類似した構造の(a)成分として、一般式(II)における窒素原子(N)が、酸素原子(O)などに置換された構造であってもよいが、より高い酸化促進効果が得られる点で窒素であることが好ましい。
【0034】
具体例としては、下記化学式(16)、(17)で表される化合物が挙げられる。本発明はこの構造に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、代表的な例として、X〜Xがいずれもナトリウムである場合を示している。
【0035】
【化10】

【0036】
また、化合物(C)における−COOX、−COOX、−COOX、−COOXが、アルキル基、スルホ基、またはアミノ基などに置換された構造であってもよい。
アルキル基はさらに置換基を有しているアルキル基であってもよく、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜30、より好ましくは1〜18である。アルキル基は、その水素原子の一部が置換基にて置換されていてもよい。この置換基としては、スルホ基、アミノ基、水酸基、ニトロ基等が挙げられる。
配位が安定し漂白性能が向上する点から、カルボキシル基であることが最も好ましい。
【0037】
(化合物(D))
化合物(D)は、下記一般式(III)で示される。
【0038】
【化11】

【0039】
また、化合物(D)において、Yはアルキル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、または水素原子を表し、X〜Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基からなる群より選ばれる1種を表す。
〜Xが上記のものであると、本発明の漂白助剤(A)を液状混合物などの形態として製造するにあたって、この化合物(D)を水などの溶媒に投入した場合に、−COOX、−COOX、−COOXが電離して、それぞれ−COOとなり、下記化学式(2)で表される陰イオンを生成する。そして、この陰イオンの−COOの部分が(b)成分の銅および/またはマンガン元素と錯形成可能となる。
好ましくは、X〜Xはいずれもナトリウムまたはカリウムである。なお、X〜Xのうちの1種以上がアルカリ土類金属Mである場合には、その部分は−COOM1/2と示されることとなる。
また、nは0から5の整数を表し、好ましくは、nは0から2である。
【0040】
化合物(D)の具体例としては、下記化学式(18)〜(30)で表される化合物が挙げられる。なお、これら化学式(18)〜(30)においては、代表的な例として、X〜Xがいずれもナトリウムである場合を示しているが、化合物(D)はこれらの構造に限定されるものではなく、目的に応じて適宣選択することができる。
【0041】
【化12】

【0042】
また、化合物(D)における−COOX、−COOX、−COOXが、アルキル基、スルホ基、またはアミノ基などに置換された構造であってもよい。
アルキル基はさらに置換基を有しているアルキル基であってもよく、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜30、より好ましくは1〜18である。アルキル基は、その水素原子の一部が置換基にて置換されていてもよい。この置換基としては、スルホ基、アミノ基、水酸基、ニトロ基等が挙げられる。
配位が安定し漂白性能が向上する点から、カルボキシル基であることが最も好ましい。
【0043】
上記の化合物の他に、本発明を構成する(a)成分としては、下記化学式(31)〜(53)で表される化合物を用いることができる。
【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
「(b)成分」
本発明の漂白助剤(A)を構成する(b)成分としては、漂白剤組成物や溶媒として水が使用されることが多いため、水に投入された場合にそれらのイオンを発生するものが好ましく、水溶性金属塩が好ましい。水溶性金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩、過塩素酸塩、シアン化塩、塩化アンモニウム塩、酒石酸塩などが挙げられる。
マンガンの場合には、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、過塩素酸マンガンなどが好ましく、銅の場合には、硝酸銅、硫化銅、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、シアン化銅、塩化アンモニウム銅、酒石酸銅、過塩素酸銅などが好ましい。
また、銅化合物とマンガン化合物では、過酸化水素系化合物の安定性に優れる点でマンガン化合物が特に好ましい。
これらは1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
(b)成分に対する(a)成分の使用量は1等量以上であり、2モル等量以上がより好ましく、5モル等量以上がさらに好ましい。(a)成分が(b)成分に対して過剰である方が漂白効果、および過酸化水素系化合物の分解抑制の点から好ましい。
【0048】
<錯体の製造方法>
錯体の具体的な製造方法としては、まず、溶媒中に、(b)成分と配位子となる(a)成分とを加えて溶解し、さらに必要に応じてアルカリ剤を添加し、好ましくは室温〜100℃、さらに好ましくは25℃程度の室温下にて攪拌して、これらを反応させる(反応工程)。攪拌時間は、好ましくは1分間以上、さらには好ましくは1分〜5時間、より好ましくは10分間程度である。反応工程終了後、ただちに反応液から溶媒を減圧留去して、反応工程で生成した固体状錯体と副生塩とを混合物の形態で回収する(回収工程)。
【0049】
このような製造方法は、製造時間・錯体収率・簡便性などのバランスが優れ、工業的な製造において有利な点で好ましい。また、回収工程で得られた混合物は、副生塩を分離することなく、そのままの状態で漂白助剤として使用できる。ただし、より高純度の錯体として漂白助剤を得る必要がある場合などには、反応工程で得られた反応液を1時間〜1週間冷暗所に静置し、生成した沈殿すなわち固体状錯体をろ別によって得る回収方法を採用してもよい。
また、こうして得られた漂白助剤(A)には、さらに(a)成分および/または(b)成分を加えるなどして、銅および/またはマンガンの量や配位子の量を適宜調整してから使用してもよい。
【0050】
錯体を製造する際に使用する溶媒としては極性溶媒が好ましく、室温において(a)成分を溶解させることができ、さらには、200℃以下で減圧留去可能なものが好ましい。具体例としては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できるが、価格、安全性、留去のし易さなどからは、水、エタノール、メタノールのうちの1種以上が好ましく、特に水が好ましい。
アルカリ剤としては、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが使用できる。
また、(b)成分としては、溶媒に溶解して銅および/またはマンガンイオンを発生するものが好ましく、先に例示した各種水溶性金属塩の他、使用する溶媒に可溶な他の塩(例えば、有機溶媒可溶性塩など)や、過マンガン酸カリウムなどを用いることもできる。溶媒としては、上述したように、好ましくは水が使用されることから、(b)成分としては水溶性金属塩を使用することが好ましい。
【0051】
ここで形成される錯体構造としては、特に制限はなく、銅および/またはマンガン原子1つあたりの配位子の数は1個でも複数個でもよく、1つの錯体を構成する銅および/またはマンガン原子も1個でも複数個でもよい。すなわち、錯体は単核、複核、またはクラスターでもよい。また、多核の錯体である際には、これに含まれる遷移金属は銅および/またはマンガン元素1種のみでもよいし、例えば銅とマンガンとが混在する場合などのように、複数種であってもよい。さらに、多核の錯体の場合には、酸素、硫黄、ハロゲン原子等などの架橋種によって架橋されていてもよい。
【0052】
さらに、このような錯体としては、銅および/またはマンガンに対して(a)成分から生じた陰イオンが少なくとも1つ配位していれば、漂白助剤(A)の実際の使用時において他の配位子がさらに配位していてもよい。このような他の配位子としては、漂白用組成物を製造する際に使用される後述の任意成分中の各種官能基や原子(例えば、水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基、ハロゲン原子など)、溶媒の水などが挙げられる。
銅および/またはマンガンと(a)成分からなる配位子とを反応させた後に、未反応の配位子が残存する場合は、必ずしもこれを取り除く必要はなく、そのまま用いてもよい。
【0053】
以上説明した漂白助剤(A)によれば、酸化促進効果に優れ、微量で高い漂白効果を発揮し、かつ、過酸化水素系化合物の分解抑制効果に優れる。また、この漂白助剤(A)は、特に比較的低温条件下においても高い効果を発揮するので、使用条件を選ばすに使用することができるとともに、上述のように錯体を形成した状態での安定性も良好である。
【0054】
<漂白助剤粒子(E)>
本発明の漂白助剤粒子(以下、漂白助剤粒子(E)と呼ぶ。)は、上記の漂白助剤(A)、および(c)バインダー化合物(以下、(c)成分と略す。)を含有して造粒される。
【0055】
「漂白助剤粒子(E)の粒子径」
漂白助剤粒子(E)の粒子径は、溶解性、安定性、被処理物への影響の点から、平均粒子径が200〜1000μmが好ましく、より好ましくは300〜700μmである。該粒子径が上記範囲の下限値以上であると、漂白助剤粒子(E)の良好な保存安定性が得られるとともに、(b)成分と被処理物との直接接触が良好に抑制されて被処理物の損傷が防止される。また該粒子径が上記範囲の上限値以下であると、漂白助剤粒子(E)の溶解性が良好であり漂白効果が効率良く得られる。
ここでの平均粒子径は、下記に詳述する分級操作を用いた測定方法により求めた質量基準のメジアン径である。
なお漂白助剤粒子(E)が、後述する表面被覆剤で表面被覆されている場合、上記した漂白助剤粒子(E)の粒子径は、表面被覆前の粒子径を指すものとする。
【0056】
「平均粒子径の測定方法」
まず、測定対象物(サンプル)について、目開き1,680μm、1,410μm、1,190μm、1,000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、149μmの9段の篩と受け皿を用いて分級操作を行う。分級操作は、まず受け皿の上方に該9段の篩を、上に向かって目開きが次第に大きくなるように積み重ね、最上部の目開き1,680μmの篩の上から100g/回のサンプルを入れる。次いで、蓋をしてロータップ型ふるい振盪機(飯田製作所社製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、10分間振動させた後、それぞれの篩および受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収して、サンプルの質量を測定する。
受け皿と各篩との質量頻度を積算していくと、積算の質量頻度が、50%以上となる最初の篩の目開きをaμmとし、aμmよりも一段大きい篩の目開きをbμmとし、受け皿からaμmの篩までの質量頻度の積算をc%、またaμmの篩上の質量頻度をd%として、下記数式(1)より平均粒子径(質量50%)を求める。
【0057】
【数1】

【0058】
「漂白助剤(A)の粒子径」
本発明の漂白助剤粒子(E)中に含まれる漂白助剤(A)の粒子径は、漂白助剤(A)の溶解性、および漂白助剤(A)による被処理物への影響と重要な関係がある。具体的には、漂白助剤(A)の粒子径が大きいほど溶解性が低下するため、直接被処理物と接触する機会が増す。したがって、粒子径が大きい漂白助剤(A)が多く存在するほど、被処理物への染着やダメージが大きくなる。
【0059】
本発明の漂白助剤粒子(E)中に含まれる本発明の漂白助剤(A)は、平均粒子径が5〜40μmの範囲内であり、かつ粒子径1〜10μmの粒子が漂白助剤(A)全体の10質量%以上であることが好ましい。該平均粒子径のより好ましい範囲は5〜20μmであり、特に好ましい範囲は5〜15μmである。また、前記粒子径1〜10μmの粒子の割合のより好ましい範囲は20質量%以上であり、特に好ましい範囲は40質量%以上である。
ここでの平均粒子径及び粒度分布は、レーザー光散乱法(例えば、粒度分布測定装置(LDSA−3400A(17ch)、東日コンピューターアプリケーションズ株式会社製を使用)によって測定した値である。
平均粒子径は体積基準のメジアン径である。
【0060】
本発明の漂白助剤粒子(E)における(a)成分の配合量は、(b)成分とのモル比に応じて規定され、(b)成分に対して等モル以上が好ましく、2モル等量以上がより好ましく、5モル等量以上がさらに好ましい。漂白助剤粒子(E)中の(a)成分の配合量が(b)成分に対してモル比1倍未満になると、過酸化水素系化合物の分解や被処理物の損傷・変褪色を抑制できなくなる場合がある。
【0061】
本発明の漂白助剤粒子(E)中における(b)成分の配合量は、0.05〜40質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。漂白助剤粒子(E)中の(b)成分の配合量を0.05質量%未満にすると、製品全体に占める造粒物の割合が過剰となり、また、40質量%以上では、過酸化水素系化合物の分解や繊維の損傷・変褪色を抑制できなくなる。
【0062】
「(c)成分」
本発明の漂白助剤粒子(E)を構成する(c)成分の例としては、各種ノニオン活性剤や炭素数12〜20の飽和脂肪酸、平均分子量500〜25000のポリエチレングリコール、または平均分子量1000〜1000000のポリカルボン酸系高分子やその塩(ポリアクリル酸、ポリアクリル酸とマレイン酸の共重合体等)等から選ばれる1種以上が好ましい。2種以上を組み合わせてもよい。
ポリエチレングリコールとしては、融点50〜65℃のポリエチレングリコール4000(平均分子量2600〜3800)〜6000(平均分子量7300〜9300)が好ましく、特にポリエチレングリコール6000(平均分子量7300〜9300)が好ましい。
炭素数12〜20の飽和脂肪酸としては、炭素数14〜20のものが好ましく、より好ましくは炭素数14〜18の飽和脂肪酸である。
なお、本発明におけるポリエチレングリコールの平均分子量は、化粧品原料基準(第2版注解)記載の平均分子量を示す。ポリアクリル酸やその塩の質量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による測定値である。
【0063】
本発明の漂白助剤粒子(E)中における(c)成分の配合量は、(a)成分や(b)成分の配合量とは無関係に規定されるものであるが、3〜90質量%の範囲にあることが好ましく、5〜60質量%の範囲にあることがより好ましく、10〜50質量%の範囲にあることが特に好ましい。
(c)成分の配合量が5質量%未満であると、漂白助剤粒子(E)の強度や安定性が著しく低下する場合があり、また、90質量%を超えると、漂白助剤の酸化促進効果を阻害する場合がある。
【0064】
「任意成分」
本発明の漂白助剤粒子(E)中には、(a)〜(c)成分の他に、溶解促進成分、他の過酸化水素分解抑制成分や繊維の損傷・変褪色抑制成分、表面被覆剤などを配合することができる。
【0065】
(溶解促進成分)
溶解促進成分としては、水溶性塩や界面活性剤が挙げられ、(a)〜(c)成分の配合量を規定したのち、漂白助剤粒子(E)全体のバランス成分として任意量を配合することができる。
【0066】
(水溶性塩)
水溶性塩としては、特に制限されることなく、無機塩、有機塩のいずれも使用することができる。具体的には、アルカリ金属を対イオンとする硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、硼酸塩、燐酸塩、珪酸塩等の各種無機塩や、同じくアルカリ金属を対イオンとする酢酸塩等が挙げられる。これらの中では、価格、安全性、安定性の点で硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0067】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれからも選ぶことができ、これらは1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
特に好ましい界面活性剤としては、炭素数10〜20のアルキル硫酸塩又はアルケニル硫酸塩、炭素鎖長14のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム、アミンオキサイド等である。
【0068】
漂白助剤粒子(E)中における界面活性剤の含有量は、漂白助剤粒子(E)の溶解性、被処理物に対する損傷や退色の点から、0.1〜50質量%が好ましい。該含有量の下限は、1質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは5質量%以上である。上限は40質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0069】
(過酸化水素分解抑制成分・繊維の損傷・変褪色抑制成分)
過酸化水素分解抑制成分や繊維の損傷・変褪色抑制成分の例としては、粘土鉱物、層状シリケート、繊維パウダー、およびアスコルビン酸やメトキシフェノール等の抗酸化剤が挙げられる。これらの中では、繊維パウダーの1種であるセルロースパウダー、または、メトキシフェノールが特に好ましい。
【0070】
(繊維パウダー)
繊維パウダーとして、水不溶性又は水難溶性の繊維パウダーを配合することができる。
ここでいう水不溶性又は水難溶性繊維パウダーとは、25℃脱イオン水100gに対する溶解度が0.1g未満の繊維パウダーである。繊維パウダーは、例えば繊維、凍結した繊維、または溶媒に分散させた繊維を、粉砕機等を用いて粉砕、破砕して得られる。
繊維パウダーの例としては、粉末セルロース、シルクパウダー、ウールパウダー、ナイロンパウダー、ポリウレタンパウダー等が挙げられる。
粉末セルロースは、針葉樹や広葉樹等の木材;麻類、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、ワラ、バガス、タケ等の葉繊維、茎繊維、およびジン皮繊維;モメン、キワタ、カポック等の種子毛繊維等を精製したもの、必要に応じて部分的に加水分解したもの、または綿、麻、レーヨン等に加工されたものから得られ、非結晶性部分を有するものである。
【0071】
繊維パウダーのとして、特に、天然繊維の粉末セルロース、シルクパウダー、ウールパウダーが好ましく、粉末セルロース、シルクパウダーがより好ましく、中でも粉末セルロースが好ましい。
好ましく使用できる市販品の例としては、KCフロックW−400G(日本製紙株式会社製)、ArbocelBE−600/10、ArbocelBE−00、ArbocelBE−600/30、ArbocelFD−600/30、Arbocel TF30HG、ArbocelWW−40、ArbocelBC−200、ArbocelBE−600/20(いずれもレッテンマイヤー社製)、出光シルクパウダー(出光石油化学株式会社製)、シルクパウダー(大東化成工業株式会社製)、2002EXDNATCOS
Type−S(Elf Atochem社製)等が挙げられる。
【0072】
繊維パウダーの粒子径又は繊維長は、特に制限されるものではないが、平均粒子径又は平均繊維長が150μm以下であることが好ましく、100μm以下がより好ましい。また製造時の粉立ち等を考慮すれば、平均粒子径又は平均繊維長が5μm以上であることが好ましく、10μm以上がより好ましい。
ここでの平均粒子径又は平均繊維長の値は、日本薬局方に記載された粒度の試験に準じた篩い分けによる粒度分布から算出される値であり、体積基準のメジアン径である。
好適な大きさの繊維パウダーを得るには、市販品の中から好ましい範囲に含まれるものを選別してもよく、好ましい大きさになるように、粉砕や篩い分け等をしてもよい。
【0073】
漂白助剤粒子(E)中における繊維パウダーは、1種単独でもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
本発明において繊維パウダーは必須ではないが、これを漂白助剤粒子(E)に含有させることにより、製造性を向上させる効果、および被処理物へのダメージをより抑制する効果が得られる。
漂白助剤粒子(E)中における繊維パウダーの含有量は、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記範囲を超えると造粒が困難になる虞や、造粒物の強度が低下する場合があり、上記範囲未満では被処理物のダメージ抑制効果が充分に得られない場合がある。
【0074】
(表面被覆剤)
表面被覆剤としては、吸油性担体粒子であればいずれも使用することができる。吸油担体としての機能を有する粒子であると、漂白助剤粒子(E)表面に付着しやすく、製造上好ましい。
表面被覆剤の例としては、A型ゼオライト、P型ゼオライト、シリカ、珪藻土等を挙げることができる。具体的には、シリカ、A型ゼオライト等が好適である。漂白助剤粒子(E)への付着性を考慮すると吸油性担体の平均粒子径が10〜100μmであることが好ましい。
【0075】
漂白助剤粒子(E)と表面被覆剤との質量比は、漂白助剤粒子(E)/表面被覆剤が70/30〜99.5/0.5が好ましく、70/30〜98/2がより好ましい。表面被覆剤が少ないと、その効果が発現されない場合があり、多すぎると、漂白助剤粒子(E)表面に過剰に付着し経時での脱落等の確立が高くなる場合がある。
【0076】
このような表面被覆剤が施されることにより、漂白助剤粒子(E)の保存安定性がより向上すると共に、漂白助剤粒子(E)が溶解する過程における(b)成分と被処理物との直接接触がより低減され、被処理物のダメージを防止効果が向上する。
【0077】
(他の任意成分)
上記の成分の他に、漂白助剤粒子(E)に、後述の押出造粒法を用いて製造する場合には、粘度を調整して製造性を向上させるために、硫酸ナトリウム、4ホウ酸ナトリウム等の無機塩を配合すること、および/または粉砕助剤としてA型ゼオライト等のアルミノ珪酸塩を配合することが好ましい。これらを配合する場合の配合量は、漂白助剤粒子(E)中3〜50質量が好ましく、より好ましくは5〜40質量%である。
【0078】
さらに美観付与の目的のために、顔料や染料を漂白助剤粒子(E)に適宜含有させてもよい。
例えば、酸化チタン、酸化鉄、コバルトフタロシアニン、群青、紺青、等を好適に使用できる。これらの色素は、造粒の際に、ポリエチレングリコール(PEG)等のバインダー成分に溶解又は分散して用いるのが好ましい。
【0079】
<漂白助剤粒子(E)の製造方法>
漂白助剤粒子(E)の製造方法としては、特に制限されるものではないが、その例としては、(a)〜(c)成分、および任意成分を混合機や混練機等で混合した後、押出成型機を用いて、多孔ダイスやスクリーンを通して直系1mm程度のヌードル状に押出し、破砕する方法、溶解した(c)成分に(a)成分、(b)成分および任意成分を溶解、分散させ、ミキサー中で塊状物質を成型後、粉砕機で粉砕する方法、撹拌造粒機、容器回転型造粒機又は流動床造粒機等を用いて、(a)成分、および(b)成分を混合後、該混合物を攪拌または流動させながら液状の(c)成分、または(c)成分の水溶液を添加する方法等が挙げられる。
【0080】
いずれの方法においても(c)成分は予め液状にして用いることが好ましい。水に溶解させてもよく、加熱して溶融させてもよい。水の添加量は最小限に止めることが好ましく、溶融する成分は溶融して用いることが好ましい。(c)成分の溶解温度は40〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜90℃、特に好ましくは50〜80℃である。
また、(a)、(b)成分は、別々に造粒して製品中で混合して使うこともできる。
【0081】
「表面被覆」
本発明の漂白助剤粒子(E)は、前述の表面被覆剤で被覆してもよい。被覆は、漂白助剤粒子(E)と表面被覆剤をよく混合することにより、漂白助剤粒子(E)の表面に表面被覆剤を付着させる方法で行うことができる。
混合方法は特に限定されないが、例えば、漂白助剤粒子(E)と表面被覆剤を、リボンミキサーやトロンメル等で混合する方法が挙げられる。また、過剰の表面被覆剤は、ふるい等によって漂白助剤粒子(E)と分離して除去することが好ましい。
【0082】
以上説明した漂白助剤粒子(E)は、酸化促進効果に優れ、微量で高い漂白効果を発揮し、かつ、過酸化水素系化合物の分解抑制効果に優れる。また、この漂白助剤粒子(E)は、特に比較的低温条件下においても高い効果を発揮するので、使用条件を選ばすに使用することができるとともに、被処理物を傷めにくく安定性も良好である。さらに、この漂白助剤粒子(E)は製造しやすいため、工業的に有利であるという利点をも有する。
また、漂白用組成物などに酸化反応成分とともに使用することで、高い漂白効果を発現させることができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
(a)成分として、表1に示すキレート剤を用いた。
【0084】
【表1】

【0085】
(b)成分として、硫酸銅(II)5水和物、以下に説明する銅錯体L1、L2、およびマンガン錯体M1、M2を用いた。(c)成分として、ポリエチレングリコール#6000M(ライオン株式会社製)、およびアクリル酸/無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩(製品名:アクアリックTL−400、日本触媒(株)製、純分40質量%水溶液)(以後MA剤と表記)を用いた。
【0086】
「銅錯体L1の製造」(漂白助剤製造例1)
イオン交換水300ml中に、硫酸銅(II)5水和物(関東化学株式会社製)1.0gと、2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウム塩(ランクセス製)19gとを添加し、室温で10分間攪拌した。その後、150℃に保持された油浴上で水を減圧留去し、乾燥した固体を回収することにより、2,2’−イミノジコハク酸銅錯体と2,2’−イミノジコハク酸との混合物(銅錯体L1)を得た。
【0087】
「マンガン錯体M1の製造」(漂白助剤製造例2)
イオン交換水300ml中に、硫酸マンガン(II)5水和物(関東化学株式会社製)1.0gと、2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウム塩(ランクセス製)19gとを添加し、室温で10分間攪拌した。その後、150℃に保持された油浴上で水を減圧留去し、乾燥した固体を回収することにより、2,2’−イミノジコハク酸マンガン錯体と2,2’−イミノジコハク酸との混合物(マンガン錯体M1)を得た。
【0088】
「銅錯体L2の製造」(漂白助剤製造例3)
イオン交換水300ml中に、硫酸銅(II)5水和物(関東化学株式会社製)1.0gと、メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム塩(BASF製)19gとを添加し、室温で10分間攪拌した。その後、150℃に保持された油浴上で水を減圧留去し、乾燥した固体を回収することにより、メチルグリシンジ酢酸銅錯体とメチルグリシンジ酢酸との混合物(銅錯体L2)を得た。
【0089】
「マンガン錯体M2の製造」(漂白助剤製造例4)
硫酸銅(II)5水和物0.84gの代わりに、硫酸マンガン(II)5水和物0.82gを使用した以外は、合成例1と同様にし、2,2’−イミノジコハク酸マンガン錯体を得た。
イオン交換水300ml中に、硫酸マンガン(II)5水和物(関東化学株式会社製)1.0gと、メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム塩(BASF製)19gとを添加し、室温で10分間攪拌した。その後、150℃に保持された油浴上で水を減圧留去し、乾燥した固体を回収することにより、メチルグリシンジ酢酸マンガン錯体とメチルグリシンジ酢酸との混合物(マンガン錯体M2)を得た。
【0090】
「漂白助剤粒子の製造」
(a)〜(c)成分と、溶解促進剤、表面被覆剤を用いて、以下に示す3通りの方法で漂白助剤粒子を製造した。各成分の組成を表2〜4に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
(攪拌造粒法による粒子製造)
(a)成分750g、(b)成分75g、硫酸ナトリウム(四国化成工業株式会社製 中性無水芒硝)1725gを株式会社マツボー社製レディゲミキサーM20型に投入し、攪拌させながら(c)成分300gをゆっくりと滴下し、更に攪拌させながら微粉シリカ(株式会社トクヤマ製トクシール)150gを添加することにより、漂白助剤粒子を得た。
【0095】
(押出造粒法による粒子製造)
(a)〜(c)成分、合計500gを表1の比率となるように株式会社クリモト鉄工所製連続ニーダーKRS−S1型に投入し、65℃で混練後、直径1mmの多孔性スクリーンを通して押し出すことにより、ヌードル状の固形物を得た。
この固形物を、岡田精工株式会社製NEW SPEED MILLを用いて破砕することにより、漂白助剤粒子を得た。
【0096】
(破砕造粒法による粒子製造)
(a)〜(c)成分、合計500gを表2〜4の比率となるように、押出造粒法と同様に65℃で混練後、多孔性スクリーンを通さずに押し出すことにより、塊状の固形物を得た。この塊状固形物を数センチ角の塊に粉砕後、押出造粒法と同様に破砕することにより、漂白助剤粒子を得た。
【0097】
得られた漂白助剤粒子は、いずれも篩分けを行い、粒径300〜700nmのものを用いて以下に示す評価を実施した。
【0098】
「漂白剤組成物の調整」
(漂白剤組成物1の調整)
表5に示す組成物500gに上記漂白助剤粒子12gを配合し、均一に混合することにより、漂白剤組成物1(実施例1〜30、比較例1〜6)を得た。
【0099】
【表5】

【0100】
(漂白剤組成物2の調整)
表6に示す組成物700gに上記漂白助剤粒子7gを配合し、均一に混合することにより、漂白剤組成物2(実施例31〜37、比較例7〜10)を得た。
【0101】
【表6】

【0102】
「カレー汚染布漂白試験」
(カレー汚染布の調製)
5分間熱湯で温めたレトルトカレー(ボンカレーゴールド中辛(大塚食品株式会社製、内容量200g/1パック))5パック分を、カーゼを用いてろ過し、固形物を取り除き、その液に25×30cmの平織り木綿布(#100)5枚を浸し、30分間温めながら均一に付着させた。布を取り出し、洗液に色の付かなくなるまで水道水ですすぎ、脱水し、自然乾燥した後、5×5cmの試験片とし、実験に供した。
【0103】
(カレー染み漂白試験)
上記漂白剤組成物1が0.5質量%濃度(25℃の脱イオン水及び塩化カルシウムを用いて3°DH硬水に調製)の試験溶液200mLを調製し、これに上記で得られた汚染布5枚を1時間つけ置きした。その後、水道水すすぎ2分、脱水1分を行い、25℃で12時間風乾した。
原布及び洗浄前後の反射率は日本電色工業株式会社製 NDR−101DPで460nmのフィルターを使用して測定し、下記数式(2)により洗浄漂白力を求め、漂白性能の評価を行った。漂白力は5枚の汚染布に対する漂白力の平均値を求め、下記に示す4段階の評価基準により評価した。
【0104】
【数2】

【0105】
(カレー漂白力評価基準)
基準組成(25℃、3°DH、30分間つけ置き)
過炭酸ナトリウム50%、炭酸ナトリウム50%(漂白率45%)
×:基準組成に比べて漂白力が低い。
△:基準組成に比べて漂白力が同等以上0%以上+10%未満。
○:基準組成に比べて漂白力が高く、+10%以上15%未満。
◎:基準組成に比べて漂白力が著しく高く、+15%以上。
結果を表1に示す。
【0106】
「紅茶汚染布漂白試験」
(紅茶汚染布の調製)
紅茶汚染布日東紅茶(黄色パッケージ)84gを4Lの水道水にて15分間煮沸した後、糊抜きしたサラシ木綿でこし、この液に35×35cmの平織り木綿布(#100)120gを浸し、15分間煮沸した。そのまま火よりおろし、2時間放置後、自然乾燥させ、洗液に色の付かなくなるまで水道水で洗浄し、脱水し、プレスした後、5×5cmの試験片とし、実験に供した。
【0107】
(紅茶染み漂白試験)
上記の紅茶汚染布5枚を自動食器洗い乾燥機「松下電器産業株式会社製、機種NP−40SX2」に装填し、調製した漂白剤組成物2を6g使用して標準コース洗浄を行った。仕上がり具合をそれぞれの評価基準に基づいて官能評価した。漂白力はカレー染みと同様に評価した。
【0108】
(紅茶染み漂白試験)
カレー汚染布漂白試験と同様に、上記漂白剤組成物2が0.5質量%濃度(25℃の脱イオン水及び塩化カルシウムを用いて3°DH硬水に調製)の試験溶液200mLを調製し、これに上記で得られた汚染布5枚を1時間つけ置きした。その後、水道水すすぎ2分、脱水1分を行い、25℃で12時間風乾した。
原布及び洗浄前後の反射率は、日本電色工業株式会社製 NDR−101DPで460nmのフィルターを使用して測定し、上記数式(1)により洗浄漂白力を求め、漂白性能の評価を行った。漂白力は5枚の汚染布に対する漂白力の平均値を求め、下記に示す4段階の評価基準により評価した。
【0109】
(紅茶漂白力評価基準)
基準組成(25℃、3°DH、30分間つけ置き)
過炭酸ナトリウム50%、炭酸ナトリウム50%(漂白率45%)
×:基準組成に比べて漂白力が低い。
△:基準組成に比べて漂白力が同等以上0%以上+10%未満。
○:基準組成に比べて漂白力が高く、+10%以上15%未満。
◎:基準組成に比べて漂白力が著しく高く、+15%以上。
結果を表2〜4に示す。
【0110】
「過酸化水素安定性評価」
上記漂白剤組成物1または漂白剤組成物2について、以下の方法で過酸化水素安定性試験を行った。
容器(詰替えパウチ3層構造 外からポリエチレン/ポリプロピレン/ナイロン=130μm/25μm/15μm、直径0.3mmのピンホール有り)に、漂白剤組成物400gを入れ、45℃、25℃リサイクル条件(45℃・湿度85%16h,25℃・湿度65%8h)にて2W保存後、ヨードメトリー法にて過酸化水素(過炭酸ナトリウム)の安定性評価を行った。
【0111】
(過酸化水素安定性評価基準)
過炭酸ナトリウムの残存率の数値から、以下の5段階で過酸化水素安定性を評価した。
5点:90%超過。
4点:80%超過〜90%以下。
3点:70%超過〜80%以下。
2点:60%超過〜70%以下。
1点:40%超過〜60%以下。
0点:0%〜40%以下。
結果を表2〜4に示す。
【0112】
以上の結果、実施例1〜〜39では、いずれも漂白力、過酸化水素安定性ともに十分な値を示した。また、表3に示すように、(a)成分と(b)成分のモル比(a/b)を0.8〜40の範囲で変化させた実施例23〜32を比較すると、a/bの値が大きいほど漂白力、過酸化水素安定性ともに高くなることがわかった。
比較例1、2、7では(a)成分の代わりに、配位座が6のキレート剤であるEDTAを用いたために、過酸化水素安定性は高いものの漂白力が低かった。比較例3、4、8では(a)成分を含まないために、漂白力、過酸化水素安定性ともに低かった。比較例5、9では(a)成分を含まず、比較例10では(a)成分、(b)成分をともに含まないために、過酸化水素安定性は高いものの漂白力が低かった。なお、比較例6は、(a)〜(c)成分をいずれも含まないベース組成物(J)であり、過酸化水素安定性は十分であるが、漂白力は無い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配位座が5以下のキレート剤および/または該キレート剤から生じた陰イオンと、(b)銅および/またはマンガン化合物を含有することを特徴とする漂白助剤。
【請求項2】
前記(a)が下記一般式(I)〜(III)のいずれかの構造で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の漂白助剤。
【化1】

(式中、Xは水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。pは1または2の整数を表し、pが2の場合、Xは同一のものでも、異なるものでも良い。)
【化2】

(式中、X〜Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基からなる群より選ばれる1種を表し、Qは水素原子またはアルキル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表し、nは0または1である。)
【化3】

(式中、Aはアルキル基、カルボキシル基、スルホ基、またはアミノ基、水酸基、または水素原子を表し、X〜Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基からなる群より選ばれる1種を表し、nは0から5の整数を表す。)
【請求項3】
前記(a)が前記(b)よりもモル比において、1等量以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の漂白助剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の漂白助剤と、(c)バインダー化合物を含有することを特徴とする漂白助剤粒子。

【公開番号】特開2009−149746(P2009−149746A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327957(P2007−327957)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】