説明

漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステム

【課題】 漏洩同軸ケーブルの延伸を可能にし、設置費用の増加を抑制することができる、漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステムを提供する。
【解決手段】 無線LANデータを流すための複数の漏洩同軸ケーブル30〜30と、漏洩同軸ケーブルの間にそれぞれ接続されていると共に無線LAN用の子局21および親局22で形成されている中継局20〜20とを備えている。そして、子局21は、前段側の漏洩同軸ケーブルが接続されている空中線端子21を具備し、空中線端子21を経て無線LANデータを受信すると、このデータを有線LANデータに変換してLANケーブル23に送信し、親局22は、後段側の漏洩同軸ケーブルが接続されている空中線端子22を具備し、LANケーブル23から有線LANデータを受信すると、このデータを無線LANデータに変換して空中線端子22に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩同軸ケーブルからの無線電波を利用して、データを伝送する漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)は無線局免許および無線従事者免許が不要であり、しかも、高速データ通信が可能であることから、家庭用や産業用として極めて広い範囲で利用されている。無線LANの利用場所の一つに、鉄道トンネルや坑道のような閉空間がある。一般的には、無線LANにアンテナを接続し、空間を通して通信するが、トンネルのような閉空間では、長い範囲に渡って通信エリアを確保するのは困難である。このために、多数のアクセスポイント(AP:Access Point)を設置する必要があった。
【0003】
このような場所では、無線LANのアクセスポイントに漏洩同軸ケーブル(LCX:Leaky CoaXial cable)を用いる通信方式が有効である(例えば、特許文献1参照)。この漏洩同軸ケーブルの一例を図4に示す。図4の漏洩同軸ケーブル100は、円筒または円柱状の導電体である内部導体110を絶縁体120で包み、絶縁体120を導電体である外部導体130で包み、さらに、保護などのために外部導体130を被覆140で包んだ構造をしている。漏洩同軸ケーブル100には、外部導体130に例えば長方形状の開口であるスロット131が設けられている。
【0004】
こうした構造により、漏洩同軸ケーブル100に高周波電流が流れると、漏洩同軸ケーブル100はスロット131によりエネルギーの一部を電波として放出する。つまり、無線LANに漏洩同軸ケーブルを用いる通信方式では、漏洩同軸ケーブル100がアンテナの代わりとして用いられている。
【0005】
この通信方式では、無線LANはマイクロ波帯の電波を利用しているので、漏洩同軸ケーブル内の損失が多く、長い漏洩同軸ケーブルを使用するのが困難である。このために、アクセスポイントを多数設置する必要があった。
【0006】
漏洩同軸ケーブルを延伸する方法として、適当な間隔でブースタを設置する方法が考えられる。しかし、無線LANの通信方式は単信方式(送受信同一周波数)であり、極めて短時間で送受信動作を切り替える必要がある。しかし、ブースタにそのような動作をさせるのは技術的に困難である。また、ブースタ部分は法規的に無線LANの一部とは認められていない。このために、ブースタを用いる通信方式では、無線局免許および無線従事者免許が不要という、無線LANの利点が失われてしまう。
【0007】
そこで、漏洩同軸ケーブルを延伸する方法として、図5に示す通信システムがある。図5に示す通信システムは、漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステムであり、上位層である上位ネットワークNWとLANケーブル210〜210で複数のアクセスポイント(AP)である親局220〜220が結ばれている。このとき、LANケーブル210〜210は親局220〜220の有線LAN端子222〜222にそれぞれ接続されている。複数の親局220〜220は、例えばトンネルに沿って配置されている。それぞれの親局220〜220には、漏洩同軸ケーブル230〜230が接続されている。このとき、漏洩同軸ケーブル230〜230は、親局220〜220の空中線端子221〜221にそれぞれ接続されている。漏洩同軸ケーブル230〜230は終端器240〜240で終端されて、反射波による干渉を防いでいる。さらに、図示を省略しているが、親局220〜220には、電源を供給する電源線がそれぞれ接続されている。
【0008】
この通信システムは、トンネル内を移動する1乃至複数の子局260と通信する。子局260の空中線端子261には、漏洩同軸ケーブル230〜230と電波の送受信をするアンテナ270が接続されている。つまり、子局260は、トンネル内において、無線LANの親局220〜220と、電波による小電力のデータ通信を可能にする。また、子局260の有線LAN端子262にはパソコンなどのネットワーク機器280が接続されている。ネットワーク機器280は上位ネットワークNWと通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−261758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、先に述べた通信システムには、次のような欠点がある。このシステムでは、親局220〜220と上位ネットワークNWとをそれぞれLANケーブル210〜210で結ぶ必要があった。一般に、LANケーブルには敷設長に制限があり、それを超える場合はLANケーブルの途中にトランシーバやハブ(HUB)などを設置するか、LANケーブルの代わりに光ファイバを用いたりしなければならなかった。さらに、各親局やトランシーバ、ハブあるいは光変換器に供給するための電源線を敷設しなければならず、設置費用が高額になるという欠点があった。
【0011】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、漏洩同軸ケーブルの延伸を可能にし、設置費用の増加を抑制することができる、漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、無線LANデータを流すための複数の漏洩同軸ケーブルと、前記漏洩同軸ケーブルの間にそれぞれ接続されていると共に無線LAN用の子局および親局で形成されている中継局と、を備え、前記子局は、前段側の前記漏洩同軸ケーブルが接続されている空中線端子を具備し、この空中線端子を経て無線LANデータを受信すると、このデータを有線LANデータに変換してLANケーブルに送信し、前記親局は、後段側の前記漏洩同軸ケーブルが接続されている空中線端子を具備し、前記LANケーブルから有線LANデータを受信すると、このデータを無線LANデータに変換してこの空中線端子に送信する、ことを特徴とする漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステムである。
【0013】
請求項1の発明では、子局は漏洩同軸ケーブルから無線LANデータを受信すると、この無線LANデータを有線LANデータに変換してLANケーブルに送信する。親局は、LANケーブルから有線LANデータを受信すると、このデータを無線LANデータに変換し、漏洩同軸ケーブルを経て後段の中継局に送信する。
【0014】
請求項2の発明は、無線LANデータを流すための複数の漏洩同軸ケーブルと、前記漏洩同軸ケーブルの間にそれぞれ接続されていると共に無線LAN用の親局と分配器とで形成されている中継局と、を備え、前記分配器は、前段側および後段側の両方の漏洩同軸ケーブルが接続されている第1の空中線端子および第2の空中線端子と、同軸ケーブルが接続されている第3の空中線端子とを具備し、前記親局は、前記同軸ケーブルが接続されている空中線端子を具備し、この空中線端子を経て無線LANデータのパケットを受信すると、このパケットを復調して蓄え、この後、このパケットの宛先に向けてこのパケットを前記同軸ケーブルから前記分配器に送信する、ことを特徴とする漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステムである。
【0015】
請求項2の発明では、分配器が前段側および後段側の両方の漏洩同軸ケーブルと親局とに接続されている。親局は、分配器を経て無線LANデータのパケットを受信すると、受信したパケットを復調して蓄える。この後、親局は、復調したパケットの宛先に向けて、分配器を経てこのパケットを後段に送信する。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステムにおいて、前記中継局の親局および子局に対して、前記漏洩同軸ケーブルに電源を重畳して供給する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、子局と親局とから成る中継局を複数設けることにより、漏洩同軸ケーブルの延伸を可能にすることができる。また、従来のように上位のネットワークと親局とを結ぶLANケーブルが不要になるので、設置費用の低減が可能である。
【0018】
請求項2の発明によれば、親局を1台だけ中継局に設ければよいので、中継局における消費電力を少なくすることが可能である。
【0019】
請求項3の発明によれば、漏洩同軸ケーブルを用いて中継局の親局や子局に電源を供給するので、電源供給用の配線を不要にし、設置工事の簡便化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1による無線LANシステムを示す構成図である。
【図2】実施の形態2で用いられる電源供給方式を示す構成図である。
【図3】実施の形態3による無線LANシステムを示す構成図である。
【図4】漏洩同軸ケーブルの一例を示す平面図である。
【図5】従来の漏洩同軸ケーブルを用いた通信システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0022】
(実施の形態1)
この実施の形態による漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステム(以下、単に「無線LANシステム」という)を図1に示す。なお、この実施の形態では、先に説明した図5と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。図1の無線LANシステムは、親局10と、中継局20〜20と、漏洩同軸ケーブル30〜30(n=m+1)とを備えている。ただし、nは1以上の整数である。
【0023】
親局10はアクセスポイントであり、有線用の端子である親局10の有線LAN端子10は、LANケーブル40により、上位層である上位ネットワークNWに接続され、アンテナ接続用の端子である親局10の空中線端子10は、漏洩同軸ケーブル30により中継局20に接続されている。アクセスポイントである親局10は、例えば、その存在を示す情報を、高周波信号つまり電波で空中線端子10からパケットで定期的に送信する。つまり、この情報は、漏洩同軸ケーブル30により、中継局20に送信される。これにより、中継局20の後述する子局21はリンクを確立して、常にデータの通信が可能になる。
【0024】
また、親局10は、有線パケットにより通信を行う有線LANから、無線パケットにより通信を行う無線LANへデータを転送し、また、無線LANから有線LANへデータを転送する機能を持つ。つまり、親局10は、LANケーブル40を経て前段側の上位ネットワークNWから有線通信で送られてきた、有線パケットから成るデータ(以下、「有線LANデータ」という)を、高周波信号で後段側の中継局20に転送する。この実施の形態では、アンテナの代わりに、空中線端子10に漏洩同軸ケーブル30が接続されているので、親局10は、無線通信用の電波を漏洩同軸ケーブル30に転送する。逆に、漏洩同軸ケーブル30を経て中継局20から高周波信号で送られてきた、無線パケットから成るデータ(以下、「無線LANデータ」という)を、有線LANデータに変換してLANケーブル40に転送する。
【0025】
漏洩同軸ケーブル30〜30は、図4の漏洩同軸ケーブルと同じであるので、各ケーブルの説明を省略する。なお、この実施の形態では、最終段の中継局20に接続されている漏洩同軸ケーブル30の端部は終端器50で終端されている。
【0026】
中継局20〜20は、高周波信号による無線LANデータを、同じく高周波信号により転送するものであり、子局21と親局22とをそれぞれ備えている。中継局20〜20の構成は同一であるので、中継局20について説明する。子局21は、無線LANの親局と高周波信号による小電力のデータ通信を可能にする。この実施の形態では、子局21の空中線端子21は親局10の空中線端子10と漏洩同軸ケーブル30で接続されている。この接続により、子局21は、親局10から定期的に送信される情報であり、親局10の存在を示す情報であるパケットにより、親局10とリンクを確立する。これにより、子局21は親局10とデータ通信が可能な状態になる。
【0027】
一方、子局21の有線LAN端子21は、LANケーブル23により、親局22の有線LAN端子22と接続されている。このとき、子局21と親局22とはクロス接続されている。つまり、LANケーブル23により、子局21の送信側が親局22の受信側に接続され、親局22の送信側が子局21の受信側に接続されている。これにより、子局21からの有線LANデータが親局22に対して送信データとして転送され、逆に親局22からの有線LANデータが子局21に対して送信データとして転送される。
【0028】
親局22は、親局10と同様であるが、親局22の空中線端子22は、漏洩同軸ケーブル30により後段側の中継局の子局に接続されている。これにより、後段側の子局はリンクを確立して、データの通信が可能になる。
【0029】
次に、この実施の形態による無線LANシステムの動作について説明する。このシステムが例えば坑道のような閉空間に設置されている場合、坑道の管理部門などから送られてくるデータを、上位ネットワークNWがLANケーブル40を経て親局10に有線LANデータで送信する。親局10は、LANケーブル40から受信した有線LANデータを無線LANデータに変換して漏洩同軸ケーブル30に送信する。つまり、高周波信号による無線LANデータが漏洩同軸ケーブル30を流れる。このとき、無線LANデータの一部が漏洩同軸ケーブル30から輻射される。
【0030】
一方、中継局20の子局21は、親局10の存在を示す情報を漏洩同軸ケーブル30から定期的に受信することにより、リンクを確立してデータ通信が可能な状態にある。こうした状態のときに、親局10からの無線LANデータを漏洩同軸ケーブル30から受信すると、子局21は、無線LANデータを有線LANデータに変換して有線LAN端子21から出力する。子局21と親局22とはLANケーブル23によりクロス接続されているので、子局21は親局22の受信側に有線LANデータを出力する。親局22は、子局21から有線LANデータを受信すると、親局10と同様に有線LANデータを無線LANデータに変換して漏洩同軸ケーブル30に送信する。このとき、無線LANデータの一部が漏洩同軸ケーブル30から輻射される。
【0031】
つまり、子局21と親局22とから成る中継局20は、前段の親局10から受信した無線LANデータを後段の中継局に中継する。このとき、親局10と子局21とにはリンクが確立して、常にデータ通信が可能な状態にあるので、例えば親局10からの無線LANデータを子局21が受信して、親局22に随時に送信する。この結果、リアルタイムでのデータ送信が行われる。
【0032】
中継局20の後段でも同じように、各中継局が無線LANデータを中継し、無線LANデータは最終段の中継局20に送信される。このとき、中継局20〜20には漏洩同軸ケーブル30〜30がそれぞれ接続されているので、無線LANデータは漏洩同軸ケーブル30〜30により坑内の随所で輻射される。
【0033】
一方、坑内の子局260は、例えば中継局20の親局22の存在を示す情報を漏洩同軸ケーブル30からの高周波信号で受信するので、中継局20とリンクを確立してデータ通信が可能な状態にある。これにより、坑内の子局260は、アンテナ270が受信した無線LANデータを、有線LANデータに変換してネットワーク機器280に出力することができ、ネットワーク機器280は上位ネットワークNWとデータ通信が可能になる。もちろん、ネットワーク機器280から上位ネットワークNWに向けてデータを送る場合のデータ通信も可能である。
【0034】
こうして、この実施の形態によれば、子局21と親局22とから成る中継局20〜20により、漏洩同軸ケーブル30〜30の延伸を可能にする。これにより、設置費用の増加を抑制することができる。また、子局21と親局22とを1組にした中継局と漏洩同軸ケーブルとを加えていけば、論理上無制限に通信エリアを延伸することが可能である。さらに、無線LANの子局21や親局22は基本機能として有線パケットと無線パケットの中継機能を有しているので、無線LANの機能に手を加えることなく、漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステムを容易に構築可能である。さらに、中継局20〜20の子局21と親局22とはそれぞれが無線パケットと有線パケットの高速変換器として動作するので、パケットを中継することによる伝送速度の低下が少なく、閉空間内で長距離に渡って、安定な通信エリアを確保することができる。
【0035】
(実施の形態2)
この実施の形態では、実施の形態1の無線LANシステムに対して、図2に示す電源供給方式を用いている。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。図2の電源供給方式は、漏洩同軸ケーブルの内部導体と外部導体とを利用して親局10から子局21に電源を供給する。親局10は、制御回路10Aと送受信回路10Bと電源回路10Cとを備えている。さらに、親局10は、電源供給方式を構成するコンデンサ10Dとインダクタ10Eとを備えている。
【0036】
親局10の制御回路10Aは、例えば、有線LAN端子10を経て有線LANデータを受信するための制御や、受信した有線LANデータの有無に応じて正常な有線LANデータを送受信回路10Bに渡す制御、親局10の存在を示す情報を漏洩同軸ケーブル30に送信するために、送受信回路10Bに対して行う制御などをする。また、送受信回路10Bは、例えば、有線LANデータを無線LANデータに変換して空中線端子10に出力する。さらに、電源回路10Cは、電源端子10に加えられた直流電源を所定電圧に変換して制御回路10Aや送受信回路10Bに供給する。
【0037】
コンデンサ10Dは、送受信回路10Bの電波の入出力端子10Bと、漏洩同軸ケーブル30の内部導体とを接続する信号線に挿入されている。コンデンサ10Dは漏洩同軸ケーブル30の内部導体に流れる直流電源が送受信回路10Bに流れることを阻止する直流阻止用である。インダクタ10Eは、漏洩同軸ケーブル30の内部導体とコンデンサ10Dと接続点と、電源端子10との間に接続されている。インダクタ10Eは、漏洩同軸ケーブル30の内部導体を流れる高周波信号が電源回路10Cに流れることを阻止する高周波阻止用である。なお、電源回路10Cおよび漏洩同軸ケーブル30の外部導体を接地する接続は図示を省略している。
【0038】
このように、この実施の形態による電源供給方式では、直流阻止用のコンデンサ10Dと、高周波阻止用インダクタ10Eとが組み合わされて用いられることにより、漏洩同軸ケーブル30の内部導体に加えられる高周波信号に重畳されて、直流電源が後段の子局21に送られる。
【0039】
漏洩同軸ケーブル30により親局10と接続されている子局21は、同じように、制御回路21Aと送受信回路21Bと電源回路21Cとを備えている。さらに、子局21は、親局10のコンデンサ10Dおよびインダクタ10Eと共に電源供給方式を構成するコンデンサ21Dとインダクタ21Eとを備えている。送受信回路21Bおよび電源回路21Cは親局10の送受信回路10Bおよび電源回路10Cと同じであり、また、直流阻止用のコンデンサ21Dおよび高周波阻止用のインダクタ21Eの接続関係は、親局10のコンデンサ10Dおよびインダクタ10Eと同じであるので、これらの説明を省略する。なお、制御回路21Aは、親局10の存在を示す情報を受信して親局10とリンクを確立するなどの制御を行う。
【0040】
次に、この実施の形態による電源供給方式が適用されている無線LANシステムの動作について説明する。親局10の電源端子10に直流電源が加えられると、電源回路10Cが直流電源を所定電圧に変換して、制御回路10Aと送受信回路10Bとに供給する。
【0041】
一方、電源端子10に加えられた直流電源は、インダクタ10Eを経て漏洩同軸ケーブル30の内部導体に加えられて、後段の子局21に供給される。このとき、漏洩同軸ケーブル30の内部導体を流れる高周波信号はインダクタ10Eで阻止される。この結果、高周波信号である無線LANデータが電源端子10から出力され、また電源回路10Cに加えられることがない。かつ、漏洩同軸ケーブル30の内部導体に加えられる直流電源はコンデンサ10Dで阻止されて、送受信回路10Bに加えられることがない。
【0042】
後段の子局21では、漏洩同軸ケーブル30の内部導体からの高周波信号に重畳されている直流電源は、インダクタ21Eにより分離されて電源回路21Cに加えられる。電源回路21Cは、加えられた直流電源を所定電圧に変換して、制御回路21Aと送受信回路21Bとに供給する。このとき、コンデンサ21Dは、直流電源に重畳されている高周波信号を分離して、送受信回路21Bに加える。
【0043】
子局21は、インダクタ21Eで分離した直流電源を、電源端子21から出力する。子局21に接続されている親局22は、親局10と同じ構成であるので、子局21の電源端子21に加えられた直流電源は、親局22の電源端子に加えられて、親局10と同じように、所定電圧を各回路に供給すると共に、後段の中継器に直流電源を供給する。
【0044】
こうして、この実施の形態によれば、漏洩同軸ケーブルに高周波信号と直流電源を重畳することで、漏洩同軸ケーブルの直流抵抗による電圧降下を許容できる範囲であれば、親局に対する配線は漏洩同軸ケーブル1本だけで済み、設置工事を極めて簡単にすることができる。
【0045】
なお、この実施の形態では、高周波阻止用としてインダクタを用いたが、高周波阻止用として半波長の整数倍の伝送線路で代替できるのはいうまでもない。また、この実施の形態では、電源回路10Cは電源端子10に加えられた直流電源を所定電圧に変換して制御回路10Aや送受信回路10Bに供給したが、もちろん交流電源を所定電圧に変換して供給してもよい。この場合には、交流電源が漏洩同軸ケーブルに重畳される。
【0046】
(実施の形態3)
この実施の形態による無線LANシステムを図3に示す。なお、この実施の形態では、先に説明した図1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。図3の無線LANシステムでは、中継局20〜20は電波による無線LANデータを同じく高周波信号により転送するものであるが、それらの構成が実施の形態1と異なっている。中継局20〜20は、分配器(HYB)61と親局62と同軸ケーブル63とを備えている。
【0047】
この実施の形態では、親局10は、上位ネットワークNWから無線LANデータを送信すると、この無線LANデータを中継局20の後述する親局62に向けて送信する。
【0048】
中継局20〜20の構成は同一であるので、中継局20について説明する。中継局20の分配器61は、空中線端子61〜61を備えている。分配器61は空中線端子61〜61を相互に接続し、空中線端子61〜61のインピーダンスは漏洩同軸ケーブルと同じである。この実施の形態では、空中線端子61が前段である親局10の空中線端子10に接続され、空中線端子61が同軸ケーブル63を経て親局62の空中線端子62に接続されている。また、分配器61の空中線端子61が後段の中継局20を構成する分配器61の空中線端子61に接続されている。
【0049】
親局62は転送機能を持つ。つまり、親局62は、分配器61と同軸ケーブル63とを経て親局10からのパケットを受信する。そして、親局62は受信して復調したパケットを一時蓄積し、このパケットの宛先に向けて再送信する。このとき、親局62は、再送信の際に同一周波数チャネルを使用する。このために、親局62はパケットを一時蓄積して再送信している。
【0050】
次に、この実施の形態による無線LANシステムの動作について説明する。上位ネットワークNWから無線LANデータを親局10が受信すると、漏洩同軸ケーブル30を経て、このデータを中継局20に送信する。このとき、無線LANデータを形成する無線パケットの高周波電力の一部が漏洩同軸ケーブル30から輻射される。
【0051】
中継局20の親局62は、分配器61を経て無線パケットを受信する。親局62は、受信して復調したパケットを一時蓄積し、このパケットの宛先に向けて、分配器61を経て漏洩同軸ケーブル30に再送信する。このとき、無線パケットの高周波電力の一部が漏洩同軸ケーブル30から輻射される。
【0052】
こうして、無線パケットが中継局20〜20を経て順次に転送されていく。このとき、漏洩同軸ケーブル30〜30から無線パケットの高周波電力の一部が輻射される。
【0053】
この実施の形態によれば、親局10および転送機能を有する親局62を用意することにより、中継局では無線LANの構成要素が親局62の1台でよく、中継局20〜20において消費電力や費用の面で有効である。
【0054】
(実施の形態4)
この実施の形態では、実施の形態3の分配器61を集中定数回路や分布定数回路で形成した場合に、分配器61において、空中線端子61〜61が集中定数回路や分布定数回路で相互に接続される構成となるので、実施の形態2の電源供給方式が用いられる。この場合には、分配器61は、電源を中継することになり、分配器61に接続されている親局62に電源の一部を供給する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明は、鉄道トンネルや坑道のような閉空間の他にも、1つの建物内や、建物の各フロアー、フロアーの各部屋などでの利用が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 親局
20〜20 中継局
21 子局
22 親局
23 LANケーブル
30〜30 漏洩同軸ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LANデータを流すための複数の漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルの間にそれぞれ接続されていると共に無線LAN用の子局および親局で形成されている中継局と、
を備え、
前記子局は、前段側の前記漏洩同軸ケーブルが接続されている空中線端子を具備し、この空中線端子を経て無線LANデータを受信すると、このデータを有線LANデータに変換してLANケーブルに送信し、
前記親局は、後段側の前記漏洩同軸ケーブルが接続されている空中線端子を具備し、前記LANケーブルから有線LANデータを受信すると、このデータを無線LANデータに変換してこの空中線端子に送信する、
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステム。
【請求項2】
無線LANデータを流すための複数の漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルの間にそれぞれ接続されていると共に無線LAN用の親局と分配器とで形成されている中継局と、
を備え、
前記分配器は、前段側および後段側の両方の漏洩同軸ケーブルが接続されている第1の空中線端子および第2の空中線端子と、同軸ケーブルが接続されている第3の空中線端子とを具備し、
前記親局は、前記同軸ケーブルが接続されている空中線端子を具備し、この空中線端子を経て無線LANデータのパケットを受信すると、このパケットを復調して蓄え、この後、このパケットの宛先に向けてこのパケットを前記同軸ケーブルから前記分配器に送信する、
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステム。
【請求項3】
前記中継局の親局および子局に対して、前記漏洩同軸ケーブルに電源を重畳して供給する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の漏洩同軸ケーブルを用いた無線LANシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−259058(P2011−259058A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129696(P2010−129696)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】