説明

演奏装置および電子楽器

【課題】 スティック状の部材を振っている一定期間における動作で、演奏者による所望の楽音の変化を実現する。
【解決手段】 演奏者が手で保持するための長手方向に延びる演奏装置本体11に、加速度センサ23と、長手方向の軸まわりの角速度を検出する角速度センサ22とが配置される。演奏装置本体11のCPU21は、加速度センサ23の加速度センサ値に基づいて、楽音を発生すべきタイミングを検出する。CPU21は、演奏装置本体11の振り始めに相当する第1のタイミングから、降り終わりに相当する第2のタイミングに至る期間における、角速度センサ22により検出された角速度であって、その絶対値が最大値を示す所定値ωmaxを取得する。CPU21は、上記所定値ωmaxに基づく回転の向きおよび大きさにしたがって、音量レベルの増減および増減の修正値を算出して、発音すべき楽音の音量レベルを修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏者が手で保持して、振ることにより楽音を発生させる演奏装置および電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スティック状の部材にセンサを設け、演奏者が部材を手で保持して振ることで、センサが、当該部材の動きを検出し、楽音を発音するように構成された電子楽器が提案されている。特に、この電子楽器では、スティック状の部材は、ドラムのスティックや太鼓の撥のような形状を備え、演奏者があたかもドラムや太鼓をたたくような動作に応じて、打楽器音が発声されるようになっている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、スティック状の部材に加速度センサを設け、加速度センサからの出力(加速度センサ値)が、所定の閾値に達した後、所定時間が経過すると、楽音を発音するように構成された演奏装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2663503号公報
【特許文献2】特願2007−256736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された演奏装置では、スティック状の部材の加速度センサ値に基づいて楽音の発音が制御されるだけであり、演奏者の所望のような楽音の変化を実現するのが容易ではないという問題点があった。
【0006】
特許文献2には、複数の音色を発音可能として、地磁気センサを用いて、スティック状の部材が向けられる方向にしたがって、複数の音色のうち、何れかを発音する装置が提案されている。特許文献2に提案された装置では、演奏開始時、つまり、スティック状の部材を振るときの方向で、楽音を変化させる。特許文献2に開示された装置では、演奏開始時、つまり、スティック状の部材を振る時点で変化させる楽音は決まってしまう。
【0007】
本発明は、スティック状の部材を振っている一定期間における動作で、演奏者による所望の楽音の変化が実現できる演奏装置および電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
演奏者が手で保持するための長手方向に延びる保持部材と、
前記保持部材内に配置された加速度センサと、
前記保持部材の前記長手方向の軸まわりの回転に伴う角速度を検出する角速度センサと、
所定の楽音を発音する楽音発生手段に対して発音の指示を与える制御手段と、を備え、
前記制御手段が、前記加速度センサ値に基づき取得した発音タイミングにて前記楽音発生手段に対して発音の指示を与える発音指示手段と、
前記加速度センサ値が上昇して所定の第1の値に達し、その後、下降して所定の第2の値に達するまで期間における、前記角速度センサにより検出された角速度であって、その絶対値が最大値を示す所定値を検出する所定値検出手段と、
前記検出された所定値に基づき、前記発音すべき楽音の音量レベルを算出して、当該算出された音量レベルを前記発音指示手段に与える音量レベル算出手段と、を有することを特徴とする演奏装置により達成される。
【0009】
好ましい実施態様において、前記音量レベル算出手段は、前記所定値に基づき、前記軸まわりの回転が、一方の方向への回転を示す場合に、前記音量レベルを所定の基準値から増大させ、前記軸まわりの回転が、他方の方向への回転を示す場合に、前記音量レベルを前記所定の基準値から減少させる。
【0010】
より好ましい実施態様においては、前記音量レベル算出手段は、前記軸まわりの回転が前記一方の方向への回転を示す場合に、前記所定値の絶対値が大きくなるのに従って、前記所定の基準値からの増加量が大きくなるように音量レベルを算出し、前記軸まわりの回転が前記他方の方向への回転を示す場合に、前記所定値の絶対値が大きくなるのに従って、前記所定の基準値からの減少量が大きくなるように音量レベルを算出する。
【0011】
また、別の好ましい実施態様においては、前記発音指示手段は、前記加速度センサ値が、所定の第1の閾値を超えて、その後、前記第1の閾値より小さい第2の閾値より小さくなったタイミングを発音タイミングとして、前記楽音発生手段に対して発音の指示を与える。
【0012】
より好ましい実施態様においては、前記所定の第1の値が前記第1の閾値であり、前記所定の第2の値が前記第2の閾値である。
【0013】
また、本発明の目的は、上記演奏装置と、
前記楽音発生手段を備えた楽器部と、を備え、
前記演奏装置と、前記楽器部とが、それぞれ、通信手段を備えたことを特徴とする電子楽器により達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スティック状の部材を振っている一定期間における動作で、演奏者による所望の楽音の変化が実現できる演奏装置および電子楽器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図2】図2は、本実施の形態にかかる演奏装置本体の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる演奏装置本体の外観を概略的に示す図である。
【図4】図4は、本実施の形態にかかる演奏装置本体において実行される処理の例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本実施の形態にかかる発音タイミング検出処理の例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施の形態にかかるノートオンイベント生成処理の例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施の形態にかかる楽器部において実行される処理の例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、演奏装置本体の加速度センサにより検出される加速度センサ値の例を模式的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。図1に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10は、演奏者が手に持って振るための、長手方向に延びるスティック状の演奏装置本体11を有している。また、電子楽器10は、楽音を発生するための楽器部19を備え、楽器部19は、CPU12、インタフェース(I/F)13、ROM14、RAM15、表示部16、入力部17およびサウンドシステム18を有する。演奏装置本体11は、後述するように、演奏者が保持する根元側と反対側である先端側の付近に加速度センサ23と、角速度センサ22とを有する。
【0017】
楽器部19のI/F13は、演奏装置本体11からのデータ(たとえばノートオンイベント)を受け入れて、RAM15に格納するとともに、CPU12にデータの受け入れを通知する。本実施の形態においては、たとえば、演奏装置本体11の根元側(図2の符号211参照)の端部に赤外線通信装置24が設けられ、I/F13にも赤外線通信装置33が設けられている。したがって、楽器部19は、演奏装置本体11の赤外線通信装置24が発した赤外線を、I/F13の赤外線通信装置33が受信することで、演奏装置本体11からのデータを受信することができる。
【0018】
CPU12は、電子楽器10全体の制御、特に、電子楽器の楽器部19の制御、入力部17を構成するキースイッチ(図示せず)の操作の検出、I/F13を介して受信したノートオンイベントに基づく楽音の発生など、種々の処理を実行する。
【0019】
ROM14は、電子楽器10全体の制御、特に、電子楽器の楽器部19の制御、入力部17を構成するキースイッチ(図示せず)の操作の検出、I/F13を介して受信したノートオンイベントに基づく楽音の発生など、種々の処理プログラムを格納する。また、ROM14は、種々の音色の波形データ、特に、バスドラム、ハイハット、スネア、シンバルなど打楽器の波形データを格納する波形データエリアを含む。無論、打楽器の波形データに限定されず、ROM22には、フルート、サックス、トランペットなどの管楽器、ピアノなどの鍵盤楽器、ギターなどの弦楽器の音色の波形データが格納されていても良い。
【0020】
RAM15は、ROM14から読み出されたプログラムや、処理の過程で生じたデータやパラメータを記憶する。処理の過程で生じたデータには、入力部17のスイッチの操作状態、I/F13を介して受信したノートイベントや、楽音の発音状態などが含まれる。
【0021】
表示部16は、たとえば、液晶表示装置(図示せず)を有し、選択された音色などを表示することができる。また、入力部17は、スイッチ(図示せず)を有し、音色の指定などを指示することができる。
【0022】
サウンドシステム18は、音源部31、オーディオ回路32およびスピーカ35を備える。音源部31は、CPU12からの指示にしたがって、ROM15の波形データエリアから波形データを読み出して、楽音データを生成して出力する。オーディオ回路32は、音源部31から出力された楽音データをアナログ信号に変換し、変換されたアナログ信号を増幅してスピーカ35に出力する。これによりスピーカ35から楽音が出力される。
【0023】
図2は、本実施の形態にかかる演奏装置本体の構成を示すブロックダイヤグラムである。図2に示すように、演奏装置本体11は、演奏者が保持する根元側(符号211参照)の反対側である先端側(符号212参照)に、角速度センサ22および加速度センサ23を有する。角速度センサ22の位置は、先端側に限定されず、根元側に配置されていても良い。角速度センサ22は、たとえば、ジャイロスコープを備えたセンサであり、演奏装置本体11の長手方向の軸(図2の符号200参照)を中心とした回転(符号201参照)における角速度を検出することができる。加速度センサ23は、たとえば、静電容量型或いはピエゾ抵抗素子型のセンサであり、生じた加速度を示すデータ値を出力することができる。本実施の形態にかかる加速度センサ23は、たとえば、演奏装置本体11の軸(:長手方向の軸:符号200参照)方向の加速度センサ値を出力する。
【0024】
演奏者が実際にドラムを演奏するときには、スティックの一端(根元側211)を手に持って、スティックに手首などを中心とした回転運動を生じさせる。したがって、この実施の形態では、回転運動に伴う遠心力を検知すべく、演奏装置本体11の軸200方向の加速度センサ値を取得する。無論、加速度センサとして3軸センサを用いても良い。また、本実施の形態においては、角速度センサ22により、演奏装置本体11の軸200まわりの変位(回転角)が取得される。
【0025】
図3は、本実施の形態にかかる演奏装置本体の外観を概略的に示す図である。図3では、根元側(符号211参照)を奥に、先端側(符号212参照)を手前となるように演奏装置本体11が描かれている。図3に示すように、先端側211から見て左回転(反時計まわりの回転:矢印A参照)のときの角速度ωを正としている。その一方、先端側211からみて右回転(時計まわりの回転:矢印B参照)のときの角速度ωを負としている。以下、演奏装置本体11の軸まわりの回転方向は、演奏装置本体11の先端側1102から見たときの回転方向を指す。上記定義は、本明細書における軸まわりの回転方向を明確にすることを意図している。本実施の形態においては、後述するように、軸200まわりの角速度の最大値ωmaxが正であるときに音量レベルが増大し、上記最大値ωmaxが負であるときに音量レベルが減少する。
【0026】
また、演奏装置本体11は、CPU21、赤外線通信装置24、ROM25、RAM26、インタフェース(I/F)27および入力部28を有する。CPU21は、演奏装置本体11における加速度センサ値および角速度センサ値の取得、加速度センサ値にしたがった楽音の発音タイミングの検出、ノートオンイベントの生成、角速度センサ値にしたがった音量レベル修正値の算出、I/F27および赤外線通信装置24を介したノートオンイベントの送信制御などの処理を実行する。
【0027】
ROM25には、演奏装置本体11における加速度センサ値および角速度センサ値の取得、加速度センサ値にしたがった楽音の発音タイミングの検出、ノートオンイベントの生成、角速度センサ値にしたがった音量レベル修正値の算出、I/F27および赤外線通信装置24を介したノートオンイベントの送信制御などの処理プログラムが格納される。RAM26には、センサ値など、処理において取得され或いは生成された値が格納される。I/F27は、CPU21からの指示にしたがって赤外線通信装置24にデータを出力する。また、入力部28は、スイッチ(図示せず)を有する。
【0028】
図4は、本実施の形態にかかる演奏装置本体において実行される処理の例を示すフローチャートである。図4に示すように、演奏装置本体11のCPU21は、RAM26のデータのクリアなどを含むイニシャライズ処理を実行する(ステップ401)。イニシャライズ処理(ステップ401)が終了すると、CPU21は、加速度センサ23のセンサ値(加速度センサ値)を取得して、RAM26に格納する(ステップ402)。上述したように、本実施の形態においては、加速度センサ値として、演奏装置本体11の軸200方向のセンサ値が採用される。また、CPU21は、角速度センサ22のセンサ値(角速度センサ値ω)を取得して、RAM26に格納する(ステップ403)。
【0029】
次いで、CPU21は、発音タイミング検出処理を実行する(ステップ404)。図5は、本実施の形態にかかる発音タイミング検出処理の例を示すフローチャートである。図5に示すように、CPU21は、RAM26に格納された加速度センサ値および角速度センサ値ωを読み出す(ステップ501)。次いで、CPU21は、加速度センサ値が、所定の第1の閾値αより大きいかを判断する(ステップ502)。ステップ502でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM26中の加速度フラグが「0」であるかを判断する(ステップ503)。ステップ503でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM26中の加速度フラグに「1」をセットする(ステップ504)。また、CPU21は、RAM26中の角速度センサ値について、その絶対値が最大値を示す所定値ωmaxを「0」に初期化する(ステップ505)。
【0030】
ステップ503でNoの場合、或いは、ステップ505の後、角速度センサ値ωの絶対値が、RAM26に格納された、所定値ωmaxの絶対値より大きいかを判断する(ステップ506)。前述したように、演奏装置本体11を先端側211から見て左回転(反時計まわりの回転:図2の矢印A参照)のときにΔωは正、右回転(時計回りの回転:図2の矢印B参照)のときのΔωは負となる。所定値ωmaxは、角速度ωのうち、その絶対値が最大である値を示し、負の値となる場合もある。ステップ506でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM26中の角速度センサ値ωmaxとして、ステップ403で取得され、RAM26に格納されていた角速度センサ値ωを格納する(ステップ507)。すなわち、ωmaxが、その絶対値が最大値を示す角速度に書き換えられる。
【0031】
ステップ502でNoと判断された場合には、CPU21は、RAM26中の加速度フラグが「1」であるかを判断する(ステップ508)。ステップ508でNoと判断された場合には、発音タイミング検出処理が終了される。ステップ508でYesと判断された場合には、CPU21は、加速度センサ値が所定の第2の閾値βより小さいかを判断する(ステップ509)。ステップ509でNoと判断された場合には、ステップ506に進む。ステップ509でYesと判断された場合には、CPU21は、ノートオンイベント生成処理を実行する(ステップ510)。
【0032】
図6は、本実施の形態にかかるノートオンイベント生成処理の例を示すフローチャートである。図6に示すノートオンイベント生成処理により、ノートオンイベントが楽器部19に送信され、その後、楽器部19において発音処理(図7のステップ704)が実行されることにより、楽音データが生成され、スピーカ35から楽音が発音される。
【0033】
ここに、ノートオンイベント生成処理の説明に先立ち、本実施の形態にかかる電子楽器10における発音タイミングについて説明する。図8は、演奏装置本体の加速度センサにより検出される加速度センサ値の例を模式的に示したグラフである。演奏者が、演奏装置本体11の一端(根元側)を持って振ることは、手首、ひじ、肩などを支点とした回転運動を演奏装置本体11に生じさせる。この回転運動に伴って、特に、遠心力により、演奏装置本体11の軸方向に加速度が生じる。
【0034】
演奏者が、演奏装置本体11を振ると、加速度センサ値は、次第に大きくなる(図8の曲線800における符号801参照)。演奏者がスティック状の演奏装置本体11を振るときに、一般には、ドラムを打つ動作と同様に動作する。したがって、演奏者は、仮想的に設定されたドラムの面にスティックを打ちつける寸前に、スティック(つまりスティック状の演奏装置本体11)の動作をとめていく。したがって、ある時刻から加速度センサ値は徐々に減少する(符号802参照)。演奏者は、仮想的なドラムの面にスティックを打ちつけた瞬間に楽音が発生することを想定している。したがって、演奏者が想定するタイミングで楽音を発生できるのが望ましい。
【0035】
本発明では、演奏者が仮想的なドラムの面にスティックを打ちつける瞬間或いはそのわずかに前に楽音を発生すべく、以下に述べるようなロジックを採用する。発音タイミングは、加速度センサ値が減少して、「0」よりわずかに大きい第2の閾値βより小さくなったときとする。しかしながら、演奏者が予期していない動作により、加速度センサ値が振動して、上述した第2の閾値β前後に達する可能性もある。したがって、予期しない振動を排除するために、いったん、加速度センサ値が上昇して、所定の第1の閾値α(αはβより十分に大きい)を越えることを条件としている。すなわち、加速度センサ値がいったん第1の閾値αより大きくなり(時刻tα参照)、その後、加速度センサ値が減少して、第2の閾値βより小さくなったとき(時刻tβ参照)、時刻tβを発音タイミングとしている。上述したような発音タイミングが到来したと判断されると、演奏装置本体11においてノートオンイベントが生成され、楽器部10に送信される。また、これに応答して、楽器部19において、発音処理および音源処理が実行されて、楽音が発生する。
【0036】
また、本実施の形態においては、加速度センサ値が上昇して第1の閾値αより大きくなったタイミング(時刻tα)と、加速度センサ値が下降して第2の閾値βより小さくなったタイミング(時刻tβ)との期間Tにおいて、演奏装置本体11の軸200まわりの角速度ωについて、その絶対値が最大値を示す所定値ωmaxに基づいて、発音すべき楽音の音量レベルが調整される。
【0037】
図6に示すように、ノートオンイベント生成処理においては、CPU21は、RAM26に格納された音量レベルの初期値を取得する(ステップ601)。次いで、CPU21は、CPU21は、RAM26に格納された、その絶対値が角速度の最大値を示す所定値ωmaxに基づき、音量レベル修正値ΔLevを算出する(ステップ602)。たとえば、ΔLevは、以下のように求めることができる。
【0038】
ΔLev=b・ωmax (ただし、bは所定の正の係数)
【0039】
所定値ωmaxが正であれば、ΔLevも正となり、所定値ωmaxが負であれば、ΔLevも負となる。CPU21は、音量レベルの初期値に上記音量レベル修正値ΔLevを加算し、加算された値を音量レベルVelとする(ステップ603)。なお、音量レベルの初期値+ΔLev≧Vmax(Vmax:音量レベルの最大値)のときには、音量レベルVelはVmaxとなる。これにより、音量レベルVelは、演奏者による演奏装置本体11の軸200まわりの回転の速度を考慮して値が増減されたものとなる。
【0040】
CPU21は、算出された音量レベル(ベロシティ)、所定の音色を示す情報を含むノートオンイベントを生成する(ステップ604)。なお、ノートオンイベント中に、音高を示す情報として所定値を含めても良い。
【0041】
CPU21は、生成されたノートオンイベントをI/F27に出力する(ステップ605)。I/F27は、赤外線通信装置24にノートオンイベントを赤外線信号として送信させる。赤外線通信装置24からの赤外線信号は楽器部19の赤外線通信装置33に受信される。その後、CPU21は、RAM26中の加速度フラグを「0」にリセットする(ステップ606)。
【0042】
発音タイミング検出処理(ステップ404)が終了すると、CPU21は、パラメータ通信処理を実行する(ステップ405)。パラメータ通信処理(ステップ405)については、後述する楽器部19におけるパラメータ通信処理(図7のステップ705)とともに説明する。
【0043】
次に、本実施の形態にかかる楽器部において実行される処理について説明する。図7は、本実施の形態にかかる楽器部において実行される処理の例を示すフローチャートである。楽器部19のCPU12は、RAM15のデータのクリア、表示部16の画面上に表示される画像のクリア、音源部31のクリアなどを含むイニシャライズ処理を実行する(ステップ701)。次いで、CPU12は、スイッチ処理を実行する(ステップ702)。スイッチ処理においては、たとえば、以下の処理を実行する。CPU12は、入力部17のスイッチ操作にしたがって、発音すべき楽音の音色の設定などを実行する。CPU12は、指定された音色の情報をRAM15に格納する。
【0044】
次いで、CPU12は、I/F13が、新たにイベントを受信しているかを判断する(ステップ703)。ステップ703でYesと判断された場合には、CPU12は発音処理を実行する(ステップ704)。発音処理においては、CPU21は、I/F13が受信し、RAM15に格納したノートオンイベントを、音源部31に与えて発音を指示する。
【0045】
音源部31は、ノートオンイベントを受信すると、ROM14から、ノートオンイベントに示される音色にしたがった波形データを読み出す。また、波形データ読み出しの際の速度はノートオンイベントに含まれる音高に従う。次いで、音源部31は、ノートオンイベントに含まれる音量レベルと波形データとを乗じて、所定の音量レベルの楽音波形データを生成する。生成された楽音波形データは、オーディオ回路32に出力される。これにより、所定の音量の楽音がスピーカ35から発生される。
【0046】
発音処理(ステップ704)の後、CPU12は、パラメータ通信処理を実行する(ステップ705)。パラメータ通信処理においては、CPU12の指示によって、たとえば、スイッチ処理(ステップ702)で設定された発音すべき楽音の音色が、I/F13を介して赤外線通信装置33から、演奏装置本体11に送信される。また、演奏装置本体11において、赤外線通信装置24が、データを受信すると、CPU21は、I/F27を介してデータを受け入れ、RAM26に格納する(図4のステップ405)。
【0047】
パラメータ通信処理(ステップ705)が終了すると、CPU12は、その他の処理、たとえば、表示部16の画面上に表示される画像の更新などを実行する(ステップ706)。
【0048】
本実施の形態においては、角速度センサ値ωを用いて、演奏装置本体11の振り始めに相当する所定の第1のタイミングから、降り終わりに相当する所定の第2のタイミングに至るまでの期間Tにおいて、演奏装置本体11の軸まわりの角速度について、その絶対値が最大値を示す所定値ωmaxが取得される。演奏装置本体11のCPU21は、所定値ωmaxにしたがって、回転の向きおよび大きさを算出し、これに基づき、音量レベルの増減および増減の修正値を算出して、音量レベルを修正する。本実施の形態によれば、演奏者の手首の捻りの速さにしたがった、演奏者にとって所望の音量レベルの楽音を発生させることが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態においては、CPU21は、演奏装置本体11の軸200まわりの角速度について、その絶対値が最大値を示す所定値ωmaxが、一方の方向(図2の符号A)の回転を示す場合には、音量レベルを増大し、他方の方向(図2の符号B)の回転を示す場合には、音量レベルを減少する。これにより、演奏者は、手首の捻りの方向によって所望の音量の増減を実現できる。
【0050】
さらに、本実施の形態においては、CPU21は、所定値ωmaxが一方の回転への方向を示す場合に、その絶対値が大きくなるのに従って、所定の基準値からの増加量が大きくなるように音量レベルを算出し、所定値ωmaxが前記他方の回転への方向を示す場合に、その絶対値が大きくなるのに従って、前記所定の基準値からの減少量が大きくなるように音量レベルを算出する。これにより、演奏者は手首の捻りの量にしたがって音量の増減のレベルを所望のように調整することが可能となる。
【0051】
さらに、本実施の形態においては、CPU21は、加速度センサ23の加速度センサ値が、所定の第1の閾値αを超えて、その後、前記第1の閾値より小さい第2の閾値βより小さくなったタイミングを発音タイミングとして、ノートオンイベントを生成し、楽器部19に対して発音の指示を与える。したがって、演奏者が仮想的なドラムの面にスティックを打ちつけた瞬間に楽音が発生させることが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態においては、上記所定の第1の値が第1の閾値であり、上記第2の値が前記第2の閾値として、加速度センサ値が上昇して、第1の閾値αに達してから、その後に下降し、第2の閾値βに達するまでの期間Tにおける、角速度の絶対値が最大値を示す所定値ωmaxに基づいて、音量を修正している。したがって、演奏者による振り始めからその停止までの期間における演奏者による手首の捻りの速さに基づく音量レベルの変化を実現することが可能となる。
【0053】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0054】
前記実施の形態においては、演奏装置本体11のCPU21は、演奏者が演奏装置本体11を振ることによる加速度センサ値を検出して、加速度センサ値に基づき発音タイミングを検出する。その後、演奏装置本体11のCPU21は、上記発音タイミングで、ノートオンイベントを生成して、I/F27および赤外線通信装置24を介して楽器部19に送信している。その一方、楽器部19においては、ノートオンイベントを受信すると、CPU12が、受信したノートオンイベントを音源部31に出力して楽音を発生させている。上記構成は、楽器部19が、MIDIボードなどが取り付けられたパーソナルコンピュータやゲーム機など、楽音生成の専用機ではないときに好適である。
【0055】
しかしながら、演奏装置本体11における処理、および、楽器部19における処理の分担は、上記実施の形態のものに限定されない。
【0056】
たとえば、演奏装置本体11においては、加速度センサ値、および、角速度センサ値を取得して、楽器部19に送信するように構成しても良い。この場合には、発音タイミング検出処理(図5)、ノートオンイベント生成処理(図6)は、楽器部19において実行される。上述した構成は、楽器部19が、楽音生成の専用機である電子楽器について好適である。
【0057】
また、本実施の形態においては、演奏装置本体11と楽器部19との間は、赤外線通信装置24、33を用いて赤外線信号にてデータが通信されているが、これに限定されるものではない。たとえば、打楽器本体11と楽器部19とは他の無線通信でデータ通信してもよいし、ワイヤケーブルによって有線でデータ通信するように構成しても良い。
【0058】
さらに、前記実施の形態においては、演奏装置本体11のCPU21は、加速度センサ値が、所定の第1の閾値αを超えて、その後、前記第1の閾値より小さい第2の閾値βより小さくなったタイミングを発音タイミングとして、楽器部19に対して発音を指示している。しかしながら、発音タイミングは上述したものに限定されず、加速度センサ値が最大値になったとき、或いは、最大値になってから所定の時間が経過したときを、発音タイミングとしても良い。また、前記実施の形態において、その回転角の絶対値が最大値を示す回転角を検出するための期間を規定する2つのタイミングも上述したものに限定されず、加速度センサによる他の加速度センサ値を採用しても良い。
【0059】
また、前記実施の形態において、音量レベル修正値ΔLevを算出するために、角速度の所定値ωmaxに所定の正の係数を乗じている。しかしながら、これに限定されるものではなく、RAM26に、所定値ωmaxの範囲と、音量レベル修正値ΔLevとを対応付けた音量修正テーブルを格納し、CPU21が、所定値ωmaxに基づいて対応するΔLevを取得するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0060】
10 電子楽器
11 演奏装置本体
12 CPU
13 I/F
14 ROM
15 RAM
16 表示部
17 入力部
18 サウンドシステム
19 楽器部
21 CPU
22 角速度センサ
23 加速度センサ
24 赤外線通信装置
25 ROM
26 RAM
27 I/F
31 音源部
32 オーディオ回路
33 赤外線通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者が手で保持するための長手方向に延びる保持部材と、
前記保持部材内に配置された加速度センサと、
前記保持部材の前記長手方向の軸まわりの回転に伴う角速度を検出する角速度センサと、
所定の楽音を発音する楽音発生手段に対して発音の指示を与える制御手段と、を備え、
前記制御手段が、前記加速度センサ値に基づき取得した発音タイミングにて前記楽音発生手段に対して発音の指示を与える発音指示手段と、
前記加速度センサ値が上昇して所定の第1の値に達し、その後、下降して所定の第2の値に達するまで期間における、前記角速度センサにより検出された角速度であって、その絶対値が最大値を示す所定値を検出する所定値検出手段と、
前記検出された所定値に基づき、前記発音すべき楽音の音量レベルを算出して、当該算出された音量レベルを前記発音指示手段に与える音量レベル算出手段と、を有することを特徴とする演奏装置。
【請求項2】
前記音量レベル算出手段は、前記所定値に基づき、前記軸まわりの回転が、一方の方向への回転を示す場合に、前記音量レベルを所定の基準値から増大させ、前記軸まわりの回転が、他方の方向への回転を示す場合に、前記音量レベルを前記所定の基準値から減少させることを特徴とする請求項1に記載の演奏装置。
【請求項3】
前記音量レベル算出手段は、前記軸まわりの回転が前記一方の方向への回転を示す場合に、前記所定値の絶対値が大きくなるのに従って、前記所定の基準値からの増加量が大きくなるように音量レベルを算出し、前記軸まわりの回転が前記他方の方向への回転を示す場合に、前記所定値の絶対値が大きくなるのに従って、前記所定の基準値からの減少量が大きくなるように音量レベルを算出することを特徴とする請求項2に記載の演奏装置。
【請求項4】
前記発音指示手段は、前記加速度センサ値が、所定の第1の閾値を超えて、その後、前記第1の閾値より小さい第2の閾値より小さくなったタイミングを発音タイミングとして、前記楽音発生手段に対して発音の指示を与えることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の演奏装置。
【請求項5】
前記所定の第1の値が前記第1の閾値であり、前記所定の第2の値が前記第2の閾値であることを特徴とする請求項4に記載の演奏装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の演奏装置と、
前記楽音発生手段を備えた楽器部と、を備え、
前記演奏装置と、前記楽器部とが、それぞれ、通信手段を備えたことを特徴とする電子楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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