演奏装置
【課題】リピートパターンや再生音階を可変にして複雑な音楽を形成することができる演奏装置を提供する。
【解決手段】ユーザがリピート区間調整用の制御スイッチ22Dを押下するとメインCPU2は、キースイッチ100によるリピート区間調整の受付可能状態となる(S101)。この状態でユーザが所定のキースイッチ100を押下すると、メインCPU2はX軸位置または移動するキースイッチ押下位置の最終X座標を検出する(S102→S103→S104,S105)。メインCPU2はX軸位置をリピート点に設定して楽曲データを再生する(S106)。これにより、リピート区間が設定される。このようなリピート区間の設定とともに、制御スイッチ22Fを押下して、キースイッチ100のY軸位置を検出することで、再生音階を設定することもできる。これにより、再生音は、より多様性を備えるものとなる。
【解決手段】ユーザがリピート区間調整用の制御スイッチ22Dを押下するとメインCPU2は、キースイッチ100によるリピート区間調整の受付可能状態となる(S101)。この状態でユーザが所定のキースイッチ100を押下すると、メインCPU2はX軸位置または移動するキースイッチ押下位置の最終X座標を検出する(S102→S103→S104,S105)。メインCPU2はX軸位置をリピート点に設定して楽曲データを再生する(S106)。これにより、リピート区間が設定される。このようなリピート区間の設定とともに、制御スイッチ22Fを押下して、キースイッチ100のY軸位置を検出することで、再生音階を設定することもできる。これにより、再生音は、より多様性を備えるものとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のキースイッチに対するユーザの演奏操作を受け付けて、この演奏操作に応じた演奏を行う演奏装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テノリオンと呼称される演奏装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
図1(A)は演奏装置(テノリオン)の正面図である。また、図2はキースイッチ100の拡大正面図であり、ハッチングされたキースイッチ100が選択されたキースイッチ100を表す。なお、図1に示す演奏装置1の詳細な説明は実施形態に記載するため、ここでは課題となる部分の説明のみを行い、その他の部分の説明は省略する。
【0003】
この演奏装置1は、横方向に16個、縦方向に16個すなわち16×16個の2次元配列されたキースイッチ100からなるキースイッチ群10を備える。ここで、各キースイッチ100をX,Y座標系で表す。例えば、代表として図2における向かって左端且つ下端のキースイッチ100をmtSW(1,1)とし、右端且つ上端キースイッチ100をmtSW(16,16)とする。
【0004】
キースイッチ群10のキースイッチ100には所定の音が割り当てられている。例えば、縦方向に並ぶキースイッチmtSW(A,1)〜mtSW(A,16)、(Aは1〜16の任意の整数)にそれぞれ異なる音高を設定することで音階を形成する。また、横方向のキースイッチの並びはタイミング(拍)を表し、キースイッチmtSW(1,B)〜mtSW(16,B)、(Bは1〜16の任意の整数)には、順次所定の再生タイミング差が設定されている。
【0005】
この従来の演奏装置では、次の方法で演奏を行う。まず、ユーザが予め2次元配列されたキースイッチ100を選択する。
【0006】
本実施例では、縦方向に並ぶキースイッチmtSW(A,1)〜mtSW(A,16)には、図2に示すように、C3(60)、D3(62)、・・・・、D5(86)が順にが割り当てられている。ここで、()内の60〜86の数字は音高を表す数値(ノートナンバ)である。
【0007】
演奏装置1は、これら選択されたキースイッチ100に割り当てられた発音データにより図19に示す曲を表す楽曲データを形成して記憶する。
【0008】
図19は図2に示すキースイッチ100の選択が行われた場合の楽曲データのイメージ図である。
【0009】
演奏装置1は、ユーザから再生操作を受け付けると、記憶していた楽曲データを再生する。すなわち、各タイミングに合わせて順に発音データを再生する。図2、図19の場合であれば、第1拍は無音、第2拍は「ファ」、第3拍は無音、第4拍は「レ」、のように、第16拍までを順に一定のタイミングで発音する。そして、演奏装置1は、第16拍の再生が終了すると、第1拍にリピートして再度、第2拍、第3拍の順に発音データを再生する。
【非特許文献1】ヤマハ株式会社、ヤマハについて知る、Design、tenori-on、[平成17年2月22日検索]、インターネット(ヤマハ株式会社ホームページ)<URL:http://www.yamaha.co.jp/design/tenori-on/ >
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前述の従来の演奏装置では、X方向に並ぶ16個のキースイッチに対応する16拍を順に再生して、リピートする動作を繰り返し行うだけであった。すなわち、第1拍〜第16拍、また第1拍〜第16拍、・・・、のように単純に16拍が繰り返されるだけであった。このため、音楽に複雑な変化を与えることが難しく、ユーザに対してあまり抑揚感を与えることができなかった。
【0011】
また、音階も一度設定してしまえば変更することができず、この面に置いても、ユーザに対してあまり抑揚感を与えることができなかった。
【0012】
このため、本発明の目的は、リピートパターンや音階を可変にして複雑な音楽を形成し、より多様性に富み一層抑揚感の得られる演奏装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の演奏装置は、X,Y方向に2次元配列され、X座標が拍タイミングに対応付けられ、Y座標が音高に対応付けられた複数のキースイッチと、複数のキースイッチの押下により自動演奏時に発音する楽曲の音高と拍タイミングの指定を受け付けて楽曲データとして記憶する楽曲データ形成手段と、キースイッチを調整操作子として機能させ、操作されたキースイッチのX方向位置またはX方向の移動量により楽音データの繰り返し点を検出する繰り返し点検出手段とを備える。そして、この発明の演奏装置は、楽曲データを繰り返し点に応じて繰り返すことで自動演奏再生する再生手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
この構成では、楽曲の作成時には、ユーザがキースイッチを選択すると、楽曲データ形成手段は、選択されたキースイッチの2次元位置を検出して楽曲データを形成する。この際、キースイッチのY方向位置で音高を取得し、X方向位置で再生の拍タイミングを取得する。
【0015】
楽曲データの再生時には、ユーザがキースイッチを選択すると、繰り返し点検出手段は、選択されたキースイッチのX方向位置を検出し、このタイミングを繰り返し点(リピートポイント)に設定する。この際、演奏装置には、キースイッチを繰り返し点調整操作子として認識する機能を有しており、これにより、楽曲作成時とは異なる機能をキースイッチに与える。
【0016】
再生手段は、設定された繰り返し点に基づいて、楽音データをリピート再生する。図2に示す左端(X=1)から順に右方向に発音データを再生する場合で有れば、左端(X=1)から再生を開始して、設定された繰り返し点(X=C)(Cは1〜16の任意の整数)の発音データまで順次再生する。例えば、C=10であれば、X=1の列からX=10の列まで発音データを再生する。そして、再生手段は、左端(X=1)に戻って、再びX方向に沿って、順次発音データの再生を行う。なお、この繰り返し点の設定は、既に楽音データの再生が行われている場合でもよく、この場合、設定後に始めて繰り返し点に再生タイミングが来た時点で、新たな繰り返し点に基づくリピートが行われる。これにより、リピートポイントが可変になり、多様性のある音楽が形成される。
【0017】
また、この発明の演奏装置の繰り返し点検出手段は、調整操作子として機能する二つのキースイッチのX方向位置を第1繰り返し点および第2繰り返し点として検出し、再生手段は、楽曲データを第1繰り返し点と前記第2繰り返し点との間で繰り返し再生することを特徴としている。
【0018】
この構成では、ユーザがX方向の2箇所でキースイッチを選択すると、繰り返し点検出手段は、これら選択されたキースイッチのタイミングを第1繰り返し点(リピート再生起点)と第2繰り返し点(リピート再生終点)として検出する。再生手段は、これら第1繰り返し点、第2繰り返し点に挟まれる区間で楽音データをリピート再生する。例えば、X=3を第1繰り返し点、X=13を第2繰り返し点に検出すれば、楽曲データの内のX=3〜X=13の区間をリピート再生する。これにより、リピート区間のリピートタイミングだけでなく先頭タイミングをも変更することができ、より多様性のある音楽が形成される。
【0019】
また、この発明の演奏装置では、Y方向に並ぶ各キースイッチに割り当てられた楽音データは、これらY方向に並ぶ複数のキースイッチに応じた楽音データ群で音階を形成するものである。さらに、演奏装置は、キースイッチを調整操作子として機能させ、操作されたキースイッチのY方向位置により楽音データの音階を設定する音階設定手段を備える。そして、この演奏装置の再生手段は、音階設定手段により設定された音階に基づき楽曲データを再生することを特徴としている。
【0020】
この構成では、ユーザがキースイッチを選択すると、音階設定手段は、選択されたキースイッチのY方向位置を検出して、再生を行う音階(再生音階)を設定する。この際、演奏装置には、キースイッチを音階設定調整操作子として認識する機能を有しており、これにより、楽曲作成時とは異なる機能をキースイッチに与える。再生手段は、設定された再生音階に合致する楽曲データのみを再生する。これにより、さまざまな音階範囲からなる多様性の有る楽曲データの再生が行われる。
【0021】
また、この発明の演奏装置の音階設定手段は、調整操作子として機能する二つのキースイッチのY方向位置を音階上限点および音階下限点として検出し、再生手段は、楽曲データを音階上限点と音階下限点との間の発音データのみで再生することを特徴としている。
【0022】
この構成では、音階設定手段は、選択された二つのキースイッチのY方向位置を検出し、これら二つのY方向位置で挟まれるY方向の区間で再生音階を設定する。これにより、
再生音階をより任意に設定することができるので、予め設定した楽曲データの音階内であれば、さらに多様性の有る楽曲データの再生が行われる。
【0023】
また、この発明の演奏装置は、楽曲データ形成手段は形成された複数の楽曲データを階層化して記憶する。そして、この発明の演奏装置は、これら階層化して記憶された複数の楽曲データを読み出す楽曲データ読み出し手段と、キースイッチを階層選択操作子として機能させ、操作されたキースイッチのY方向位置により調整対象楽曲データを指定する楽曲データ指定手段と、を備える。そして、演奏装置の繰り返し点検出手段は、選択された調整対象楽曲データに対して繰り返し点が入力されると選択された調整対象楽曲データのみに当該繰り返し点を適用することで、楽曲データ毎に個別に繰り返し点を検出し、再生手段は、複数の楽曲データを、それぞれに設定された繰り返し点に準じて繰り返すことを特徴としている。
【0024】
この構成では、演奏装置は、楽曲データを複数記憶し、階層化して再生する。この際、階層化された各楽曲データは、楽曲データ指定手段により選択されることで調整可能となる。そして、選択された楽曲データに対しては、前述のようにリピート区間が設定されて記憶される。このようなリピート区間の選択を楽曲データ毎に行うことで、それぞれの楽曲データで固有のリピート区間が与えられる。再生手段がこれら複数の楽曲データを並行して再生することで、それぞれに個別のリピート区間でリピート再生される複数の楽曲データの音が混声し、より複雑で多様性のある音楽が形成される。
【0025】
また、この発明の演奏装置の音階設定手段は、選択された調整対象楽曲データに対して音階設定が入力されると選択された調整対象楽曲データのみに当該設定された音階を適用することで、楽曲データ毎に個別に音階を設定し、再生手段は、複数の楽曲データを、それぞれに設定された音階に準じて再生することを特徴としている。
【0026】
この構成では、階層化された複数の楽曲データに対して、前述のリピート区間と同様に、再生音階設定が行われる。再生手段がこれら複数の楽曲データを並行して再生することで、それぞれに個別のリピート区間および再生音階で複数の楽曲データが再生される。これにより、さらに複雑で多様性のある音楽が形成される。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、演奏する楽曲のリピート区間を任意に且つ容易に設定することができるので、自由度が高くユーザに抑揚感を十分に与えられる楽曲を簡単に演奏することができる。
また、この発明によれば、演奏する楽曲の音階を任意に且つ容易に設定することができるので、より一層、自由度が高くユーザに抑揚感を十分に与えられる楽曲を簡単に演奏することができる。
さらに、これらリピート区間の設定と音階の設定とを組み合わせることで、より複雑な楽曲をも簡単に演奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る演奏装置について図を参照して説明する。この演奏装置は、略直方体平板形状の筐体にマトリクス状に配置された複数のキースイッチを備え、キースイッチを所望数選択することで楽曲を演奏するものである。また、この演奏装置は、筐体のキースイッチ群の周囲に配置された制御スイッチとキースイッチとの選択組み合わせに応じて演奏される楽音のリピート区間および再生音階等を調整するものである。これにより、本実施形態の演奏装置は、従来の演奏装置よりも趣向性高く自由度の高い楽曲を簡単に演奏することを実現する。
【0029】
前述のように、図1は本発明の演奏装置1の正面図である。図2は図1の演奏装置1を手前側(ユーザ側)から見た場合のキースイッチ群10および発光表示部110の構成を示す図である。
【0030】
演奏装置1は略直方体平板形状の筐体500を有し、スタンド400により支持されている。筐体500は、その上面にXY座標系の2次元マトリクス状に配置されたキースイッチ100からなるキースイッチ群10を備える。キースイッチ群10は、縦方向および横方向にそれぞれ16個のキースイッチ100が配列されており、全体として合計256個のキースイッチ100が2次元配列されてなる。
【0031】
このキースイッチ100は、内部にLED等を備えた発光表示部110が配置されたプッシュ式スイッチである。これら全ての発光表示部110が発光表示部群11を構成する。発光表示部110は、楽曲データが再生(演奏)される際、対応するキースイッチ100に与えられた発音データが再生されるのに同期して発光する。また、発光表示部110は、各種制御モード時等の際にキースイッチ100がユーザにより押下されること等により発光する。
このキースイッチ群10の各キースイッチ100および発光表示部群11の各発光表示部110の位置は、縦方向をY座標とし、横方向をX座標とする2次元座標系で示される。
【0032】
筐体500におけるキースイッチ群10および発光表示部群11のユーザ側から向かって左額縁部には制御スイッチ22A〜22Dが配置され、右額縁部には制御スイッチ22E〜22Hが配置される。また、筐体500における上額縁部には制御スイッチ22Iとステレオスピーカ80とが配置されており、下額縁部には、制御スイッチ22J,22Kと液晶表示部21が配置されている。また、筐体500の下額縁側の側面には、接続ケーブル300の一端が接続される入力端子23が配設されている。接続ケーブル300の他端は、通信相手となる他の演奏装置に接続されたり、本演奏装置を制御可能なアプリケーションを備えるパソコン等に接続される。そして、演奏装置1はこの接続ケーブル300を介して他の演奏装置と通信して演奏したり、パソコンから楽曲データをダウンロードする。
【0033】
図3は、図1に示す演奏装置1の電気的構成を示すブロック図である。
演奏装置1は、メインCPU2、ROM3、記憶部4、RAM5、音源6、マトリクス表示入力部9、表示部21、制御スイッチ22、タイマ13、入出力部14、他機通信I/F24、および通信I/F25がバスライン15を介して接続される構造を備える。
【0034】
ROM3は演奏装置1を起動させるための起動プログラムと、制御スイッチ22A〜22K毎の制御設定データとを記憶している。
【0035】
制御設定データは、各制御スイッチ22A〜22Kが選択された場合のキースイッチ100の機能を設定するデータを含む。例えば、制御スイッチ22Dを押下(選択)した状態ではキースイッチ100をリピートポイント調整操作子として機能させ、制御スイッチ22Fを押下(選択)した状態ではキースイッチ100を再生音階設定調整操作子として機能させ、制御スイッチ22Jを押下(選択)下状体ではキースイッチ100を階層楽曲データ選択操作子として機能させるための制御データが含まれる。
【0036】
記憶部4は、例えば、フラッシュメモリ等やハードディスク等の書き換え可能で且つデータ保存が可能な記憶手段である。記憶部4は、演奏装置1に演奏を実行させるための演奏処理プログラムや楽曲データを作成するための楽曲データ作成プログラム等の各種のプログラムを記憶する。また、記憶部4は、図2に示したような各キースイッチ100と音高(ノートナンバ)との対応関係を示す発音設定データを記憶する。さらに、記憶部4は、後述する方法で作成された楽曲データを記憶する。
【0037】
RAM5は、メインCPU2の作業領域として機能し、記憶部4から読み出されたプログラムやデータを一時的に記憶する。また、RAM5は、図2で示したキースイッチ群10の座標を示す座標記憶部51、対応関係記憶部52を備える。
【0038】
座標記憶部51は、各キースイッチ100のオン状態を記憶する記憶部である。座標記憶部51は、図2で示すキースイッチ群10の配列と同じ形状の16×16エリアのテーブルで構成される。各キースイッチ100に対応する各エリアは、それぞれ1ビットのフラグで構成されており、例えばフラグが「1」にされた状態をオン状態とし、フラグが「0」にされた状態をオフ状態とする。
【0039】
また、対応関係記憶部52は、各キースイッチ100に割り当てるノートナンバのリストを登録するノートナンバテーブルTを記憶する。この実施形態では、ノートナンバテーブルTには、初期設定ではY座標=1〜16に対して、従来技術や図2に示すような音高を意味する16個のノートナンバ「60〜75」がそれぞれ割り当てられ、X座標=1〜16に対して同じ音高になるように設定される。このノートナンバテーブルTは設定変更可能であり、設定変更操作を受け付けることで更新記憶され、記憶部4の発音設定データにも反映される。
【0040】
音源6は、例えばMIDI音源であり、所定の音色でデジタル音声信号を生成し、D/Aコンバータ7に出力するものである。音源6は、メインCPU2から発音データであるノートナンバに基づく音色の通知を受けて、この音色のデジタル音声信号を所定音長(例えば、200msec)で発音させるように生成する。
【0041】
D/Aコンバータ7は、音源6から入力されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換してサウンドシステム8へ出力する。サウンドシステム8は入力された音声信号を音声に変換してスピーカ80から放音する。
【0042】
マトリクス表示入力部9は、サブCPU12と、前述した図1のキースイッチ群10、発光表示部群11とを備える。
【0043】
サブCPU12は、押下されたキースイッチ100の座標を検出して押下キースイッチ位置情報としてメインCPU2へ出力する。また、サブCPU12は、押下された制御スイッチ22A〜22Kを検出してメインCPU2へ出力する。
【0044】
タイマ13は計時を行ってメインCPU2に通知するものである。入出力部14は、各種の記憶媒体140と本演奏装置1(メインCPU2)との間でデータの入出力を行うためのインターフェース回路である。
【0045】
制御スイッチ22(22A〜22K)は、リピートポイントの調整や、再生音階の設定を行うための制御命令を受け付けるスイッチである。所定の制御スイッチ22が押下された状態で、所定のキースイッチ100が押下(選択)されることで、リピートポイントの調整や再生音階等の各種設定を行う。
【0046】
メインCPU2には、バスライン15を介して他機通信I/F24と通信I/F25とが接続されている。他機通信I/F24は、図1で示した入力端子23および接続ケーブル300を介して接続された他機との間で通信を行うインターフェース回路である。通信I/F25は、図略のインターネット等の広域ネットワークやLANを介して通信を行うインターフェース回路である。
【0047】
メインCPU2は、接続されている各構成の動作を制御する。メインCPU2は、楽音データ再生プログラムを実行することにより楽曲データ形成部201として機能し、演奏プログラムを実行することにより演奏処理部202して機能する。また、これら楽曲データ形成部201として機能する際や演奏処理部202として機能する際には、表示処理部203としても機能する。そして、これらプログラムは並列処理され、複数の機能を同時に実行することができる。
【0048】
楽曲の演奏は、主に、(1)予め楽曲を作曲しておいて自動演奏する自動演奏モードと、(2)その場でキースイッチ100を押しながら生演奏する生演奏モードとがある。
【0049】
(1)自動演奏モード
楽曲データ形成部201は、記憶部4で記憶される発音設定データを用いて、ユーザが押下(選択)したキースイッチ100に対応した発音データを検出する。具体的には、楽曲データ形成部201は、サブCPU12から押下キースイッチ位置情報を取得することで、ユーザの押下したキースイッチ100の座標を検出する。楽曲データ形成部201は、サブCPU12から通知されたキースイッチ100のY座標に応じたノートナンバを特定する。楽曲データ形成部201は、各キースイッチ100のX座標に基づいて発音タイミングを設定し、ノートナンバに基づいて発音データを設定することで、所定時間間隔で発音データが順に並ぶ楽曲データを形成する。なお、このような楽曲データの作成中には、演奏処理部202は、記憶部4で記憶される発音設定データを用いて、ユーザが押下(選択)したキースイッチ100に応じた発音を行う。これにより、音を確認しながら楽曲の作成を行うことができる。
【0050】
演奏処理部202は、制御スイッチ22内の楽曲再生制御を行うボタンをユーザが押下したことを検知すると、指定された楽曲データを記憶部4から読み出して自動演奏処理を実行する。楽曲データには、キースイッチ100のX座標とY座標とから得られたタイミング情報とノートナンバ(音高)とが含まれているので、演奏処理部202は、これらの情報を取得して、各ノートナンバを順次所定のタイミング、所定時間長で発音する制御を音源6に対して行う。
【0051】
このような自動演奏の場合、演奏処理部202はリピート演奏(リピート再生)を行う。リピート演奏とは、タイミング情報に応じて楽曲データを順次再生する際に、リピートポイントを検出して、当該リピートポイントで楽曲データのリピート区間の最初に戻ってリピート演奏するものである。そして、リピートポイントの設定をユーザが行わない場合(ベーシックモード)では、キースイッチ100のX軸方向数(本実施形態では16)に応じたタイミングでリピート演奏が行われる。
【0052】
(2)生演奏モード
ユーザがキースイッチ100を押下すると、前述のようにサブCPU12が押下キースイッチ位置情報を取得する。演奏処理部202は、この押下キースイッチ位置情報に基づいてユーザの押下したキースイッチ100の座標を検出する。演奏処理部202はノートナンバテーブルTを参照することで、この通知された座標に応じたノートナンバを特定して音源6に通知する発音処理を実行する。このような生演奏の場合、押下キースイッチ位置情報は楽曲データ形成部201にも与えられるので、楽曲データ形成部201は、この情報に基づいて楽曲データを形成することもできる。そして、このように形成された楽曲データは、前述のようにリピート演奏することができる。
【0053】
本実施形態の演奏装置は、これら自動演奏モード、生演奏モードの際、単に発音するだけでなく、発音パターンに同期して発光表示を行う。
【0054】
前述のように、押下(選択)されたキースイッチのX座標およびY座標を取得すると、表示処理部203は、前記二つの演奏モードによる発音のタイミングに同期して発光表示部群11の発光表示を制御する処理を実行する。表示処理部203は発音時間長と同じ時間長だけ選択されたキースイッチ100に対応する発光表示部110を発光させる。
【0055】
また、表示処理部203は、後述するリピートポイントの設定や再生音階の設定等の際に制御スイッチ22が押下された状態で、所定のキースイッチ100が押下されると、予め設定された発光パターンでキースイッチ群10の発光表示部群11を発光させる。
【0056】
次に、リピートポイントの設定方法について、図を参照して、より具体的に説明する。
図4はリピート再生のフローを示すフローチャートである。図5はリピートポイントの設定フローを示すフローチャートである。図6はリピートポイントの設定方法を示す説明図である。また、図7は、図6に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲データの楽譜イメージを示す図である。
ユーザから自動再生操作を受け付けると、メインCPU2は、記憶部4に記憶された楽曲データを読み出す(S11)。メインCPU2は、楽曲データから各発音データ(ノートナンバと発音タイミング)を取得する(S12)。この発音データの取得とともに、タイマ13は計時を開始し(S13)、所定タイミング毎にメインCPU2に時刻を出力する。
【0057】
メインCPU2は、まず、リピート区間の第1の発音データの再生制御および発光制御を行う(S14)。この際、リピート区間がユーザにより特に設定されていなければ、まず、楽曲データの第1拍の発音データを再生制御する。この後、メインCPU2は、タイマ13から得られるタイミング毎に、順次発音データの再生・発光制御を行う(S15→S16)。メインCPU2は、リピートポイントを検出しなければ、この発音データの再生・発光制御を継続する。すなわち、第2拍、第3拍の順で発音データの再生・発光制御を行う(S18→S15→S16)。そして、メインCPU2は、リピートポイントを検出するとリピート区間の最終発音データの再生制御および発光制御を行い(S18→S19)、リピート区間の第1の発音データに戻り再生を繰り返す(S19→S14)。この際、リピート区間がユーザにより特に設定されていなければ、キースイッチ群10のX軸16番目(図2の右端)のキースイッチ100に対応する第16拍の発音データを最終発音データとし、第16拍の発音データの再生後、第1拍の発音データに戻す。このような処理方法を行うことで、前述の図19のような音楽を演奏することができる。
【0058】
このような自動演奏(自動リピート再生)の間、メインCPU2は、制御スイッチ22の押下を常時監視する。そして、ユーザがリピートポイント設定操作のため、制御スイッチ22Dを指901で押下すると、メインCPU2はこれを検知し、自動演奏モードとともにリピートポイント設定モードを起動する(S101)。次にユーザが、図6(A)に示すように、制御スイッチ22Dを指901で押下しながら、キースイッチ100を指902で押下すると、サブCPU12はキースイッチ100の押下を検出して、位置情報をメインCPU2に与える(S102)。メインCPU2は、所定時間、キースイッチの押下位置情報を取得し、変化がなければ位置情報から押下されたキースイッチのX座標を検出する(S103→S104)。一方、図6(B)に示すように、ユーザがキースイッチの押下点をキースイッチ群10の右端(X軸16番)から移動させれば、メインCPU2は、キースイッチの押下位置の変化(移動)を観測し、最後に検出された押下位置情報からキースイッチ100のX座標を検出する(S103→S105)。
【0059】
メインCPU2は、検出したX座標からリピートポイントを設定して、前述の自動演奏モードの処理フローに割込を行う(S106)。
【0060】
このようなリピートポイントの設定割込処理が行われると、メインCPU2は、新たに設定されたリピートポイントと、当該リピートポイントに基づくリピート区間の設定更新を行う(S21)。
【0061】
この際、メインCPU2の表示処理部203は、検出されたリピートポイントに対応するX軸の位置で、Y軸方向に並ぶキースイッチ100を列状に強発光する制御を行う(図6の黒丸に相当)。
【0062】
次に、メインCPU2は、現在の再生タイミングが新たに設定されたリピート区間内であるかどうかを検出して、リピート区間内であれば、前述のようなリピート再生を引き続き行う(S22→S18→S15)。そして、新たなリピートポイントに達すればリピート区間の最終発音データの再生制御および発光制御を行い(S18→S19)、リピート区間の第1の発音データに戻り再生を繰り返す(S19→S14)。
【0063】
メインCPU2は、現在の再生タイミングが新たなリピート区間内になければ、旧リピート区間、リピートポイントに準じて、順次発音データの再生・発光制御処理を行う(S23→S24→S25→S26)。そして、新たに設定されたリピート区間の第1の発音データに戻り、新たなリピート区間でのリピート再生を繰り返し行う(S26→S14)。なお、本実施例では、リピート区間の第1の発音データは、キースイッチ群10のX軸1番目(図2の左端)のキースイッチ100に対応する楽曲データの第1拍に固定されているので、この第1拍の発音データに戻る。
【0064】
このような処理を行うことで、図6(A)の場合であれば、楽曲データの第14拍をリピートポイントとし、第1拍〜第14拍をリピート区間とする図7(A)に示すような楽曲を演奏することができる。また、図6(B)の場合であれば、楽曲データの第12拍をリピートポイントとし、第1拍〜第12拍をリピート区間とする図7(B)に示すような楽曲を演奏することができる。
【0065】
このように、本実施形態の構成を用いることで、自動再生中であってもリピートポイントおよびリピート区間を任意に調整することができる。そして、リピート区間を任意に設定することで、1つの楽曲データで多様性のある演奏を行うことができ、ユーザに抑揚感を与えることができる。
【0066】
なお、前述の説明では、リピート区間の最終位置に対応する楽曲データのリピート終点ポイントを調整する例を示したが、リピート区間の最初の位置に対応する楽曲データのリピート起点ポイントを調整するようにしてもよい。
【0067】
図8は、前後両側のリピートポイントを設定する場合のリピートポイントの設定フローを示すフローチャートである。また、図9は両側リピートポイントの設定方法を示す説明図である。そして、図10は図9に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【0068】
前述のようにメインCPU2は制御スイッチ22の押下を常時監視する。そして、ユーザがリピートポイント設定操作のため、図9(A)に示すように制御スイッチ22Dを短く押下すると、メインCPU2はこれを検知して、両側設定のリピートポイント設定モードを起動する(S201)。この後ユーザは制御スイッチ22Dから指901を離しても、次に制御スイッチ22Dが短く押下される(S209)まで、このモードは継続する。次に、ユーザが図9(B)に示すように、キースイッチ群10の両端からX軸の中心方向へ指901,902を移動させながらキースイッチ100を連続的に押下すると、メインCPU2はこれを検出して、移動方向を検出する(S202→S203)。そして、ユーザが指901,902の移動を中止すると、メインCPU2は、最終的に押下された2つのキースイッチ100のX軸座標を検出する(S204)。この際、キースイッチ100押下の軌跡情報を記憶しておくことで、両指901,902の動きを個別に判断することができる。
【0069】
メインCPU2は、移動方向を検出し、右方向、すなわち、キースイッチ群10の左端から中心方向に移動した軌跡を検出すると、キースイッチ100の最終押下位置をリピート起点ポイントとして検出する(S206)。一方、メインCPU2は、移動方向を左方向、すなわち、キースイッチ群10の右端から中心方向に移動した軌跡を検出すると、キースイッチ100の最終押下位置をリピート終点ポイントとして検出する(S207)。制御スイッチ22Dの短押しが再検出されるまで、この処理は実行される(S208→S209→S202)。そして、制御スイッチ22Dの短押しを検出すると、リピート起点ポイントおよびリピート終点ポイントを確定して、リピートポイント設定の割込処理を行う(S209→S210)。この際、リピート起点ポイントが設定されていなければ、X軸1番をリピート起点ポイントに設定し、リピート終点ポイントが設定されていなければ、X軸16番をリピート終点ポイントに設定する。
【0070】
メインCPU2は、この割り込み処理により得られた二つのリピートポイントからリピート区間を設定し、図4のステップS21〜ステップS26に関する処理を行う。
【0071】
このような処理を行うことで、図9(B)に示すようにキースイッチ100のX=4の位置とX=12の位置にリピートポイントを設定すれば、図10に示すように楽曲データの第4拍をリピート区間の第1発音データ(起点発音データ)とし、第12拍を終点発音データとする楽曲データを演奏することができる。
【0072】
このように、リピート区間の起点と終点とを任意に設定することができるので、より多様性のある楽曲を演奏することができる。
【0073】
なお、リピート起点ポイントとリピート終点ポイントとの設定は、前述の方法に限るものではなく、単にX軸に沿った座標位置に異なる二点のキースイッチ100を押下することにより設定しても良い。
【0074】
次に、第2の実施形態に係る演奏装置について図を参照して説明する。
【0075】
本実施形態の演奏装置は、第1の実施形態に対して再生音階設定モードを追加したものであり、装置構成は第1の実施形態と同じである。したがって、再生音階設定処理のみについて説明し、他の部分の説明は省略する。
【0076】
図11は再生音階設定モードの割込処理を備える自動演奏モードのフローチャートである。図12は再生音階の設定フローを示すフローチャートである。図13は再生音階の設定方法を示す説明図である。また、図14は、図13に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲データの楽譜イメージを示す図である。
再生音階設定は、生演奏モード実行中でも自動演奏モード実行中であっても、実行可能であるが、以下の説明では自動演奏モード実行中に再生音階(演奏音階)設定を行う場合を示す。
【0077】
(1)制御スイッチを押下しながらの再生音階設定(図12(A)参照)
メインCPU2は、制御スイッチ22の押下を常時監視する。そして、ユーザが再生音階設定操作のため、制御スイッチ22Fを指902で押下すると、メインCPU2はこれを検知し、自動演奏モードとともに再生音階設定モードを起動する(S301)。次にユーザが、制御スイッチ22Fを指902で押下しながら、キースイッチ100を指901で押下すると、サブCPU12はキースイッチ100の押下を検出して、位置情報をメインCPU2に与える(S302)。メインCPU2は、所定時間、キースイッチの押下位置情報を取得し、変化がなければ位置情報から押下されたキースイッチのY座標を検出する(S303→S304)。一方、図13(A)に示すように、ユーザがキースイッチの押下点をキースイッチ群10の上端(Y軸16番)から下方へ、または下端(Y軸1番)から上方へ移動させれば、メインCPU2は、キースイッチの押下位置の変化(移動)を観測し、最後に検出された押下位置情報からキースイッチ100のY座標を検出する(S303→S305)。
【0078】
メインCPU2は、検出したY座標から再生音階上限を設定して、自動演奏モードの処理フローに割込を行う(S306)。このような再生音階の設定割込処理が行われると、メインCPU2は、新たに設定された再生音階の設定更新を行う(S31→S32→S17)。
【0079】
このような処理を行うことで、図13(A)に示すようにキースイッチ100のY=8の位置を設定すれば、Y=1〜Y=8に対応するノートナンバ60〜72のみからなる音階が設定され、図14(A)に示すように第8拍、第11拍、第12拍が無音の楽曲データを演奏することができる。なお、このような処理により検出されたY座標は再生音階下端に設定してもよく、この場合は再生音階上端はY軸16番に設定される。
【0080】
(2)制御スイッチ短押しの再生音階設定(図12(B)参照)
前述のようにメインCPU2は制御スイッチ22の押下を常時監視する。そして、ユーザが再生音階設定操作のため、制御スイッチ22Fを短く押下すると、メインCPU2はこれを検知して、上限下限の設定可能な再生音階設定モードを起動する(S401)。この後ユーザは制御スイッチ22Fから指902を離しても、次に制御スイッチ22Fが短く押下される(S409)まで、このモードは継続する。次に、ユーザが図13(B)に示すように、キースイッチ群10の上下端からY軸の中心方向へ指901,902を移動させながらキースイッチ100を連続的に押下すると、メインCPU2はこれを検出して、移動方向を検出する(S402→S403)。そして、ユーザが指901,902の移動を中止すると、メインCPU2は、最終的に押下されたキースイッチ100のY軸座標を検出する(S404)。この際、キースイッチ100押下の軌跡情報を記憶しておくことで、両指901,902の動きを個別に判断することができる。
【0081】
メインCPU2は、移動方向を検出し、下方向、すなわち、キースイッチ群10の上端から中心方向に移動した軌跡を検出すると、キースイッチ100の最終押下位置を再生音階上限として検出する(S406)。一方、メインCPU2は、移動方向を上方向、すなわち、キースイッチ群10の下端から中心方向に移動した軌跡を検出すると、キースイッチ100の最終押下位置を再生音階下限として検出する(S407)。制御スイッチ22Fの短押しが再検出されるまで、この処理は実行される(S408→S409→S402)。そして、制御スイッチ22Fの短押しを検出すると、再生音階上限および再生音階下限を確定して、再生音階設定の割込処理を行う(S409→S410)。この際、再生音階下限が設定されていなければ、X軸1番を再生音階下限に設定し、再生音階上限が設定されていなければ、X軸16番を再生音階上限に設定する。
【0082】
メインCPU2は、この割り込み処理により得られた二つの再生音階境界から再生音階を設定し、図11のステップS31,S32に関する処理を行う。
【0083】
このような処理を行うことで、図13(B)に示すようにキースイッチ100のY=8とY=4の位置を設定すれば、Y=4〜Y=8に対応するノートナンバ65〜72のみからなる音階が設定され、図14(B)に示すように第4拍、第5拍、第8拍、第11拍、第12拍、第16拍が無音の楽曲データを演奏することができる。
【0084】
このように、本実施形態の構成、処理を用いることで、1つの楽曲データに対して様々な音階で再生することができるので、さらに多様性の有る楽曲の再生を行うことができる。
【0085】
なお、本実施形態の説明では、リピート区間の調整を行っていない場合を示したが、再生音階の調整とリピート区間の調整とを行うことで、より多様性に富む楽曲の再生を行うことができる。
【0086】
また、本実施形態では、再生音階はリピート区間の全域で同じに設定されているが、リピート区間の始めや終わりと中間とで再生音階の幅を異ならせても良い。すなわち、キースイッチの座標系にして方形状となるようにリピート区間および再生音階を設定するだけではなく、楕円形状等となるようにリピート区間および再生音階を設定しても良い。これにより、さらに、多様性に富む楽曲の再生を行うことができる。
【0087】
次に、第3の実施形態に係る演奏装置について、図を参照して説明する。
図15は、階層化されたグループ楽曲データの各階層楽曲データをキースイッチの座標で示した図である。
【0088】
本実施形態の演奏装置の記憶部4は、前述のように1つの楽曲データだけを記憶することもできれば、複数の楽曲データ(階層楽曲データ)を階層化して記憶することもできる。複数の楽曲データを階層化して記憶する場合には、記憶部4は複数の楽曲データをグループ化し、各楽曲データに対して階層情報を添付して記憶する。例えば、図15(A)の楽曲データをグループ楽曲データの第1階層楽曲データとし、図15(B)の楽曲データをグループ楽曲データの第2階層楽曲データとし、図15(C)の楽曲データをグループ楽曲データの第3階層楽曲データとして、グループ化して記憶する。なお、グループ化可能な楽曲数は3つに限ることなく、例えば、8個や16個等適宜設定することができる。
【0089】
そして、演奏処理部202は、このグループ楽曲データの再生を受け付けると、全ての階層楽曲データを読み出して、並行して再生する。すなわち、図16の楽譜に示すように再生する。図16は図15に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【0090】
したがって、本実施形態のように楽曲を階層化することで、より多様性に富む楽曲を再生することができる。
【0091】
このような場合、各階層の楽曲データは次に示す方法でリピート区間や再生音階を調整することができる。
図17は、階層化されたグループ楽曲データのリピート区間および再生音階の調整方法を示すフローチャートである。
図18は、それぞれに異なるリピート区間の設定を実行した場合に演奏される楽曲の一例の楽譜イメージを示す図である。
【0092】
階層変更の制御を受け付ける制御スイッチ22Jをユーザが押下すると、メインCPU2はこれを検知し、自動演奏モードとともに階層楽曲調整モードを起動する(S501)。次に、ユーザが制御スイッチ22Jを押下しながらキースイッチ100を押下すると、サブCPU12はキースイッチの押下を検出して、位置情報をメインCPU2に与える(S502)。メインCPU2は、位置情報から、押下されたキースイッチ100のY座標を検出する(S503)。キースイッチ100のY座標と階層とは予め関連付けされている。例えば、Y座標が1ならば第1階層、Y座標が2ならば第2階層、Y座標が3ならば第3階層のように関連付けされている。
【0093】
メインCPU2は、検出したY座標に基づいて対応する階層の階層楽曲データを読み出し(S504)、発光表示部群11に出力する(S505)。例えば、キースイッチ100のY=3の位置を押下すると、第3階層が選択され、図15(C)に示すような表示が行われる。そして、表示は第3階層の状態のままで、グループ楽曲データの再生が行われる。
【0094】
この状態で、前述の再生音階設定やリピート区間設定の操作が行われると、メインCPU2は、操作内容にしたがって、選択されている階層楽曲データのみに対して再生音階の設定やリピート区間の設定を行う(S507〜S510)。このような再生音階の設定やリピート区間の設定を各階層楽曲データに対して個別に行うことができる。例えば、図18の場合であれば、第1階層楽曲データが第1拍〜第12拍の繰り返しとなり、第2階層楽曲データが第1拍〜第6拍の繰り返しとなり、第3階層楽曲データが第1拍〜第11拍の繰り返しとなる。このように、リピート区間の時間長が各階層で無相関に設定されることで、より複雑で多様性に富む楽曲の再生が可能になる。なお、図示して詳細な例を示さなかったが、再生音階についてもリピート区間と同様に、各層で無相関に設定することができ、より多様な楽曲を再生することができる。
【0095】
このように、本実施形態の構成を用いることで、それぞれにリピート区間、再生音階を個別に設定された複数の楽曲データを組み合わせて、並列に再生することができる。これにより、さらに多様性に富み、ユーザにさらなる抑揚性を与えられる楽曲を再生、演奏することができる。
【0096】
また、前述の説明には、Y座標と音高とを関連付けした例を示したが、Y座標に音高と音色とを組み合わせたデータを割り当ててもよい。また、Y座標に1つのサンプリング音の音高を異ならせた楽音データや、音高に関わらず異なる種々のサンプリング音を割り当ててもよい。
【0097】
また、前述の説明では、音源と演奏操作を行う部分とが一体化された例を示したが、音源を別に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施形態の演奏装置1の正面図である。
【図2】図1の演奏装置1を手前側(ユーザ側)から見た場合のスイッチ群10および発光表示部110の構成を示す図である。
【図3】図1に示す演奏装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】リピート再生のフローを示すフローチャートである。
【図5】リピートポイントの設定フローを示すフローチャートである。
【図6】リピートポイントの設定方法を示す説明図である。
【図7】図6に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【図8】前後両側のリピートポイントを設定する場合のリピートポイントの設定フローを示すフローチャートである。
【図9】両側リピートポイントの設定方法を示す説明図である。
【図10】図9に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る再生音階設定モードの割込処理を備える自動演奏モードのフローチャートである。
【図12】再生音階の設定フローを示すフローチャートである。
【図13】再生音階の設定方法を示す説明図である。
【図14】図13に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【図15】第3の実施形態に係る階層化されたグループ楽曲データの各階層楽曲データをキースイッチの座標で示した図である。
【図16】図15に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【図17】階層化されたグループ楽曲データのリピート区間調整方法を示すフローチャートである。
【図18】それぞれに異なるリピート区間の設定を実行した場合に演奏される楽曲の一例の楽譜イメージを示す図である。
【図19】従来例におけるキースイッチ100の選択が行われた場合の曲のイメージ図である。
【符号の説明】
【0099】
1−演奏装置、2−メインCPU、201−楽曲データ形成部、202−演奏処理部、203−表示処理部、3−ROM、4−記憶部、5−RAM、6−音源、7−D/Aコンバータ、8−サウンドシステム、9−マトリクス表示入力部、10−キースイッチ群、11−発光表示部群、12−サブCPU、13−タイマ、14−入出力部、15−バスライン、21−表示部、22,22A〜22K−制御スイッチ、24−他機通信I/F、25−通信I/F、100−キースイッチ、110−発光表示部、140−記憶媒体、500−筐体
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のキースイッチに対するユーザの演奏操作を受け付けて、この演奏操作に応じた演奏を行う演奏装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テノリオンと呼称される演奏装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
図1(A)は演奏装置(テノリオン)の正面図である。また、図2はキースイッチ100の拡大正面図であり、ハッチングされたキースイッチ100が選択されたキースイッチ100を表す。なお、図1に示す演奏装置1の詳細な説明は実施形態に記載するため、ここでは課題となる部分の説明のみを行い、その他の部分の説明は省略する。
【0003】
この演奏装置1は、横方向に16個、縦方向に16個すなわち16×16個の2次元配列されたキースイッチ100からなるキースイッチ群10を備える。ここで、各キースイッチ100をX,Y座標系で表す。例えば、代表として図2における向かって左端且つ下端のキースイッチ100をmtSW(1,1)とし、右端且つ上端キースイッチ100をmtSW(16,16)とする。
【0004】
キースイッチ群10のキースイッチ100には所定の音が割り当てられている。例えば、縦方向に並ぶキースイッチmtSW(A,1)〜mtSW(A,16)、(Aは1〜16の任意の整数)にそれぞれ異なる音高を設定することで音階を形成する。また、横方向のキースイッチの並びはタイミング(拍)を表し、キースイッチmtSW(1,B)〜mtSW(16,B)、(Bは1〜16の任意の整数)には、順次所定の再生タイミング差が設定されている。
【0005】
この従来の演奏装置では、次の方法で演奏を行う。まず、ユーザが予め2次元配列されたキースイッチ100を選択する。
【0006】
本実施例では、縦方向に並ぶキースイッチmtSW(A,1)〜mtSW(A,16)には、図2に示すように、C3(60)、D3(62)、・・・・、D5(86)が順にが割り当てられている。ここで、()内の60〜86の数字は音高を表す数値(ノートナンバ)である。
【0007】
演奏装置1は、これら選択されたキースイッチ100に割り当てられた発音データにより図19に示す曲を表す楽曲データを形成して記憶する。
【0008】
図19は図2に示すキースイッチ100の選択が行われた場合の楽曲データのイメージ図である。
【0009】
演奏装置1は、ユーザから再生操作を受け付けると、記憶していた楽曲データを再生する。すなわち、各タイミングに合わせて順に発音データを再生する。図2、図19の場合であれば、第1拍は無音、第2拍は「ファ」、第3拍は無音、第4拍は「レ」、のように、第16拍までを順に一定のタイミングで発音する。そして、演奏装置1は、第16拍の再生が終了すると、第1拍にリピートして再度、第2拍、第3拍の順に発音データを再生する。
【非特許文献1】ヤマハ株式会社、ヤマハについて知る、Design、tenori-on、[平成17年2月22日検索]、インターネット(ヤマハ株式会社ホームページ)<URL:http://www.yamaha.co.jp/design/tenori-on/ >
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前述の従来の演奏装置では、X方向に並ぶ16個のキースイッチに対応する16拍を順に再生して、リピートする動作を繰り返し行うだけであった。すなわち、第1拍〜第16拍、また第1拍〜第16拍、・・・、のように単純に16拍が繰り返されるだけであった。このため、音楽に複雑な変化を与えることが難しく、ユーザに対してあまり抑揚感を与えることができなかった。
【0011】
また、音階も一度設定してしまえば変更することができず、この面に置いても、ユーザに対してあまり抑揚感を与えることができなかった。
【0012】
このため、本発明の目的は、リピートパターンや音階を可変にして複雑な音楽を形成し、より多様性に富み一層抑揚感の得られる演奏装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の演奏装置は、X,Y方向に2次元配列され、X座標が拍タイミングに対応付けられ、Y座標が音高に対応付けられた複数のキースイッチと、複数のキースイッチの押下により自動演奏時に発音する楽曲の音高と拍タイミングの指定を受け付けて楽曲データとして記憶する楽曲データ形成手段と、キースイッチを調整操作子として機能させ、操作されたキースイッチのX方向位置またはX方向の移動量により楽音データの繰り返し点を検出する繰り返し点検出手段とを備える。そして、この発明の演奏装置は、楽曲データを繰り返し点に応じて繰り返すことで自動演奏再生する再生手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
この構成では、楽曲の作成時には、ユーザがキースイッチを選択すると、楽曲データ形成手段は、選択されたキースイッチの2次元位置を検出して楽曲データを形成する。この際、キースイッチのY方向位置で音高を取得し、X方向位置で再生の拍タイミングを取得する。
【0015】
楽曲データの再生時には、ユーザがキースイッチを選択すると、繰り返し点検出手段は、選択されたキースイッチのX方向位置を検出し、このタイミングを繰り返し点(リピートポイント)に設定する。この際、演奏装置には、キースイッチを繰り返し点調整操作子として認識する機能を有しており、これにより、楽曲作成時とは異なる機能をキースイッチに与える。
【0016】
再生手段は、設定された繰り返し点に基づいて、楽音データをリピート再生する。図2に示す左端(X=1)から順に右方向に発音データを再生する場合で有れば、左端(X=1)から再生を開始して、設定された繰り返し点(X=C)(Cは1〜16の任意の整数)の発音データまで順次再生する。例えば、C=10であれば、X=1の列からX=10の列まで発音データを再生する。そして、再生手段は、左端(X=1)に戻って、再びX方向に沿って、順次発音データの再生を行う。なお、この繰り返し点の設定は、既に楽音データの再生が行われている場合でもよく、この場合、設定後に始めて繰り返し点に再生タイミングが来た時点で、新たな繰り返し点に基づくリピートが行われる。これにより、リピートポイントが可変になり、多様性のある音楽が形成される。
【0017】
また、この発明の演奏装置の繰り返し点検出手段は、調整操作子として機能する二つのキースイッチのX方向位置を第1繰り返し点および第2繰り返し点として検出し、再生手段は、楽曲データを第1繰り返し点と前記第2繰り返し点との間で繰り返し再生することを特徴としている。
【0018】
この構成では、ユーザがX方向の2箇所でキースイッチを選択すると、繰り返し点検出手段は、これら選択されたキースイッチのタイミングを第1繰り返し点(リピート再生起点)と第2繰り返し点(リピート再生終点)として検出する。再生手段は、これら第1繰り返し点、第2繰り返し点に挟まれる区間で楽音データをリピート再生する。例えば、X=3を第1繰り返し点、X=13を第2繰り返し点に検出すれば、楽曲データの内のX=3〜X=13の区間をリピート再生する。これにより、リピート区間のリピートタイミングだけでなく先頭タイミングをも変更することができ、より多様性のある音楽が形成される。
【0019】
また、この発明の演奏装置では、Y方向に並ぶ各キースイッチに割り当てられた楽音データは、これらY方向に並ぶ複数のキースイッチに応じた楽音データ群で音階を形成するものである。さらに、演奏装置は、キースイッチを調整操作子として機能させ、操作されたキースイッチのY方向位置により楽音データの音階を設定する音階設定手段を備える。そして、この演奏装置の再生手段は、音階設定手段により設定された音階に基づき楽曲データを再生することを特徴としている。
【0020】
この構成では、ユーザがキースイッチを選択すると、音階設定手段は、選択されたキースイッチのY方向位置を検出して、再生を行う音階(再生音階)を設定する。この際、演奏装置には、キースイッチを音階設定調整操作子として認識する機能を有しており、これにより、楽曲作成時とは異なる機能をキースイッチに与える。再生手段は、設定された再生音階に合致する楽曲データのみを再生する。これにより、さまざまな音階範囲からなる多様性の有る楽曲データの再生が行われる。
【0021】
また、この発明の演奏装置の音階設定手段は、調整操作子として機能する二つのキースイッチのY方向位置を音階上限点および音階下限点として検出し、再生手段は、楽曲データを音階上限点と音階下限点との間の発音データのみで再生することを特徴としている。
【0022】
この構成では、音階設定手段は、選択された二つのキースイッチのY方向位置を検出し、これら二つのY方向位置で挟まれるY方向の区間で再生音階を設定する。これにより、
再生音階をより任意に設定することができるので、予め設定した楽曲データの音階内であれば、さらに多様性の有る楽曲データの再生が行われる。
【0023】
また、この発明の演奏装置は、楽曲データ形成手段は形成された複数の楽曲データを階層化して記憶する。そして、この発明の演奏装置は、これら階層化して記憶された複数の楽曲データを読み出す楽曲データ読み出し手段と、キースイッチを階層選択操作子として機能させ、操作されたキースイッチのY方向位置により調整対象楽曲データを指定する楽曲データ指定手段と、を備える。そして、演奏装置の繰り返し点検出手段は、選択された調整対象楽曲データに対して繰り返し点が入力されると選択された調整対象楽曲データのみに当該繰り返し点を適用することで、楽曲データ毎に個別に繰り返し点を検出し、再生手段は、複数の楽曲データを、それぞれに設定された繰り返し点に準じて繰り返すことを特徴としている。
【0024】
この構成では、演奏装置は、楽曲データを複数記憶し、階層化して再生する。この際、階層化された各楽曲データは、楽曲データ指定手段により選択されることで調整可能となる。そして、選択された楽曲データに対しては、前述のようにリピート区間が設定されて記憶される。このようなリピート区間の選択を楽曲データ毎に行うことで、それぞれの楽曲データで固有のリピート区間が与えられる。再生手段がこれら複数の楽曲データを並行して再生することで、それぞれに個別のリピート区間でリピート再生される複数の楽曲データの音が混声し、より複雑で多様性のある音楽が形成される。
【0025】
また、この発明の演奏装置の音階設定手段は、選択された調整対象楽曲データに対して音階設定が入力されると選択された調整対象楽曲データのみに当該設定された音階を適用することで、楽曲データ毎に個別に音階を設定し、再生手段は、複数の楽曲データを、それぞれに設定された音階に準じて再生することを特徴としている。
【0026】
この構成では、階層化された複数の楽曲データに対して、前述のリピート区間と同様に、再生音階設定が行われる。再生手段がこれら複数の楽曲データを並行して再生することで、それぞれに個別のリピート区間および再生音階で複数の楽曲データが再生される。これにより、さらに複雑で多様性のある音楽が形成される。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、演奏する楽曲のリピート区間を任意に且つ容易に設定することができるので、自由度が高くユーザに抑揚感を十分に与えられる楽曲を簡単に演奏することができる。
また、この発明によれば、演奏する楽曲の音階を任意に且つ容易に設定することができるので、より一層、自由度が高くユーザに抑揚感を十分に与えられる楽曲を簡単に演奏することができる。
さらに、これらリピート区間の設定と音階の設定とを組み合わせることで、より複雑な楽曲をも簡単に演奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る演奏装置について図を参照して説明する。この演奏装置は、略直方体平板形状の筐体にマトリクス状に配置された複数のキースイッチを備え、キースイッチを所望数選択することで楽曲を演奏するものである。また、この演奏装置は、筐体のキースイッチ群の周囲に配置された制御スイッチとキースイッチとの選択組み合わせに応じて演奏される楽音のリピート区間および再生音階等を調整するものである。これにより、本実施形態の演奏装置は、従来の演奏装置よりも趣向性高く自由度の高い楽曲を簡単に演奏することを実現する。
【0029】
前述のように、図1は本発明の演奏装置1の正面図である。図2は図1の演奏装置1を手前側(ユーザ側)から見た場合のキースイッチ群10および発光表示部110の構成を示す図である。
【0030】
演奏装置1は略直方体平板形状の筐体500を有し、スタンド400により支持されている。筐体500は、その上面にXY座標系の2次元マトリクス状に配置されたキースイッチ100からなるキースイッチ群10を備える。キースイッチ群10は、縦方向および横方向にそれぞれ16個のキースイッチ100が配列されており、全体として合計256個のキースイッチ100が2次元配列されてなる。
【0031】
このキースイッチ100は、内部にLED等を備えた発光表示部110が配置されたプッシュ式スイッチである。これら全ての発光表示部110が発光表示部群11を構成する。発光表示部110は、楽曲データが再生(演奏)される際、対応するキースイッチ100に与えられた発音データが再生されるのに同期して発光する。また、発光表示部110は、各種制御モード時等の際にキースイッチ100がユーザにより押下されること等により発光する。
このキースイッチ群10の各キースイッチ100および発光表示部群11の各発光表示部110の位置は、縦方向をY座標とし、横方向をX座標とする2次元座標系で示される。
【0032】
筐体500におけるキースイッチ群10および発光表示部群11のユーザ側から向かって左額縁部には制御スイッチ22A〜22Dが配置され、右額縁部には制御スイッチ22E〜22Hが配置される。また、筐体500における上額縁部には制御スイッチ22Iとステレオスピーカ80とが配置されており、下額縁部には、制御スイッチ22J,22Kと液晶表示部21が配置されている。また、筐体500の下額縁側の側面には、接続ケーブル300の一端が接続される入力端子23が配設されている。接続ケーブル300の他端は、通信相手となる他の演奏装置に接続されたり、本演奏装置を制御可能なアプリケーションを備えるパソコン等に接続される。そして、演奏装置1はこの接続ケーブル300を介して他の演奏装置と通信して演奏したり、パソコンから楽曲データをダウンロードする。
【0033】
図3は、図1に示す演奏装置1の電気的構成を示すブロック図である。
演奏装置1は、メインCPU2、ROM3、記憶部4、RAM5、音源6、マトリクス表示入力部9、表示部21、制御スイッチ22、タイマ13、入出力部14、他機通信I/F24、および通信I/F25がバスライン15を介して接続される構造を備える。
【0034】
ROM3は演奏装置1を起動させるための起動プログラムと、制御スイッチ22A〜22K毎の制御設定データとを記憶している。
【0035】
制御設定データは、各制御スイッチ22A〜22Kが選択された場合のキースイッチ100の機能を設定するデータを含む。例えば、制御スイッチ22Dを押下(選択)した状態ではキースイッチ100をリピートポイント調整操作子として機能させ、制御スイッチ22Fを押下(選択)した状態ではキースイッチ100を再生音階設定調整操作子として機能させ、制御スイッチ22Jを押下(選択)下状体ではキースイッチ100を階層楽曲データ選択操作子として機能させるための制御データが含まれる。
【0036】
記憶部4は、例えば、フラッシュメモリ等やハードディスク等の書き換え可能で且つデータ保存が可能な記憶手段である。記憶部4は、演奏装置1に演奏を実行させるための演奏処理プログラムや楽曲データを作成するための楽曲データ作成プログラム等の各種のプログラムを記憶する。また、記憶部4は、図2に示したような各キースイッチ100と音高(ノートナンバ)との対応関係を示す発音設定データを記憶する。さらに、記憶部4は、後述する方法で作成された楽曲データを記憶する。
【0037】
RAM5は、メインCPU2の作業領域として機能し、記憶部4から読み出されたプログラムやデータを一時的に記憶する。また、RAM5は、図2で示したキースイッチ群10の座標を示す座標記憶部51、対応関係記憶部52を備える。
【0038】
座標記憶部51は、各キースイッチ100のオン状態を記憶する記憶部である。座標記憶部51は、図2で示すキースイッチ群10の配列と同じ形状の16×16エリアのテーブルで構成される。各キースイッチ100に対応する各エリアは、それぞれ1ビットのフラグで構成されており、例えばフラグが「1」にされた状態をオン状態とし、フラグが「0」にされた状態をオフ状態とする。
【0039】
また、対応関係記憶部52は、各キースイッチ100に割り当てるノートナンバのリストを登録するノートナンバテーブルTを記憶する。この実施形態では、ノートナンバテーブルTには、初期設定ではY座標=1〜16に対して、従来技術や図2に示すような音高を意味する16個のノートナンバ「60〜75」がそれぞれ割り当てられ、X座標=1〜16に対して同じ音高になるように設定される。このノートナンバテーブルTは設定変更可能であり、設定変更操作を受け付けることで更新記憶され、記憶部4の発音設定データにも反映される。
【0040】
音源6は、例えばMIDI音源であり、所定の音色でデジタル音声信号を生成し、D/Aコンバータ7に出力するものである。音源6は、メインCPU2から発音データであるノートナンバに基づく音色の通知を受けて、この音色のデジタル音声信号を所定音長(例えば、200msec)で発音させるように生成する。
【0041】
D/Aコンバータ7は、音源6から入力されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換してサウンドシステム8へ出力する。サウンドシステム8は入力された音声信号を音声に変換してスピーカ80から放音する。
【0042】
マトリクス表示入力部9は、サブCPU12と、前述した図1のキースイッチ群10、発光表示部群11とを備える。
【0043】
サブCPU12は、押下されたキースイッチ100の座標を検出して押下キースイッチ位置情報としてメインCPU2へ出力する。また、サブCPU12は、押下された制御スイッチ22A〜22Kを検出してメインCPU2へ出力する。
【0044】
タイマ13は計時を行ってメインCPU2に通知するものである。入出力部14は、各種の記憶媒体140と本演奏装置1(メインCPU2)との間でデータの入出力を行うためのインターフェース回路である。
【0045】
制御スイッチ22(22A〜22K)は、リピートポイントの調整や、再生音階の設定を行うための制御命令を受け付けるスイッチである。所定の制御スイッチ22が押下された状態で、所定のキースイッチ100が押下(選択)されることで、リピートポイントの調整や再生音階等の各種設定を行う。
【0046】
メインCPU2には、バスライン15を介して他機通信I/F24と通信I/F25とが接続されている。他機通信I/F24は、図1で示した入力端子23および接続ケーブル300を介して接続された他機との間で通信を行うインターフェース回路である。通信I/F25は、図略のインターネット等の広域ネットワークやLANを介して通信を行うインターフェース回路である。
【0047】
メインCPU2は、接続されている各構成の動作を制御する。メインCPU2は、楽音データ再生プログラムを実行することにより楽曲データ形成部201として機能し、演奏プログラムを実行することにより演奏処理部202して機能する。また、これら楽曲データ形成部201として機能する際や演奏処理部202として機能する際には、表示処理部203としても機能する。そして、これらプログラムは並列処理され、複数の機能を同時に実行することができる。
【0048】
楽曲の演奏は、主に、(1)予め楽曲を作曲しておいて自動演奏する自動演奏モードと、(2)その場でキースイッチ100を押しながら生演奏する生演奏モードとがある。
【0049】
(1)自動演奏モード
楽曲データ形成部201は、記憶部4で記憶される発音設定データを用いて、ユーザが押下(選択)したキースイッチ100に対応した発音データを検出する。具体的には、楽曲データ形成部201は、サブCPU12から押下キースイッチ位置情報を取得することで、ユーザの押下したキースイッチ100の座標を検出する。楽曲データ形成部201は、サブCPU12から通知されたキースイッチ100のY座標に応じたノートナンバを特定する。楽曲データ形成部201は、各キースイッチ100のX座標に基づいて発音タイミングを設定し、ノートナンバに基づいて発音データを設定することで、所定時間間隔で発音データが順に並ぶ楽曲データを形成する。なお、このような楽曲データの作成中には、演奏処理部202は、記憶部4で記憶される発音設定データを用いて、ユーザが押下(選択)したキースイッチ100に応じた発音を行う。これにより、音を確認しながら楽曲の作成を行うことができる。
【0050】
演奏処理部202は、制御スイッチ22内の楽曲再生制御を行うボタンをユーザが押下したことを検知すると、指定された楽曲データを記憶部4から読み出して自動演奏処理を実行する。楽曲データには、キースイッチ100のX座標とY座標とから得られたタイミング情報とノートナンバ(音高)とが含まれているので、演奏処理部202は、これらの情報を取得して、各ノートナンバを順次所定のタイミング、所定時間長で発音する制御を音源6に対して行う。
【0051】
このような自動演奏の場合、演奏処理部202はリピート演奏(リピート再生)を行う。リピート演奏とは、タイミング情報に応じて楽曲データを順次再生する際に、リピートポイントを検出して、当該リピートポイントで楽曲データのリピート区間の最初に戻ってリピート演奏するものである。そして、リピートポイントの設定をユーザが行わない場合(ベーシックモード)では、キースイッチ100のX軸方向数(本実施形態では16)に応じたタイミングでリピート演奏が行われる。
【0052】
(2)生演奏モード
ユーザがキースイッチ100を押下すると、前述のようにサブCPU12が押下キースイッチ位置情報を取得する。演奏処理部202は、この押下キースイッチ位置情報に基づいてユーザの押下したキースイッチ100の座標を検出する。演奏処理部202はノートナンバテーブルTを参照することで、この通知された座標に応じたノートナンバを特定して音源6に通知する発音処理を実行する。このような生演奏の場合、押下キースイッチ位置情報は楽曲データ形成部201にも与えられるので、楽曲データ形成部201は、この情報に基づいて楽曲データを形成することもできる。そして、このように形成された楽曲データは、前述のようにリピート演奏することができる。
【0053】
本実施形態の演奏装置は、これら自動演奏モード、生演奏モードの際、単に発音するだけでなく、発音パターンに同期して発光表示を行う。
【0054】
前述のように、押下(選択)されたキースイッチのX座標およびY座標を取得すると、表示処理部203は、前記二つの演奏モードによる発音のタイミングに同期して発光表示部群11の発光表示を制御する処理を実行する。表示処理部203は発音時間長と同じ時間長だけ選択されたキースイッチ100に対応する発光表示部110を発光させる。
【0055】
また、表示処理部203は、後述するリピートポイントの設定や再生音階の設定等の際に制御スイッチ22が押下された状態で、所定のキースイッチ100が押下されると、予め設定された発光パターンでキースイッチ群10の発光表示部群11を発光させる。
【0056】
次に、リピートポイントの設定方法について、図を参照して、より具体的に説明する。
図4はリピート再生のフローを示すフローチャートである。図5はリピートポイントの設定フローを示すフローチャートである。図6はリピートポイントの設定方法を示す説明図である。また、図7は、図6に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲データの楽譜イメージを示す図である。
ユーザから自動再生操作を受け付けると、メインCPU2は、記憶部4に記憶された楽曲データを読み出す(S11)。メインCPU2は、楽曲データから各発音データ(ノートナンバと発音タイミング)を取得する(S12)。この発音データの取得とともに、タイマ13は計時を開始し(S13)、所定タイミング毎にメインCPU2に時刻を出力する。
【0057】
メインCPU2は、まず、リピート区間の第1の発音データの再生制御および発光制御を行う(S14)。この際、リピート区間がユーザにより特に設定されていなければ、まず、楽曲データの第1拍の発音データを再生制御する。この後、メインCPU2は、タイマ13から得られるタイミング毎に、順次発音データの再生・発光制御を行う(S15→S16)。メインCPU2は、リピートポイントを検出しなければ、この発音データの再生・発光制御を継続する。すなわち、第2拍、第3拍の順で発音データの再生・発光制御を行う(S18→S15→S16)。そして、メインCPU2は、リピートポイントを検出するとリピート区間の最終発音データの再生制御および発光制御を行い(S18→S19)、リピート区間の第1の発音データに戻り再生を繰り返す(S19→S14)。この際、リピート区間がユーザにより特に設定されていなければ、キースイッチ群10のX軸16番目(図2の右端)のキースイッチ100に対応する第16拍の発音データを最終発音データとし、第16拍の発音データの再生後、第1拍の発音データに戻す。このような処理方法を行うことで、前述の図19のような音楽を演奏することができる。
【0058】
このような自動演奏(自動リピート再生)の間、メインCPU2は、制御スイッチ22の押下を常時監視する。そして、ユーザがリピートポイント設定操作のため、制御スイッチ22Dを指901で押下すると、メインCPU2はこれを検知し、自動演奏モードとともにリピートポイント設定モードを起動する(S101)。次にユーザが、図6(A)に示すように、制御スイッチ22Dを指901で押下しながら、キースイッチ100を指902で押下すると、サブCPU12はキースイッチ100の押下を検出して、位置情報をメインCPU2に与える(S102)。メインCPU2は、所定時間、キースイッチの押下位置情報を取得し、変化がなければ位置情報から押下されたキースイッチのX座標を検出する(S103→S104)。一方、図6(B)に示すように、ユーザがキースイッチの押下点をキースイッチ群10の右端(X軸16番)から移動させれば、メインCPU2は、キースイッチの押下位置の変化(移動)を観測し、最後に検出された押下位置情報からキースイッチ100のX座標を検出する(S103→S105)。
【0059】
メインCPU2は、検出したX座標からリピートポイントを設定して、前述の自動演奏モードの処理フローに割込を行う(S106)。
【0060】
このようなリピートポイントの設定割込処理が行われると、メインCPU2は、新たに設定されたリピートポイントと、当該リピートポイントに基づくリピート区間の設定更新を行う(S21)。
【0061】
この際、メインCPU2の表示処理部203は、検出されたリピートポイントに対応するX軸の位置で、Y軸方向に並ぶキースイッチ100を列状に強発光する制御を行う(図6の黒丸に相当)。
【0062】
次に、メインCPU2は、現在の再生タイミングが新たに設定されたリピート区間内であるかどうかを検出して、リピート区間内であれば、前述のようなリピート再生を引き続き行う(S22→S18→S15)。そして、新たなリピートポイントに達すればリピート区間の最終発音データの再生制御および発光制御を行い(S18→S19)、リピート区間の第1の発音データに戻り再生を繰り返す(S19→S14)。
【0063】
メインCPU2は、現在の再生タイミングが新たなリピート区間内になければ、旧リピート区間、リピートポイントに準じて、順次発音データの再生・発光制御処理を行う(S23→S24→S25→S26)。そして、新たに設定されたリピート区間の第1の発音データに戻り、新たなリピート区間でのリピート再生を繰り返し行う(S26→S14)。なお、本実施例では、リピート区間の第1の発音データは、キースイッチ群10のX軸1番目(図2の左端)のキースイッチ100に対応する楽曲データの第1拍に固定されているので、この第1拍の発音データに戻る。
【0064】
このような処理を行うことで、図6(A)の場合であれば、楽曲データの第14拍をリピートポイントとし、第1拍〜第14拍をリピート区間とする図7(A)に示すような楽曲を演奏することができる。また、図6(B)の場合であれば、楽曲データの第12拍をリピートポイントとし、第1拍〜第12拍をリピート区間とする図7(B)に示すような楽曲を演奏することができる。
【0065】
このように、本実施形態の構成を用いることで、自動再生中であってもリピートポイントおよびリピート区間を任意に調整することができる。そして、リピート区間を任意に設定することで、1つの楽曲データで多様性のある演奏を行うことができ、ユーザに抑揚感を与えることができる。
【0066】
なお、前述の説明では、リピート区間の最終位置に対応する楽曲データのリピート終点ポイントを調整する例を示したが、リピート区間の最初の位置に対応する楽曲データのリピート起点ポイントを調整するようにしてもよい。
【0067】
図8は、前後両側のリピートポイントを設定する場合のリピートポイントの設定フローを示すフローチャートである。また、図9は両側リピートポイントの設定方法を示す説明図である。そして、図10は図9に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【0068】
前述のようにメインCPU2は制御スイッチ22の押下を常時監視する。そして、ユーザがリピートポイント設定操作のため、図9(A)に示すように制御スイッチ22Dを短く押下すると、メインCPU2はこれを検知して、両側設定のリピートポイント設定モードを起動する(S201)。この後ユーザは制御スイッチ22Dから指901を離しても、次に制御スイッチ22Dが短く押下される(S209)まで、このモードは継続する。次に、ユーザが図9(B)に示すように、キースイッチ群10の両端からX軸の中心方向へ指901,902を移動させながらキースイッチ100を連続的に押下すると、メインCPU2はこれを検出して、移動方向を検出する(S202→S203)。そして、ユーザが指901,902の移動を中止すると、メインCPU2は、最終的に押下された2つのキースイッチ100のX軸座標を検出する(S204)。この際、キースイッチ100押下の軌跡情報を記憶しておくことで、両指901,902の動きを個別に判断することができる。
【0069】
メインCPU2は、移動方向を検出し、右方向、すなわち、キースイッチ群10の左端から中心方向に移動した軌跡を検出すると、キースイッチ100の最終押下位置をリピート起点ポイントとして検出する(S206)。一方、メインCPU2は、移動方向を左方向、すなわち、キースイッチ群10の右端から中心方向に移動した軌跡を検出すると、キースイッチ100の最終押下位置をリピート終点ポイントとして検出する(S207)。制御スイッチ22Dの短押しが再検出されるまで、この処理は実行される(S208→S209→S202)。そして、制御スイッチ22Dの短押しを検出すると、リピート起点ポイントおよびリピート終点ポイントを確定して、リピートポイント設定の割込処理を行う(S209→S210)。この際、リピート起点ポイントが設定されていなければ、X軸1番をリピート起点ポイントに設定し、リピート終点ポイントが設定されていなければ、X軸16番をリピート終点ポイントに設定する。
【0070】
メインCPU2は、この割り込み処理により得られた二つのリピートポイントからリピート区間を設定し、図4のステップS21〜ステップS26に関する処理を行う。
【0071】
このような処理を行うことで、図9(B)に示すようにキースイッチ100のX=4の位置とX=12の位置にリピートポイントを設定すれば、図10に示すように楽曲データの第4拍をリピート区間の第1発音データ(起点発音データ)とし、第12拍を終点発音データとする楽曲データを演奏することができる。
【0072】
このように、リピート区間の起点と終点とを任意に設定することができるので、より多様性のある楽曲を演奏することができる。
【0073】
なお、リピート起点ポイントとリピート終点ポイントとの設定は、前述の方法に限るものではなく、単にX軸に沿った座標位置に異なる二点のキースイッチ100を押下することにより設定しても良い。
【0074】
次に、第2の実施形態に係る演奏装置について図を参照して説明する。
【0075】
本実施形態の演奏装置は、第1の実施形態に対して再生音階設定モードを追加したものであり、装置構成は第1の実施形態と同じである。したがって、再生音階設定処理のみについて説明し、他の部分の説明は省略する。
【0076】
図11は再生音階設定モードの割込処理を備える自動演奏モードのフローチャートである。図12は再生音階の設定フローを示すフローチャートである。図13は再生音階の設定方法を示す説明図である。また、図14は、図13に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲データの楽譜イメージを示す図である。
再生音階設定は、生演奏モード実行中でも自動演奏モード実行中であっても、実行可能であるが、以下の説明では自動演奏モード実行中に再生音階(演奏音階)設定を行う場合を示す。
【0077】
(1)制御スイッチを押下しながらの再生音階設定(図12(A)参照)
メインCPU2は、制御スイッチ22の押下を常時監視する。そして、ユーザが再生音階設定操作のため、制御スイッチ22Fを指902で押下すると、メインCPU2はこれを検知し、自動演奏モードとともに再生音階設定モードを起動する(S301)。次にユーザが、制御スイッチ22Fを指902で押下しながら、キースイッチ100を指901で押下すると、サブCPU12はキースイッチ100の押下を検出して、位置情報をメインCPU2に与える(S302)。メインCPU2は、所定時間、キースイッチの押下位置情報を取得し、変化がなければ位置情報から押下されたキースイッチのY座標を検出する(S303→S304)。一方、図13(A)に示すように、ユーザがキースイッチの押下点をキースイッチ群10の上端(Y軸16番)から下方へ、または下端(Y軸1番)から上方へ移動させれば、メインCPU2は、キースイッチの押下位置の変化(移動)を観測し、最後に検出された押下位置情報からキースイッチ100のY座標を検出する(S303→S305)。
【0078】
メインCPU2は、検出したY座標から再生音階上限を設定して、自動演奏モードの処理フローに割込を行う(S306)。このような再生音階の設定割込処理が行われると、メインCPU2は、新たに設定された再生音階の設定更新を行う(S31→S32→S17)。
【0079】
このような処理を行うことで、図13(A)に示すようにキースイッチ100のY=8の位置を設定すれば、Y=1〜Y=8に対応するノートナンバ60〜72のみからなる音階が設定され、図14(A)に示すように第8拍、第11拍、第12拍が無音の楽曲データを演奏することができる。なお、このような処理により検出されたY座標は再生音階下端に設定してもよく、この場合は再生音階上端はY軸16番に設定される。
【0080】
(2)制御スイッチ短押しの再生音階設定(図12(B)参照)
前述のようにメインCPU2は制御スイッチ22の押下を常時監視する。そして、ユーザが再生音階設定操作のため、制御スイッチ22Fを短く押下すると、メインCPU2はこれを検知して、上限下限の設定可能な再生音階設定モードを起動する(S401)。この後ユーザは制御スイッチ22Fから指902を離しても、次に制御スイッチ22Fが短く押下される(S409)まで、このモードは継続する。次に、ユーザが図13(B)に示すように、キースイッチ群10の上下端からY軸の中心方向へ指901,902を移動させながらキースイッチ100を連続的に押下すると、メインCPU2はこれを検出して、移動方向を検出する(S402→S403)。そして、ユーザが指901,902の移動を中止すると、メインCPU2は、最終的に押下されたキースイッチ100のY軸座標を検出する(S404)。この際、キースイッチ100押下の軌跡情報を記憶しておくことで、両指901,902の動きを個別に判断することができる。
【0081】
メインCPU2は、移動方向を検出し、下方向、すなわち、キースイッチ群10の上端から中心方向に移動した軌跡を検出すると、キースイッチ100の最終押下位置を再生音階上限として検出する(S406)。一方、メインCPU2は、移動方向を上方向、すなわち、キースイッチ群10の下端から中心方向に移動した軌跡を検出すると、キースイッチ100の最終押下位置を再生音階下限として検出する(S407)。制御スイッチ22Fの短押しが再検出されるまで、この処理は実行される(S408→S409→S402)。そして、制御スイッチ22Fの短押しを検出すると、再生音階上限および再生音階下限を確定して、再生音階設定の割込処理を行う(S409→S410)。この際、再生音階下限が設定されていなければ、X軸1番を再生音階下限に設定し、再生音階上限が設定されていなければ、X軸16番を再生音階上限に設定する。
【0082】
メインCPU2は、この割り込み処理により得られた二つの再生音階境界から再生音階を設定し、図11のステップS31,S32に関する処理を行う。
【0083】
このような処理を行うことで、図13(B)に示すようにキースイッチ100のY=8とY=4の位置を設定すれば、Y=4〜Y=8に対応するノートナンバ65〜72のみからなる音階が設定され、図14(B)に示すように第4拍、第5拍、第8拍、第11拍、第12拍、第16拍が無音の楽曲データを演奏することができる。
【0084】
このように、本実施形態の構成、処理を用いることで、1つの楽曲データに対して様々な音階で再生することができるので、さらに多様性の有る楽曲の再生を行うことができる。
【0085】
なお、本実施形態の説明では、リピート区間の調整を行っていない場合を示したが、再生音階の調整とリピート区間の調整とを行うことで、より多様性に富む楽曲の再生を行うことができる。
【0086】
また、本実施形態では、再生音階はリピート区間の全域で同じに設定されているが、リピート区間の始めや終わりと中間とで再生音階の幅を異ならせても良い。すなわち、キースイッチの座標系にして方形状となるようにリピート区間および再生音階を設定するだけではなく、楕円形状等となるようにリピート区間および再生音階を設定しても良い。これにより、さらに、多様性に富む楽曲の再生を行うことができる。
【0087】
次に、第3の実施形態に係る演奏装置について、図を参照して説明する。
図15は、階層化されたグループ楽曲データの各階層楽曲データをキースイッチの座標で示した図である。
【0088】
本実施形態の演奏装置の記憶部4は、前述のように1つの楽曲データだけを記憶することもできれば、複数の楽曲データ(階層楽曲データ)を階層化して記憶することもできる。複数の楽曲データを階層化して記憶する場合には、記憶部4は複数の楽曲データをグループ化し、各楽曲データに対して階層情報を添付して記憶する。例えば、図15(A)の楽曲データをグループ楽曲データの第1階層楽曲データとし、図15(B)の楽曲データをグループ楽曲データの第2階層楽曲データとし、図15(C)の楽曲データをグループ楽曲データの第3階層楽曲データとして、グループ化して記憶する。なお、グループ化可能な楽曲数は3つに限ることなく、例えば、8個や16個等適宜設定することができる。
【0089】
そして、演奏処理部202は、このグループ楽曲データの再生を受け付けると、全ての階層楽曲データを読み出して、並行して再生する。すなわち、図16の楽譜に示すように再生する。図16は図15に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【0090】
したがって、本実施形態のように楽曲を階層化することで、より多様性に富む楽曲を再生することができる。
【0091】
このような場合、各階層の楽曲データは次に示す方法でリピート区間や再生音階を調整することができる。
図17は、階層化されたグループ楽曲データのリピート区間および再生音階の調整方法を示すフローチャートである。
図18は、それぞれに異なるリピート区間の設定を実行した場合に演奏される楽曲の一例の楽譜イメージを示す図である。
【0092】
階層変更の制御を受け付ける制御スイッチ22Jをユーザが押下すると、メインCPU2はこれを検知し、自動演奏モードとともに階層楽曲調整モードを起動する(S501)。次に、ユーザが制御スイッチ22Jを押下しながらキースイッチ100を押下すると、サブCPU12はキースイッチの押下を検出して、位置情報をメインCPU2に与える(S502)。メインCPU2は、位置情報から、押下されたキースイッチ100のY座標を検出する(S503)。キースイッチ100のY座標と階層とは予め関連付けされている。例えば、Y座標が1ならば第1階層、Y座標が2ならば第2階層、Y座標が3ならば第3階層のように関連付けされている。
【0093】
メインCPU2は、検出したY座標に基づいて対応する階層の階層楽曲データを読み出し(S504)、発光表示部群11に出力する(S505)。例えば、キースイッチ100のY=3の位置を押下すると、第3階層が選択され、図15(C)に示すような表示が行われる。そして、表示は第3階層の状態のままで、グループ楽曲データの再生が行われる。
【0094】
この状態で、前述の再生音階設定やリピート区間設定の操作が行われると、メインCPU2は、操作内容にしたがって、選択されている階層楽曲データのみに対して再生音階の設定やリピート区間の設定を行う(S507〜S510)。このような再生音階の設定やリピート区間の設定を各階層楽曲データに対して個別に行うことができる。例えば、図18の場合であれば、第1階層楽曲データが第1拍〜第12拍の繰り返しとなり、第2階層楽曲データが第1拍〜第6拍の繰り返しとなり、第3階層楽曲データが第1拍〜第11拍の繰り返しとなる。このように、リピート区間の時間長が各階層で無相関に設定されることで、より複雑で多様性に富む楽曲の再生が可能になる。なお、図示して詳細な例を示さなかったが、再生音階についてもリピート区間と同様に、各層で無相関に設定することができ、より多様な楽曲を再生することができる。
【0095】
このように、本実施形態の構成を用いることで、それぞれにリピート区間、再生音階を個別に設定された複数の楽曲データを組み合わせて、並列に再生することができる。これにより、さらに多様性に富み、ユーザにさらなる抑揚性を与えられる楽曲を再生、演奏することができる。
【0096】
また、前述の説明には、Y座標と音高とを関連付けした例を示したが、Y座標に音高と音色とを組み合わせたデータを割り当ててもよい。また、Y座標に1つのサンプリング音の音高を異ならせた楽音データや、音高に関わらず異なる種々のサンプリング音を割り当ててもよい。
【0097】
また、前述の説明では、音源と演奏操作を行う部分とが一体化された例を示したが、音源を別に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施形態の演奏装置1の正面図である。
【図2】図1の演奏装置1を手前側(ユーザ側)から見た場合のスイッチ群10および発光表示部110の構成を示す図である。
【図3】図1に示す演奏装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】リピート再生のフローを示すフローチャートである。
【図5】リピートポイントの設定フローを示すフローチャートである。
【図6】リピートポイントの設定方法を示す説明図である。
【図7】図6に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【図8】前後両側のリピートポイントを設定する場合のリピートポイントの設定フローを示すフローチャートである。
【図9】両側リピートポイントの設定方法を示す説明図である。
【図10】図9に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る再生音階設定モードの割込処理を備える自動演奏モードのフローチャートである。
【図12】再生音階の設定フローを示すフローチャートである。
【図13】再生音階の設定方法を示す説明図である。
【図14】図13に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【図15】第3の実施形態に係る階層化されたグループ楽曲データの各階層楽曲データをキースイッチの座標で示した図である。
【図16】図15に示した設定を実行した場合に演奏される楽曲の楽譜イメージを示す図である。
【図17】階層化されたグループ楽曲データのリピート区間調整方法を示すフローチャートである。
【図18】それぞれに異なるリピート区間の設定を実行した場合に演奏される楽曲の一例の楽譜イメージを示す図である。
【図19】従来例におけるキースイッチ100の選択が行われた場合の曲のイメージ図である。
【符号の説明】
【0099】
1−演奏装置、2−メインCPU、201−楽曲データ形成部、202−演奏処理部、203−表示処理部、3−ROM、4−記憶部、5−RAM、6−音源、7−D/Aコンバータ、8−サウンドシステム、9−マトリクス表示入力部、10−キースイッチ群、11−発光表示部群、12−サブCPU、13−タイマ、14−入出力部、15−バスライン、21−表示部、22,22A〜22K−制御スイッチ、24−他機通信I/F、25−通信I/F、100−キースイッチ、110−発光表示部、140−記憶媒体、500−筐体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X,Y方向に2次元配列され、X座標が拍タイミングに対応付けられ、Y座標が音高に対応付けられた複数のキースイッチと、
該複数のキースイッチの押下により自動演奏時に発音する楽曲の音高と拍タイミングの指定を受け付けて楽曲データとして記憶する楽曲データ形成手段と、
前記キースイッチを調整操作子として機能させ、操作されたキースイッチのX方向位置またはX方向の移動量により前記楽音データの繰り返し点を検出する繰り返し点検出手段と、
前記楽曲データを前記繰り返し点に応じて繰り返すことで自動演奏再生する再生手段と、
を備えたことを特徴とする演奏装置。
【請求項2】
前記繰り返し点検出手段は、前記調整操作子として機能する二つのキースイッチのX方向位置を第1繰り返し点および第2繰り返し点として検出し、
前記再生手段は、前記楽曲データを前記第1繰り返し点と前記第2繰り返し点との間で繰り返し再生する、請求項1に記載の演奏装置。
【請求項3】
Y方向に並ぶ各キースイッチに割り当てられた楽音データは、これらY方向に並ぶ複数のキースイッチに応じた楽音データ群で音階を形成するものであり、
前記キースイッチを調整操作子として機能させ、操作されたキースイッチのY方向位置により前記楽音データの音階を設定する音階設定手段を備え、
前記再生手段は、前記音階設定手段により設定された音階に基づき前記楽曲データを再生する、請求項1または請求項2に記載の演奏装置。
【請求項4】
前記音階設定手段は、前記調整操作子として機能する二つのキースイッチのY方向位置を音階上限点および音階下限点として検出し、
前記再生手段は、前記楽曲データを前記音階上限点と前記音階下限点との間の発音データのみで再生する、請求項3に記載の演奏装置。
【請求項5】
前記楽曲データ形成手段は形成された複数の楽曲データを階層化して記憶し、
当該階層化して記憶された複数の楽曲データを読み出す楽曲データ読み出し手段と、
前記キースイッチを階層選択操作子として機能させ、操作されたキースイッチのY方向位置により調整対象楽曲データを指定する楽曲データ指定手段と、を備え、
前記繰り返し点検出手段は、選択された調整対象楽曲データに対して繰り返し点が入力されると選択された調整対象楽曲データのみに当該繰り返し点を適用することで、楽曲データ毎に個別に繰り返し点を検出し、
前記再生手段は、前記複数の楽曲データを、それぞれに設定された繰り返し点に準じて繰り返す、請求項1〜4のいずれかに記載の演奏装置。
【請求項6】
前記音階設定手段は、選択された調整対象楽曲データに対して音階設定が入力されると選択された調整対象楽曲データのみに当該設定された音階を適用することで、楽曲データ毎に個別に音階を設定し、
前記再生手段は、前記複数の楽曲データを、それぞれに設定された音階に準じて再生する請求項5に記載の演奏装置。
【請求項1】
X,Y方向に2次元配列され、X座標が拍タイミングに対応付けられ、Y座標が音高に対応付けられた複数のキースイッチと、
該複数のキースイッチの押下により自動演奏時に発音する楽曲の音高と拍タイミングの指定を受け付けて楽曲データとして記憶する楽曲データ形成手段と、
前記キースイッチを調整操作子として機能させ、操作されたキースイッチのX方向位置またはX方向の移動量により前記楽音データの繰り返し点を検出する繰り返し点検出手段と、
前記楽曲データを前記繰り返し点に応じて繰り返すことで自動演奏再生する再生手段と、
を備えたことを特徴とする演奏装置。
【請求項2】
前記繰り返し点検出手段は、前記調整操作子として機能する二つのキースイッチのX方向位置を第1繰り返し点および第2繰り返し点として検出し、
前記再生手段は、前記楽曲データを前記第1繰り返し点と前記第2繰り返し点との間で繰り返し再生する、請求項1に記載の演奏装置。
【請求項3】
Y方向に並ぶ各キースイッチに割り当てられた楽音データは、これらY方向に並ぶ複数のキースイッチに応じた楽音データ群で音階を形成するものであり、
前記キースイッチを調整操作子として機能させ、操作されたキースイッチのY方向位置により前記楽音データの音階を設定する音階設定手段を備え、
前記再生手段は、前記音階設定手段により設定された音階に基づき前記楽曲データを再生する、請求項1または請求項2に記載の演奏装置。
【請求項4】
前記音階設定手段は、前記調整操作子として機能する二つのキースイッチのY方向位置を音階上限点および音階下限点として検出し、
前記再生手段は、前記楽曲データを前記音階上限点と前記音階下限点との間の発音データのみで再生する、請求項3に記載の演奏装置。
【請求項5】
前記楽曲データ形成手段は形成された複数の楽曲データを階層化して記憶し、
当該階層化して記憶された複数の楽曲データを読み出す楽曲データ読み出し手段と、
前記キースイッチを階層選択操作子として機能させ、操作されたキースイッチのY方向位置により調整対象楽曲データを指定する楽曲データ指定手段と、を備え、
前記繰り返し点検出手段は、選択された調整対象楽曲データに対して繰り返し点が入力されると選択された調整対象楽曲データのみに当該繰り返し点を適用することで、楽曲データ毎に個別に繰り返し点を検出し、
前記再生手段は、前記複数の楽曲データを、それぞれに設定された繰り返し点に準じて繰り返す、請求項1〜4のいずれかに記載の演奏装置。
【請求項6】
前記音階設定手段は、選択された調整対象楽曲データに対して音階設定が入力されると選択された調整対象楽曲データのみに当該設定された音階を適用することで、楽曲データ毎に個別に音階を設定し、
前記再生手段は、前記複数の楽曲データを、それぞれに設定された音階に準じて再生する請求項5に記載の演奏装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−240644(P2007−240644A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59957(P2006−59957)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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