説明

潤滑オイル収集案内具

【課題】収容ケースに対する組付けを的確に行うことができる潤滑オイル収集案内具を提供する。
【解決手段】オイル通路部材を、オイル収集容器から延びる第1通路部材18Aと、オイルファンネル17から延びる第2通路部材18Bとを有するようにし、第2通路部材18Bの一端側側壁部31aに長孔としての挿通孔32を形成する一方、第1通路部材18Aの一端部を円筒形状端部29Aとする。挿通孔32に円筒形状端部29Aをその軸線方向に進退動可能に挿通すると共に、挿通孔32に対して円筒形状端部29Aを、その挿通孔32の長軸方向に変動可能とすると共に円筒形状端部29Aの軸線を中心として回動可能とする。これにより、オイル収集容器とオイルファンネル17とを、相対的に、回転軸9の軸線方向に変位動可能とすると共に、オイルファンネル17(円板部25)の径方向に変位動可能とし、潤滑オイル収集案内具の寸法のばらつきを吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力を伝達する動力伝達要素を収容する収容ケース内で潤滑オイルを収集し、その収集した潤滑オイルを収容ケース内における回転軸のオイル通路に導く潤滑オイル収集案内具に関する。
【背景技術】
【0002】
動力を伝達する動力伝達要素(ギヤ、回転軸)を収容する収容ケース内においては、回転軸として、その軸端面から内部に主オイル通路を形成すると共に、その主オイル通路から径方向外方に延びてその外周面から外部に開口する分岐オイル通路を形成したものを用いた上で、その収容ケース内のギヤが跳ね上げた潤滑オイルを収集し、その潤滑オイルを回転軸の主オイル通路の開口側に導くことが行われている。これによれば、主オイル通路に導かれた潤滑オイルは、分岐オイル通路から回転軸の径方向外方に送り出されることになり、その潤滑オイルは、再び、ギヤの潤滑に用いられる。このため、このような潤滑オイル循環構造を実現すべく、従来から、収容ケース内に潤滑オイル収集案内具が配置されている。
【0003】
この潤滑オイル収集案内具として、特許文献1に示すように、収容ケース内における一連のギヤ群上方に配置されて該ギヤにより跳ね上げられたオイルを受け入れるオイル収集容器と、収容ケース内における回転軸の軸端に配設されて該回転軸の主オイル通路内に潤滑オイルを案内する案内部材と、該案内部材と前記オイル収集容器とを連絡して該オイル収集容器が収集した潤滑オイルを該案内部に導くオイル通路部材と、を樹脂材料を用いて一体成形したものが提案されている。これを用いれば、オイル収集容器、案内部材等がそれぞれ別体となっているものを用いる場合(例えば特許文献2)に比べて、組付工数を減らして組付けを容易にすることができる。また、収容ケースにオイル通路を形成する必要がなくなり、収容ケースに対する加工負担を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−18061号公報
【特許文献2】実開平7−12655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記収容ケースは比較的大きい傾向にあり、これに伴って、潤滑オイル収集案内具も大きなものとならざるを得ず、樹脂材料による一体成形品として成形される潤滑オイル収集案内具は、その寸法がばらつかざるを得ない。このため、仮に、寸法がばらついた潤滑オイル収集案内具を収容ケースの組付けに用いた場合には、樹脂成形品としての性質に基づき、ねじれたりする等、変形して、潤滑オイル収集案内具を収容ケースに組付けることができるものの、その組付けが不良となったり、潤滑オイル収集案内具の姿勢が規格とは異なったものとなって潤滑オイル収集案内具の性能が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その技術的課題は、収容ケースに対する組付けを的確に行うことができる潤滑オイル収集案内具を提供することにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
動力伝達要素として一連のギヤ、回転軸を収容する収容ケース内において、該一連のギヤ上方に配置されて該ギヤの回転により跳ね上げられたオイルを受け入れるオイル収集容器と、前記収容ケース内における回転軸の軸端面に対向して配設されて該回転軸の軸端面に開口されたオイル通路内に潤滑オイルを案内する案内部材と、該案内部材と前記オイル収集容器とを連絡して該オイル収集容器が収集した潤滑オイルを該案内部材に導くオイル通路部材と、が備えられている潤滑オイル収集案内具において、
前記オイル通路部材は、一端及び他端の両方が開口された第1通路部材と、一端が閉塞され他端が開口された第2通路部材と、を有し、
前記第2通路部材の一端側側壁部に挿通孔が形成され、
前記第1通路部材の一端部が前記挿通孔に進退動可能に挿通されて該第1通路部材の一端開口が前記第2通路部材内に位置されていると共に、該挿通孔に対して該第1通路部材の一端部が遊嵌状態とされ、
前記第1,第2通路部材のいずれか一方の他端開口が、前記オイル収集容器内に連通され、
前記第1,第2通路部材の他方の他端開口が、前記案内部材に連通され、
前記オイル収集容器と前記案内部材とが、前記挿入孔に対する前記第1通路部材の進退動及び遊嵌関係に基づき、前記回転軸の軸線方向及び径方向に相対的に変位動可能とされている構成とされている。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明(請求項1に係る発明)によれば、仮に、当該潤滑オイル収集案内具の寸法が規定の寸法からばらついていて、その寸法がばらついた潤滑オイル収集案内具を収容ケースの組付けたとしても、オイル収集容器と案内部材とが、挿入孔に対する第1通路部材の進退動及び遊嵌関係に基づき、回転軸の軸線方向及び径方向に相対的に変位動可能とされていることから、それによって寸法のばらつきに基づく変形力が吸収され、当該潤滑オイル収集案内具は、規格通りの姿勢状態で収容ケースに組付けられる。このため、収容ケースに対する組付けを的確に行うことができる潤滑オイル収集案内具を提供できる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、挿通孔が、第2通路部材の延び方向に長く延びる長孔とされ、第1通路部材の一端部が円筒形状端部とされ、円筒形状端部が、長孔に対して相対的に回動可能且つ長孔の長軸方向に摺動可能とされていることから、オイル収集容器と案内部材とは、挿通孔(第2通路部材内)に対する円筒形状端部の進退動により回転軸の軸線方向の変位動を確保でき、長孔に対する円筒形状端部の相対回動及び長孔の長軸方向の摺動により回転軸の径方向の変位動を確保できることになり、挿通孔が遊嵌孔として長孔の状態にある場合であっても、第1通路部材の一端部を円筒形状端部とすることによって、具体的に、前記請求項1と同様の作用効果を得ることができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、円筒形状端部の先端部外周に、抜け止め部として、円筒形状端部の外径よりも拡径された拡径部が設けられ、拡径部の外径が、長孔の短軸方向長さより長くされていることから、第2通路部材内から第1通路部材の円筒形状端部が抜ける方向に移動しても、それに伴う拡径部の移動が長孔の短軸方向両側部分により規制されることになり、第2通路部材内から第1通路部材の円筒形状端部が抜けることを防止して、第1,第2通路部材を常に連結状態に維持できる。
【0011】
請求項4に係る発明によれば、拡径部と円筒形状端部の軸線方向内端との間の距離が、第2通路部材の一端側側壁部の肉厚よりも長くされていることから、第1通路部材における円筒形状端部の先端部外周に拡径部が設けられて、第2通路部材に対する第1通路部材の抜け止めがなされている場合であっても、第2通路部材内への円筒形状端部の進入動が確保できるることになり、オイル収集容器と案内部材とが回転軸の軸線方向に変位動することを許容できる。
【0012】
請求項5に係る発明によれば、第2通路部材が、上方が開口する樋形状に形成され、第2通路部材の側壁部は、長孔が存在する個所において、長孔の下側部分よりも上側部分が薄くされて、該上側部分が可撓性を有していることから、円筒形状端部の先端部外周に拡径部が設けられている場合であっても、長孔の上側部分を撓ませて、拡径部を有する円筒形状端部を長孔に挿入することができる。このため、第2通路部材に対して第1通路部材を簡単に連結することができる。
【0013】
請求項6に係る発明によれば、第1通路部材の一端部の先端部外周に抜け止め部が、挿通孔の周縁部に臨むように突設されていることから、第2通路部材内から第1通路部材のが抜ける方向に移動しても、それに伴う抜け止め部の移動が挿通孔周縁部により規制されることになり、第2通路部材内から第1通路部材が抜けることを防止して、第1,第2通路部材を常に連結状態に維持できる。
【0014】
請求項7に係る発明によれば、第1通路部材の一端部端面に、該端面から張り出すようにして案内壁部が設けられ、案内壁部は、第2通路部材内において、潤滑オイルが第1通路部材よりも該第2通路部材の一端側に流れることを抑制するように配置されていることから、潤滑オイルを的確に案内部材に導くことができる。
【0015】
請求項8に係る発明によれば、第1通路部材の他端開口がオイル収集容器内に連通され、第2通路部材の他端開口が案内部材に連通されていることから、オイル収集容器からの潤滑オイルを、第1通路部材の一端部をにより第2通路部材内に的確に供給できることになり、適切な潤滑オイル循環構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る潤滑オイル収集案内具が用いられる変速機等を示す説明図。
【図2】実施形態に係る潤滑オイル収集案内具を示す斜視図。
【図3】実施形態に係る潤滑オイル収集案内具を示す正面図。
【図4】実施形態に係るオイルファンネルのミッションケース内での組付け状態を説明する説明図。
【図5】第1通路部材と第2通路部材との連結を説明する説明図。
【図6】図3のA−A線断面図。
【図7】図3のB−B線断面図。
【図8】図6のC−C線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1において、符号1はエンジン、符号2はクラッチ、符号3は変速機である。変速機3は、有底筒状のミッションケース4を備えており、その開口側端面はクラッチ2のクラッチケース5の接合端面に接合されている。このミッションケース4内には一連のギヤ群6(図1では図示略、図2参照)、そのギヤ群6を支持する回転軸9等(図2参照)が収納されており、その一連のギヤ群6によりエンジン側出力が調整され、その調整された出力がディファレンシャルギア7を経て左右のドライブシャフト8a,8bに伝達される。上記回転軸9には、図2,図4に示すように、主オイル通路10、複数の分岐オイル通路11を有するものがある。この回転軸9は、他の回転軸9同様、その軸線方向がミッションケースの軸線方向(図1中、左右方向)に向けられており、その回転軸9の主オイル通路10は、その軸端面9aからその軸線方向内方に向けて延ばされ、各分岐オイル通路11は、主オイル通路10から径方向外方に延びて回転軸9の外周面から外部に開口されている。尚、図4中、符号14は回転軸9の端部を回転可能に支持する軸受けである。
【0018】
前記ミッションケース4内には、図1,図2に示すように、樹脂(例えば6−6ナイロン)製の潤滑オイル収集案内具15が配設されている。この潤滑オイル収集案内具15は、オイル収集容器16と、案内部材としてのオイルファンネル17と、オイル収集容器16とオイルファンネル17とを連絡するオイル通路部材18と、を備えている。
【0019】
前記オイル収集容器16は、図2に示すように、長めの箱形状をしており、その上部は比較的広い面積の上部開口19をもって開口されている。このオイル収集容器16は、その長手方向(図1中、左右方向)をミッションケース4の軸線方向に向けつつ、ミッションケース4内における一連のギヤ群6上方に配置されており、その上部開口19は、一連のギヤ群6の回転により跳ね上げられた潤滑オイル(図2中、矢印で示す)をできるだけ受け入れることになっている。このオイル収集容器16は、本実施形態においては、第1収集容器部16Aと第2収集容器部16Bとを隣接した状態で有しており、その各収集容器部16A,16Bは、収集した潤滑オイルを所定の各個所に供給する役割を果たす。
【0020】
このオイル収集容器16の長手方向一端部には、図2に示すように、第1,第2支持板部20,21が一体的に設けられている。
第1支持板部20は、平板状をもって、オイル収集容器16の側面から該オイル収集容器16の幅方向一方側(図1中、上下方向下側)外方に向けて張り出されており、その第1支持板部20の板面はオイル収集容器16の長手方向に向けられている。この第1支持板部20の前面(オイル収集容器16の長手方向他端側の面)には、図2に示すように、複数の圧入ピン部22が一体的に設けられている。この圧入ピン部22は、第1支持板部20の前面から前方(オイル収集容器16の長手方向他端側)に向けて突出されており、本実施形態においては、この圧入ピン部22として、既知のブラッシュクリップ形状のものが用いられている。この圧入ピン部22は、それに対応したミッションケース4の開口側端面(フランジ部面或いはボス面)における圧入孔(図示略)に圧入されており、その圧入は、第1支持板部20の前面がミッションケース4の開口側端面に当接するまで行われる。また、第1支持板部20は、ミッションケース4の開口側端面とクラッチケース5の接合端面との接合に伴い、クラッチケース5に形成された凹所内(図示略)に収納されることになっており、その凹所底面により第1支持板部20はその背面側(圧入ピン部22と反対側)に移動することが規制されている。尚、この圧入ピン部22、圧入孔、第1支持板部20等は、オイル収集容器16の配置位置、形状等を考慮して適宜決められる。
【0021】
第2支持板部21は、平板状の突片として、オイル収集容器16の長手方向一端側面からその長手方向外方に向けて突出されている。この第2支持板部21は、その板面が上下方向に向けられており、その第2支持板部21はクラッチケース5の保持部(図示略)により保持される。
【0022】
一方、オイル収集容器16の長手方向他端部には、図2に示すように、樋状の通路部材23が一体的に設けられている。この通路部材23は、第1収集容器部16Aの潤滑オイルを所定個所に導くべく、第1収集容器部16Aの下部から、オイル収集容器16の長手方向他端側外方に向かうに従って下方に向かうように延びており、その通路部材23の下端部(流出端部)は、ミッションケース4内の支持部(図示略)に支持されている。勿論、この通路部材23から流出された潤滑オイルは、ミッションケース4内壁に形成されて所定個所に導く案内通路(図示略)に供給される。
尚、図2中、符号24は、第2収集容器部16B内の潤滑オイルをオイル収集容器16の長手方向一端側に導くための通路部材である。
【0023】
前記オイルファンネル17は、図2〜図7に示すように、皿状の円板部25と、その円板部25内面の径方向中央部から突設される筒部26と、を一体的に備えている。円板部25の径方向中央部には、導入口27が開口されており、その導入口27を介して、円板部の外面側と筒部26内とは連通されている。筒部26は、その先端開口を介してその内部を外部に連通させており、その筒部の外径は、全体を通して、前記主オイル通路の内径よりも縮径されている。このオイルファンネル17は、その筒部26をミッションケースの軸線方向内方に向けた状態で該ミッションケース底部4aに形成される凹所28内に圧入保持されている。凹所28は、オイル収集容器16に対して、そのオイル収集容器16の幅方向外側(図1中、上側)に偏位されていると共に、そのオイル収集容器16における第1収集容器部16Aの底部よりも低い位置となっているが、そこにおいて、凹所28は、前記主オイル通路10等を有する回転軸9の軸端面9aに対向されている。これにより、その凹所28に圧入保持されたオイルファンネル17(円板部25)の筒部26は、回転軸9の主オイル通路10内に挿入されることになり、オイルファンネル17の筒部26外周と主オイル通路10内周との間には隙間が形成されることになる。このため、回転軸9は、筒部26の存在にかかわらず、回転可能となっている。
【0024】
前記オイル通路部材18は、図2〜図7に示すように、第1通路部材18Aと、第2通路部材18Bと、を有している。本実施形態においては、いずれの通路部材18A,18Bも、上端が開口する樋状に形成され、第1通路部材18Aは第2通路部材18Bよりも長くなっている。
【0025】
前記第1通路部材18Aは、その一端及び他端の両方が開口されている。第1通路部材18Aは、その他端がオイル収集容器16における第2収集容器部16Bのうち、ミッションケース底部4aに対面した部分に一体的に接続されており、その他端開口は第2収集容器部16B内の底面近傍に開口されている。第1通路部材18Aの一端側は、オイルファンネル17に向けて延びており、その一端側は、オイルファンネル17に近づくに従って下方に向かうように傾斜されている。このため、第1収集容器部16A内の潤滑オイルは、重力に基づき第1通路部材18Aの一端側に向けて流れることになる。この第1通路部材18Aは、その一端部29に至る前に、オイル収集容器16の幅方向(図1中、上下方向)に向けて屈曲されて屈曲部30が形成され、その屈曲部30がさらにオイル収集容器16の長手方向外方に向けて屈曲されて一端部29とされている。本実施形態では、第1通路部材18Aの一端部29が円筒形状端部29Aとされており、その円筒形状端部29Aは樋状の屈曲部30における側壁部30aに接続されて、その円筒形状端部29Aの内部貫通孔は樋状の屈曲部30内に連通されている。尚、屈曲部30の先端面は閉塞されているが、本実施形態においては、その先端面は円弧状に形成されている(図5参照)。
【0026】
前記第2通路部材18Bは、その一端が閉塞され、その他端は開口されている。第2通路部材18Bは、前記オイルファンネル17の円板部25から短めの長さをもって、ミッションケース底部4aに沿いつつオイル収集容器16側に向けて延びており、その他端における一方の側壁部31aは円板部25の側方部に連続し、その他端における他方の側壁部31bは、一方の側壁部31aよりも円板部25の外面側において、何等部材に接続されることなく配置されている。この場合、一対の側壁部31a,31bの幅は、円板部25に近い側が遠い側よりも狭められている。
【0027】
前記第2通路部材18Bの側壁部31aには、図4〜図8に示すように、その第2通路部材18Bの一端側において挿通孔32が形成されている。挿通孔32は、本実施形態においては、遊嵌孔として長孔に形成されており、その長軸方向は第2通路部材18Bの延び方向に向けられている。この挿通孔32の短軸長さは前記第1通路部材18Aの円筒形状端部29Aの径と略同じ長さとされ、挿通孔32の長軸長さは円筒形状端部29Aの径よりも十分長くされている。また、側壁部31aは、挿通孔32が存在する個所において、その挿通孔32の上側部分31aaがその挿通孔32の下側部分31abよりも薄くされており、その上側部分31aaは可撓性を有している。
【0028】
前記第2通路部材18Bの挿通孔32には、図4〜図7に示すように、前記第1通路部材18Aの円筒形状端部29Aがその軸線方向に変位動可能に挿通されている。このため、側壁部31aと側壁部31bとの間隔は、その変位動を確保する点から設定されている。またこの場合、円筒形状端部29Aは、相対的に挿通孔32に対して回動可能且つ挿通孔32の長軸方向に摺動可能ともなっている。これにより、オイル収集容器16とオイルファンネル17とは、挿通孔32(第2通路部材18B内)に対する円筒形状端部29Aの進退動により回転軸9の軸線方向の相対的変位動を確保でき、挿通孔32(長孔)に対する円筒形状端部29Aの相対回動及び挿通孔32の長軸方向の摺動により回転軸9の径方向の相対的変位動を確保できることになる。
【0029】
前記円筒形状端部29Aの先端部外周に、図4〜図7に示すように、抜け止め部として、拡径部33が設けられている。拡径部33は、例えばバルジ形状等として、円筒形状端部29Aの全周に亘って形成されており、その外径は、挿通孔32の短軸長さよりも長くされている。この拡径部33は、挿通孔32に対する円筒形状端部29Aの挿通に伴い、第2通路部材18B内に配置されている。これにより、第2通路部材18B内から第1通路部材18Aの円筒形状端部29Aが抜ける方向に移動しても、それに伴う拡径部33の移動が挿通孔32の短軸方向両側部分により規制されることになり、第2通路部材18B内から第1通路部材18Aの円筒形状端部29Aが抜けることが防止される。つまり、第2通路部材18Bに対して第1通路部材18Aの一端部29がその軸線方向に変位動可能に連結されたことになる。
【0030】
この場合、拡径部33と、その拡径部33に対向する屈曲部30の側壁部30aとの間隔は、第2通路部材18Bの側壁部31aの肉厚よりも十分長くされている。これにより、挿通孔32周縁部が屈曲部30側壁部30aに当接するまで、円筒形状端部29Aが第2通路部材18B内に進入することができ、円筒形状端部29Aは、その軸心方向に十分に変位動することができる。勿論この場合、第2通路部材18Bの側壁部31bは、そのことを考慮して、側壁部31aから十分離間されている。
【0031】
前記第1通路部材18Aの円筒形状端部29Aの肉厚端面に、図4〜図6に示すように、該端面から張り出すようにして案内壁部34が設けられている。案内壁部34は、第2通路部材18B内において、潤滑オイルが第1通路部材18Aよりも該第2通路部材18Bの一端側に流れることを抑制するように配置されている。具体的には、案内壁部34は、円筒形状端部29Aの軸線を基準として第2通路部材18Bの一端側における略半周に亘って形成されている。勿論、この案内壁部34が円筒形状端部29Aに設けられている場合においても、第2通路部材18Bの一対の側壁部31a,31b間の長さは、その間31a,31bを円筒形状端部29Aが変位動できる長さとされている。
【0032】
このような潤滑オイル収集案内具15は、次のようにしてミッションケース4内に組み付けられる。
組付けに際しては、ミッションケース4内が一連のギヤ群6等を収納する前の状態となっており、そのミッションケース4内における底部4aの凹所28内に潤滑オイル収集案内具15のオイルファンネル17が圧入されると共に、オイル収集容器16における第1支持板部20の圧入ピン部22がミッションケース4の開口側端面(フランジ部面或いはボス面)における圧入孔(図示略)に圧入される。
このとき、第1,第2通路部材18A,18Bが連結されているが、第2通路部材18Bの挿通孔32(長孔)に対して第1通路部材18Aの円筒形状端部29Aがその軸線方向に変位動可能とされることにより、オイル収集容器16とオイルファンネル17とが、オイル収集容器16の長手方向(回転軸9の軸線方向)に変位動可能とされ、さらには、第2通路部材18Bの挿通孔32(長孔)に対して円筒形状端部29Aが挿通孔32の長軸方向に変動可能とされると共に該円筒形状端部29Aの軸線を中心として回動可能とされることにより、オイル収集容器16とオイルファンネル17とが、相対的に該オイルファンネル17(円板部25)の径方向に変位動可能とされている。
【0033】
このため、潤滑オイル収集案内具15が大きくなるに伴って、その潤滑オイル収集案内具15において寸法のばらつきが生じ、その寸法のばらつきのあるものがミッションケース内に組み付けられても(凹所28へのオイルファンネル17の円板部25の圧入、及びミッションケース4の開口側端面(フランジ部面或いはボス面)における圧入孔への圧入ピン部22の圧入)、前述の第1通路部材18Aと第2通路部材18Bとの連結関係により、寸法のばらつきに基づく変形力が吸収されることになり、オイル収集容器16とオイルファンネル17とが、相対的にねじられる等、変形されることはない。この結果、潤滑オイル収集案内具15は、規格通り、ミッションケース内に組み付けられる。
この組付けが終えると、ミッションケース4内に一連のギヤ群6等が収納され、クラッチケース5との接合が行われる。
【0034】
これにより、潤滑オイル収集案内具15は、ミッションケース4内で所定性能の潤滑オイル循環構造を実現する。すなわち、一連のギヤ群が跳ね上げた潤滑オイルを第2収集容器部16B(オイル収集容器16)が収集し、その潤滑オイルは、第1,第2通路部材18A,18Bを介してオイルファンネル17の外面側に供給される。そのオイルファンネル17の外面側に付着した(供給された)潤滑オイルは、回転軸9の回転に基づく吸引作用により、その筒部26を介して主オイル通路10内に引き込まれ、その潤滑オイルは、分岐オイル通路11から回転軸9の径方向外方に送り出されて、再び、一連のギヤ群6の潤滑に用いられる。
【0035】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)第2通路部材18Bの他端をオイル収集容器16(第2収集容器部16B)に接続し、第1通路部材18Aの他端をオイルファンネル17に接続すること。
(2)挿通孔32が、円筒形状端部29Aに対して全体的に遊嵌状態であるものであること。
(3)挿通孔32との遊嵌状態が確保できる限り、第1通路部材18Aの一端部は、円筒形状のものに限られないこと。
(4)第1,第2通路部材18A,18Bが、樋状のものに限らず、管状のもの等を用いること。
【符号の説明】
【0036】
4 ミッションケース(収容ケース)
4a ミッションケース底部
9 回転軸
15 潤滑オイル収集案内具
16 オイル収集容器
17 オイルファンネル(案内部材)
18 オイル通路部材
18A 第1通路部材
18B 第2通路部材
31a 一方の側壁部
32 挿通孔
33 拡径部
34 案内壁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達要素として一連のギヤ、回転軸を収容する収容ケース内において、該一連のギヤ上方に配置されて該ギヤの回転により跳ね上げられたオイルを受け入れるオイル収集容器と、前記収容ケース内における回転軸の軸端面に対向して配設されて該回転軸の軸端面に開口されたオイル通路内に潤滑オイルを案内する案内部材と、該案内部材と前記オイル収集容器とを連絡して該オイル収集容器が収集した潤滑オイルを該案内部材に導くオイル通路部材と、が備えられている潤滑オイル収集案内具において、
前記オイル通路部材は、一端及び他端の両方が開口された第1通路部材と、一端が閉塞され他端が開口された第2通路部材と、を有し、
前記第2通路部材の一端側側壁部に挿通孔が形成され、
前記第1通路部材の一端部が前記挿通孔に進退動可能に挿通されて該第1通路部材の一端開口が前記第2通路部材内に位置されていると共に、該挿通孔に対して該第1通路部材の一端部が遊嵌状態とされ、
前記第1,第2通路部材のいずれか一方の他端開口が、前記オイル収集容器内に連通され、
前記第1,第2通路部材の他方の他端開口が、前記案内部材に連通され、
前記オイル収集容器と前記案内部材とが、前記挿入孔に対する前記第1通路部材の進退動及び遊嵌関係に基づき、前記回転軸の軸線方向及び径方向に相対的に変位動可能とされている、
ことを特徴とする潤滑オイル収集案内具。
【請求項2】
請求項1において、
前記挿通孔が、前記第2通路部材の延び方向に長く延びる長孔とされ、
前記第1通路部材の一端部が円筒形状端部とされ、
前記円筒形状端部が、前記長孔に対して相対的に回動可能且つ該長孔の長軸方向に摺動可能とされている、
ことを特徴とする潤滑オイル収集案内具。
【請求項3】
請求項2において、
前記円筒形状端部の先端部外周に、抜け止め部として、該円筒形状端部の外径よりも拡径された拡径部が設けられ、
前記拡径部の外径が、前記長孔の短軸方向長さより長くされている、
ことを特徴とする潤滑オイル収集案内具。
【請求項4】
請求項3において、
前記拡径部と前記円筒形状端部の軸線方向内端との間の距離が、前記第2通路部材の一端側側壁部の肉厚よりも長くされている、
ことを特徴とする潤滑オイル収集案内具。
【請求項5】
請求項3において、
前記第2通路部材が、上方が開口する樋形状に形成され、
前記第2通路部材の側壁部は、前記長孔が存在する個所において、該長孔の下側部分よりも上側部分が薄くされて、該上側部分が可撓性を有している、
ことを特徴とする潤滑オイル収集案内具。
【請求項6】
請求項1において、
前記第1通路部材の一端部の先端部外周に抜け止め部が、前記挿通孔の周縁部に臨むように突設されている、
ことを特徴とする潤滑オイル収集案内具。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記第1通路部材の一端部端面に、該端面から張り出すようにして案内壁部が設けられ、
前記案内壁部は、前記第2通路部材内において、潤滑オイルが前記第1通路部材よりも該第2通路部材の一端側に流れることを抑制するように配置されている、
ことを特徴とする潤滑オイル収集案内具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記第1通路部材の他端開口が、前記オイル収集容器内に連通され、
前記第2通路部材の他端開口が、前記案内部材に連通されている、
ことを特徴とする潤滑オイル収集案内具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112482(P2012−112482A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263246(P2010−263246)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】