説明

潤滑剤、これを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】潤滑剤塗布手段を有する画像形成装置において、高温高湿環境下でも画像ボケを発生することなく、長期間安定して画像を出力できる潤滑剤を提供する。
【解決手段】像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段を有し、該潤滑剤が少なくとも潤滑性物質と一般式(1)等で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する。式中、R〜R、R及びRは、例えばアルキル基、又は下記式Y、Rはアルキレン基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤、これを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関し、詳しくは、潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤塗布機構を搭載し、優れた耐久性と高品質で長期にわたり安定して画像を出力できる電子写真方式を用いた画像形成装置(複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらの複合機等)及び画像形成装置用のプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、潜像担持体として用いられる感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を施すことにより画像形成が行われる。その際、感光体には、帯電工程において生じる放電生成物や転写されなかった未転写残留トナーが存在することがある。このため、感光体は転写工程後、クリーニング工程を実行され、放電生成物や残留トナーからなる残留物を除去されるようになっている。
【0003】
クリーニング工程に用いられるクリーニング方式としては、安価で機構が簡単でクリーニング性に優れたゴムブレードを用いる方式が一般によく知られている。しかし、ゴムブレードは感光体に押し当てて感光体表面の残留物を除去するため感光体表面とクリーニングブレード間の摩擦によるストレスが大きく、ゴムブレードの磨耗や特に有機感光体においては感光体表面層の磨耗が生じ、ゴムブレードおよび有機感光体の寿命を短くする。
【0004】
また、近年、高画質化の要求に対して画像形成に用いられるトナーは小粒径のものが多くなってきている。小粒径のトナーを用いた画像形成装置では、未転写残留トナーがクリーニングブレードをすり抜けていく割合が多くなり、特に、クリーニングブレードの寸法精度、組み付け精度が十分でなかったり、クリーニングブレードが部分的に震動した場合にトナーのすり抜けは激しくなってしまい高画質の画像形成を妨げていた。このため、有機感光体の寿命を延ばし長期にわたって高画質を保持するには、摩擦による部材の劣化を低減し、クリーニング性を向上させる必要がある。
【0005】
摩擦を低減する方法で一般的なものとしては、有機感光体表面に潤滑剤を供給し、供給された潤滑剤をクリーニングブレードやブラシ等によって均一に塗布して潤滑剤の皮膜を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
潤滑剤を用いる場合には、潤滑剤の塗布量が少なすぎると、有機感光体の磨耗、傷、ブレード劣化に対して充分な効果を発揮できず、過剰に塗布すると余剰な潤滑剤が有機感光体上に蓄積されていき、像流れが生じたり、余剰な潤滑剤が現像剤に混入してしまって現像剤の性能が落ちてしまう等の問題が起こるため、潤滑剤の塗布量を規定しておく必要があった。
【0006】
一方、クリーニング性向上のための方法には、潤滑剤を現像剤に用いられるトナーに外添し、画像形成時にトナーで現像する際に、潤滑剤を潜像担持体に供給する方法等が採用されている。この潤滑剤の供給により、潜像担持体とクリーニングブレード間の摩擦を低下させるとともに、残留トナーのクリーニング性を確保するようにした方法がある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献2に開示されているように、潤滑剤をトナーに外添した場合には、トナー画像が形成された部分でのみ潤滑剤が潜像担持体に塗布されることになる。
このため、例えば、見積書や企画書等、文字等の画像が有る箇所と無い箇所が一つの画像内ではっきり別れていたり、画像内で画像濃度差が大きいものを大量に出力するような場合には、トナー画像が形成されない部分では潤滑剤が供給されないままとなり、潜像担持体上で潤滑剤が塗布される部分が偏ってしまうことがある。この結果、潜像担持体が偏磨耗したり、潤滑剤が塗布されている部分と塗布されていない部分が境界を持って接していると、その境界でクリーニングブレードの振動が生じやすく、また、クリーニング不良や耳障りな摩擦音が生じやすいという問題が起こる。
【0007】
また、画像濃度が低いと、現像剤に用いられるトナーに外添された潤滑剤が潜像担持体に載る量も減るので潤滑剤の塗布量が少なすぎることとなり、このため、潜像担持体の磨耗、傷、ブレード劣化に対して充分な効果を発揮できなくなる。画像濃度が高すぎたり、外添する潤滑剤のトナーに対する濃度を高くしすぎると、トナーに外添された潤滑剤が潜像担持体に載る量も増えるので、潤滑剤が過剰に塗布され潜像担持体に余剰な潤滑剤が蓄積されていき画像形成条件によっては画像部端縁部の画像流れ等によるボケが生じたり、潤滑剤が帯電ローラに移って帯電ローラの抵抗にバラツキが生じ帯電不良等の問題が起こるため、潤滑剤の塗布量を最適な量に保つ必要があった。
【0008】
特許文献2に開示されているようなトナーに潤滑剤を外添したものを用いる方法として、画像形成開始前にトナーが潜像担持体全面にトナーによる現像が行えるベタ画像を形成し、潜像担持体全面に潤滑剤が供給されるようにした方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献3に開示された方法を用いることで潜像担持体全面への潤滑剤供給が可能となるが、現像剤を大量に使用するため、廃トナーが大量に出てしまい環境負荷が非常に大きくなってしまう。また、ベタ画像の出力は画像形成開始前に限らず、偏磨耗防止のために、経時においても定期的に行われる場合がある。このように、従来では、偏磨耗の防止をするために廃トナーを大量に排出する結果となっていた。
【0009】
ところで、金属石鹸のような潤滑剤は、潜像担持体表面を覆うことで、帯電手段による放電エネルギーから潜像担持体表面を保護する機能も有している。しかしながら、潜像担持体表面を保護するということは、潤滑剤が放電エネルギーを吸収することになり、潤滑剤の皮膜は劣化する。そこで、潤滑剤の塗布量を規定して、副作用を抑えつつ、保護皮膜としての潤滑剤塗布を達成する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、劣化した潤滑剤が潜像担持体表面に存在した状態で、高温高湿環境下に放置すると、特に帯電器直下で著しい画像ボケが発生することがある。特に、ラジカル重合性化合物が架橋した構造の架橋表面層を有する潜像担持体において発生しやすいことがわかった。この理由は明確には分かっていないが、劣化した潤滑剤と空気中の水分、さらに帯電器から発生する放電生成物が結合して表面が低抵抗化し、静電潜像が流れてしまうと考えられる。また、ラジカル重合性化合物が架橋した架橋表面層で顕著に発生する理由としては、劣化した潤滑剤が表面から除去されにくく、新しい潤滑剤と置換しにくいためではないかと考えられる。すなわち、潤滑剤の塗布量を増加させたとしても、潜像担持体表面に付着している劣化した潤滑剤のさらに上に塗布されるため、劣化した潤滑剤の置換には効果がうすく、実際、画像ボケはほとんど改善しない。逆に、潤滑剤の塗布量を減らすことで多少は除去しやすくなるが、潜像担持体表面の摩耗も大きくなってしまう。
【0010】
ここで、潤滑剤の劣化を防止する手段として、潤滑剤中にヒンダードフェノールやヒンダードアミンといった酸化防止剤を含有させる方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。これによれば、潤滑剤の経年変質を抑制する効果は発揮されるものの、高温高湿環境下での画像ボケに対してはあまり有効ではない。これは、酸化防止剤が放電エネルギーによって容易に反応してしまい、酸化防止剤自体が劣化(酸化や分解)することで、放電生成物と容易に結合してしまい、画像ボケを誘発してしまっている可能性が考えられる。また、これらの酸化防止剤は経時でも徐々に酸化されてしまい、そのような劣化した酸化防止剤は、感光体表面に塗布されても、放電による劣化を抑制する効果はほとんど発揮できなくなっていると考えられる。さらに、このような状態では、放電によって劣化した潤滑剤と経時によって劣化した酸化防止剤のいずれもが画像ボケの要因となってしまうおそれがある。
【0011】
以上のように、潤滑剤塗布手段を有する画像形成装置において、繰返し画像形成を行うと、高温高湿環境下で画像ボケを発生してしまう現象が見られ、改善が望まれていた。特に、ラジカル重合性化合物が架橋した構造の架橋表面層を有する高耐久な潜像担持体を用いると、より発生しやすく、改善が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、潤滑剤塗布手段を有する画像形成装置において、優れた耐久性と高品質で、しかも高温高湿環境下、画像ボケを発生することなく、長期間安定して画像を出力できる潤滑剤、それを用いる画像形成装置及び画像形成装置用のプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の発明によって前記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
〔1〕:本発明の潤滑剤は、静電潜像を担持するための潜像担持体と、前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成するための現像手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写体に転写させる転写手段と、前記潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段とを有する画像形成装置に用いられる潤滑剤であって、少なくとも、潤滑性物質と下記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。
【化1】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。Rは、置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基を表し、同一でも異なっていてもよい。R及びRは、互いに結合し、窒素原子を含む置換もしくは無置換の複素環基を形成してもよい。但し、R及びRのいずれか1つは置換もしくは無置換のアルキル基である。)
【化2】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R、R及びRは、前記一般式(1)と同様である。Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化3】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R、R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
【化4】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
【化5】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
〔2〕:前記〔1〕に記載の潤滑剤において、前記潤滑性物質が、少なくとも脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする。
〔3〕:前記〔2〕に記載の潤滑剤において、前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸及びオレイン酸の群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸と、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄及びリチウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属とから成ることを特徴とする。
〔4〕:前記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の潤滑剤において、前記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物の含有量が、前記潤滑剤中0.1〜40質量%であることを特徴とする。
【0014】
〔5〕:本発明の画像形成装置は、静電潜像を担持するための潜像担持体と、前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成するための現像手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写体に転写させる転写手段と、前記潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段とを有する画像形成装置において、前記潤滑剤付与手段が請求項1乃至4のいずれかに記載の潤滑剤を搭載し、該潤滑剤を前記潜像担持体の表面に付与する構成としたことを特徴とする。
〔6〕:前記〔5〕に記載の画像形成装置において、前記潤滑剤付与手段に搭載される前記潤滑剤が、固形状態であることを特徴とする。
〔7〕:前記〔5〕又は〔6〕に記載の画像形成装置において、前記潜像担持体は少なくとも導電性支持体上に感光層を有し、該潜像担持体の表面層が、少なくとも電荷輸送性構造を有する重合性化合物を用いて硬化・形成された架橋表面層から成ることを特徴とする。
〔8〕:前記〔7〕に記載の画像形成装置において、前記架橋表面層が、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーとを用いて硬化・形成されて成ることを特徴とする。
〔9〕:前記〔8〕に記載の画像形成装置において、前記電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーの重合性官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする。
〔10〕:前記〔8〕又は〔9〕に記載の画像形成装置において、前記電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーの重合性官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が、250以下であることを特徴とする。
〔11〕:前記〔8〕乃至〔10〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の重合性官能基が、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする。
〔12〕:前記〔8〕乃至〔11〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の電荷輸送構造が、トリアリールアミン構造を有することを特徴とする。
【0015】
〔13〕:前記〔12〕に記載の画像形成装置において、前記トリアリールアミン構造を有する1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の少なくとも一種が、下記一般式(I)又は(II)で表される化合物であることを特徴とする。
【化6】

[式(I)及び(II))中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR11(R11は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR1213(R12及びR13は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)を表す。Ar、Arは、置換基を有してもよいアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar、Arは、置換基を有してもよいアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。X10は、単結合、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルキレンエーテル基又はアルキレンオキシカルボニル基を表す。m及びnは0〜3の整数を表す。]
【0016】
〔14〕:前記〔12〕又は〔13〕に記載の画像形成装置において、前記トリアリールアミン構造を有する1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の少なくとも一種が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする。
【化7】

[式(III)中、Raは水素原子又はメチル基を表す。Rb及びRcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。o、p及びqは、それぞれ0又は1であり、s及びtは0〜3の整数を表す。Zaは、単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは下記式(a)、(b)又は(c)で表される二価基を表す。]
【化8】

【0017】
〔15〕:前記〔7〕乃至〔14〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記表面層が、フィラー微粒子を含有することを特徴とする。
〔16〕:前記〔15〕に記載の画像形成装置において、前記フィラー微粒子が、無機フィラーであることを特徴とする。
〔17〕:前記〔16〕に記載の画像形成装置において、前記無機フィラーが、金属酸化物であることを特徴とする。
〔18〕:前記〔17〕に記載の画像形成装置において、前記金属酸化物が、少なくとも、酸化ケイ素、酸化チタン及び酸化アルミニウムから選ばれる一種の酸化物を含有することを特徴とする。
〔19〕:前記〔5〕乃至〔18〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記潜像担持体、帯電手段、潜像形成手段、現像手段、転写手段及び潤滑剤付与手段を有する画像形成装置が、複数色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成する構成を有することを特徴とする。
〔20〕:前記〔19〕に記載の画像形成装置が、少なくとも潜像担持体、帯電手段、現像手段及び転写手段を有する画像形成要素を複数備えたタンデム型画像形成装置であることを特徴とする。
〔21〕:前記〔19〕又は〔20〕に記載の画像形成装置において、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像が一次転写される中間転写体と、該中間転写体上に担持されたトナー画像を記録媒体に二次転写する転写手段とを備えてなり、複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録媒体上に一括で二次転写する構成を有することを特徴とする。
〔22〕:本発明のプロセスカートリッジは、潜像担持体、帯電手段及び現像手段の少なくとも1つと、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の潤滑剤を潜像担持体の表面に付与する潤滑剤供給手段とを組み合わせて一体に支持し、前記〔5〕乃至〔21〕のいずれかに記載の画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の潤滑剤を潤滑剤付与手段に搭載した画像形成装置を用いることで、高温高湿環境下においても画像ボケを発生することなく、潜像担持体の耐久性を著しく向上させることができ、長期間にわたって安定した高画質な画像を出力することができる。また、本発明の潤滑剤を搭載した潤滑剤付与手段と、潜像担持体、帯電手段及び現像手段の少なくとも1つとを一体に支持して画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジとすれば、前記良好な諸特性を維持しつつ、保存、搬送等を容易とし、短時間の交換を可能にする等、取扱性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の画像形成装置における潜像担持体の層構成例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置における潜像担持体の他の層構成例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置における潜像担持体の他の層構成例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置における潜像担持体の他の層構成例を示す模式断面図である。
【図5】水酸基を有する電荷輸送性物質の合成例として挙げた電荷輸送性ポリオール(D3−2)のIR測定データである。
【図6】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の画像形成装置に用いられる潤滑剤供給手段の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置の他の一例であるフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。
【図10】本発明の画像形成装置の他の一例であるタンデム型カラー画像形成装置を示す概略説明図である。
【図11】図10に示す画像形成装置の部分拡大概略説明図である。
【図12】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における実施の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0021】
本発明の潤滑剤は、静電潜像を担持するための潜像担持体と、前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成するための現像手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写体に転写させる転写手段と、前記潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段とを有する画像形成装置に用いられる潤滑剤であって、少なくとも、潤滑性物質と下記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。
【0022】
【化9】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。Rは、置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基を表し、同一でも異なっていてもよい。R及びRは、互いに結合し、窒素原子を含む置換もしくは無置換の複素環基を形成してもよい。但し、R及びRのいずれか1つは置換もしくは無置換のアルキル基である。)
【化10】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R、R及びRは、前記一般式(1)と同様である。Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化11】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R、R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
【化12】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
【化13】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
【0023】
本発明の潤滑剤は、前記潤滑剤付与手段に搭載されて前記潜像担持体の表面に付与される。すなわち、潤滑剤供給工程において、潤滑剤供給手段(潤滑剤付与手段)を用いて前記潜像担持体上に潤滑剤を供給、塗布することによって、クリーニングブレードに対する潜像担持体表面の摩擦係数を長期間にわたって低減し、優れた耐久性(耐摩耗性や耐キズ性等)を維持しつつ中抜け等の異常画像の発生や、特に高温高湿環境下における画像ボケの発生を抑制し、高品質の画像を安定して提供することができる。
さらに、本発明の潤滑剤が潜像担持体表面に塗布されることで、トナーの離型性も向上し、クリーニングが困難な球形トナーのクリーニングを容易にしたり、クリーニングブレードと潜像担持体が摺擦するときに発生しやすいブレード鳴きやブレードエッジの摩耗等の不具合を解消することができる。
【0024】
前記潤滑剤は、必ずしも固形である必要はなく、液体や粉体、半練り状でも、潜像担持体表面に塗布することができ、電子写真特性を満たすものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
潤滑剤に含有される潤滑性材料(潤滑性物質)としては、例えば、脂肪酸金属塩、カルナウバワックスのような天然ワックス、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系の樹脂、メラミンシアヌレート、窒化ホウ素等を用いることができる。但し、供給安定性や取り扱いの容易さで、固形であるものが好ましい。
ここで、潤滑性物質として少なくとも脂肪酸金属塩を含有することが好ましい。
【0025】
前記脂肪酸金属塩のうち、特にステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸及びオレイン酸の群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸と、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄及びリチウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属とから成る脂肪酸金属塩は、直鎖状の炭化水素の構造を持つため、層間のすべりが起こりやすく、良好な潤滑性を発揮する。
このような直鎖状の脂肪酸を前記金属と組み合わせることにより、良好な耐候性を持たせることができる。これらの脂肪酸金属塩は、通常70〜150℃の高温で溶解し、任意の金型に流し込んで冷却し、固化させることで、固形潤滑剤とすることができる。そのため、本発明のように、前記アミン化合物を脂肪族金属塩に含有させるためには、あらかじめ脂肪酸金属塩とアミン化合物とを混合した状態で高温にし、溶解または分散させてから冷却、固化する。このような操作により、アミン化合物と脂肪族金属塩との混合物を容易に得ることができる。このように脂肪酸金属塩は、潤滑性が高く、耐候性に優れ、アミン化合物との混合物の取り扱いも容易なため、本発明において、潤滑性材料として好ましく用いられる。
【0026】
次に、潤滑剤中に含まれる前記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物について説明する。
前記一般式の説明において、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基及びイコシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレン等の芳香族炭化水素環の1〜6価の芳香族炭化水素基、並びにピリジン、キノリン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサジアゾール及びカルバゾール等の芳香族複素環の1価〜6価の芳香族複素環基等が挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基及びヘキサメチレン基等が挙げられる。
また、これらの基の置換基としては、前記アルキル基の具体例で挙げたもの、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のハロゲン原子、及び芳香環基等が挙げられる。
さらに、RとRとが互いに結合した、窒素原子を含む複素環基の具体例としては、ピロリジニル基、ピペリジニル基及びピロリニル基等が挙げられる。RとRとが共同で窒素原子を含む複素環基としては、N−メチルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール、インドール、キノリン等の芳香族複素環基等を挙げることができる。
以下に一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物の好ましい例を挙げる。但し、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0027】
【表1−1】

【0028】
【表1−2】

【0029】
【表1−3】

【0030】
【表1−4】

【0031】
【表2−1】

【0032】
【表2−2】

【0033】
【表2−3】

【0034】
【表2−4】

【0035】
【表3−1】

【0036】
【表3−2】

【0037】
【表3−3】

【0038】
【表3−4】

【0039】
【表3−5】

【0040】
【表4−1】

【0041】
【表4−2】

【0042】
【表4−3】

【0043】
【表5−1】

【0044】
【表5−2】

【0045】
【表5−3】

【0046】
【表5−4】

【0047】
前記潤滑剤中に含まれる前記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物の含有量は、0.1〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。前記アミン化合物の含有量が0.1質量%より少ないと脂肪酸金属塩の分解を抑制する効果が小さく、画像ボケの発生を抑制できない場合がある。また、40質量%より多いと潤滑剤の成分が不足してしまい、潜像担持体表面の潤滑性が不十分となってクリーニング不良を引き起こしたり、転写時の中抜けが起こりやすく、虫食い画像が発生してしまう場合がある。また、潤滑剤としての混合固形物がもろくなり、潤滑剤の消費量が増大してしまうことがある。
【0048】
本発明の画像形成装置は、静電潜像を担持するための潜像担持体と、前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成するための現像手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写体に転写させる転写手段と、前記潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段とを有する画像形成装置において、前記潤滑剤付与手段が前述の潤滑剤を搭載し、該潤滑剤を潜像担持体の表面に付与する構成としたことを特徴とするものである。
以下、本発明の画像形成装置について詳細に説明する。
【0049】
[潜像担持体]
本発明の画像形成装置には、公知の潜像担持体が用いられるが、(1)光吸収波長域の広さ、及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等の観点から、有機感光体(OPC)が好ましく用いられ、中でも、潜像担持体の表面層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応により硬化・形成された架橋表面層からなるものが、高い耐久性と良好な電気特性を有するため、好ましく用いられる。
【0050】
潜像担持体は、第一の形態では、支持体上に単層型感光層を設けてなり、さらに必要に応じて、保護層、中間層、その他の層を有してなる。
また、前記潜像担持体は、第二の形態では、支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層を少なくともこの順に有する積層型感光層を設けてなり、さらに必要に応じて、保護層、中間層、その他の層を有してなる。なお、前記第二の形態では、電荷発生層及び電荷輸送層は逆に積層しても構わない。
前記単層型感光層では、表面層としては感光層又はこの感光層上に形成された保護層が該当する。前記積層型感光層では、表面層としては、電荷輸送層又は該電荷輸送層上に形成された保護層が該当する。
【0051】
図面を用いて、潜像担持体について詳細に説明する。
図1は、本発明で好ましく用いられる潜像担持体の層構成例を示す模式断面図である。図1に示す潜像担持体は、支持体101上に感光層102を設けた構成のものである。
また、図2、図3及び図4は、各々本発明で好ましく用いられる潜像担持体の他の層構成例を示す模式断面図である。図2に示す潜像担持体は、感光層が、電荷発生層(CGL)103と電荷輸送層(CTL)104とにより構成される機能分離型タイプのものである。図3に示す潜像担持体は、支持体101と電荷発生層(CGL)103との間に下引き層105を入れ、下引き層105上に機能分離型タイプの感光層を積層したタイプのものである。図4に示す潜像担持体は、図3に示す潜像担持体において、電荷輸送層104の上に保護層106を積層したタイプのものである。
なお、本発明で好ましく用いられる潜像担持体は、支持体101上に感光層を少なくとも有していれば、前記のその他の層、及び感光層のタイプは任意に組み合わされていても構わないが、潜像担持体の表面層が架橋樹脂からなるものが好ましく、特に、少なくとも電荷輸送性構造を有する重合性化合物を用いて硬化・形成された架橋表面層からなるものが好ましい。
【0052】
[保護層]
次に、保護層について、さらに詳しく説明する。
前記潜像担持体においては、その表面を保護する目的で、架橋性樹脂を用いたり、無機微粒子や潤滑性微粒子を含有させた保護層を設けると、高い耐摩耗性が達成されるので好ましい。架橋性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂等が挙げられる。特に、電荷輸送性構造を有するモノマーを含んだ組成物を用いて硬化・形成された架橋表面層は、高い耐摩耗性と良好な静電特性が得られやすく、好ましく用いられる。
例えば、ウレタン樹脂を用いる場合、水酸基を有する電荷輸送性構造を有するモノマーと、イソシアネート化合物とを加熱硬化させることで、好適な架橋表面層が形成される。
下記表6〜表11にウレタン樹脂やシリコーン樹脂と加熱硬化して架橋表面層を形成することができる水酸基含有電荷輸送物質の具体例を示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0053】
【表6】

【0054】
【表7】

【0055】
【表8】

【0056】
【表9】

【0057】
【表10】

【0058】
【表11】

【0059】
本発明で好適に用いられる電荷輸送性構造を有する重合性化合物の例として挙げられる前記水酸基を有する電荷輸送性物質は、例えば、特許第3540056号公報等に開示された合成法等によって得ることができる。
水酸基を有する電荷輸送性物質として、表6の例示化合物D1−3及び表10の例示化合物D3−2を例に挙げてその合成例を示す。
[電荷輸送性ポリオールの合成例]
(1)4−メトキシベンジルホスホン酸ジエチルの合成
4−メトキシベンジルクロリドと亜リン酸トリエチルを150℃で5時間反応させた。その後、減圧蒸留により、過剰な亜リン酸トリエチルと副生物のエチルクロリドを留去し、4−メトキシベンジルホスホン酸ジエチルを得た。
(2)4−メトキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンの合成
等モルの4−メトキシベンジルホスホン酸ジエチルと4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンズアルデヒドをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、水冷下撹拌しながらtert−ブトキシカリウムを少しずつ添加した。室温で5時間撹拌した後、水を添加し、酸性にして析出した目的物の粗収物を得た。さらに、シリカゲルによるカラムクロマトグラフにより精製して目的物の4−メトキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンを得た。
【0060】
(3)4−ヒドロキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンの合成
得られた4−メトキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンと二倍当量のナトリウムエタンチオラートとをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、130℃で5時間反応させた。その後、冷却して水に開け、塩酸で中和し、酢酸エチルで目的物を抽出した。抽出液を水洗、乾燥、溶媒留去して粗収物を得た。さらに、シリカゲルによるカラムクロマトグラフにより精製して、下記構造式(D1−3)[表6の例示化合物D1−3]で表される目的物の4−ヒドロキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンを得た。
【0061】
【化14】

【0062】
(4)1、2−ジヒドロキシ−3−[4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン−4−イルオキシ]プロパンの合成
攪拌装置、温度計、冷却管及び滴下漏斗を備えた反応容器に、4−ヒドロキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン11.75g、グリシジルメタクリレート4.35g、トルエン8mlを入れ、90℃に昇温した後、トリエチルアミン0.16gを加え、95℃で8時間加熱、撹拌した。その後、トルエン16ml、10質量%水酸化ナトリウム水溶液20mlを加え、さらに95℃で8時間加熱、撹拌した。
反応終了後、酢酸エチルで希釈し、酸洗浄後水洗した後に溶媒を留去して粗収物19gを得た。さらに、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフ(溶媒:酢酸エチル)により下記構造式(D3−2)[表9の例示化合物D3−2]で表される目的物1、2−ジヒドロキシ−3−[4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン−4−イルオキシ]プロパン(OH当量:232.80)を得た(収量9.85g、黄色結晶、融点127〜128.7℃)。
得られた目的物のIR測定データを図5に示す。
【0063】
【化15】

【0064】
架橋性樹脂からなる保護層として、ラジカル重合性モノマーと電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物を用いて、3次元の網目構造を形成させたものは、架橋度が非常に高い高硬度な表面層が得られ、より高い耐摩耗性が達成される。
架橋表面層が、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、3官能以上のラジカル重合性モノマーを少なくとも含有する場合、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、前記3官能以上のラジカル重合性モノマー硬化時に架橋結合中に取り込まれる。
これに対し、官能基を有さない低分子電荷輸送物質を架橋表面層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、架橋表面層の機械的強度も低下する場合がある。
また、2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は、複数の結合で架橋構造中に固定されるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化樹脂中に歪みが発生し架橋表面層の内部応力が高くなり、キャリア付着等でクラックや傷の発生が頻発する場合がある。
【0065】
さらに、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用いた潜像担持体は、良好な電気的特性を有し、このため長期間にわたり高画質化が実現される。これは1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、架橋結合間にペンダント状に固定化したことに起因する。
これに対して、前述の官能基を有しない電荷輸送物質は析出、白濁現象が起こりやすいため、感度の低下、残留電位の上昇等繰り返し使用における劣化が著しくなる場合が多い。2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすい。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字の細り等の画像として現れることが多く、あまり好ましくない。
【0066】
次に、ラジカル重合性モノマーと電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物を用いた架橋表面層の構成材料について説明する。
潜像担持体架橋表面層に好ましく用いられる電荷輸送性を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、正孔輸送性構造(例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等)及び電子輸送構造(例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等)を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。
これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基及び1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
【0067】
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(d)で表される官能基が挙げられる。

CH=CH−X− ・・・(d)

[式(d)中、Xは、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R)−基〔Rは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。〕、または−S−基を表す。]
【0068】
前記一般式(d)におけるアリーレン基としては、置換基を有していてもよいフェニレン基及びナフチレン基等が挙げられ、また、アルキル基としては、メチル基及びエチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基及びフェネチル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
前記一般式(d)で表される官能基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基及びビニルチオエーテル基等が挙げられる。
【0069】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(e)で表される官能基が挙げられる。

CH=C(Y)−X− ・・・(e)

[式(e)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR基〔Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は−CONR(R及びRは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)〕を表す。Xは前記式(d)のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y及びXの少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基又は芳香族環である。]
【0070】
前記一般式(e)におけるアリール基としてはフェニル基及びナフチル基等が挙げられ、アルコキシ基としてはメトキシ基及びエトキシ基等が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル基及びナフチルメチル基及びフェネチル基等が挙げられ、アルキル基としてはメチル基及びエチル基等が挙げられる。
前記一般式(e)で表される官能基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基及びメタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
【0071】
なお、これらX、X及びYについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基及びエチル基等のアルキル基、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0072】
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が有用である。3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
【0073】
電荷輸送性構造を有さない3官能以上の具体的なラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において好適に用いられる前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート及び2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート等が挙げられる。これらは、単独でも又は二種類以上を併用しても差し支えない。
なお、前記において、EO変性はエチレンオキシ変性を指し、PO変性はプロピレンオキシ変性を指す。
【0074】
また、本発明に好適に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、このモノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下であることが望ましい。
この割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、前記例示したモノマー等中、HPA、EO及びPO等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくない。
また、架橋表面層に用いられる電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80質量%が好ましく、より好ましくは35〜65質量%である。モノマー成分が20質量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80質量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると35〜65質量%の範囲がより好ましい。
【0075】
本発明に好適に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、正孔輸送性構造(例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等)及び電子輸送構造(例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等)を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が有用である。
また、電荷輸送性構造としては、トリアリールアミン構造を有するもの効果が高く、さらに、下記一般式(I)又は(II)で表されるトリアリールアミン構造を有する1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
【0076】
【化16】

【0077】
[式(I)及び(II)中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR11(R11は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR1213(R12及びR13は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)を表す。Ar、Arは、置換基を有してもよいアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar、Arは、置換基を有してもよいアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。X10は、単結合、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルキレンエーテル基又はアルキレンオキシカルボニル基を表す。m及びnは0〜3の整数を表す。]
【0078】
以下に、前記一般式(I)又は(II)における一般記号で示す各基の具体例を以下に示す。
前記一般式(I)又は(II)において、R10で示されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基及びナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等が挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基及びエチル基等のアルキル基、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基及びナフチル基等のアリール基、ベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。
10で示される置換基のうち、好ましいものは水素原子及びメチル基である。
【0079】
Ar、Arは置換基を有してもよいアリール基であり、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
前記縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基及びナフタセニル基等が挙げられる。
前記非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
前記複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
【0080】
また、前記Ar、Arで表わされるアリール基は、例えば、以下に示すような置換基を有してもよい。
〔1〕ハロゲン原子、シアノ基及びニトロ基。
〔2〕アルキル基。好ましくはC1〜C12、より好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基及び4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
〔3〕アルコキシ基(−OR14)。R14は、〔2〕で示されたアルキル基と同様である。
具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基及びトリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
〔4〕アリールオキシ基。アルールオキシ基のアリール基としてはフェニル基及びナフチル基等が挙げられる。これらの基は、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有していてもよい。
具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基及び4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
〔5〕アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基及びp−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
〔6〕下記一般式(f)で表される基。
【0081】
【化17】

【0082】
[式(f)中、R15及びR16は各々独立に水素原子、前記〔2〕で示したアルキル基、又はアリール基を表す。R15及び16は共同で環を形成してもよい。]
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらの基は、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピロリジノ基等が挙げられる。
〔7〕アルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基。具体的には、メチレンジオキシ基及びメチレンジチオ基等が挙げられる。
〔8〕置換基を有してもよいスチリル基、置換基を有してもよいβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基及びジトリルアミノフェニル基。
【0083】
前記Ar、Arで表されるアリーレン基としては、前記Ar、Arで表されるアリール基から誘導される2価基が挙げられる。
前記X10は、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子及びビニレン基を表す。
前記置換基を有してもよいアルキレン基としては、好ましくはC1〜C12、より好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられ、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。
具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、イソプロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基及び4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
【0084】
前記置換基を有してもよいシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基が挙げられ、これらの環状アルキレン基は、置換基として、フッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していてもよい。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基及び3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
前記置換基を有してもよいアルキレンエーテル基としては、−CHCHO−基、−CHCHCHO−基、−(OCHCH−O−基、又は−(OCHCHCH−O−基等が挙げられる。但し、前記式中のh、iはそれぞれ1〜4の整数を表す。
また、アルキレンエーテル基のアルキレン基は、ヒドロキシル基、メチル基及びエチル基等の置換基を有してもよい。
前記X10におけるビニレン基としては、下記一般式(g)又は(h)で示される基等が挙げられる。
【0085】
【化18】

[式(g)及び(h)中、R17は水素原子、アルキル基(前記〔2〕で定義されるアルキル基と同じ)又はアリール基(前記Ar、Arで表されるアリール基と同じ)を表し、aは1又は2、bは1〜3の整数を表す。]
【0086】
一般式式(I)及び(II)におけるZは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基及びアルキレンオキシカルボニル基を表す。
前記置換基を有してもよいアルキレン基としては、一般式(I)におけるX10のアルキレン基と同様のものが挙げられる。
前記置換基を有してもよいアルキレンエーテル基としては、前記X10のアルキレンエーテル基と同様のものが挙げられる。
前記アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基等が挙げられる。
また、本発明に係る1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物としてさらに好ましくは、下記一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
【化19】

[式(III)中、Raは水素原子又はメチル基を表す。Rb及びRcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。o、p及びqは、それぞれ0又は1であり、s及びtは0〜3の整数を表す。Zaは、単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは下記式(a)、(b)又は(c)で表される二価基を表す。]
【0088】
【化20】

【0089】
前記一般式(III)で表される化合物としては、Rb及びRcがメチル基又はエチル基である化合物が好ましい。
本発明に好適に用いられる前述の架橋表面層は、クラック等の発生がなく且つ電気特性に優れる。その理由は、本発明で用いる前記一般式(I)、(II)及び(III)、特に一般式(III)で表される1官能性の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物を用いた場合、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合により架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある。)に存在する。
すなわち、1官能性の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物が主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下している。このため、立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であることから、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
【0090】
また、本発明に好適に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要であり、この成分は、架橋表面層100質量部に対して20〜80質量部、好ましくは35〜65質量部である。この成分が20質量部未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇等の電気特性の劣化が現れる。また、80質量部を超えると電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの含有量が低下して架橋結合密度の低下を招き、高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると35〜65質量部の範囲が好ましい。
【0091】
本発明おいては、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを用いて硬化・形成された架橋表面層が好適に用いられるが、前記ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性化合物以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減等の機能付与の目的で、他の1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー及びオリゴマーとしては、公知のものが使用できる。具体例を下記に例示する。
【0092】
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート及びスチレンモノマー等が挙げられる。
【0093】
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート及びネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0094】
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレート等のフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位が20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー及びアクリレート及びメタクリレート等が挙げられる。
【0095】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー及びポリエステルアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対して50質量部以下、好ましくは30質量部以下に制限される。
【0096】
また、本発明において、架橋表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化させて形成したものが好適に用いられるが、この硬化反応(架橋反応)を効率よく進行させるため、必要に応じて重合開始剤(熱重合開始剤及び光重合開始剤)を使用してもよい。
【0097】
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0098】
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系光重合開始剤又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン及び1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン及び2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0099】
また、光重合促進効果を有する化合物を単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもできる。光重合促進効果を有する化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル及び4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0100】
前記重合開始剤は一種で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性を有する化合物とモノマーの総含有量100質量部に対し、0.5〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
【0101】
さらに、本発明に係る表面層(架橋表面層)は、塗工液を用いて形成することができる。このような塗工液の調製には、電荷輸送性構造を有する重合性化合物(例えば、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー)の他に、必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質等の添加剤を含有させることができる。
これらの添加剤としては公知のものが使用可能である。可塑剤としてはジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものを使用することができる。可塑剤の使用量は、塗工液の総固形分100質量部に対し20質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル及びメチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーを使用することができる。レベリング剤の使用量は塗工液の総固形分100質量部に対し3質量部以下が適当である。
【0102】
前述のように、本発明で好適に用いられる架橋表面層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを含有する塗工液を用いて塗布された塗膜(表面層)を、硬化することにより形成されるものが好適に使用される。かかる塗工液は、ラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であり、また、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ及びセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒等が挙げられる。
これらの溶媒は単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート及びリングコート法等を用いて行うことができる。
【0103】
本発明においては、かかる塗工液を塗布した後、外部から光エネルギーを与えて硬化させ、架橋表面層を形成する方法が好適に用いられる。光のエネルギーとしては主に紫外光(UV光)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が使用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。また、ラジカル重合による架橋反応は温度によってその反応性が大きく影響を受け、光照射時の塗膜の表面温度は20〜170℃に維持することが好ましい。塗膜の表面温度制御手段は、前述の温度範囲を維持できれば何れの方法でもよいが、熱媒体を用いて温度を制御する方法が好ましい。
【0104】
架橋表面層形成材料を用いた場合について、潜像担持体の形成例について例示する。
例えば、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとして3個のアクリロイルオキシ基を有するアクリレートモノマーを用い、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として1個のアクリロイルオキシ基を有するトリアリールアミン化合物を用いる場合、これらの使用割合を質量比で7:3〜3:7とし、また、重合開始剤をこれらアクリレート化合物全量100質量部に対し3〜20質量部添加し、さらに溶媒を加えて塗工液を調製する。
架橋表面層の下層となる電荷輸送層において、例えば、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナーを使用し、バインダー樹脂としてポリカーボネートを使用し、架橋表面層をスプレー塗工により形成する場合、前記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン及び酢酸エチル等が好ましい。溶媒の使用割合は、アクリレート化合物全量に対し3〜10倍量である。硬化により形成された表面架橋層は、有機溶媒に対して、不溶であることが好ましい。硬化が充分でない膜は、有機溶媒に対して、可溶であり、且つ架橋密度が低いため、機械的耐久性も低くなる。
【0105】
例えば、アルミニウム製シリンダー等の支持体上に、下引き層、電荷発生層及び前記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、前記調製した塗工液をスプレー等により塗布、指触乾燥を経て、光照射して硬化させる。
UV照射の場合、メタルハライドランプ等を用いるが、照度は50〜1000mW/cmが好ましい。例えば、700mW/cmのUVを照射する場合、硬化に際して、例えばドラムを回転して全ての面を均一に2分間程度照射する。このとき熱媒体等を用いて、表面温度が高くなり過ぎないように制御する。硬化終了後は、残留溶媒低減のため100〜150℃で10分〜30分間加熱して、本発明に係る潜像担持体を得ることができる。
【0106】
また、硬化反応を促進するために、加熱時やUV照射時の雰囲気の酸素濃度を著しく低くすることが好ましい。また、このときUV照射時には、回転しつつUV照射を受けるが、UV光が当たる部分だけでなく、UVが当たらない部分も含めて、周りの雰囲気の酸素濃度を下げることがより好ましい。これによりラジカル重合反応時の酸素阻害を著しく低減できるため、より架橋密度が高い表面層を得ることができる。
また、スプレー塗工により形成する場合、塗工設備内も窒素で満たして酸素濃度を下げた雰囲気下で塗工したり、指触乾燥を行うことも有効な手段となる。
【0107】
本発明の画像形成装置における潜像担持体の架橋表面層の厚みは、1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは2〜20μmであり、さらに好ましくは4〜15μmである。ここで、架橋表面層膜厚が1μmより薄いと、キャリア付着等が起こった場合の潜像担持体表面へのめりこみ量に対して膜厚が小さすぎるため、十分な耐久性を確保できないことが多い。一方、架橋表面層膜厚が30μmよりも厚いと、残留電位の上昇等の不具合を発生させてしまう場合がある。従って、摩耗や傷に対する余裕度の確保と残留電位の発生が少なくなるような好適な膜厚で架橋表面層を形成する必要がある。
【0108】
また、表面層中にフィラー微粒子を含有させることが好ましい。表面層は、保護層としての役割を担う。すなわち、表面層中に、フィラー微粒子を分散させることにより、耐摩耗性を著しく向上し、潜像担持体の長寿命化が達成される。さらに、フィラー微粒子によって表面に微細な凹凸が形成され、特にステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウムのような脂肪酸金属塩からなる潤滑剤の塗布性が高くなり、クリーニング性や転写性が向上する。
【0109】
フィラー微粒子としては、以下のようなものが使用できる。
有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコ−ン樹脂粉末及びa−カ−ボン粉末等が挙げられる。
無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム及びインジウム等の金属粉末、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン及び酸化ビスマス等の金属酸化物、チタン酸カリウム等の無機材料が挙げられる。
フィラーの硬度の点からは、前記の中でも無機材料を用いることが有利である。特に金属酸化物が潜像担持体の静電特性への副作用が小さく良好に用いられ、さらには、酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化チタンが有効に使用できる。また、コロイダルシリカやコロイダルアルミナ等の微粒子も有効に使用できる。
【0110】
フィラー微粒子の平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが表面層の光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こし、0.5μmを超える場合には、塗工液(分散液)中においてフィラーの沈降性が促進されたり、画像形成装置中での潜像担持体表面へのトナーのフィルミングが発生したりするおそれがある。
【0111】
表面層中のフィラー材料濃度は、高いほど耐摩耗性が高くなるので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、保護層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分100質量部に対して、5〜50質量部程度、好ましくは5〜30質量部である。
【0112】
また、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位上昇のような静電特性への悪影響を引き起こすだけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展するおそれがある。
【0113】
表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
表面処理剤としては、例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤及び高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al、TiO、ZrO、シリコーン及びステアリン酸アルミニウム等、あるいはこれらの混合処理が、フィラーの分散性及び画像ボケを防止する点からより好ましい。
【0114】
シランカップリング剤による処理を行うと、画像ボケの影響が強くなるが、前記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30質量%が適しており、5〜20質量%がより好ましい。表面処理量が3質量%よりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また30質量%よりも多いと残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0115】
フィラー微粒子を分散させてなる表面層(保護層)に用いるバインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
特に、前述のラジカル重合性モノマーと電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物を用いて、3次元の網目構造を形成させた架橋性表面層中に金属酸化物無機フィラー微粒子を分散させた保護層は、耐摩耗性が著しく向上するため、特に好ましい。
【0116】
[感光層]
次に、本発明の静電潜像担持体を構成する複層型感光層および単層型感光層について説明する。
<複層型感光層>
〔電荷発生層〕
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含有し、バインダー樹脂やさらに必要に応じてその他の成分を含んでなる。電荷発生物質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機系材料と有機系材料とのいずれかを用いることができる。
無機系材料としては限定されるものではないが、例えば、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン及びセレン−ヒ素化合物等が挙げられる。
前記有機系材料としては限定されるものではないが、例えば、金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン系顔料、ナフトキノン系顔料、シアニン系顔料、アゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料及びビスベンズイミダゾール系顔料等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0117】
電荷発生層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂及びポリアクリルアミド樹脂等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
なお、必要に応じて電荷輸送物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、上述のバインダー樹脂の他に、高分子電荷輸送物質を添加することもできる。
【0118】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と、溶液分散系からのキャスティング法とに大別される。
前者の方法としては、グロー放電重合法、真空蒸着法、CVD法(化学気相成長法)、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法及び加速イオンインジェクション法等が挙げられる。この真空薄膜作製法は、上述した無機系材料又は有機系材料を用いた場合に電荷発生層を良好に形成することができる。
また、後者のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、電荷発生層形成用塗工液を用いて、浸漬塗工法、スプレーコート及びビードコート法等の慣用されている方法を用いて行うことができる。
【0119】
電荷発生層形成用塗工液に用いられる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ及びプロピルセロソルブ等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
これらの中でも、沸点が40℃〜80℃の、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、メタノール及びエタノールは、塗工後の乾燥が容易であることから特に好適である。
【0120】
電荷発生層形成用塗工液は、前記有機溶媒中に前記電荷発生物質と、バインダー樹脂を分散、溶解して製造することができる。有機顔料を有機溶媒に分散する方法としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、振動ミル等の分散メディアを用いた分散方法及び高速液衝突分散方法等が挙げられる。
【0121】
電荷発生層の厚みに応じて、電子写真特性、特に光感度が変化し、一般的に厚みが厚いほど光感度が高くなる。従って、前記電荷発生層の厚みは、要求される画像形成装置の仕様(スペック)に応じて好適な範囲に設定することが好ましく、電子写真方式の感光体として要求される感度を得るためには、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0122】
〔電荷輸送層〕
潜像担持体の電荷輸送層は、帯電電荷を保持させる目的を達成するために、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ電荷移動性がよい。ことが要求される。
電荷輸送層に用いる正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体及びチオフェン誘導体等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0123】
一方、高分子電荷輸送物質としては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
(a)カルバゾール環を有する重合体
例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報及び特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体
例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報及び特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
(c)ポリシリレン重合体
例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報及び特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体
例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報及び特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
(e)その他の重合体
例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報及び特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
【0124】
また、高分子電荷輸送物質としては、前記以外にも例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂及びトリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂等が挙げられる。
前記高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報及び特開平9−304956号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0125】
また、電子供与性基を有する重合体としては、前記重合体だけでなく、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、さらには例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体等を用いることもできる。
【0126】
電荷輸送層に用いるバインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が用いられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダー樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
【0127】
電荷輸送層は、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散させ、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成することができる。電荷輸送層には、さらに必要に応じて、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤及びレベリング剤等の添加剤を適量添加することもできる。
電荷輸送層の厚みは、5〜100μmが好ましく、近年の高画質化の要求から、電荷輸送層を薄膜化することが図られており、1200dpi以上の高画質化を達成するためには、5〜30μmがより好ましい。
【0128】
次に、単層型感光層について説明する。
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、さらに必要に応じてその他の成分を含んでなる。
キャスティング法により単層感光層を設ける場合、かかる単層感光層は、例えば、少なくとも、電荷発生物質と、バインダー樹脂と、電荷輸送物質を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成することができる。また、かかる単層感光層には、必要により可塑剤を添加することもできる。
前記単層型感光層の厚みは、5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。前記膜厚が5μm未満であると帯電性が低下することがあり、100μmを超えると感度の低下をもたらすことがある。
【0129】
[支持体]
本発明に係る潜像担持体における支持体は、導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
支持体としては、導電体又は導電処理をした絶縁体が好適であり、例えば、Al、Ni、Fe、Cu及びAu等の金属、またはそれらの合金;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド及びガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag及びAu等の金属、あるいはIn、SnO等の導電材料の薄膜を形成したもの;樹脂中にカーボンブラック、グラファイト、Al、Cu及びNi等の金属粉、導電性ガラス粉等を均一に分散させ、樹脂に導電性を付与した樹脂基体、導電処理をした紙等が挙げられる。
支持体の形状、大きさとしては特に制約はなく、板状、ドラム状及びベルト状のいずれのものも使用できる。ベルト状の支持体を用いると、内部に駆動ローラ、従動ローラを設ける必要がある等装置が複雑化したり、大型化する反面、レイアウトの自由度が増す等のメリットがある。しかし、保護層を形成する場合は、保護層の可撓性が不足して、表面にクラックとよばれる亀裂が入る可能性があり、それが原因で粒状の地肌汚れが発生することが考えられる。このため、支持体としては剛性の高いドラム状のものが好適である。
【0130】
[下引き層]
支持体と前記感光層との間には、必要に応じて下引き層を設けてもよい。下引き層は、接着性の向上、モアレ等の防止、上層の塗工性改良、残留電位の低減等を目的として設けられる。
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に感光層を、溶媒を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶媒に対して耐溶解性の高い樹脂であることが好ましい。
このような樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂及びエポキシ樹脂等の、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物等の微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、適当な溶媒を用いて慣用される塗工法によって形成することができる。
なお、下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びクロムカップリング剤等を使用して、例えば、ゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層、Alを陽極酸化にて設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法により設けたもの等を用いることもできる。
下引き層の厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0131】
[画像形成装置]
本発明の画像形成装置は、静電潜像を担持するための潜像担持体と、前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成するための現像手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写体に転写させる転写手段と、前記潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段とを有する画像形成装置において、前記潤滑剤付与手段が、少なくとも潤滑性物質と前記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物を含有する潤滑剤を搭載し、該潤滑剤を潜像担持体の表面に付与する構成としたことを特徴とするものである。本発明の画像形成装置は、さらに必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、定着手段、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段及び制御手段等を有してなる。
以下、潜像形成工程(静電潜像形成工程)及び潜像形成手段(静電潜像形成手段)、現像工程及び現像手段、トナー画像の形成に用いるトナー、転写工程及び転写手段、定着工程及び定着手段、潤滑剤付与工程(潤滑剤供給工程)及び潤滑剤付与手段(潤滑剤供給手段)、除電工程及び除電手段、クリーニング工程及びクリーニング手段、リサイクル工程及びリサイクル手段、制御工程及び制御手段について説明する。
【0132】
<静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段>
潜像形成工程(静電潜像形成工程)は、本発明の画像形成装置に搭載した前記潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
静電潜像の形成は、例えば、潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。
潜像形成手段(静電潜像形成手段)は、例えば、潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。前記帯電は、例えば、帯電器を用いて潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0133】
帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム及びゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン及びスコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
帯電部材の形状としてはローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等、どのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。あるいは、ブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーブラシを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電器とする。
帯電器は、もちろん前記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られる点から、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
本発明の画像形成装置においては、帯電器が潜像担持体に接触又は非接触状態で配置され、直流電圧及び交流電圧を重畳印加することによって潜像担持体表面を帯電することが好ましい。また、帯電器が、潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、この帯電ローラに直流電圧及び交流電圧を重畳印加することによって潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0134】
前記露光は、例えば、露光器を用いて前記潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
露光器としては、前記帯電器により帯電された前記潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系及び液晶シャッタ光学系等の各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0135】
<現像工程及び現像手段>
現像工程は、静電潜像を、トナー又は現像剤を用いて現像して可視像(トナー画像)を形成する工程である。
可視像の形成は、例えば、静電潜像をトナー又は現像剤を用いて現像することにより行うことができ、現像手段により行うことができる。
現像手段が、キャリア及び二成分現像剤のいずれかをこの現像手段の内部に供給する供給手段と、前記現像手段に収容されたキャリア及び二成分現像剤のいずれかを前記現像手段の外部に排出する排出手段とを有することが好ましい。
現像手段は、例えば、トナー又は現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、トナー又は現像剤を収容し、静電潜像にトナー又は現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0136】
現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの等が好適に挙げられる。
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、前記潜像担持体近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって該潜像担持体の表面に移動する。その結果、前記露光工程にて形成された静電潜像が該トナーにより現像されて潜像担持体の表面にトナーによる可視像が形成される。
前記現像器に収容させる現像剤は、トナーを含む現像剤であるが、現像剤としてはトナーとキャリアとからなる二成分現像剤が好ましく用いられる。
【0137】
<トナー画像の形成に用いるトナー>
前記トナー画像の形成に用いるトナーとしては、公知のものを用いることができる。すなわち、少なくとも結着樹脂、着色剤及び外添剤を含有してなり、好ましくは離型剤及び帯電制御剤を含有してなり、さらに必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0138】
<転写工程及び転写手段>
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体上に可視像を一次転写した後、この可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、前記複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
可視像の転写は、例えば、転写帯電器を用いて潜像担持体を帯電することにより行うことができ、転写手段により行うことができる。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、潜像担持体上に形成された可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであっても2つ以上であってもよい。転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ及び粘着転写器等が挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0139】
<定着工程及び定着手段>
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を、定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着部材とこの定着部材を加熱する熱源とを有するものが用いられる。
定着部材としては、例えば、無端状ベルトとローラとの組合せ、ローラとローラとの組合せ等が挙げられるが、ウォームアップ時間を短縮することができ、省エネルギー化の実現の点で、また、定着可能幅の拡大の点で、熱容量が小さい無端状ベルトとローラとの組合せであるのが好ましい。
【0140】
<潤滑剤供給工程及び潤滑剤供給手段>
潤滑剤供給工程(潤滑剤付与工程)は、潤滑剤供給手段(潤滑剤付与手段)によって潜像担持体上に潤滑剤を供給して塗布することによって、クリーニングブレードに対する潜像担持体表面の摩擦係数を長期間にわたって低減することを主な目的として搭載する。潤滑剤が潜像担持体表面に塗布されることで、クリーニングが困難な球形トナーのクリーニングを容易にしたり、クリーニングブレードと潜像担持体が摺擦するときに発生しやすいブレード鳴きやブレードエッジの摩耗といった不具合を解消することができる。さらに、トナーの離型性が向上して、中抜け等の異常画像の発生を抑制することができる。
本発明に用いる潤滑剤は、前記詳述したように、潤滑性物質と前記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物とを含有することを特徴としている。
【0141】
<除電工程及び除電手段>
除電工程は、潜像担持体に対し除電バイアスを印加したり、除電光を照射して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
除電手段としては、特に制限はなく、潜像担持体の表面電荷を除電できればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電バイアスを印可する帯電器や除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0142】
<クリーニング工程及びクリーニング手段>
クリーニング工程は、潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
クリーニング手段としては、特に制限はなく、潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0143】
<リサイクル工程及びリサイクル手段>
リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去したトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0144】
<制御工程及び制御手段>
制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー及びコンピュータ等の機器が挙げられる。
【0145】
ここで、本発明の画像形成装置について、図面を参照して説明する。
図6は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。図6に示す画像形成装置は、ドラム状の潜像担持体1と、帯電チャージャ3と、転写前チャージャ7と、転写チャージャ10と、分離チャージャ11と、クリーニング前チャージャ13とを有する。
潜像担持体1の形状は、ドラム状の形状に限定されるものではなく、例えば、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。また、各種チャージャとしては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド
ステート チャージャ)、接触配置又はギャップテープや端部に段差を設ける等の手段によって潜像担時体との間にギャップを有して近接配置された帯電ローラを始めとする公知の手段を用いることができる。
【0146】
転写手段としては、一般には前記の帯電器が使用できるが、図6に示すように、転写チャージャ10と分離チャージャ11とを併用したものが効果的である。
また、画像露光部5及び除電ランプ2等の光源等に、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)及びエレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター及び色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
かかる光源等は、図6に示される工程の他に、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光等の工程を設けることにより、潜像担持体に光を照射することができる。
【0147】
現像ユニット6により潜像担持体1上に現像されたトナー画像は、転写紙(記録媒体)9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、潜像担持体1上にトナーが残存する。このような残存トナーがクリーニングされずに、次の複写プロセスが行われる場合、帯電不良や露光による静電潜像形成時の不具合が発生してしまう。そのため、一般的にはクリーニング手段を用いて未転写残留トナーを除去する必要がある。クリーニング手段として、クリーニングブラシ14又はクリーニングブレード15を単独又は組み合わせてクリーニングが行われることもある。クリーニングブラシには、ファーブラシ及びマグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。なお、図6において、符号8はレジストローラ、12は分離爪を示す。
【0148】
クリーニングブレード15を形成する摩擦係数の低い弾性体としては、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタンエラストマー、シリコーンエラストマー及びフッ素エラストマー等が挙げられる。クリーニングブレード15は、熱硬化性のウレタン樹脂で形成することが好ましく、特に、ウレタンエラストマーが、耐摩耗性、耐オゾン性及び耐汚染性の観点から好ましい。エラストマーには、ゴムも含まれる。クリーニングブレード15は、硬度(JIS−A)が、65〜85度の範囲であることが好ましい。また、クリーニングブレード15は、厚さが0.8〜3.0mmで、突き出し量が3〜15mmの範囲にあることが好ましい。さらに、その他の条件として当接圧、当接角度、食い込み量等は適宜決定することができる。
【0149】
このような潜像担持体に当接するクリーニング手段は、トナー除去性能は高いが、当然のことながら、潜像担持体に機械的ハザードを与え、潜像担持体表面層の摩耗を引き起こす。本発明に好適に用いられる保護層を有する潜像担持体は、架橋表面層の耐摩耗性が著しく高いため、表面に当接するクリーニング手段を有する画像形成装置においても、安定して良好な画像を出力することができる。
【0150】
本発明の画像形成装置には、潜像担持体表面に潤滑剤を供給して塗布する潤滑剤塗布ユニットを備える。特に、近年、電子写真の高画質化に有利とされている球形トナーの実用化が進んでいるが、球形トナーは、従来の粉砕型のトナーと比較して、ブレードクリーニングが困難であることが知られている。そのため、クリーニングブレードの当接圧を強めたり、硬度の高いウレタンゴムブレードを用いる等の対策が行われている。
これらの方法はブレードが当接する潜像担持体表面に対するハザードが大きくなる傾向であり、実際、球形トナーを用いると、潜像担持体の表面摩耗量は増加する傾向にあることが分かってきている。本発明に好適に用いられる架橋表面層を有する潜像担持体は、耐摩耗性が非常に高いため、前記のようなハザードが大きい条件においても、架橋表面層が摩耗することはほとんどないが、対クリーニングブレードの摩擦係数が高いことに起因すると考えられるブレード鳴き、ブレードエッジの摩耗等の不具合を発生させることがあった。
そこで、本発明の画像形成装置においては、潜像担持体表面に潤滑剤を供給して塗布する潤滑剤供給手段を備えることによって、クリーニングブレードに対する電子写真感光体表面の摩擦係数を長期間にわたって低減することができ、前記不具合を解消することができる。
【0151】
図7は、本発明の画像形成装置に用いられる潤滑剤供給手段の一例を示す概略構成図である。
図7において、棒状にした潤滑剤(固形物)16をクリーニングブラシ14に押し当てており、クリーニングブラシ14が回転する際に潤滑剤16を掻き取り、ブラシに付着した潤滑剤が潜像担持体の表面に塗布される仕組みとなっている。潤滑剤16には前述の潤滑剤を用いる。図中、符号15はクリーニングブレードを示す。
図7に示すように、潤滑剤供給手段をクリーニングユニット117に備えることで、ドラム周りのレイアウト設計が容易になったり、装置を簡略化することができる等のメリットがある反面、クリーニングされたトナーに潤滑剤が多量に混入するためトナーリサイクルが困難になったり、ブラシのクリーニング効率が低下する等の不具合が発生する場合もある。また、図示を省略しているが、潤滑剤供給手段を有する潤滑剤塗布ユニットをクリーニングユニットとは別に独立して設けることで、前記不具合を解消することもできる。その場合、潤滑剤塗布ユニットは、クリーニングユニットの下流に設けることが好ましい。さらに、潤滑剤塗布ユニットを複数箇所に設け、それらを同時又は順次働かせることにより、潤滑剤の塗布効率を高めたり、潤滑剤の消費量をコントロールする等の効果を持たせることができる。
【0152】
図8は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。図8において、潜像担持体22は、駆動ローラ23により駆動され、帯電チャージャ29による帯電、像露光光源21による像露光、図示しない現像ユニットによる現像、転写チャージャ帯電器25を用いる転写、潤滑剤塗布ユニット30による潤滑剤付与、潤滑剤均しブレード31による潤滑剤塗布量均一化、クリーニングブラシ26によるクリーニング、除電光源28による除電が繰返し行われる。図中、符号24は転写ローラ、27は従動ローラを示す。
【0153】
図9は、本発明の画像形成装置の他の一例であるフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図9において、潜像担持体ドラム56は、図中反時計回りに回転駆動されながら、その表面がコロトロンやスコロトロン等を用いる帯電チャージャ53によって一様帯電せしめられた後、図示しないレーザ光学装置から発せられるレーザ光(露光)Lの走査を受けて静電潜像を担持する。この走査はフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報に基づいてなされるため、潜像担持体ドラム56上にはイエロー、マゼンタ、シアン又はブラックという単色用の静電潜像が形成される。
【0154】
潜像担持体ドラム56の図9中左側には、リボルバ現像ユニット66が配設されている。リボルバ現像ユニット66は、回転するドラム状の筺体の中にイエロー現像器、マゼンタ現像器、シアン現像器及びブラック現像器を有しており、回転によって各現像器を潜像担持体ドラム56に対向する現像位置に順次移動させる。なお、イエロー現像器、マゼンタ現像器、シアン現像器及びブラック現像器は、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーを付着せしめて静電潜像を現像するものである。潜像担持体ドラム56上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の静電潜像が順次形成され、これらはリボルバ現像ユニット66の各現像器によって順次現像されてイエローのトナー画像、マゼンタのトナー画像、シアンのトナー画像、ブラックのトナー画像となる。
【0155】
前記現像位置よりも潜像担持体ドラム56の回転下流側には中間転写ユニットが配設されている。これは、張架ローラ59a、転写手段たる中間転写バイアスローラ57、二次転写バックアップローラ59b、ベルト駆動ローラ59cによって張架している中間転写ベルト58を、ベルト駆動ローラ59cの回転駆動によって図中時計回りに無端移動せしめる。潜像担持体ドラム56上で現像されたイエローのトナー画像、マゼンタのトナー画像、シアンのトナー画像、ブラックのトナー画像は、潜像担持ドラム56と中間転写ベルト58とが接触する中間転写ニップに進入する。そして、中間転写バイアスローラ57からのバイアスの影響を受けながら、中間転写ベルト58上に重ね合わせて一次転写されて、4色重ね合わせのトナー画像となる。このような中間転写ベルトを用いてトナー像を重ね合わせる中間転写方式は、電子写真感光体と中間転写体との相対的な位置決めが比較的容易でかつ正確に行えるため、色ずれに対して有利であることから、高画質なフルカラー画像を得るには有効な手段であるといえる。
【0156】
そして、回転に伴って中間転写ニップを通過した潜像担持体ドラム56表面は、ドラムクリーニングユニット55によって未転写残留トナーがクリーニングされる。ドラムクリーニングユニット55は、ファーブラシ、マグファーブラシ等からなるクリーニングブラシによって未転写残留トナーをクリーニングするものであるが、クリーニングバイアスが印加されるクリーニングローラや、クリーニングブレード等を単独又は組み合わせて用いるものであってもよい。また、図9に示す画像形成装置では、クリーニングユニッ55を潤滑剤塗布部材としても用いている。
【0157】
未転写残留トナーがクリーニングされた潜像担持体ドラム56表面は、除電ランプ54によって除電せしめられる。除電ランプ54には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)及びエレクトロルミネッセンス(EL)等が用いられている。また、前記レーザ光学装置の光源には半導体レーザが用いられている。これら発せられる光については、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター及び色温度変換フィルター等の各種フィルターにより、所望の波長域だけを用いるようにしてもよい。
【0158】
中間転写ユニットの図9中下側には、転写搬送ベルト62と転写バイアスローラ63、駆動ローラ等各種ローラからなる転写ユニットが配設されており、図9中左側には、紙搬送ベルト64、定着ユニット65が配設されている。転写ユニットは、図示しない移動手段によって、図9中上下方向に移動するようになっていてもよく、少なくとも、中間転写ベルト58上の1色トナー画像(イエロートナー画像)や、2色又は3色重ね合わせトナー画像が二次転写バイアスローラ63との対向位置を通過する際には、中間転写ベルト58に接触しない位置まで待避移動する。そして、転写ユニットは、中間転写ベルト58上の4色重ね合わせトナー画像の先端が二次転写バイアスローラ63との対向位置に進入してくる前に、中間転写ベルト58との接触位置まで移動して二次転写ニップを形成する。
【0159】
一方、図示しない給紙カセットから送られてきた記録媒体60を2つのローラ間に挟み込んでいるレジストローラ対61は、記録媒体60を中間転写ベルト58上の4色重ね合わせトナー画像に重ね合わせ得るタイミングで前記二次転写ニップに向けて送り込む。中間転写ベルト58上の4色重ね合わせトナー画像は、二次転写ニップ内で紙転写バイアスローラ63からの二次転写バイアスの影響を受けて記録媒体60上に一括して二次転写される。この二次転写により、記録媒体60上にはフルカラー画像が形成される。
そして、フルカラー画像が形成された記録媒体60は、転写搬送ベル62によって紙搬送ベルト64に送られる。
紙搬送ベルト64は、転写ユニットから受け取った記録媒体60を定着ユニット65内に送り込む。
【0160】
定着装置ユニットは、送り込まれた記録媒体60を加熱ローラとバックアップローラとの当接によって形成された定着ニップに挟み込みながら搬送する。
記録媒体60上のフルカラー画像は、加熱ローラからの加熱や、定着ニップ内での加圧力の影響を受けて記録媒体60上に定着せしめられる。
【0161】
なお、図示を省略しているが、転写搬送ベルト62や紙搬送ベルト64には、記録媒体60を吸着させるためのバイアスが印加されていてもよい。また、記録媒体60を除電する紙記録媒体除電チャージャや、各ベルト(中間転写ベルト58、転写搬送ベルト62及び搬送ベルト64)を除電する3つのベルト除電チャージャが配設されていてもよい。また、中間転写ユニットは、ドラムクリーニングユニット55と同様の構成のベルトクリーニングユニットを備えていてもよく、これによって中間転写ベルト58上の未転写残留トナーをクリーニングする。
【0162】
図10は、本発明の画像形成装置の他の一例であるタンデム型カラー画像形成装置を示す概略説明図である。図10に示すタンデム画像形成装置は、画像形成装置本体250と、給紙テーブル300と、スキャナ400と、原稿自動搬送装置(ADF)500とを備えている。図11は、図10に示す画像形成装置の部分拡大概略説明図である。
画像形成装置本体250には、無端ベルト状の中間転写体150が中央部に設けられている。そして、中間転写体150は、支持ローラa(114)、支持ローラb(115)及び支持ローラc(116)に張架され、図10中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラb(115)の近傍には、中間転写体150上の未転写残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置117が配置されている。支持ローラa(114)と支持ローラb(115)とにより張架された中間転写体150には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの4つの画像形成手段118が対向して並置されたタンデム型現像器220が配置されている。タンデム型現像器220の近傍には、露光装置121が配置されている。中間転写体150における、タンデム型現像器220が配置された側とは反対側には、二次転写装置122が配置されている。二次転写装置122においては、無端ベルトである二次転写ベルト124が一対のローラ123に張架されており、二次転写ベルト124上を搬送される記録媒体と中間転写体150とは互いに接触可能である。二次転写装置122の近傍には定着装置125が配置されている。
なお、図10のタンデム画像形成装置においては、二次転写装置122及び定着装置125の近傍に、記録媒体の両面に画像形成を行うために該記録媒体を反転させるためのシート反転装置128が配置されている。
【0163】
次に、タンデム型現像器220を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。すなわち、まず、原稿自動搬送装置(ADF)500の原稿台230上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置500を開いてスキャナ400のコンタクトガラス132上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置500を閉じる。
【0164】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置500に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス132上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス132上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ400が駆動し、第1走行体133及び第2走行体134が走行する。このとき、第1走行体133により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体134におけるミラーで反射し、結像レンズ135を通して読取りセンサ136で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器220における各画像形成手段118(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各トナー画像が形成される。図10において、符号126は定着ベルト、127は加圧ローラ、151は手差しトレイ、152は分離ローラを示す。
【0165】
すなわち、タンデム型現像器220における各画像形成手段118(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図11に示すように、それぞれ、潜像担持体110(ブラック用潜像担持体110K、イエロー用潜像担持体110Y、マゼンタ用潜像担持体110M及びシアン用潜像担持体110C)と、潜像担持体110を一様に帯電させる帯電器160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に潜像担持体110を露光(図11中、レーザ光L)し、潜像担持体110上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光器と、静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像器161と、トナー画像を中間転写体150上に転写させるための転写帯電器(一次転写帯電器)162と、潜像担持体クリーニング装置163と、除電器164とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像)を形成可能である。
【0166】
こうして形成されたブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像は、支持ローラa(114)、支持ローラb(115)及び支持ローラc(116)により回転移動される中間転写体150上にそれぞれ、ブラック用潜像担持体110K上に形成されたブラック画像、イエロー用潜像担持体110Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用潜像担持体110M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用潜像担持体110C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。
そして、中間転写体150上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(複合転写像)が形成される。
【0167】
一方、給紙テーブル300においては、給紙ローラ242の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク243に多段に備える給紙カセット244の1つから記録媒体(記録紙)を繰り出し、分離ローラ245で1枚ずつ分離して給紙路246に送出し、搬送ローラ247で搬送して画像形成装置本体250内の給紙路248に導き、レジストローラ149に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラを回転して手差しトレイ151上の記録媒体(記録紙)を繰り出し、分離ローラ152で1枚ずつ分離して手差し給紙路153に入れ、同じくレジストローラ149に突き当てて止める。なお、レジストローラ149は、一般には接地されて使用されるが、記録媒体の紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0168】
そして、中間転写体150上に合成された合成カラー画像(複合転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ149を回転させ、中間転写体150と二次転写装置122との間に記録媒体(記録紙)を送出させ、二次転写装置122により合成カラー画像(複合転写像)を記録媒体(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、記録媒体(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体150上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置117によりクリーニングされる。
【0169】
カラー画像が転写され形成された前記記録媒体(記録紙)は、二次転写装置122により搬送されて、定着装置125へと送出され、定着装置125において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(複合転写像)が前記記録媒体(記録紙)上に定着される。その後、この記録媒体(記録紙)は、切換爪155で切り換えて排出ローラ156により排出され、排紙トレイ157上にスタックされ、あるいは、切換爪155で切り換えてシート反転装置128により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ156により排出され、排紙トレイ157上にスタックされる。
なお、図11において、符号165は現像スリーブ、166は攪拌部、167は現像部、168は攪拌スクリュ、169は仕切り板、170は現像ケース、171はトナー濃度センサ、172は現像ローラ、173はドクタブレード、174は潤滑剤、175はクリーニングブレード、176はクリーニングブラシ、177は電界ローラ、178はスクレーパ、179は回収スクリュ、180はトナーリサイクル装置を示す。
【0170】
前記タンデム方式では、各色の潜像形成や現像を並行して行うことができるため、リボルバ式よりも画像形成速度を遙かに高速化させることができる。さらに、図10のプリンタは中間転写方式も採用しており、本発明の電子写真感光体を搭載することで、色ずれの少ない高品質なフルカラー画像を非常に高速に、長期間繰返し、安定して出力することができる。
【0171】
[プロセスカートリッジ]
本発明のプロセスカートリッジは、潜像担持体、帯電手段、及び現像手段の少なくとも1つと、本発明の潤滑剤を潜像担持体の表面に付与する潤滑剤供給手段とを有してなり、さらに必要に応じて適宜選択したその他の手段を組み合わせて一体に支持し、本発明の画像形成装置の本体に着脱可能としたものである。
図12は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。本発明のプロセスカートリッジは、例えば、図12に示すように、潜像担持体(電子写真感光体)601を内蔵し、帯電器602、現像手段604、クリーニング手段609を含み、さらに必要に応じてその他の手段を有してなる。603は露光手段(潜像形成手段)、605は記録媒体、610は搬送ローラである。図12に示すプロセスカートリッジにおいては、潤滑剤供給手段を備えたクリーニングユニットとなっており、クリーニング手段609を構成するクリーニングブラシ608に潤滑剤606を押し当てて、クリーニングブラシ608によって潤滑剤を供給し、クリーニングブレード607が潤滑剤均しブレードを兼ねている。
【実施例】
【0172】
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中において使用する「部」は、すべて質量部を表す。
まず、実施例の潜像担持体を作製するため、電荷輸送性構造を有する重合性化合物(水酸基を有する電荷輸送性物質)及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を合成すると共に、アミン化合物を含有する潤滑剤塗布部材(潤滑剤:潤滑性物質、あるいは潤滑性材料)を製造した。
水酸基を有する電荷輸送性物質として、表8に示す例示化合物D2−4の構造を有する電荷輸送性ポリオール及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として、トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物を例に挙げて以下に合成例を示す。また、表1に示す例示化合物1−1の構造を有するアミン化合物を含有する潤滑剤(潤滑性物質、あるいは潤滑性材料)を例に挙げてその製造例を示す。実施例における他のアミン化合物を用いた潤滑剤の場合も同様にして製造することができる。
【0173】
[合成例1]
<電荷輸送性構造を有する重合性化合物の合成例>
[電荷輸送性ポリオールD2−4の合成例]
(1)電荷輸送性ポリオールD2−3の合成
まず、目的化合物の構造に必要な誘導体を用い、前述した例示化合物D1−3及び例示化合物D3−2の合成例における反応経路と同様の反応経路により、下記構造式(D2−3)[表8の例示化合物D2−3]で表されるヒドロキシαフェニルスチルベン誘導体({4−[2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ビニル]−フェニル}−ジ−p−トルイル−アミン)を合成した。
【0174】
【化21】

【0175】
(2)電荷輸送性ポリオールD2−4の合成
前記(1)で得られたアミン[構造式(D2−3)]33.9gと炭酸カリウム35gとを、攪拌装置を備えた反応容器に入れ、ジメチルアセトアミド(DMAc)120mlとニトロベンゼン3mlを加えて溶解させた。次いで2−ブロモエタノール70.5gを滴下注入し、100℃で18時間反応させた。その後、室温まで冷却し、不溶物を除き、トルエンで希釈した。その後、トルエン溶液を食塩水及び水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて脱水した。その後、濾過してトルエンを留去し目的物の粗収物39.6gを得た。
その後、シリカゲルを充填したカラムを用い、ジクロロメタン/酢酸エチル(20/1〜3/1)の混合溶媒を展開溶媒としたカラムクロマトにより精製し、さらにトルエン/シクロヘキサン(2/1)の混合溶媒にて二回再結晶精製し、下記構造式(D2−4)[表8の例示化合物D2−4]で表される目的物(2−(4−{2−[4−(ジ−p−トルイル−アミノ)フェニル−]−1−[4−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−フェニル]−ビニル}−フェノキシ)−エタノール)(OH当量:285.86)を得た(収量22.3g、黄色結晶、融点178.5〜179.0℃)。
【0176】
【化22】

このような電荷輸送性物質は、例えば、イソシアネート化合物と架橋してウレタン結合を有する架橋層を形成したり、シラノール化合物と架橋してシロキサン結合を有する架橋層を形成したりすることができる。
【0177】
[合成例2]
<電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の合成例>
本発明で好適に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、例えば、特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。また、以下にこの化合物の一例を示す。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物[下記構造式(B)]の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物[下記構造式(A)]113.85g(0.3mol)とヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)に、スルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。
この反応液にトルエン約1.5Lを加え、室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして下記構造式(B)で表される白色結晶88.1g(収率80.4%)を得た(融点64.0〜66.0℃)。
【0178】
【化23】

【0179】
得られた前記構造式(B)で表される白色結晶の元素分析値を、計算値と併せて下記表12に示す。
【表12】

【0180】
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物の合成
前記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物[構造式(B)]82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH12.4g、水100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。
この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにしてトリアリールアミノ基置換アクリレート化合物の白色結晶80.73g(収率84.8%)を得た(融点117.5〜119.0℃)。
得られた下記化合物の白色結晶の元素分析値を、計算値と併せて下記表13に示す。
【0181】
【化24】

【0182】
【表13】

【0183】
[実施例1]
<アミン化合物を含有する潤滑剤塗布部材の製造>
まず、ステアリン酸亜鉛90質量部と、表1に示す例示化合物1−1の構造を有するアミン化合物10質量部とを、140℃で攪拌しながら溶融させた。これとは別に140℃で予熱した、幅8mm×深さ8mm×長さ500mmのキャビティを有するアルミニウム製金型のキャビティ内に、前記溶融液を注入した。注入後、予熱した断熱蓋を金型上部に設置した。次いで、金型を室温の条件下に置き、金型温度が50℃になるまで放冷した。2時間後、固化した成形品を金型から取り出した。
成形品を幅8mm×厚み11mm×長さ380mmの形状に加工し、フルカラープリンタ(RICOH
Pro C900、リコー社製)に搭載可能な、例示化合物1−1のアミン化合物を含有した潤滑剤(潤滑性物質、あるいは潤滑性材料)を得た。この潤滑剤を、フルカラープリンタ(RICOH
Pro C900、リコー社製)に搭載されている潤滑剤塗布部材用板金(金属製支持体)に、既存の潤滑剤に替えて両面テープで接着した。
なお、脂肪酸金属塩を溶融するために加熱する温度は、各脂肪酸金属塩の融点より、およそ15〜30℃高い温度とした。
【0184】
(潜像担持体1の作製)
〔下引き層〕
Al製支持体(外径100mmφ)に、下記の下引き層用塗工液を用いて、130℃で20分乾燥後の膜厚が3.5μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
〈下引き層用塗工液〉
アルキッド樹脂: 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂: 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製) 40部
メチルエチルケトン: 50部
【0185】
〔電荷発生層〕
形成した下引き層上に、下記電荷発生層塗工液を用いて浸漬塗工し、90℃で20分加熱乾燥させ、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
〈電荷発生層用塗工液〉
Y型チタニルフタロシアニン: 6部
ブチラール樹脂(BX−1:積水化学工業社製): 4部
2−ブタノン: 200部
【0186】
〔電荷輸送層〕
形成した電荷発生層上に、下記構造の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層用塗工液を用いて浸積塗工し、135℃で20分加熱乾燥させ、膜厚22μmの電荷輸送層を形成した。
〈電荷輸送層用塗工液〉
ビスフェノールZ型ポリカーボネート: 10部
下記構造(VI)の低分子電荷輸送物質: 10部
テトラヒドロフラン: 80部
【0187】
【化25】

【0188】
〔表面層(架橋表面層)〕
この電荷輸送層上に下記組成の架橋表面層用塗工液1(架橋表面層塗工液1)を窒素気流中でスプレー塗工した後、10分間窒素気流中に放置して指触乾燥を実施した。その後、酸素濃度が2%以下となるようにブース内を窒素ガスで置換したUV光照射ブースにて、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:700mW/cm、照射時間:60秒の条件で光照射を行ない、さらに130℃で20分間の乾燥を加えて厚さ8μmの表面層(架橋表面層)を設け、潜像担持体1を作製した。
〈架橋表面層塗工液1〉
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー: 10部
[トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製、分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99)]
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物: 10部
(下記構造式の化合物)
【0189】
【化26】

【0190】
光重合開始剤: 1部
[1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)]
1%UV硬化型レベリング剤のテトラヒドロフラン溶液: 5部
[アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンと、プロポキシ変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレートとの混合物(商品名:BYK−UV
3570、ビックケミー社製)]
テトラヒドロフラン: 100部
【0191】
以上のようにして作製したアミン化合物を含有する潤滑剤塗布部材及び潜像担持体1を、下記評価が可能となるように改造した、ルカラープリンタ(RICOH
Pro C900、リコー社製)改造機のブラックステーションに搭載し、以下の条件で画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。結果を下記表14に示す。
【0192】
<画像ボケ評価>
27℃85%RH環境下、画像面積率が5%であるブラック単色のテストチャートを5000枚連続出力し、その後、画像形成装置本体の電源を切った。24時間経過した後、画像形成装置本体の電源を投入し、1200dpi、2by2のブラック単色の全面ハーフトーン画像を出力し、画像ボケによるカスレの有無を評価した。
評価基準は以下の通りとした。
◎:画像ボケが発生せず。
○:帯電器直下にわずかに画像ボケが発生したが、実用上はほとんど問題ないレベル。
△:帯電器直下とその周辺にわずかに画像ボケが発生したが、実用上許容できるレベル。
×:帯電器直下のみならず、画像形成装置奥側の周方向ほぼ全面に画像ボケが発生し、許容できないレベル。
<耐摩耗性評価>
25℃50%RH環境下、画像面積率が15%であるブラック単色のテストチャートを10万枚連続出力するランニング試験を行った。この、ランニング試験前後の感光層の膜厚を、渦電流式膜厚計(フィッシャースコープMMS、フィッシャー社製)で測定し、10万枚連続出力による感光層の摩耗量を算出した。なお、感光層の膜厚は、担持体ドラムの任意の主走査方向(ドラム軸方向)に上端50mmの位置から10mm間隔で330mmまで測定した平均値とし、ランニング前後で同じ箇所が測定できるようにマーキングしておいた。
摩耗量が少ないほど、潤滑剤の塗布性が良好で、潜像担持体表面の保護性が高いと考えられる。
<耐キズ性評価>
耐摩耗性評価実施後の潜像担持体表面の、副走査方向(ドラム周方向)のスジ状のキズの有無を目視で観察した。キズが多いほど、潤滑剤の塗布性が良好でなく、潜像担持体表面の保護性が低いと考えられる。
【0193】
[実施例2〜20]
実施例1において、潤滑性材料に用いたアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑剤(潤滑性材料)中のアミン化合物の含有量比をそれぞれ下記表14に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑性材料を作製し、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表14に示す。
【0194】
[比較例1]
実施例1において、アミン化合物を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして潤滑性材料を作製し、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表14に示す。
【0195】
[比較例2]
実施例1において、アミン化合物を下記表15に示す比較例2の酸化防止剤1(サノールLS−2626;三共株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑性材料を作製し、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表14に示す。
【0196】
[比較例3]
実施例1において、アミン化合物を下記表15に示す比較例3の酸化防止剤2(サノールLS−744;三共株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑性材料を作製し、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表14に示す。
【0197】
[比較例4]
実施例1において、アミン化合物を下記表15に示す比較例3の酸化防止剤3(IRGANOX−MD1024;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑性材料を作製し、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表14に示す。
【0198】
【表14】

【0199】
【表15】

【0200】
本発明の構成を有する実施例1〜20の画像形成装置は、潤滑剤を塗布しつつ5000枚の画像を作像した後、高温高湿環境下に24時間放置しても、画像ボケが発生しにくくなっていることがわかる。また、実施例1、9〜11を比較してみると、画像ボケ抑制とアミン化合物含有量が密接に関係している様子が観察できる。また、耐摩耗性や耐キズ性も、実使用上問題とはならないレベルを維持しており、アミン化合物を含有したことによる潤滑性への副作用も小さいことが確認できる。
これに対して、アミン化合物を含有しなかった比較例1や、酸化防止剤1〜3を含有させた比較例2〜4の画像形成装置では、同様の評価において、画像ボケが発生した。この理由としては、放電生成物による潤滑性材料の劣化を抑制できなかったか、あるいは酸化防止剤自体が劣化してしまい、画像ボケの要因となってしまった可能性が考えられるが、いずれにしても、本発明の画像形成装置で確認された画像ボケ抑制効果は発揮されなかった。
【0201】
[実施例21]
実施例1において、架橋表面層用塗工液に含有される、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のモノマーに変更した以外は、実施例1と同様にして潜像担持体2を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー: 10部
[ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート(KAYARAD
DPCA−60、日本化薬社製、分子量:1263、官能基数:6官能、分子量/官能基数=211)]
【0202】
[実施例22]
実施例1において、架橋表面層用塗工液に含有される、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のモノマーに変更した以外は、実施例1と同様にして潜像担持体3を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー: 10部
〔ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート(KAYARAD
DPCA−120、日本化薬社製;分子量:1947、官能基数:6官能、分子量/官能基数=325)]
【0203】
[実施例23]
実施例1において、架橋表面層用塗工液に含有される、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を下記構造式で示される化合物10部に変更した以外は、実施例1と同様にして潜像担持体4を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
【0204】
【化27】

【0205】
[実施例24]
実施例1において、架橋表面層用塗工液に含有される、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を下記構造式で示される化合物10部に変更した以外は、実施例1と同様にして潜像担持体5を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
【0206】
【化28】

【0207】
[実施例25]
実施例1において、架橋表面層用塗工液に含有される、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を下記構造式で示される化合物10部に変更した以外は、実施例1と同様にして潜像担持体6を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
【0208】
【化29】

【0209】
[実施例26]
まず、実施例1と同様にして、潜像担持体の電荷輸送層まで形成した。
次いで、下記組成の架橋表面層用塗工液2(架橋表面層塗工液2)を、スプレー塗工法を用いて電荷輸送層上に塗布し、1分間自然乾燥させた後、メタルハライドランプを用い、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm、照射時間:45秒の条件で光照射を行ない、塗布膜を硬化させた。さらに130℃で20分間の乾燥を加えて4μmの架橋表面層を設け、潜像担持体7を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
〈架橋表面層塗工液2〉
アルミナ(平均一次粒径:0.3μm、住友化学工業社製): 3.0部
不飽和ポリカルボン酸ポリマー: 0.06部
(BYK−P104;BYKケミー社製)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー: 5部
[トリメチロールプロパントリアクリレート(SR−351、サートマー社製)]
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー: 5部
[ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)]
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物: 10部
(下記構造式の化合物)
【0210】
【化30】

光重合開始剤: 1部
[1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)]
テトラヒドロフラン: 100部
【0211】
[実施例27]
実施例26において、架橋表面層用塗工液に含有されるアルミナ微粒子をシリカ微粒子(KMPX100:信越化学社製)に替えた以外は、実施例26と同様にして潜像担持体8を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
【0212】
[実施例28]
実施例26において、架橋表面層用塗工液に含有されるアルミナ微粒子を酸化チタン微粒子(CR−97:石原産業社製)に替えた以外は、実施例26と同様にして潜像担持体9を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
【0213】
[実施例29]
まず、実施例1と同様にして、潜像担持体の電荷輸送層まで形成した。
次いで、以下の表面層用塗工液3(表面層塗工液3)を、スプレー塗工法を用いて電荷輸送層上に塗布し、150℃で20分乾燥させ、膜厚5μmの表面架橋層を形成して、潜像担持体10を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
〈表面層塗工液3〉
アルミナ(平均一次粒径;0.3μm、住友化学工業社製): 3.0部
不飽和ポリカルボン酸ポリマー: 0.06部
(BYK−P104;BYKケミー社製)
ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成社製): 10部
ジブチルヒドロキシトルエン(BHT): 0.06部
酸化防止剤(サノールLS−2626、三共株式会社製): 0.20部
テトラヒドロフラン: 230部
シクロヘキサノン: 70部
【0214】
[実施例30]
まず、実施例1と同様にして、潜像担持体の電荷輸送層まで形成した。
次いで、下記組成の架橋表面層用塗工液4(架橋表面層塗工液4)を、スプレー塗工法を用いて電荷輸送層上に塗布し、1分間自然乾燥させた後、150℃で30分間加熱し、膜厚5μmの表面架橋層を形成して、潜像担持体11を作製し、実施例1と同様の潤滑性材料を用いて、画像ボケ評価、耐摩耗性評価、耐キズ性評価を実施した。その結果をアミン化合物(例示化合物No.)及び潤滑性材料中の含有量比と併せて下記表16に示す。
〈架橋表面層塗工液4〉
ポリオール: 20部
[スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートからなるスチレン−アクリル共重合体(ポリオール=LZR−170;固形分41質量%:藤倉化成社製)]
水酸基を有する電荷輸送性物質(D2−4): 20部
イソシアネート[トリレンジイソシアネートのポリオールアダクト体]:38部
(イソシアネート=コロネートL:固形分75%;日本ポリウレタン工業社製)
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液: 5部
(シリコーンオイル=KF50−100CS;信越化学工業社製)
シクロヘキサノン: 50部
テトラヒドロフラン: 200部
【0215】
【表16】

【0216】
本発明の構成を有する実施例21〜25及び30の画像形成装置は、潜像担持体の表面層の構成材料を変えても、画像ボケが発生しにくくなっている。また、実施例26〜29の画像形成装置は、潜像担持体の表面層に微粒子を含有させたので、潤滑剤の塗布性が高くなり、耐摩耗性が向上した潜像担持体を搭載した場合においても、画像ボケの副作用を極力抑制し、著しい耐摩耗性や耐キズ性を発揮していることがわかる。
【0217】
以上のように、静電潜像を担持するための潜像担持体と、前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成するための現像手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写体に転写させる転写手段と、前記潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段とを備え、前記潤滑剤付与手段が少なくとも潤滑性物質と前記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物とを含有する本発明の潤滑剤を搭載し、この潤滑剤を潜像担持体の表面に付与する本発明の画像形成装置構成とすることで、高温高湿環境下においても、画像ボケを発生することなく、静電潜像担持体の耐久性を著しく向上させることができ、長期間にわたって、安定して、高画質な画像を出力できる。
すなわち、本発明の画像形成装置は高温高湿環境下においても、画像ボケを発生することなく、潜像担持体の耐久性が著しく向上し、長期間にわたって、安定して、高画質な画像を出力できるので、潜像担持体を具備した複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0218】
1 潜像担持体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙(記録媒体)
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 クリーニングブラシ
15 クリーニングブレード
16 潤滑剤(固形物)
17 クリーニングユニット
21 像露光光源
22 潜像担持体
23 駆動ローラ
24 転写ローラ
25 転写チャージャ帯電器
26 クリーニングブラシ
27 従動ローラ
28 除電光源
29 帯電チャージャ
30 潤滑剤塗布ユニット
31 潤滑剤均しブレード
53 帯電チャージャ
54 除電ランプ
55 ドラムクリーニングユニット
56 潜像担持体ドラム
57 中間転写バイアスローラ
58 中間転写ベルト
59a 張架ローラ
59b 二次転写バックアップローラ
59c ベルト駆動ローラ
60 記録媒体
61 レジストローラ対
62 転写搬送ベルト
63 転写バイアスローラ
64 紙搬送ベルト
65 定着ユニット
66 リボルバ現像ユニット
101 支持体
102 感光層
103 電荷発生層(CGL)
104 電荷輸送層(CTL)
105 下引き層
106 保護層
110 潜像担持体
110K ブラック用潜像担持体
110Y イエロー用潜像担持体
110M マゼンタ用潜像担持体
110C シアン用潜像担持体
114 支持ローラa
115 支持ローラb
116 支持ローラc
117 中間転写体クリーニング装置
118 画像形成手段
121 露光装置
122 二次転写装置
123 一対のローラ
124 二次転写ベルト
125 定着装置
126 定着ベルト
127 加圧ローラ
128 シート反転装置
132 コンタクトガラス
133 第1走行体
134 第2走行体
135 結像レンズ
136 読取りセンサ
149 レジストローラ
150 中間転写体
151 手差しトレイ
152 分離ローラ
153 手差し給紙路
155 切換爪
156 排出ローラ
157 排紙トレイ
160 帯電器
161 現像器
162 転写帯電器(一次転写帯電器)
163 潜像担持体クリーニング装置
164 除電器
165 現像スリーブ
166 攪拌部
167 現像部
168 攪拌スクリュ
169 仕切り板
170 現像ケース
171 トナー濃度センサ
172 現像ローラ
173 ドクタブレード
174 潤滑剤
175 クリーニングブレード
176 クリーニングブラシ
177 電界ローラ
178 スクレーパ
179 回収スクリュ
180 トナーリサイクル装置
242 給紙ローラ
243 ペーパーバンク
244 給紙カセット
245 分離ローラ
246 給紙路
247 搬送ローラ
248 給紙路
220 タンデム型現像器
230 原稿台
250 画像形成装置本体
300 給紙テーブル
400 スキャナ
500 原稿自動搬送装置(ADF)
601 潜像担持体(電子写真感光体)
602 帯電器
603 露光手段(潜像形成手段)
604 現像手段
605 記録媒体
606 潤滑剤
607 クリーニングブレード
608 クリーニングブラシ
609 クリーニング手段
610 搬送ローラ
L レーザ光(露光)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0219】
【特許文献1】特開2000−162881号公報
【特許文献2】特開2002−229241号公報
【特許文献3】特開2003−241570号公報
【特許文献4】特開2008−139804号公報
【特許文献5】特開2004−258177号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持するための潜像担持体と、前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成するための現像手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写体に転写させる転写手段と、前記潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段とを有する画像形成装置に用いられる潤滑剤であって、
少なくとも、潤滑性物質と下記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する
ことを特徴とする潤滑剤。
【化1】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。Rは、置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基を表し、同一でも異なっていてもよい。R及びRは、互いに結合し、窒素原子を含む置換もしくは無置換の複素環基を形成してもよい。但し、R及びRのいずれか1つは置換もしくは無置換のアルキル基である。)
【化2】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R、R及びRは、前記一般式(1)と同様である。Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化3】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R、R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
【化4】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
【化5】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記式Yを表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R〜Rの少なくとも1つはYである。R及びRは、前記一般式(1)と同様である。)
【請求項2】
前記潤滑性物質が、少なくとも脂肪酸金属塩を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項3】
前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸及びオレイン酸の群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸と、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄及びリチウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属とから成る
ことを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤。
【請求項4】
前記一般式(1)〜(5)で表されるアミン化合物の含有量が、前記潤滑剤中0.1〜40質量%である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の潤滑剤。
【請求項5】
静電潜像を担持するための潜像担持体と、前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成するための現像手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写体に転写させる転写手段と、前記潜像担持体の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段とを有する画像形成装置において、
前記潤滑剤付与手段が請求項1乃至4のいずれかに記載の潤滑剤を搭載し、該潤滑剤を前記潜像担持体の表面に付与する構成とした
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記潤滑剤付与手段に搭載される前記潤滑剤が、固形状態である
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記潜像担持体は少なくとも導電性支持体上に感光層を有し、該潜像担持体の表面層が、少なくとも電荷輸送性構造を有する重合性化合物を用いて硬化・形成された架橋表面層から成る
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記架橋表面層が、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーとを用いて硬化・形成されて成る
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーの重合性官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基である
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーの重合性官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が、250以下である
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の重合性官能基が、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基である
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の電荷輸送構造が、トリアリールアミン構造を有する
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記トリアリールアミン構造を有する1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の少なくとも一種が、下記一般式(I)又は(II)で表される化合物である
ことを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【化6】

[式(I)及び(II))中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR11(R11は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR1213(R12及びR13は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)を表す。Ar、Arは、置換基を有してもよいアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar、Arは、置換基を有してもよいアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。X10は、単結合、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルキレンエーテル基又はアルキレンオキシカルボニル基を表す。m及びnは0〜3の整数を表す。]
【請求項14】
前記トリアリールアミン構造を有する1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の少なくとも一種が、下記一般式(III)で表される化合物である
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の画像形成装置。
【化7】

[式(III)中、Raは水素原子又はメチル基を表す。Rb及びRcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。o、p及びqは、それぞれ0又は1であり、s及びtは0〜3の整数を表す。Zaは、単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは下記式(a)、(b)又は(c)で表される二価基を表す。]
【化8】

【請求項15】
前記表面層が、フィラー微粒子を含有する
ことを特徴とする請求項7乃至14のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記フィラー微粒子が、無機フィラーである
ことを特徴とする請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記無機フィラーが、金属酸化物である
ことを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記金属酸化物が、少なくとも、酸化ケイ素、酸化チタン及び酸化アルミニウムから選ばれる一種の酸化物を含有する
ことを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記潜像担持体、帯電手段、潜像形成手段、現像手段、転写手段及び潤滑剤付与手段を有する画像形成装置が、複数色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成する構成を有する
ことを特徴とする請求項5乃至18のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項20】
少なくとも潜像担持体、帯電手段、現像手段及び転写手段を有する画像形成要素を複数備えたタンデム型画像形成装置である
ことを特徴とする請求項19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記潜像担持体上に形成されたトナー画像が一次転写される中間転写体と、該中間転写体上に担持されたトナー画像を記録媒体に二次転写する転写手段とを備えてなり、
複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録媒体上に一括で二次転写する構成を有する
ことを特徴とする請求項19又は20に記載の画像形成装置。
【請求項22】
潜像担持体、帯電手段及び現像手段の少なくとも1つと、請求項1乃至4のいずれかにに記載の潤滑剤を潜像担持体の表面に付与する潤滑剤供給手段とを組み合わせて一体に支持し、請求項5乃至21のいずれかに記載の画像形成装置本体に着脱可能である
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−158635(P2012−158635A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17526(P2011−17526)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】