説明

潤滑剤組成物

【課題】コンプレッサーや内燃機関等に用いる場合に電力や燃料消費を低減させ、さらに冷却効率を高め発生出力の低下を抑制することができる潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】潤滑基油と、有機金属及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加剤と、を含有する潤滑剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルを含む潤滑剤組成物は、冷媒(例えば、フロンガス)を圧縮するコンプレッサーや内燃機関等に用いられる。このコンプレッサーや内燃機関等においては、潤滑剤組成物の特性を変化させることで、粘性や、冷媒との相溶性を調整し、回転トルクを抑制することが可能である。
【0003】
このような潤滑剤組成物は、一般に出荷時の製品のコンプレッサーや内燃機関等に、その製品の特性に適合した専用の潤滑剤組成物が充填されている。また、使用過程におけるメンテナンス時や故障時のユニット交換時には、当該製品に適応した市販品の汎用オイルが使われることが多い。
【0004】
ところが、市販品の汎用オイルを使用すると、汎用オイルと専用の潤滑剤組成物に含まれるオイルとが混合されることとなり、コンプレッサーや内燃機関等の内部で金属磨耗が生じたり、エネルギーロスが増加する。さらに、冷凍機に用いた場合、混合されたオイルがコンプレッサーの摺動部分の潤滑にも作用するため、焼きつきの原因にもなる。したがって、機器の寿命が短くなったり、機器本来の性能を十分に発揮できない。
【0005】
これに対し、市販品のオイルを用い、市販潤滑剤・添加剤、超微粒子セラミックスを配合することにより、コンプレッサーのトラブルを解消する潤滑オイルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−195470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1記載の潤滑オイルは、以下に示す課題を有していた。
【0007】
すなわち、上記潤滑オイルは、コンプレッサーや内燃機関等の内部でのフリクションによりコンプレッサー作動時の電力や燃料消費等のロスが大きく、経済性が充分ではない。
【0008】
一方、前述した特許文献1記載の潤滑オイルにフリクションを低減させるための添加剤を添加した場合、フリクションを低減させることが可能である。
【0009】
ところが、フリクションが低減されることに伴って、コンプレッサー等において、潤滑オイルを用いた場合の冷媒を圧縮する効率が低下する傾向にあるため、内燃機関等の発生出力が低下し、結果として、経済性が充分ではない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コンプレッサーや内燃機関等に用いる場合に電力や燃料消費を低減させ、さらに冷却効率を高め発生出力の低下を抑制することができる潤滑剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、潤滑基油と、有機金属及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加剤と、を含有する潤滑剤組成物を提供する。
【0012】
本発明の潤滑剤組成物は、潤滑基油と、有機金属及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加剤とを含有するため、コンプレッサーや内燃機関等に用いられる場合に潤滑剤組成物と内燃機関等の金属表面とのフリクションを低減させることができ、かつ冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。したがって、回転トルクを抑えることが可能となり、電力や燃料消費が低減されると共に、冷却効率を高め、発生出力の低下を抑制することができる。また、コンプレッサーや内燃機関等の振動や異音を静めることも可能となる。
【0013】
このことにより、本発明の潤滑剤組成物によれば、地球温暖化を促進する二酸化炭素の排出量を低減させることができる。
【0014】
本発明の潤滑剤組成物が電力や燃料消費を低減させ、さらに冷却効率を高め発生出力の低下を抑制することができる理由については定かではないが、潤滑剤組成物をコンプレッサーや内燃機関等に用いた場合、潤滑剤組成物に含まれる添加剤が有機金属若しくは金属塩であると、コンプレッサーや内燃機関等の内部の金属表面に皮膜を構成し、金属表面を不活性化或いは金属表面を保護することで潤滑剤組成物と当該金属面との磨耗が低減され、電力や燃料消費を低減することができるため考えられる。
【0015】
また、上記潤滑剤組成物を内燃機関等に用いた場合、潤滑剤組成物に含まれる添加剤が有機金属若しくは金属塩であると、内燃機関内部の摺動面で潤滑基油が分解され、その分解物が皮膜を形成するため、摩擦低減効果を発揮し発生出力の低下を抑制することができるものと考えられる。
【0016】
したがって、本発明の潤滑剤組成物によれば、様々なコンプレッサーや内燃機関等において、使用過程におけるメンテナンス時や故障時のユニット交換時に専用の潤滑剤組成物に含まれるオイルと混合したとしても、粘性の相違等の特性に起因するフリクションを低減し、かつオイルの機密性が相違すること等に起因する冷却効率の低下を抑制することができる。その結果、コンプレッサーや内燃機関等を有する機器の本来の性能を充分に引き出すことが可能となる。したがって、特に冷媒やコンプレッサー等の種類に左右されない汎用性のある潤滑剤組成物とすることができる。
【0017】
上記潤滑剤組成物において、添加剤が有機金属であることが好ましく、有機金属が下記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化1】



[式(1)中、R、R、R及びR(「R1〜R4」と表す。以下同様)はそれぞれ独立に、アルキル基若しくはアリール基を示し、Mは2価の金属を示す。]
【0018】
この場合、コンプレッサーや内燃機関等に用いられる場合に潤滑剤組成物と内燃機関等の金属表面とのフリクションをより低減させることができ、かつ冷媒を圧縮する効率をより向上させることができる。したがって、回転トルクをより抑えることが可能となり、電力や燃料消費がより低減されると共に、冷却効率をより高め、発生出力の低下をより抑制することができる。
【0019】
また、上記潤滑剤組成物は、有機金属が潤滑基油の酸化防止にも効果を奏する。したがって、本発明の潤滑剤組成物によれば、長期間使用した場合であっても、潤滑剤組成物が変質することを抑制することができる。
【0020】
上記潤滑剤組成物において、潤滑基油がポリオールエステルであることが好ましい。潤滑基油がポリオールエステルであると、霧化効率あるいは凝縮効果を向上させ、各種内燃機関に用いた場合は電力や燃料消費をより低減し、冷却効率を高め発生出力の低下をより抑制することができる。
【0021】
また、ポリオールエステルを含む潤滑剤組成物をコンプレッサーに用いた場合、ポリオールエステルは一般に用いられる冷媒との相溶性に優れるため、ポリオールエステル以外の潤滑基油と比べて、冷却効果を一層高めることが可能となる。
【0022】
本発明は、上述した潤滑剤組成物と、冷媒ガスとを含む混合冷媒を提供する。本発明の混合冷媒は、上記潤滑剤組成物と冷媒ガスとが予め混合されているため、潤滑性能を高め、冷凍機器の冷却能力を向上させることができる。
【0023】
すなわち、本発明の混合冷媒によれば、様々な冷凍機器において、圧縮機やコンプレッサー等の使用過程におけるメンテナンス時や故障時のユニット交換時に、本発明の混合冷媒をそのまま用いるだけで、潤滑性能を高め、冷凍機器の冷却能力を向上させることができる。
【0024】
また、この場合、残存する冷媒ガスや専用の潤滑剤組成物の量や含有割合に関わらず、本発明の混合冷媒を用いることができるため、作業効率を向上させることができ、さらには、用いる潤滑剤組成物の変更に伴う設備投資や設計変更等の経費を大幅に削減することもできる。
【0025】
本発明は、上述した潤滑剤組成物を含む内燃機関用潤滑油を提供する。本発明の内燃機関用潤滑油は、上記潤滑剤組成物を含んでいるため、内燃機関の潤滑性能を高めることにより、電力や燃料消費を低減させることができ、発生出力の低下を抑制することができる。
【0026】
したがって、例えば本発明の内燃機関用潤滑油をエンジンオイル又はエンジンオイル用添加剤として用いた場合は、クランクシャフト等の摺動部の抵抗が抑制され、アクセルレスポンスを高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の潤滑剤組成物によれば、コンプレッサーや内燃機関等に用いる場合に電力や燃料消費を低減させ、さらに冷却効率を高め発生出力の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態を示して詳細に説明する。
【0029】
[潤滑剤組成物]
本発明の潤滑剤組成物は、潤滑基油と、有機金属及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加剤とを含有する。
【0030】
本発明の潤滑剤組成物は、潤滑基油と、有機金属及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加剤とを含有するため、コンプレッサーや内燃機関等に用いられる場合に潤滑剤組成物と内燃機関等の金属表面とのフリクションを低減させることができ、かつ冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。したがって、回転トルクを抑えることが可能となり、電力や燃料消費が低減されると共に、冷却効率を高め、発生出力の低下を抑制することができる。また、コンプレッサーや内燃機関等の振動や異音を静めることも可能となる。
【0031】
したがって、本発明の潤滑剤組成物によれば、地球温暖化を促進する二酸化炭素の排出量を低減させることができる。
【0032】
上記有機金属としては、カリウム(メチルスルフィニル)メタニド、ナトリウムジヒドロナフタレニジル、ナトリウムアセチリド、炭化カルシウム、フェニルリチウム、ジメチル水銀、ブロモ(メチル)マグネシウム、クロロジヒドリドメチル錫、クロロジフェニルアンチモン、ジメチル銅酸(1−)リチウム、トリス(η−アリル)クロム、ビス(η−ベンゼン)クロム、1,1’−ジクロロフェロセン、(1−ジヒドロキシエチル)フェロセン、フェロセニウム、ビス[(1,2,3,3a,7a−η)−1−インデニル]鉄、ジクロロビス(η−シクロペンタジエニル)チタン、テトラカルボニル[2−(フェニルアセチル)フェニル−C,O]マンガン、[エタン−1,2−ジイルビス(ジフェニルホスファン)−P,P][N−メチルプロパンアミダト(2−)−C,N]ニッケル、又は上記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらの中でも液状の有機金属であることが好ましい。これらの有機金属は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
金属塩としては、二硫化モリブデン等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、添加剤が、有機金属であることが好ましく、有機金属が上記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0035】
この場合、コンプレッサーや内燃機関等に用いられる場合に潤滑剤組成物と内燃機関等の金属表面とのフリクションをより低減させることができ、かつ冷媒を圧縮する効率をより向上させることができる。したがって、回転トルクをより抑えることが可能となり、電力や燃料消費がより低減されると共に、冷却効率をより高め、発生出力の低下をより抑制することができる。
【0036】
また、上記潤滑剤組成物は、有機金属が潤滑基油の酸化防止にも効果を奏する。したがって、本発明の潤滑剤組成物によれば、長期間使用した場合であっても、潤滑剤組成物が変質することを抑制することができる。
【0037】
上記一般式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基若しくはアリール基を示し、Mは2価の金属を示す。
【0038】
上記アルキル基としては、炭素数4〜10の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基が挙げられ、これらは更に置換基を有していてもよい。上記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、これらは置換基を更に有していてもよい。なお、R〜Rはいずれも同一の基であることが好ましい。
【0039】
上記2価の金属としては、クロム、マンガン、チタン、タンタル、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、モリブデン等が挙げられる。これらの中でも、チタン、亜鉛、モリブデンが好ましい。この場合、内燃機関等の金属表面に皮膜をより形成しやすいという利点がある。なお、上記2価の金属は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。特に上記2価の金属が亜鉛の場合と、モリブデンの場合とを組み合わせて用いることがより好ましい。この場合、内燃機関等の内部の金属表面に2層の皮膜を形成することが可能となり、本発明の効果をより奏することができる。
【0040】
本発明の添加剤の含有量は、潤滑基油100質量部に対して0.1質量部〜2質量部であることが好ましい。含有量が0.1質量部未満であると、含有量が上記範囲にある場合と比較して、コンプレッサーや内燃機関等に用いた場合に、冷媒を圧縮させる効率を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、2質量部を超えると、含有量が上記範囲にある場合と比較して、内燃機関等に用いた場合に潤滑剤組成物中にスラッジ等が形成されやすくなる傾向にある。
【0041】
本発明で用いられる潤滑基油としては、特に限定されず、市販の潤滑オイルを使用してもよい。この潤滑基油の具体例としては、天然物や合成物が挙げられる。天然物としては、ヒマシ油、ラード油等の植物油、動物油、鉱油が挙げられ、合成物としては、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン等の炭化水素、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド等の芳香族、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、フタル酸、琥珀酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等の高級脂肪酸、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル等の高級脂肪酸エステル、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等の高級アルコール、炭素数5〜12のモノカルボン酸とポリオールから作られるエステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール等のポリオールエステル、シリコーンオイルやシリケートオイル等の珪素系、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル等のリン含有酸が挙げられる。
【0042】
なお、これらの潤滑基油が含まれていれば、未精製オイルであっても、精製オイルであっても、また再精製オイルであってもよい。
【0043】
この中でも合成物を用いることが好ましく、ポリオールエステルを用いることが更に好ましい。潤滑基油が合成物であると、各種内燃機関に用いた場合は電力や燃料消費をより低減し、冷却効率を高め発生出力の低下をより抑制することができる。また、合成物からなる潤滑基油を含む潤滑剤組成物をコンプレッサーに用いた場合、一般に用いられる冷媒との相溶性に優れるため、冷却効果をより高めることが可能となる。
【0044】
また、合成物の中でも潤滑基油がポリオールエステルであると、霧化効率あるいは凝縮効果を向上させ、各種内燃機関に用いた場合は電力や燃料消費を一層低減し、冷却効率を高め発生出力の低下を一層抑制することができる。
【0045】
さらに、ポリオールエステルを含む潤滑剤組成物をコンプレッサーに用いた場合、ポリオールエステルは一般に用いられる冷媒との相溶性により優れるため、ポリオールエステル以外の合成物と比べて、冷却効果を一層高めることが可能となる。
【0046】
また、本発明の潤滑剤組成物の動粘度は40℃の温度条件下において、30×10−6/s〜60×10−6/sが好ましい。動粘度が30×10−6/s未満であると、動粘度が上記範囲にある場合と比較して、コンプレッサーや内燃機関等に用いた場合に、コンプレッサーや内燃機関等の内部の金属面を傷つける傾向にあり、動粘度が60×10−6/sを超えると、動粘度が上記範囲にある場合と比較して、コンプレッサーや内燃機関等に用いた場合に、コンプレッサーや内燃機関等の起動時の摩擦抵抗が大きくなり、消費電力が大きくなる傾向にある。なお、上記動粘度は100℃の温度条件下において、3×10−6/s〜10×10−6/sであることが更に好ましい。この場合、高温においても本発明の効果をより発揮することが可能となる。なお、動粘度は、規格ASTMD445に基づいて測定したものである。
【0047】
本発明の潤滑剤組成物には、上述した潤滑基油及び超微粒子粉末を含んでいればよく、適宜助剤等を含んでいてもよい。例えば、水抜き剤、ガス漏れ防止剤、オイル漏れ防止剤、防腐剤、減摩剤(磨耗防止剤)、抗酸剤(酸化防止剤)、酸処理剤、清浄分散剤、粘性維持剤(粘土指数向上剤)、抗泡剤(消泡剤)、流動点改良剤(流動点降下剤)、乾式皮膜潤滑剤、固体潤滑剤、燃料添加剤、潤滑防錆剤、ガス漏れ検知剤等が挙げられる。
【0048】
本発明の潤滑剤組成物は、冷凍・冷蔵機及び空調機、自動車用エアコン、各種ギア、コンプレッサー、エンジンオイル等に好適に用いることができる。なお、本発明の潤滑剤組成物は、ボンベや汎用の容器等に収容した形態で供給される。
【0049】
[混合冷媒]
本発明の混合冷媒は、潤滑剤組成物と、冷媒ガスとを含む。なお、当該潤滑剤組成物は、上述した潤滑剤組成物と同等であるため、説明を省略する。
【0050】
本発明の混合冷媒は、潤滑剤組成物と冷媒ガスとが予め混合されているため、潤滑性能を高め、冷凍機器の冷却能力を向上させることができる。
【0051】
すなわち、本発明の混合冷媒によれば、様々な冷凍機器において、圧縮機やコンプレッサー等の使用過程におけるメンテナンス時や故障時のユニット交換時に、本発明の混合冷媒をそのまま用いるだけで、潤滑性能を高め、冷凍機器の冷却能力を向上させることができる。
【0052】
また、この場合、残存する冷媒ガスや専用の潤滑剤組成物の量や含有割合に関わらず、本発明の混合冷媒を用いることができるため、作業効率を向上させることができ、さらには、用いる潤滑剤組成物の変更に伴う設備投資や設計変更等の経費を大幅に削減することもできる。
【0053】
本発明の混合冷媒において。上記冷媒ガスとしては、CFC、HCFC、HFC等を用いることができる。
【0054】
本発明の混合冷媒は、上述した潤滑剤組成物と、上記冷媒ガスとを混合することにより、得ることができる。このときの混合手段は、潤滑剤組成物を容器に収容し、当該潤滑剤組成物中に液化した冷媒を注入して行う。
【0055】
上記混合冷媒中、潤滑剤組成物の含有量は、混合冷媒100質量部に対して潤滑剤組成物を2質量部〜50質量部含有させることが好ましい。潤滑剤組成物の含有量が2質量部未満であると、潤滑剤組成物の含有量が上記範囲にある場合と比較して、発生出力の低下を十分に抑制することが困難となる傾向にあり、潤滑剤組成物の含有量が、50質量部を超えると、潤滑剤組成物の含有量が上記範囲にある場合と比較して、冷却効率を十分に高めることが困難となる傾向にある。
【0056】
上記混合冷媒中、冷媒ガスの含有量は、混合冷媒100質量部に対して冷媒ガスを60質量部〜98質量部含有させることが好ましい。冷媒ガスの含有量が60質量部未満であると、冷媒ガスの含有量が上記範囲にある場合と比較して、容器に収容された混合冷媒を、容器から取り出すときに、圧力不足により必要量を取り出すことが困難となる傾向にあり、冷媒ガスの含有量が、98質量部を超えると、冷媒ガスの含有量が上記範囲にある場合と比較して、混合冷媒の潤滑性能を十分発揮することが困難となる傾向にある。
【0057】
さらに、上記混合冷媒中、潤滑剤組成物と冷媒ガスとの含有割合は、潤滑剤組成物100質量部に対して冷媒ガスを150質量部〜4950質量部含有させることが好ましい。冷媒ガスの含有量が150質量部未満であると、冷媒ガスの含有量が上記範囲にある場合と比較して、容器に収容された混合冷媒を、容器から取り出すときに、圧力不足により必要量を取り出すことが困難となる傾向にあり、冷媒ガスの含有量が、4950質量部を超えると、冷媒ガスの含有量が上記範囲にある場合と比較して、混合冷媒の潤滑性能を十分発揮することが困難となる傾向にある。
【0058】
また、本発明の混合冷媒には、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン等の炭化水素及び/又はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールを更に含有させることも可能である。
【0059】
これらの中でも上記混合冷媒に上記炭化水素を含有させることが好ましい。この場合、霧化効率と凝縮効率がさらに向上されるという利点がある。なお、上記炭化水素の中でも、プロパンを用いることがより好ましい。
【0060】
本発明の混合冷媒は、本発明の混合冷媒自体を冷媒として用いてもよく、従来の冷媒や潤滑基油等に混合して用いてもよい。この中でもコストメリットの観点から、従来の冷媒や潤滑基油等に混合して用いることが好ましい。
【0061】
このときの本発明の混合冷媒の配合量は、従来の冷媒や潤滑基油を100質量部とした場合に、6質量部以上であれば十分に本発明の効果を奏することができる。
【0062】
なお、本発明の混合冷媒には、上述した冷媒ガス及び潤滑剤組成物を含んでいればよく、適宜助剤等を含んでいてもよい。助剤等としては、例えば、ガス漏れ防止剤、ガス漏れ検知剤等が挙げられる。なお、本発明の混合冷媒は、ボンベや汎用の容器等に収容した形態で供給される。
【0063】
[内燃機関用潤滑油]
本発明の内燃機関用潤滑油は、潤滑剤組成物を含む。なお、当該潤滑剤組成物は、上述した潤滑剤組成物と同等であるため、説明を省略する。
【0064】
本発明の内燃機関用潤滑油は、上記潤滑剤組成物を含んでいるため、内燃機関の潤滑性能を高めることにより、電力や燃料消費を低減させることができ、発生出力の低下を抑制することができる。
【0065】
したがって、例えば本発明の内燃機関用潤滑油をエンジンオイル又はエンジンオイル用添加剤として用いた場合は、クランクシャフト等の摺動部の抵抗が抑制され、アクセルレスポンスを高めることができる。
【0066】
本発明の内燃機関用潤滑油中の上記潤滑剤組成物の含有量は、内燃機関用潤滑油100質量部に対して潤滑剤組成物を0.1質量部〜2質量部含有させることが好ましい。潤滑剤組成物の含有量が0.1質量部未満であると、潤滑剤組成物の含有量が上記範囲にある場合と比較して、内燃機関用潤滑油の潤滑性能を十分発揮することが困難となる傾向にあり、潤滑剤組成物の含有量が、2質量部を超えると、潤滑剤組成物の含有量が上記範囲にある場合と比較して、内燃機関等に用いた場合に潤滑剤組成物中にスラッジ等が形成されやすくなる傾向にある。
【0067】
本発明の内燃機関用潤滑油は、本発明の内燃機関用潤滑油自体をエンジンオイル等の潤滑油として用いてもよく、エンジンオイル等の潤滑油に混合して用いてもよい。この中でもコストメリットの観点から、エンジンオイル等の潤滑油に混合して用いることが好ましい。
【0068】
このときの本発明の内燃機関用潤滑油の配合量は、エンジンオイル等の潤滑油を100質量部とした場合に、5質量部以上であれば十分に本発明の効果を奏することができる。
【0069】
なお、本発明の内燃機関用潤滑油には、上述した潤滑剤組成物を含んでいればよく、適宜助剤等を含んでいてもよい。助剤等としては、例えば、オイル漏れ防止剤、カーボン洗浄剤等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
ポリオールエステルを20g(潤滑機油、カストロール社製、商品名:アイスマチック)と、ユシルーブを0.04g(商品名、有機金属、ユシロ化学社製)とを混合して潤滑剤組成物とし、これを容器に収容した。次いで、30gのHFC−134aを上記潤滑剤組成物中に注入し、混合冷媒とした。この混合冷媒の動粘度は46m/sであった。なお、動粘度は40℃の温度条件下、規格ASTMD445に基づいて測定した。
【0072】
(実施例2)
エコステージを200g(商品名、潤滑機油、新日本石油社製)と、ユシルーブを2gとを混合して潤滑剤組成物とし、これを内燃機関用潤滑油とした。この内燃機関用潤滑剤の動粘度は46m/sであった。なお、動粘度は40℃の温度条件下、規格ASTMD445に基づいて測定した。
【0073】
(比較例1)
ユシルーブを用いないこと以外は、実施例1と同様にして、混合冷媒を得た。
【0074】
(比較例2)
ユシルーブを用いないこと以外は、実施例2と同様にして、潤滑剤組成物を得た。
【0075】
[評価方法]
(パワー試験)
市販の乗用車(95年式 アルファロメオ155、5M/T、2000cc、Twin Spark 8V)のエアコンのコンプレッサーに、実施例1及び比較例1で得られた混合冷媒を補充し、シャーシダイナモ(2WD用3000Aモデル、ダイナパック社製)を用いて、エンジンの最大トルク及び最大馬力を測定した。かかる試験は、エアコンのコンプレッサーに予め充填されている700gのHFC−134aに、上記潤滑剤組成物を30g添加して行った。なお、参考例1としてエアコン未使用時(コンプレッサー未作動)のエンジンの最大トルク及び最大馬力も測定した。得られた結果を表1に示す。
【表1】



【0076】
表1から明らかなように、実施例1の混合冷媒を用いた場合、比較例1の混合冷媒を用いた場合と比較して、最大トルクが0.5kg/m、最大馬力が1.9PS向上した。すなわち、実施例1の混合冷媒を用いた場合の最大トルク及び最大馬力がエアコン未使用時である参考例1の最大トルク及び最大馬力とほぼ同等であった。このことから、本発明の混合冷媒を用いると、発生出力が低下することを抑制できることがわかった。
【0077】
(燃料消費試験)
市販の乗用車(95年式 アルファロメオ155、5M/T、2000cc、Twin Spark 8V)に、実施例2及び比較例2で得られた内燃機関用潤滑油を補充し、燃料消費量を測定した。燃料消費量は、車両のトリップメーターの値と燃料給油量で計算した。かかる試験は、市販のエンジンオイル3.8L(モービル社製、商品名:マルチグレード)に、上記内燃機関用潤滑油を200g添加して行った。なお、参考例2としてエアコン未使用時(コンプレッサー未作動)の燃費も測定した。得られた結果を表2に示す。
【表2】



【0078】
表2から明らかなように、実施例2の内燃機関用潤滑油を用いた場合、比較例2の内燃機関用潤滑油を用いた場合と比較して、燃費が1.28km/L向上した。すなわち、実施例1の内燃機関用潤滑油を用いた場合の燃費がエアコン未使用時である参考例2の燃費とほぼ同等であった。このことから、本発明の内燃機関用潤滑油を用いると、電力や燃料消費を低減することができることがわかった。
【0079】
以上より、本発明の潤滑剤組成物をコンプレッサーや内燃機関等に用いる場合に電力や燃料消費を低減させ、さらに冷却効率を高め発生出力の低下を抑制することができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑基油と、有機金属及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加剤と、を含有する潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記添加剤が有機金属である、請求項1記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記有機金属が下記一般式(1)で表される化合物である、請求項2記載の潤滑剤組成物。
【化1】



[式(1)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基若しくはアリール基を示し、Mは2価の金属を示す。]
【請求項4】
前記潤滑基油がポリオールエステルである、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の潤滑剤組成物と、冷媒ガスとを含む混合冷媒。
【請求項6】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の潤滑剤組成物を含む内燃機関用潤滑油。



【公開番号】特開2006−291142(P2006−291142A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117387(P2005−117387)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(504157862)サンコーポレーション株式会社 (6)
【Fターム(参考)】