説明

潤滑油の粘度を変更するために改良されたオレフィンのコポリマー組成物

潤滑油組成物と潤滑油組成物の製造方法が提供される。潤滑油組成物は、60重量%から98重量%のプロピレン誘導単位と他の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する少なくとも1つのプロピレンベースポリマーと、基油を含有し得る。プロピレンベースのポリマーは、トリアッド規則性が90%以上であり、融解熱が80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)が70,000から250,000であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に潤滑油の粘度を改良するための方法および組成物に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、潤滑油のための粘度調整剤および粘度調整剤を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油の粘度は、温度に依存する。潤滑油組成物は、一般には、粘度指数(「VI」)改良成分を含有し、潤滑剤粘度を増加させるように流動学的挙動を変更し、潤滑剤が使用される全温度範囲にわたってより一定の粘度であるように働きかける。
粘度指数は、温度と関連した液体の粘度の変化の割合を測定するために使用されてきた。一般に、粘度指数が大きくなるほど、温度に対する粘度の相対的な変化がより小さい。VI向上剤または粘度調整剤は、潤滑剤組成物の粘度の温度依存性を低減するために使用され、潤滑剤組成物は広い温度範囲で使用することができる。他の言葉で言えば、VI向上剤は、潤滑剤組成物が高温、たとえば真夏の温度で、さらさらになることを防ぎ、低温、たとえば真冬の温度で粘っこくなり過ぎることを防ぐ。VI向上剤として知られているものとしては、ポリメタクリレート、エチレン−プロピレンコポリマーおよびエチレン−プロピレンジエン−修飾コポリマー(EPDMs)などのオレフィンコポリマー、およびスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー(SEBS)などの水素化スチレンブロックコポリマーが挙げられる。
【0003】
近年、エチレン/α−オレフィンコポリマーが粘度調整剤として広く使用されており、潤滑剤の粘度の温度依存性を低減する目的で、粘度指数を改良する効果を示している。たとえば、米国特許第6,589,920号、米国特許第5,391,617号、米国特許第7,053,153号、および米国特許第5,374,700号を参照。潤滑油は、その中のワックス成分が結晶として固化する傾向があるので、低温で流動性を失う。
高エチレン含有コポリマーは、効果的に油の増粘特性、剪断安定性および低温粘度特性を改善する一方で、低エチレン含有コポリマーが、油の流動点を下げる目的で添加される。非晶質および半結晶エチレンプロピレンコポリマーの混合物は、潤滑油組成物としてもよく知られている。2つの該エチレン−プロピレンコポリマーの組み合わせによって、増粘効率、剪断安定性、低温粘度特性および流動点を向上させることができる。たとえば、米国特許第5,391,617号、および欧州特許第0,638,611号を参照。しかしながら、これらのエチレンベースのコポリマーのエチレン成分は、高い割合でオイルゲルの中のワックスと相互作用する傾向があることが見い出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改良された低温特性で、潤滑剤組成物の粘度の温度依存性を低減する新しいVI向上剤または粘度調整剤、および広い温度範囲にわたって使用できる潤滑剤組成物に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
潤滑油組成物および潤滑油組成物の製造方法が提供される。少なくともある特定の実施形態では、潤滑油組成物は、基油と、60重量%から98重量%のプロピレン誘導単位と2重量%から40重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する少なくとも1つのプロピレンベースポリマーとを含有する。プロピレンベースのポリマーのトリアッド規則性は90%以上であり、融解熱は80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)は70,000から250,000であり、MWDは2.0から2.5であり得る。
【0006】
少なくとも1つの他の特定の実施形態では、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.5重量%から15重量%の少なくとも1つのプロピレンベースポリマーであって、70重量%から95重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から30重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有するプロピレンベースポリマーと;潤滑油組成物の総重量をベースにして、60重量%から98重量%の基油と;潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から20重量%の1つまたは複数の分散剤と;潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から10重量%の1つまたは複数の流動点降下剤を含有する。プロピレンベースのポリマーの融解熱は80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)は120,000から150,000、MWDは2.0から2.5である。
【0007】
少なくとも1つの他の特定の実施形態では、潤滑油組成物は、基油と、80重量%から88重量%のプロピレン誘導単位と12重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する少なくとも1つのプロピレンベースポリマーとを含有する。プロピレンベースのポリマーは、トリアッド規則性が90%以上であり、融解熱が80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)が120,000から250,000であり、MWDが2.0から2.5である。プロピレンベースのポリマーは、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.5重量%から15重量%の量が存在する。
【0008】
少なくとも1つの他の特定の実施形態では、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.5重量%から15重量%の少なくとも1つのプロピレンベースポリマーであって、80重量%から88重量%のプロピレン誘導単位と12重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィン誘導単位を含有するプロピレンベースポリマーと、潤滑油組成物の総重量をベースにして、60重量%から98重量%の基油と、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から20重量%の1つまたは複数の分散剤と、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から10重量%の1つまたは複数の流動点降下剤とを含有する。プロピレンベースのポリマーは、トリアッド規則性が90%以上であり、融解熱が80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)が120,000から250,000であり、MWDが2.0から2.5である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(詳細な説明)
詳細な説明を提供する。添付のそれぞれの特許請求の範囲は、別々の発明を定義し、それらは、権利侵害のために、特許請求の範囲に記載されているさまざまな要素または限定に対する均等物を含むように認識される。文脈によって変わるが、以下で「発明」を参照するすべての場合に、ある特定の実施形態だけをいう場合がある。他の場合には、「発明」を参照する場合には、必ずしも全部である必要はないが、特許請求の範囲の1つまたは複数の主題をいうと認識される。本発明のそれぞれは以下により詳細に記述され、特定の実施形態、説明および実施例が含まれるが、本発明は、これらの実施形態、説明または実施例(この特許の情報が利用可能な情報および科学技術と組み合わされる場合に、当業者が本発明を創造し、使用することができるものも含まれる)に限定されるわけではない。さらに、当業者には明らかなように、本願の実施形態および特許請求の範囲のそれぞれの記載は、記載されていない要素の追加によって修正されてもよく、または、本明細書に記載されるこれらの要素だけに限定されてもよい。
【0010】
プロピレンベースのポリマーは粘度指数向上剤として使用される。驚いたことに、これらのポリマーは、良好な剪断安定性および粘度特性を持つ粘度指数向上剤として、容認可能な特性を持つことが見い出された。より詳細には、α−オレフィン含有量が小さいプロピレンベースのポリマーが、VI向上剤として使用される場合には、油の増粘特性、剪断安定性および低温粘度特性を改善する一方で、油の流動点を下げることが見い出された。これらのプロピレン−ベースのVI向上剤は、潤滑剤組成物の粘度の温度依存性を低減するので、潤滑剤組成物は、固体またはゲルを生成ぜずに、広い温度範囲にわたって使用することができる。
【0011】
プロピレン−ベースのポリマー
プロピレンベースのポリマーは1つまたは複数のプロピレン−α−オレフィン−コポリマー、プロピレン−α−オレフィン−ジエンターポリマー、またはプロピレン−ジエンコポリマーであり得る。しかしながら、記載を簡潔および容易にするために、用語「プロピレンベースポリマー」と「PCP」は本明細書では同義で使用され、60重量%から99.7重量%のプロピレン誘導単位を含有する1つまたは複数のプロピレン−α−オレフィン−コポリマー、プロピレン−α−オレフィン−ジエンターポリマーおよびプロピレン−ジエンコポリマーである。さらに、記載を容易にするために、本発明のPCPを参照する場合には、複数のモノマー(すなわち、プロピレンおよびエチレン)またはモノマーの誘導単位(すなわち、プロピレン誘導単位および/またはα−オレフィン誘導単位)から製造されるPCPと互換的に参照されてもよい。
一実施形態では、プロピレンベースのポリマーはプロピレンと1つまたは複数のα−オレフィンとの重合によって調製できる。1つまたは複数のα−オレフィンは、エチレン、または1つまたは複数のC4〜C20α−オレフィン、またはエチレンと1つまたは複数のC4〜C20α−オレフィンとの組み合わせを含有してもよい。好ましい実施形態では1つまたは複数のα−オレフィンは、エチレンを含有する。
【0012】
別の実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、プロピレンと、エチレンおよび/または1つまたは複数のC4〜C20α−オレフィン、またはエチレンと1つまたは複数のC4〜C20α−オレフィンと1つまたは複数のジエンの組み合わせを重合することによって調製できる。1つまたは複数のジエンは共役または非共役であり得る。好ましくは、1つまたは複数のジエンは非共役である。
別の実施形態では、プロピレンベースのポリマーはプロピレンと1つまたは複数のジエンとの重合によって調製できる。なお別の実施形態では、プロピレンベースのポリマーはプロピレンとエチレンおよび/または少なくとも1つのC4〜C20α−オレフィン、またはエチレンおよび少なくとも1つのC4〜C20α−オレフィンおよび1つまたは複数のジエンとの組み合わせを重合することによって調製できる。1つまたは複数のジエンは共役または非共役であり得る。好ましくは、1つまたは複数のジエンは非共役である。
【0013】
コモノマーは直鎖または分枝であり得る。好ましい線状コモノマーは、エチレンまたはC4〜C8α−オレフィン、一層好ましくはエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテン、さらに一層好ましくはエチレンまたは1−ブテンを含有する。好ましい分枝のコモノマーは、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、および3,5,5−トリメチル−1−ヘキセンを含有する。1つまたはそれ以上の実施形態では、コモノマーは、スチレンを含有できる。
ジエンの例としては、これに限定されるものではないが、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ビニルノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、ジエンはENBである。
【0014】
プロピレンベースのポリマーを製造するための好ましい方法および触媒は、その全体が参照により本願明細書に援用される、米国特許出願公開第2004/0236042号および国際特許出願公開第WO2005/049672号および米国特許第6,881,800号に見い出される。国際特許出願公開第WO2003/040201号に記載されるもののようなピリジンアミン錯体も、本発明に有用なプロピレンベースのポリマーを産生(製造)するために役に立つ。触媒は、周期的に分子間再配置をする流動性錯体を含有し得ることで、米国特許6,559,262号に記載されているように、立体規則性に所望の中断を与える。触媒はプロピレンの挿入に複合的な影響を持つ立体剛性(stereorigid)錯体であり得る。欧州特許第1070087号リ−ガ−(Rieger)参照。欧州特許第1614699号に記載される触媒も、本発明に好適な骨格を生成するために使用できる。
【0015】
プロピレンベースのポリマーの重量パーセントベースの平均プロピレン含有量は、ポリマーの重量ベースで約60重量%から約99.7重量%、一層好ましくは約60重量%から約99.5重量%、一層好ましくは約60重量%から約98重量%、一層好ましくは約60重量%から約97重量%、一層好ましくは約60重量%から約95重量%あり得る。他の好ましい範囲は、ポリマーの重量ベースで、約70重量%から約95重量%の範囲のプロピレン−誘導単位、一層好ましくは約75重量%から約95重量%の範囲のプロピレン−誘導単位、一層好ましくは約80重量%から約95重量%の範囲のプロピレン−誘導単位、一層好ましくは約80重量%から約90重量%の範囲のプロピレン−誘導単位、一層好ましくは約80重量%から約88重量%の範囲のプロピレン−誘導単位である。一実施形態では、残部は、1つまたは複数のα−オレフィンの誘導単位を含有する。1つまたは複数のα−オレフィンは、エチレン、または1つまたは複数のC4〜C20α−オレフィンまたはエチレンと1つまたは複数のC4〜C20α−オレフィンとの組み合わせを含有してもよい。別の実施形態では、1つまたは複数のα−オレフィンは、エチレン、または1つまたは複数のC4〜C12α−オレフィンまたはエチレンと1つまたは複数のC4〜C12α−オレフィンとの組み合わせを含有してもよい。好ましい実施形態では、1つまたは複数のα−オレフィンは、エチレンを含有する。別の実施形態では、1つまたは複数のα−オレフィンは、ブテンを含有する。
【0016】
別の実施形態では、残部は、1つまたは複数のジエンの誘導単位を含有し、前述した1つまたは複数のα−オレフィンの誘導単位を含有してもよい。上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、α−オレフィンはエチレン、ブテン、ヘキセンまたはオクテンである。他の実施形態では、2つのα−オレフィンが存在し、好ましくはエチレンと、ブテン、ヘキセンまたはオクテンの何れか1つである。
ジエンを含有する実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、ポリマーの重量ベースで、約0.2重量%から約24重量%、一層好ましくは約0.5重量%から約12重量%、一層好ましくは約0.6重量%から約8重量%、一層好ましくは約0.7重量%から約5重量%の非共役ジエンの誘導単位を含有する。他の実施形態では、ジエン含有範囲は、ポリマーの重量ベースで、約0.2重量%から約10重量%、一層好ましくは約0.2重量%から約5重量%、一層好ましくは約0.2重量%から約4重量%、好ましくは約0.2重量%から約3.5重量%、好ましくは約0.2重量%から約3.0重量%、好ましくは約0.2重量%から約2.5重量%である。上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、ENBの誘導単位を約0.5重量%から約4重量%、一層好ましくは約0.5重量%から約2.5重量%、一層好ましくは約0.5重量%から約2.0重量%の量で含有する。
【0017】
他のジエンを含有する実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、好ましくは上述の1つまたは複数の範囲のプロピレン誘導単位とジエン誘導単位とを含有し、残部は1つまたは複数のC2および/またはC4〜C20オレフィンを含有する。一般に、これによって、ポリマーの重量ベースで、好ましくは約5重量%から約40重量%の1つまたは複数のC2および/またはC4〜C20オレフィンを含有するプロピレンベースのポリマーとなる。C2および/またはC4〜C20オレフィンが存在する場合には、ポリマー中のこれらのオレフィンの合計量は、好ましくは少なくとも約5重量%であって、本明細書に記載されている範囲内に入る。1つまたは複数のα−オレフィンの他の好ましい範囲は、約5重量%から約35重量%、一層好ましくは約5重量%から約30重量%、一層好ましくは約5重量%から約25重量%、一層好ましくは約5重量%から約20重量%、一層好ましくは約5から約17重量%、一層好ましくは約5重量%から約16重量%の範囲を含む。
【0018】
プロピレンベースのポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000,000以下であり、数平均分子量(Mn)は約3,000,000以下であり、z−平均分子量(Mz)は約10,000,000以下であり、ベースラインとしてアイソタクチックポリプロピレンを使用するポリマーの重量平均分子量(Mw)で測定して、g指数は0.95以上であり、これらのすべては、たとえば3D SEC、本明細書に記載するようにGPC−3Dとも呼ばれるサイズ排除クロマトグラフィーによって決定できる。
【0019】
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのMwは約5,000から約5,000,000g/モル、一層好ましくはMwは約10,000から約1,000,000g/モル、一層好ましくはMwは約20,000から約500,000g/モル、一層好ましくはMwは約50,000から約400,000g/モル、一層好ましくはMwは約60,000から約300,000g/モル、一層好ましくはMwは約70,000から約250,000g/モルであって、Mwは本明細書に記載するように決定される。1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのMwは最低が約70,000、約80,000、約90,000、約100,000、または約120,000から最高が約160,000、約180,000、約200,000、約220,000、または約250,000の範囲であり得る。
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのMnは約2,500から約2,500,000g/モル、一層好ましくはMnは約5,000から約500,000g/モルであり、一層好ましくはMnは約10,000から約250,000g/モルであり、一層好ましくはMnは約25,000から約200,000g/モルであり、Mnは本明細書に記載するようにして決定される。
【0020】
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのMzは約10,000から約7,000,000g/モルであり、一層好ましくはMzは約50,000から約1,000,000g/モルであり、一層好ましくはMzは約80,000から約700,000g/モルであり、一層好ましくはMzは約100,000から約500,000g/モルであり、Mzは本明細書に記載するようにして決定される。
プロピレンベースのポリマーの分子量分布指数(MWD=(Mw/Mn))は、しばしば「多分散度指数」(PDI)として参照され、約1.5から40であり得る。実施形態の1つではMWDは、上限が約40、または20、または10、または5、または4.5、または4、または3、または2.5、または2.4、または2.2であり、下限が約1.3、または1.5、または1.7、または1.8、または2.0、または2.1であり得る。上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのMWDは約1.8から5、一層好ましくは1.8から3、最も好ましくは約2.1から2.4である。分子量(MnおよびMw)と分子量分布(MWD)を決定するための技法は、米国特許第4,540,753号(米国特許プラクティスのために参照により本願明細書に援用される)およびそこに引用された参考文献、米国特許プラクティスのために参照により本願明細書に援用される「Macromolecules、1988年、第21巻、3360頁(Verstrate et al.)」、およびそこに引用された参考文献、および、参照によってその全体を本明細書に援用する、米国特許第6,525,157号、5列、1行−44行、に開示される手順にしたがって、見い出すことができる。
【0021】
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのg’指数値は0.95以上、好ましくは少なくとも0.98以上、より好ましくは少なくとも0.99以上であり得、アイソタクチックポリプロピレンの固有粘度をベースラインとして使用して、g’指数はポリマーのMwで測定される。本明細書で使用される場合、g’指数は以下のように定義される。
g’=ηb/ηl
(1) ηbはプロピレンベースポリマーの固有粘度であり、ηlは、プロピレンベースポリマーとしての、同一粘度平均分子量(Mv)の線状ポリマーの固有粘度である。ηl=KMvα、Kおよびαは線状ポリマーで測定された値であり、g’指数測定のために使用される同一の計器で取得されるべきである。
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーの密度は、室温でASTM D−1505試験方法にしたがって測定をして、約0.85g/cm3から約0.92g/cm3、一層好ましくは約0.87g/cm3から0.90g/cm3、一層好ましくは約0.88g/cm3から約0.89g/cm3であり得る。
【0022】
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのメルトフローレート(MFR、2.16kg量@230℃)は、(以下に記載する)修正されたASTM D−1238試験方法によって測定をして、0.2g/10分以上である。好ましくは、MFR(2.16kg@230℃)は約0.5g/10分から約200g/10分であり、一層好ましくは約1g/10分から約100g/10分である。実施形態の1つでは、プロピレンベースのポリマーのMFRの上限は約200g/10分、約150g/10分、約100g/10分、約75g/10分、約50g/10分、約30g/10分、約25g/10分、または約20g/10分であり、下限は約0.1g/10分、約0.5g/10分、約1g/10分、約2g/10分、約3g/10分、約4g/10分、約5g/10分、約8g/10分、または約10g/10分である。別の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのMFRは0.5g/10分から200g/10分であり、好ましくは2g/10分から30g/10分であり、一層好ましくは3g/10分から21g/10分であり、一層好ましくは5g/10分から30g/10分であり、一層好ましくは10g/10分から30g/10分であり、一層好ましくは10g/10分から約25g/10分であり、一層好ましくは2g/10分から約10g/10分である。
【0023】
プロピレンベースのポリマーのASTM D1646にしたがって決定された、ムーニー粘度ML(1+4)@125℃は100未満であり、一層好ましくは75未満、さらに一層好ましくは60未満、最も好ましくは30未満であり得る。上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、ムーニー粘度の範囲は最低が約1、5、10、または15であり、最高が約30、60、75または100であり得る。
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、後述するDSC手順にしたがって決定されたプロピレンベースのポリマーの融解熱(Hf)は、約0.5ジュール毎グラム(J/g)以上であって、約80J/g以下であり、好ましくは約75J/g以下であり、好ましくは約70J/g以下であり、一層好ましくは約60J/g以下であり、一層好ましくは約50J/g以下であり、一層好ましくは約35J/g以下である。また好ましくは、プロピレンベースのポリマーの融解熱は約1J/g以上であって、好ましくは約5J/g以上である。別の実施形態では、プロピレンベースのポリマーの融解熱(Hf)は、約0.5J/gから約75J/gであり、好ましくは約1J/gから約75J/gであり、一層好ましくは約0.5J/gから約35J/gである。好ましいプロピレンベースのポリマーおよび組成物は融点(Tm)および融解熱の両方から特徴付けることができ、その特性は、ポリマー鎖によって結晶子の形成を妨げる、コモノマーの存在または立体的不規則性によって影響を受ける。1つまたはそれ以上の実施形態では、融解熱の範囲は下限が1.0J/g、または1.5J/g、または3.0J/g、または4.0J/g、または6.0J/g、または7.0J/gであり、上限が30J/g、または35J/g、または40J/g、または50J/g、または60J/gまたは70J/g、または75J/g、または80J/gである。
【0024】
プロピレンベースのポリマーの結晶化度は、結晶化度の割合(すなわち%結晶化度)を単位として表すこともできる。上述または本明細書の別の箇所のある種の実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、以下に記載されるDSC手順によって決定される0%結晶化度を有することによって特徴付けられ、実質的に非晶質である。上述または本明細書の別の箇所の他の実施形態では、プロピレンベースのポリマーの%結晶化度は0.5%から40%であり、好ましくは1%から30%であり、一層好ましくは5%から25%であり、%結晶化度は以下に記載されるDSC手順によって決定される。別の実施形態では、プロピレンベースのポリマーの結晶化度は好ましくは40%未満であり、好ましくは約0.25%から約25%であり、一層好ましくは約0.5%から約22%であり、最も好ましくは約0.5%から約20%である。上記に開示したように、最上位のポリプロピレンの熱エネルギーは189J/g(すなわち、100%結晶化度は209J/gに等しい。)と見積もられる。
【0025】
このレベルの結晶化度に加えて、プロピレンベースのポリマーは、好ましくは単一の広い融解転移を有する。しかしながら、プロピレンベースのポリマーは、主要なピークに隣接する二次的な融解ピークを示すが、本明細書の目的のために、該二次的な融解ピークはあわせて単一の融点として1つに見なされ、これらのピークの最高点(本明細書に記載するようなベースラインに対して)はプロピレンベースのポリマーの融点と見なされる。
プロピレンベースのポリマーの融点は(DSCによって測定される)、好ましくは100℃以下であり、好ましくは90℃未満であり、好ましくは80℃未満であり、一層好ましくは75℃以下であり、好ましくは約25℃から約80℃の範囲、好ましくは約25℃から約75℃の範囲、一層好ましくは約30℃から約65℃の範囲である。
【0026】
プロピレンベースのポリマーの融解熱、%結晶化度および融解温度は、たとえば以下のステップを使用して示差走査熱量測定(DSC)手順で決定することができる。
約0.5gを2枚のマイラー(Mylar)(登録商標)フィルム(「マイラー」)の間に配置する。次にマイラー/ポリマー/マイラー「サンドイッチ」を上部カバーシートの無い小さな金型の上部に配置する。金型の寸法は1インチ×2インチ×約0.020インチである。次に金型およびサンプルは加熱された液圧プレスの中に配置される。プレス温度は通常150℃から200℃の間に設定される。圧力プラテンが閉じられ、約15トンの力が約3分〜5分の間維持される。次に、プラテンを開放するが、上記に規定された温度であり、マイラー/ポリマー/マイラー「サンドイッチ」が金型から除去される。サンプル、マイラー/ポリマー/マイラー「サンドイッチ」は24時間以上48時間以下、室温で空気中に放置する(実時間ということに注意)ことで焼きなますことができる。アニーリング期間後に、マイラーから圧力パッドを除去し、横に切ってそれ自体の上に折り重ね、二層を形成する。この二層から、レザーパンチまたは他のペーパーパンチ装置を使用して円板を切り取る。5個のサンプルが準備される。サンプルの重量が記録されるが、8mg以上12mg以下である。次にサンプルは個別に10マイクロリットルのアルミニウム皿の中に配置される。非換気型のアルミニウム蓋がそれぞれの皿の上部に圧着され、サンプルと皿との間の良好な接触を確実にする。次に、サンプル皿を、基準側に蓋付きの空皿を備える較正されたDSC測定器具の中に配置し、N2パージガス(約20ml/分)下で、以下のパラメーターを使用して測定した。空の皿でさらに5つのサンプルを測定した。サンプル測定から空の皿の測定の自動減算を可能にする。DSC熱履歴は、次の通りである。DSCで可能なだけ早く、室温から−75℃へサンプル冷却する。−75℃を3分間維持する。加熱速度20℃/分で、温度をサンプルを完全に溶融するのに十分高い温度に上昇させる。このステップで生成されるサーモグラムは、融点、比熱および結晶化度の程度を判定するために使用される。DSCからの出力データは、時間(分)、温度(℃)、および熱量(ワット)から成る。5つのサンプルの溶融サーモグラムのそれぞれは、次の通りに解析される。第1に、合計熱量をサンプル重量で除算し、比熱(単位:W/g)を得る。第2に、ベースラインが構成され、比熱から減算されて、ベースライン−減算熱量を与える。本明細書で解析するために、直線ベースラインが使用される。ベースライン温度の下限は、ガラス転移温度よりも上であるが、サンプルが溶融し始める温度未満である。ベースライン温度の上限は、溶融吸熱を完了するよりも5℃から10℃高い温度である。次に、以下の3つのパラメーターが、5回の測定のそれぞれに対して独立に決定される。
(1)融点;ピーク融解温度は、最大ベースライン−減算熱量を持つ下限ベースラインと上限ベースラインの間の温度である。
(2)溶融比熱;Δhm(J/g)は、ベースラインの上限下限間で、時間に対するベースライン−減算熱量を積分することによって得られる溶融吸熱下の領域である。
(3)パーセント結晶化度は溶融比熱を189J/gで除算し、100を積算することによって決定される。
【0027】
サンプルの融解温度、比熱、およびパーセント結晶化度は、異常値を除いた後に、5回の走査を平均する。異常値は、95%信頼水準を使用して、Dixon(Biometrics,vol9、#1、3月、1953年、74−89)によって規定された方法で決定される。
【0028】
トリアッド規則性
ポリマーのトリアッド規則性は3つの隣接するプロピレン単位の配列の相対的な立体規則性であり、m配列とr配列の2つの組み合わせで表わされる頭−尾結合からなる鎖である。通常、プロピレンベースのポリマーは、ポリマー中のすべてのプロピレントリアッドに対する、特定の立体規則性単位の数の割合で表わされる。
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのトリアッド規則性は、約80%以上、約83%以上、約85%以上、約87%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、または約95%以上である。好ましくは、プロピレンベースのポリマーのトリアッド規則性は、約80%以上、好ましくは約85%以上、または好ましくは約90%以上である。別の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのトリアッド規則性は、約88%以上、約90%以上、または約96%以上である。1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーのトリアッド規則性の範囲は、下限が80%、または82%、または84%、または86%であって、上限が約88%、90%92%、93%、または94%、または95%、または96%、またはそれ以上である。
【0029】
プロピレンベースポリマーのトリアッド規則性(mm部分)は13C NMRスペクトルによって決定することができ、以下の式である。
mm部分=PPP(mm)/(PPP(mm)+PPP(mr)+PPP(rr))
PPP(mm)、PPP(mr)およびPPP(rr)は、以下の頭−尾結合からなる3つのプロピレン単位鎖における第二番目の単位のメチル基に由来するピーク面積を示す。
【化1】

【化2】

【化3】

【0030】
メチル炭素領域(19−23 parts per million(ppm))に関連する13C NMRスペクトルは、第1領域(21.2−21.9ppm)、第2領域(20.3−21.0ppm)および第3領域(19.5−20.3ppm)に分割することができる。スペクトル中の各ピークは、雑誌「ポリマー、第30巻(1989)、1350頁」中の記載を参照して同定された。第1領域において、PPP(mm)で表される3つのプロピレン単位鎖における第2単位のメチル基は共鳴する。第2領域において、PPP(mr)で表される3つのプロピレン単位鎖における第2単位のメチル基は共鳴し、隣接する単位がプロピレン単位およびエチレン単位であるプロピレン単位のメチル基(PPE−メチル基)は共鳴する(20.7ppmの近くで)。第3領域において、PPP(rr)で表される3つのプロピレン単位鎖における第2単位のメチル基は共鳴し、隣接する単位がエチレン単位であるプロピレン単位のメチル基(EPE−メチル基)は共鳴する(19.8ppmの近くで)。さらなる詳細および情報は、米国特許第5,504,172号で見い出すことができる。
【0031】
2,1挿入の例が以下の構造1および2に示される。
構造(1):
【化4】

構造(2):
【化5】

(nは2以上である。)
【0032】
炭素Aのピークおよび炭素A’のピークは第2領域に現れる。上記のように、炭素Bのピークおよび炭素B’のピークは第3領域に現れる。第1領域から第3領域に現れるピークの中で、頭−尾結合からなる3プロピレン単位鎖に基づかないピークは、PPE−メチル基、EPE−メチル基、炭素A、炭素A’、炭素B、および炭素B’に基づくピークである。
PPE−メチル基に基づくピーク面積は、PPE−メチン基のピーク面積(30.8ppm近辺での共振)によって見積もることができ、EPE−メチル基に基づくピーク面積は、EPE−メチン基のピーク面積(33.1ppm近辺での共振)によって見積もることができる。炭素Aに基づくピーク面積は、炭素Bのメチル基が直接結合したメチン炭素のピーク面積(33.9ppm近辺での共振)を2倍することによって見積もることができ、炭素A’に基づくピーク面積は炭素B’のメチル基の隣接するメチン炭素のピーク面積(33.6ppm近辺での共振)によって見積もることができる。炭素Bに基づくピーク面積は隣接するメチン炭素のピーク面積(33.9ppm近辺での共振)によって見積もることができ、炭素B’に基づくピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.6ppm近辺での共振)によって見積もることができる。
【0033】
第2領域および第3領域の合計ピーク面積からこれらのピーク面積を減算することによって、頭−尾結合からなる3つのプロピレン単位鎖(PPP(mr)およびPPP(rr))に基づくピーク面積を得ることができる。このように、PPP(mm)、PPP(mr)およびPPP(rr)のピーク面積を見積もることができ、頭−尾結合からなるプロピレン単位鎖のトリアッド規則性を決定することができる。
同様に、第2領域および第3領域の合計ピーク面積のピーク面積から、プロピレン挿入(2,1および1,3の両方)中の誤差としてのピーク面積を減算することによって、頭−尾結合からなる3つのプロピレン単位−鎖(PPP(mr)およびPPP(rr))に基づくピーク面積を得ることができる。このように、PPP(mm)、PPP(mr)およびPPP(rr)のピーク面積を見積もることができ、このために、頭−尾結合からなるプロピレン単位鎖のトリアッド規則性を決定することができる。
【0034】
プロピレンエラストマー中のすべてのプロピレン挿入に対する2,1−挿入の割合は、「ポリマー,第30巻(1989年)、1350頁」に記載されている以下の式によって演算することができる。
2,1−挿入(%)に基づく逆に挿入される単位の割合は以下の式に等しい。
【数1】

【0035】
上記の式中のピークの名称は、雑誌「Rubber Chemistry and Technology、第44巻(1971年)、781頁」Carman,et al.の方法によって名付けられ、ここでIαδはαδ+二次的な炭素ピークのピーク面積を意味する。ピークが重なっているので、Iαβ(構造(ii))からIαβ(構造(i))のピーク面積を分離することは難しい。したがって、対応する領域の炭素ピークは代用され得る。
1,3挿入の測定にはβγピークの測定が必要である。2つの構造がβγピークの一因になり得る。(1)プロピレンモノマーの1,3挿入と(2)プロピレンモノマーの2,1−挿入に続く2つのエチレンモノマー。このピークは1.3挿入ピークとして記載され、我々は、このβγピークを記述し、このβγピークが4つのメチレン単位の配列を表すと了解される米国特許第5,504,172号に記載される手順を使用する。これらの誤差の量の割合(%)はβγピーク(27.4ppm近辺での共振)の領域を、全メチル基ピークおよびβγピークの領域の1/2の合計で除算し、次に結果値に100を乗算することによって決定される。3つ以上の炭素原子のα−オレフィンが、オレフィン重合触媒を使用して重合されると、多くの逆に挿入されるモノマー単位が、結果として得られるオレフィンポリマーの分子の中に存在する。キラルメタロセン触媒の存在下で、3つ以上の炭素原子のα−オレフィンの重合によって調製されるポリオレフィンでは、通常の1,2−挿入に加えて2,1−挿入または1,3−挿入が発生し、2,1−挿入または1,3−挿入などの逆に挿入される単位が、オレフィンポリマー分子中に形成される(Macromolecular Chemistry Rapid Communication、第8巻、305頁(1987年)、by K. Soga,T. Shiono,S. TakemuraおよびW. Kaminski参照)。
【0036】
好ましくは、13C NMRによって測定される、全プロピレン挿入中のプロピレンモノマーの2,1−挿入に基づく、プロピレンベースのポリマーの逆に挿入されるプロピレン単位の割合は、0.5%より大きく、または0.6%より大きい。13C NMRによって測定される、プロピレンモノマーの1,3−挿入に基づく、プロピレンベースのポリマーの逆に挿入されるプロピレン単位の割合は、0.05%より大きく、または0.06%より大きく、または0.07%より大きく、または0.08%より大きく、または0.085%より大きい。
【0037】
混合
1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、ポリブテン、水素化されてもよいブタジエンまたはイソプレン、またはブタジエンまたはイソプレンの組み合わせとスチレンのポリマー、スチレン/無水マレイン酸ポリマーのエステル、スチレン/無水マレイン酸/アクリラートターポリマーのエステルなどのエステルベースの粘度指数調整剤、およびポリメタクリル酸などの他のポリマー粘度指数調整剤と混合し得る。該混合物の該粘度指数調整剤の例は、アクリラート−またはメタクリラート−含有コポリマーまたはスチレンのコポリマー、およびスチレン/マレイン酸エステル(典型的にスチレン/無水マレイン酸コポリマーのエステル化によって調製される)などの不飽和カルボン酸のエステルを含む。
【0038】
1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、それ自体が別個のランダムプロピレンベースのポリマーのブレンドであり得る。該混合物は、エチレン−ベースのポリマーおよびプロピレンベースのポリマー、または該エチレン−ベースのポリマーとプロピレンベースのポリマーの少なくとも何れか1つを含有する。プロピレンベースのポリマーの数は、3つ以下、一層好ましくは2つ以下であり得る。プロピレンベースのポリマーが別個のランダムプロピレンベースのポリマーのブレンドである実施形態では、ポリブテン、スチレンとブタジエンまたはイソプレン、またはブタジエンまたはイソプレンの組み合わせとのポリマー、スチレン/無水マレイン酸ポリマーのエステル、スチレン/無水マレイン酸/アクリラートターポリマーのエステルなどのエステルベースの粘度指数調整剤、およびポリメタクリル酸などの他のポリマーの粘度指数調整剤とさらに混合されてもよい。該混合物の該粘度指数調整剤の例は、アクリラート−またはメタクリラート−含有コポリマーまたはスチレンのコポリマー、およびスチレン/マレイン酸エステル(典型的にはスチレン/無水マレイン酸コポリマーのエステル化によって調製される)などの不飽和カルボン酸のエステルを含む。
上述または本明細書の別の箇所の1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、オレフィン含有量、ジエン含有量、または両方が異なる2つのプロピレンベースのポリマーのブレンドを含有し得る。
【0039】
別の実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、国際特許出願公開第WO02/36651号の手順にしたがって調製されたコポリマーを含有し得る。同様に、プロピレンベースのポリマーは、国際特許出願公開第WO2003/040201号、国際特許出願公開第WO2003/040202号、国際特許出願公開第WO2003/040095号、国際特許出願公開第WO2003/040201号、国際特許出願公開第WO2003/040233号、および/または国際特許出願公開第WO2003/040442号に記載されるポリマーと一致するポリマーを含有し得る。加えて、プロピレンベースのポリマーは、その全体が参照によって援用される、米国特許第6,770,713号および米国特許出願公開第2005/215964号に記載される好適なプロピレンホモ−およびコポリマーと共に、欧州特許第1233191号、および米国特許6,525,157号に記載されるポリマーと一致するポリマーを含有し得る。プロピレンベースのポリマーは、欧州特許第1614699号または欧州特許第1017729号に記載されるポリマーと一致する1つまたは複数のポリマーを含有し得る。
【0040】
グラフト化される(官能化される)骨格
1つまたはそれ以上の実施形態では、プロピレンベースのポリマーは、1つまたは複数のグラフトモノマーを使用してグラフト化(すなわち「官能化」)できる。本明細書で使用する場合、用語「グラフト化(grafting)」は、グラフトモノマーをプロピレンベースのポリマーのポリマー鎖へ共有結合させることを意味する。
グラフトモノマーは、酸無水物、エステル、塩、アミド、イミド、アクリラートまたは同種のものなどの、少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸または酸誘導体であり得るし、または、含有する。モノマーの一例としては、これに限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクテン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オキサ−1,3−ジケトスピロ(4.4)ノネン、ビシクロ(2.2.1)ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ナド酸無水物、メチルナド酸無水物、ヒム酸無水物、メチルヒム酸無水物、および5−メチルビシクロ(2.2.1)ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物が挙げられる。他の好適なグラフトモノマーとしては、アクリル酸メチルおよび高級アルキルアクリラート、メタクリル酸メチルおよび高級アルキルメタクリラート、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシ−メタクリル酸メチル、ヒドロキシル−メタクリル酸エチルおよび高級ヒドロキシ−アルキルメタクリラートおよびメタクリル酸グリシジルが挙げられる。マレイン酸無水物は好ましいグラフトモノマーである。
【0041】
1つまたはそれ以上の実施形態では、グラフトプロピレンベースのポリマーは、約0.5重量%から約10重量%のエチレン性不飽和カルボン酸または酸誘導体を含有し、一層好ましくは約0.5重量%から約6重量%を含有し、一層好ましくは約0.5重量%から約3重量%を含有する。他の実施形態では約1重量%から約6重量%を含有し、一層好ましくは約1重量%から約3重量%を含有する。グラフトモノマーが無水マレイン酸である好ましい実施形態では、グラフトポリマーの無水マレイン酸濃度は、好ましくは約1重量%から約6重量%の範囲であり、好ましくは約0.5重量%以上であり、非常に好ましくは約1.5重量%である。
スチレンおよびパラメチルスチレンなどのそれらの誘導体、またはt−ブチルスチレンなどの他の高級アルキル置換スチレンは、グラフトモノマー存在化で電荷移動剤として使用でき、鎖の分断を防ぐ。これによって、さらにベータ分断反応を最小化し、高分子量グラフトポリマーを製造することができる。
【0042】
グラフトプロピレン−ベースポリマーの調製
グラフトプロピレンベースポリマーは、従来の技法を使用して調製することができる。たとえば、グラフトポリマーは、溶液の中で、流動床反応器の中で、又は溶融グラフティングによって調製することができる。好ましいグラフトポリマーは、押出反応器などの剪断付与反応器での溶融混合によって調製できる。共回転かみ合い押出機または逆回転非かみ合い押出機などの一軸、好ましくは2軸スクリュー押出反応器ばかりではなく、Buss社によって販売されているもののようなコニーダーも特に好ましい。
1つまたはそれ以上の実施形態では、グラフトポリマーは、グラフトモノマーの存在下で、非グラフトプロピレンベースのポリマーとペルオキシド開始剤などのフリーラジカル生成触媒との溶融混合によって調製できる。グラフト反応の好ましい手順は、プロピレンベースのポリマーの溶融、グラフトモノマーの添加および分散、ペルオキシドの添加、および未反応モノマーおよびペルオキシドの分解による副生成物の排出を含む。他の手順では、モノマーおよび事前に溶媒に溶解させたペルオキシドの供給が含まれてもよい。
【0043】
ペルオキシド開始剤の一例としては、これに限定されるものではないが、過酸化ベンゾイルなどのジアシルペルオキシド;tert−ブチルペルオキシドベンゾアート、tert−ブチルペルオキシドアセタート、OO−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートなどのペルオキシエステル;n−ブチル−4,4−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)吉草酸などのペルオキシケタール;および1,1−ビス(tertブチルペルオキシド)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシド)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシド)ブタン(e)、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ジ−(2−tert−ブチルペルオキシド−イソプロピル−(2))ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシド)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシド)ヘキシン、3,3,5,7,7−ペンタメチル1,2,4−トリオキセパンなどのジアルキルペルオキシド;および同種のものが挙げられる。
【0044】
基油
基油は、水素化分解、水素化、他の精製プロセス、粗製プロセス、または再精製プロセスに由来するか否かによって、潤滑粘度の天然油または合成油のであり得るし、または含有し得る。基油は、使用済み油であり得るし、または含有し得る。天然油の例としては、動物油、植物油、鉱油およびそれらの混合物が挙げられる。合成の油の例としては、炭化水素油、シリコンベースの油、およびリンを含有する酸の液体エステルが挙げられる。合成油は、フィッシャートロプシュガス液化合成手順によって調製されるばかりではなく、他のガス液化油であってもよい。
一実施形態では、基油は、PAO−2、PAO−4、PAO−5、PAO−6、PAO−7またはPAO−8(数値は100℃での動粘度に関連する)を含むポリアルファオレフィン(PAO)であるか、または含む。好ましくは、ポリアルファオレフィンはドデセンおよび/またはデセンから調製される。一般に、潤滑粘度の油として好適なポリアルファオレフィンの粘度は、PAO−20油またはPAO−30油の粘度未満である。
【0045】
1つまたはそれ以上の実施形態では、基油は、米国石油協会(API)の基油互換性ガイドラインに定められているようにして定義することができる。たとえば、基油は、APIグループI、II、III、IV、V油またはそれらの混合物であり得るし、または含有し得る。
1つまたはそれ以上の実施形態では、基油は、クランクケース潤滑油として従来使用されている油、またはその混合物を含有し得る。たとえば、好適な基油は、自動車およびトラックエンジン、船舶および鉄道ディーゼルエンジン、および同種のものなどの火花点火および圧縮点火内燃機関用のクランクケース潤滑油を含有できる。好適な基油は、オートマティックトランスミッション液、トラクター液、汎用トラクター液および油圧油、大型車両用油圧油、パワー・ステアリング液および同種のものなどの動力伝達液に従来使用された、および/または、として使用されるのに適した油であり得るし、または含有し得る。好適な基油は、ギア潤滑剤、工業潤滑油、ポンプオイルおよび他の潤滑油であり得るし、または含有し得る。
【0046】
1つまたはそれ以上の実施形態では、基油は、石油由来の炭化水素油を含有し得るばかりではなく、二塩基酸のエステルなどの合成潤滑油;一塩基の酸、ポリグリコール、二塩基酸およびアルコールをエステル化して製造される複合エステル;ポリオレフィン油、等も含有し得る。このように、記載された潤滑油組成物は、ジカルボン酸、ポリグリコールおよびアルコールのアルキルエステル;ポリアルファ−オレフィン;ポリブテン;アルキルベンゼン;リン酸の有機エステル;ポリシリコーン油;等などの合成基油に適切に取り込まれ得る。潤滑油組成物は、取り扱いを容易にするために、油、たとえば鉱物潤滑油中で1重量%から49重量%などの濃度形態で使用でき、前述したように油中で本発明の反応を実施することによって、この形態で調製されてもよい。
【0047】
従来の油添加剤
潤滑油組成物は、たとえば、流動点降下剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、分散剤、腐食抑制剤、消泡剤、界面活性剤、防錆剤、摩擦調整剤、および同種のものなどの1つ以上の従来の添加剤を含有してもよい。
防錆剤とも呼ばれる腐食抑制剤は、潤滑油組成物と接触する金属部品の劣化を抑制する。腐食抑制剤の例としては、燐硫化炭化水素、および、好ましくはアルキル化フェノールまたはアルキルフェノールチオエステルの存在下、および好ましくは二酸化炭素の存在下で、燐硫化炭化水素とアルカリ土類金属酸化物または水酸化物との反応によって得られる生成物が挙げられる。燐硫化炭化水素は、テルペンなどの好適な炭化水素、ポリイソブチレンなどのC2からC6オレフィンポリマーの重質石油留分を、5重量%から30重量%のリンの硫化物と、1/2時間から15時間、66℃から316℃の範囲の温度で反応させて調製される。燐硫化炭化水素の中和は、開示が米国特許プラクティスのために参照により本願明細書に援用される、米国特許第1,969,324号に教示されている方法で実施されてもよい。
【0048】
酸化防止剤、または抗酸化剤は、スラッジおよび金属表面のワニス状の堆積物などの酸化物の生成、および粘度の増加から明らかな鉱油の使用中の悪化傾向を抑制する。該酸化防止剤には、たとえば、カルシウムノニルフェナートスルフィド、バリウムオクチルフェナートスルフィド、ジオクチルフェニルアミン、フェニルアルファナフチルアミン、燐硫化または硫化炭化水素等のC5からC12アルキル側鎖を含有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩が挙げられる。
本発明に有用な他の酸化防止剤または抗酸化剤には、開示が米国特許プラクティスのために参照により本願明細書に援用される、米国特許第5,068,047号に記載されているような油溶性銅化合物が挙げられる。
【0049】
摩擦調整剤は、オートマティックトランスミッション液などの潤滑油組成物に適切な摩擦特性を付与するように機能する。好適な摩擦調整剤の代表的な例は、脂肪酸エステルおよびアミドを開示する米国特許第3,933,659号;ポリイソブテニルコハク酸無水物−アミノアルカノールのモリブデン錯体を記載する米国特許第4,176,074号;二量化した脂肪酸のグリセロールエステルを開示する米国特許第4,105,571号;アルカンホスホン酸塩を開示する米国特許第3,779,928号;ホスホナートとオレアミドとの反応生成物を開示する米国特許第3,778,375号;S−カルボキシアルキレンヒドロカルビルスクシンイミド、S−カルボキシアルキレンヒドロカルビルスクシンアミド酸及びこれらの混合物を開示する米国特許第3,852,205号;N(ヒドロキシアルキル)アルケニル−スクシンアミド酸又はスクシンイミドを開示する米国特許第3,879,306号;ジ−(低級アルキル)ホスファイト及びエポキシドの反応生成物を開示する米国特許第3,932,290号;および燐硫化N−(ヒドロキシアルキル)アルケニルスクシンイミドのアルキレンオキシド付加物を開示する米国特許第4,028,258号に見い出される。これらの参照による開示は、米国特許プラクティスのために参照により本願明細書に援用される。好ましい摩擦調整剤には、ヒドロカルビル置換コハク酸又は酸無水物のコハク酸エステル、又はこれらの金属塩および米国特許第4,344,853号に記載されているようなチオビス−アルカノールが挙げられる。
【0050】
分散剤は、使用中の酸化から得られる油に不溶性の物質を液体中に懸濁して維持し、こうしてスラッジ凝集及び金属部分上の沈殿または付着を防止する。好適な分散剤として、高分子量N置換アルケニルスクシンイミド、油溶性ポリイソブチレン無水コハク酸とエチレンアミン、例えば、テトラエチレンペンタミンの反応生成物及びこれらのホウ酸塩が挙げられる。高分子量エステル(オレフィン置換コハク酸を一価または多価脂肪族アルコールでエステル化することによって生じる)または高分子量アルキル化フェノール(高分子量アルキル置換フェノール、アルキレンポリアミンおよびホルムアルデヒドなどアルデヒドの縮合によって生じる)のマンニッヒ塩基も、分散剤として有用である。
流動点降下剤(「ppd」)、または潤滑油流向上剤として知られているものは、液体が流れ、または注がれることができる温度を低くする。当該技術分野において公知の任意の好適な流動点降下剤を使用することができる。たとえば、好適な流動点降下剤としては、これに限定されるものではないが、1つまたは複数のC8からC18フマル酸ジアルキル酢酸ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、アルキルメタクリラートおよびワックスナフタレンが挙げられる。
【0051】
泡の制御のために、1つまたは複数の消泡剤の何れかを提供することができる。好適な消泡剤としては、シリコーン油などのポリシロキサンおよびポリジメチルシロキサンが挙げられる。
耐摩耗剤は、金属部品の摩耗を低減する。従来の耐摩耗剤の代表例は、酸化防止剤としても機能する、ジアルキルジチオりん酸亜鉛およびジアリルジチオりん酸亜鉛である。
界面活性剤および金属防錆剤としては、スルホン酸の金属塩、アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、アルキルサリチラート、ナフテン酸塩および他の油溶性モノ−およびジカルボン酸が挙げられる。高塩基性アルカリ土類金属スルホナート(特にCa塩およびMg塩)などの高塩基性(すなわち、超塩基性)金属塩は、界面活性剤としてしばしば使用される。
これらの従来の添加剤を含有する組成物は、それらの通常の付随機能を発揮する量で、典型的には基油の中に混合される。このように、典型的な処方では、重量で、VI向上剤(0.01%から12%);腐食抑制剤(0.01%から5%);酸化防止剤(0.01%から5%);抑制剤(0.01%から5%);消泡剤(0.001%から3%);耐摩耗剤(0.001%から5%);摩擦調整剤(0.01%から5%);界面活性剤/防錆剤(0.01%から10%);および基油を含有できる。
【0052】
他の添加剤が使用される場合には、粘度指数向上剤の濃縮液または分散液(本明細書で上述した高濃度の)と、1つまたは複数の他の添加剤とを一緒に含有する添加剤濃縮物を調製することが、必ずしも必要ではないが望ましい場合があり、該濃縮液はいくつかの添加剤を同時に基油に添加して潤滑油組成物を形成することができる「添加剤パッケージ」を意味する。添加剤濃縮物の潤滑油への溶解は、溶媒およびゆるやかな加熱を伴う攪拌によって促進されてもよいが、これは必須ではない。添加剤パッケージは典型的には、添加剤パッケージが所定の量のベース潤滑剤と組み合わされると、最終組成物で所望の濃度になる適切な量の粘度指数向上剤とオプションの追加的添加剤を含有するように配合されている。このように、本発明の生成品は、他の望ましい添加剤と一緒に、少量の基油または他の相溶性のある溶媒に添加して、典型的には総量で、2.5重量%から90重量%、好ましくは5重量%から75重量%、およびさらに一層好ましくは8重量%から50重量%の添加剤を適切な割合で含有する添加剤パッケージ(残りは基油である)を形成することができる。最終組成物は、典型的には約10重量%の添加剤パッケージを使用することができ、残りは基油である。
【0053】
少なくともある特定の実施形態では、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて:0.1重量%から20重量%の量の1つまたは複数のプロピレンベースのポリマー;1重量%から99重量%の量の1つまたは複数の基油;および0.01重量%から25重量%の量の1つまたは複数の分散剤を含有でき、0.01重量%から20重量%の量の1つまたは複数の他の添加剤を含有してもよい。該重量パーセントは油組成物の総重量に基づく。
少なくともある特定の実施形態では、潤滑油組成物は、1.0重量%から20重量%、あるいは2.0重量%から18重量%、3.0重量%から15重量%、5重量%から14重量%、あるいは5.0重量%から10重量%の量の1つまたは複数のプロピレンベースのポリマーを含有できる。1つまたはそれ以上の実施形態では、潤滑油組成物の中の1つまたは複数のプロピレンベースのポリマーの量は、最低が、約0.1重量%、0.5重量%、または1重量%であり、最高が、約10重量%、15重量%、または20重量%であり得る。1つまたはそれ以上の実施形態では、潤滑油組成物の中の1つまたは複数のプロピレンベースのポリマーの量は、最低が約0.1重量%、2.0重量%、または5重量%であり、最高が約12重量%、17重量%、または19重量%であり得る。1つまたはそれ以上の実施形態では、潤滑油組成物の中の1つまたは複数のプロピレンベースのポリマーの量は、約1重量%、約2重量%、約5重量%、約7重量%、約9重量%、または約10重量%であり得る。1つまたはそれ以上の実施形態では、潤滑油組成物の中の1つまたは複数のプロピレンベースのポリマーの量は、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.2重量%、約1.4重量%、約1.6重量%、約1.8重量%または約2.0重量%であり得る。該重量パーセントは油組成物の総重量に基づく。
【0054】
少なくともある特定の実施形態では、潤滑油組成物は、0.5重量%から20重量%;あるいは1.0重量%から18重量%;あるいは3.0重量%から15重量%;あるいは5重量%から14重量%;あるいは5.0重量%から10重量%の量の1つまたは複数のプロピレンベースのポリマー、および、1重量%から99重量%;あるいは50重量%から99重量%;あるいは53重量%から90重量%;あるいは60重量%から90重量%、または60重量%から98重量%の量の1つまたは複数の基油を含有し得る。存在する場合には、油組成物の中のプロピレンベースのポリマーの量は、油組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、または9重量%未満、または8重量%未満、または7重量%未満、または6重量%未満、または5重量%未満、または4重量%未満、または3重量%未満、または2重量%未満、または1重量%未満、または0.5重量%未満であり得る。該重量パーセントは油組成物の総重量に基づく。
【0055】
少なくともある特定の実施形態では、潤滑油組成物は、1つまたは複数のプロピレンベースのポリマー、1重量%から99重量%;あるいは50重量%から99重量%;あるいは53重量%から90重量%;あるいは60重量%から90重量%;あるいは60重量%から98重量%の量の1つまたは複数の基油、および、0.5重量%から20重量%;あるいは0.1重量%から20重量%;あるいは1.0重量%から18重量%;あるいは3.0重量%から15重量%;あるいは5重量%から14重量%;あるいは5.0重量%から10重量%の量の1つまたは複数の分散剤を含有し得る。存在する場合には、油組成物の中のプロピレンベースのポリマーの量は、油組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、または9重量%未満、または8重量%未満、または7重量%未満、または6重量%未満、または5重量%未満、または4重量%未満、または3重量%未満、または2重量%未満、または1重量%未満、または0.5重量%未満であり得る。該重量パーセントは油組成物の総重量に基づく。
【0056】
少なくともある特定の実施形態では、潤滑油組成物は、1つまたは複数のプロピレンベースのポリマーと、1重量%から99重量%;あるいは50重量%から99重量%;あるいは53重量%から90重量%;あるいは60重量%から90重量%;あるいは60重量%から98重量%の量の1つまたは複数の基油と、0.5重量%から20重量%;あるいは0.1重量%から20重量%;あるいは1.0重量%から18重量%;あるいは3.0重量%から15重量%;あるいは5重量%から14重量%;あるいは5.0重量%から10重量%の量の1つまたは複数の分散剤と、0.05重量%から10重量%;あるいは0.1重量%から10重量%;あるいは0.7重量%から5重量%;あるいは0.75重量%から5重量%;あるいは0.5重量%から3重量%;あるいは0.75重量%から3重量%の量の1つまたは複数の流動点降下剤を含有し得る。存在する場合には、油組成物の中のプロピレンベースのポリマーの量は、10重量%未満、または9重量%未満、または8重量%未満、または7重量%未満、または6重量%未満、または5重量%未満、または4重量%未満、または3重量%未満、または2重量%未満、または1重量%未満、または0.5重量%未満であり得る。該重量パーセントは油組成物の総重量に基づく。
【0057】
増粘効率は、油中のポリマーの増粘能力の測定値であり、以下のように定義される。TE=2/c×ln((ポリマー+油のkv)/(油のkv))/ln(2)(cはポリマーの濃度)。潤滑油組成物の増粘効率は、以下に定義されるように約1以上であり得る。一実施形態では、潤滑油組成物の増粘効率の範囲は、下限が約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、または約1.5であり、上限が約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、または約2.9の範囲であり得る。別の実施形態では、潤滑油組成物の増粘効率は約1.5から約2.5である。
【0058】
剪断安定性指数(SSI)はエンジンの永久機械剪断劣化に対するポリマーの抵抗性を示す。SSIは、ASTM D6278に挙げられる手順にしたがって、ポリマー−油溶液を30サイクルの間、高剪断ボッシュ・ディーゼルインジェクターに通過させることで決定できる。ポリマーのSSIは、以下の式から、ポリマー無しの油の粘度、およびポリマー−油溶液の初期粘度および剪断粘度から演算できる。
SSI=100×(v(ポリマー+油),FRESH−v(ポリマー+油),SHEARED/(v(ポリマー+油),FRESH−v(油),FRESH
vは、ASTM D445にしたがって、100℃で測定された動粘度である。さまざまなグレードの油および自動車エンジン製造業者および業界団体から課せられる他の性能基準の粘度要求条件に適合させるために、市販の粘度指数向上剤ポリマーの測定されたSSIは、一般に24SSIから50SSIの範囲である。潤滑油組成物のSSIの範囲は、下限が約20、約22、約24、約26、または約28であり、上限が約40、約44、約50、約55、または約60であり得る。別の実施形態では、潤滑油組成物のSSIは、約20から60であり、好ましくは約24から45であり、好ましくは約35から60であり、一層好ましくは約20から約50であり、または一層好ましくは約35から約50である。
【0059】
1つまたはそれ以上の実施形態では、本発明の完全に配合された潤滑油組成物は、下限が−5℃、−8℃、−10℃、−12℃、−15℃、−18℃または−20℃であり、上限が5℃、8℃、10℃、12℃、15℃、18℃または20℃である低温度サイクルにさらされた場合に、本質的に自由流動を維持する。「本質的に自由流動」は、容器から注がれた場合に、流動性(粘度)にごくわずかな、および/または検出不可能な変化があることを意味する。他の実施形態では、潤滑油組成物は、本発明のプロピレンベースのポリマーを含有する潤滑油配合物の初期流動性に対して、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満または約0.1%未満の流動性の変化を示す。
【0060】
本明細書に記載のすべての範囲(上限および/または下限)に対して、組み合わせが記述された範囲の基本的な前提をくずさない程度で、いずれかの下限値がいずれかの上限値と組み合わされてもよい(すなわち、材料中に存在する成分の重量パーセントの下限および上限の範囲は、材料全体で、100重量%を超える結果にならない範囲で組み合わされてもよい)。
以下のさらなる実施形態が本発明の範囲内として考慮される。
【0061】
実施形態A:潤滑油組成物は、60重量%から98重量%のプロピレン誘導単位と2重量%から40重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位とを含有する少なくとも1つのプロピレンベースポリマーと、基油を含有し、該プロピレンベースのポリマーのトリアッド規則性は90%以上であり、融解熱は80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)は70,000から250,000であり、MWDは2.0から2.5である。
実施形態B:実施形態Aの潤滑油組成物であって、該プロピレンベースのポリマーは、70重量%から95重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から30重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位とを含有する。
実施形態C:実施形態Aまたは実施形態Bの潤滑油組成物であって、該プロピレンベースのポリマーは、75重量%から95重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から25重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する。
【0062】
実施形態D:実施形態Aから実施形態Cの何れかに記載の潤滑油組成物であって、該プロピレンベースのポリマーは、80重量%から90重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する。
実施形態E:実施形態Aから実施形態Dの何れかに記載の潤滑油組成物は、プロピレンベースのポリマーは、80重量%から90重量%のプロピレン誘導単位と10重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する。
実施形態F:実施形態Aから実施形態Eの何れかに記載の潤滑油組成物であって、該プロピレンベースのポリマーは、80重量%から88重量%のプロピレン誘導単位と12重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する。
【0063】
実施形態G:実施形態Aから実施形態Fの何れかに記載の潤滑油組成物はであって、該αオレフィンはエチレンである。
実施形態H:実施形態Aから実施形態Gの何れかに記載の潤滑油組成物であって、ここでαオレフィンはブテンである。
実施形態I:実施形態Aから実施形態Hの何れかに記載の潤滑油組成物であって、該1つまたは複数の他のαオレフィンは、1つまたは複数のC4からC12のα−オレフィンを含有するである。
実施形態J:実施形態Aから実施形態Iの何れかに記載の潤滑油組成物であって、該プロピレン誘導単位はアイソタクチックである。
【0064】
実施形態K:実施形態Aから実施形態Jの何れかに記載の潤滑油組成物であって、重量平均分子量(Mw)は約80,000から約200,000である。
実施形態L:実施形態Aから実施形態Kの何れかに記載の潤滑油組成物であって、重量平均分子量(Mw)は約100,000から約160,000である。
実施形態M:実施形態Aから実施形態Lの何れかに記載の潤滑油組成物であって、ここ重量平均分子量(Mw)は約100,000から約150,000である。
実施形態N:実施形態Aから実施形態Mの何れかに記載の潤滑油組成物であって、MWDは2.1から2.4である。
【0065】
実施形態O:実施形態Aから実施形態Nの何れかに記載の潤滑油組成物であって、プロピレンベースのポリマーは、10重量%から20重量%のエチレン誘導単位を含有する。
実施形態P:実施形態Aから実施形態Oの何れかに記載の潤滑油組成物であって、ASTM−D1238によって測定される、プロピレンベースのポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は、3.0g/10分から約21g/10分である。
実施形態Q:実施形態Aから実施形態Pの何れかに記載の潤滑油組成物は、さらに1つまたは複数の分散剤を含有する。
実施形態R:実施形態Aから実施形態Qの何れかに記載の潤滑油組成物は、さらに1つまたは複数の流動点降下剤を含有する。
【0066】
実施形態S:潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.5重量%から15重量%の少なくとも1つのプロピレンベースポリマーと、潤滑油組成物の総重量をベースにして、60重量%から98重量%の基油と、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から20重量%の1つまたは複数の分散剤と、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から10重量%の1つまたは複数の流動点降下剤を含有し、該プロピレンベースのポリマーは、70重量%から95重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から30重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有し、該プロピレンベースのポリマーの融解熱は80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)は100,000から150,000であり、MWDは2.0から2.5であるを。
【0067】
実施形態T:実施形態Sの潤滑油組成物であって、ASTM−D1238によって測定される、プロピレンベースのポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は3.0g/10分から約21g/10分である。
実施形態U:実施形態Sまたは実施形態Tの潤滑油組成物であって、油組成物の増粘効率は約1.5から2.5であり、増粘効率は以下のように定義される:TE=2/c×ln((ポリマー+油のkv)/(油のkv))/ln(2)。(cはプロピレンベースポリマーの濃度である。)
実施形態V:実施形態Sから実施形態Uの何れかに記載の潤滑油組成物であって、油組成物の剪断安定性指数は約20から約60である。
【0068】
実施形態W:潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.5重量%から15重量%の少なくとも1つのプロピレンベースのポリマーと、基油を含有する潤滑油組成物であって、該プロピレンベースのポリマーは、80重量%から88重量%プロピレン誘導単位と12重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有し、該プロピレンベースのポリマーのトリアッド規則性が90%以上であり、融解熱が80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)が100,000から250,000であり、MWDが2.0から2.5である。
【0069】
実施形態X:実施形態Wの潤滑油組成物であって、潤滑油組成物の総重量をベースにして、プロピレンベースのポリマーは1.0重量%から10重量%の量で存在する。
実施形態Y:実施形態Wまたは実施形態Xの潤滑油組成物であって、さらに1つまたは複数の分散剤を含有する。
実施形態Z:実施形態Wから実施形態Yの何れかに記載の潤滑油組成物であって、さらに1つまたは複数の流動点降下剤を含有する。
【0070】
実施形態AA:潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量をベースにして0.5重量%から15重量%の少なくとも1つのプロピレンベースポリマーと、潤滑油組成物の総重量をベースにして、60重量%から98重量%の基油と、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から20重量%の1つまたは複数の分散剤と、潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から10重量%の1つまたは複数の流動点降下剤を含有し、該プロピレンベースのポリマーは、80重量%から88重量%プロピレン誘導単位と12重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有し、該プロピレンベースのポリマーのトリアッド規則性は90%以上であり、融解熱は80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)は100,000から250,000であり、MWDは2.0から2.5である。
【0071】
実施形態BB:実施形態AAの潤滑油組成物であって、、ASTM−D1238によって測定される、プロピレンベースのポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は3.0g/10分から約21g/10分である。
実施形態CC:実施形態AAまたは実施形態BBの潤滑油組成物であって、油組成物の増粘効率は約1.5から2.5であり、ここで増粘効率は以下のように定義される。TE=2/c×ln((ポリマー+油のkv)/(油のkv))/ln(2)、ここでcはプロピレンベースポリマーの濃度である。
【0072】
実施形態DD:実施形態AAから実施形態CCの何れかに記載の潤滑油組成物であって、油組成物の剪断安定性指数は約20から約60である。
実施形態EE:実施形態AAから実施形態DDの何れかに記載の潤滑油組成物であって、油組成物の剪断安定性指数は約20から約50である。
実施形態FF:実施形態AAから実施形態EEの何れかに記載の潤滑油組成物であって、油組成物の剪断安定性指数は約24から約45である。
【実施例】
【0073】
実施例
前述した議論は以下の非限定的な例を参照してさらに記述することができる。記載された1つ以上の実施形態に従って、少なくとも1つのプロピレンベースのポリマーを粘度指数向上剤として含有する潤滑油組成物が提供される。表1は、以下の実施例の潤滑油を配合するために使用されたプロピレンベースのポリマーを示す。該プロピレンベースのポリマーはエクソンモービルケミカル(ExxonMobil Chemical)から入手することができる。
【表1】

*PARATONE(登録商標)8900 はシェブロンオロナイト社(Chevron Oronite Company、LLC)から市販されている。
【0074】
表2は、APIグループI油における表1のポリマーの増粘効率(TE)および剪断安定性指数(SSI)を要約する。SSIおよびTEを測定するポリマー濃度は1.5重量%である。APIグループI油の動粘度は、100℃で6.062cStであった。
上記で論じたように、増粘効率は、油中のポリマーの増粘特性の測定値であり、以下のように定義される。TE=2/c×ln((ポリマー+油のkv)/(油のkv))/ln(2)(cはポリマーの濃度である。)SSIはエンジンの永久機械剪断劣化に対するポリマーの抵抗性を示す。SSIは、ASTM D6278に挙げられる手順にしたがって、ポリマー−油溶液を30サイクルの間、高剪断ボッシュ・ディーゼルインジェクターに通過させることで決定できる。ポリマーのSSIは、以下の式から、ポリマー無しの油の粘度、およびポリマー−油溶液の初期粘度および剪断粘度から演算できる。
SSI=100×(v(ポリマー+油),FRESH−v(ポリマー+油),SHEARED /(v(ポリマー+油),FRESH−v(油),FRESH
(vは、ASTM D445にしたがった100℃での動粘度である。)
【表2】

【0075】
記述された1つ以上の実施形態に従った、5つの潤滑油組成物(実施例1〜5)と、1つの比較油組成物(比較例1)が調製された。実施例を調製するために、ポリマーをAPIグループI油に溶解させた。グループI油組成物は、150Nおよび400NAPIグループI基油のブレンドであって、動粘度KVは100℃で約6.5cStであった。Chevron Oronite Company、LLC製の分散剤パッケージを、以下の表3に示すようにさまざまな量で添加した。次に、コールド・クランキング・シミュレータ(Cold cranking stimulator)(CCS)試験が、−20℃でASTM D5293にしたがって測定された。CCSは、低温での潤滑油のコールド・クランキング特性を評価するために使用される。
【表3】

【0076】
次に、流動点降下剤(「PPD」)を含む10個の油組成物(実施例6〜15)と比較油組成物(比較例2)が、調製された。PPDがポリマーおよび油組成物に添加され、油の動粘度(KV)、ミニ回転粘度(mini rotary viscometry)(MRV)、降伏応力(YS)、および流動点特性を調べた。流動点降下剤は、Evonik RohMaxInc.(ホーシャム、ペンシルバニア州 米国)から市販されている、VISCOPLEXTM1−330またはVISCOPLEXTM1−3205の何れかであった。
【0077】
表4は、実施例6〜15および比較実施例2の油組成物の要約であり、それぞれは流動点降下剤を含有し、結果として得られた動粘度(KV)、ミニ回転粘度(MRV)、降伏応力(YS)、および流動点、およびその特性を示す。粘度(KV)は、ASTM D445にしたがって測定された。流動点は、ASTM D−97にしたがって測定された。MRVは、ASTM D4684にしたがって測定され、低温でのオイルポンプのポンプ性能を評価した。降伏応力は、ASTM D4684にしたがって測定された。
【表4】

【0078】
データによって、α−オレフィン含有量が小さい、すなわちα−オレフィン含有量が約15.5重量%以下のプロピレンベースのポリマーは、驚いたことに、意外にも油の増粘特性、剪断安定性および低温粘度特性が改善されることが明らかになった。プロピレンベースのポリマーも驚いたことに、意外にも油中のそのワックスとの低相互作用のために、その潤滑油組成物がより良好な低温性能を示した。
【0079】
便宜のために、引張永久歪み(tensile set)、パーセント破断点伸び、ショア硬度、および靱性などの特定の特性を決定するために、さまざまな特定の試験手順を上記に示した。しかしながら、当業者がこの特許出願を読み、組成物またはポリマーが特許請求の範囲に記載された特定の特性を持つか否かを判定しようとすれば、明確に同定された手順が好ましいが、いずれかの刊行された、またはよく知られた方法または試験手順によって、その特性判定することができる。異なる手順によって異なる結果または測定値を生じる可能性があるけれども、いずれの特許請求の範囲も、いずれの該手順の結果も含むように構成されることを理解するべきである。このように、当業者であれば、特許請求の範囲に反映された測定特性の実験変動を予期する。すべての数値は、一般に試験の性質という観点から、「約」または「おおよそ」で記述された値であるとみなされることができる。
【0080】
特定の実施形態および特徴が、一組の数値の上限と一組の数値の下限を使用して記述されている。当然のことながら、他に記載がない限り、いずれかの下限からいずれかの上限の範囲が想定される。特定の下限、上限および範囲は、以下の1つまたは複数の特許請求の範囲で表現される。すべての数値は、「約」または「おおよそ」で示される値であり、当業者であれば予期できる実験誤差および変動が考慮される。
特許請求の範囲に使用されている用語が上で定義されていない場合には、少なくとも1つの刊行物または発行された特許に反映されているように、当業者がその用語に与える最も広い定義が与えられるべきである。さらに、本出願に引用されている、すべての特許、試験手順、および他の書類は、そのような組み込みが許されるすべての法域であって、本願と矛盾しない範囲内で参照により本願にすべてが組み込まれる。
前述の内容は、本発明の実施形態を対象とするが、本発明の他の実施形態およびさらなる実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく考え出すことができ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60重量%から98重量%のプロピレン誘導単位と2重量%から40重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する少なくとも1つのプロピレンベースポリマーであって、トリアッド規則性が90%以上であり、融解熱が80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)が70,000から250,000であり、MWDが2.0から2.5であるプロピレンベースポリマーと、
基油を含有する潤滑油組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記プロピレンベースのポリマーは、70重量%から95重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から30重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する潤滑油組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記プロピレンベースのポリマーは、75重量%から95重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から25重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記プロピレンベースのポリマーは、80重量%から90重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する潤滑油組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記プロピレンベースのポリマーは、80重量%から90重量%のプロピレン誘導単位と10重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する潤滑油組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記プロピレンベースのポリマーは、80重量%から88重量%のプロピレン誘導単位と12重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有する潤滑油組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記αオレフィンはエチレンである潤滑油組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
αオレフィンはブテンである潤滑油組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記1つまたは複数の他のαオレフィンは、1つまたは複数のC4からC12α−オレフィンを含有する潤滑油組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記プロピレン誘導単位はアイソタクチックである潤滑油組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記重量平均分子量(Mw)は約80,000から約200,000である潤滑油組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記重量平均分子量(Mw)は約100,000から約160,000である潤滑油組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記重量平均分子量(Mw)は約120,000から約150,000である潤滑油組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記MWDは2.1から2.4である潤滑油組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
前記プロピレンベースのポリマーは、10重量%から20重量%のエチレン誘導単位を含有する潤滑油組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
ASTM−D1238によって測定される、前記プロピレンベースのポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は3.0g/10分から約21g/10分である潤滑油組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
さらに1つまたは複数の分散剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、
さらに1つまたは複数の流動点降下剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項19】
潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.5重量%から15重量%の少なくとも1つのプロピレンベースポリマーであって、70重量%から95重量%のプロピレン誘導単位と5重量%から30重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有し、融解熱が80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)が100,000から150,000であり、MWDが2.0から2.5であるプロピレンベースポリマーと、
潤滑油組成物の総重量をベースにして、60重量%から98重量%の基油と、
潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から20重量%の1つまたは複数の分散剤と、
潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から10重量%の1つまたは複数の流動点降下剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の潤滑油組成物であって、
ASTM−D1238によって測定される、前記プロピレンベースのポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は3.0g/10分から約21g/10分である潤滑油組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の潤滑油組成物であって、
前記油組成物の増粘効率は約1.5から2.5であり、前記増粘効率は以下のように定義される潤滑油組成物。
TE=2/c×ln((ポリマー+油のkv)/(油のkv))/ln(2)
(cはプロピレンベースポリマーの濃度である。)
【請求項22】
請求項20に記載の潤滑油組成物であって、
前記油組成物の剪断安定性指数は約20から約60である潤滑油組成物。
【請求項23】
潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.5重量%から15重量%の少なくとも1つのプロピレンベースポリマーであって、80重量%から88重量%のプロピレン誘導単位と12重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有し、トリアッド規則性が90%以上であり、融解熱が80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)が100,000から250,000であり、MWDが2.0から2.5であるプロピレンベースポリマーと、
基油を含有する潤滑油組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の潤滑油組成物であって、
前記潤滑油組成物の総重量をベースにして、1.0重量%から10重量%の量のプロピレンベースのポリマーが存在する潤滑油組成物。
【請求項25】
請求項23に記載の潤滑油組成物であって、
さらに、さらに1つまたは複数の分散剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項26】
請求項23に記載の潤滑油組成物であって、
さらに1つまたは複数の流動点降下剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項27】
潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.5重量%から15重量%を含有する少なくとも1つのプロピレンベースポリマーであって、80重量%から88重量%のプロピレン誘導単位と12重量%から20重量%の1つまたは複数の他のαオレフィンから誘導される単位を含有し、トリアッド規則性が90%以上であり、融解熱が80J/g未満であり、GPCによって測定される重量平均分子量(Mw)が100,000から250,000であり、MWDが2.0から2.5であるプロピレンベースポリマーと、
潤滑油組成物の総重量をベースにして、60重量%から98重量%の基油と、
潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から20重量%の1つまたは複数の分散剤と、
潤滑油組成物の総重量をベースにして、0.1重量%から10重量%の1つまたは複数の流動点降下剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項28】
請求項28に記載の潤滑油組成物であって、
ASTM−D1238によって測定される前記プロピレンベースのポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は3.0g/10分から約21g/10分である潤滑油組成物。
【請求項29】
請求項28に記載の潤滑油組成物であって、
前記オイル組成物の増粘効率は約1.5から2.5であり、前記増粘効率は以下のように定義される潤滑油組成物。
TE=2/c×ln((ポリマー+油のkv)/(油のkv))/ln(2)
(cはプロピレンベースポリマーの濃度である。)
【請求項30】
請求項28に記載の潤滑油組成物であって、
前記油組成物の剪断安定性指数が約20から約60である潤滑油組成物。
【請求項31】
請求項28に記載の潤滑油組成物であって、
前記油組成物の剪断安定性指数が約20から約50である潤滑油組成物。
【請求項32】
請求項28に記載の潤滑油組成物であって、
前記油組成物の剪断安定性指数が約24から約45である潤滑油組成物。

【公表番号】特表2011−530617(P2011−530617A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522043(P2011−522043)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/072655
【国際公開番号】WO2010/016847
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】