説明

潤滑油基油および潤滑油組成物

【課題】低粘度であっても蒸気圧が低く、引火の危険性もなく、耐熱性に優れる上、高温で金属を腐食しにくく、且つ低温流動性に優れた潤滑油基油を提供すること。
【解決手段】本発明の潤滑油基油は、下記一般式(1):
…(1)
(Zはカチオンを意味し、Aはアニオンを意味する。)
で表される化合物からなるイオン液体を一種類以上含む潤滑油基油であって、Zが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、Aが共役アミドイオンであることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体を含む潤滑油基油および潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は一般に、炭化水素を主体とした有機物から構成されており、粘度を下げると必然的に蒸気圧が上がり、潤滑油の蒸発損失、さらには引火の危険性が増大する。特に、製鉄所内の機械など高熱物体を扱う設備において使用する潤滑油(例えば、油圧作動油)は、火災防止の観点から難燃性が必要とされている。また、近年の情報機器(例えば、ハードディスク)に使用されている精密モータでは、周辺の精密機器への影響を極力少なくするため蒸発や飛散し難い潤滑油が求められている。
一方、近年、カチオンとアニオンとから構成されたイオン液体が優れた熱安定性と高いイオン伝導性を有し、空気中でも安定な液体となることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。そして、このようなイオン液体の熱安定性(難揮発性、難燃性)、高イオン密度(高イオン伝導性)、大熱容量、低粘度などの特徴を活かして様々な用途、例えば太陽電池などの電解液(例えば、特許文献1参照)、抽出分離溶媒、反応溶媒などとして応用研究が積極的に行われている。
また、このようなイオン液体を潤滑油基油として用いることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。イオン液体は、分子間が分子性液体のように分子間引力で結びついているのではなく、強力なイオン結合で結びついているため、揮発し難く、難燃性であり、熱や酸化に対して安定な液体である。そのため、低粘度であっても低蒸発性であり、さらに耐熱性にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−31270号公報
【特許文献2】国際公開第2005/035702号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「J.Chem.Soc.,Chem.Commun.」、1992年、p.965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イオン液体は潤滑油基油として低粘度で蒸気圧が低く、耐熱性にも優れているが、特許文献2の実施例に記載のようなイオン液体は、高温環境下において金属を腐食しやすいという点で十分なものではない。このように、特許文献2においては、潤滑油基油に用いるイオン液体として、どのようなカチオンおよびアニオンを選定することが最適であるかについては明らかになっていない。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低粘度であっても蒸気圧が低く、引火の危険性もなく、耐熱性に優れる上、高温で金属を腐食しにくく、且つ低温流動性に優れた潤滑油基油およびこの潤滑油基油を用いた潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような潤滑油基油および潤滑油組成物を提供するものである。
すなわち、本発明の潤滑油基油は、下記一般式(1):
…(1)
(Zはカチオンを意味し、Aはアニオンを意味する。)
で表される化合物からなるイオン液体を一種類以上含む潤滑油基油であって、Zが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、Aが共役アミドイオンであることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の潤滑油基油においては、前記一般式(1)で表されるイオン液体におけるAが下記一般式(2)で表される構造を有するアニオンの中から選ばれるものであることが好ましい。
【0009】
【化1】

(式(2)中、nは1から4までの整数であり、mは1から4までの整数であり、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0010】
本発明の潤滑油基油においては、前記一般式(1)で表されるイオン液体におけるZが下記一般式(3)で表される構造を有するカチオンの中から選ばれるものであることが好ましい。
【0011】
【化2】

(式(3)中、nは1または2であり、Xはメチレンまたは酸素であり、R、Rはエーテル基、エステル基、ニトリル基、シリル基を有していてもよい炭素数1から12までのアルキル基から選ばれる基である。)
【0012】
本発明の潤滑油基油においては、前記イオン液体の分子量が410以上570以下であることが好ましい。
本発明の潤滑油基油においては、前記イオン液体の40℃動粘度が1mm/s以上100mm/s以下であることが好ましい。
本発明の潤滑油基油においては、前記イオン液体の流動点が0℃以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の潤滑油組成物は、前記本発明の潤滑油基油に、酸化防止剤、油性剤、極圧剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤および消泡剤のうちの少なくともいずれか一つを配合したことを特徴とするものである。
本発明の潤滑油組成物は、含油軸受、流体軸受、真空機器および半導体製造装置の潤滑に用いられるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低粘度であっても蒸気圧が低く、引火の危険性もなく、耐熱性に優れる上、高温で金属を腐食しにくく、且つ低温流動性に優れた潤滑油基油およびこの潤滑油基油を用いた潤滑油組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の潤滑油基油は、以下説明するイオン液体を一種類以上含むことを特徴とするものである。
本発明に用いるイオン液体は、下記一般式(1):
…(1)
(Zはカチオンを意味し、Aはアニオンを意味する。)
で表される化合物からなるイオン液体である。
そして、このようなイオン液体においては、前記一般式(1)において、Zが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、Aが共役アミドイオンであることが必要である。
【0016】
前記一般式(1)におけるAは、下記一般式(2)で表される構造を有するアニオンの中から選ばれるものであることが好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】
前記一般式(2)において、nは1から4までの整数であり、イオン液体の分子量の観点から、1または2であることが好ましい。また、mは1から4までの整数であり、イオン液体の分子量の観点から、1または2であることが好ましい。mとnとは同一でも異なっていてもよい。
前記一般式(2)で表される構造を有するアニオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)アミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)アミド、トリフルオロメタンスルホニル(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、ペンタフルオロエタンスルホニル(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)アミド、ヘプタフルオロプロパンスルホニル(ノナフルオロブタンスルホニル)アミド、トリフルオロメタンスルホニル(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)アミド、ペンタフルオロエタンスルホニル(ノナフルオロブタンスルホニル)アミド、トリフルオロメタンスルホニル(ノナフルオロブタンスルホニル)アミドが挙げられる。これらの中でも、イオン液体の分子量の観点から、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、トリフルオロメタンスルホニル(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミドが好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドが特に好ましい。
【0019】
前記一般式(1)におけるZは、下記一般式(3)で表される構造を有するカチオンの中から選ばれるものであることが好ましい。
【0020】
【化4】

【0021】
前記一般式(3)において、nは1または2であり、Xはメチレンまたは酸素である。また、RおよびRはエーテル基(エーテル結合)、エステル基(エステル結合)、ニトリル基、シリル基を有していてもよい炭素数1から12までのアルキル基から選ばれる基である。このようなアルキル基の炭素数は、イオン液体の低粘度化や耐熱性(高温酸化安定性)の向上という観点から、1から6までであることがより好ましく、1から4までであることが特に好ましい。
前記一般式(3)で表される構造を有するカチオンとしては、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ペンチル−1メチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム、1−ヘプチル−1メチルピロリジニウム、1−オクチル−1メチルピロリジニウム、1−ノニル−1メチルピロリジニウム、1−デシル−1メチルピロリジニウム、1−ウンデシル−1メチルピロリジニウム、1−ドデシル−1メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−シアノメチル−1−メチルピロリジニウム、1−トリメチルシリルメチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム、1−ペンチル−1−メチルピペリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム、1−ヘプチル−1−メチルピペリジニウム、1−オクチル−1−メチルピペリジニウム、1−ノニル−1−メチルピペリジニウム、1−デシル−1−メチルピペリジニウム、1−ウンデシル−1−メチルピペリジニウム、1−ドデシル−1−メチルピペリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウム、1−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−1−メチルピペリジニウム、1−シアノメチル−1−メチルピペリジニウム、1−トリメチルシリルメチル−1−メチルピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルモルホリニウム、1−ペンチル−1−メチルモルホリニウム、1−ヘキシル−1−メチルモルホリニウム、1−ヘプチル−1−メチルモルホリニウム、1−オクチル−1−メチルモルホリニウム、1−ノニル−1−メチルモルホリニウム、1−デシル−1−メチルモルホリニウム、1−ウンデシル−1−メチルモルホリニウム、1−ドデシル−1−メチルモルホリニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウム、1−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−1−メチルモルホリニウム、1−シアノメチル−1−メチルモルホリニウム、1−トリメチルシリルメチル−1−メチルモルホリニウムが挙げられる。これらの中でも、イオン液体の低粘度化や耐熱性(高温酸化安定性)の向上という観点から、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ペンチル−1メチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウムが好ましく、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウムが特に好ましい。
【0022】
前記イオン液体の分子量は、410以上570以下であることが好ましく、410以上470以下であることがより好ましく、420以上440以下であることが特に好ましい。分子量が前記範囲内である場合には、電荷密度およびカチオンのアルキル鎖が適当な範囲となり、イオン液体の低粘度化や耐熱性(高温酸化安定性)の向上を図ることができる。
前記イオン液体の40℃における動粘度は、蒸発損失、および粘性抵抗による動力損失を抑えるという観点から、1mm/s以上100mm/s以下であることが好ましく、10mm/s以上70mm/s以下であることがより好ましく、20mm/s以上 40mm/s以下であることが特に好ましい。
前記イオン液体の流動点は、低温時に粘性抵抗が増大することを抑える点から、0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることが特に好ましい。
【0023】
前記イオン液体の酸価は、被潤滑油材の腐食防止の観点から、1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.3mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
前記イオン液体の引火点は、基油の蒸発量を少なくするという観点から、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。
前記イオン液体の粘度指数は、温度に対する粘度変化が大きくなりすぎないようにするという観点から、80以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、120以上であることが特に好ましい。
【0024】
前記イオン液体においては、20℃において測定したイオン濃度が1mol/dm以上であることが好ましく、1.5mol/dm以上であることがより好ましく、2mol/dm以上であることが特に好ましい。ここで、イオン濃度とは、イオン液体において、[密度(g/cm)/分子量Mw(g/mol)]×1000で算出される値である。イオン液体のイオン濃度が1mol/dm未満であると、イオン液体の特徴である低蒸発性、耐熱性が低下してしまい好ましくない。
【0025】
本発明の潤滑油基油は、以上説明したイオン液体を一種類以上含むものであるが、本発明の潤滑油基油としては、前記イオン液体以外のその他の成分(例えば、酢酸エチルなど)を含んでいてもよい。ただし、本発明の潤滑油基油として効果を発揮するためには、潤滑油基油中における前記イオン液体の割合が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0026】
本発明の潤滑油基油は、所定の添加剤を配合することにより潤滑油組成物として種々の用途に使用することができる。添加剤としては、酸化防止剤、油性剤、極圧剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤および消泡剤などを挙げることができる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、用途によっては、添加剤を配合せず、潤滑油基油をそのまま潤滑油として使用してもよい。
酸化防止剤としては、従来の炭化水素系潤滑油に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤,硫黄系酸化防止剤を使用することができる。これらの酸化防止剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
【0027】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系化合物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては,トリフェニルフォスファイト,ジエチル[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の配合量は、潤滑油全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.03質量%以上5質量%以下である。
【0028】
油性剤としては、脂肪族アルコール、脂肪酸や脂肪酸金属塩などの脂肪酸化合物、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、グリセライドなどのエステル化合物、脂肪族アミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。これらの油性剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、通常0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0029】
極圧剤としては、硫黄系極圧剤、リン系極圧剤、硫黄および金属を含む極圧剤、リンおよび金属を含む極圧剤が挙げられる。これらの極圧剤は一種を単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。極圧剤としては、分子中に硫黄原子およびリン原子のうち少なくともいずれかを含み、耐荷重性や耐摩耗性を発揮しうるものであればよい。分子中に硫黄を含む極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、トリアジン化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物などを挙げることができる。
硫黄、リンおよび金属を含む極圧剤としては、ジアルキルチオカルバミン酸亜鉛(Zn−DTC)、ジアルキルチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)、ジアルキルチオカルバミン酸鉛、ジアルキルチオカルバミン酸錫、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)、ジアルキルジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)、ナトリウムスルホネート、カルシウムスルホネートなどが挙げられる。分子中にリンを含む極圧剤として代表的なものは、トリクレジルフォスフェートなどのリン酸エステル類およびそのアミン塩である。これら極圧剤の配合量は、配合効果および経済性の点から、組成物全量基準で、通常0.01質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0030】
清浄分散剤としては、金属スルホネート、金属サリチレート、金属フィネート、コハク酸イミドなどが挙げられる。これら清浄分散剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン水素化共重合体など)などが挙げられる。これら粘度指数向上剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、通常0.5質量%以上35質量%以下であり、好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステル、アルキルアミンおよびモノイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンなどを挙げることができる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下である。
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、ポリアクリレートなどを挙げることができる。これらの消泡剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、通常0.0005質量%以上0.01質量%以下である。
【0031】
本発明の潤滑油組成物においては、粘度の低下や腐食を防止する点から、水分混入量が組成物基準で3000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは100質量ppm以下である。
【0032】
本発明の潤滑油基油は、金属に対する腐食性が非常に低く、しかも、低粘度であっても蒸気圧が低く、引火の危険性もないので、そのまま、あるいは上述の添加剤などを配合した潤滑油組成物として種々の分野に適用できる。
例えば、エンジンなどの内燃機関、流体継手や自動変速機(AT:Automatic Transmission)あるいは無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)に代表されるトルク伝達装置、軸受(すべり軸受、転がり軸受、含油あるいは含浸軸受、流体軸受)、コンプレッサーなどの圧縮装置、チェーン、歯車、油圧装置、真空ポンプ、時計部品、ハードディスク、航空機や人工衛星などの航空宇宙機器、密封装置、およびモータ機器などに好適である。また、ボールネジや転がり案内面などの転動装置、クラッチ内蔵型回転伝達装置、パワーステアリング装置、レシプロ型圧縮機、およびターボチャージャーにも適用可能である。
【0033】
本発明は、さらに、金属加工油(切削、プレスおよび鍛造など)、離型剤、熱処理剤、熱媒体、冷却剤、防錆剤、ダンパーなどの緩衝剤、あるいは導電性が求められる通電型潤滑剤としても好適である。
本発明の潤滑油基油は、グリースの基油としても適用可能である。グリースの増稠剤としては、リチウム塩やカルシウム塩などの金属石けん系や非金属系がある。非金属系の増稠剤としては、例えば、ベントナイト、シリカ、フッ素樹脂パウダーなどが好適である。また、本発明の潤滑油基油は、グリース以外のゲル状物質の基油としても適用可能である。
【0034】
さらに、本発明は、鉄、銅、アルミニウムおよび亜鉛などを素材とする機械材料用として好適である。特に、耐食性材料として知られるステンレス鋼(マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系)、セラミック材料(窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ホウ素(BC)、ホウ化チタン(TiB)、窒化ホウ素(BN)、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)およびジルコニア(ZrO)などを用いた場合、さらには、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理などで表面に種々のコーティング処理を施した材料を用いた場合に好適である。
【0035】
また、本発明は、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)を行う装置や、化学蒸着(CVD: Chemical Vapor Deposition)を行う装置に好適に用いられる。ここで、物理蒸着としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングあるいは各種イオンガンを用いたイオン打ち込みなどが挙げられる。真空蒸着としては、一般的な抵抗加熱式蒸着以外に、電子ビーム蒸着、イオンアシスト電子ビーム蒸着、アーク蒸着などが挙げられる。これらの物理蒸着は組み合わせて使用してもよい。CVDとしては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、エピタキシャルCVDあるいはアトミックレイヤーCVDなどが挙げられる。これらの化学蒸着は組み合わせて使用してもよく、物理蒸着と組み合わせて使用してもよい。
本発明の潤滑油基油(潤滑油組成物)を用いた物理蒸着装置や化学蒸着装置は、例えば、ディスプレイ素子の製造に好適である。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、潤滑油基油および潤滑油組成物の諸特性(動粘度、粘度指数、流動点、5%質量減温度、摩擦特性、金属腐食性)は、下記の方法に従って評価または測定した。
(1)動粘度
JIS K2283に規定される「石油製品動粘度試験方法」に準拠して測定した。
(2)粘度指数
JIS K2283に規定される「石油製品動粘度試験方法」に準拠して測定した。
(3)流動点
JIS K2269に記載の方法に準拠して測定した。
(4)5%質量減温度
示差熱分析装置を用い、温度を10℃/minの割合で昇温し、初期質量から5%減少した温度を測定した。5%質量減温度が高いほど、耐蒸発性、耐熱性に優れると言える。
(5)摩擦特性(摩擦係数および摩耗幅)
ボール・オン・ディスク型の往復動摩擦試験機(バウデン・レーベン式)を用い、荷重20N、温度80℃、すべり速度30mm/s、ストローク15mmの条件にて摩擦係数および摩耗幅を測定した。ボールの材質はSUJ2であり、ボールの直径は10mmであり、ディスクの材質はSUJ2である。摩擦係数、摩耗幅が小さいほど潤滑性、耐摩耗性に優れると言える。
(6)金属腐食性
イオン液体8mLに、鉄系(鉄含量が99質量%以上)および、銅系(銅含量が93質量%以上98質量%以下、スズ含量が2質量%以上7質量%以下、その他金属の含量が1質量%以下)の焼結軸受各1個を同時に浸漬し、140℃で240時間静置した後、イオン液体の外観を観察した。軸受の寸法は、外径が12mmであり、厚みが4mmである。そして、以下に示す基準に基づいて、金属腐食性を評価した。
○:金属溶出がなく、腐食がない。
△:茶褐色または黒色状の溶出物がわずかに認められる(わずかに腐食あり)。
×:茶褐色または黒色状の溶出物がある(腐食あり)。
【0037】
[イオン液体]
以下の示すイオン液体を、以下のようにして、合成または準備した。
(1)イオン液体1:1−ブチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
1Lフラスコに窒素雰囲気下で1−メチルピロリジン(50g、0.585mol)、2−プロパノール(70mL)を加えた。この中へ1−ブロモブタン(96.5g、0.705mol)を滴下した後、40℃に昇温して6時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで再結晶化を行い、ろ過により得られた結晶を酢酸エチルで数回洗浄した。その後、真空ポンプで減圧しながら40℃で数時間乾燥することで、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミド(ハロゲン体)を得た(113g、0.510mol)。
次に、1Lフラスコへ上記ハロゲン体(113g、0.510mol)と純水(110mL)を投入し、これにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(151g、0.525mol)を純水(150mL)に溶解させた水溶液を滴下した。この反応混合物を室温下約1時間攪拌した後、1L分液ロートに移し塩化メチレン(230mL)を加えて抽出し、集めた塩化メチレン溶液は純水で数回洗浄した。洗浄後、水層(1mLから2mLまでの範囲)を採取して、0.5M硝酸銀水溶液(1mL)と反応させ沈殿の有無を確認した(もし、白色沈殿が見られれば臭化物イオンが完全に除去できていないので、これが見えなくなるまで洗浄を繰り返す。)。水洗浄の完了後、ロータリーエバポレータで濃縮し、活性炭を少量加えて、室温下1日間攪拌した。この混合物を中性アルミナのカラムに通し、真空ポンプで減圧しながら加熱攪拌(60℃、4時間)することで目的化合物(212g、0.50mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0038】
【化5】

【0039】
(2)イオン液体2:1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
イオン液体1の合成において、1−ブロモブタンを用いる代わりに、1−ブロモヘキサン(116g、0.705mol)を用いたこと以外は同様に操作して1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウムブロミド(117g、0.468mol)を得た。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(202g、0.449mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0040】
【化6】

【0041】
(3)イオン液体3:1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
イオン液体1の合成において、1−ブロモブタンを用いる代わりに、2−ヨードエチルメチルエーテル(131g、0.705mol)を用いたこと以外は同様に操作して1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウムヨージド(146g、0.538mol)を得た。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(212g、0.500mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0042】
【化7】

【0043】
(4)イオン液体4:1−ブチル−1−メチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
イオン液体1の合成において、1−メチルピロリジンを用いる代わりに、1−メチルピペリジン(58g、0.585mol)を用いて、80℃で反応させたこと以外は同様に操作して1−ブチル−1−メチルピペリジニウムブロミド(137g、0.579mol)を得た。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(250g、0.573mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0044】
【化8】

【0045】
(5)イオン液体5:1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
イオン液体3の合成において、1−メチルピロリジンを用いる代わりに、1−メチルピペリジン(58g、0.585mol)を用いて、60℃で反応させたこと以外は同様に操作して1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウムヨージド(161g、0.563mol)を得た。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(241g、0.549mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0046】
【化9】

【0047】
(6)イオン液体6:1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
イオン液体3の合成において、1−メチルピペリジンを用いる代わりに、1−メチルモルホリン(59g、0.585mol)を用いて、80℃で反応させたこと以外は同様に操作して1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウムヨージド(145g、0.505mol)を得た。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(202g、0.460mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0048】
【化10】

【0049】
(7)イオン液体7:1−ブチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
イオン液体1の合成において、1−メチルピロリジンを用いる代わりに、ピリジン(46g、0.585mol)を用い、2−プロパノールを、アセトニトリル(200mL)に変えて80℃で反応させたこと以外は同様に操作して1−ブチルピリジニウムブロミド(125g、0.579mol)を得た。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(234g、0.562mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0050】
【化11】

【0051】
(8)イオン液体8:N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
このイオン液体8は関東化学株式会社より購入した。この化合物の化学式を下記する。
【0052】
【化12】

【0053】
(9)イオン液体9:N,N,N−トリメチル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
1Lフラスコに窒素雰囲気下でトリメチルアミン3.2Mメタノール溶液(183mL、0.585mol)、1−ヨードペンタン(89g、0.449mol)を加え、室温で数時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧除去し、残渣を酢酸エチルとアセトニトリルで数回洗浄した。その後、真空ポンプで減圧しながら数時間乾燥することで、N,N,N−トリメチル−N−ペンチルアンモニウムヨージドを得た(89g、0.346mol)。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(138g、0.336mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0054】
【化13】

【0055】
(10)イオン液体10:トリエチル(オクチル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
1Lフラスコに窒素雰囲気下でトリエチルホスフィン20%トルエン溶液(346g、0.585mol)、1−ヨードオクタン(211g、0.878mol)を加え、60℃で数時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで数回洗浄し、真空ポンプで減圧しながら40℃で数時間乾燥することで、トリエチル(オクチル)ホスホニウムヨージドを得た(176g、0.491mol)。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(241g、0.471mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0056】
【化14】

【0057】
(11)イオン液体11:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
1Lフラスコに窒素雰囲気下で1−メチルイミダゾール(173g、2.100mol)、1−クロロブタン(234g、2.528mol)を加え、90℃で数時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルとアセトニトリルで再結晶化を行い、ろ過により得られた結晶を真空ポンプで減圧しながら40℃で数時間乾燥することで、1−ブチル−1−メチルイミダゾリウムクロリド(352g、2.016mol)を得た。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作して目的化合物(837g、1.996mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0058】
【化15】

【0059】
(12)イオン液体12:1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフェート
このイオン液体12はメルク株式会社より購入した。この化合物の化学式を下記する。
【0060】
【化16】

【0061】
(13)イオン液体13:1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロメタンスルホネート
1Lフラスコに窒素雰囲気下で1−ブチルピロリジン(34g、0.267mol)、トルエン(230mL)を加えた。この中へメチルトリフラート(43g、0.262mol)とトルエン(100mL)の混合溶液を0℃で滴下し、同温度で数時間反応させた。反応終了後、トルエンで数回洗浄し、活性炭処理を行った。この混合物を中性アルミナのカラムに通し、真空ポンプで減圧しながら加熱攪拌(60℃、4時間)することで目的物(68g、0.233mol)を得た。この化合物の化学式を下記する。
【0062】
【化17】

【0063】
[実施例1から実施例8まで、および、比較例1から比較例7まで]
上記のイオン液体および以下に示す添加剤を用いて、表1および表2に示す配合処方により潤滑油基油または潤滑油組成物を調製し、上記諸特性(動粘度、粘度指数、流動点、5%質量減温度、摩擦特性、金属腐食性)について評価または測定した。その結果を配合処方と併せて表1および表2に示す。
極圧剤:トリクレジルフォスフェート
金属不活性化剤:ベンゾトリアゾール
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1および表2に示す評価結果からも明らかなように、実施例1から実施例8までで得られた潤滑油基油または潤滑油組成物は、高温で金属を腐食しにくく、低温流動性に優れる上に、耐熱性、潤滑性も良好であることが確認された。一方、カチオンが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、且つアニオンが共役アミドイオンであるという条件を満足しないイオン液体を用いた場合(比較例1から比較例7まで)には、耐熱性および潤滑性に優れるものの、高温での耐金属腐食性と低温流動性が両立せず、潤滑油基油としては適切でないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
…(1)
(Zはカチオンを意味し、Aはアニオンを意味する。)
で表される化合物からなるイオン液体を一種類以上含む潤滑油基油であって、Zが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、Aが共役アミドイオンであることを特徴とする潤滑油基油。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑油基油において、
前記一般式(1)で表されるイオン液体におけるAが下記一般式(2):
【化1】

(式(2)中、nは1から4までの整数であり、mは1から4までの整数であり、それらは同一でも異なっていてもよい。)
で表される構造を有するアニオンの中から選ばれるものである
ことを特徴とする潤滑油基油。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の潤滑油基油において、
前記一般式(1)で表されるイオン液体におけるZが下記一般式(3):
【化2】

(式(3)中、nは1または2であり、Xはメチレンまたは酸素であり、R、Rはエーテル基、エステル基、ニトリル基、シリル基を有していてもよい炭素数1から12までのアルキル基から選ばれる基である。)
で表される構造を有するカチオンの中から選ばれるものである
ことを特徴とする潤滑油基油。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の潤滑油基油において、
前記イオン液体の分子量が410以上570以下である
ことを特徴とする潤滑油基油。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の潤滑油基油において、
前記イオン液体の40℃動粘度が1mm/s以上100mm/s以下である
ことを特徴とする潤滑油基油。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の潤滑油基油において、
前記イオン液体の流動点が0℃以下である
ことを特徴とする潤滑油基油。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の潤滑油基油に、酸化防止剤、油性剤、極圧剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤および消泡剤のうちの少なくともいずれか一つを配合したことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の潤滑油組成物において、
含油軸受、流体軸受、真空機器および半導体製造装置の潤滑に用いられるものである
ことを特徴とする潤滑油組成物。

【公開番号】特開2012−31275(P2012−31275A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171895(P2010−171895)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】