説明

潤滑油組成物の安定化のための液体添加剤

(A)基油、及び(B)液体添加剤パッケージを含む潤滑油組成物。液体添加剤パッケージは、(i)アルキル化ジフェニルアミン、(ii)液体添加剤パッケージの重量に対して少なくとも5重量%のフェニルナフチルアミン、及び(iii)硫黄含有フェノールを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年7月14日に出願された米国特許仮出願第61/080547号の優先権を主張する、2009年6月2日に出願された米国特許出願第12/476423号の優先権を主張する。これらの出願の各々は、参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、潤滑油組成物に、より詳細には、酸化劣化を少なくするための添加剤パッケージを含む潤滑油組成物に関する。
【0003】
発明の背景
潤滑油、例えば様々な機械類に用いられるものは、保管、輸送、及び使用の間に、特に、このような潤滑油が、潤滑油の酸化を大きく促進する、高温及び鉄触媒環境に曝される時に、酸化劣化を受け易い。この酸化は、抑制されなければ、腐食性の酸性生成物、スラッジ、ワニス、樹脂、及びオイルに溶けない他の生成物の生成に寄与し、潤滑油の指定された物理的及び摩擦学的特性の喪失に導き得る。これらの酸化生成物は、決定的に重要なエンジン部品、例えば、ピストン、ピストンライナー、バルブ、及びバルブリフターに有害な堆積物を生成し得る。
【0004】
その結果、少なくともある程度酸化を防いで潤滑油の使用寿命を延長するために、潤滑油に堆積物抑制化合物及び/又は添加剤、例えば酸化防止添加剤を含めることが一般に行われる。これらの酸化防止添加剤の1つがアルキル化ジフェニルアミン(ADPA)であり、これは、その性能及び低コストのために広く用いられてきた。しかし、段階的に増加する性能及び環境上の要求に強いられて、産業界には、より小型化され、その上、一層高速で一層高い運転温度で作動する機械類に向かう一般的傾向が存在する。このようにして、一層多くの生産高及び一層高い燃料経済性が達成される。しかし、このような運転条件下で潤滑油への熱及び酸化ストレスは過酷になり、通常のADPA酸化防止剤は潤滑油を十分に安定化しない。
【0005】
様々な酸化防止剤を含む潤滑油組成物は、当技術分野において広く知られている。例として、Gattoらの米国特許第6326336号(以下では、「Gatto」)は、(A)アルキル化ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン及びこれらの混合物からなる群から選択されるアミン酸化防止剤;(B)硫化オレフィン、硫化脂肪酸、無灰分ジチオカルバメート、テトラアルキルチウラムジスルフィド及びこれらの混合物からなる群から選択される硫黄含有添加剤、並びに(C)基油を含むタービン潤滑油を開示する。Gattoによれば、このような組成物は、グループII以上の基油を用いて配合されるタービン油に、優れた酸化防止及び許容されるスラッジ抑制をもたらす。硫黄含有添加剤の濃度を選択する重要な規準は、添加剤パッケージの硫黄含量である。Gattoによれば、硫黄含有添加剤は、完成したタービン油に、0.005重量%と0.07重量%の間の硫黄を導入すべきである。しかし、Gattoは、硫化オレフィン、硫化脂肪酸、無灰分ジチオカルバメート、テトラアルキルチウラムジスルフィド及びこれらの混合物だけを用いる。Gattoは、ヒンダードフェノールの使用に付随し得る、かなりの数の問題が存在することを記載する。Gattoは、高温下のヒンダードフェノールは、脱アルキル化し、遊離フェノールを生成し得ること、及び特定の水溶性フェノールの水抽出性が別の潜在的問題であることを記載する。したがって、Gattoは、フェノールを含まない配合が望ましいことであり得ることを記載する。
【0006】
米国特許第5091099号は、a)鉱油若しくは合成油又はこれらの混合物、並びに、b)式(I)の少なくとも1種の芳香族アミン、
【化1】


及び、式(II)の少なくとも1種のフェノール
【化2】


を含む混合物(これらの化合物は、混合物中に、1重量部の式IIのフェノール(単数又は複数)に対して、2から6重量部の式(I)の芳香族アミン(単数又は複数)の比率で存在する)を含む、ホスファイトを含まない潤滑油組成物を開示する。
【0007】
米国特許第5523007号は、ジーゼルエンジンオイル、及び、酸化防止剤として、式Iの化合物
【化3】


を含む潤滑油組成物を開示し、式中、Xは、
【化4】


であり、Rは、式C2n+1(式中、nは8から22の整数である)の直鎖若しくは分岐状アルキル基である。このようなフェノールは硫黄を含み得るが、重量パーセント及び他の成分に対する関係は教示されていない。
【0008】
酸化防止剤パッケージにおいて優れた性能を達成するために利用できる可能性のある1つの酸化防止剤は、フェニルナフチルアミン(PNA)である。しかし、PNAは、室温で固体として通常販売されており、このために、基油に容易にブレンドされない。
【0009】
これらの知られている潤滑油組成物を考慮しても、尚、酸化防止剤による安定性の向上をもたらし、また基油と容易にブレンドされる、費用効率の高い酸化防止剤パッケージが、依然として求められている。
【0010】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、一般に、高温環境において使用され得る潤滑油組成物に関する。通常、このような高温環境は、潤滑油の酸化劣化を促進する。本発明の潤滑油組成物は、このような酸化劣化を受けることがより少ない、すなわち、それらはより安定であり、このために、高温での物理的及び摩擦学的特性を向上させる。
【0011】
本発明の一態様において、前記組成物は、少なくとも約1重量パーセント(重量%)、例えば、少なくとも約3重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約10重量%、又は少なくとも約15重量%のフェニルナフチルアミン(PNA)、例えばフェニル−α−ナフチルアミンを含む液体添加剤パッケージ、及び基油を含む。範囲としては、PNAは、約1重量%から約50重量%、例えば、約2重量%から約50重量%、約3重量%から約40重量%、約5重量%から約30重量%、又は約5重量%から約30重量%の範囲の量で存在し得る。このような添加剤パッケージは、適切な基油と一緒にされる時、5重量%未満のPNAを含む添加剤パッケージに比べて、潤滑油組成物の酸化による生じる有害な堆積物の量を減らす。
【0012】
好ましくは、液体添加剤パッケージ、例えば、液体酸化防止添加剤パッケージは、ジフェニルアミン、例えば、アルキル化ジフェニルアミン(ADPA)、及び少なくとも約5重量%のPNAを含む。通常、PNAは、室温で固体であり、液体、例えば、ADPA又は基油に溶かすのは難しい。本発明の好ましい態様において、PNAは、均一な混合物が実現されるまで、例えばADPAと、加熱下で、例えば、約150℃、約100℃、約65℃、若しくは約50℃で、また/又は窒素若しくは同様の不活性雰囲気下で、一緒にされる。この混合物は室温で安定な液体である。ADPA及びPNAは、約10から約20分間、例えば、約12から18分間、又は約14から16分間、混合され得る。上に挙げられた時間は、単なる例示であり、また、その時間は、各材料の量が変わるにつれて変わり得ることに注意すべきである。一態様において、得られる組成物は、色が暗い赤みを帯びており、25℃で測定して、約50,000cP未満、例えば、約30,000cP未満、又は約20,000cP未満の粘度を有する。範囲としては、組成物の粘度は、25℃で測定して、約100から約100,000cP、例えば、約100から約50,000cP、又は約1,000から約25,000cPの範囲にある。
【0013】
本発明の一態様において、約99:1の基油と添加剤パッケージの重量比で、ポリ−α−オレフィン基油と一緒にされた時、潤滑油組成物は、表1に示される加圧示差走査熱量計(PDSC)条件下で試験して、少なくとも約25分、例えば、少なくとも約38分、少なくとも約40分、少なくとも約50分、又は少なくとも約75分の酸化誘導時間(OIT)を示す。これは、同じポリ−α−オレフィン基油とADPAだけを含む類似の潤滑油組成物(これは、類似の試験で、28.6分の酸化時間を示す)を超えるかなりの改善である。PDSCを操作する試験パラメータは、試料のOITに影響を及ぼし得ることに注意すべきである。例えば、160℃で試験される試料は、185℃で試験される同種の試料より長いOITを有し得る。
【表1】

【0014】
本発明の別の態様において、添加剤パッケージは、ADPA、PNA及び硫黄含有フェノールを含む。通常、硫黄含有フェノールは、室温で固体である。しかし、室温で液体である硫黄含有フェノールもまた使用され得る。一態様において、ADPA、PNA及び硫黄含有フェノールの組合せは、透明な液体を生成する。別の態様において、ADPA、PNA及び硫黄含有フェノールの組合せは、ADPA単独のものを超えて、酸化安定性をかなり向上させ、また、中−高温熱酸化エンジンオイルシミュレーション試験(Mid−High Temperature Thermo−Oxidation Engine Oil Simulation Test、TEOST MHT、ASTM D7097)堆積物(下を参照)の量を減少させる添加剤パッケージを生成する。このような添加剤パッケージは、APIグループII基油を含むエンジンオイルにブレンド(約1重量%の重量%で)された時、約40分のOITを示し、37ミリグラム(mg)の堆積物を示した。本発明の一態様において、潤滑油組成物は、約60mg未満、例えば、約50mg未満、約40mg未満、又は約20mg未満のTEOST MHT値を有する。ADPA単独の添加剤パッケージは、約55mgのTEOST MHT値を生じ、PNA単独では約80mgのTEOST MHT値を生じ、また硫黄含有フェノール単独では約63mgのTEOST MHT値を生じることに注意すべきである。したがって、潤滑油組成物での、55mg未満のTEOST MHT値は、驚くべきことであり、予想外である。
【0015】
本発明の好ましい一態様において、ADPAは、添加剤パッケージの重量に対して、少なくとも約50重量%、例えば、少なくとも約60重量%、又は少なくとも約70重量%の量で存在する。範囲としては、好ましくは、ADPAは、添加剤パッケージの重量に対して、約50から約99重量%、例えば、約60から約99重量%、約70から約95重量%、又は約70から90重量%の範囲の量で存在する。
【0016】
本発明の一態様において、PNAは、添加剤パッケージの重量に対して、少なくとも約1重量%、例えば、少なくとも約3重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、又は少なくとも約50重量%の量で存在する。範囲としては、PNAは、添加剤パッケージの重量に対して、約1重量%から約50重量%、例えば、約2重量%から約50重量%、約5重量%から約50重量%、約3重量%から約40重量%、約5重量%から約30重量%、又は約5重量%から約30重量%の範囲の量で存在する。前記の量のPNAを含む添加剤パッケージは、50重量%未満、例えば、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満を用いる添加剤パッケージの結果と比べた時、驚くべきであり、また予想外である結果を示す。
【0017】
本発明の別の態様において、硫黄含有フェノールは、添加剤パッケージの重量に対して、少なくとも約1重量%、例えば、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、又は少なくとも約50重量%の量で存在する。範囲としては、硫黄含有フェノールは、添加剤パッケージの重量に対して、約5から約50重量%、例えば、約10から約25重量%、約10から約20重量%、又は約10から約15重量%の範囲の量で存在する。
【0018】
本発明の一態様において、ADPAは、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%の量で存在し、PNAは、少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも50重量%の量で存在し、硫黄含有フェノールは、少なくとも1重量%、例えば、少なくとも5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも50重量%の量で存在し、全ての重量%は、添加剤パッケージの重量に対してのものである。
【0019】
本発明の好ましい態様において、ADPAは、約70重量%±10重量%、例えば、±5重量%、±3重量%、又は±1重量%の量で存在し、PNAは、約15重量%±14重量%、例えば、±10重量%、±5重量%、±3重量%、又は±1重量%の量で存在し、また、硫黄含有フェノールは、約15重量%±10重量%、例えば、±5重量%、±3重量%、又は±1重量%の量で存在し、全ての重量%は、添加剤パッケージの重量に対してのものである。好ましいさらなる態様は、表2に列挙される、ADPA、PNA及び硫黄含有フェノールの重量%の組合せを用いる。これらの態様で列挙される各重量パーセントは、±10重量%、例えば、±5重量%、±3重量%、±2重量%、又は±1重量%だけ、変動し得る。
【表2】

【0020】
本発明の一態様において、添加剤パッケージにおけるADPAと硫黄含有フェノールの重量比は、少なくとも約3:1、例えば、少なくとも約6:1、又は少なくとも約10:1である。
【0021】
本発明の別の態様において、添加剤パッケージにおけるPNAと硫黄含有フェノールの重量比は、約1:10から約10:1、例えば、約1:8から約8:1、約1:5から約5:1、又は約1:3から約3:1の範囲にある。
【0022】
本発明の別の態様において、ADPAとPNAを合わせたものと硫黄含有フェノールとの重量比は、少なくとも約2:1、例えば、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、又は少なくとも約10:1である。
【0023】
本発明の別の態様において、添加剤パッケージにおけるADPAとPNAの重量比は、少なくとも約2:1、例えば、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、又は少なくとも約10:1である。範囲としては、重量比は、約3:1から約20:1、例えば、約3:1から約15:1、又は約3:1から約10:1の範囲にある。
【0024】
一態様において、基油は、潤滑油組成物(添加剤パッケージを含む)の重量に対して、少なくとも約50重量%、例えば、少なくとも約75重量%、少なくとも約95重量%、又は少なくとも約99重量%の量で存在する。
【0025】
一態様において、添加剤パッケージは、潤滑油組成物の重量に対して、少なくとも約0.05重量%、例えば、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、又は少なくとも約10重量%の量で存在する。
【0026】
範囲としては、基油と添加剤パッケージの比は、50:50から約99.95:0.05、例えば、約75:25から約99.9:0.1、約90:10から約99:1、又は約95:5から約99:1の範囲にある。本発明の好ましい態様において、潤滑油組成物は、潤滑油の全重量に対して、約1重量%の添加剤パッケージと一緒にされた約99重量%の基油を含む。
【0027】
本発明の添加剤パッケージは、可能性のある多くの基油と組み合わせられる成分として特に有用である。添加剤パッケージは、天然及び合成潤滑油並びにこれらの混合物を含めて、潤滑粘度を有する様々なオイルに含められ得る。例として、添加剤パッケージは、火花着火式及び圧縮着火式内燃機関のクランクケース潤滑油に含められる。添加剤パッケージは、また、例えば、ガスエンジン潤滑油、タービン潤滑油、自動変速機流体、ギア潤滑油、コンプレッサ潤滑油、金属加工潤滑油、油圧流体、及び他の潤滑油及びグリース組成物と共に使用され得る。本発明の一態様において、添加剤パッケージは、食品との接触、例えば、偶発的な食品との接触があり得る潤滑油の製造に用いられる。より詳細には、添加剤パッケージは、H1食品グレード基油と共に用いられ得る。
【0028】
一態様において、添加剤パッケージは、グリース又はグリースの組合せと一緒にされる。グリースは、高圧及び低速を有する用途に、しばしば用いられる。このような用途には、これに限らないが、連続鋳造工程が含まれる。
【0029】
本発明の一態様において、本発明でのADPAは、式IのADPA:
【化5】


を含み、
式中、R及びRは、線状若しくは分岐状C〜C20アルキル、置換若しくは無置換C〜C20シクロアルキルからなる群から独立に選択される。
【0030】
本発明の一態様において、R及びRは同じ置換基であり得る。本発明の一態様において、R又はRは両方とも水素ではない。
【0031】
及びRとしてここで用いられるアルキル基の代表的な例には、例えば、1から20個の炭素原子を含む線状若しくは分岐状の炭化水素鎖基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチルなど、並びにこれらの混合物及び異性体などが含まれる。
【0032】
及びRとしてここで用いられるシクロアルキル基の代表的な例には、例えば、約5から約20個の炭素原子を含む、置換若しくは無置換の環、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、n−メチル−シクロヘキシル、n−ジメチル−シクロヘキシル、n−エチル−シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチルなど、並びにこれらの混合物及び異性体などが含まれる。
【0033】
本発明の別の態様において、ADPAは、さらに、3個以上の置換基により、アルキル化されている。本発明の別の態様において、ADPAは、たった1つの置換基によりアルキル化されている。
【0034】
本発明の実施において用いることができる好ましいADPAには、例えば、ノニル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン(例えば、ジ(オクチルフェニル)アミン)、スチレン化ジフェニルアミン、オクチル化スチレン化ジフェニルアミン、ブチル化オクチル化ジフェニルアミン、ジフェニルアミン、ブチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、へプチルジフェニルアミン、ジへプチルジフェニルアミン、メチルスチリルジフェニルアミン、混合ブチル/オクチルアルキル化ジフェニルアミン、混合ブチル/スチリルアルキル化ジフェニルアミン、混合ノニル/エチルアルキル化ジフェニルアミン、混合オクチル/スチリルアルキル化ジフェニルアミン、混合エチル/メチルスチリルアルキル化ジフェニルアミン、tert−ブチルジフェニルアミン、ジ−tert−ブチルジフェニルアミン、モノ−オクチルジフェニルアミン、ドデシルジフェニルアミン、ヘキサデシルジフェニルアミン、エイコセニルジフェニルアミン、テトラコセニルジフェニルアミン、オクタコセニルジフェニルアミン、ポリイソブチルジフェニルアミン及びこれらの混合物が含まれる。
【0035】
本発明において用いることができる工業的に製造されている好ましいADPAには、例えば、Ciba Specialty ChemicalsによるIrganox(登録商標)L06、Irganox(登録商標)L57、及びIrganox(登録商標)L67;Chemtura CorporationによるNaugalube(登録商標)AMS、Naugalube(登録商標)438、Naugalube(登録商標)438R、Naugalube(登録商標)438L、Naugalube(登録商標)500、Naugalube(登録商標)640、及びNaugalube(登録商標)680;BFGoodrich Specialty ChemicalsによるGoodrite(登録商標)3123、Goodrite(登録商標)3190X36、Goodrite(登録商標)3127、Goodrite(登録商標)3128、Goodrite(登録商標)3185X1、Goodrite(登録商標)3190、Goodrite(登録商標)3190X29、Goodrite(登録商標)3190X40、及びGoodrite(登録商標)3191、Goodrite(登録商標)3192;Ethyl Corporationから入手可能なHiTEC(登録商標)569酸化防止剤、及びHiTEC(登録商標)4793酸化防止剤;R.T.Vanderbilt Company,Inc.によるVanlube(登録商標)DND、Vanlube(登録商標)NA、Vanlube(登録商標)PNA、Vanlube(登録商標)SL、Vanlube(登録商標)SLHP、Vanlube(登録商標)SS、Vanlube(登録商標)81、Vanlube(登録商標)848、Vanlube(登録商標)849、及びVanlube(登録商標)961が含まれる。本発明の一態様において、添加剤パッケージは、上で特定された構造及び化合物から選択される2種以上のADPAの混合物を含む。例示的な混合物は、混合モノ−及びジ−オクチルジフェニルアミン(DPA)、混合モノ−及びジ−ノニルDPA、混合モノ−及びジ−スチリルDPA、混合ブチル/スチリルアルキル化DPA、混合オクチル/スチリルアルキル化DPA、並びに混合ブチル/オクチルアルキル化DPAである。
【0036】
本発明の一態様において、PNAは、フェニル−α−ナフチルアミンを含む。本発明の別の態様において、PNAは、フェニル−β−ナフチルアミンを含む。
【0037】
本発明の一態様において、PNAは、式II:
【化6】


の1種又は複数のPNAを含む。
【0038】
本発明の別の態様において、PNAは、式III:
【化7】


の1種又は複数のPNAを含む。
【0039】
本発明の別の態様において、PNAは、前の2つの式のPNAのブレンドを含む。
【0040】
本発明の別の態様において、PNAは、1つ又は複数の置換基により、置換されている、例えば、アルキル化されている。可能性のある置換基には、例えば、R及びRの候補として上で記載された置換基が含まれる。一態様において、式II又は式IIIのフェニル環は、オルト、パラ又はメタ位で置換されている。
【0041】
本発明に用いることができる好ましいPNAには、例えば、オクチルアルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、ドセシル(docecyl)フェニル−α−ナフチルアミン、及び混合アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンが含まれる。工業的に製造されている置換PNAの例は、Naugalube(登録商標)PANA、及びIrganox(登録商標)L06である。
【0042】
本発明において用いることができる、工業的に製造されている好ましいPNAは、例えば、Naugard(登録商標)PANAである。
【0043】
本発明の一態様において、上で特定された構造及び化合物から選択される2種以上のPNAの混合物を含む組成物が存在する。
【0044】
本発明の一態様において、硫黄含有フェノールは、式IVの硫黄含有フェノール:
【化8】


を含み、
式中、Rは、硫黄含有アルキル若しくはアリール基、又は硫黄含有アルケン若しくはカルボン酸であり、
式中、R及びRはアルキル又はアリールである。
【0045】
本発明において用いることができる好ましい硫黄含有フェノールには、例えば、2,2’−チオジエチレンビス(3,5,−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルチオ酢酸イソ(C10〜C14)アルキルが含まれる。
【0046】
本発明において用いることができる、工業的に製造されている好ましい硫黄含有フェノールには、例えば、Chemtura CorporationによるNaugalube(登録商標)15、Naugalube(登録商標)16、及びNaugalube(登録商標)18;Ciba Specialty chemicalsでのIrganox(登録商標)L115、Irganox(登録商標)L118、Irganox(登録商標)L1035、Irganox(登録商標)L1081、及びIrganox(登録商標)L415が含まれる。本発明の一態様において、添加剤パッケージは、Naugalube(登録商標)438Lを、Naugard(登録商標)PNA及び硫黄含有フェノールと混合することによって製造される。混合は、65℃で、窒素による保護下で実施される。混合は、少なくとも5分間、例えば、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも25分間、又は少なくとも60分間、実施され得る。混合時間が各材料の量に基づいて変わり得ることは、当業者によって理解されるはずである。得られる混合物は、40℃で測定して、約100,000cP未満、例えば、約50,000cP未満、約40,000cP未満、約25,000cP未満、又は約10,000cP未満の粘度を有する、室温で自由に流動する液体であった。別の態様において、得られる混合物は、色が、暗い赤みを帯びていた。
【0047】
本発明の好ましい態様において、添加剤パッケージは、ノニル化ジフェニルアミン、オクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、及び2,2’−チオジエチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含む。本発明の別の好ましい態様において、添加剤パッケージは、ブチル及びオクチル化ジフェニルアミン、オクチルアルキル化フェニル−アルファ−ナフチルアミン、並びに2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチル−フェノール)を含む。本発明の別の好ましい態様において、添加剤パッケージは、オクチル及びスチレン化ジフェニルアミン、混合アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、並びに2,2’−チオジエチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含む。
【0048】
さらなる態様は、表3に列挙されるADPA、PNA及び硫黄含有フェノールの組合せを用いる。この列挙は、全ての好ましい態様を排除しない。
【表3】

【0049】
例示的なADPA、PNA及び硫黄含有フェノールの候補は、表4に列挙されている。この列挙は排他的ではない。
【表4】

【0050】
さらなる添加剤が、本発明の組成物に、それらが特定の要求を満たすことができるように、組み入れられ得る。潤滑油組成物に含められ得る添加剤の例は、分散剤、清浄剤、防錆剤、粘度指数向上剤(viscosity index improver)、腐食防止剤、酸化抑制剤、摩擦改良剤、他の分散剤、消泡剤(anti−foaming agent)、耐摩耗剤、及び流動点降下剤(pour point depressant)である。いくつかは下でより詳細に記載される。
【0051】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油に添加された時にガソリン及びジーゼルエンジンにおいて用いられる際の堆積物の生成を効果的に減らす、1種又は複数の無灰分の分散剤をさらに含み得る。本発明の組成物に有用な無灰分の分散剤は、分散される粒子に結合できる官能基を有する、オイル可溶性長鎖ポリマー骨格を含む。通常、このような分散剤は、しばしば架橋基を通じて、ポリマー骨格に結び付いたアミン、アルコール、アミド又はエステルの極性部分を含む。無灰分の分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノ−及びポリカルボン酸若しくはこれらの無水物のオイル可溶性の塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミド、及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体;直接結び付いたポリアミン部分を有する長鎖脂肪族炭化水素;並びに長鎖置換フェノールとホルムアルデヒドとポリアルキレンポリアミンとの縮合によって生成するマンニッヒ縮合生成物から選択され得る。
【0052】
好ましい分散剤には、ポリアミン誘導体化ポリアルファ−オレフィン分散剤、特に、エチレン/ブテンアルファ−オレフィン及びポリイソブチレン系分散剤が含まれる。特に好ましいのは、ポリエチレンアミン(例えば、ポリエチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン);又はポリオキシアルキレンポリアミン(例えば、ポリオキシプロピレンジアミン)、トリメチロールアミノメタン;ヒドロキシ化合物(例えば、ペンタエリトリトール)並びにこれらの組合せと反応した、無水コハク酸基により置換されたポリイソブチレンから誘導される無灰分の分散剤である。分散剤の特に好ましい1つの組合せは、(B)ヒドロキシ化合物、例えば、ペンタエリトリトール;(C)ポリオキシアルキレンポリアミン、例えば、ポリオキシプロピレンジアミン;又は(D)ポリアルキレンジアミン、例えば、ポリエチレンジアミン及びテトラエチレンペンタミンと反応した、(A)無水コハク酸基により置換されたポリイソブチレンの組合せ((A)の1モル当たり、約0.3から約2モルの(B)、(C)及び/又は(D)を用いる)である。分散剤の好ましい別の組合せは、米国特許第3632511号に記載されているように、(A)ポリイソブテニル無水コハク酸と、(B)ポリアルキレンポリアミン、例えば、テトラエチレンペンタミン、及び(C)多価アルコール又はポリヒドロキシ置換脂肪族第1級アミン、例えば、ペンタエリトリトール又はトリスメチロールアミノメタンとの組合せを含む。
【0053】
無灰分の分散剤の別の種類は、マンニッヒ塩基縮合生成物を含む。通常、これらの生成物は、例えば、米国特許第3442808号に開示されているように、約1モルのアルキル置換モノ−又はポリヒドロキシベンゼンと、約1から2.5モルのカルボニル化合物(単数又は複数)(例えば、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒド)及び約0.5から2モルのポリアルキレンポリアミンとを縮合させることによって製造される。このようなマンニッヒ塩基縮合生成物は、ベンゼン基の置換基として、メタロセン触媒による重合のポリマー生成物を含み得る、又は、米国特許第3442808号に記載されるものに類似のやり方で、無水コハク酸で置換されたこのようなポリマーを含む化合物と反応させることができる。メタロセン触媒系を用いて合成された、官能化及び/又は誘導体化されたオレフィンポリマーの例は、上に特定された公報に記載されている。
【0054】
前記分散剤は、米国特許第3087936号及び米国特許第3254025号に一般的に教示されるように、ホウ素化(boration)のような様々な通常の後処理によって、さらに後処理され得る。分散剤のホウ素化は、アシル窒素含有分散剤を、各1モルのアシル化窒素構造当たり約0.1から約20原子の比率のホウ素を供給するのに十分な量で、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素ホウ酸、及びホウ酸エステルのようなホウ素化合物により処理することによって容易に達成される。有用な分散剤は、約0.05から約2.0重量%、例えば、約0.05から約0.7重量%のホウ素を含む。ホウ素は、生成物中に、脱水によるホウ酸ポリマー(主に、(HBO)として現れ、アミン塩として分散剤のイミド及びジイミドに結び付いていると考えられる(例えば、ジイミドのメタホウ酸塩)。ホウ素化は、約0.5から4重量%、例えば、約1から3重量%(アシル窒素化合物の質量に対して)のホウ素化合物、好ましくはホウ酸を、通常スラリーとして、アシル窒素化合物に加え、約135℃から約190℃、例えば、140℃から170℃で、約1から約5時間、撹拌しながら加熱し、その後、窒素によりストリッピングを行うことによって実施できる。別法として、ホウ素処理は、ホウ酸を、水を除去しながら、ジカルボン酸原料及びアミンの高温反応混合物に加えることによって実施できる。当技術分野において一般に知られている他の後反応プロセスもまた適用できる。
【0055】
分散剤はまた、いわゆる「キャッピング剤(capping agent)」との反応によって、さらに後処理され得る。通常、窒素含有分散剤は、このような分散剤がフルオロエラストマーのエンジンシールに及ぼす悪影響を少なくするために「キャッピング」されている。多数のキャッピング剤及び方法が知られている。知られている「キャッピング剤」の中で、塩基性分散剤のアミノ基を、非塩基性部分(例えば、アミド又はイミド基)に変換するものが、最も適切である。窒素含有分散剤とアセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸エチル(EAA))との反応が、例えば、米国特許第4839071号、米国特許第4839072号、及び米国特許第4579675号に記載されている。窒素含有分散剤とギ酸との反応は、例えば、米国特許第3185704号に記載されている。窒素含有分散体と、他の適切なキャッピング剤との反応生成物は、米国特許第4663064号(グリコール酸);米国特許第4612132号、米国特許第5334321号、米国特許第5356552号、米国特許第5716912号、米国特許第5849676号、及び米国特許第5861363号(アルキル及びアルキレン炭酸エステル、例えば、炭酸エチレン);米国特許第5328622号(モノ−エポキシド);米国特許第5026495号;米国特許第5085788号、米国特許第5259906号、米国特許第5407591号(ポリ(例えば、ビス)−エポキシド);並びに、米国特許第4686054号(無水マレイン酸又は無水コハク酸)に記載されている。前記の列挙は、全てを網羅しているわけではなく、窒素含有分散体をキャッピングする他の方法が、当業者に知られている。
【0056】
適切なピストン堆積物の抑制のために、窒素含有分散剤は、潤滑油組成物に、約0.03重量%から約0.15w%、好ましくは約0.07から約0.12重量%の窒素を含ませる量で添加され得る。
【0057】
金属含有又は灰分生成清浄剤は、堆積物を減らす又は除去するための清浄剤、及び酸中和剤又は防錆剤の両方として機能することにより、摩耗及び腐食を減らし、エンジンの寿命を延ばす。清浄剤は通常、長い疎水性のテイル(tail)と共に極性のヘッド(head)を備え、極性のヘッドは、酸性有機化合物の金属塩を含む。これらの塩は、実質的に化学量論的な量の金属を含み得る。この場合、それらは、通常、正塩又は中性塩と呼ばれ、典型的には、0から80の全塩基価又はTBN(ASTM D2896によって測定できる)を有すると推定される。大量の金属塩基が、過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)と酸性ガス(例えば、二酸化炭素)とを反応させることによって組み入れられ得る。得られる過塩基性清浄剤は、金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外側の層として、中和された清浄剤を含む。このような過塩基性清浄剤は、150以上のTBNを有し、通常、250から450、又はこれを超えるTBNを有し得る。
【0058】
使用され得る清浄剤には、オイル可溶性の中性若しくは過塩基性のスルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、ナフテン酸塩、及び他のオイル可溶性の金属(特に、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウム)カルボン酸塩が含まれる。最も一般的に用いられる金属は、カルシウム及びマグネシウム(これらは、どちらも、潤滑油に用いられる清浄剤に存在し得る)、並びに、カルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムとの混合物である。特に便利な金属清浄剤は、20から450TBNのTBNを有する、中性及び過塩基性のカルシウムスルホン酸塩、並びに、50から450のTBNを有する、中性及び過塩基性のカルシウムフェネート及び硫化フェネートである。清浄剤の組合せが、過塩基性又は中性であっても、或いは両方であっても使用できる。
【0059】
スルホン酸塩は、石油の分留により又は芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるもののようなアルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化によって通常得られるスルホン酸から製造され得る。例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル、又は、クロロベンゼン、クロロトルエン及びクロロナフタレンのようなこれらのハロゲン誘導体をアルキル化することによって得られるものが含まれた。アルキル化は、約3から70個を超える炭素原子を有するアルキル化剤により、触媒の存在下で実施できる。通常、アルカリール(alkaryl)スルホン酸塩は、1つのアルキル置換芳香族部分当たり、約9から約80個又はこれを超える炭素原子、好ましくは約16から約60個の炭素原子を含む。
【0060】
オイル可溶性スルホン酸塩又はアルカリールスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸塩、スルフィド、ヒドロスルフィド、硝酸塩、ホウ酸塩、及びエーテルにより中性化できる。金属化合物の量は、最終生成物に望まれるTBNを考慮して選択されるが、通常、化学量論的に必要とされる量の約100から220重量%(好ましくは、少なくとも125重量%)の範囲にある。
【0061】
フェノール及び硫化フェノールの金属塩は、酸化物若しくは水酸化物のような適切な金属化合物との反応によって製造され、中性若しくは過塩基性生成物は、当技術分野においてよく知られている方法によって得ることができる。硫化フェノールは、フェノールと硫黄又は硫黄含有化合物(例えば、硫化水素、硫黄モノハロゲン化物、若しくは硫黄ジハロゲン化物)とを、通常、2つ以上のフェノールが硫黄含有ブリッジによって橋架けされた化合物の混合物である生成物を生成するように、反応させることによって製造され得る。
【0062】
ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩は、耐摩耗及び酸化防止剤としてしばしば用いられる。この金属は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル若しくは銅であり得る。亜鉛塩が、潤滑油に、潤滑油組成物の全重量に対して、0.1から10重量%、好ましくは0.2から2重量%の量で、最も一般的に用いられる。それらは、通常、1種又は複数のアルコール又はフェノールとPとを反応させることによって、最初に、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を生成させ、次いで、生成したDDPAを亜鉛化合物により中和することによって、知られている方法に従って製造できる。例えば、ジチオリン酸は、第1級及び第2級アルコールの混合物を反応させることによって製造できる。代わりに、一方の2つのヒドロカルビル基は特性が全く第2級であり、他方の2つのヒドロカルビル基は特性が全く第1級である、複合ジチオリン酸を製造できる。亜鉛塩にするために、塩基性又は中性の任意の亜鉛化合物が使用できると思われるが、酸化物、水酸化物、及び炭酸塩が最も一般的に用いられる。市販の添加剤は、中和反応における過剰の塩基性亜鉛化合物の使用のせいで、しばしば、過剰の亜鉛を含む。
【0063】
好ましいジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジヒドロカルビルジチオリン酸のオイル可溶性の塩であり、これらには、ジアルキルジチオリン酸亜鉛が含まれ得る。本発明は、組成物の全質量に対して、約0.02から約0.12重量%、例えば、約0.03から約0.10重量%、若しくは約0.05から約0.08重量%のリンのレベルを含む乗用車ジーゼルエンジン潤滑油組成物、及び、組成物の全質量に対して、約0.02から約0.16重量%、例えば、約0.05から約0.14重量%、若しくは約0.08から約0.12重量%のリンのレベルを含む大型(heavy duty)ジーゼルエンジン潤滑油組成物と共に用いられる時、特に有用であり得る。好ましい一態様において、本発明の潤滑油組成物は、主に(例えば、50mol%を超え、例えば、60mol%を超える)第2級アルコールから誘導されるジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む。
【0064】
酸化抑制剤又は酸化防止剤は、使用中に劣化する、鉱油の傾向を抑える。酸化劣化は、潤滑油中のスラッジ、金属表面のワニス様堆積物、及び粘度増加によって確認できる。このような酸化抑制剤には、ヒンダードフェノール、CからC12のアルキル側鎖を好ましくは有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、オイル可溶性フェネート及び硫化フェネート、リン硫化炭化水素若しくは硫化炭化水素、亜リン酸エステル、チオカルバミン酸金属塩、米国特許第4867890号に記載のオイル可溶性銅化合物、並びにモリブデン含有化合物が含まれる。
【0065】
1つのアミン窒素に直接結び付いた少なくとも2つの芳香族基を有する、典型的なオイル可溶性芳香族アミンは、6から16個の炭素原子を含む。これらのアミンは3個以上の芳香族基を含み得る。合計で少なくとも3個の芳香族基(これらの中で、2個の芳香族基は、共有結合によって、又は原子若しくは基(例えば、酸素若しくは硫黄原子、又は−CO−、−SO−、若しくはアルキレン基)によって連結しており、また2個は、1個のアミン窒素に直接結び付いている)を有する化合物は、また、窒素に直接結び付いた少なくとも2個の芳香族基を有する芳香族アミンと見なせる。通常、前記芳香族環は、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アシルアミノ、ヒドロキシ、及びニトロ基から選択される1つ又は複数の置換基によって置換されている。
【0066】
好ましくは、本発明の実施に有用な潤滑油組成物、特に、1200ppm以下のリンを含むことが求められる、本発明の実施に有用な潤滑油組成物は、ベンゼンジアミン以外の無灰分酸化防止剤を、約0.1から約5重量%、好ましくは約0.3重量%から約4重量%、より好ましくは約0.5重量%から約3重量%の量で含む。リン含量が、一層少ないことを求められる場合、ベンゼンジアミン以外の無灰分酸化防止剤の量は、好ましくは、それに応じて増やされ得る。
【0067】
適切な粘度調整剤(viscosity modifier)の代表例は、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリルエステルのインターポリマー、並びに、スチレン/イソプレン、スチレンブタジエン、及びイソプレン/ブタジエンの部分水素添加コポリマー、さらには、ブタジエン及びイソプレンの部分水素添加ホモポリマーである。
【0068】
粘度指数向上分散剤は、粘度指数向上剤及び分散剤の両方として機能する。粘度指数向上分散剤の例には、アミン(例えば、ポリアミン)とヒドロカルビル置換モノ−若しくはジカルボン酸(このヒドロカルビル置換基は、それらの化合物に粘度指数向上特性を付与するのに十分な長さの鎖を含む)との反応生成物が含まれる。一般に、粘度指数向上分散剤は、例えば、CからC24の不飽和ビニルアルコールエステル、又はCからC10の不飽和モノカルボン酸若しくはCからC10のジカルボン酸と、4から20個の炭素原子を有する窒素含有不飽和モノマーとのポリマー;CからC20のオレフィンと、アミン、ヒドロキシアミン若しくはアルコールにより中和されたCからC10不飽和モノ−若しくはジ−カルボン酸とのポリマー;或いは、エチレンと、CからC20オレフィンとのポリマーで、それにCからC20の窒素含有不飽和モノマーをグラフトすること、又はポリマー骨格に不飽和酸をグラフトし、次いで、グラフトされた酸のカルボン酸基を、アミン、ヒドロキシアミン、若しくはアルコールと反応させることによるかのいずれかによって、さらに反応を受けたポリマーであり得る。
【0069】
最終オイルの他の成分に適合する摩擦改良剤及び燃料節約剤(fuel economy agent)もまた、含めることができる。このような材料の例には、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、モノ−オレイン酸グリセリル;長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル、例えば、2量化不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;並びに、アルコキシ化アルキル−置換モノ−アミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシ化タロー(tallow)アミン及びエトキシ化タローエーテルアミンが含まれる。
【0070】
知られている他の摩擦改良剤には、オイル可溶性有機モリブデン化合物が含まれる。このような有機モリブデン摩擦改良剤は、また、潤滑油組成物に、酸化防止及び耐摩耗の信頼性も与える。このようなオイル可溶性有機モリブデン化合物には、ジチオカルバミン酸塩、ジチオリン酸塩、ジチオホスフィン酸塩、キサントゲン酸塩(xanthate)、チオキサントゲン酸塩、スルフィドなど、及びこれらの混合物が含まれる。特に好ましいのは、モリブデンのジチオカルバミン酸塩、ジアルキルジチオリン酸塩、アルキルキサントゲン酸塩、及びアルキルチオキサントゲン酸塩である。
【0071】
さらに、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。これらの化合物は、ASTM試験D−664又はD−2896の滴定法によって測定した時に、塩基性窒素化合物と反応することができ、通常、6価である。含まれるのは、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属モリブデン酸塩、並びに、他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン又は類似の酸性モリブデン化合物である。
【0072】
本発明の潤滑組成物において有用な別のグループの有機モリブデン化合物は、3核モリブデン化合物、特に、式、Moのもの、及びこれらの混合物であり、式中、Lはその化合物をオイルに溶解可能又は分散可能にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を含む、独立に選択されるリガンドであり、nは1から4であり、kは4から7まで変わり、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルのような、電子供与性の中性化合物の群から選択され、また、zは0から5の範囲にあり、非化学量論的値を含む。合計で少なくとも21個の炭素原子、例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が、全リガンド有機基の中に存在するべきである。
【0073】
流動点降下剤は、別に潤滑油流動向上剤(lube oil flow improver、LOFI)としても知られ、流体が流れる、又は注がれ得る最低温度を下げる。このような添加剤はよく知られている。流体の低温流動性を向上させるこれらの添加剤の典型的なものは、フマル酸のCからC18ジアルキルエステル/酢酸ビニルのコポリマー、及びポリメタクリレートである。泡の抑制は、ポリシロキサン型の減泡剤(antifoamant)、例えば、シリコーンオイル又はポリジメチルシロキサンによって達成できる。
【0074】
前記添加剤のいくつかは、複数の効果をもたらし得る。したがって、例えば、1つの添加剤が、分散剤−酸化抑制剤として機能し得る。この手法はよく知られており、本明細書において、さらに詳述される必要はない。
【0075】
本発明において、ブレンドの粘度の安定性を保つ添加剤を含めることが必要であり得る。一例として、極性基含有添加剤は、予備ブレンド段階において、適度に低い粘度を実現するが、組成物によっては、長期間保存された時に、粘度増加が認められた。この粘度増加を抑制する効果がある添加剤には、上で開示された無灰分の分散剤の製造に用いられる、モノ−若しくはジカルボン酸又は無水物との反応によって官能化された長鎖炭化水素が含まれる。
【0076】
潤滑組成物が1つ又は複数の前記添加剤を含む場合、通常、各添加剤は、その添加剤が、望まれるその機能を発揮することを可能にする量で、基油にブレンドされる。このような添加剤の典型的な効果のある量は、クランクケース潤滑油に用いられる場合に、表5において下に列挙されている。列挙されている全ての値は例示的であり、活性成分の重量パーセントとして記載されている。
【表5】

【0077】
本発明の、完全に配合された乗用車ジーゼルエンジン潤滑油(PCDO)組成物は、約0.4重量%未満、例えば約0.35重量%未満、より好ましくは約0.03重量%未満、例えば約0.15重量%未満の硫黄含量を好ましくは有する。好ましくは、完全に配合されたPCDO(潤滑粘度のオイル+全ての添加剤)のノアック揮発性(Noack volatility)は、13以下、例えば、12以下、好ましくは10以下であり得る。完全に配合された本発明のPCDOは、好ましくは、1200ppm以下のリン、例えば、1000ppm以下のリン、又は800ppm以下のリンを含む。完全に配合された本発明のPCDOは、好ましくは、約1.0重量%以下の硫酸灰分(SASH)含量を有する。
【0078】
本発明の、完全に配合された大型ジーゼルエンジン(HDD)潤滑油組成物は、好ましくは、約1.0重量%未満、例えば、約0.6重量%未満、より好ましくは、約0.4重量%未満、例えば、約0.15重量%未満の硫黄含量を有する。好ましくは、完全に配合されたHDD潤滑油組成物(潤滑粘度のオイル+全ての添加剤)のノアック揮発性は、20以下、例えば、15以下、好ましくは12以下であり得る。完全に配合された本発明のHDD潤滑油組成物は、好ましくは、1600ppm以下のリン、例えば1400ppm以下のリン、又は1200ppm以下のリンを含む。完全に配合された本発明のHDD潤滑油組成物は、好ましくは、約1.0重量%以下の硫酸灰分(SASH)含量を有する。
【0079】
フェノール酸化防止剤の例には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tertブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソ−ブチルフェノール、2,6−ジ−シクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−オクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−シクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、o−tertブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,2’−チオ−ビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’チオ−ビス(4−オクチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール]、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール又は−5−イソブチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,.α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ジ(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5 メチルベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、ビス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオールテレフタレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ジオクタデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、モノエチル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートカルシウム塩、4−ヒドロキシラウルアニリド、4−ヒドロキシステアルアニリド、2,4−ビス−オクチルメルカプト−6−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン、オクチルN−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバメート、一価又は多価アルコール、例えば、メタノールトリエチレングリコールオクタデカノールトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート 1,6−ヘキサンジオールビス−ヒドロキシエチルシュウ酸ジアミドネオペンチルグリコールジエチレングリコールとのβ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル及び/又はβ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステル、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、例えば、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジンが含まれる。
【0080】
アミン系酸化防止剤の例には、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、4−(p−トルエンスルホンアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4−n−ブチルアミノフェノール、4−ブチリルアミノフェノール、4−ノナノイルアミノフェノール、4−ドデカノイルアミノフェノール、4−オクタデカノイルアミノフェノール、2,6−ジ−tertブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ジ[(2−メチルフェニル)アミノ]エタン、1,2−ジ(フェニルアミノ)プロパン(o−トリル)ビグアニド、ジ[4−(1’,3’−ジメチルブチル)フェニル]アミン、2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−4H−1,4−ベンゾチアジン、フェノチアジン、N−アリルフェノチアジンが含まれる。
【0081】
さらなる酸化防止剤の例には、チオジプロピオン酸又はチオ二酢酸のエステル、及びジチオカルバミン酸又はジチオリン酸の塩が含まれる。
【0082】
金属不活性化剤の例には、トリアゾール、ベンゾトリアゾール及びそれらの誘導体、トルトリアゾール及びそれらの誘導体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾトリアゾール、2,5−ジメルカプトベンゾトリアゾール、2,5−ジメルカプトベンゾチアジアゾール、5,5’−メチレンビスベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾトリアゾール、サリシリデンプロピレンジアミン、サリシルアミノグアニジン及びそれらの塩が含まれる。
【0083】
防錆剤の例には、a)有機酸、並びにそれらのエステル、金属塩及び無水物、例えば、N−オレオイルサルコシン、モノオレイン酸ソルビトール、ナフテン酸鉛、アルケニルコハク酸無水物、例えば、ドデセニルコハク酸無水物、アルケニルコハク酸の半エステル及び半アミド、並びに4−ノニルフェノキシ酢酸;b)含窒素化合物、例えば、第1級、第2級若しくは第3級脂肪族又は脂環式アミン、並びに有機及び無機酸のアミン塩、例えば、オイル可溶性アルキルアンモニウムカルボン酸塩;複素環式化合物、例えば、置換イミダゾリン、及びオキサゾリン、c)リン化合物、例えば、リン酸の部分エステル又はホスホン酸の部分エステルのアミン塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、d)硫黄化合物、例えば、ジノルナフタレンスルホン酸バリウム、石油スルホン酸カルシウムが含まれる。
【0084】
粘度指数向上剤の例には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートのコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、スチレン/アクリレートのコポリマー、ポリエーテルが含まれる。
【0085】
流動点降下剤の例には、ポリメタクリレート及びアルキル化ナフタレン誘導体が含まれる。
【0086】
分散剤/界面活性剤の例には、ポリブテニルスクシンアミド若しくはイミド、ポリブテニルホスホン酸誘導体、塩基性マグネシウム、カルシウム及びバリウムのスルホン酸塩並びにフェノラートが含まれる。
【0087】
耐摩耗添加剤の例には、硫黄及び/又はリン及び/又はハロゲンを含む化合物、例えば、硫化植物油、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、リン酸トリトリル、塩素化パラフィン、アルキルスルフィド、アリールジスルフィド及びアリールトリスルフィド、チオリン酸トリフェニル、及びジエタノールアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(2−エチルヘキシル)アミノメチルトリルトリアゾールが含まれる。
【0088】
本発明の潤滑油組成物は、酸化、熱、及び/又は光により誘起される劣化を受ける材料の酸化安定性を向上させる。これらの有機材料は天然又は合成であり得る。これらの有機材料には、「機能性流体」、潤滑油、グリース、及び燃料、さらには、自動及び手動変速機流体、パワーステアリング流体、油圧流体、ガスタービン油、コンプレッサ潤滑油、自動車及び産業用ギア潤滑油、及び熱伝達オイルが含まれる。
【0089】
一態様において、H1食品グレード潤滑油が、基油として用いられる。このような基油は、食品との偶発的な接触を有し得るものである。これらは、時に、「標準を超える(above the line)」潤滑油と呼ばれる。このような基油は、錆止めの保護膜として、タンク閉鎖部材のガスケット若しくはシールの離型剤として、また、潤滑される部分が食品に曝される可能性がある箇所の機械部品及び設備の潤滑油として、食品加工設備に使用され得る。本発明の一態様において、用いられる量は、設備に望まれる技術的効果を達成するのに必要とされる最少量である。本発明の好ましい態様において、ADPAは、Naugalube(登録商標)640であり、基油は、このようなH1食品グレード基油である。
【0090】
本発明において用いることができる、工業的に製造されている好ましいH1食品グレード潤滑油には、Krylon Products GroupによるTri−Flow(登録商標)及びSpray−on(登録商標)711(登録商標)、並びに、TOTAL Lubricants USA,Inc.によるNEVASTANE(登録商標)潤滑油が含まれる。
【0091】
本発明の一態様において、本発明に関連して有用な潤滑粘度の基油は、天然潤滑油、合成潤滑油、及びこれらの混合物から選択される。潤滑油の粘度は、軽質留分の鉱油から重質潤滑油まで、例えば、ガソリンエンジンオイル、鉱油系潤滑油、及び大型ジーゼルオイルの範囲に渡り得る。通常、オイルの粘度は、100℃で測定して、約2センチストークスから約40センチストークス、特に、約4センチストークスから約20センチストークスの範囲にある。
【0092】
本発明の一態様において、ジーゼル燃料は、石油系燃料油、特に、中間留分燃料油である。このような留分の燃料油は、通常、110℃から500℃、例えば、150℃から400℃の範囲内で沸騰する。燃料油は、常圧留分若しくは真空留分、分解による軽油を、或いは、直留と熱的流及び/又は精製流(例えば、接触分解及び水素化分解による留分)との任意の比率のブレンドを含み得る。
【0093】
基油の他の例には、フィッシャー−トロプシュ燃料が含まれる。フィッシャー−トロプシュ燃料は、FT燃料としてもまた知られ、ガス液化(GTL)燃料、バイオマス液化(BTL)燃料、及び石炭変換燃料と呼ばれるものを含む。このような燃料を製造するために、合成ガス(CO+H)が、最初に生成され、次いで、フィッシャー−トロプシュ法によってノルマルパラフィンに変換される。次に、ノルマルパラフィンは、イソ−パラフィン、シクロ−パラフィン、及び芳香族化合物のような様々な炭化水素を生じるように、接触分解/改質又は異性化、水素化分解及び水素化異性化のようなプロセスによって、変性され得る。得られるFT燃料は、そのまま、又は、他の燃料成分及び燃料タイプと組み合わせて、使用され得る。やはり適切であるのは、植物又は動物供給源から誘導されるジーゼル燃料である。これらは、単独で、又は他のタイプの燃料と組み合わせて用いることができる。
【0094】
植物又は動物原料に由来する油脂は、燃料としての、特に、ジーゼルのような石油由来中間留分燃料の部分的な又は完全な代替としての用途を段々と獲得している。一般に、このような燃料は、「バイオ燃料」又は「バイオジーゼル」として知られている。バイオ燃料は、多くの供給源に由来し得る。最も一般的なものの中には、植物、例えば、ナタネ(rapeseed)、ヒマワリなどから抽出される脂肪酸のアルキル(しばしば、メチル)エステルがある。これらのタイプの燃料は、しばしば、FAME(脂肪酸メチルエステル)と呼ばれる。
【0095】
基油は、動物油及び植物油を含めての天然オイル、例えば、ラード油、ひまし油、流動パラフィン(liquid petroleum)油、並びに、水素化精製、溶媒処理若しくは酸処理された、パラフィン系、ナフテン系、及びパラフィン系−ナフテン系混合タイプの鉱油を含み得る。石炭又はシェールから誘導される潤滑粘度のオイルもまた、有用な基油として役立つ。動物又は植物原料由来の油脂の他の例は、ナタネ油、コリアンダー油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ひまし油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、トウモロコシ(maize)油、アーモンドオイル、キャノーラ油、ホホバ油、ヤシ核油、ココナッツオイル、マスタード種子油、ジャトロファ(jatropha)油、牛脂(beef tallow)、及び魚油である。さらなる例には、コーン(corn)、ジュート、ゴマ、シアナッツ、グラウンドナッツ(ground nut)に由来するオイル、及び亜麻仁油が含まれ、それらから、当技術分野において知られている方法によって誘導され得る。ナタネ油は、グリセロールにより部分的にエステル化された脂肪酸の混合物であり、大量に入手可能であり、ナタネから、圧搾による簡単な方法で得ることができる。使用済みキッチンオイルのようなリサイクル油もまた適切である。
【0096】
有用な基油は、例えば、脂肪酸のアルキルエステルであり、これらには、12から22個の炭素原子を有する脂肪酸のエチル、プロピル、ブチルエステル、特にメチルエステルの市販の混合物が含まれる。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペテロセリン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸(elaeostearic acid)、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ガドレイン酸、ドコサン酸、又はエルカ酸は有用であり、50から150、特に90から125のヨウ素価を有する。特に利点のある特性を有する混合物は、16から22個の炭素原子、及び1、2、若しくは3個の二重結合を有する脂肪酸のメチルエステルを、主に(すなわち、少なくとも50重量%)含むものである。脂肪酸の好ましい低級アルキルエステルは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエルカ酸のメチルエステルである。
【0097】
前記の種類の市販の混合物は、例えば、動物及び植物の油脂の、低級脂肪アルコールによるそれらのエステル交換による、開裂及びエステル化によって得られる。脂肪酸のアルキルエステルの製造のためには、低レベル(20%未満)の飽和酸を含み、また130未満のヨウ素価を有する油脂から出発することが有利である。次のエステル又はオイルのブレンドは適切である:例えば、ナタネ、ヒマワリ、コリアンダー、ひまし、大豆、ピーナッツ、綿実、牛脂など。新しい種類のナタネ油(これの脂肪酸成分は、18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸を、80重量%より多く含む)に基づく脂肪酸のアルキルエステルは好ましい。
【0098】
特に好ましい基油は、バイオ燃料として用いることができるオイルである。バイオ燃料、すなわち、動物又は植物原料に由来する燃料は、燃焼により環境を損なうことが少ないと考えられ、再生可能供給源から得られる。燃焼で、より少ない二酸化炭素が、同等量の石油留分燃料、例えば、ジーゼル燃料によって生成すること、及び非常に少量の二酸化硫黄が生成することが報告されている。植物油の特定の誘導体、例えば、けん化及び1価アルキルアルコールによる再エステル化によって得られるものは、ジーゼル燃料の代替として使用できる。
【0099】
好ましいバイオ燃料は、植物油誘導体であり、これらの中で、特に好ましいバイオ燃料は、ナタネ油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、オリーブオイル、又はヤシ油のアルキルエステル誘導体であり、ナタネ油メチルエステルが、単独でも、又は、他の植物油誘導体との混合物(例えば、ナタネ油メチルエステルとヤシ油メチルエステルとの任意の比率の混合物)としても、特に好ましい。
【0100】
現在、バイオ燃料は、石油由来のオイルと組み合わせて最も広く用いられている。本発明は、バイオ燃料と石油由来燃料の任意の比率の混合物に適用できる。例えば、オイルの少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%は、植物又は動物供給源に由来し得る。
【0101】
合成基油潤滑油には、炭化水素オイル及びハロ−置換炭化水素オイル、例えば、重合した、またインターポリマー化したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1 オクテン)、ポリ(1−デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びに、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにこれらの誘導体、類似物、及び同族体が含まれる。やはり有用であるのは、フィッシャー−トロプシュ合成による炭化水素からガス液化プロセスにより誘導される合成油であり、これらは、一般に、ガス液化又は「GTL」基油と呼ばれる。
【0102】
アルキレンオキシドポリマー及びインターポリマー、並びに、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって改変されたこれらの誘導体は、知られている合成潤滑油の別の種類をなす。これらは、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドの重合によって製造されるポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、又は、1000から1500の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル)、並びに、これらのモノ−及びポリカルボン酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C〜C脂肪酸エステル、及びC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0103】
合成基油潤滑油の別の適切な種類は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸2量体、マロン酸、アルキルマロン酸、 アルケニルマロン酸)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルを含む。このようなエステルの具体例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸2量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させることによって生成する複合エステルが含まれる。
【0104】
合成油として有用なエステルには、また、CからC12モノカルボン酸とポリオール及びポリオールエステル(例えば、ネオペンチルグルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール及びトリペンタエリトリトール)とから製造されるものも含まれる。シリコン系オイル(例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、又はポリアリールオキシ−シロキサンオイル及びシリケートオイル)は、合成潤滑油の別の有用な種類を含む。他の合成潤滑油には、リン含有酸の液体エステル、重合したテトラヒドロフラン、ポリ−α−オレフィンなどが含まれる。
【0105】
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、又はポリアリールオキシ−シロキサンオイル及びシリケートオイルのようなシリコン系オイルは、合成基油潤滑油の別の有用な種類を含み、このようなオイルには、ケイ酸テトラエチル、ケイ酸テトライソプロピル、ケイ酸テトラ−(2−エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ(p−tert−ブチル−フェニル)、ヘキサ−(4−メチル−2−エチルへキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが含まれる。他の合成潤滑油には、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)、及び重合したテトラヒドロフランが含まれる。
【0106】
潤滑油は、未精製、精製、再精製オイル、又はこれらの混合物から誘導され得る。未精製オイルは、天然供給源又は合成供給源(例えば、石炭、シェール、又はタール及びビチューメン)から直接、さらなる精製又は処理なしに得られる。未精製オイルの例には、乾留操作から直接得られるシェールオイル、蒸留から直接得られる石油オイル、又はエステル化プロセスから直接得られるエステルオイルが含まれ、これらの各々は、次に、さらなる精製なしに用いられる。精製オイルは、精製オイルが、1つ又は複数の特性を改善するために、1つ又は複数の精製ステップにおいて処理されていることを除けば、未精製オイルに似ている。適切な精製法には、蒸留、水素化処理、脱蝋、溶剤抽出、酸若しくは塩基抽出、濾過、パーコレーションなどが含まれ、これらの全ては、当業者によく知られている。再精製オイルは、精製オイルを得るために用いられるものに類似のプロセスにおいて精製オイルを処理することによって得られる。これらの再精製オイルは、また、再生(reclaimed)又は再処理オイルとしても知られており、しばしば、使い古された添加剤及びオイル分解生成物を除去するための技術によってさらに処理される。
【0107】
ワックスの水素化異性化により誘導される潤滑油基油もまた、単独で、或いは前記天然及び/又は合成基油と組み合わせるかのいずれかで使用され得る。このようなワックス異性化オイルは、水素化異性化触媒上での、天然若しくは合成ワックス又はこれらの混合物の水素化異性化によって製造される。天然ワックスは、通常、鉱油の溶媒脱蝋によって回収される粗蝋(slack wax)であり、合成ワックスは、通常、フィッシャー−トロプシュ法によって製造されるワックスである。通常、得られる異性化生成物は、特定の粘度範囲を有する様々なフラクションを回収するために、溶媒脱蝋及び分別を受ける。ワックス異性化物は、また、非常に高い粘度指数を有することによっても特徴付けられ、通常、少なくとも130、好ましくは少なくとも135以上の粘度指数を有し、脱蝋の後、−20℃以下の流動点を有する。
【0108】
潤滑粘度の基油は、グループI、グループII、又はグループIIIの基油、或いは前記基油の基油ブレンドを含み得る。好ましくは、潤滑粘度のオイルは、グループII、若しくはグループIIIの基油、又はこれらの混合物、或いは、グループIの基油と、グループII及びグループIIIの1種又は複数との混合物である。好ましくは、潤滑粘度のオイルの主要な量が、グループII、グループIII、グループIV、若しくはグループVの基油、又はこれらの混合物である。基油、又は基油ブレンドは、好ましくは、少なくとも65%、例えば、少なくとも75%、又は少なくとも85%の飽和体含量を有する。最も好ましくは、基油、又は基油ブレンドは、90%を超える飽和体含量を有する。
【0109】
好ましくは、オイル又はオイルブレンドの揮発性は、ノアック揮発性試験(ASTM D5880)によって測定して、30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは16%以下である。好ましくは、オイル又はオイルブレンドの粘度指数(VI)は、少なくとも85、好ましくは少なくとも100、最も好ましくは約105から140である。
【0110】
本発明における基油(base stock、base oil)の定義は、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)の出版物、「Engine Oil Licensing and Certification System」(Industry Services Department、14版、1996年12月)への補遺1(1998年12月)に見出されるものと同じである。この出版物は次のように基油を分類する。
(a)グループIの基油は、90パーセント未満の飽和体(ASTM D 2007によって求めて)及び/又は0.03パーセントを超える硫黄(ASTM D 2622、ASTM D 4294、ASTM D 4927及びASTM D 3120によって求めて)を含み、また、80以上で120未満の粘度指数(ASTM D 2270によって求めて)を有する。
(b)グループIIの基油は、90パーセント以上の飽和体(ASTM D 2007によって求めて)及びは0.03パーセント以下の硫黄(ASTM D 2622、ASTM D 4294、ASTM D 4927及びASTM D 3120によって求めて)を含み、また、80以上で120未満の粘度指数(ASTM D 2270によって求めて)を有する。
(c)グループIIIの基油は、90パーセント以上の飽和体(ASTM D 2007によって求めて)及び0.03パーセント以下の硫黄(ASTM D 2622、ASTM D 4294、ASTM D 4927及びASTM D 3120によって求めて)を含み、また、120以上の粘度指数(ASTM D 2270によって求めて)を有する。
(d)グループIVの基油は、ポリアルファオレフィン(PAO)である。
(e)グループVの基油は、グループI、II、III、又はIVに含まれない他の全ての基油を含む。
【0111】
本発明の一態様において、添加剤パッケージは、添加剤パッケージ濃厚液の状態で、基油に添加される。濃厚液における添加剤成分の全量は、通常、20から95重量%まで、又はこれを超えて変わり、残りの部分は希釈オイルである。希釈オイルは、上で定義された本発明での基油、又は炭化水素(好ましくは芳香族の)溶媒又はこれらの混合物であり得る。濃厚液は、下に列挙される、他の添加剤を含んでいてもよい。通常、添加剤パッケージ濃厚液は、最終潤滑油組成物に適正な重量%のADPA、PNA及び/又は硫黄含有フェノールを含ませるのに十分な量で、基油に添加される。
【0112】
本発明の態様は、以下の非限定的例を見れば、より明白になるであろう。
【0113】
中−高温熱酸化エンジンオイルシミュレーション試験(TEOST MHT)
ASTM D7097は、2004年12月に承認された「Standard Test Method for Determination of Moderately High Temperature Piston Deposits by Thermo−oxidation Engine Oil Simulation Tests」であり、これは、どのような目的に対しても、参照によってその全体が組み込まれる。ASTM D7097は、エンジンオイルの酸化、及び炭素質堆積物の生成特性を評価するための新しい潤滑油標準工業試験である。試験は、最新のエンジンのピストンリングベルト部分における高温での堆積物の生成をシミュレーションするように考案されている。
【0114】
前記試験は、また、エンジンオイルの酸化に際しての揮発性有機分子の生成を調べるための有用な手段でもある。潤滑油の酸化に際しての揮発性有機分子の生成は、それらが、排気の増加に繋がり、また、潤滑油のさらなる重合を促進し得るという理由で、有害であることが、広く理解されている。潤滑油の重合は、粘度増加に繋がり、これもまた望ましくない。本発明の添加剤の組合せは、堆積物の生成及び揮発性有機分子の生成のいずれをも抑制するのに有効である。通常、極性の揮発性有機分子が、潤滑油中の有機過酸化物の分解によって生成される。この分解は、有機アルコキシラジカルを生成し、このラジカルは、別のオイル分子と反応してアルコールを生成し得る、又は劣化してアルデヒド及びケトンを生成し得る。アルデヒド及びケトンへの劣化は、通常、分子量を下げるので、さらに多くの揮発性フラグメントを生じ、これらは汚染物質であり、また、潤滑油を増粘させるオリゴマー及びポリマーへの活性前駆体でもある。したがって、これらの極性揮発性有機分子の生成を防ぐ、又は排除することは非常に望ましい。
【0115】
TEOST MHTは、予め秤量された、特別に作られたスチール堆積棒(depositor rod)に生成する堆積物の質量を求める。完全に配合された潤滑油(8.4g)及び有機金属触媒(約0.1g)を、テフロン(登録商標)撹拌棒を備えるフラスコに入れ、加熱しないで、20〜60分間撹拌する。堆積棒、試料フラスコ、オイル入口、空気入口、及び揮発物捕集バイアルを、製造元の仕様書に従って、TEOST装置に装着する。ポンプを、大きな流量で始動し、試験オイルがポンプとオイル供給チューブとの連結部に達するまで運転し、その時点で、ポンプ流をゼロにする。ヒーターのスイッチを入れ、堆積棒の温度コントローラが200〜210℃の間である時に、試料が0.25±0.02g/minで送られるように、ポンプの速度を増し、オイルが堆積棒を流下していて、漏れてないことを確認する。温度は、285±2℃で安定するようにし、試験は、これらの条件下で24時間続ける。
【0116】
堆積棒からのオイルの抽出のためのシクロヘキサン又は他の適切な炭化水素溶媒を入れた3つの試験管を準備する。試験装置を、製造元の教示通りに分解し、堆積棒を、秤量用の舟形容器に移し、覆いの下に置いておく。堆積棒を、炭化水素溶媒を入れて準備した3つの試験管の各々に、順次、それぞれ10分間ずつ入れる。棒を、風袋引きした秤量用舟形容器に置き、確実に炭化水素溶媒を蒸発させるために、10分間、置いておく。一定の質量に達したことが確かめられたら、棒及び舟形容器を秤量する。3つの試験管の内容物を、下端キャップの堆積物及びガラス外被(glass mantle)堆積物と共に、共通の容器に洗い出し、次いで、それを、フィルターカートリッジを備えるガラス漏斗を用いて濾過する。濾過が完了した後、フィルターカートリッジを、一定の質量に達するまで、真空下で乾燥し、秤量する。次いで、堆積棒からの堆積物及びフィルターの堆積物の合計質量を求める。
【0117】
試験の24時間の間に、元々配合オイル中に存在していた揮発性化合物、又は試験の間に生成した揮発性化合物は、堆積棒で気化する。これらの揮発物は、ガラス外被に凝縮し、秤量された小さなバイアルに、連続的に捕集される。バイアル及び揮発物は、24時間の試験の最後に、測定し、揮発物の量は、バイアルの元の重さを引くことによって計算する。
【0118】
加圧示差走査熱量計(PDSC)試験
PDSC試験は、材料の酸化誘導時間(OIT)の測定に用いることができる。本出願に記載の試料を、表1(上で示した)に列挙したパラメータに従って試験した。さらに、用いたPDSC装置は、Mettler−Toledo,Inc.製のMettler DSC27HPであった。PDSC法は、各試験の間中、一定の酸素圧力下で、スチールセル(steel cell)を用いる。装置は、200分のOITに対して、95パーセントの信頼性で、±5.0分の典型的繰返し精度(repeatability)を有する。PDSC試験の開始時に、PDSCスチールセルは、酸素により加圧され、表1に挙げられた一定温度まで、40℃/分の速度で加熱される。誘導時間は、試料がその一定温度に達し、最終的にエンタルピー変化が認められるまでの時間から求められる。酸化誘導時間が長いほど、オイルの酸化安定性は良好である、すなわち、より長いOITは、より安定な組成物を示す。PDSC試験の前に、オイル中50ppmの鉄を容易にするために、準備した50グラムの試験オイル毎に、40μLのオイル可溶性ナフテン酸鉄(鉱油中6重量パーセント)を加えた。
【0119】
本発明の酸化防止剤の効果は、好ましくは、例えば、低リン含有SAE 5W20完全配合エンジンオイルにおいて実証され得る。このようなエンジンオイルは、本明細書において記載したPDSC試験に用いた。SAE 5W20エンジンオイル配合は、表6に示される成分(これらの全ては市販されている)と予備ブレンドした。次に、酸化防止剤パッケージを、エンジンオイル予備ブレンド物に添加した。試験は185℃で実施した。
【表6】

【0120】

添加剤パッケージブレンド1〜6及びA〜Cを、表7に示す比率に従って準備した。
【表7】

【0121】
添加剤パッケージ1〜6及びA〜Cの各々を、潤滑油組成物を製造するために、約99:1(基油:添加剤パッケージ)の重量比で、基油とブレンドした。例のブレンド1〜6は、本発明の典型的態様である。例のブレンドA〜Cは比較である。潤滑油組成物は、OIT及びTEOST MHTについて試験した。結果は表7に示す。
【0122】
上に示されるように、比較例A、B、及びCは、それぞれ、単一のADPA、PNA及び硫黄含有フェノールである。これらのブレンドは、それぞれ、37.0、52.0、及び3.8分のOIT値、並びに、それぞれ、55.0、63.7及び63グラムの堆積物のTEOST MHT値を示した。添加剤パッケージで予想されるOITは、それぞれの混合物の適切な重量パーセントに従って、単一のADPA、PNA及び硫黄含有フェノールのOITを加えることによって計算できる。添加剤パッケージで予想されるTEOST MHT値は、同様に計算できる。予想されるOIT及び予想されるTEOST MHTの値もまた、表7に示されている。
【0123】
驚くべきことに、また予想外に、潤滑油ブレンド1(これは、本発明の典型である)は、40未満のTEOST MHT値を示す。さらに、本発明の態様の添加剤パッケージは、前記パラメータに従って試験した時、38分を超えるOIT値を示す。
【0124】
さらに、本発明の態様の添加剤パッケージは、驚くべきことに、また予想外に、予想値と比べた時、優れたOIT−ほとんどの場合、13%を超える増加−を示す。さらに、これらの添加剤パッケージは、予想値と比べた時、優れたTEOST MHT値−ほとんどの場合、20%を超える減少−を示し、これは、また、驚くべきで、また予想外である。
【0125】
開示されたある実施に関して記載された又は主張された如何なる特徴も、ある別の1つ又は複数の開示された実施に関して記載された又は主張されたどの1つ又は複数の別の特徴とも任意の組合せで、それらの特徴が必ずしも技術的に相容れなくはないのであれば、両立させることができ、このような組合せの全ては、本発明の範囲内にある。さらに、下に添付される特許請求の範囲は、本発明の範囲内の特徴のいくつかの非限定的な組合せを記載するが、任意の2つ以上の請求項の主題の全ての可能な組合せは、ある可能な組合せにおいて、その組合せが必ずしも技術的に相容れなくはないのであれば、本発明の範囲内であるとやはり想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む液体添加剤パッケージ:
(A)アルキル化ジフェニルアミン、
(B)添加剤パッケージの重量に対して少なくとも5重量パーセントのフェニルナフチルアミン、及び
(C)硫黄含有フェノール。
【請求項2】
アルキル化ジフェニルアミンを、添加剤パッケージの重量に対して50から99重量パーセント、好ましくは70から90重量%の範囲の量で含む、請求項1に記載の添加剤パッケージ。
【請求項3】
フェニルナフチルアミンを、添加剤パッケージの重量に対して1から50重量パーセント、好ましくは10から20重量パーセントの範囲の量で含む、請求項1に記載の添加剤パッケージ。
【請求項4】
硫黄含有フェノールを、添加剤パッケージの重量に対して5から50重量パーセント、好ましくは10から20重量パーセントの範囲の量で含む、請求項1に記載の添加剤パッケージ。
【請求項5】
アルキル化ジフェニルアミンを、添加剤パッケージの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、また、硫黄含有フェノールを、添加剤パッケージの重量に対して、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%含む、請求項1に記載の添加剤パッケージ。
【請求項6】
25℃で100から50,000cP、25℃で、好ましくは、1,000から25,000cPの範囲の粘度を有する、請求項1に記載の添加剤パッケージ。
【請求項7】
アルキル化ジフェニルアミンが、ジフェニルアミン、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、トリアルキル化ジフェニルアミン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、モノ−及び/又はジ−tert−ブチルジフェニルアミン、モノ−及び/又はジ−ジヘプチルジフェニルアミン、モノ−及び/又はジ−オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチルジフェニルアミン、モノ−及び/又はドノニル(dononyl)ジフェニルアミン、モノ−及び/又はジ−ドデシルジフェニルアミン、ヘキサデシルジフェニルアミン、エイコセニルジフェニルアミン、テトラコセニルジフェニルアミン、オクタコセニルジフェニルアミン、ポリイソブチルジフェニルアミン、モノ−及び/又はジ−(α−メチルスチリル)ジフェニルアミン、モノ−及び/又はジ−スチリルジフェニルアミン、4−(p−トルエンスルホノアミド)ジフェニルアミン、4−イソプロポキシジフェニルアミン、t−オクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミン、モノ−及びジ−アルキル化t−ブチル−t−オクチルジフェニルアミンの混合物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の添加剤パッケージ。
【請求項8】
硫黄含有フェノールが、式Iによって表される、請求項1に記載の添加剤パッケージ:
【化1】


式中、Rは、硫黄含有アルキル、硫黄含有アリール基、硫黄含有アルケン又は硫黄含有カルボン酸であり、
式中、R及びRは、アルキル、アリール又は水素である。
【請求項9】
以下を含む、上記組成物
(A)基油、及び
(B)液体添加剤パッケージ
を含む潤滑油組成物であって、該添加剤パッケージが、
(i)アルキル化ジフェニルアミン、
(ii)添加剤パッケージの重量に対して少なくとも5重量パーセントのフェニルナフチルアミン、及び
(iii)硫黄含有フェノール。
【請求項10】
基油を、潤滑油組成物の重量に対して少なくとも約50重量パーセント、好ましくは少なくとも90重量パーセントの量で、また、添加剤パッケージを、潤滑油組成物の重量に対して少なくとも0.1重量パーセント、好ましくは少なくとも0.5重量パーセントの量で含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
基油が、天然潤滑油、合成潤滑油、ラード油、植物油、オレイン大豆油、高オレイン大豆油、ナタネ油、ヤシ油、ホホバ油、キャノーラ油、ひまし油、ヒマワリ油、石油オイル、鉱油、及び石炭若しくはシェールから誘導されるオイル、合成ワックス及びワックスの異性化によって得られるオイル、ホワイトオイル、原油の芳香族及び極性成分の水素化分解によって製造される水素化分解油、重合したオレフィン及びインターポリマー化したオレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、及びこれらの誘導体、カルボン酸のエステル、シリコン系オイル、リン含有酸の液体エステル、重合したテトラヒドロフラン、ポリ−α−オレフィン、食品グレード潤滑油、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも25分、好ましくは少なくとも40分の、加圧示差走査熱量計による酸化誘導時間、及び/又は、50ミリグラム未満、好ましくは40ミリグラム未満の、熱酸化エンジンオイルシミュレーション試験値を示す、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
(A)潤滑油組成物の重量に対して99重量パーセントの基油、及び
(B)潤滑油組成物の重量に対して1重量パーセントの添加剤パッケージ
を含み、添加剤パッケージが、
(i)添加剤パッケージの重量に対して70重量パーセントのアルキル化ジフェニルアミン、
(ii)添加剤パッケージの重量に対して15重量パーセントのフェニル−α−ナフチルアミン、及び
(iii)添加剤パッケージの重量に対して15重量パーセントの硫黄含有フェノール
を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
以下を含む液体添加剤パッケージの製造方法:
(i)アルキル化ジフェニルアミン、
(ii)添加剤パッケージの重量に対して少なくとも5重量パーセントのフェニルナフチルアミン、及び
(iii)硫黄含有フェノール
を一緒にすることであって、該一緒にすることは任意に窒素下で実施される。
【請求項15】
以下を含む、潤滑油組成物の製造方法:
(A)基油を準備すること、及び
(B)基油と、
(i)アルキル化ジフェニルアミン、
(ii)添加剤パッケージの重量に対して少なくとも5重量パーセントのフェニルナフチルアミン、及び
(iii)硫黄含有フェノール
を含む液体添加剤パッケージとをブレンドすること。

【公表番号】特表2011−528060(P2011−528060A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518755(P2011−518755)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/045937
【国際公開番号】WO2010/008694
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】