説明

潤滑油組成物

【課題】優れたせん断安定性を維持しつつ、十分な低温特性を達成することが可能な潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の潤滑油組成物は、鉱油および/または合成油からなる潤滑油基油と、(A)粘度指数向上剤および流動点降下剤としての機能を有するポリ(メタ)アクリレート系化合物と、(B)ヒドロキシカルボン酸を含むカルボン酸とアルコールとのエステルと、を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、特に内燃機関用として好適な潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンなどの内燃機関に使用される潤滑油には、近年省燃費化ならびにそれを達成するために優れた低温特性を有することが求められている。
【0003】
近年、自動車用エンジン油では省燃費特性を向上する目的で、低粘度化が検討されている。最近では特にエンジン始動時のエンジン油の冷えた状態での燃費を向上させるため、低温時の粘度を下げるとともに、低温時の流動性の改善が検討されている。潤滑油基油及び潤滑油組成物の低温特性の評価指標としては、流動点、曇り点、凝固点などが一般的であり、また最近では、ノルマルパラフィンやイソパラフィンの含有量等の潤滑油基油に基づき低温粘度特性を評価する手法が知られている。
【0004】
従来の手法は、そのすべてが高分子ポリマーを添加して低温流動性を改善する方法であり、その添加により低温流動性は向上するが、反面高分子ポリマーを添加すると組成物のせん断安定性が低下し、粘度低下による潤滑性の悪化が懸念される。また、ポリマーが切断されたことによる低温特性向上効果の低下や、切断されたポリマー分子が酸化安定性に悪影響を及ぼすことが懸念されている。このため、高分子ポリマーの添加量を抑制して、低温特性とせん断安定性あるいは酸化安定性との妥協を図っているのが実態である。また高分子ポリマーの添加量を増やしても最適点があり、安易な増量は逆に低温特性を悪くする場合もあることが指摘されている(特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開2002−167591号公報
【特許文献2】特開2004−352946号公報
【特許文献3】特開2005−15780号公報
【特許文献4】特開2007−262245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高分子ポリマー添加剤として代表的なものとして、ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリ(メタ)アクリレートは、マルチグレードタイプの自動車用エンジン油においては、低温特性の向上の点から必須の添加剤といえる。また、エンジン油用基油は、従来の溶剤精製油であるグループI基油から、燃料油水素化分解装置における残油を原料としたグループIII基油に移行しつつあるが、基油組成が変わっても、その変化に適応したポリ(メタ)アクリレートが開発され使用されてきた。
【0006】
しかし、ポリ(メタ)アクリレートの添加のみによって、優れたせん断安定性を維持しつつ、十分な低温特性を得るのは困難である。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、優れたせん断安定性を維持しつつ、十分な低温特性を達成することが可能な潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、鉱油および/または合成油からなる潤滑油基油と、(A)粘度指数向上剤および流動点降下剤としての機能を有するポリ(メタ)アクリレート系化合物と、(B)ヒドロキシカルボン酸を含むカルボン酸とアルコールとのエステルと、を含有することを特徴とする潤滑油組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の潤滑油組成物によれば、優れたせん断安定性を維持しつつ、十分な低温特性を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明おいては、潤滑油基油として、通常の潤滑油に使用される鉱油及び/又は合成油が使用できる。
【0012】
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油が例示できる。
【0013】
鉱油の全芳香族含有量は、特に制限はないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。鉱油の全芳香族含有量が30質量%を越える場合は、酸化安定性が劣る恐れがある。
【0014】
また、鉱油の硫黄分含有量は、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.005質量%以下である。鉱油の硫黄分を低減することで、より高温清浄性に優れる組成物が得られる。
【0015】
合成油としては、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、又はジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、又はペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;マレイン酸ジブチル等のジカルボン酸類と炭素数2〜30のα−オレフィンとの共重合体、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、又は芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれら2種以上の混合物が例示できる。
【0016】
本発明に用いる潤滑油基油としては、鉱油、合成油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑油基油の任意混合物が使用できる。例えば、1種以上の鉱油、1種以上の合成油、1種以上の鉱油と1種以上の合成油との混合油が挙げられる。
【0017】
本発明に用いる潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、その100℃での動粘度は、1mm/s以上、20mm/s以下が好ましく、2mm/s以上、10mm/s以下がより好ましい。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化する恐れがあり、一方、その動粘度が1mm/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなる恐れがある。
【0018】
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるようにその値は80以上が好ましく、100以上が更に好ましく、120以上が最も好ましい。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような135〜180程度のものやコンプレックスエステル系基油のような150〜250程度のものも使用することができる。潤滑油基油の粘度指数が80未満では、低温粘度特性が悪化する恐れがある。
【0019】
本発明の潤滑油組成物は、(A)成分として、粘度指数向上剤及び流動点降下剤としての機能を有するポリ(メタ)アクリレート系化合物(以下、単に「ポリ(メタ)アクリレート系化合物」という。)を含有する。なお本発明でいう「ポリ(メタ)アクリレート」とは、ポリアクリレート及びポリメタクリレートの総称である。
【0020】
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系化合物は、好ましくは、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマー(以下、「モノマーM−1」という。)を含む重合性モノマーの重合体である。
【化1】


[式(1)中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜30の直鎖状又は分枝状の炭化水素基を示す。]
【0021】
一般式(1)で表されるモノマーの1種の単独重合体又は2種以上の共重合により得られるポリメタクリレートはいわゆる非分散型ポリメタクリレートであるが、本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系化合物は、一般式(1)で表されるモノマーと、一般式(2)および(3)から選ばれる1種以上のモノマー(以下、それぞれ「モノマーM−2」および「モノマーM−3」という。)とを共重合させたいわゆる分散型ポリメタクリレートであってもよい。
【0022】
【化2】


[上記一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1を示す。]
【0023】
で表される炭素数1〜18のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、及びオクタデシレン基(これらアルキレン基は直鎖状でも分枝状でもよい。)等が例示できる。
【0024】
また、Eで表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジノ基等が例示できる。
【0025】
【化3】


[上記一般式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示す。]
【0026】
で表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジノ基等が例示できる。
【0027】
モノマーM−2、モノマーM−3の好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が例示できる。
【0028】
モノマーM−1とモノマーM−2〜M−3との共重合体の共重合モル比については特に制限はないが、M−1:M−2〜M−3=10:90〜50:50程度が好ましく、より好ましくは15:85〜40:60、さらに好ましくは20:80〜30:70である。
【0029】
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系化合物の製造法は任意であるが、例えば、ベンゾイルパーオキシド等の重合開始剤の存在下で、モノマーM−1とモノマーM−2〜M−3の混合物をラジカル溶液重合させることにより容易に得ることができる。
【0030】
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系化合物の重量平均分子量(M)は、5,000以上であることが好ましく、より好ましくは50,000以上であり、さらに好ましくは100,000以上であり、特に好ましくは200,000以上であり、最も好ましくは300,000以上である。また、1,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは700,000以下であり、さらに好ましくは600,000以下であり、特に好ましくは500,000以下である。重量平均分子量が5,000未満の場合には粘度指数向上効果が小さく省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがあり、重量平均分子量が1,000,000を超える場合にはせん断安定性や潤滑油基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
【0031】
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系化合物のPSSI(パーマネントシアスタビリティインデックス)は、好ましくは40以下、より好ましくは5〜40、さらに好ましくは10〜35、一層好ましくは15〜30、特に好ましくは20〜25である。PSSIが40を超える場合にはせん断安定性が悪くなるおそれがある。また、PSSIが5未満の場合には粘度指数向上効果が小さく、省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがある。
【0032】
なお、ここでいう「PSSI」とは、ASTM D 6022−01(Standard Practice for Calculation of Permanent Shear Stability Index)に準拠し、ASTM D 6278−02(Test Metohd for Shear Stability of Polymer Containing Fluids Using a European Diesel Injector Apparatus)により測定されたデータに基づき計算された、ポリマーの永久せん断安定性指数(Permanent Shear Stability Index)を意味する。
【0033】
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、潤滑油組成物がマルチグレード油であるかシングルグレード油であるかに応じて選定することが望ましいが、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.08〜8質量%、もっとも好ましくは0.1〜6質量%である。添加量が0.01質量%より少ない場合は十分な低温特性が得られないおそれがあり、また添加量が15質量%を超える場合にはせん断安定性や酸化安定性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0034】
また、本発明の潤滑油組成物は、(B)成分として、ヒドロキシカルボン酸を含むカルボン酸とアルコールとのエステルラノリン脂肪酸エステル(以下、便宜的に「エステル化合物(B)」という。)を含有する。
【0035】
ここで、本発明でいう「ヒドロキシカルボン酸」(「ヒドロキシ酸」ともいう。)とは、カルボン酸基(−COOH)以外に水酸基をさらに有するカルボン酸を意味する。ヒドロキシカルボン酸の炭素数は任意であり、通常、炭素数2〜40のヒドロキシカルボン酸が用いられるが、低温特性の点から、ヒドロキシカルボン酸の炭素数は、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また、低温時の析出防止性及び潤滑油基油への溶解性の点から、ヒドロキシカルボン酸の炭素数は30以下であることが好ましく、24以下であることがより好ましい。
【0036】
ヒドロキシカルボン酸は、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよいが、安定性の点から飽和カルボン酸であることが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸は、直鎖カルボン酸又は分枝カルボン酸であってもよいが、直鎖カルボン酸、あるいは炭素数1又は2(より好ましくは炭素数1)の分枝鎖を1〜3個(より好ましくは1〜2個、特に好ましくは1個)有する分枝カルボン酸であることが好ましい。
【0037】
また、ヒドロキシカルボン酸が有するカルボン酸基の個数は特に制限されず、当該ヒドロキシカルボン酸一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよいが、一塩基酸であることが好ましい。
【0038】
また、ヒドロキシカルボン酸が有する水酸基の個数は特に制限されないが、安定性の点から、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましく、1〜2個であることがさらに好ましく、1個であることが特に好ましい。
【0039】
また、ヒドロキシカルボン酸における水酸基の結合位置は任意であるが、カルボン酸基の結合炭素原子に水酸基が結合したαヒドロキシカルボン酸(「αヒドロキシ酸」ともいう。)、又はカルボン酸基の結合炭素原子から見て主鎖の他端の炭素原子に水酸基が結合したωヒドロキシカルボン酸(「ωヒドロキシ酸」ともいう。)であることが好ましい。
【0040】
ヒドロキシカルボン酸の好ましい例としては、具体的には、下記一般式(4)で表されるαヒドロキシカルボン酸、及び下記一般式(5)で表されるωヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
【化4】


[式中、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキル基又は炭素数2〜38のアルケニル基を示す。]
【化5】


[式中、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキレン基又は炭素数2〜38のアルケニレン基を示す。]
【0041】
上記一般式(4)において、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキル基又は炭素数2〜38のアルケニル基を示す。Rで示されるアルキル基及びアルケニル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基等のアルキル基(全ての異性体を含む);エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基、ヘントリアコンテニル基、ドトリアコンテニル基、トリトリアコンテニル基、テトラトリアコンテニル基、ペンタトリアコンテニル基、ヘキサトリアコンテニル基、ヘプタトリアコンテニル基、オクタトリアコンテニル基等のアルケニル基(すべての異性体を含む)などが挙げられる。
【0042】
また、上記一般式(5)において、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキレン基又は炭素数2〜38のアルケニレン基を示す。Rで示されるアルキレン基及びアルケニレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基、ヘントリアコンチレン基、ドトリアコンチレン基、トリトリアコンチレン基、テトラトリアコンチレン基、ペンタトリアコンチレン基、ヘキサトリアコンチレン基、ヘプタトリアコンチレン基、オクタトリアコンチレン基等のアルキレン基(全ての異性体を含む);エテニレン基(ビニレン基)、プロペニル基(アリレン基)、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基、トリデセニレン基、テトラデセニレン基、ペンタデセニレン基、ヘキサデセニレン基、ヘプタデセニレン基、オクタデセニレン基、ノナデセニレン基、イコセニレン基、ヘンイコセニレン基、ドコセニレン基、トリコセニレン基、テトラコセニレン基、ペンタコセニレン基、ヘキサコセニレン基、ヘプタコセニレン基、オクタコセニレン基、ノナコセニレン基、トリアコンテニレン基、ヘントリアコンテニレン基、ドトリアコンテニレン基、トリトリアコンテニレン基、テトラトリアコンテニレン基、ペンタトリアコンテニレン基、ヘキサトリアコンテニレン基、ヘプタトリアコンテニレン基、オクタトリアコンテニレン基等のアルケニレン基(すべての異性体を含む)などが挙げられる。
【0043】
このようなヒドロキシカルボン酸を含む原料として、羊の毛に付着するろう状物質を精製(加水分解等)して得られるラノリン脂肪酸を好ましく使用することができる。
【0044】
エステル化合物(B)の構成カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸のみからなるものであってもよいが、水酸基を有さないカルボン酸をさらに含有してもよい。
【0045】
エステル化合物(B)の構成カルボン酸がヒドロキシカルボン酸及び水酸基を有さないカルボン酸の双方を含有する場合、ヒドロキシカルボン酸の含有量は、構成カルボン酸の全量を基準として、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。ヒドロキシカルボン酸の含有量が前記下限値未満であると、低温特性向上効果が不十分となる傾向にある。他方、ヒドロキシカルボン酸の含有量が前記上限値を超えると、潤滑油基油への溶解性が不十分となる傾向にある。
【0046】
水酸基を有さないカルボン酸は、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよいが、安定性の点から飽和カルボン酸が好ましい。
【0047】
また、水酸基を有さないカルボン酸は直鎖カルボン酸であっても分枝カルボン酸であってもよいが、直鎖カルボン酸、あるいは炭素数1〜2(より好ましくは炭素数1)の分枝基を1〜3個(より好ましくは1〜2個、特に好ましくは1個)有する分枝カルボン酸が好ましい。また、分枝カルボン酸の分枝については、メチル分枝又はエチル分枝が好ましく、メチル分枝が特に好ましい。
【0048】
水酸基を有さないカルボン酸の炭素数は任意であり、通常炭素数2〜40のカルボン酸が用いられるが、低温特性の点から、当該カルボン酸の炭素数は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。また、潤滑油基油への溶解性及び低温時の析出防止性の点から、当該カルボン酸の炭素数は、30以下であることが好ましく、24以下であることがより好ましい。
【0049】
また、水酸基を有さない飽和カルボン酸におけるカルボン酸基の個数は特に制限されず、一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよいが、一塩基酸であることが好ましい。
【0050】
水酸基を有さないカルボン酸としては、具体的には、直鎖状又は分枝状のヘキサン酸、直鎖状又は分枝状のヘプタン酸、直鎖状又は分枝状のオクタン酸、直鎖状又は分枝状のノナン酸、直鎖状又は分枝状のデカン酸、直鎖状又は分枝状のウンデカン酸、直鎖状又は分枝状のドデカン酸、直鎖状又は分枝状のトリデカン酸、直鎖状又は分枝状のテトラデカン酸、直鎖状又は分枝状のペンタデカン酸、直鎖状又は分枝状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分枝状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分枝状のオクタデカン酸、直鎖状又は分枝状のノナデカン酸、直鎖状又は分枝状のイコサン酸、直鎖状又は分枝状のヘンイコサン酸、直鎖状又は分枝状のドコサン酸、直鎖状又は分枝状のトリコサン酸、直鎖状又は分枝状のテトラコサン酸、直鎖状又は分枝状のペンタコサン酸、直鎖状又は分枝状のヘキサコサン酸、直鎖状又は分枝状のヘプタコサン酸、直鎖状又は分枝状のオクタコサン酸、直鎖状又は分枝状のノナコサン酸、直鎖状又は分枝状のトリアコンタン酸等の飽和脂肪酸;直鎖状又は分枝状のヘキセン酸、直鎖状又は分枝状のヘプテン酸、直鎖状又は分枝状のオクテン酸、直鎖状又は分枝状のノネン酸、直鎖状又は分枝状のデセン酸、直鎖状又は分枝状のウンデセン酸、直鎖状又は分枝状のドデセン酸、直鎖状又は分枝状のトリデセン酸、直鎖状又は分枝状のテトラデセン酸、直鎖状又は分枝状のペンタデセン酸、直鎖状又は分枝状のヘキサデセン酸、直鎖状又は分枝状のヘプタデセン酸、直鎖状又は分枝状のオクタデセン酸、直鎖状又は分枝状のノナデセン酸、直鎖状又は分枝状のイコセン酸、直鎖状又は分枝状のヘンイコセン酸、直鎖状又は分枝状のドコセン酸、直鎖状又は分枝状のトリコセン酸、テトラコセン酸、直鎖状又は分枝状のペンタコセン酸、直鎖状又は分枝状のヘキサコセン酸、直鎖状又は分枝状のヘプタコセン酸、直鎖状又は分枝状のオクタコセン酸、直鎖状又は分枝状のノナコセン酸、直鎖状又は分枝状のトリアコンテン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0051】
エステル化合物(B)の構成カルボン酸がヒドロキシカルボン酸及び水酸基を有さないカルボン酸の双方を含有する場合、水酸基を有さないカルボン酸の含有量は、構成カルボン酸の全量を基準として、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下であり、また、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。水酸基を有さないカルボン酸の含有量が前記上限値を超えると、低温特性向上効果が不十分となる傾向にある。他方、水酸基を有さないカルボン酸の含有量が前記下限値未満であると、潤滑油基油への溶解性が不十分となる傾向にある。
【0052】
また、エステル化合物(B)においては、構成カルボン酸に占める炭素数24以下のカルボン酸の割合(ヒドロキシカルボン酸及び水酸基を有さないカルボン酸の合計)が、構成カルボン酸全量を基準として、75〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、85〜100質量%であることがさらに好ましく、90〜100質量%であることが一層好ましく、92〜100質量%であることが特に好ましい。炭素数24以下のカルボン酸の割合が前記下限値未満であると、低温特性向上効果、潤滑油基油への溶解性及び低温時の析出防止性が不十分となる傾向にある。また、同様の理由により、エステル化合物(B)においては、構成カルボン酸に占める炭素数25以上のカルボン酸の割合(ヒドロキシカルボン酸及び水酸基を有さないカルボン酸の合計)は、構成カルボン酸全量を基準として、0〜25質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましく、0〜15質量%であることがさらに好ましく、0〜10質量%であることが一層好ましく、0〜8質量%であることが特に好ましい。
【0053】
また、エステル化合物(B)を構成するアルコールは、1価アルコールであっても多価アルコールであってもよい。
【0054】
1価アルコールは直鎖アルコール又は分枝アルコールのいずれであってもよく、また、飽和アルコール又は不飽和アルコールのいずれであってもよい。また、1価アルコールの炭素数は任意であるが、通常1〜36であり、好ましくは1〜24である。
【0055】
1価アルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状又は分枝状のプロパノール、直鎖状又は分枝状のブタノール、直鎖状又は分枝状のペンタノール、直鎖状又は分枝状のヘキサノール、直鎖状又は分枝状のヘプタノール、直鎖状又は分枝状のオクタノール、直鎖状又は分枝状のノナノール、直鎖状又は分枝状のデカノール、直鎖状又は分枝状のウンデカノール、直鎖状又は分枝状のドデカノール、直鎖状又は分枝状のトリデカノール、直鎖状又は分枝状のテトラデカノール、直鎖状又は分枝状のペンタデカノール、直鎖状又は分枝状のヘキサデカノール、直鎖状又は分枝状のヘプタデカノール、直鎖状又は分枝状のオクタデカノール、直鎖状又は分枝状のノナデカノール、直鎖状又は分枝状のイコサノール、直鎖状又は分枝状のヘンイコサノール、直鎖状又は分枝状のトリコサノール、直鎖状又は分枝状のテトラコサノール及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、潤滑油基油への溶解性の点から、炭素数1〜18の1価アルコールが好ましく、炭素数1〜12の1価アルコールがより好ましい。
【0056】
エステル化合物(B)の構成アルコールとして1価アルコールを用いると、潤滑油基油への溶解性及び低温の析出防止性がより向上するので好ましい。
【0057】
また、エステル化合物(B)に用いられる多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のアルコールが用いられる。このような多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0058】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物等が好ましい。さらに、シリンダー鳴き防止性により優れる点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等がより好ましい。
【0059】
エステル化合物(B)の構成アルコールとして多価アルコールを用いると、低温特性がより向上するので好ましい。なお、多価アルコールを用いて得られるエステル化合物(B)は、多価アルコールの水酸基の全てがエステル化された完全エステルであってもよく、また、水酸基の一部が未反応のまま残存する部分エステルであってもよい。さらに、エステル化合物(B)の構成カルボン酸が多塩基酸である場合、エステル化合物(B)のカルボキシル基の全てがエステル化された完全エステルであってもよく、また、カルボキシル基の一部が未反応のまま残存する部分エステルであってもよい。低温特性向上効果の点からは、水酸基又はカルボキシル基が未反応のまま残存する部分エステルを用いることが好ましい。
【0060】
エステル化合物(B)の調製方法は任意であるが、羊の毛から取れるラノリンをケン化分解して得られる脂肪酸(ラノリン脂肪酸)と、アルコールとを反応させて得られるエステルが特に好ましい。
【0061】
ラノリン脂肪酸エステルの具体例としては、ラノリン脂肪酸のメチルエステル、イソブチルエステル、n−ブチルエステル、オクチルドデカノールエステル、トリメチロールプロパントリエステル、トリメチロールプロパンジエステル、トリメチロールプロパンモノエステル、ペンタエリスリトールテトラエステル、ペンタエリスリトールトリエステル、ペンタエリスリトールジエステル等を挙げることができる。またラノリン脂肪酸以外の酸を混合使用した脂肪酸エステルの具体例としては、ラノリン脂肪酸とオレイン酸混合物のペンタエリスリトールジエステル、ラノリン脂肪酸とオレイン酸混合物のペンタエリスリトールトリエステル等を挙げることができる。
【0062】
ラノリン脂肪酸エステルの添加量は、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%、もっとも好ましくは0.3〜2質量%である。添加量が0.05質量%より少ない場合は十分な低温特性が得られないおそれがあり、また添加量が5質量%を超える場合には酸化安定性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0063】
また、本発明の潤滑油組成物は、低温流動性を損なわない限りにおいて、必要に応じて各種添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、特に制限されず、潤滑油の分野で従来使用される任意の添加剤を配合することができる。かかる潤滑油添加剤としては、具体的には、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、極圧剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤、前記(A)成分以外の粘度指数向上剤、前記(A)成分以外の流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本発明の潤滑油組成物には、金属系清浄剤として、スルホネート系清浄剤、サリチレート系清浄剤およびフェネート系清浄剤から選ばれる1種以上を配合することができる。これら金属系清浄剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との正塩、塩基正塩、過塩基性塩のいずれをも配合することができる。
【0065】
本発明の潤滑油組成物には、無灰分散剤として、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0066】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
【0067】
摩擦調整剤としては、脂肪酸エステル系、脂肪族アミン系、脂肪酸アミド系等の無灰摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。
【0068】
本発明の潤滑油組成物に用いることができる極圧剤。摩耗防止剤としては、潤滑油に用いられる任意の極圧剤・摩耗防止剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。
【0069】
粘度指数向上剤としては、前記(A)成分以外のポリメタクリレート系粘度指数向上剤、オレフィン共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−ジエン共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度指数向上剤又はポリアルキルスチレン系粘度指数向上剤等が挙げられる。これら粘度指数向上剤の重量平均分子量は、通常800〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000である。
【0070】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0071】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0072】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0073】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が0.1〜100mm/s未満のシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
【0074】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、1〜20質量%である。
【0075】
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、通常、4〜24mm/sであるが、焼付きや摩耗を抑制する油膜厚さを保持する点、並びに撹拌抵抗の増加を抑制する点から、好ましくは5〜18mm/s、より好ましくは6〜15mm/s、さらに好ましくは7〜12mm/sである。
【0076】
上記の構成を有する本発明の潤滑油組成物は、低温粘度特性に優れるほか、粘度−温度特性、熱・酸化安定性においても優れるものであり、二輪車、四輪車、発電用、舶用等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関用潤滑油としてのみならず、自動変速機油、手動変速機油等の変速機油、ショックアブソ−バー油、パワーステアリング油等の自動車用作動油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油等においても十分にその効果を発揮する。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
[実施例1〜6、比較例1〜2]
実施例1〜6、比較例1〜2においては、下記の潤滑油基油3種の混合物に各種添加剤を配合して、表1に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。下記添加剤B1〜B3の構成カルボン酸として用いたラノリン脂肪酸(I)の脂肪酸組成を表2に示す。
(潤滑油基油)
基油1:パラフィン系基油(100℃における動粘度:4.3mm/s、粘度指数:102、硫黄分:0.25質量%)
基油2:パラフィン系基油(100℃における動粘度:6.5mm/s、粘度指数:103、硫黄分:0.31質量%)
基油3:パラフィン系高度生成基油(100℃における動粘度:4.1mm/s、粘度指数:125、硫黄分:0.1質量%未満)
基油4:パラフィン系高度精製基油(100℃における動粘度:6.3mm/s、粘度指数:135、硫黄分:0.006質量%)
(流動点降下剤1)
A:非分散型ポリメタクリレート(重量平均分子量:20000、PSSI:50)
(流動点降下剤2)
B1:ラノリン脂肪酸(I)とペンタエリスリトールとのジエステル
B2:ラノリン脂肪酸(I)とペンタエリスリトールとのトリエステル
B3:ラノリン脂肪酸(I)とオレイン酸混合物とトリメチロールプロパンとのトリエステル。
(粘度指数向上剤)
C:オレフィン共重合体(重量平均分子量:160,000)
(無灰分散剤)
D:性能添加剤(金属系清浄剤、無灰分散剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むパッケージ)
【0079】
実施例1〜6及び比較例1〜2の潤滑油組成物について、JISK −2269に準拠した流動点およびJPI−5S−42−93に準拠して−40℃におけるMRV粘度を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
表1に示したように、実施例1〜6の潤滑油組成物は、比較例1、2と比較して、非常に低い−40℃MRV粘度を与えることが確認された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油および/または合成油からなる潤滑油基油と、
(A)粘度指数向上剤および流動点降下剤としての機能を有するポリ(メタ)アクリレート系化合物と、
(B)ヒドロキシカルボン酸を含むカルボン酸とアルコールとのエステルと、
を含有することを特徴とする潤滑油組成物。



【公開番号】特開2009−235270(P2009−235270A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84385(P2008−84385)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】