説明

潤滑油

【課題】潤滑性に優れた潤滑油を提供する。
【解決手段】 配位子の全てがフルオロであるフルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)を含有してなり、基油(B)が、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物、カルボン酸エステル、ポリオレフィン及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種である潤滑油を用いる。フルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)の合計重量に基づいて、フルオロ錯アニオン(A)の含有量が2〜40重量%、基油(B)の含有量が60〜98重量%であることが好ましい。フルオロ錯アニオン(A)が、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸イオン又はヘキサフルオロチタン(IV)酸イオンであることが好ましい。さらに、リン酸エステル(塩)(P)を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セカンダリーアルコールのアルキレンオキシド(炭素数2〜8)0〜300モル付加物を含有する潤滑油(特許文献1)が知られている。
【特許文献1】特開2003−176488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の潤滑油は潤滑性が不十分であり、特に極圧性{点接触部に高い荷重(200〜500N程度)を印可したときの潤滑性}が悪いという問題がある。本発明は、潤滑性に優れた潤滑油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の潤滑油は、配位子の全てがフルオロであるフルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)を含有してなり、基油(B)が、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物、カルボン酸エステル、ポリオレフィン及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種である点を要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の潤滑油は、極圧性が優れる。したがって、例えば、点接触部に高い荷重(200〜500N程度)がかかっても、優れた潤滑性を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
フルオロ錯アニオン(A)は、中心原子に配位子が配位してなる錯アニオンであって、配位子の全てがフルオロ(フッ素原子)である錯アニオンを意味する。
中心原子としては、18族型元素周期表における4〜12族の元素、13族の元素及び14〜15族の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子等が含まれる。
【0007】
4族の元素としては、ジルコニウム、チタン及びハフニウム等が含まれる。
5族の元素としては、タンタル等が含まれる。
6族の元素としては、モリブデン等が含まれる。
7族の元素としては、マンガン等が含まれる。
8族の元素としては、鉄等が含まれる。
9族の元素としては、コバルト等が含まれる。
10族の元素としては、ニッケル及び白金等が含まれる。
11族の元素としては、銅等が含まれる。
12族の元素としては、亜鉛及びカドミウム等が含まれる。
13族の元素としては、ホウ素及びアルミニウム等が含まれる。
14族の元素としては、ケイ素等が含まれる。
15族の元素としては、リン等が含まれる。
【0008】
これらのうち、コスト及び潤滑性等の観点から、4〜12族の元素のいずれかからなる原子が好ましく、さらに好ましくは4族の原子、特に好ましくはジルコニウム原子及びチタン原子である。
【0009】
フルオロ錯アニオン(A)としては、1価フルオロ錯アニオン(A1)、2価フルオロ錯アニオン(A2)及び3価フルオロ錯アニオン(A3)等が含まれる。フルオロ錯アニオン(A)は、これらの混合物でもよい。
【0010】
1価フルオロ錯アニオン(A1)としては、テトラフルオロホウ酸イオン([BF4-)、ヘキサフルオロリン酸イオン([PF6-)、テトラフルオロモリブデン(III)酸イオン([MoF4-)、トリフルオロコバルト(II)酸イオン([CoF3-)、ヘプタフルオロハフニウム(IV)酸イオン([HfF5-)、トリフルオロマンガン(II)酸イオン([MnF3-)、テトラフルオロコバルト(III)酸イオン([CoF4-)及びテトラフルオロアルミニウム酸イオン([AlF4-)等が含まれる。
2価フルオロ錯アニオン(A2)としては、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸イオン([ZrF62-)、ヘキサフルオロチタン(IV)酸イオン([TiF62-)、ヘキサフルオロケイ酸イオン([SiF62-)、テトラフルオロニッケル(II)酸イオン([NiF42-)、ヘキサフルオロハフニウム(IV)酸イオン([HfF62-)、ヘプタフルオロタンタル(V)酸イオン([TaF72-)、ヘキサフルオロ白金(IV)酸イオン([PtF62-)、テトラフルオロ銅(II)酸イオン([CuF42-)、テトラフルオロ亜鉛酸イオン([ZnF42-)及びテトラフルオロカドミウム酸イオン([CdF42-)等が含まれる。
3価フルオロ錯アニオン(A3)としては、ヘキサフルオロ鉄(III)酸イオン([FeF63-)及びヘキサフルオロアルミニウム酸イオン([AlF63-)等が含まれる
【0011】
これらのうち、潤滑性等の観点から、1価フルオロ錯アニオン(A1)及び2価フルオロ錯アニオン(A2)が好ましく、さらに好ましくは2価フルオロ錯アニオン(A2)、特に好ましくはヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸イオン及びヘキサフルオロチタン(IV)酸イオンである。
【0012】
フルオロ錯アニオン(A)の含有量(重量%)は、フルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)の合計重量に基づいて、2〜40が好ましく、さらに好ましくは3〜35、特に好ましくは5〜15である。この範囲であると、潤滑性がさらに優れるとともに、粘性がさらに適度となるため取り扱い性にも優れる。
【0013】
基油(B)としては、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物、カルボン酸エステル、ポリオレフィン、鉱油及びこれらの混合物等が含まれる。
これらのうち、潤滑性及びフルオロ錯アニオン(A)の溶解性等の観点から、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物、カルボン酸エステル及びポリオレフィンが好ましく、さらに好ましくは脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物及びカルボン酸エステル、特に好ましくは脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物である。
【0014】
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物としては、脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加して製造され得る脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物等が含まれる。脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物は、混合物でもよい。
【0015】
脂肪族アルコールとしては、飽和脂肪族アルコール及び不飽和脂肪族アルコール等が含まれる。
飽和脂肪族アルコールとしては、アルカンモノオール、アルカンジオール、アルカントリオール及び4〜6価のアルカンポリオール等が含まれる。
【0016】
アルカンモノオールとしては、炭素数1〜10のものが含まれ、直鎖アルカンモノオール(メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、ブタン−1−オール、ペンタン−1−オール、ヘキサン−1−オール、ヘプタン−1−オール、オクタン−1−オール、ノナン−1−オール及びデカン−1−オール)及び分岐アルカンモノオール(プロパン−2−オール、ブタン−2−オール、2−メチルプロパン−2−オール及び2−エチルヘキサン−1−オール等)等が含まれる。
【0017】
アルカンジオールとしては、炭素数2〜8のものが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、オクタン−1,2−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が含まれる。
【0018】
アルカントリオールとしては、炭素数3〜10のものが含まれ、グリセリン、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオール、ブタン−1,2,3−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、ペンタン−1,2,4−トリオール、2−メチルブタン−2,3,4−トリオール、2,4−ジメチルペンタン−2,3,4−トリオール、2−エチルブタン−1,2,3−トリオール、ペンタン−1,2,3−トリオール、ペンタン−2,3,4−トリオール、ヘキサン−2,3,4−トリオール、4−プロピルヘプタン−3,4,5−トリオール、2−メチル−2−ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール及び2−エチル−2−ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール等が含まれる。
【0019】
4〜6価のアルカンポリオールとしては、炭素数5〜6のものが含まれ、ペンタエリスリトール、糖アルコール(ソルビトール及びマンニトール等)及びその分子内エーテル(ソルビタン等)、ジグリセリン及び単糖(グルコース、マンノース及びフルクトース等)等が含まれる。
【0020】
不飽和脂肪族アルコールとしては、炭素数3〜10のものが含まれ、1−プロペン−3−オール(アリルアルコール)、2‐メチルプロペン‐3‐オール、1−ヘキセン−3−オール、1−ヘキセン−6−オール、1−オクテン−8−オール及び1−デセン−10−オール等が含まれる。
【0021】
これらのうち、潤滑性及び生分解性等の観点から、飽和脂肪族アルコールが好ましく、さらに好ましくはアルカンモノオール及びアルカンジオール、特に好ましくは直鎖アルカンモノオール(メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、ブタン−1−オール、ペンタン−1−オール、ヘキサン−1−オール、ヘプタン−1−オール、オクタン−1−オール、ノナン−1−オール及びデカン−1−オール)、エチレングリコール及びプロピレングリコールである。
【0022】
炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)及び1,2−ブチレンオキシド(1,2−BO)等が含まれる。これらは2種以上の混合でもよい。2種以上の混合である場合、付加形式はランダム、ブロック又はこれらの組合せの何れでもよい。
これらのうち、潤滑油の経時安定性等の観点から、EO及びPOが好ましい。また、潤滑性の観点等から、POがさらに好ましく、生分解性の観点等から、EOがさらに好ましい。
【0023】
したがって、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物としては、潤滑性及び生分解性等の観点から、飽和脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物が好ましく、さらに好ましくはアルカンモノオールEO付加物、アルカンモノオールPO付加物、アルカンモノオールEO/PO付加物、アルカンジオールEO付加物、アルカンジオールPO付加物及びアルカンジオールEO/PO付加物である。なお、EO/PO中の「/」は、EOとPOとの付加がブロック付加、ランダム付加又はこれらの混合であることを意味する。
【0024】
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシド付加物が、PO付加物を多く含むほど潤滑性が優れる傾向があり、EO付加物を多く含むほど生分解性が優れる傾向がある。
【0025】
すなわち、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物としては、潤滑性の観点等から、アルカンモノオールPO付加物及びアルカンジオールPO付加物が特に好ましく、最も好ましくは直鎖アルカンモノオールPO付加物(メタノールPO付加物、エタノールPO付加物、プロパン−1−オールPO付加物、ブタン−1−オールPO付加物、ペンタン−1−オールPO付加物、ヘキサン−1−オールPO付加物、ヘプタン−1−オールPO付加物、オクタン−1−オールPO付加物、ノナン−1−オールPO付加物及びデカン−1−オールPO付加物)、エチレングリコールPO付加物及びプロピレングリコールPO付加物である。
【0026】
一方、生分解性の観点等から、アルカンモノオールEO付加物及びアルカンジオールEO付加物が特に好ましく、最も好ましくは直鎖アルカンモノオールEO付加物(メタノールEO付加物、エタノールEO付加物、プロパン−1−オールEO付加物、ブタン−1−オールEO付加物、ペンタン−1−オールEO付加物、ヘキサン−1−オールEO付加物、ヘプタン−1−オールEO付加物、オクタン−1−オールEO付加物、ノナン−1−オールEO付加物及びデカン−1−オールEO付加物)、エチレングリコールEO付加物及びプロピレングリコールEO付加物である。
【0027】
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の数平均分子量(Mn)は、潤滑性及び生分解性等の観点から、200〜10000が好ましく、さらに好ましくは300〜3800、特に好ましくは600〜1200である。
【0028】
数平均分子量は、JIS K0124−2002(分離機構:サイズ排除クロマトグラフィー)に準拠してゲルパーミエーションクロマトグラフィー法{合成高分子充填剤(ポリスチレンゲル等)を使用した非水系サイズ排除クロマトグラフィー}により測定される。
【0029】
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物は、公知の方法(例えば、特開2002−226879号公報に記載の方法)で製造できるが、市販品をそのまま使用してもよい。
市販品のうち、好ましいものを例示すると、「ニューポールLB−285、三洋化成工業株式会社、ブタン−1−オールのプロピレンオキシド付加物、Mn=1200」、「PEG−200、三洋化成工業株式会社、ポリエチレングリコール、Mn=200」、「PEG−600、三洋化成工業株式会社、ポリエチレングリコール、Mn=600」及び「PEG−10000、三洋化成工業株式会社、ポリエチレングリコール、Mn=10000」等が挙げられる。
【0030】
カルボン酸エステルとしては、特開平9−13063号公報に記載のエステル化合物、特公平4−33836号公報に記載のエステル油、及び特開平4−114096に記載のポリアルキレングリコール脂肪族カルボン酸エステル等が含まれる。
これらのうち、潤滑性等の観点から、ポリアルキレングリコール脂肪族カルボン酸エステルが好ましく、さらに好ましくはポリエチレングリコール脂肪族カルボン酸エステル(脂肪族カルボン酸の炭素数12〜18)、特に好ましくはポリエチレングリコールオレイン酸エステル及びポリエチレングリコールラウリン酸エステルである。
【0031】
ポリオレフィンとしては、特公平4−33836号公報等に記載のオレフィン重合油等が含まれる。これらのうち、潤滑性等の観点から、ポリα−オレフィン(α−オレフィンの炭素数4〜10)が好ましく、さらに好ましくはポリイソブテン及びポリ1−デセン、特に好ましくはポリイソブテンである。
【0032】
鉱油としては、特表2004−503608号公報等に記載の鉱油等が含まれ、好ましいものも同じである。
【0033】
基油(B)の含有量(重量%)は、フルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)の合計重量に基づいて、60〜98が好ましく、さらに好ましくは65〜97、特に好ましくは85〜95である。この範囲であると、潤滑性がさらに優れるとともに、粘性がさらに適度となるため取り扱い性にも優れる。
【0034】
潤滑油には、さらに、リン酸エステル(塩)(P)を含有することができる。リン酸エステル(塩)(P)を含有すると、潤滑性がさらに優れる。
なお、「・・・酸エステル(塩)」は「・・・酸エステル」及び「・・・酸エステル塩」を意味する。
【0035】
リン酸エステル(塩)(P)としては、公知のリン酸エステル(塩){特公昭43−26492号公報、特開2003−105370号公報、特開平05−263362号公報及び特開平09−67587号公報等}が使用できる。
【0036】
なお、リン酸エステル塩としては、上記公知文献に記載されているもの以外に、環状アミン(炭素数4〜12)のリン酸エステル塩等が含まれる。
【0037】
環状アミンとしては、モルホリン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU:サンアプロ社の登録商標)及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)等が含まれる。
【0038】
これらのリン酸エステル(塩)(P)としては、潤滑性等の観点から、リン酸モノエステル(塩)、リン酸ジエステル(塩)及びこれらの混合物が好ましく、さらに好ましくはリン酸モノエステル(塩)及びリン酸ジエステル(塩)の混合物、特に好ましくはリン酸モノエステル塩及びリン酸ジエステル塩の混合物、最も好ましくはラウリルリン酸(モノ−/ジ−)エステルDBU塩、オレイルリン酸(モノ−/ジ−)エステルモノイソプロパノールアミン塩、ラウリルポリオキシエチレンリン酸(モノ−/ジ−)エステルモノイソプロパノールアミン塩、オレイルリン酸(モノ−/ジ−)エステルDBU塩及びラウリルポリオキシエチレンリン酸(モノ−/ジ−)エステルDBU塩である。
なお、「(モノ−/ジ−)エステル・・・塩」は、「モノエステル・・・塩」及び「ジエステル・・・塩」の混合物を意味する。
【0039】
リン酸エステル(塩)(P)を含有する場合、リン酸エステル(塩)(P)の含有量(重量%)は、潤滑油の潤滑性等の観点から、フルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)の重量に基づいて、1〜25が好ましく、さらに好ましくは3〜15、特に好ましくは5〜12である。
【0040】
潤滑油には、必要により、公知(たとえば、特開2006−83378号公報)の添加剤(増粘剤、防錆剤、酸化防止剤等及び水等)を含有してもよい。
【0041】
防錆剤を含有する場合、防錆剤の含有量(重量%)は、フルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)の重量に基づいて、0.2〜10が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5、特に好ましくは1〜3である。
【0042】
増粘剤を含有する場合、増粘剤の含有量(重量%)は、フルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)の重量に基づいて、0.5〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜5、特に好ましくは2〜4である。
【0043】
酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量(重量%)は、フルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)の重量に基づいて、0.1〜5が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3、特に好ましくは0.5〜1である。
【0044】
水を含有する場合、水の含有量(重量%)は、潤滑性及び製造の容易さ等の観点から、潤滑油の重量に基づいて、0.1〜18が好ましく、さらに好ましくは0.5〜11、特に好ましくは1〜5である。
【0045】
本発明の潤滑油の動粘度(mm2/s)は、20〜330が好ましく、さらに好ましくは30〜250、特に好ましくは40〜100である。この範囲であると、潤滑性がさらに優れるとともに、潤滑油の粘着性がさらに小さくなるためさらに取り扱い易い。
なお、動粘度(mm2/s)は、JIS K2283:2000に準拠してウベローデ粘度計で測定される40℃での動粘度である。
【0046】
潤滑油の動粘度は、基油(B)の数平均分子量の選択、増粘剤及び/又は水の含有量等により調整することができる。例えば、数平均分子量の比較的高い基油(B)を用いると、潤滑油の動粘度は高くなる傾向がある。また、増粘剤の含有量を多くする程、潤滑油の動粘度が高くなる傾向がある。
また、水の含有量が少ない範囲(例えば、水の含有量が5重量%未満)では、水の含有量を多くする程、潤滑油の動粘度が大きくなる場合があるが、水の含有量が多い範囲(例えば、水の含有量が5〜18重量%)では、水の含有量を多くする程、潤滑油の動粘度が小さくなる傾向がある。
【0047】
本発明の潤滑油のpHは、防錆性の観点等から、6〜10が好ましく、さらに好ましくは7〜9、特に好ましくは8〜9である。
なお、pHは、潤滑油をイオン交換水/エタノール(容量比=50/50)で2倍に稀釈した溶液を、pHメーターを使用してJIS Z8802−1984に準拠して測定できる。
【0048】
本発明の潤滑油は、フルオロ錯体(C)、基油(B)及び必要によりリン酸エステル(P)、さらに必要により添加剤を均一混合することにより容易に得られる。フルオロ錯体(C)は、フルオロ錯アニオン(A)とカチオンとから構成される電気的に中性の錯体である。
撹拌温度に制限がないが、40〜60℃程度が好ましい。
撹拌時間に制限がないが、1〜4時間が好ましい。
撹拌混合装置に制限はなく、ナウターミキサー、リボンミキサー、コニカルブレンダー、モルタルミキサー、万能混合ミキサー及びヘンシェルミキサー等が使用できる。
【0049】
カチオンとしては、プロトン、アルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム塩等)イオン、アンモニウムイオン及び有機アンモニウムイオン等が含まれる。
【0050】
有機アンモニウムイオンとしては、アミンのプロトン付加物等が含まれる。
アミンとしては、アルカノールアミン(炭素数2〜12)、アルキルアミン(炭素数1〜18)、環状アミン(炭素数4〜12)、ポリエチレンポリアミン(窒素原子数2〜6個)及びこれらのアミンのアルキレンオキシド付加物等が含まれる。
【0051】
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン及びトリブタノールアミン等が含まれる。
【0052】
アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジへキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等が含まれる。
【0053】
環状アミンとしては、前記の環状アミン(モルホリン、DBU及びDABCO等)等が含まれる。
【0054】
ポリエチレンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサメチレンジアミン等が含まれる。
【0055】
アミンのアルキレンオキシド付加物としては、これらのアミン(アルカノールアミン、アルキルアミン、環状アミン及びポリエチレンポリアミン)のアルキレンオキシド付加物等が含まれる。
アルキレンオキシドとしては、EO、PO及びこれらの混合等が含まれる。付加はランダム、ブロック及びこれらの混合の何れでもよい。
アルキレンオキシドの付加モル数は、潤滑性等の観点から、アミン1モルに対して1〜20が好ましく、さらに好ましくは2〜15、特に好ましくは2〜6である。
【0056】
これらのうち、潤滑性等の観点から、有機アンモニウムイオンが好ましく、さらに好ましくはアルカノールアミンのプロトン付加物、環状アミンのプロトン付加物及びアミンのアルキレンオキシド付加物のプロトン付加物、特に好ましくはアルカノールアミンのプロトン付加物及び環状アミンのプロトン付加物である。
【0057】
すなわち、フルオロ錯体(C)としては、アルカノールアミン−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩{モノイソプロパノールアミン−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩等}、環状アミン−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩{DBU−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩等}、アミンのアルキレンオキシド付加物−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩{オクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩等}、アルカノールアミン−ヘキサフルオロチタン(IV)酸塩{モノイソプロパノールアミン−ヘキサフルオロチタン(IV)酸塩等}、環状アミン−ヘキサフルオロチタン(IV)酸塩{DBU−ヘキサフルオロチタン(IV)酸塩等}及びアミンのアルキレンオキシド付加物−ヘキサフルオロチタン(IV)酸塩{オクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロチタン(IV)酸塩等}等が好ましい。なお、オクチルアミン(PO)2は、オクチルアミン1モルに対してPO2モルが付加した化合物である。
【0058】
フルオロ錯体(C)のうち、カチオンが、プロトン、アルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム塩等)イオン又はアンモニウムイオンであるフルオロ錯体は、公知の方法(例えば、「化学大事典3、共立出版発行、1989年8月15日発行、各フルオロ金属酸塩の項目欄」及び「J.Fluorine Chem.,25,91(1984)」等に記載の方法)で製造できる。また、カチオンが有機アンモニウムイオンであるフルオロ錯体は、カチオンがプロトンであるフルオロ錯体をアミン{モノイソプロパノールアミン、DBU及びオクチルアミン(PO)2等}で中和して製造することができる。
カチオンがプロトンであるフルオロ錯体は、市販品がそのまま使用できる。市販品のうち、好ましいものを例示すると、ヘキサフルオロジルコニックアシッド(アゾマックス株式会社)、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸45重量%水溶液(アルドリッチ社)及びヘキサフルオロチタン(IV)酸60重量%水溶液(アルドリッチ社)等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、部は重量部、%は重量%を表す。
実施例において、数平均分子量(Mn)、動粘度、pH及び水の含有量は、次の方法で測定した測定値である。
【0060】
<数平均分子量(Mn)の測定条件>
装 置:LC−8120(東ソー株式会社)
カ ラ ム:TSK gel Super H4000、H3000、H2000(東ソー株式会社)を直列に結合したカラム
カラム温度:40℃
展開溶媒 :テトラヒドロフラン(試薬特級)
試料濃度 :0.25重量%
注 入 量:10μl
流 速:0.6(ml/min)
検 出 器:示差屈折率検出器
標準物質 :TSK標準ポリエチレンオキシド(重量平均分子量27700、東ソー株式会社)、ポリエチレングリコール300(分子量194、238、282及び326の混合品、和光純薬工業株式会社)、ポリエチレングリコール1000(重量平均分子量1000、和光純薬工業株式会社)、ポリエチレングリコール4000(重量平均分子量4000、和光純薬工業株式会社)
【0061】
動粘度は、JIS K2283:2000に準拠してウベローデ粘度計(商品名:自動粘度測定装置、離合社製)を用いて40℃で測定した。
【0062】
pHは、潤滑油をイオン交換水/エタノール(容量比=50/50)で2倍に稀釈した溶液を、pHメーター(商品名:M−12、堀場製作所製)を用いてJIS Z8802−1984に準拠して測定した。
【0063】
水の含有量は、JIS K0113:2005、8.カールフィッシャー滴定法(8.1容量滴定方法)に準拠して測定した。
【0064】
<製造例1>
オクチルアミン(n−オクチルアミン、純度98%以上、ナカライテスク株式会社)129部(1モル部)に、PO116部(2モル部)を100〜140℃、10時間で滴下反応させることにより、オクチルアミン(PO)2を得た。
【0065】
<製造例2>
ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸45%水溶液(アルドリッチ社)180部と製造例1で得たオクチルアミン(PO)2200部を、40〜60℃で撹拌混合して、オクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F1)を得た。水溶液(F1)に含まれるヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は21%(計算値)である。
【0066】
<製造例3>
「オクチルアミン(PO)2200部」を、「DBU(純度98%以上、サンアプロ株式会社)119部」に変更したこと以外、製造例2と同様にして、DBU−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F2)を得た。水溶液(F2)に含まれるヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は27%(計算値)である。
【0067】
<製造例4>
ヘキサフルオロチタン(IV)酸60%水溶液(アルドリッチ社)273部とモノイソプロパノールアミン158部を、40〜60℃で撹拌混合して、モノイソプロパノールアミン−ヘキサフルオロチタン(IV)酸塩の水溶液(F3)を得た。水溶液(F3)に含まれるヘキサフルオロチタン錯アニオン(a2)の含有量は38%(計算値)である。
【0068】
<製造例5>
オレイルアルコール(純度98%以上、花王株式会社)200部を、50〜80℃で撹拌混合しながら無水リン酸(純度97%以上、ナカライテスク株式会社)35部を発熱に注意しながら(温度が80℃を超えないように)分割して添加し、2〜4時間、同温度で熟成させた後、モノイソプロパノールアミン(純度98%以上、ナカライテスク株式会社)28部を加えて撹拌混合して、オレイルリン酸(モノ−/ジ−)エステルモノイソプロパノールアミン塩(p1)を得た。
【0069】
<製造例6>
ラウリルアルコール(EO)3(トリエチレングリコールモノ−n−ドデシルエーテル、東京化成工業株式会社)200部を50〜80℃で撹拌しながら無水リン酸30部を発熱に注意しながら(温度が80℃を超えないように)少量ずつ分割して添加し、2〜4時間、同温度で熟成させた後、DBU48部を加えて撹拌混合して、ラウリルポリオキシエチレンリン酸(モノ−/ジ−)エステルDBU塩(p2)を得た。
【0070】
<製造例7>
ブタン−1−オール(1−ブタノール、純度99.0%以上、ナカライテスク株式会社)74部(1モル部)と水酸化カリウム4.8部とを混合し、110℃に調整した後、110℃でEO2500部(57モル部)とPO2500部(43モル部)との混合物を滴下して反応させ、次いで水酸化カリウムを吸着処理により除去して、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b4)(ブタン−1−オールのEO及びPOランダム付加物とアリルアルコールのEO及びPOランダム付加物との混合物、Mn=3800)を得た。
【0071】
<実施例1>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b1)(ブチルアルコールPO付加物、商品名:ニューポールLB−285、三洋化成株式会社、Mn=1200)900部及びオクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F1)130.5部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として27.8部(計算値)}を50〜60℃で、1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J1)を得た。潤滑油(J1)の動粘度は72mm2/s、pHは7.1、水の含有量は3%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて3%(計算値)である。
【0072】
<実施例2>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b2)(ポリエチレングリコール、商品名:PEG−300、三洋化成工業株式会社、Mn=300)850部及びDBU−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F2)165部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として44.7部(計算値)}を50〜60℃で1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J2)部を得た。潤滑油(J2)の動粘度は30mm2/s、pHは8.4、水の含有量は5%であった。ヘキサフルオロ錯ジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて5%(計算値)である。
【0073】
<実施例3>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b3)(ポリエチレングリコール、商品名:PEG−600、三洋化成工業株式会社、Mn=600)950部及びモノイソプロパノールアミン−ヘキサフルオロチタン(IV)酸塩の水溶液(F3)51部{ヘキサフルオロチタン錯アニオン(a2)として19.4部(計算値)}を50〜60℃で1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J3)を得た。潤滑油(J3)の動粘度は62mm2/s、pHは8.0、水の含有量は1%であった。ヘキサフルオロチタン錯アニオン(a2)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて2%(計算値)である。
【0074】
<実施例4>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b4)960部、オクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F1)108部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として22.7部(計算値)}及びオレイルリン酸(モノ−/ジ−)エステルモノイソプロパノールアミン塩(p1)49部を50〜60℃で1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J4)を得た。潤滑油(J4)の動粘度は330mm2/s、pHは8.2、水の含有量は2.5%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて2%(計算値)である。
【0075】
<実施例5>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b4)157部、オクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F1)402部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として84.4部(計算値)}及びラウリルポリオキシエチレンリン酸(モノ−/ジ−)エステルDBU塩(p2)7.3部を50〜60℃で1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J5)を得た。潤滑油(J5)の動粘度は250mm2/s、pHは8.4、水の含有量は18%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて35%(計算値)である。
【0076】
<実施例6>
オクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F1)72.5部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として15.2部(計算値)}を90〜130℃で2時間減圧(圧力:1500〜6000Pa)して脱水した後、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b1)950部及びラウリルポリオキシエチレンリン酸(モノ−/ジ−)エステルDBU塩(p2)116部を50〜60℃で1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J6)を得た。潤滑油(J6)の動粘度は100mm2/s、pHは8.2、水の含有量は0.1%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて2%(計算値)である。
【0077】
<実施例7>
DBU−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F2)1480部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として400部(計算値)}を実施例6と同様にして脱水した後、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b1)600部及びオレイルリン酸(モノ−/ジ−)エステルモノイソプロパノールアミン塩(p1)150部を50〜60℃で1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J7)を得た。潤滑油(J7)の動粘度は20mm2/s、pHは8.5、水の含有量は0.5%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて40%(計算値)である。
【0078】
<実施例8>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b3)950部及びDBU−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F2)230部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として62.1部(計算値)}及びオレイルリン酸(モノ−/ジ−)エステルモノイソプロパノールアミン塩(p1)10部を50〜60℃で1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J8)を得た。潤滑油(J8)の動粘度は56mm2/s、pHは7.9、水の含有量は6%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて6%(計算値)である。
【0079】
<実施例9>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b2)850部及びDBU−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F2)554部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として150部(計算値)}及びオレイルリン酸(モノ−/ジ−)エステルモノイソプロパノールアミン塩(p1)250部を50〜60℃で1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J9)を得た。潤滑油(J9)の動粘度は40mm2/s、pHは8.3、水の含有量は11%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて15%(計算値)である。
【0080】
<実施例10>
カルボン酸エステル(b5)(ポリエチレングリコールオレイン酸エステル、商品名:イオネットMO−600、三洋化成株式会社、Mn=880)900部及びオクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F1)130.5部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として27.8部(計算値)}を50〜60℃で、1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J10)を得た。潤滑油(J10)の動粘度は88mm2/s、pHは7.3、水の含有量は3%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて3%(計算値)である。
【0081】
<実施例11>
ポリオレフィン(b6)(ポリイソブテン、商品名:日石ポリブテンLV−25、新日本石油株式会社、、Mn=390)900部及びオクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F1)130.5部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として27.8部(計算値)}を50〜60℃で、1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J11)を得た。潤滑油(J11)の動粘度は61mm2/s、pHは7.2、水の含有量は3%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて3%(計算値)である。
【0082】
<実施例12>
鉱油(b7)(精製パラフィン系オイル、商品名:スタノール52、エッソ石油株式会社)900部及びオクチルアミン(PO)2−ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸塩の水溶液(F1)130.5部{ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)として27.8部(計算値)}を50〜60℃で、1時間撹拌混合して、本発明の潤滑油(J12)を得た。潤滑油(J12)の動粘度は65mm2/s、pHは7.2、水の含有量は3%であった。ヘキサフルオロジルコニウム錯アニオン(a1)の含有量は、フルオロ錯アニオン及び脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物の合計重量に基づいて3%(計算値)である。
【0083】
<比較例1>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b2)を比較用の潤滑油(H1)とした。潤滑油(H1)の動粘度は30mm2/s、pHは6.7、水の含有量は0%であった。
【0084】
<比較例2>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b1)を比較用の潤滑油(H2)とした。潤滑油(H2)の動粘度は62mm2/s、pHは6.8、水の含有量は0%であった。
【0085】
<比較例3>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b3)を比較用の潤滑油(H3)とした。潤滑油(H3)の動粘度は59mm2/s、pHは6.7、水の含有量は0%であった。
【0086】
<比較例4>
脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物(b4)を比較用の潤滑油(H4)とした。潤滑油(H4)の動粘度は350mm2/s、pHは6.9、水の含有量は0%であった。
【0087】
<比較例5>
特開2003−176488号公報の実施例1の記載に準拠して比較用の潤滑油(H5)を得た。潤滑油(H5)の動粘度は12mm2/s、pHは6.8、水の含有量は0%であった。
【0088】
<比較例6>
カルボン酸エステル(b5)を比較用の潤滑油(H6)とした。潤滑油(H6)の動粘度は80mm2/s、pHは7.1、水の含有量は0%であった。
【0089】
<比較例7>
ポリオレフィン(b6)を比較用の潤滑油(H7)とした。潤滑油(H7)の動粘度は53mm2/s、pHは6.9、水の含有量は0%であった。
【0090】
<比較例8>
鉱油(b7)を比較用の潤滑油(H8)とした。潤滑油(H8)の動粘度は56mm2/s、pHは7.0、水の含有量は0%であった。
【0091】
本発明の潤滑油(J1)〜(J12)および比較用の潤滑油(H1)〜(H8)について、潤滑油の組成及び物性(動粘度、pH)を表1に示す。
【0092】
<評価>
本発明の潤滑油(J1)〜(J12)及び比較用の潤滑油(H1)〜(H8)について、潤滑性{動摩擦係数、油膜切れ、摩耗直径及び極圧性(耐荷重能)}及び防錆性を以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0093】
<潤滑性>
1.動摩擦係数
振動摩擦摩耗試験機(SRV試験機、オプチモール社製)を用いて、試験温度30℃で、以下のようにして、摩耗試験を行い、動摩擦係数を得た。
静止した平面状の鋼ディスク上に、評価試料(潤滑油)をスポイトで数滴(0.1〜0.3ml)滴下して潤滑油の膜(油膜)を作成し、この油膜の上に直径10mmの鋼球を200Nの荷重で載せた(鋼球と鋼ディスクとが油膜を介して点接触するように載せた)。引き続き、荷重を維持したままで、鋼球を鋼ディスク上で10分間、往復運動(振幅:2mm、振動数:50Hz)させ(鋼球は回転させない)、10分間、鋼球及び鋼ディスク間の摩擦係数を連続測定し、10分後の値を動摩擦係数とした。
【0094】
2.油膜切れ
摩耗試験において、鋼球の往復運動開始後2〜10分における摩擦係数の変動(最大値−最小値)が、動摩擦係数の6%以下であれば油膜切れ評価を○、6%を超える場合は油膜切れ評価を×とした。
【0095】
3.摩耗直径
摩耗試験に引き続き、鋼球の点接触部に生じた円形の摩耗痕の直径を、光学顕微鏡(STM6、オリンパス株式会社、倍率:100倍)で測定し、摩耗直径(mm)とした。
【0096】
4.極圧性(耐荷重能)
摩耗試験において、「200Nの荷重」を「100Nから50N刻みで増やして500Nまでの荷重」に替えた以外、上記と同様にして摩耗試験を行い、それぞれの荷重で動摩擦係数及び油膜切れを評価して、これらの結果から極圧性を次のように評価した。
100Nの荷重で油膜切れ評価が×の場合、極圧性を100Nとした。また、100Nの荷重で油膜切れ評価が○の場合、荷重を増やしていったときに油膜切れ評価が×となったときの荷重(N)、又は荷重を増やしていったときに油膜切れ評価が○であっても動摩擦係数が0.16を超えたときの荷重(N)を極圧性とした。
なお、500Nまで荷重を上げても動摩擦係数が0.16以下で油膜切れ評価が○の場合、極圧性を500N以上とした。
【0097】
<防錆性>
「JIS K2510−1998:潤滑油−さび止め性能試験方法」に準拠して、評価試料(潤滑油)300mlに30mlの水を加え均一混合した混合液に、研磨洗浄した棒鋼(S20C、「JIS G4051:2005 機械構造用炭素鋼材」による。幅1.2cm×厚さ1mm×長さ9cm)を60℃で3日間浸漬した後、棒鋼を目視で観察し、錆の発生箇所を数え、錆の発生箇所の数を防錆性とした。なお、棒鋼を浸漬中の混合液は3日間撹拌し続けた。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
本発明の潤滑油は、比較用の潤滑油に比較して潤滑性(特に、極圧性)及び防錆性が著しく優れている。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の潤滑油は、潤滑性、特に極圧性が優れているため、作動油、軸受け油、摺動油及びギア油等の駆動油として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位子の全てがフルオロであるフルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)を含有してなり、基油(B)が、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物、カルボン酸エステル、ポリオレフィン及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種である潤滑油。
【請求項2】
フルオロ錯アニオン(A)及び基油(B)の合計重量に基づいて、フルオロ錯アニオン(A)の含有量が2〜40重量%、基油(B)の含有量が60〜98重量%である請求項1に記載の潤滑油。
【請求項3】
フルオロ錯アニオン(A)が、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸イオン又はヘキサフルオロチタン(IV)酸イオンである請求項1又は2に記載の潤滑油。
【請求項4】
さらに、リン酸エステル(塩)(P)を含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油。
【請求項5】
作動油、軸受け油、摺動油及びギア油からなる群より選ばれる駆動油において、請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油を含有してなる駆動油。

【公開番号】特開2008−81526(P2008−81526A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259957(P2006−259957)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】