説明

潤滑装置

【課題】始動時における内燃機関の各部のフリクションを低減することが可能な潤滑装置を提供する。
【解決手段】オイルポンプ12にてオイルを汲み上げ、オイルポンプ12から吐出されるオイルを供給経路を介して内燃機関1に設けられている供給対象4、5、6、8に供給する潤滑装置10において、オイルポンプ12から供給対象4、5、6、8へのオイルの供給を許容する開位置と供給対象4、5、6、8へのオイルの供給を阻止する閉位置とに切り替え可能な供給制御弁19を備え、供給制御弁19は内燃機関1を停止させるべき所定の機関停止条件が成立した場合に閉位置に切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルポンプにてオイルを汲み上げ、そのオイルポンプから吐出されるオイルを内燃機関に設けられている供給対象に供給する潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に設けられるオイル供給装置として、オイルポンプに空気を吸引させることが可能なように吸入通路を設け、内燃機関の始動時にその吸引通路に設けた制御弁を開けてオイルポンプにオイルとともに気体を吸引させ、これにより始動時のオイルポンプの仕事を低減させるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−064125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周知のように内燃機関に設けられている軸受等のオイル供給対象には、内燃機関が停止しているときもオイルが保持されている。この保持されているオイルの量が多いと始動時における内燃機関の各部のフリクションが増大する。このフリクションはオイルの粘度が上昇する低温始動時にはさらに増大する。特許文献1の装置では、始動時のオイルポンプの仕事は低減できるがこのような内燃機関の各部のフリクションを低減することは考慮されていない。そのため、始動時にエネルギを無駄に消費しているおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、始動時における内燃機関の各部のフリクションを低減することが可能な潤滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の潤滑装置は、オイルポンプにてオイルを汲み上げ、前記オイルポンプから吐出されるオイルを供給経路を介して内燃機関に設けられている供給対象に供給する潤滑装置において、前記供給経路に設けられ、前記オイルポンプから前記供給対象へのオイルの供給を許容する開位置と前記供給対象へのオイルの供給を阻止する閉位置とに切り替え可能な供給制御弁と、前記内燃機関を停止させるべき所定の機関停止条件が成立した場合に前記供給制御弁を前記閉位置に切り替える制御手段と、を備えている(請求項1)。
【0007】
本発明の潤滑装置では、機関停止条件が成立した場合は供給制御弁を閉位置に切り替えて供給対象へのオイルの供給を停止するので、内燃機関を停止させるときに供給対象へのオイルの供給を停止した状態で内燃機関が運転される。これにより供給対象からオイルが排出されるので、供給対象に保持されるオイルの量を低減できる。そのため、始動時における内燃機関の各部のフリクションを低減できる。これにより内燃機関の始動に消費されるエネルギが低減されるので、燃費を改善できる。また、低温始動時に内燃機関の始動に掛かる時間を短縮できる。
【0008】
本発明の潤滑装置の一形態において、前記制御手段は、前記供給制御弁を前記閉位置に切り替えてから所定の排出時間が経過するまでの間前記内燃機関が運転状態に維持されるように前記内燃機関の停止を遅延する停止遅延手段を備えていてもよい(請求項2)。この形態によれば、供給対象へのオイル供給が停止した状態で内燃機関が確実に運転されるので、供給対象から確実にオイルを排出させることができる。また、内燃機関を運転状態に維持することにより、供給対象から排出されるオイルの量を増加させたり供給対象から速やかにオイルを排出させたりすることができる。
【0009】
この形態においては、前記排出時間として、前記供給対象に保持されるオイルの量が所定量以下になる時間が設定されていてもよい(請求項3)。このように排出時間を設定することにより、供給対象に保持されるオイルの量を確実に低減できる。そのため、始動時における内燃機関の各部のフリクションを確実に低減できる。
【0010】
また、前記制御手段は、前記排出時間が経過した後に前記供給制御弁を前記開位置に切り替えてもよい(請求項4)。この場合、始動時に供給対象にオイルを確実に供給できる。
【0011】
本発明の潤滑装置の一形態においては、前記供給経路内に空気を導入可能な空気導入手段をさらに備え、前記制御手段は、前記内燃機関の停止後に前記供給経路内に空気が導入されるように前記空気導入手段の動作を制御してもよい(請求項5)。このように供給経路内に空気を導入することにより、この空気によって供給対象からオイルを排出することができる。そのため、供給対象に保持されるオイルの量をさらに低減できる。従って、始動時における内燃機関の各部のフリクションをさらに低減できる。
【0012】
本発明の潤滑装置の一形態においては、前記オイルポンプの吸引側に気体を導入可能な気体導入通路と、前記気体導入通路を開閉する気体導入弁と、をさらに備え、前記制御手段は、前記機関停止条件が成立した場合に前記気体導入弁を開けてもよい(請求項6)。この形態によれば、機関停止条件が成立した場合にはオイルポンプに気体を吸引させるので、オイルポンプによるオイルの汲み上げを禁止できる。そのため、供給制御弁が故障等により閉位置に切り替えられなくても供給対象へのオイルの供給を停止できる。これにより供給対象に保持されるオイルの量を確実に低減できる。従って、始動時における内燃機関の各部のフリクションを確実に低減できる。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明したように、本発明の潤滑装置によれば、内燃機関を停止させるときに供給対象へのオイルの供給を停止した状態で内燃機関が運転されるので、供給対象からオイルを排出させることができる。これにより供給対象に保持されるオイルの量を低減できるので、始動時における内燃機関の各部のフリクションを低減できる。そのため、燃費を改善したり低温始動時に内燃機関を速やかに始動したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の形態に係る潤滑装置が組み込まれた内燃機関のシステム構成図。
【図2】図1のECUが実行するオイル低減制御ルーチンのフローチャート。
【図3】本発明の第2の形態に係る潤滑装置が組み込まれた内燃機関のシステム構成図。
【図4】図3のECUが実行するエア導入制御ルーチンを示すフローチャート。
【図5】本発明の第3の形態に係る潤滑装置が組み込まれた内燃機関のシステム構成図。
【図6】図5のECUが実行するオイル低減制御ルーチンのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の形態)
図1は、本発明の第1の形態に係る潤滑装置が組み込まれた内燃機関のシステム構成図である。なお、本発明の要旨と直接関係しない部分に関しては図示が適宜に省略されている。この内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に動力源として搭載され、複数の気筒が設けられた不図示のシリンダブロックと、シリンダブロックの上部に取り付けられたシリンダヘッド2と、シリンダブロックの下部に取り付けられたオイルパン3とを備えている。オイルパン3は、その内部にオイルが貯められる周知のものである。シリンダブロックには、クランク軸4と、気筒に挿入されたピストン(不図示)とクランク軸4とを連結するコンロッド5と、ピストンの裏面にオイルを噴射するオイルジェット6とが設けられている。また、シリンダブロックにはオイルパン3からオイルが導かれるメインオイルホール7が設けられている。シリンダヘッド2には、吸気弁や排気弁を開閉駆動するためのカム軸を含む動弁系8が設けられている。
【0016】
エンジン1には潤滑装置10が設けられている。潤滑装置10は、オイルパン3内のオイルをオイルストレーナ11を介して汲み上げて圧送するオイルポンプ12と、オイルポンプ12から吐出されたオイルを濾過するオイルフィルタ13とを備えている。なお、オイルポンプ12は、エンジン1のクランク軸4にて駆動されるものでもよいし、電動モータ等で駆動するものでもよい。オイルポンプ12の吸引側と吐出側とはリターン通路14で接続されている。リターン通路14には、オイルポンプ12の吐出側の圧力が予め設定した許容上限圧力以上になると開弁する圧力調整弁15が設けられている。オイルフィルタ13の入口側と出口側とはバイパス通路16で接続されている。バイパス通路16には、この通路を開閉するバイパス弁17が設けられている。なお、このバイパス弁17はオイルフィルタ13に異常がある場合に開弁される。
【0017】
この図に示すようにオイルポンプ12の吐出側はオイルフィルタ13を介してメインオイルホール7と接続されている。メインオイルホール7は、クランク軸4、オイルジェット6、及びシリンダヘッド2のそれぞれと接続されている。そして、クランク軸4はコンロッド5と、シリンダヘッド2は動弁系8とそれぞれ接続されている。
【0018】
次にエンジン1におけるオイルの流れを説明する。このエンジン1では、まずオイルポンプ12にてオイルパン3内のオイルがオイルストレーナ11を介して汲み上げられる。汲み上げられたオイルは、オイルポンプ12からオイルフィルタ13を介してメインオイルホール7に導かれる。その後、オイルはメインオイルホール7からクランク軸4、オイルジェット6、及びシリンダヘッド2に導かれる。そして、クランク軸4のオイルは、コンロッド5に、シリンダヘッド2のオイルは動弁系8にそれぞれ導かれる。コンロッド5、オイルジェット6、及び動弁系8に導かれたオイルは、オイルパン3に再び戻る。このようにクランク軸4、コンロッド5、オイルジェット6、及び動弁系8にオイルを供給するため、これらが本発明の供給対象に相当する。また、オイルポンプ12とこれら供給対象とを接続している通路が本発明の供給経路に相当する。
【0019】
この図に示すようにオイルポンプ12の吐出側とオイルフィルタ13とを接続する吐出通路18には、この通路を開閉可能な供給制御弁19が設けられている。なお、供給制御弁19は、リターン通路14の接続位置よりもオイルの流れ方向下流側であり、かつバイパス通路16の接続位置よりもオイルの流れ方向上流側に設けられている。
【0020】
供給制御弁19の動作は、エンジンコントロールユニット(ECU)20にて制御される。ECU20は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を含んだコンピュータユニットであり、エンジン1の運転状態を制御する周知のものである。ECU20は、例えばイグニッションスイッチがオフに切り替えられる等の所定の機関停止条件が成立した場合にはエンジン1への燃料供給を停止してエンジン1を停止させる。また、エンジン1が所定の停止条件が成立した場合に運転が停止されるいわゆるアイドルストップ制御の対象である場合、ECU20はその所定の停止条件が成立した場合に機関停止条件が成立したと判断してエンジン1を停止させる。ECU20には、このような制御を行うためエンジン1の運転状態を取得する各種のセンサが接続されている。例えば、エンジン1のクランク角度に対応した信号を出力するクランク角センサ21等が接続されている。この他にもECU20にはアクセル開度に対応した信号を出力するアクセル開度センサ等の種々のセンサが接続されているが、それらの図示は省略した。
【0021】
図2は、ECU20が供給制御弁19の動作を制御すべくエンジン1の運転状態に拘わりなく所定の周期で繰り返し実行するオイル低減制御ルーチンを示している。なお、この制御ルーチンはECU20が実行する他のルーチンと並行に実行される。この制御ルーチンを実行することによりECU20が本発明の制御手段として機能する。この制御ルーチンにおいてECU20は、まずステップS11でエンジン1の運転状態を取得する。エンジン1の運転状態としては、例えばエンジン1の回転数等が取得される。次のステップS12においてECU20は、上述した所定の機関停止条件が成立したか否か判定する。機関停止条件が不成立と判定した場合には。今回の制御ルーチンを終了する。
【0022】
一方、機関停止条件が成立したと判定した場合はステップS13に進み、ECU20はエンジン1を停止させる時期を遅延させることを示す停止遅延フラグをオンの状態に切り替える。この停止遅延フラグは、ECU20が実行する他のルーチンで参照され、このフラグがオンの場合にはエンジン1が運転状態に維持される。続くステップS14においてECU20は供給制御弁19を閉じる。これによりエンジン1の各部へのオイル供給が禁止される。次のステップS15においてECU20は、供給制御弁19を閉弁してから経過した時間を計測するためのタイマTをリセットし、その後タイマTのカウントを開始する。
【0023】
次のステップS16においてECU20は、タイマTの値が予め設定した排出時間Td以上か否か判定する。この排出時間Tdは、オイル供給を停止した状態でエンジン1を運転することによりクランク軸4、コンロッド5、オイルジェット6、及び動弁系8等のオイル供給対象からオイルが十分に排出される時間が設定される。排出時間Tdとしては、例えば各オイル供給対象に保持されるオイルの量がそれぞれ低温始動時のフリクションの増大を抑制することが可能な所定量以下になる時間が設定される。タイマTが排出時間Td未満の場合、ECU20はタイマTが排出時間Td以上になるまでステップS16の処理を繰り返し実行する。
【0024】
一方、タイマTが排出時間Td以上の場合はステップS17に進み、ECU20は停止遅延フラグをオフの状態に切り替える。これによりECU20が実行する他の制御ルーチンによりエンジン1が停止される。次のステップS18においてECU20は供給制御弁19を開ける。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0025】
この第1の形態によれば、エンジン1を停止させるときにエンジン1に設けられている各オイル供給対象へのオイル供給を停止してこれらオイル供給対象に保持されるオイルの量を低減するので、次回始動時におけるエンジン1の各部のフリクションを低減できる。そのため、エンジン1の始動時に消費されるエネルギを低減でき、燃費を改善することができる。また、低温始動時にエンジン1を始動するために掛かる時間を短縮できる。
【0026】
また、この形態では、機関停止条件が成立してから排出時間Tdが経過するまでエンジン1が運転状態に維持されるので、エンジン1の各オイル供給対象から確実にオイルを排出させることができる。また、このようにエンジン1を運転状態に維持することにより、排出されるオイルの量を増加させたりオイル供給対象から速やかにオイルを排出させたりすることができる。なお、図2のステップS13及びS17を実行することにより、ECU20が本発明の停止遅延手段として機能する。
【0027】
(第2の形態)
次に図3及び図4を参照して本発明の第2の形態に係る潤滑装置について説明する。図3は、この形態の潤滑装置が組み込まれた内燃機関のシステム構成図を示している。なお、図3において図1と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。この図に示すように第2の形態では、潤滑装置10がオイルの供給経路に空気を導入可能な空気導入手段としてのエア導入装置30を備えている点が第1の形態と異なる。
【0028】
エア導入装置30は、高圧の空気を貯めるためのエアタンク31と、エアタンクに空気を供給するエア供給装置32とを備えている。エア供給装置32としては、例えば周知のコンプレッサ等が設けられる。エア供給装置32からエアタンク31への空気の供給は、エアタンク31内の圧力が予め設定した上限圧力に達すると停止される。エアタンク31は、エア供給通路33によって吐出通路18と接続されている。この図に示すようにエア供給通路33は、吐出通路18のうち供給制御弁19よりもオイルの流れ方向下流側の位置に接続されている。エア供給通路33には、この通路33を開閉するためのエア制御弁34が設けられている。
【0029】
エア制御弁34の動作もECU20によって制御される。図4は、ECU20がエア制御弁34の動作を制御すべくエンジン1の運転状態に拘わりなく所定の周期で繰り返し実行するエア導入制御ルーチンを示している。この制御ルーチンはECU20が実行する他の制御ルーチンと並行に実行される。なお、図4において図2と同一の処理には同一の符号を付して説明を省略する。また、この形態においてもECU20は図2に示した制御ルーチンを実行する。
【0030】
この制御ルーチンにおいてECU20は、ステップS12まで図2の制御ルーチンと同様に処理を進める。ステップS12において機関停止条件が成立したと判定した場合はステップS21に進み、ECU20はエンジン1が停止したか否か判定する。この判定は例えば、エンジン1の回転数に基づいて行えばよい。エンジン1が運転中と判定した場合、ECU20はエンジン1が停止するまでステップS21の処理を繰り返し実行する。
【0031】
一方、エンジン1が停止したと判定した場合はステップS22に進み、ECU20はエア制御弁34を開ける。これによりオイル供給経路内に空気が導入され、各オイル供給対象からオイルが排出される。続くステップS23においてECU20は、エア制御弁34を開弁してから経過した時間を計測するためのタイマTaをリセットし、その後タイマTaのカウントを開始する。
【0032】
次のステップS24においてECU20は、タイマTaの値が予め設定したエア供給時間Tas以上か否か判定する。このエア供給時間Tasは、エア導入装置30から空気を導入することにより各オイル供給対象からオイルを十分に排出することが可能な時間が設定される。なお、このような時間はオイル供給対象の個数や供給経路の長さに応じて変化するため、エア供給時間はこれらに応じて適宜に設定すればよい。タイマTaがエア供給時間Tas未満の場合、ECU20はタイマTaがエア供給時間Tas以上になるまでステップS24の処理を繰り返し実行する。一方、タイマTaがエア供給時間Tas以上の場合はステップS25に進み。ECU20はエア制御弁34を閉じる。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0033】
この第2の形態では、エンジン1の停止後にオイルの供給経路に空気を導入して各オイル供給対象からオイルを排出するので、オイル供給対象に保持されるオイルの量をさらに低減できる。そのため、次回始動時におけるエンジン1の各部のフリクションをさらに低減できる。これにより燃費をさらに改善できるとともに低温始動時に始動に掛かる時間をさらに短縮できる。
【0034】
(第3の形態)
図5及び図6を参照して本発明の第3の形態に係る潤滑装置について説明する。図5は、この形態の潤滑装置が組み込まれた内燃機関のシステム構成図を示している。なお、図5において図1と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。この図に示すように第3の形態では、オイルポンプ12の吸引側に気体導入通路としての空気導入通路40が設けられている点が上述した形態と異なる。空気導入通路40の一端はオイルストレーナ11とオイルポンプ12とを接続する通路に接続され、他端は開放されている。なお、この他端は空気等の気体を吸引可能な位置に配置されていればよく、例えばシリンダブロック内に配置してもよいしエンジン1の吸気通路内に配置してもよい。空気導入通路40には、この通路40を開閉可能な気体導入弁としての空気導入弁41が設けられている。この空気導入弁41の動作もECU20にて制御される。
【0035】
図6は、この形態の潤滑装置においてECU20が実行するオイル低減制御ルーチンを示している。なお、図6において図2と同一の処理には同一の符号を付して説明を省略する。この形態においてもECU20は、この制御ルーチンをエンジン1の運転状態に拘わりなく所定の周期で繰り返し実行する。また、この制御ルーチンもECU20が実行する他のルーチンと並行に実行される。
【0036】
図6の制御ルーチンにおいてECU20は、ステップS14まで図2の制御ルーチンと同様に処理を進める。次のステップS31においてECU20は空気導入弁41を開ける。これによりオイルポンプ12には空気等のガスが吸入される。その後、ステップS15〜ステップS18まで図2の制御ルーチンと同様に処理が進められる。次のステップS32においてECU20は空気導入弁41を閉じる。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0037】
この形態では、エンジン1を停止させるときにオイルポンプ12に空気等のガスを吸引させるので、オイルポンプ12によるオイルの汲み上げを禁止できる。そのため、供給制御弁19が故障等により開いてしまってもエンジン1に設けられている各オイル供給対象へのオイルの供給を停止できる。これにより、各オイル供給対象に保持されるオイルの量をより確実に低減できるので、次回始動時におけるエンジン1の各部のフリクションをより確実に低減できる。
【0038】
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明の潤滑装置のオイルポンプからオイルが供給される供給対象は上述した形態で示した箇所に限定されない。また、オイルポンプは内燃機関に限定されず、車両に設けられている種々のオイル供給対象にオイルを供給してもよい。上述した各形態ではECUによって供給制御弁等の各弁を制御したが、これらの弁を制御するための制御回路をECUとは別に設けてもよい。
【0039】
上述した各形態は適宜に組み合わせて実施してよい。例えば、第2の形態と第3の形態とを組み合わせてもよい。
【0040】
上述した各形態では、内燃機関を停止させる際に供給制御弁を開弁させたが、この供給制御弁は内燃機関の停止時に開弁させなくてもよい。例えば、内燃機関の始動時に開弁させてもよい。また、上述した各形態ではこの供給制御弁を閉弁している間は内燃機関の停止を遅延させたが、内燃機関の停止は遅延させなくてもよい。機関停止条件が成立してから内燃機関が停止するまでの間は内燃機関の各部は運転状態と同様に動作している。また、周知のように内燃機関のクランク軸等は内燃機関への燃料の供給が停止されても慣性によって数回程度回転する。そのため、これらを利用して各オイル供給対象からオイルを排出させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 内燃機関
4 クランク軸(供給対象)
5 コンロッド(供給対象)
6 オイルジェット(供給対象)
8 動弁系(供給対象)
10 潤滑装置
12 オイルポンプ
19 供給制御弁
20 エンジンコントロールユニット(制御手段、停止遅延手段)
30 エア導入装置(空気導入手段)
40 空気導入通路(気体導入通路)
41 空気導入弁(気体導入弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプにてオイルを汲み上げ、前記オイルポンプから吐出されるオイルを供給経路を介して内燃機関に設けられている供給対象に供給する潤滑装置において、
前記供給経路に設けられ、前記オイルポンプから前記供給対象へのオイルの供給を許容する開位置と前記供給対象へのオイルの供給を阻止する閉位置とに切り替え可能な供給制御弁と、前記内燃機関を停止させるべき所定の機関停止条件が成立した場合に前記供給制御弁を前記閉位置に切り替える制御手段と、を備えている潤滑装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記供給制御弁を前記閉位置に切り替えてから所定の排出時間が経過するまでの間前記内燃機関が運転状態に維持されるように前記内燃機関の停止を遅延する停止遅延手段を備えている請求項1に記載の潤滑装置。
【請求項3】
前記排出時間として、前記供給対象に保持されるオイルの量が所定量以下になる時間が設定されている請求項2に記載の潤滑装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記排出時間が経過した後に前記供給制御弁を前記開位置に切り替える請求項2又は3に記載の潤滑装置。
【請求項5】
前記供給経路内に空気を導入可能な空気導入手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記内燃機関の停止後に前記供給経路内に空気が導入されるように前記空気導入手段の動作を制御する請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑装置。
【請求項6】
前記オイルポンプの吸引側に気体を導入可能な気体導入通路と、前記気体導入通路を開閉する気体導入弁と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記機関停止条件が成立した場合に前記気体導入弁を開ける請求項1〜5のいずれか一項に記載の潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−36794(P2012−36794A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176539(P2010−176539)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】