説明

澱粉系塗料組成物

【課題】天然物由来で生分解性を有した澱粉を利用し、一液ラッカー型塗料として貯蔵安定性に優れ、しかも仕上り性、硬度、付着性、耐薬品性、耐アルカリ性に優れた塗膜を形成できる澱粉系塗料組成物を提供する。
【解決手段】澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によりビニルポリマーを結合させた樹脂(A)またはこの樹脂(A)にポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応して得られたイソシアネート基を有する生成物(B)を反応させて得た樹脂(C)をバインダーとして用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉系塗料組成物に関する。本発明は、特に、天然物由来で生分解性を有する澱粉を利用し、一液ラッカー型塗料として貯蔵安定性に優れ、しかも仕上り性、硬度、付着性、耐薬品性、耐アルカリ性に優れた塗膜を形成できる澱粉系塗料組成物、及びこの塗料を塗装した塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物処理性の向上やCO放出量の削減などの、地球環境に対する影響低減の視点から、環境負荷の少ない天然物由来で生分解性を有する原料を積極的に利用することが求められている。
【0003】
そのような天然物由来の代表的な材料として、多糖類である澱粉、あるいはアセチル化澱粉などの変性澱粉は、従来、食品工業、製紙工業で用いられてきたが、近年は生分解性プラスチックの原料としてそれらの澱粉を用いて、食品容器、包装材、緩衝材シート、農業用フィルム、使い捨てオムツなどの幅広い分野で製品化されてきている。
【0004】
澱粉を工業製品原料として利用するために、澱粉の改質とともに、化工澱粉に関する様々な改良が積み重ねられてきた。澱粉の基本構造はα−D−グルコースが1,4−結合により直鎖状に連結したアミロースであり、構造中に水酸基を持つことを利用したエステル化、エーテル化等の変性が1960年代になされた。
【0005】
また、澱粉または変性澱粉の水酸基の少なくとも一部がイソシアネート化合物との反応によってウレタン化されたウレタン化澱粉が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、澱粉または変性澱粉、糖みつ、多糖類系農業廃棄物および植物油の水酸基含有変性体の中から選ばれる少なくとも1種の植物成分の有機溶媒溶液にポリイソシアネートを反応させることによる生分解性ポリウレタンの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
また、これに関連してポリイソシアネートにより水酸基含有アクリル樹脂と澱粉を結合させることも提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
これはいわば澱粉樹脂とアクリル樹脂をポリイソシアネートを介して間接的にグラフトさせるものであるが、澱粉または変性澱粉に不飽和モノマーをラジカルグラフト重合させてグラフト澱粉を直接製造する方法は幾つかの文献に開示されている(非特許文献1、特許文献4〜9参照)。
【0009】
その他、澱粉と他の生分解性樹脂を組み合わせた例として、澱粉または変性澱粉とセルロース誘導体を組み合わせたポリマーブレンドを成型材料として用いる発明が開示されている(特許文献10、11参照)。
【0010】
これらの先行特許からも明らかなように、種々のポリマーを組み合わせ、結合させ、もしくはグラフトさせた澱粉系樹脂自体は公知の技術である。しかし、これらの技術では何れも澱粉系樹脂の用途として構造材料、射出成型材料、シート等が想定されており、塗料としての用途は開示されていない。
【0011】
澱粉系樹脂を用いた塗料に関しては、澱粉系樹脂と澱粉分子中に含まれる少なくとも1個の水酸基と相補的に反応する官能基を有する硬化剤との混合物からなる硬化剤澱粉組成物を反応硬化型塗料として用いることが開示されている(特許文献12参照)。
【0012】
また、(A)変性澱粉および(B)重合性不飽和モノマーの共重合体を構成成分として含有する平均粒子径が1000nm以下の分散樹脂水分散体、およびそれを含む水性塗料組成物を反応硬化型塗料として用いることが開示されている(特許文献13参照)。
【0013】
しかし、これらの従来の澱粉系塗料技術は反応硬化型塗料に関するものであり、貯蔵安定性に優れ、かつ、仕上り性、硬度、付着性、耐衝撃性、耐溶剤性、耐アルカリ性および耐薬品性に優れた塗膜を形成できる1液ラッカー型の澱粉系塗料はこれまで存在しなかった。
【0014】
【非特許文献1】J.C. Arthur, Jr.; Advan. Macromol. Chem.; "Graft Polymerization onto Polysaccharides"; 2: 1-87(1970).
【特許文献1】特開平5−43649号公報
【特許文献2】特開平5−186556号公報
【特許文献3】特開平6−65349号公報
【特許文献4】米国特許第3425971号明細書
【特許文献5】米国特許第3981100号明細書
【特許文献6】特開昭54−120698号公報
【特許文献7】特開昭55−90518号公報
【特許文献8】特開昭56−167746号公報
【特許文献9】特開平8−239402号公報
【特許文献10】特開平6−207047号公報
【特許文献11】特開平8−231762号公報
【特許文献12】特開2004−224887号公報
【特許文献13】特開2006−52338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、天然物由来で生分解性を有した澱粉を利用し、一液ラッカー型塗料として貯蔵安定性に優れ、しかも仕上り性、硬度、付着性、耐薬品性、耐アルカリ性に優れた塗膜を形成できる澱粉系塗料組成物、およびこの塗料を塗装した塗装物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解消するために鋭意検討した結果、特定組成の澱粉系樹脂組成物を使用することによりかかる課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、例えば、次の事項からなる。
【0018】
1.澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によりビニルポリマーを結合させた樹脂(A)をバインダーとして用いることを特徴とする澱粉系塗料組成物。
【0019】
2.澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によりビニルポリマーを結合させた樹脂(A)に、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させてなるイソシアネート基を有する生成物(B)を付加反応させてなる樹脂(C)をバインダーとして用いることを特徴とする澱粉系塗料組成物。
【0020】
3.さらに生分解性樹脂を含む、上記1または2に記載の澱粉系塗料組成物。
【0021】
4.さらにワックスを含む、上記1〜3のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
【0022】
5.上記1〜4のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物が塗装された物品。
【発明の効果】
【0023】
本発明の澱粉系塗料組成物は、貯蔵安定性に優れ、さらに仕上り性、硬度、付着性、耐アルカリ性に優れた塗膜を形成できる。この澱粉系塗料組成物は、1液型であり、そのため作業性(ポットライフを気にすることがない)に優れ、天然物由来で生分解性を有する原材料を用いていることから製品のライフサイクルに関わる総CO排出量が少なく、環境汚染を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の好ましい形態について詳しく説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0025】
澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によりビニルポリマーを結合させた樹脂(A)について
澱粉および/または変性澱粉
本発明に有用な澱粉としては、例えば、コーンスターチ、ハイアミローススターチ、小麦澱粉、米澱粉などの地上茎未変性澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などの地下茎未変性澱粉、およびそれらの澱粉のエステル化、エーテル化、酸化、酸処理化、デキストリン化された澱粉置換誘導体などが挙げられる。これらのものは、単独でまたは複数併用して使用できる。
【0026】
本発明に有用な変性澱粉には、澱粉または澱粉分解物に、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などをエステル結合および/またはエーテル結合を介して結合させてなる変性澱粉が包含される。ここで、澱粉分解物としては、澱粉に酵素、酸または酸化剤で低分子量化処理を施したものが挙げられる。
【0027】
澱粉または澱粉分解物としては、数平均分子量が1,000〜2,000,000、特に3,000〜500,000、とりわけ5,000〜200,000の範囲内にあるものが、造膜性などの点から好ましい。
【0028】
なお、本明細書においては、数平均分子量は、JIS K0124-83に準じて、分離カラムとしてTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー株式会社製)を用い、40℃で流速1.0ml/分の条件下に、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラムとポリスチレン換算の検量線から計算により求めたものをいう。
【0029】
澱粉の変性方法としては、例えば、エステル化変性が挙げられ、好ましい変性基としては炭素数2〜18のアシル基が挙げられる。変性は炭素数2〜18の有機酸を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることにより行うことができる。
【0030】
変性澱粉の変性程度は、置換度で0.5〜2.8の範囲内が好ましく、特に1.0〜2.5の範囲内が好ましい。置換度が0.5未満では、未変性澱粉と大差なく、後述のラジカル重合性不飽和モノマーとの相溶性が不足気味となり、形成塗膜の仕上り性等が不十分になることがある。他方、置換度が2.8を超えると、生分解性が低下することがある。
【0031】
また、変性澱粉は、澱粉の分解温度(約350℃)以下にガラス転移点を有し、熱可塑性を有し、かつ、生分解性も有しているように、変性の程度が調節されていることが望ましく、したがって変性に用いられた置換基の炭素数が多い場合には低変性レベル、例えば、置換基が炭素数18のステアリル基である場合にはエステル置換度が0.1〜1.8の範囲内となるようにすることが好ましく、また置換基の炭素数が少ない場合には高変性レベル、例えば、置換基が炭素数2のアセチル基である場合にはエステル置換度が1.5〜2.8の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0032】
なお、置換度は、澱粉を構成する単糖単位1個あたりの変性剤により置換された水酸基の平均個数であり、例えば、置換度3は澱粉を構成する単糖単位1個中に存在する3個の水酸基が全て変性剤により置換されていることを意味し、置換度1は澱粉を構成する単糖単位1個中に存在する3個の水酸基のうちの1個だけが変性剤により置換されていることを意味する。
【0033】
変性澱粉の例としては、50%以上のアミロース含量をもつ無水の澱粉を非プロトン性溶媒中でエステル化試薬と混合して澱粉とエステル化試薬の間で反応させることにより得られる疎水性の生物分解性澱粉エステル生成物(特表平8−502552号公報参照)を挙げることができる。
【0034】
さらには、同一澱粉分子の反応性水酸基の水素を、炭素数2〜4の短鎖アシル基および炭素数6〜18の長鎖アシル基で置換した短鎖−長鎖混合澱粉エステル(特開2000−159801号公報参照)、同一澱粉分子の反応性水酸基を、炭素数2〜4の短鎖炭化水素含有基および炭素数6〜24の長鎖炭化水素含有基で置換した短鎖−長鎖混合澱粉置換誘導体(特開2000−159802号公報参照)等が挙げられる。これらの変性澱粉は、澱粉を母体としているため、生分解性であり、特に溶剤への溶解性や相溶性に優れる。
【0035】
ビニルポリマーのグラフト重合
樹脂(A)は上述の澱粉および/または変性澱粉にビニルポリマーをグラフト重合することにより製造される。例えば、米国特許第3425971号明細書、同第3981100号明細書や特開昭56−167746号公報には水分散もしくはスラリー状の澱粉または変性澱粉にセリウム塩をラジカル重合開始触媒として用いるビニルモノマーのグラフト重合が開示されている。また、特開昭54−120698号広報および同昭55−90518号公報には不飽和基を含有する化合物であるマレイン酸で変性した澱粉に対するスチレンおよびアクリルモノマーのグラフト重合が開示されている。特開平8−239402号公報には有機溶剤中での(ビニル)エステル化澱粉とビニルモノマーのグラフト重合が開示されている。また、特開昭55−133472号公報、同昭56−157463号公報にはラジカル開始剤を用いての溶液中でのセルロースアセテートブチレートへのビニル系モノマーのグラフト重合が開示されている。ニトロセルロースアセテートを澱粉および/または変性澱粉に置き換えれば、澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によってビニルポリマーを結合させることは容易である。
【0036】
以上、ビニルポリマーのグラフト重合に関して幾つかの公知例を述べたが、目的とする樹脂(A)はこれらの公知の方法によって製造することができる。あるいは、これら以外の公知の方法によっても製造することができる。
【0037】
澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によって結合させるビニルポリマーは、ラジカル重合性不飽和モノマーまたはその混合物を、澱粉および/または変性澱粉、有機溶剤および重合開始剤の存在下にラジカル重合反応させて得られるものである。
【0038】
ここで、澱粉および/または変性澱粉とビニルポリマーの比率には特に限定は無いが、ラジカル重合性不飽和モノマーとしては性質の異なったモノマーの混合物を用いることが好ましく、仕上り性、付着性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐衝撃性および耐屈曲性に優れた塗膜を形成する観点からは、かかる混合物の質量合計に対して、芳香族モノマー1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%、水酸基含有モノマー1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%およびその他のモノマー0〜98質量%、好ましくは47〜95質量%からなるラジカル重合性不飽和モノマーの混合物(c)であることが望ましい。
【0039】
上記の芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0040】
水酸基含有モノマーとしては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、ダイセル化学(株)製の商品名「プラクセルF」シリーズ(ラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル)などのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー等のアクリル酸またはメタクリル酸のC〜Cヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。
【0041】
それらのなかでも、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルから選ばれる少なくとも1種を含有することが、澱粉および/または変性澱粉やイソシアネート基を有する生成物(B)との相溶性を向上させて、塗料安定性を確保するために好ましい。
【0042】
その他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー;例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−、i−またはt−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−、i−またはt−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステルまたはシクロアルキルエステル;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−置換アクリルアミド系又はN−置換メタクリルアミド系モノマーが挙げられ、また、重合性不飽和モノマーは、少なくともその一部として、脂肪酸変性重合性不飽和モノマーを含むこともできる。脂肪酸変性重合性不飽和モノマーとしては、脂肪酸由来の炭化水素鎖の末端に重合性不飽和基を有する重合性不飽和モノマーが包含される。脂肪酸変性重合性不飽和モノマーとしては、例えば、脂肪酸をエポキシ基含有重合性不飽和モノマーまたは水酸基含有重合性不飽和モノマーと反応させることにより得られるものを挙げることができる。
【0043】
そして、脂肪酸としては乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸および不乾性油脂肪酸が挙げられ、乾性油脂肪酸および半乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられ、また不乾性油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。これらは、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。さらに、これらの脂肪酸は、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等と併用することもできる。
【0044】
脂肪酸変性重合性不飽和モノマーを製造するために上記脂肪酸と反応させうるモノマーとしては、エポキシ基を含有する重合性不飽和モノマーが好適であり、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0045】
ビニルモノマ−のグラフト重合は、例えば、上記したラジカル重合性不飽和モノマーの混合物と重合開始剤を澱粉および/または変性澱粉の有機溶剤溶液中に滴下し、ラジカル重合反応させることにより容易に行うことができる。ラジカル重合性不飽和モノマーの混合物と重合開始剤の混合物を均一に滴下して、例えば、60〜200℃、好ましくは80〜180℃の反応温度にて約30分間〜6時間、好ましくは1〜5時間反応させることによって得ることができる。
【0046】
ここで、重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤を用いることができるが、澱粉および/または変性澱粉の有機溶剤溶液中にモノマー混合物および重合開始剤を滴下し、グラフト重合させる方法を採用する時は過酸化物系の開始剤を用いることが好ましい。そのような過酸化物系の開始剤の例としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシデカノエート等のパーオキシエステル類;1,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;アセト酢酸エチルパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
【0047】
上記の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
イソシアネート基を有する生成物(B)について
イソシアネート基を有する生成物(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得ることができる。
【0049】
ポリイソシアネート化合物(b1)は、人体に対して安全性の高いものであるのが望ましく、例えば、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナト)メチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3−(2’−イソシアナトシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。これらのなかでも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが、硬度、付着性、耐衝撃性の面から好ましい。
【0050】
ポリイソシアネート化合物(b1)の市販品の例としては、「バーノックD−750、D−800、DN−950、DN−970もしくは15−455」(以上商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、「ディスモジュールL、N、HL、もしくはN3390」(商品名、西ドイツ国バイエル社製品)、「タケネートD−102、タケネートD−170HN、タケネートD−202、タケネートD−110もしくはタケネートD−123N」(商品名、武田薬品工業株式会社製)、「コロネートEH、L、HLもしくは203」(商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)又は「デュラネート24A−90CX」(商品名、旭化成工業株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
多価アルコール(b2)としては、具体的には、アルキレンジオール(b21)、3価以上のアルキレントリオール(b22)、エーテルポリオール(b23)およびポリエステルポリオール(b24)およびその他のポリオールを挙げることができる。
【0052】
アルキレンジオール(b21)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコール、メチルぺンタンジオール、水素化ビスフェノールAなどのジオール類が挙げられる。
【0053】
3価以上のアルキレンポリオール(b22)としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトール、α−メチルグリコシド、ソルビトール等の4価以上のアルキレンポリオール類が挙げられる。
【0054】
エーテルポリオール(b23)としては、例えば、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、ジプロピレングリコール、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなど)の開環付加反応によって製造されるポリチエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテル、シュークロース、ジペンタエリスリトールなどのヘキソール類等が挙げられる。
【0055】
ポリエステルポリオール(b24)としては、例えば、有機ジカルボン酸またはその無水物と有機ジオール成分との、有機ジオール過剰の条件下での重縮合反応によって得られるものが挙げられる。具体的には、アジピン酸とエチレングリコールの縮合物、アジピン酸とネオペンチルグリコールの縮合物であるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0056】
ここで使用される有機ジカルボン酸としては、炭素数が2〜44、特に4〜36の脂肪族系、脂環式または芳香族系ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸などが挙げられる。また、これらのジカルボン酸に加えて、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の無水物や不飽和脂肪酸の付加物などを少量併用することができる。また、有機ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコールや、ジメチロールシクロヘキサン、ブチルエチルペンチルグリコール、メチルぺンタンジオールなどが挙げられ、これらは場合によりトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上のポリオールの少量と併用されてもよい。
以上に述べた多価アルコール(b2)のうち、特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、ビスフェノールAエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテルよりなる群から選ばれるものが、耐衝撃性および耐屈曲性の観点からも好適である。
【0057】
上記ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)の反応は、有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等)中で、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)の反応割合として、ポリイソシアネート化合物(b1)に基づくNCO基のモル数に対する、多価アルコール(b2)に基づくOH基のモル数が、NCO基/OH基=1/0.4〜1/0.95、好ましくは1/0.5〜 1/0.9で、フリーのイソシアネートを残存させるように、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を混合し、適宜に、例えば、モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の触媒を加え、攪拌下に、約50℃〜約200℃、好ましくは60〜150℃程度の温度で、30分間〜10時間、好ましくは1〜5時間程度反応させることによって行うことができ、これによってイソシアネート基を有する生成物(B)の溶液を製造することができる。得られたイソシアネート基を有する生成物(B)のNCO価は、5〜250mgNCO/gの範囲、特に7〜200mgNCO/gの範囲であるのが好ましい。
【0058】
澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によりビニルポリマーを結合させた樹脂(A)にイソシアネート基を有する生成物(B)を反応させてなる樹脂(C)について
樹脂(C)は、澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によりビニルポリマーを結合させた樹脂(A)にポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応して得られたイソシアネート基を有する生成物(B)を付加反応させてなる。ここで、樹脂(A)とイソシアネート基を有する生成物(B)とは、要求される塗膜性能に応じて適宜調整することができる。
【0059】
本発明においては、樹脂(A)とイソシアネート基を有する生成物(B)の合計固形分質量を基準にして、樹脂(A)を50〜99質量%、好ましくは60〜98質量%、イソシアネート基を有する生成物(B)を1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%の範囲で用いて、有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等)中で混合し、適宜にモノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の触媒を加え、攪拌下に約50℃〜約200℃、好ましくは60〜150℃の温度で、30分間〜10時間、好ましくは1〜5時間付加反応させることによって、樹脂(C)を得ることができる。得られた樹脂(C)は、3,000〜2,000,000の範囲、特に5,000〜100,000の範囲の数平均分子量を有するのが、造膜性などの観点から好ましい。
【0060】
なお、上記のようにして製造される樹脂(C)は、有機溶剤系溶媒に溶解もしくは分散されてなる澱粉系塗料用バインダーとして好適に使用できる。
【0061】
生分解性樹脂について
本発明の澱粉系塗料組成物には、他の生分解性樹脂が配合されてもよい。市場に知られている澱粉系以外の生分解性樹脂の例としては、植物性繊維(セルロース樹脂)、ポリ乳酸に代表されるポリヒドロキシカルボン酸、ポリカプロラクタム、変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。また、ポリカプロラクトンに代表される脂肪族ポリエステルも生分解性がある。ここに挙げたもの以外にも、生分解性を持つ多くの樹脂が知られている。本発明においては、溶剤に可溶性である生分解性樹脂であれば用いることができるが、なかでもセルロース由来の樹脂が好適である。
【0062】
従来、塗料工業において、ニトロセルロースおよび変性セルロースであるセルロースアセテートブチレートはラッカー用のバインダーまたは改質用添加樹脂として広く利用されてきた。本発明においても、ニトロセルロースおよび/またはセルロースアセテートブチレートを少量添加することにより、一液型ラッカー塗料として用いた時の塗膜の乾燥性が良くなり、表面硬度が高くなる。また、ポリヒドロキシカルボン酸、特にポリ乳酸も表面硬度を高める効果が認められるが、塗膜が脆くなる傾向があり、セルロース由来の樹脂のほうが塗膜性能のバランスがよく、使い易い。本発明に好適に使用することのできるニトロセルロースとしては、工業用硝化綿BNC−HIG−2(商品名、仏ベルジュラックNC社製)、工業用硝化綿RS1−4(商品名、韓国CNC社製)、スワンセルHM1−4(商品名、株式会社協鮮洋行製)、セルノバBTH1−4(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)等が挙げられ、セルロースアセテートブチレートとしては、CAB381−0.1、CAB381−0.5、CAB381−2、CAB531−1、CAB551−0.01、CAB551−0.2(全て商品名、イーストマンケミカルプロダクツ社製)等が挙げられる。
【0063】
これらの生分解性樹脂の配合量は、主バインダーである澱粉系樹脂と生分解性樹脂の合計量を100としたときに、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは35質量部以下である。配合量が50質量部を超えると塗料の造膜性が不足し、仕上がり性や耐薬品性が実用域から外れることがある。
【0064】
澱粉系塗料について
本発明の澱粉系塗料組成物は、水性塗料、有機溶剤型塗料などの従来から公知の液状塗料系で用いることができる。これらのなかでも、有機溶剤型塗料として、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系有機溶剤を単独でもしくは2種以上組合せて希釈溶剤として使用したものは、ラッカーとして塗装のし易さ、乾燥の早さにすぐれた非常に使い易い塗料とすることができる。
【0065】
澱粉系塗料には、着色成分として必要に応じて天然色素、有機合成色素または顔料、無機顔料および光輝材を使用することができる。
【0066】
天然色素としては、具体的に、カロチノイド系では、カロチン、カロチナール、カプサンチン、リコピン、ビキシン、クロシン、カンタキサンチン、アナトーなど、フラボノイド系では、シソニン、ラファニン、エノシアニンなどのようなアントシアニジン類、サフロールイエロー、ベニバナなどのようなカルコン類、ルチン、クエルセチンなどのようなフラボノール類、カカオ色素のようなフラボン類など、フラビン系では、リボフラビンなど、キノン系では、ラッカイン酸、カルミン酸(コチニール)、ケルメス酸、アリザリンなどのようなアントラキノン類、シコニン、アルカニン、エキノクロームなどのようなナフトキノン類など、ポリフィリン系では、クロロフィル、血色素など、ジケトン系では、クルクミン(ターメリック)など、ベタシアニジン系では、ベタニンなどが挙げられる。
【0067】
有機合成色素または顔料としては、厚生省令第30号で定められているものが挙げられる。例えば、赤色202号(リソールルビンBCA)、赤色203号(レーキレッドC)、赤色204号(レーキレッドCBA)、赤色205号(リソールレッド)、赤色206号(リソールレッドCA)、赤色207号(リソールレッドBA)、赤色208号(リソールレッドSR)、赤色219号(ブリリアントレーキレッドR)、赤色220号(ディープマルーン)、赤色221号(トルイジンレッド)、赤色228号(パーマトンレッド)、だいだい色203号(パーマネントオレンジ)、だいだい色204号(ベンチジンオレンジG)、黄色205(ベンチジンエローG)、赤色404号(ブリリアントファストスカーレット)、赤色405号(パーマネントレッドF5R)、だいだい色401号(ハンザオレンジ)、黄色401号(ハンザエロー)、青色404号(フタロシアニンブルー)などが挙げられる。
【0068】
無機顔料としては、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸マグネシウム、重質炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、カラミンなどが挙げられる。
【0069】
光輝材とは塗膜にキラキラとした光輝感または光干渉性を付与するりん片状顔料であり、例としてはりん片状のアルミニウム、蒸着アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化オキシビスマス、雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、雲母状酸化鉄、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆シリカ、酸化鉄被覆アルミナ、ガラスフレーク、着色ガラスフレーク、蒸着ガラスフレーク、ホログラムフィルムなどが挙げられる。これらの光輝材の大きさは長手方向が1〜30μm、厚さが0.001〜1μmであるのが好ましい。
【0070】
着色成分の配合割合は、使用される用途や要求される性能に応じて適宜決定すればよいが、通常、澱粉系樹脂組成物100質量部当たり、着色成分の合計量として0.001〜400質量部、好ましくは0.01〜200質量部の範囲である。
【0071】
さらに澱粉系塗料には、必要に応じて、従来から公知の表面調整剤(ワックス、ハジキ防止剤、消泡剤など)、可塑剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、流動性調整剤、垂れ止め剤、つや消し剤、艶出し剤、防腐剤等を使用することができる。
【0072】
なかでもワックスの添加は、仕上がり性、耐薬品性などの向上に効果が大きいことがある。本発明では、塗料に従来から用いられているワックスを好適に使用することできる。そのようなワックスとして、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィンワックス、動物系ワックス、植物系ワックスなどを挙げることができるが、なかでもポリエチレン系ワックス、シリコン系ワックスおよびフッ素系ワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスが好ましい。
【0073】
これらのワックスは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができ、その添加量は、バインダーである澱粉系樹脂と所望により配合されていることのある生分解性樹脂との合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜3質量部の範囲内であるのが好ましい。
【0074】
本発明の塗装物品は、基材表面に本発明の塗料を塗装して得られる。本発明の澱粉系塗料を塗装する基材としては、特に制限なく、例えば、金属、プラスチック、ガラス、陶器、コンクリート、紙、繊維、木材、植物、岩、砂などが挙げられる。
【0075】
本発明の澱粉系塗料は、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、浸漬塗装、スプレー塗装(非静電塗装、静電塗装など)、カーテンフロー塗装、スクリーン印刷、凸版印刷などにより、塗装または印刷するのに用いることができる。
【0076】
塗装後の塗膜を100℃未満で1〜40分間乾燥した後、常温(50℃以下)で10時間以上放置し、あるいは常温(50℃以下)で1〜7日間放置することにより、塗膜中の溶剤(および/または水)が揮散して連続塗膜が形成される。また、必要に応じて、100〜200℃で30秒間〜120分間、好ましくは100〜120℃で2〜30分間の乾燥を行うこともできる。
【0077】
塗膜の膜厚としては、特に制限されるものではないが、乾燥膜厚として、一般的には平均約1〜200μm、特に2〜100μm、とりわけ5〜50μmが好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特にことわらない限り、「質量部」および「質量%」である。
【0079】
変性澱粉の製造
ハイアミロースコーンスターチ(日本コーンスターチ社製、水酸基価500mgKOH/g)25部をジメチルスルホキシド(DMSO)200部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に重炭酸ナトリウム20部を触媒として添加し、90℃に維持してラウリン酸ビニル17部を添加し、その温度で1時間反応させた。次いで、さらに酢酸ビニル37部を添加し、80℃で1時間反応させた。その後、反応液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して、粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、変性澱粉1を調製した。
【0080】
製造例1:ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂1溶液
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管および滴下装置を備えた1Lの反応容器に、酢酸ブチル466部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃に保持して変性澱粉1を160部反応容器中に仕込み、その後100℃に昇温して、仕込んだ変性澱粉1が完全に溶解するまで攪拌した。
【0081】
次いで、下記組成の「混合物1」溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、100℃で1時間熟成して、樹脂固形分30%の変性澱粉樹脂1の溶液を得た。
【0082】
「混合物1」
スチレン 32部
メタクリル酸メチル 4部
アクリル酸n−ブチル 4部
パーカドックスCH−50L(注1) 4部
注1:重合開始剤、ジアシルパーオキサイド50%含有:化薬アクゾ株式会社製
製造例2:ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂2溶液
「混合物1」溶液の代わりに下記組成の「混合物2」溶液を用いた以外は製造例1の操作を繰り返して、樹脂固形分30%の変性澱粉樹脂2の溶液を得た。
【0083】
「混合物2」
スチレン 28部
メタクリル酸メチル 4部
アクリル酸n−ブチル 4部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 4部
パーカドックスCH−50L 4部
製造例3:ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂3溶液
「混合物1」溶液の代わりに下記組成の「混合物3」溶液を用いた以外は製造例1の操作を繰り返して、樹脂固形分30%の変性澱粉樹脂3の溶液を得た。
【0084】
「混合物3」
スチレン 16部
メタクリル酸メチル 16部
アクリル酸n−ブチル 4部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 4部
パーカドックスCH−50L 4部
製造例4.ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂4溶液
変性澱粉1の仕込み量を180部とし、「混合物1」溶液の代わりに下記組成の「混合物4」溶液を用いた以外は製造例1の操作を繰り返して、樹脂固形分30%の変性澱粉樹脂4の溶液を得た。
【0085】
「混合物4」
スチレン 14部
メタクリル酸メチル 2部
アクリル酸n−ブチル 2部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 2部
パーカドックスCH−50L 2部
製造例5.ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂5溶液
「混合物1」溶液の代わりに下記組成の「混合物5」溶液を用いた以外は製造例1の操作を繰り返して、樹脂固形分30%の変性澱粉樹脂5の溶液を得た。
【0086】
「混合物5」
メタクリル酸メチル 32部
アクリル酸n−ブチル 4部
パーカドックスCH−50L 4部
製造例6:変性澱粉とアクリル樹脂の混合溶液
アクリル樹脂溶液1の製造
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管および滴下装置を備えた1Lの反応容器に、トルエン333部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合して100℃まで昇温した。次いで、下記組成の「混合物2b」溶液を4時間かけて滴下し、滴下終了後、100℃で1時間熟成して、樹脂固形分60%のアクリル樹脂溶液1を得た。このアクリル樹脂の水酸基価は、43mgKOH/gであった。
【0087】
「混合物2b」(注2)
スチレン 350部
メタクリル酸メチル 50部
アクリル酸n−ブチル 50部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 50部
2,2’−アゾビス2−メチルブチロニトリル 25部
注2:製造例2で用いた混合物2とモノマー組成は同じであるが、開始剤の種類および量が異なる。
【0088】
変性澱粉とアクリル樹脂の混合溶液
温度計、サーモスタット、攪拌器および冷却管を備えた1Lの反応容器に、上記アクリル樹脂溶液1を66部、酢酸ブチル440部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃に保持して変性澱粉1を160部反応容器中に仕込み、その後100℃に昇温して、仕込んだ変性澱粉1が完全に溶解するまで攪拌して、樹脂固形分30%のアクリル樹脂1と変性澱粉1との混合溶液を得た。
【0089】
製造例7:ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂2のポリウレタン変性物樹脂溶液1
ポリウレタン樹脂溶液1の製造
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管および滴下装置を備えた1Lの反応容器にトルエン125部、ヘキサメチレンジイソシアネート292部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌混合して80℃まで昇温した。次いで、トリエチレングリコール208部を3時間かけて滴下し、滴下終了後、80℃で30分間熟成して、樹脂固形分80%のポリウレタン樹脂溶液1を得た。このポリウレタン樹脂のNCO価は、58mgNCO/gであった。
【0090】
ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂2のポリウレタン変性
温度計、サーモスタット、攪拌器および冷却管を備えた1Lの反応容器に、酢酸ブチル41部、製造例2で得た樹脂固形分30%の変性澱粉樹脂2溶液を600部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら100℃まで昇温した。次に、上記で得た樹脂固形分80%のポリウレタン樹脂溶液1を25部仕込み、均一になるまで攪拌した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.04部を添加し、窒素雰囲気で攪拌しながら100℃で6時間反応させて、固形分30%のポリマーを結合させた変性澱粉樹脂2のポリウレタン変性物樹脂溶液を得た。このポリウレタン変性物樹脂のNCO価は、1.0mgNCO/g以下であった。
【0091】
製造例8:ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂5のポリウレタン変性物樹脂溶液2
ポリウレタン樹脂溶液2の製造
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管および滴下装置を備えた1Lの反応容器にトルエン125部、イソホロンジイソシアネート378部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌混合して80℃まで昇温した。次いで、1,4−ブタンジオール122部を3時間かけて滴下し、滴下終了後、80℃で30分間熟成して、樹脂固形分80%のポリウレタン樹脂溶液2を得た。このポリウレタン樹脂のNCO価は、57mgNCO/gであった。
【0092】
ポリマーを結合させた変性澱粉樹脂5のポリウレタン変性
温度計、サーモスタット、攪拌器および冷却管を備えた1Lの反応容器に、酢酸ブチル41部、製造例5で得た樹脂固形分30%の変性澱粉樹脂5溶液を600部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら100℃まで昇温した。次に、上記で得た樹脂固形分80%のポリウレタン樹脂溶液2を25部仕込み、均一になるまで攪拌した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.04部を添加し、窒素雰囲気に攪拌しながら100℃で6時間反応させて、固形分30%のポリマーを結合させた変性澱粉樹脂5のポリウレタン変性物樹脂溶液2を得た。このポリウレタン変性物樹脂のNCO価は、1.0mgNCO/g以下であった。
【0093】
製造例9.変性澱粉樹脂とアクリル樹脂の混合物のポリウレタン変性物樹脂溶液
アクリル樹脂溶液2の製造
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管および滴下装置を備えた1Lの反応容器に、トルエン333部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌混合して100℃まで昇温した。次いで、下記組成の「混合物1b」溶液を4時間かけて滴下し、滴下終了後、100℃で1時間熟成して、樹脂固形分60%のアクリル樹脂溶液2を得た。このアクリル樹脂の水酸基価は、0mgKOH/gであった。
【0094】
「混合物1b」(注3)
スチレン 320部
メタクリル酸メチル 40部
アクリル酸n−ブチル 40部
2,2’−アゾビス2−メチルブチロニトリル 20部
注3:製造例1で用いた混合物1とモノマー組成は同じであるが、開始剤の種類および量が異なる。
【0095】
変性澱粉とアクリル樹脂の混合溶液のウレタン変性
温度計、サーモスタット、攪拌器および冷却管を備えた1Lの反応容器に、アクリル樹脂溶液2を66部、酢酸ブチル435部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃に保持して変性澱粉1を140部反応容器中に仕込み、その後100℃に昇温して、仕込んだ変性澱粉1が完全に溶解するまで攪拌した。次に、この混合溶液に80%ポリウレタン樹脂溶液2を25部仕込み、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.04部を添加し、窒素雰囲気に攪拌しながら100℃にて6時間反応させて、固形分30%のアクリル樹脂と変性澱粉のポリウレタン変性樹脂混合溶液を得た。この樹脂混合溶液のNCO価は、1.0mgNCO/g以下であった。
【0096】
一液型澱粉系塗料組成物の製造
実施例1
製造例1で得られた変性澱粉樹脂1溶液を333部(固形分100部)、ハイフラットF−713(注4)15部(固形分2部)、アルペーストFX−440(注5)42部(固形分23部)、ハイコンク黒(注6)3部、サイシリア446(注7)1.5部およびメチルエチルケトン131部を加え、攪拌機にて十分に混合し、固形分25%の澱粉系塗料組成物No.1を得た。
【0097】
実施例2〜9および比較例1〜4
製造例1で得られた変性澱粉樹脂溶液に代えて製造例2〜9で得られた変性澱粉樹脂溶液をバインダーとして用い、また組成を表1に示すように変えた以外は、実施例1の操作を繰り返して、澱粉系塗料組成物No.2〜13を得た。
【0098】
【表1】

【0099】
(注4)商品名、株式会社岐阜セラック製造所製ポリエチレンワックスのミネラルターペン懸濁溶液
(注5)商品名、東洋アルミニウム株式会社製アルミニウムペースト、樹脂被覆タイプノンリーフィングアルミ
(注6)商品名、横浜化成株式会社製溶剤型塗料用着色剤
(注7)商品名、富士シリシア化学株式会社製含水無定形二酸化ケイ素(艶消し剤)
(注8)商品名、仏ベルジュラックNC社製ニトロセルロースのプロパノール湿潤物を酢酸エチルに溶解した
(注9)商品名、イーストマンケミカルプロダクツ社製セルロースアセテートブチラートを酢酸エチルに溶解した
(注10)商品名、株式会社セイシン企業製微粉フッ素パウダーワックス
評価結果
実施例1〜9および比較例1〜4の塗料を塗装した試験板を作成し、塗膜性能を評価した。評価の結果を表2に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
評価方法
試験板の作成
実施例1〜9で得られた澱粉系塗料組成物No.1〜9および比較例1〜4で得られた澱粉系塗料組成物No.10〜13を用いて、ノリル板SE1−701(商品名、日本ジーイープラスチック社製、変性ポリフェニレンエーテル)に、乾燥膜厚が8μmとなるようにスプレー塗装した。
【0102】
次に、電気熱風乾燥機を用いて60℃で30分間強制乾燥し、次いで室温(20℃)で7日間乾燥を行って試験板No.1〜9および試験板No.10〜13を作成した。
【0103】
作成した試験板No.1〜13を下記の試験条件に従って試験に供した。
【0104】
試験方法
貯蔵安定性
1Lの密閉されたガラス容器に各澱粉系塗料を貯蔵し、30℃で2週間貯蔵後の状態を下記の基準で評価した。
【0105】
◎:塗料は相分離を起こさず安定である
○:塗料の相分離を認めるがスパチュラによる弱い手攪拌により均一な状態に戻る
△:塗料の著しい相分離を認めるが回転翼式攪拌機で強い攪拌を1分以上行い再分散させることができる
×:塗料が完全に分離してしまい、再分散させることができない
乾燥性
塗料をノリル板SE1−701(商品名、日本ジーイープラスチック社製、変性ポリフェニレンエーテル)に、乾燥膜厚が8μmとなるようにスプレー塗装し、電気熱風乾燥機を用いて60℃で30分間強制乾燥した直後に、塗板を室温まで冷やし、表面の指触乾燥性を下記の基準で評価した。
【0106】
◎:塗膜は硬くすべすべしており爪で押しても痕はつかない
○:塗膜は弾力があるが爪で押しても痕はつかない
△:塗膜は弾力があり爪で押すと痕がつく
×:塗膜に粘着感が残り爪で押すと痕がつき指の腹で押すと指紋痕がつく
仕上り性
各試験板の塗面の仕上がりを目視で評価した。
【0107】
○:良好な仕上り性である
△:ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1種の仕上り性の低下が見られる
×:ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1種の仕上り性の低下が著しい
塗膜外観
各試験板の塗面外観を目視で評価した。
【0108】
○:良好で全面が均一に色調である
△:塗面に軽い色むらがある
×:塗面に明らかに判別できる色むらがある
【0109】
鉛筆硬度
JIS K5600−5−4(1999)に準じて、試験塗板面に対して約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。試験箇所を変えてこの操作を5回繰り返して、塗膜が破れなかった場合のもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
【0110】
耐スリ傷性:
市販の名刺を塗膜に押し当てて軽くこすった後、どの程度傷がつくかにより判定した。
【0111】
◎:全く傷がつかない
○:ほとんど傷がつかない
△:うすくスリ傷がつく
×:スリ傷の程度がひどい
付着性
JIS K5600−5−6(1990)に準じて塗膜に1mm×1mmのゴバン目100個を作り、その表面に粘着テープを貼着し、急激に剥した後に、塗面に残ったゴバン目塗膜の数を評価した。
【0112】
◎:残存個数/全体個数=100個/100個
○:残存個数/全体個数=99個/100個
△:残存個数/全体個数=90個〜98個/100個
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個
耐衝撃性
デュポン式耐衝撃試験機(1/2インチ撃針、500g×50cm)により評価した。
【0113】
○:1回衝撃を与えた後の塗膜にワレが見られない
×:1回衝撃を与えた後の塗膜に著しいワレが認められる
耐アルカリ性
試験板の塗膜表面に、1%水酸化ナトリウム水溶液を0.5mL滴下して、温度20℃相対湿度65%の雰囲気下に24時間放置した後に、塗面をガーゼで拭き取り、外観を目視評価した。
【0114】
○:塗膜表面に全く異常がない
△:塗膜表面に変色(白化)が認められる
×:塗膜表面の変色(白化)が著しい
耐薬品性
各試験塗板上にろ紙を2枚並べて置き、各ろ紙上にスポイトで78%エタノールと2%ホルマリンをそれぞれ滴下し、ろ紙を湿らした。このスポイトによる滴下を1時間間隔で5回行い、その後2時間経過後にろ紙を除いた塗膜表面を目視で評価した。
【0115】
◎:フクレやハガレなどの異常が全くない
○:フクレやハガレなどの異常が殆どなく目視では見分けがつかない
△:目視で軽度なフクレやハガレなどの異常が見つかる
×:塗膜が溶けてしまう
耐候性
各複層被膜の光沢を、JIS H8602−5.12(1992)に準拠(水スプレー時間12分間、ブラックパネル温度60℃)し、カーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウェザオメーターを使用して測定して、暴露試験前の光沢に対する光沢保持率が80%を割る時間を測定した。
【0116】
◎:光沢保持率が80%を割る時間が300時間を超える
○:光沢保持率が80%を割る時間が200時間以上かつ300時間未満
△:光沢保持率が80%を割る時間が100時間以上かつ200時間未満
×:光沢保持率が80%を割る時間が100時間未満
【産業上の利用可能性】
【0117】
一液ラッカー型塗料として貯蔵安定性に優れた澱粉系塗料組成物が得られ、これによって仕上り性、硬度、付着性、耐薬品性、耐アルカリ性に優れた塗膜を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によりビニルポリマーを結合させた樹脂(A)をバインダーとして用いることを特徴とする澱粉系塗料組成物。
【請求項2】
澱粉および/または変性澱粉にグラフト重合によりビニルポリマーを結合させた樹脂(A)に、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させてなるイソシアネート基を有する生成物(B)を付加反応させてなる樹脂(C)をバインダーとして用いることを特徴とする澱粉系塗料組成物。
【請求項3】
樹脂(A)が、澱粉および/または変性澱粉に芳香族モノマーを1〜90質量%含む不飽和モノマー混合物をグラフト重合してビニルポリマーを結合させた樹脂である、請求項1または2に記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項4】
樹脂(A)が、芳香族モノマー1〜90質量%、水酸基含有モノマー1〜50質量%およびその他のモノマー0〜98%からなる不飽和モノマー混合物をグラフト重合してビニルポリマーを結合させた樹脂である、請求項3に記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項5】
澱粉系塗料組成物が、有機溶剤系溶媒に溶解もしくは分散されているものである、請求項1〜4のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項6】
さらに生分解性樹脂を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項7】
生分解性樹脂が、ニトロセルロースおよび/またはセルロース変性物である、請求項6に記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項8】
さらにワックスを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物が塗装された物品。

【公開番号】特開2008−31361(P2008−31361A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208654(P2006−208654)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】