説明

濁水処理装置および濁水処理方法

【課題】高能率な連続処理が可能でありながら小型化も容易である、濁水処理装置及びその方法を提供する。
【解決手段】外側槽11と、その内部に同心的に設けられた内側槽12とを備えており、外側槽11の周壁上部に上澄み液排出口14が設けられ、外側槽11の底部に沈降物排出口13が設けられ、内側槽12の上部に、被処理濁水と凝集沈降剤との混合液の溢流口12fが設けられ、外側槽11と内側槽12との間に、溢流口12fの溢流液位より上側の位置から上澄み液排出口14よりも下側の位置まで延在する筒状の隔壁16が、外側槽11及び内側槽12に対してそれぞれ間隔を空けて設けられ、内側槽12内における溢流口12fよりも下側に被処理濁水及び凝集沈降剤を供給し且つこれらを内側槽12内で混合する内部混合型供給手段17が設けられている濁水処理装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、湖沼、海、貯水池、ダムの水浄化や、土木・建設における排水・排泥の処理及び再利用、あるいは鉱山や採石場、骨材・石材等の製造に際して発生する微粒子泥水の処理及び再利用、食品加工工場等の各種工場排水の処理、さらには農業集落における水処理に代表される小規模の上水・下水処理に適用可能である、濁水処理装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
濁水は土粒子や有機物などの微粒子が水に混合分散したものである。例えば、河川、湖沼、海においては環境汚染により濁水が発生する。また、土木・建設工事や、骨材・石材等の製造、食品加工等では濁水が排水される。さらに上水処理や下水処理では濁水の処理が行われている。
このような濁水を処理する方法の一つとして、凝集沈降剤(例えば特許文献1参照)を濁水に添加・混合し、濁水中の微粒子を凝集させ、大きな凝集体とした後に水底に沈降させ、沈降分と水分とをシックナー等により分離する方法が知られている。このような凝集沈降剤では、凝集体は疎水性であるため、粒子間への水の浸入を拒み、構成粒子が再度水に分散することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3345670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法では装置が大型となり、広い設置面積を必要とするという問題点があり、小型でありながら、連続的に高能率な処理が可能である装置が無いのが現状である。
そこで、本発明の主たる課題は、高能率な連続処理が可能でありながら小型化も容易である、濁水処理装置及び濁水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
外側槽と、この外側槽内に設けられた内側槽とを備えており、
前記外側槽の周壁上部に、上澄み液を前記外側槽の外部に排出する上澄み液排出口が設けられるとともに、前記外側槽の底部に沈降物を前記外側槽の外部に排出する沈降物排出口が設けられており、
前記内側槽の上部に、被処理濁水と凝集沈降剤との混合液を前記内側槽の外部に溢流させる混合液溢流口が設けられており、
前記外側槽と内側槽との間に、前記混合液溢流口の溢流液位より上側の位置から前記上澄み液排出口よりも下側の位置まで延在する筒状の隔壁が、前記外側槽の内面及び内側槽の外面に対してそれぞれ間隔を空けて設けられており、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に被処理濁水及び凝集沈降剤を供給し且つこれらを内側槽内で混合する内部混合型供給手段か、又は前記内側槽外で被処理濁水と凝集沈降剤とを混合した後に前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に供給する外部混合型供給手段が設けられている、
ことを特徴とする濁水処理装置。
【0006】
(作用効果)
本発明では、内側槽内に被処理濁水及び凝集沈降剤を供給し、これらを内側槽内で混合するか、又は予め内側槽の外部で被処理濁水及び凝集沈降剤とを混合した後に内側槽内に供給する。この結果、内側槽内では、被処理濁水と凝集沈降剤との混合液が溢流口よりも下側に順次補給され、この混合液は凝集が進行しつつ溢流口へ向って上昇し、溢流口から外側槽内における内側槽外面と隔壁内面との間に溢流(オーバーフロー)する。溢流口から溢流した混合液は、隔壁内を下降した後、凝集物はそのまま外側槽の底部に沈降していき、沈降物排出口から排出され、液分は外側槽内において隔壁の外側に回り込んで上昇し、外側槽内面と隔壁外面との間から上澄み液排出口を介して外側槽外部に排出される。
このように、本発明では、内外二重の槽構造に隔壁を加えた実質三重の構造により、凝集工程(内側槽内)及び沈降分離工程という二段工程を行うものであるため、スペース利用効率が格段に良いものである。しかも、凝集工程は混合液が内側槽内に滞留する間に進行するため、より確実に且つ効率良く凝集が進行し、沈降分離工程は混合液の下降流が上昇流に変化する所で進行するため、より確実に且つ効率良く沈降分離が進行する。したがって、本発明の装置は高能率な連続処理が可能でありながら小型化を図ることも容易である。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記内部混合型供給手段として、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に設けられた内側槽供給口と、
前記外側槽外に設置された被処理濁水供給ポンプと、
これら内側槽供給口と被処理濁水供給ポンプとを接続する内側槽供給管路と、
前記内側槽内に上下方向に沿って設けられた中空の攪拌軸と、
前記攪拌軸の内外に連通する凝集沈降剤の吐出口と、
前記攪拌軸内を介して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、
を備えた、請求項1記載の濁水処理装置。
【0008】
(作用効果)
本発明の内部混合型供給手段は特に限定されるものではないが、このような中空の攪拌軸を利用し、攪拌軸内を通じて凝集沈降剤を供給するように構成すると、装置構造がコンパクトになるとともに、攪拌軸から凝集沈降剤が吐出されることにより被処理濁水との混合性もより一層のものとなる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記内部混合型供給手段として、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に設けられた内側槽供給口と、
前記外側槽外に設置された被処理濁水供給ポンプと、
これら内側槽供給口と被処理濁水供給ポンプとを接続する内側槽供給管路と、
この内側槽供給管路に凝集沈降剤を合流供給する凝集沈降剤供給管路と、
この凝集沈降剤供給管路を介して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、
前記内側槽内に上下方向に沿って設けられた攪拌軸と、
を備えた、請求項1記載の濁水処理装置。
【0010】
(作用効果)
このように凝集沈降剤の供給を行うことにより、凝集沈降剤の供給手段をより簡素に構成することができる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記外部混合型供給手段として、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に設けられた内側槽供給口と、
前記外側槽外に設置された被処理濁水供給ポンプと、
これら内側槽供給口と被処理濁水供給ポンプとを接続する内側槽供給管路と、
この内側槽供給管路に凝集沈降剤を合流供給する凝集沈降剤供給管路と、
この凝集沈降剤供給管路を介して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、
前記内側槽供給管路における前記凝集沈降剤の合流位置より下流側に設けられたスタティックミキサーと、
を備えた、請求項1記載の濁水処理装置。
【0012】
(作用効果)
外部混合型供給手段は、基本的には装置全体の小型化には不向きなものであるが、本項記載のように管路内にスタティックミキサーを設けて混合を行うようにすれば、装置が大型化することは殆ど無い。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記外部混合型供給手段として、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に設けられた内側槽供給口と、
前記外側槽外に設置された被処理濁水供給ポンプと、
これら内側槽供給口と被処理濁水供給ポンプとを接続する内側槽供給管路と、
この内側槽供給管路の一部を構成する混合管路と、この混合管路内に回転駆動可能なように設けられた中空の攪拌軸と、この攪拌軸における上流側部分に形成された軸内外に連通する凝集沈降剤の送出口と、前記攪拌軸の攪拌駆動源とを有する、管路ミキサーと、
前記凝集沈降剤の送出口に対して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給管路と、
この凝集沈降剤供給管路を介して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、
を備えた、請求項1記載の濁水処理装置。
【0014】
(作用効果)
外部混合型供給手段は、基本的には装置全体の小型化には不向きなものであるが、本項記載のように管路ミキサーを用いることにより、高い混合性が発揮されるとともに、装置が大型化することも殆ど無い。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記上澄み液排出口から排出される上澄み液を、前記凝集剤と混合する前の被処理濁水に混合し、被処理濁水を希釈する希釈手段を備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【0016】
(作用効果)
被処理濁水における固形分が高濃度である場合、それに応じて凝集沈降剤の量を増加する必要がある。しかしその場合、凝集沈降に長時間を要するため、装置をコンパクト化し高能率で動作させることが困難になる。よって、本項記載のように上澄み液を利用して、予め被処理濁水の濃度を低下させるのが好ましい。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記外側槽の内周面における前記上澄み液排出口と対応する高さ位置に、周方向に沿って環状に連続する内部排水路が設けられており、この内部排水路は、上澄み液排出口の下端よりも上側の部位に、周方向に沿って環状に連続する流入口を有しており、
前記上澄み液排出口は前記内部排水路に連通しており、
前記外側槽内面と前記隔壁との間を上昇する上澄み液が前記流入口から前記内部排水路内に流入した後、前記内部排水路内から前記上澄み液排出口に排出されるように構成されている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【0018】
(作用効果)
上澄み液の排出は外側槽の周方向の一部から行っても良いが、単に上澄み液排出口を外側槽の周方向の一部に設けるだけであると、外側層内の上澄み液の排出が偏ることにより処理効率が低下する。これに対して、本項記載のような環状の内部排水路を介して外側層の外部に上澄み液を排出すると、外側層内の上澄み液は周方向に偏り無く排出されるようになる。
【0019】
<請求項8記載の発明>
前記外側槽の外周面における前記上澄み液排出口と対応する高さ位置に、周方向に沿って環状に連続する外部排水路が設けられており、
前記上澄み液排出口は、前記外側槽の周方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、前記外部排水路に連通しており、
各上澄み液排出口から排出される上澄み液が前記外部排水路を介して排出されるように構成されている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【0020】
(作用効果)
上澄み液の排出の偏りを無くすために、上澄み液排出口を外側層の周方向に間隔を空けて設けることもできるが、単にそれだけであると排出箇所が多数になり、配管が煩雑になる。よって、本項記載のように、上澄み液排出口から排出される上澄み液を環状の外部排水路により集水して排出させるのも好ましい形態である。
【0021】
<請求項9記載の発明>
前記上澄み液排出口へ向う上澄み液をろ過するようにスクリーンが設けられている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【0022】
(作用効果)
装置をコンパクト化し高能率で動作させる場合、上澄み液に凝集物が混入し易くなるため、上澄み液をスクリーンによりろ過した後に排出するように構成するのが好ましい。
【0023】
<請求項10記載の発明>
前記沈降物排出口から排出される沈降物を脱水するスクリュープレス脱水機を備えた、請求項1〜9のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【0024】
(作用効果)
より一層の脱水性が要求される場合、機械式の脱水装置を併用するのが好ましいが、装置の小型化が困難になるおそれがある。よって、そのような場合にはスクリュープレス脱水機を組み合わせるのが好ましい。これにより、装置の小型化を犠牲にせず、脱水性を向上させることができる。
【0025】
<請求項11記載の発明>
請求項1〜10のいずれか1項に記載の濁水処理装置を用いて濁水処理を行うことを特徴とする濁水処理方法。
【0026】
(作用効果)
対応する各発明と同様の作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0027】
以上のとおり本発明によれば、材料特性を有効に発揮できるとともに、材料の混合量を管理しながら、連続的に高能率な混合処理が可能となる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態を示すフロー図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】第2の実施形態を示すフロー図である。
【図4】第3の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図5】第3の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図6】第4の実施形態を示すフロー図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【図8】第5の実施形態を示すフロー図である。
【図9】第6及び第7の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図10】第8の実施形態を示す要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
<第1の実施形態>
図1及び図2は、内部混合型供給手段を備えた第1の実施形態を示している。濁水槽1に貯留されている濁水は、定量ポンプからなる被処理濁水供給ポンプ2により固液分離装置10に定量供給される。濁水の供給路となる管路6には流量計3が設けられており、濁水の供給流量の管理に使用される。また、固液分離装置10に対して、凝集沈降剤圧送機4により管路7を介して粉粒体状の凝集沈降剤が圧気(圧縮空気)に乗せて定量圧送される。凝集沈降剤としては公知のものを特に限定なく使用でき、図示例のように粉粒体状のものを供給する他、液体状のものを供給することもできる。また、粉粒体状の凝集沈降剤の圧送機4も特に限定なく用いることができ、例えば特開2004−256311号に記載されたもの等を用いることができる。
【0030】
固液分離装置10は、有底円筒状をなす外側槽11と、この外側槽11内に同心的に且つある程度の間隔を空けて設けられた、外側槽11より小径の有底円筒状をなす内側槽12とを備えている。より詳細には、外側槽11は、円筒状をなす上側部分11Uと、逆円錐状(逆コーン状)をなす下側部分11Lとを有し、下側部分11Lの下端部に沈降物排出口13が設けられている。この沈降物排出口13には開閉弁5Vを有する沈降物排出管路5が接続されている。外側槽11の上側部分11Uには、周壁上部に、上澄み液を外側槽の外部に排出する上澄み液排出口14が設けられている。
【0031】
また、図示形態の外側槽11では、槽内周面における上澄み液排出口14の下側近傍から槽中心側に向って突出する底板部15bが周方向に沿って環状に連続するとともに、この底板部15bの内周縁部から上澄み液排出口14の上端以上の高さ位置まで立設する堰板部15dが周方向に沿って環状に連続している。この結果、外側槽11の内周面における上澄み液排出口14と対応する高さ位置に、底板部15b、堰板部15d及び外側槽11内周面からなる溝状の内部排水路15が、周方向に沿って環状に連続するように形成される。この内部排水路15は上澄み液排出口14の下端よりも上側の部位に、周方向に沿って環状に連続する流入口15iを有している。そして、上澄み液排出口14は外側槽11の周方向の1箇所にだけ設けられるとともに、内部排水路15に連通している。さらに、図示形態の外側槽11は、上面全体が蓋部18により塞がれている。
【0032】
一方、内側槽12は上面が混合液溢流口12fとして開放されている。混合液溢流口12fは上面の一部に設けられていても、また側面(周面)に設けられていても良い。また、外側槽11と内側槽12との間には、混合液溢流口12fの溢流液位より上側の位置から上澄み液排出口12fよりも下側の位置まで延在する筒状の隔壁16が、外側槽11の内面及び内側槽12の外面に対してそれぞれ間隔を空けて設けられている。被処理濁水及び凝集沈降剤の混合液は、内側槽12内を上昇して溢流口12fから内側槽12外面と隔壁16内面との間に溢流した後に下降する。よって、内側槽12及び隔壁16の上下方向長さは、混合液が内側槽12内から内側槽12と隔壁16との間まで移動する過程で十分に凝集が完了する程度に設定される。図示例では隔壁16の上縁が蓋部11Fの下面に連続しており、蓋部18における隔壁16の内側と対応する部位に排気口18xが開口している。
【0033】
内側槽12内には、混合液溢流口12fよりも下側に被処理濁水及び凝集沈降剤を供給し且つこれらを内側槽内で混合する内部混合型供給手段が設けられている。具体的には、内側槽12内における底部近傍に内側槽供給口12iが設けられており、この内側槽供給口12iに対して、被処理濁水供給ポンプ2からの送出される濁水を内側槽12に供給する内側槽供給管路6が接続されている。
【0034】
また、内側槽12内には中空の攪拌軸17が上下方向に沿って設けられている。より詳細には、攪拌軸17は、中空の軸部17aと、その下側部分の外周面から突出する攪拌羽根17wとを有しており、下端部に中空の軸部17aの内外に連通する凝集沈降剤の吐出口17xとを有しており、上端部が蓋部18を貫通し、蓋部18上に設けられた軸受けにより支持されるとともに、電動モータ等の回転駆動源17mにより軸心周りに回転されるように構成されている。また、中空の軸部17aの上端開口はスイベル17sを介して凝集沈降剤供給管と連通している。
【0035】
濁水の処理に際しては、被処理濁水供給ポンプ2を作動させ、内側槽供給管路6及び供給口12iを介して内側槽12内の下部に被処理濁水を順次定量供給するとともに、凝集沈降剤圧送機4及び攪拌軸17を作動させ、凝集沈降剤供給管路7、攪拌軸17及び吐出口17xを介して内側槽12内に凝集沈降剤を順次定量供給する。内側層12内では、被処理濁水に対して回転する吐出口から凝集沈降剤が供給され、これらが回転する攪拌軸の回転翼17wにより攪拌混合される。この混合液は、凝集が進行しつつ溢流口12fへ向って上昇し、溢流口12fから内側槽12外面と隔壁16内面との間に溢流(オーバーフロー)する。凝集沈降剤は圧気により圧送されるため、混合液には空気が混入するが、これは内側槽12内を上昇して溢流口12fから抜け出し、排気口18xを介して機外に放出される。溢流口12fから溢流した混合液は、隔壁16内を下降した後、凝集物はそのまま外側槽11の底部に沈降していき、沈降物排出口13から排出される。液分は外側槽11内において隔壁16の外側に回り込み、外側槽11内面と隔壁16外面との間に上昇した後、流入口15iから内部排水路15内に流入した後、内部排水路15内から上澄み液排出口14を介して槽外へ排出される。
【0036】
このように、本発明では、内外二重の槽構造11,12に隔壁16を加えた実質三重の構造により、凝集工程(内側槽内)及び沈降分離工程という二段工程を行うものであるため、スペース利用効率が格段に良いものである。しかも、凝集工程は混合液が内側槽12内に滞留する間に進行するため、より確実に且つ効率良く凝集が進行し、沈降分離工程は混合液の下降流が上昇流に変化する所で進行するため、より確実に且つ効率良く沈降分離が進行する。したがって、本発明の装置は高能率な連続処理が可能でありながら小型化を図ることも容易である。
【0037】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は図3に示されており、主に外側槽11外で凝集沈降剤を添加する点で、第1の実施形態と異なるものである。すなわち、内側槽供給管路6に凝集沈降剤供給管路7を合流接続したものである。このような構造はいわゆるY字管を用いることにより構成することができ、凝集沈降剤の供給手段をより簡素に構成することができる利点がある。固液分離装置10は、攪拌軸17に凝集沈降剤の吐出手段(吐出口17x、スイベル17s等)を有しない点以外は、基本的に第1の実施形態と同様である。
【0038】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、図4及び図5に示すように、内側槽供給管路6における凝集沈降剤の合流位置より下流側にスタティックミキサー20を設けている点で、第2の実施形態と異なるものである。これにより、装置を大型化せずに外部混合型供給手段を構成することができる。図示しないが、本第3の実施形態の場合には、内側槽12内における攪拌手段(攪拌軸17、回転駆動源17m)を設けても、設けなくても(後述する第4の実施形態と同様)良い。
【0039】
より詳細には、図4に示す例では、内側槽供給管路6内にスタティックミキサー20を内蔵する混合管路21を同心的に配置(同心でなくても良い)し、この混合管路22の周壁に凝集沈降剤の供給口22を設け、凝集沈降剤の供給管路7を内側槽供給管路6を貫通して混合管路21の供給口22に接続したものである。内側槽供給管路6内を通る被処理濁水の一部は混合管路21内を通り、残りは混合管路21の外部を通り内側槽12に対して供給される。この際、混合管路21の上流側開口から混合管路21の内部に流入した被処理濁水は、先ず供給口22から凝集沈降剤が添加され、次いでスタティックミキサーを通ることにより凝集沈降剤と攪拌混合された後、混合管路21の下流側開口から排出される。図示形態では、混合管路21の下流側に、回転駆動源26により回転駆動される攪拌軸25が流れ方向に対して交差する方向に沿って軸支されており、混合管路21内を通り凝集沈降剤が添加混合された被処理濁水と、混合管路21の外部を通り凝集沈降剤が添加混合されていない被処理濁水とが、回転する攪拌軸によって更に攪拌混合されるようになっている。符号25wは攪拌翼を示し、符合25aは軸部を示している。
また、図5に示すように、混合管路21の下流側混合手段としてスタティックミキサー29を採用することもできる。
【0040】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、図6及び図7に示すように、内側槽供給管路6の一部として管路ミキサー30を用いている点、及び内側槽12内の攪拌手段(攪拌軸17等)を設けていない点で、第1の実施形態と異なるものである。すなわち、管路ミキサー30は、内側槽供給管路6の一部を構成する混合管路31と、この混合管路31内に同心的に軸支された中空の攪拌軸32と、この攪拌軸32における上流側部分に形成された軸内外に連通する凝集沈降剤の送出口33とを有している。攪拌軸32は、軸部32aと、その外周面から突出する攪拌羽根32wとを有しており、軸部32aの一端部は混合管路31外部に突出しており、この突出部分において軸受け32gにより支持されるとともに、図示しない電動モータ等の回転駆動源により軸心周りに回転されるように構成されている。また、中空の軸部32aの突出端部の開口はスイベル32sを介して凝集沈降剤供給管7と連通している。
【0041】
処理に際しては、内側槽供給管路6内を通る被処理濁水の全てが混合管路21内に供給される。混合管路21内に至った被処理濁水には、回転する攪拌軸32の送出口から凝集沈降剤が添加され、これらが下流側に流れる過程で、回転する攪拌軸32により攪拌混合されて混合液となり、この混合液が内側槽12に対して供給される。
図示しないが、本第3の実施形態の場合においても、内側槽12内における攪拌手段(攪拌軸17、回転駆動源17m)を設けても良い。
【0042】
<第5の実施形態>
被処理濁水における固形分が高濃度である場合、それに応じて凝集沈降剤の量を増加する必要がある。しかしその場合、凝集沈降に長時間を要するため、装置をコンパクト化し高能率で動作させることが困難になるため、図8に示すように、上澄み液排出口14から排出される上澄み液を、凝集剤と混合する前の被処理濁水に混合し、被処理濁水を希釈するように構成するのは好ましい形態である。
より詳細には、上澄み液貯留槽40を設け、上澄み液排出口14から排出される上澄み液を排出管路41により上澄み液貯留槽40に供給し、その一部を循環ポンプ42により被処理濁水の供給路である内側槽供給管路6に供給し、被処理濁水を希釈している点が第1の実施形態に対して異なるものである。もちろん他の形態にも応用することができる。
【0043】
また、図8に示す例では、第4の実施形態に倣って内側槽供給管路6の一部を管路ミキサー45により構成し、凝集沈降剤に代えて上澄み液を供給し、被処理濁水と上澄み液とを攪拌混合する形態を採用しているが、第2の実施形態に倣って被処理濁水と上澄み液とを単に合流させるだけとしたり、第3の実施形態に倣って被処理濁水と上澄み液とをスタティックミキサーを用いて混合したりすることも可能である。さらに、図示しないが、機外で希釈するのではなく、内側層12内に上澄み液を供給して希釈することも可能である。でなお、図8中の符号43は、上澄み液を放流等する際の排出ポンプを示している。
【0044】
本第5の実施形態では、凝集剤の供給量を一定とする必要はなく、また希釈の程度を制御する必要もないが、凝集剤の供給量を一定とし、被処理濁水の固形分濃度が一定となるように上記希釈により制御するのが望ましい。
【0045】
<第6の実施形態>
上澄み液の排出の偏りを無くすために、第1の実施形態では環状の内部排水路15を介在させているが、図9に示すように、上澄み液排出口14を外側層11の周方向に間隔を空けて設けるとともに、外側槽11の外周面における上澄み液排出口14と対応する高さ位置に、周方向に沿って環状に連続する外部排水路50を設け、各上澄み液排出口14を外部排水路50に連通させ、各上澄み液排出口14から排出される上澄み液を環状の外部排水路50により集水して排出させるのも好ましい形態である。この場合、外部排水路からの上澄み液の排出は図示のように一箇所とする等、少ない方が望ましい。
【0046】
<第7の実施形態>
装置をコンパクト化し高能率で動作させる場合、上澄み液に凝集物が混入し易くなるため、図9に示すように、上澄み液をスクリーン60によりろ過した後に上澄み液排出口14から排出するように構成するのが好ましい。図示例では、スクリーン60により上澄み液排出口14が完全に覆われているが、例えば第1の実施形態における堰板部15dをスクリーンで形成する等、排出される上澄み液がスクリーンを通る限り、図示例のような完全に覆う形態に限定されない。
【0047】
<第8の実施形態>
より一層の脱水性が要求される場合、機械式の脱水装置を併用するのが好ましいが、装置の小型化が困難になるおそれがある。よって、そのような場合には図10に示すようにスクリュープレス脱水機を組み合わせるのが好ましい。図示例では、スクリュープレス脱水機70の被処理物供給口73を外側槽11の沈降物排出口13に接続している。これにより、装置の小型化を犠牲にせず、脱水性を向上させることができる。もちろん、沈降物排出口13から排出される沈降物を、スクリュープレス以外の機械的脱水機(例:ベルトプレスやフィルタープレス)に供給して脱水することも可能である。
【0048】
なお、図示例のスクリュープレス脱水機70は、円筒状ケーシング71と、ケーシング71内に同心的に軸支されたスクリュー軸72と、このスクリュー軸72を軸心周りに回転駆動する図示しない回転駆動源と、ケーシング71の一端部の上部に設けられた被処理物供給口73と、他端部の下部に設けられた脱水物の排出口74と、これら供給口73と排出口74との間の外周面を液密に取り囲む外管部75と、外管部75の内外に連通する排水口76と、ケーシング71の外周壁のうち外管部75の内の外周壁として設けられたケーシング71の内外に連通する透孔を有するスクリーン77とを備えている。スクリュー軸72は、ケーシング71の内周面に対して回転可能な範囲で近接しており、また、スクリュー羽根のピッチが供給口73側から排出口74側に向うにつれて狭くなっているものである。供給口73から供給された沈降物は、回転駆動されるスクリュー軸72の移送作用により排出口74側に移送される過程で、スクリュー羽根のピッチの減少により圧搾脱水され、その脱水液はスクリーン75を介してケーシングと外管部75との間を介して排水口76から機外に排出される。固形分は十分に圧搾脱水された後に、排出口74から排出される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、濁水処理であれば、河川、湖沼、海、貯水池、ダムにおける濁水処理、あるいは土木・建設における排水、骨材・石材等の製造排水、食品加工工場等の各種工場排水の処理、さらには上水処理、下水処理など、広範な用途で利用できるものである。
【符号の説明】
【0050】
1…濁水槽、2…被処理濁水供給ポンプ、3…流量計、4…凝集沈降剤圧送機、5…沈降物排出管路、6…内側槽供給管路、7…凝集沈降剤供給管路、10…固液分離装置、11…外側総槽、12…内側総槽、13…沈降物排出口、14…上澄み液排出口、15…内部排水路、16…隔壁、17…攪拌軸、18…蓋部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側槽と、この外側槽内に設けられた内側槽とを備えており、
前記外側槽の周壁上部に、上澄み液を前記外側槽の外部に排出する上澄み液排出口が設けられるとともに、前記外側槽の底部に沈降物を前記外側槽の外部に排出する沈降物排出口が設けられており、
前記内側槽の上部に、被処理濁水と凝集沈降剤との混合液を前記内側槽の外部に溢流させる混合液溢流口が設けられており、
前記外側槽と内側槽との間に、前記混合液溢流口の溢流液位より上側の位置から前記上澄み液排出口よりも下側の位置まで延在する筒状の隔壁が、前記外側槽の内面及び内側槽の外面に対してそれぞれ間隔を空けて設けられており、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に被処理濁水及び凝集沈降剤を供給し且つこれらを内側槽内で混合する内部混合型供給手段か、又は前記内側槽外で被処理濁水と凝集沈降剤とを混合した後に前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に供給する外部混合型供給手段が設けられている、
ことを特徴とする濁水処理装置。
【請求項2】
前記内部混合型供給手段として、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に設けられた内側槽供給口と、
前記外側槽外に設置された被処理濁水供給ポンプと、
これら内側槽供給口と被処理濁水供給ポンプとを接続する内側槽供給管路と、
前記内側槽内に上下方向に沿って設けられた中空の攪拌軸と、
前記攪拌軸の内外に連通する凝集沈降剤の吐出口と、
前記攪拌軸内を介して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、
を備えた、請求項1記載の濁水処理装置。
【請求項3】
前記内部混合型供給手段として、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に設けられた内側槽供給口と、
前記外側槽外に設置された被処理濁水供給ポンプと、
これら内側槽供給口と被処理濁水供給ポンプとを接続する内側槽供給管路と、
この内側槽供給管路に凝集沈降剤を合流供給する凝集沈降剤供給管路と、
この凝集沈降剤供給管路を介して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、
前記内側槽内に上下方向に沿って設けられた攪拌軸と、
を備えた、請求項1記載の濁水処理装置。
【請求項4】
前記外部混合型供給手段として、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に設けられた内側槽供給口と、
前記外側槽外に設置された被処理濁水供給ポンプと、
これら内側槽供給口と被処理濁水供給ポンプとを接続する内側槽供給管路と、
この内側槽供給管路に凝集沈降剤を合流供給する凝集沈降剤供給管路と、
この凝集沈降剤供給管路を介して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、
前記内側槽供給管路における前記凝集沈降剤の合流位置より下流側に設けられたスタティックミキサーと、
を備えた、請求項1記載の濁水処理装置。
【請求項5】
前記外部混合型供給手段として、
前記内側槽内における前記混合液溢流口よりも下側に設けられた内側槽供給口と、
前記外側槽外に設置された被処理濁水供給ポンプと、
これら内側槽供給口と被処理濁水供給ポンプとを接続する内側槽供給管路と、
この内側槽供給管路の一部を構成する混合管路と、この混合管路内に回転駆動可能なように設けられた中空の攪拌軸と、この攪拌軸における上流側部分に形成された軸内外に連通する凝集沈降剤の送出口と、前記攪拌軸の攪拌駆動源とを有する、管路ミキサーと、
前記凝集沈降剤の送出口に対して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給管路と、
この凝集沈降剤供給管路を介して凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、
を備えた、請求項1記載の濁水処理装置。
【請求項6】
前記上澄み液排出口から排出される上澄み液を、前記凝集剤と混合する前の被処理濁水に混合し、被処理濁水を希釈する希釈手段を備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項7】
前記外側槽の内周面における前記上澄み液排出口と対応する高さ位置に、周方向に沿って環状に連続する内部排水路が設けられており、この内部排水路は、上澄み液排出口の下端よりも上側の部位に、周方向に沿って環状に連続する流入口を有しており、
前記上澄み液排出口は前記内部排水路に連通しており、
前記外側槽内面と前記隔壁との間を上昇する上澄み液が前記流入口から前記内部排水路内に流入した後、前記内部排水路内から前記上澄み液排出口に排出されるように構成されている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項8】
前記外側槽の外周面における前記上澄み液排出口と対応する高さ位置に、周方向に沿って環状に連続する外部排水路が設けられており、
前記上澄み液排出口は、前記外側槽の周方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、前記外部排水路に連通しており、
各上澄み液排出口から排出される上澄み液が前記外部排水路を介して排出されるように構成されている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項9】
前記上澄み液排出口へ向う上澄み液をろ過するようにスクリーンが設けられている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項10】
前記沈降物排出口から排出される沈降物を脱水するスクリュープレス脱水機を備えた、請求項1〜9のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の濁水処理装置を用いて濁水処理を行うことを特徴とする濁水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−125790(P2011−125790A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286776(P2009−286776)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(501304607)株式会社チダエンジニアリング (7)
【出願人】(591247798)原工業株式会社 (20)
【出願人】(391007747)株式会社興和 (17)
【Fターム(参考)】