説明

濃厚染料溶液

本発明は、濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液であって、a)重量により5%から30%の式(1)(ここで、Kはアセトアセトアニリド、ピリドン、ピラゾロン又はピリミジン系のカップリング成分である)の染料とb)式(1)の染料のモル当たり0.1から0.9molのアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンとc)式(1)の染料のモル当たり0から3molのトリアルカノールアミンとを含む濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液、特にベンゾチアゾール染料誘導体を含む濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液に関する。本発明は更に、特に紙(厚紙及び板紙を含めて)を染色する及び印刷するための、本発明の濃厚染料溶液(適切な場合、水での希釈後)の使用に関する。
【0002】
染料溶液は、それらが輸送中又は貯蔵中沈殿しないように最適な安定性を有すべきである。典型的には、それらは0と5度摂氏の間で、しかしまた約50℃において長期間安定であるべきである。同様に、凍結溶液は解凍後に安定であるべきであり、そしてポンプ輸送中いかなる安定性問題も呈すべきでない。沈殿物を含有する溶液はポンプ輸送又は計量システムにおいて中断の原因となり得、そして受容され得ない機械の運転停止並びにコストのかかる清掃及び保守に通じ得る。
【0003】
濃厚染料水溶液は知られている。欧州特許出願公開第369940号明細書は、重量により7%から30%のベンゾチアゾール染料誘導体を染料のモル当たり1から5molの特定のアミン及びまた10〜25重量%の有機安定剤と一緒に含む染料水溶液を開示する。国際公開第03064539号パンフレットは、重量により5%から30%のベンゾチアゾール誘導体をベースとした染料を0.05〜5重量%の1種又はそれ以上の追加的芳香族複素環式化合物(たとえば、追加的ベンゾチアゾール誘導体)及び染料のモル当たり1〜5molの塩基又は塩基の混合物と一緒に含む染料水溶液を開示する。安定な染料溶液を生成させるために、両方の場合において、遊離染料酸が単離され、そして水、標準化剤及び可溶化剤の混合物と共に撹拌される。
【0004】
公知の染料水溶液の一つの問題は多量の添加可溶化剤であり、しかしてこれらは染色工場又は製紙工場の流出物中の高い炭素分レベルに通じる。これは高い総有機炭素(TOC)及び化学的酸素要求量(COD)の流出物に通じ、そして従って高い水処理コストの原因となる。従って、本発明の目的は、染料が遊離酸として単離される必要がない濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液であって、追加的可溶化用芳香族複素環式化合物を含まず且つ追加的可溶化剤としてほとんど何も含まない濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液を提供することである。
【0005】
標準化剤としてアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンを任意のトリアルカノールアミンと一緒に含む濃厚な染料水溶液は、染料が遊離酸として単離されず、追加的芳香族複素環式化合物が可溶化のために添加されず且つ標準化剤が先行技術においてより明白に低い濃度にて存在する場合でさえ貯蔵安定性である、ということが今般見出された。
【0006】
本発明は、濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液であって、
a)重量により5%から30%の式
【化1】

〔ここで、Kはアセトアセトアニリド、ピリドン、ピラゾロン又はピリミジン系のカップリング成分である〕
の染料と、
b)式(1)の染料のモル当たり0.1から0.9molのアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンと、
c)式(1)の染料のモル当たり0から3molのトリアルカノールアミン
とを含む濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液を提供する。
【0007】
本発明の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液は、同定された成分a)、b)及びc)並びに随意に殺生物剤は別として、更なる添加剤を含まない。
【0008】
好ましくは、本発明の染料溶液は、重量により5%から25%の式(1)の染料を含む。一層好ましくは、本発明の染料溶液は、重量により7%から20%の式(1)の染料を含む。
【0009】
好ましいアミノアルコキシアルコールは、式NR′R″R'''(ここで、R′、R″及びR'''は同一に又は独立にH、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ペンチル−、ヘキシル−又は−((CH2nO)m−(CH2nOHであり、しかもR′、R″及びR'''の少なくとも一つは−((CH2nO)m−(CH2nOHであり、n=2、3又は4であり又はm=1から20の整数である)のアミンである。好ましくは、R′、R″及びR'''は同一に又は独立にH又は−((CH2nO)m−(CH2nOHであり、しかもR′、R″及びR'''の少なくとも一つは−((CH2nO)m−(CH2nOHであり、n=2、3又は4であり又はm=1から20の整数である。好ましくはn=2でありそしてm=1から4であり、そして一層好ましくはm=1である。
【0010】
好ましいモノアルカノールアミンは、式NR′R″R'''(ここで、R′はヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−、ヒドロキシブチル−、ヒドロキシペンチル−又はヒドロキシヘキシル−であり、そしてR″及びR'''はメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ペンチル−、ヘキシル−であり、あるいはR″及びR'''は一緒に5から6員環(O又はNから選択されたへテロ原子により中断されていてもよい)を形成する)のアミンである。
【0011】
特に好ましいアミノアルコキシアルコール/モノアルカノールアミンは、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール若しくは2−(2−アミノエトキシ)エタノール又はN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンである。2−(2−アミノエトキシ)エタノールが特に好ましい。
【0012】
好ましい塩基/トリアルカノールアミンは、C2からC4のアルカノール基を含むトリアルカノールアミンである。トリエタノールアミンが特に好ましい。
【0013】
染料分子(1)中のスルホ基は脱プロトンされ得、あるいは−SO3M塩(溶解状態ではたいてい解離される)として存在し得る。原則的に、すべての無色カチオンは、Mカチオンとして用いられ得る。かかるMカチオンの例は、アンモニウムカチオン又は置換アンモニウムカチオン(それらの例はモノ、ジ、トリ及びテトラメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、並びにモノ、ジ及びトリエタノールアンモニウムである)である。置換アンモニウムカチオンが好ましく、そしてトリエタノールアンモニウムが最も好ましい。
【0014】
好ましい具体的態様において、本発明の貯蔵安定性の溶液は、リチウム不含であり且つ他のアルカリ金属カチオン(それらの例はナトリウム及びカリウムイオンである)が少ない。一層特には、該溶液はナトリウムイオンが少なく、しかしてこれはこのイオンの濃度が0.05%未満しかし好ましくは0.03%未満であることを意味する。
【0015】
好ましくは、Kは、式(2)
【化2】

〔ここで、
1及びY2は独立に、=O、=NH又は=N−C1~4アルキルであり、
3は、=O、=S、=NR又は=N−CN(ここで、RはH又はC1~4アルキルのどちらかである)であり、そして
1及びR2は独立に、H、非置換アルキル、非置換フェニル、置換アルキル又は置換フェニルである〕
のカップリング成分である。
【0016】
上記の式(2)は、カップリング成分Kについて、一つの互変異性体型にてのみ指摘されているように示されている。しかしながら、その他の互変異性体型もまたこの式により包含されるものとする。
【0017】
1及び/又はR2が置換又は非置換アルキル基を表す場合、これはたとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−、sec−若しくはtert−ブチル、直鎖状若しくは分枝状ペンチル若しくはヘキシル又はシクロヘキシル基(一回又は複数回たとえば−OH、C1~4アルコキシ又はC1~4ヒドロキシアルコキシにより置換され得る)を意味すると理解されるべきである。
【0018】
適当な置換アルキル基の例は、メトキシメチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、n−プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシペンチル及び2−ヒドロキシエトキシペンチルである。
【0019】
1及び/又はR2が随意に置換されたフェニルを表す場合、これは非置換フェニル又は1個若しくはそれ以上の同一若しくは異なる基により置換されたフェニルを意味すると理解されるべきである。
【0020】
かかる基は、たとえばC1~4アルキル(本明細書において一般にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はn−、sec−若しくはtert−ブチルを意味すると理解されるべきである)、C1~4アルコキシ(本明細書において一般にメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ又はn−、sec−若しくはtert−ブトキシを意味すると理解されるべきである)、フッ素、塩素若しくは臭素のようなハロゲン又はニトロを包含する。
【0021】
好ましくは、フェニルの意味におけるR1及び/又はR2は、非置換フェニル又は1から3個のC1~3アルキル、塩素若しくはメトキシ基により置換されたフェニルと理解され、しかして特に非置換フェニルの意味が好ましい。
【0022】
1及びR2は各々、好ましくは水素又はC1~4アルキルそして一層好ましくは水素又はメチルである。
【0023】
1及び/又はY2は各々、好ましくは官能基=O又は=NHであり、しかしてこの場合においてY1及びY2が同じであることも好ましい。Y1及びY2が同じでありそして各々が=Oであることが特に好ましい。
【0024】
3は、好ましくは=O、=S、=NH又は=N−CNそして一層好ましくは=O及び=N−CNである。
【0025】
特に好ましい具体的態様において、本発明の染料溶液は、式(1)(ここで、R1及びR2は独立に水素又はC1~4アルキルであり、Y1及びY2は独立に=O又は=NHであり、そしてY3は=O、=S、=NH又は=N−CNである)のアゾ染料を含む。非常に特に好ましいのは、カップリング成分Kとしてバルビツル酸及び2−シアノイミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジンの使用である。
【0026】
式(1)の染料は、公知であるか又は公知のやり方で得られる。
【0027】
本発明の染料水溶液は、式(1)の染料のモル当たり0.9molより多くない2−(2−ジエチルアミノエトキシ)エタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール又は3−ジメチルアミノ−1−プロパノールから成る群から選択されたアミンを含む。好ましくは、染料溶液は、染料のモル当たり2−(2−ジエチルアミノエトキシ)エタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール又は3−ジメチルアミノ−1−プロパノールから成る群から選択された0.2から0.9mol好ましくは0.3から0.9molを含む。挙げられたアミンのうちで3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが特に好ましく、しかしてそれらのうちで2−(2−アミノエトキシ)エタノールが更に一層好ましい。
【0028】
本発明の染料水溶液は、好ましくは、
a)重量により5%から30%好ましくは重量により7%から20%の式(1)の染料、
b)式(1)の染料のモル当たり0.1から0.9mol好ましくは0.3から0.9molの2−(2−アミノエトキシ)エタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール又はN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、及びまた
c)式(1)の染料のモル当たり0から3mol好ましくは0.5から2.6molのトリアルカノールアミン
を含む。
【0029】
これらのうちで、特に好ましいのは、
a)重量により7%から20%の式(1)の染料、
b)式(1)の染料のモル当たり0.4から0.9molの2−(2−アミノエトキシ)エタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール又はN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、及びまた
c)式(1)の染料のモル当たり0.8から2.5molのトリアルカノールアミン
を含むものである。
【0030】
本発明の染料溶液は、挙げられた水溶性有機塩基に加えて、殺生物剤を含み得る。
【0031】
いかなる殺生物剤も適している。好ましいのは、FDAの認可を得ている殺生物剤を用いることである。グラム陽性又はグラム陰性の細菌、酵母又は真菌の成長を制御することの可能ないかなる殺生物剤も、本発明の溶液に用いられ得る。適当な殺生物剤は、たとえば3−チアゾロン誘導体、たとえばアルキル化及び/若しくは塩素化3−チアゾロン誘導体又はそれらの混合物である。典型的には、殺生物剤は、0.15重量%(既製組成物当たり)までの量にて添加される。
【0032】
本発明の濃厚な染料水溶液は、一般に、カップリング成分HK上へのジアゾ化2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸のカップリング中に有機塩基(特に、トリアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンの溶液)を添加し、そして反応が終わった後の染料溶液に上記に同定された量のアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンを添加することにより生成される。
【0033】
その代わりに、本発明の濃厚な染料水溶液は、一般に、有機塩基(特に、トリアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンの溶液)をカップリング成分HKに添加しそして次いでジアゾ化2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸を添加し、そして反応が終わった後の染料溶液に上記に同定された量のアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンを添加することにより生成される。
【0034】
必要な場合、染料溶液は引き続いて濾過し、そして規格強度に調整される。得られた濃厚な染料水溶液は、特に良好な貯蔵安定性について特筆すべきである。
【0035】
本発明の染料溶液は、その代わりに、2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸を慣用的にジアゾ化し、そして単離することなくカップリング反応に用いることにより生成され得る。カップリング中の中和は、有機又は無機塩基により遂行される。形成された塩は、引き続いて、トリアルカノールアンモニウム塩又はトリアルカノールアンモニウム塩の溶液の添加と共に高められた温度にて(室温を超えるすなわち20℃を超える特に25℃を超える好ましくは30℃と70℃の間の温度にて)限外濾過により除去される。その後、トリアルカノールアミン及びアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンの上記に同定された比率が調整される。かくして得られた濃厚な染料水溶液は、同様に特に良好な貯蔵安定性について特筆すべきである。
【0036】
ジアゾ化及びカップリングは、慣用のやり方で行われる。この目的のために、塩酸で酸性にされた水溶液中の亜硝酸ナトリウムを用いて、2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸は0℃から20℃にて及び0と5の間のpHにて好ましくは0から4の間のpHにてジアゾ化される。カップリング成分とカップリングするために、反応溶液又は懸濁液は有機又は無機塩基で好ましくはトリアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンの溶液で好ましくはトリエタノールアミンで3から7の範囲のpHにそして好ましくは4.5から6.5の範囲のpHに調整され、そしてカップリング反応中の温度は0℃と70℃の間にそして好ましくは20℃と55℃の間に保たれる。
【0037】
本発明による濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液を生成させるための好ましい方法は、カップリング成分HK上へのジアゾ化2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸のカップリング中に式(1)の生じる染料のモル当たり0から3molのトリアルカノールアミンを添加し、そして反応が終わった後の染料溶液に式(1)の生じた染料のモル当たり0.1から0.9molのアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンを添加することを特徴する。
【0038】
本発明による濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液を生成させるための更なる好ましい方法は、式(1)の生じる染料のモル当たり0から3molのトリアルカノールアミンをカップリング成分HKと混合しそしてジアゾ化2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸を添加し、そして反応が終わった後の染料溶液に式(1)の生じた染料のモル当たり0.1から0.9molのアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンを添加することを特徴する。
【0039】
本発明による濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液を生成させる方法は、好ましい具体的態様において、単離することなくジアゾ化2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸をカップリング反応に用い、しかも中和をカップリング中に有機又は無機塩基により遂行し、そして引き続いて形成塩をトリアルカノールアンモニウム塩又はその溶液の添加と共に限外濾過により除去し、そしてその後にこの染料溶液に上記に同定されている量のアミンを添加することを特徴する。
【0040】
本発明の濃厚染料溶液は、適切な場合水での希釈後、特に皮革を染色する並びに紙(厚紙及び板紙を含めて)を染色する及び印刷するために用いられ、しかしてこれらの材料はたとえばパルプにて、被覆により又は浸漬により染色可能である。そのほかに、この種の液状処方物はまた、生地材料特にセルロースの連続又は回分染色法に用いられ得る。本発明の濃厚染料溶液は、紙又は生地のような基材の無接触印刷のためのインクジェット用インキ又は他のインキ及び処方物を製造するための基剤として用いられ得る。更なる改質をしなくても、本発明の処方物は、紙又は生地のような基材の無接触印刷のために直接的に用いられ得る。
【0041】
本発明は更に、無垢木材又は木材チップ若しくはチップボード又は木材ファイバーボードを色付けするための木材用ステインを製造するための、アニオン性染料の本発明の染料調製物の使用を提供する。ビーム、厚板、又は家具若しくは建築物の部品のような完成物体の形態の木材を色付けすることが、本発明による木材用ステインの好ましい使用である。本発明による液状処方物の施用は、木材表面の全部又は一部に対して行われ得る(木材又はベニヤにおける色欠陥を補償するために)。本発明による液状処方物は、水性ステイン(主溶媒の水)、溶媒性ステイン(約30〜95%の有機溶媒)又は化学ステイン(一般に水で希釈可能である)に用いられ得る。
【0042】
以下の例は、本発明を例示する。別段指摘されていなければ、部数はすべて重量による部数であり、そして%は重量%である。
【0043】
実施例1
1500gの水及び75gの30%苛性ソーダから調製された希薄水酸化ナトリウム水溶液中に160gの2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸を溶解し、そして36.3gの亜硝酸ナトリウムと混合する。この溶液を125gの氷と172.5gの30%塩酸の混合物中に計量し、そしてジアゾ化する。生じた懸濁液を濾過し、そしてこのプレスケースを希塩酸で洗浄する。
【0044】
引き続いて、62.8gのバルビツル酸及び上記のジアゾプレスケーキを875gの脱イオン水中に導入し、そしてその中で撹拌する。この懸濁液のpHを82gのトリエタノールアミンの滴加によって5〜6に調整し、そしてカップリング中維持する。
【0045】
カップリング中、内部温度は20と35℃の間にある。反応が終わった後、この染料溶液を33.3g(0.32mol)の2−(2−アミノエトキシ)エタノール及び2.5gのProxelTMGXL(ProxelはZeneca AG Products, Inc.の商標であり、そして1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(CAS番号:2634−33−5)を含む)と混合し、そして脱イオン水で1662.5gに希釈する。かくして得られた溶液のサンプルは0℃における2週間の貯蔵及び解凍後でさえ、それが分離も縞の発現もしなかったので安定性であった。同様に、50℃にて2週間貯蔵されそして室温まで冷却されたサンプルは、分離も縞の発現もしなかったことが認められた。
【0046】
実施例2
62.8gのバルビツル酸を875gの水及び82gのトリエタノールアミン中に溶解しそして次いで実施例1のジアゾプレスケーキを少しずつ添加すると、実施例1と同様な品質の染料溶液が得られる。
【0047】
実施例3
32gのデヒドロチオトルイジンモノスルホン酸(=2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸)をジアゾ化しそしてジアゾ化生成物を単離するために、実施例1を繰り返す。室温にて、15.5gの2−シアノイミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジンを25gの水及び34.7gのトリエタノールアミン中に懸濁/溶解する。次いで、ジアゾプレスケーキを添加し、そしてこの反応混合物を更に150gの水で希釈する。カップリングが終わった後、この染料溶液を清澄にし、8.4g(0.08mol)の2−(2−アミノエトキシ)エタノール及び0.7gのProxelTMGXLと混合し、そして脱イオン水で465gに希釈する。
【0048】
実施例4
バルビツル酸上におけるカップリングを含めて、実施例1を繰り返す。反応が終わった後、染料溶液を33.3g(0.26mol)のN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び2.5gのProxelTMGXL(ProxelはZeneca AG Products, Inc.の商標であり、そして1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(CAS番号:2634−33−5)を含む)と混合し、そして脱イオン水で1662.5gに希釈する。かくして得られた溶液のサンプルは0℃における2週間の貯蔵及び解凍後でさえ、それが分離も縞の発現もしなかったので安定性であった。同様に、50℃にて2週間貯蔵されそして室温まで冷却されたサンプルは、分離も縞の発現もしなかったことが認められた。
【0049】
実施例5
実施例4を繰り返すが、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが33.3g(0.32mol)の3−ジメチルアミノ−1−プロパノールにより置換される。同じ試験条件下で、生じた染料溶液は、上記に挙げられたのと同じ良好な安定性を示す。
【0050】
実施例6
33.3g(0.21mol)の2−(2−ジエチルアミノエトキシ)エタノールによる実施例4におけるN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの置換もまた、上記に挙げられたのと同様な安定性を備えた染料溶液をもたらした。
【0051】
実施例7
2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸のジアゾ化を、実施例1と同様にして行う。更なる反応のために、ジアゾ懸濁液を62.8gのバルビツル酸と混合し、そして30%苛性ソーダでpH3.5に調整する。このpHをカップリング反応中維持する。
【0052】
引き続いて、この染料懸濁液を50℃に加熱し、そしてトリエタノールアミンの計量添加によりpH6に調整する。DL5膜(巻きモジュール,膜面積0.55m2)を備えた実験室限外濾過機種を最初に12bar及び46〜48℃にて操作して500gだけ濃縮し、そして次いで透過物の導電率が<1mS/cmで且つ滞留物中のアルカリ金属イオンのレベルが<300ppmになるまでダイアフィルトレーションモードにて操作する。適切な場合、41.6gのトリエタノールアミン、73.6gの水及び32.1gの30%塩酸から作製された塩酸トリエタノールアンモニウムの溶液を、ダイアフィルトレーション中添加する。引き続いて、滞留物を更に400gだけ濃縮し、そして染料及びアミノアルコールのレベルを検査しそして実施例1において同定された比率に調整する。この目的のために、最初にトリエタノールアミンを補充し、そしてその後に33.3gの2−(2−アミノエトキシ)エタノール及び2.5gのProxelTMGXLを添加する。この染料溶液を脱イオン水で1662.5gに希釈する。
同じ試験条件下で(同時に行われる)、同じ良好な安定性が認められた。
【0053】
実施例8
160gの2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸を1500gの50℃における熱水中に懸濁し、そして107.6gのトリエタノールアミンでもって溶解する。引き続いて、ジアゾ化を実施例1と同様にして行う。更なる反応のために、ジアゾ化懸濁液を62.8gのバルビツル酸と混合し、そしてトリエタノールアミンでpH5.5に調整する。このpHをカップリング反応中維持し、しかしてこのために合計134.1gのトリエタノールアミンが消費される。
【0054】
DL5膜(巻きモジュール,膜面積0.55m2)を備えた実験室限外濾過機種を最初に20bar及び46〜48℃にて操作して500gだけ濃縮し、そして次いで透過物の導電率が<1mS/cmで且つ滞留物中のアルカリ金属イオンのレベルが<300ppmになるまでダイアフィルトレーションモードにて操作する。適切な場合、131gのトリエタノールアミン、208gの水及び90gの30%塩酸から作製された塩酸トリエタノールアンモニウムの溶液を、ダイアフィルトレーション中添加する。引き続いて、滞留物を更に700gだけ濃縮し、そして染料及びアミノアルコールのレベルを検査しそして実施例1において同定された比率に調整する。この目的のために、最初にトリエタノールアミンを補充し、そしてその後に33.3gの2−(2−アミノエトキシ)エタノール及び2.5gのProxelTMGXLを添加する。この染料溶液を脱イオン水で1662.5gに希釈する。
同じ試験条件下で(同時に行われる)、同じ良好な安定性が認められた。
【0055】
比較例A
53.4g(0.41mol)の3−ジエチルアミノ−1−プロピルアミン(染料のモル当たり0.9molのアミン)による実施例4におけるN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの置換は、染料の沈殿をもたらした。このペーストは、再び溶解され得なかった(加熱によってさえ溶解され得なかった)。
【0056】
比較例B
43.1g(0.41mol)のジエタノールアミンによる実施例4におけるN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの置換は、+50℃にて貯蔵しそして室温まで冷却した後に沈殿物を形成する不安定な溶液をもたらした。
【0057】
実施例1〜8を繰り返したが、しかし殺生物剤を添加しなかった。すなわち、ProxelTMGXLを添加しなかった。同じ試験条件下で(同時に行われる)、同じ良好な安定性が認められた。
【0058】
染色処方
染色処方A
70部の化学漂白マツ材サルファイトセルロース及び30部の化学漂白カバ材サルファイトセルロースを、叩解機にて2000部の水中に叩解する。この紙料に、1.5部の実施例1の液状染料調製物を添加する。20分の混合時間後、これから紙を作る。このようにして得られた吸収紙は、黄色の色彩を有する。
【0059】
染色処方B
叩解機にて2000部の水と共に叩解された100部の化学漂白サルファイトセルロースに、1.5部の実施例1の液状染料調製物を添加する。15分間十分に混合した後、樹脂サイズ及び硫酸アルミニウムを用いて慣用のサイジングを遂行する。この材料から作られた紙は、各場合において黄色の色相を示す。
【0060】
染色処方C
95部の水及び5部の実施例1の本発明の染料溶液から成る染料水溶液に、無サイズ紙の吸収性ウエブを40〜50℃にて引き通す。
【0061】
過剰の染料溶液を2本ロールにより絞り出す。この乾燥された紙のウエブは、各場合において黄色の色彩を有する。
【0062】
染色処方D
15kgの古紙(木材をベースとしたもの)、25kgの漂白された砕木及び10kgの漂白されていないサルファイトセルロースを水と混合し、そして3%水性懸濁液が得られるまで叩解した。この懸濁液を2%水性懸濁液に希釈した。連続撹拌下で、5%カオリン(チャイナクレー,該懸濁液の乾燥繊維分を基準として)及び1.25kgの実施例1からの5%希釈染料調製物を添加した。
【0063】
20分後、1%の樹脂接着剤分散液(乾燥繊維分を基準として)を添加した。製紙用懸濁液を抄紙機に移す直前にミョウバンを添加することにより、この均質な懸濁液をpH5にもたらした。この手順後、黄色紙が生成された。
【0064】
実施例2から8の染料調製物は、処方AからDと同様にして染色するために用いられ得る。
【0065】
染色処方E
2.5部の実施例1の染料調製物を100部の脱塩水中に60℃にて溶解し、そして引き続いて900部の冷脱塩水で希釈する。次いで、100部の木綿トリコット(漂白されたもの)を浴中に導入する。5分後、10部のカ焼硫酸ナトリウムを添加する。35分中に、染浴の温度を連続的に95℃に上げる。この温度を60分間維持し、そして次いで染浴を30分間かけて70℃に冷却する。次いで、染色物を液から取り出し、水ですすぎ、そして乾燥する。得られた染色物は、黄色の色彩を有する。
【0066】
実施例2〜8の染料調製物は、同様なやり方で木綿を染色するために用いられ得る。
【0067】
染色処方F
実施例Eの方法に類似して実施例1の染料で約1/1の標準深みにて染色された100部の木綿トリコットを、中間乾燥なしに、25℃における1000部の水道水中で、5部の塩化ナトリウム及び4部の後処理剤(ジエチレントリアミンとジシアンジアミドとの反応から得られたもの)と混合する。染浴のpH値を6.5〜7に調整する。この浴を20分間かけて40℃に加熱し、そしてこの温度を更に20分間維持する。その後、この素材を冷水道水ですすぐ。このようにして後処理された黄色木綿は、改善洗濯堅牢度を有する。
【0068】
実施例2〜8の染料でもって、染色が同様なやり方で行われ得る。
【0069】
染色処方G
100部の外皮のあるクロム銀面皮を50℃にて、800部の水、2部のアンモニア及び0.3部の湿潤剤中で90分間前処理する。400部の水、2部のアンモニア(25%水溶液)、スルホン化魚油をベースとした2部のアニオン性脂肪液及び1部の浸透助剤から成る別のフロート中で、この革を50℃にて15分間ドラム処理した。同じ温度にて、実施例1に従って作られた6部の染料調製物を添加し、そして革を更に60分間処理した。その後、60部の水で希釈された3部のギ酸を添加し、そして革を更に20分間処理した。引き続く仕上げ、洗浄及び乾燥について、慣用の手順を用いた。
得られた革は、ムラのない黄色の色相を有する。
【0070】
更なる低親和性の植物再ナメシ革もまた、公知方法に従って染色され得る。
【0071】
実施例2〜8の染料でもって、染色が同様なやり方で行われ得る。
【0072】
染色処方H
針葉樹材(ヨーロッパ産トウヒ)の小幅板及び広葉樹材(ブナ)の小幅板を各々約5cmの断片に切断し、そして希釈された実施例1による染料溶液(10部の水及び1部の実施例1による染料溶液)中に数分間浸し、そして10時間乾燥した後に淡い帯黄色の小幅板断片が得られた。
【0073】
実施例2〜8の染料でもって、染色が同様なやり方で行われ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液であって、
a)重量により5%から30%の式
【化1】

〔ここで、Kはアセトアセトアニリド、ピリドン、ピラゾロン又はピリミジン系のカップリング成分である〕
の染料と、
b)式(1)の染料のモル当たり0.1から0.9molのアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンと、
c)式(1)の染料のモル当たり0から3molのトリアルカノールアミン
とを含む濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液。
【請求項2】
Kが、式(2)
【化2】

〔ここで、
1及びY2は独立に、=O、=NH又は=N−C1~4アルキルであり、
3は、=O、=S、=NR又は=N−CN(ここで、RはH又はC1~4アルキルのどちらかである)であり、そして
1及びR2は独立に、H、非置換アルキル、非置換フェニル、置換アルキル又は置換フェニルである〕
のカップリング成分であることを特徴とする、請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液。
【請求項3】
アミノアルコキシアルコールが、式NR′R″R'''(ここで、R′、R″及びR'''は同一に又は独立にH、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ペンチル−、ヘキシル−又は−((CH2nO)m−(CH2nOHであり、しかもR′、R″及びR'''の少なくとも一つは−((CH2nO)m−(CH2nOHであり、n=2、3又は4であり又はm=1から20の整数である)のアミンであることを特徴とする、請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液。
【請求項4】
モノアルカノールアミンが、式NR′R″R'''(ここで、R′はヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−、ヒドロキシブチル−、ヒドロキシペンチル−又はヒドロキシヘキシル−であり、そしてR″及びR'''はメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ペンチル−、ヘキシル−であり、あるいはR″及びR'''は一緒に5から6員環(O又はNから選択されたへテロ原子により中断されていてもよい)を形成する)のアミンであることを特徴とする、請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液。
【請求項5】
トリアルカノールアミンが、C2からC4のアルカノール基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液。
【請求項6】
請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液を生成させる方法において、カップリング成分HK上へのジアゾ化2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸のカップリング中に有機塩基を添加し、そして反応が終わった後の染料溶液に式(1)の染料のモル当たり0.1から0.9molのアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンを添加することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液を生成させる方法において、有機塩基をカップリング成分HKに添加しそして次いでジアゾ化2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸を添加し、そして反応が終わった後の染料溶液に式(1)の染料のモル当たり0.1から0.9molのアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンを添加することを特徴とする方法。
【請求項8】
単離することなくジアゾ化2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸をカップリング反応に用い、しかも中和をカップリング中に有機又は無機塩基により遂行し、そして引き続いて形成塩をトリアルカノールアンモニウム塩又はその溶液の添加と共に限外濾過により除去し、そしてその後にこの染料溶液に式(1)の染料のモル当たり0.1から0.9molのアミノアルコキシアルコール又はモノアルカノールアミンを添加することを特徴とする、請求項6又は7に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液を生成させる方法。
【請求項9】
請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液の使用であって、皮革、セルロース材料、特に紙及び/又は木材及び/又は厚紙を染色する及び/又は印刷するための使用。
【請求項10】
請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液の使用であって、無接触印刷用の特にインクジェット印刷用のインキ及び処方物を製造するための使用。
【請求項11】
基材であって、それが請求項1に記載の濃厚な貯蔵安定性の染料水溶液で染色された又は印刷されたことを特徴とする基材。

【公表番号】特表2007−528928(P2007−528928A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502332(P2007−502332)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050971
【国際公開番号】WO2005/087872
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】