説明

濃度測定装置

【課題】外部から浸入した雨水や漏れた試料液等による電気的な不具合の発生を抑制することができる濃度測定装置を提供する。
【解決手段】試料セル210、試料液導入排出手段220、薬液注入手段230、光学検出手段240、攪拌手段250、試料液に含まれる特定成分の濃度を測定する測定手段、各手段の動作を制御する制御手段120及び各手段に電力を供給する電力供給手段130を有する本体ブロックと、本体ブロックの外部に設けられ、商用電源から入力された電源電圧を当該電源電圧よりも低い弱電電圧に降圧して出力する電圧変換手段20と、を備えた濃度測定装置1であって、電力供給手段130は、電圧変換手段20から出力された弱電電圧に基づいて、少なくとも試料液導入排出手段220、薬液注入手段230、光学検出手段240、攪拌手段250、測定手段及び制御手段120に電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料液の成分濃度を測定する濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラ等の水処理システムには、ろ過処理、軟水化処理、脱酸素処理等を施した処理水が用いられている。また、処理水の流通ラインには、処理水に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)、溶存酸素、残留塩素等の濃度を検査するため、各種の測定装置が設けられている。この種の測定装置として、例えば、試料液と薬液との呈色反応により試料液の成分濃度を測定する濃度測定装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3214400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した濃度測定装置は、試料セルへの試料液の導入及び試料セルからの試料液の排出を行う機構、試料セルへ薬液を注入する機構、試料セル内の試料液及び薬液を攪拌する機構等を備えている。これらの機構には、動力源として電磁弁やモータ等が用いられている。これら動力源の動作は、装置の内部に設けられた制御基板により制御されている。
【0005】
一方、濃度測定装置を屋外に設置した場合、装置の内部に雨水が浸入する可能性がある。また、濃度測定装置を屋内に設置した場合でも、装置に導入した試料液や薬液(以下、「試料液等」という)が内部に漏れる可能性がある。これら雨水や漏水した試料液等が制御基板に接触すると、電気的な不具合が発生し、装置が正常に動作しなくなるおそれがある。
【0006】
従って、本発明は、外部から浸入した雨水や漏れた試料液等による電気的な不具合の発生を抑制することができる濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、試料液と薬液との呈色反応により試料液の成分濃度を測定する濃度測定装置であって、試料液を収容する試料セル;前記試料セルへの試料液の導入及び前記試料セルからの試料液の排出を行う試料液導入排出手段;前記試料セルへ薬液を注入する薬液注入手段;前記試料セル内の試料液及び薬液を攪拌する攪拌手段;薬液と共に攪拌された試料液の透過光強度を検出する光学検出手段;前記光学検出手段により検出された透過光強度に基づいて、試料液に含まれる特定成分の濃度を測定する測定手段;前記試料液導入排出手段、前記薬液注入手段、前記攪拌手段、前記光学検出手段及び前記測定手段の動作を制御する制御手段;及び前記試料液導入排出手段、前記薬液注入手段、前記攪拌手段、前記光学検出手段、前記測定手段及び前記制御手段に電力を供給する電力供給手段を有する本体ブロックと、前記本体ブロックの外部に設けられ、商用電源から入力された電源電圧を当該電源電圧よりも低い弱電電圧に降圧して出力する電圧変換手段と、を備え、前記電力供給手段は、前記電圧変換手段から出力された弱電電圧に基づいて、少なくとも前記試料液導入排出手段、前記薬液注入手段、前記攪拌手段、前記光学検出手段、前記測定手段及び前記制御手段に電力を供給する濃度測定装置に関する。
【0008】
また、前記電圧変換手段が、電源電圧から降圧した第1弱電電圧を出力する第1送電部と、第1弱電電圧より低い第2弱電電圧を出力する第2送電部と、を備え、前記電力供給手段は、前記第1送電部から出力された第1弱電電圧を、少なくとも前記試料液導入排出手段及び前記薬液注入手段に電力として供給し、且つ前記第2送電部から出力された第2弱電電圧を、少なくとも前記光学検出手段、前記測定手段、前記攪拌手段及び前記制御手段に電力として供給する構成とすることが好ましい。
【0009】
また、前記電圧変換手段が、電源電圧から降圧した第1弱電電圧を出力する送電部を備え、前記濃度測定装置が、前記第1弱電電圧を当該第1弱電電圧よりも低い第2弱電電圧に降圧して出力する第2弱電電圧変換部を備え、前記電力供給手段は、前記送電部から出力された第1弱電電圧を、少なくとも前記試料液導入排出手段及び前記薬液注入手段に電力として供給し、且つ前記第2弱電電圧変換部から出力された第2弱電電圧を、少なくとも前記光学検出手段、前記測定手段、前記攪拌手段及び前記制御手段に電力として供給する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部から浸入した雨水や漏れた試料液等による電気的な不具合の発生を抑制することができる濃度測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における濃度測定装置1の全体構成を示す分解斜視図である。
【図2】制御基板100の構成を模式的に示す概略構成図である。
【図3】測定部200の概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態における制御基板100Aの構成を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の濃度測定装置の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の濃度測定装置1は、ボイラ(不図示)に処理水を供給する水処理システムに設けられる。具体的には、濃度測定装置1は、ボイラに補給水としての処理水を供給する補給水ライン(不図示)に1又は複数個が設けられる。この補給水ラインには、ろ過装置、軟水化装置、脱酸素装置等(いずれも不図示)が接続されている。
【0013】
図1は、第1実施形態における濃度測定装置1の全体構成を示す分解斜視図である。図2は、制御基板100の電気的な構成を示す概略構成図である。図3は、測定部200の概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の濃度測定装置1は、本体ブロック10と、電圧変換手段としての電圧変換アダプタ20と、を備える。本体ブロック10は、制御基板100と、測定部200と、フロントカバー300と、中間カバー400と、リアカバー500と、を備える。本体ブロック10において、制御基板100は、フロントカバー300と中間カバー400の前面側(図1の手前側)との間に配置されている。また、本体ブロック10において、測定部200は、中間カバー400の背面側(図1の奥側)とリアカバー500との間に配置されている。
【0015】
まず、制御基板100とその周辺の構成について説明する。図2に示すように、制御基板100には、表示部110と、測定手段及び制御手段としての制御部120と、電圧供給手段としての電圧供給部130と、が実装されている。また、制御基板100には、外部機器(例えば、携帯式のデータ収集装置、外部記憶装置、水処理システムの他の機器等)とネットワークを介して接続可能な通信インタフェース(不図示)が実装されている。
【0016】
表示部110は、測定した試料液W1の硬度成分や溶存酸素等の濃度測定値や濃度測定装置1の動作状況等を表示する装置である。表示部110は、液晶表示パネルにより構成される。
【0017】
制御部120は、表示部110及び測定部200の動作を制御する装置である。また、制御部120は、光学検出部240により検出された透過光強度に基づいて、試料液W1に含まれる特定成分の濃度を測定する。そして、制御部120は、濃度測定値を表示部110に表示させる。更に、制御部120は、濃度基準値が基準値を超えるか否かを判定し、基準値を超える場合には、アラームを表示部110に表示させる。
【0018】
制御部120は、図2に示すように、表示部110と、測定部200の試料液導入排出部220(電磁弁222)、薬液注入部230、光学検出部240及び攪拌部250(いずれも後述)と電気的に接続されている。図2において、実線の矢印は、駆動信号や検出信号の送受信経路を示している。
【0019】
電圧供給部130は、電圧変換アダプタ20から出力された弱電電力を、表示部110、制御部120、試料液導入排出部220、薬液注入部230、光学検出部240及び攪拌部250に電力として供給する装置である。電圧供給部130は、図1に示すように、本体ブロック10の外部に設けられた電圧変換アダプタ20と電気的に接続されている。
【0020】
本実施形態の電圧供給部130は、図2に示すように、第1受電部131と、第2受電部132と、を備える。第1受電部131は、電圧変換アダプタ20の第1送電部21(後述)から出力された第1弱電電圧V1を入力する設備である。第2受電部132は、電圧変換アダプタ20の第2送電部22(後述)から出力された第2弱電電圧V2を入力する設備である。なお、第2弱電電圧V2は、第1弱電電圧V1よりも低い電圧である。
【0021】
電圧供給部130は、第1受電部131に入力した第1弱電電圧V1(24V)を、少なくとも試料液導入排出部220及び薬液注入部230に電力として供給する。また、電圧供給部130は、第2受電部132に入力した第2弱電電圧V2(15V)を、少なくとも表示部110、制御部120、光学検出部240及び攪拌部250に電力として供給する。図2において、破線の矢印は、電力の供給経路を示している。
【0022】
電圧変換アダプタ20は、商用電源(不図示)から入力された電源電圧V0(100V)を、この電源電圧よりも低い弱電電圧(V1、V2)に降圧して出力する変圧器を備えた装置である。本実施形態の電圧変換アダプタ20は、図2に示すように、第1送電部21と、第2送電部22と、を備える。第1送電部21は、電源電圧V0から降圧した第1弱電電圧V1(24V)を出力する設備である。第2送電部22は、電源電圧V0から降圧した第2弱電電圧V2(15V)を出力する設備である。第1送電部21と電圧供給部130の第1受電部131との間は、第1ケーブル31により接続されている。第2送電部22と電圧供給部130の第2受電部132との間は、第2ケーブル32により接続されている。
【0023】
一方、図1に示すように、中間カバー400の前面側と背面側とは、隔壁401により区画されている。中間カバー400の前面側には、基板収納部402が形成されている。制御基板100は、基板収納部402に取り付けられる。また、中間カバー400の前面側において、開口の周縁には、防水のためのパッキン403が設けられている。フロントカバー300を中間カバー400の前面側に装着すると、パッキン403によりフロントカバー300と中間カバー400との間が、下方を除いて密閉される。この構造によれば、濃度測定装置1の内部に浸入した雨水等や装置の内部で漏れた試料液W1が、フロントカバー300と中間カバー400との間に浸入しにくくなる。従って、雨水等や装置の内部で漏れた試料液W1が、制御基板100の側に接触するのを抑制することができる。
【0024】
また、フロントカバー300及び中間カバー400の下方には、開口(符号を省略)が形成されている。電圧変換アダプタ20から延出された第1ケーブル31及び第2ケーブル32は、フロントカバー300及び中間カバー400の下方に設けられた開口を介して濃度測定装置1の内部に導入される。
【0025】
次に、測定部200とその周辺の構成を、図1及び図3を参照して説明する。なお、図3では、測定部200の主要な構成のみを図示する。また、図3において、実線の矢印は、駆動信号や検出信号の送受信経路を示している。
【0026】
図3に示すように、測定部200は、試料セル210と、試料液導入排出手段としての試料液導入排出部220と、薬液注入手段としての薬液注入部230と、光学検出手段としての光学検出部240と、攪拌手段としての攪拌部250と、を備える。このうち、試料液導入排出部220及び薬液注入部230は、電圧変換アダプタ20から第1弱電電圧V1(24V)が供給される動力系の設備である。また、制御部120、光学検出部240及び攪拌部250は、電圧変換アダプタ20から第2弱電電圧V2(15V)が供給される測定系の設備である。
【0027】
試料セル210は、試料液W1(処理水)を収容する容器である。試料セル210は、不透明の樹脂材料により形成されている。図3に示す試料セル210は、図1に示す試料セル210の形状を簡略化したものである。試料セル210は、その側壁に一対の光透過窓211、212が形成されている。光透過窓211、212には、透明な板材(符号を省略)が嵌め込まれている。
【0028】
試料液導入排出部220は、試料セル210への試料液W1の導入及び試料セル210からの試料液W1(薬液W2を含む)の排出を行う設備である。試料液導入排出部220は、試料液導入管221と、電磁弁222と、試料液排出管223と、ベースプレート214(図1参照)と、を備える。
【0029】
試料液導入管221は、図3に示すように、試料セル210の光透過窓211及び212よりも下方の側壁に接続されている。試料液導入管221は、試料セル210へ試料液W1を導入する流路である。試料液導入管221には、電磁弁222が設けられている。電磁弁222は、試料液W1を採取する際に用いられる弁である。電磁弁222の開閉は、制御部120から出力される駆動信号により制御される。電磁弁222は、図1に示すベースプレート214の内部に、弁座、弁体及び弁軸からなる弁機構を組み込み(図1では不図示)、且つベースプレート214に弁軸を駆動するソレノイドコイルを載置することにより、取り付けられている。
【0030】
ベースプレート214には、サンプリングラインから試料液W1としての処理水を採取する流路及び測定後の試料液W1を外部へ排出する流路(いずれも不図示)が形成されている。また、ベースプレート214には、図1に示すように、装置の上部から浸入した雨水等を外部(下方)へ排出する排水孔215が設けられている。
【0031】
一方、試料液排出管223は、図3に示すように、試料セル210の光透過窓211及び212よりも上方の側壁に接続されている。試料液排出管223は、試料セル210から試料液W1を排出する流路である。図1に示すように、試料液導入管221及び試料液排出管223は、それぞれの両端部に、試料セル210の側壁及びベースプレート214と接続するためのコネクタ及びバンド(符号を省略)が取り付けられている。
【0032】
また、図1に示すように、試料セル210の背面側には、試料セル210と一体的に形成された仕切板213が設けられている。仕切板213の下端部は、排水孔215よりも前方側において、ベースプレート214に載置して取り付けられている。試料液導入管221の上方の端部は、仕切板213を貫通するコネクタを介して試料セル210の側壁に接続されている。また、試料液導入管221の下方の端部は、仕切板213を貫通するコネクタを介してベースプレート214(図1参照)に接続されている。試料液導入管221の下方の端部は、ベースプレート214において、サンプリングラインから試料液(処理水)W1を採取する流路(不図示)に連通されている。この流路には、電磁弁222(図3参照)が設けられている。
【0033】
一方、試料液排出管223の上方の端部は、仕切板213を貫通するコネクタを介して試料セル210の側壁に接続されている。また、試料液排出管223の下方の端部は、コネクタを介してベースプレート214に接続されている。試料液排出管223の下方の端部は、ベースプレート214において、測定後の試料液W1を外部に排出する流路(不図示)に連通されている。
【0034】
試料液導入管221及び試料液排出管223は、図1に示すように、試料セル210の背面側において、仕切板213とリアカバー500との間に配置される。
【0035】
薬液注入部230は、試料セル210へ薬液W2を注入する設備である。薬液注入部230は、薬液カートリッジ231と、ローラポンプ機構232と、を備える。薬液カートリッジ231は、薬液W2が充填された薬液パック(不図示)と、薬液パックに一端側が接続され且つ他端にノズルを有する弾性チューブとからなる注入体(不図示)とが収納された容器である。薬液W2には、試料液W1に含まれる特定成分(硬度成分、溶存酸素、残留塩素等)と反応して、発色又は変色する呈色試薬が配合されている。
【0036】
ローラポンプ機構232は、図1に示すように、試料セル210の上方に設けられている。ローラポンプ機構232及び試料セル210は、内部で連通している。ローラポンプ機構232の上部には、カートリッジ差込口233が設けられている。薬液カートリッジ231は、カートリッジ差込口233に着脱自在に装着される。
【0037】
ローラポンプ機構232は、ローラポンプ234を備える。ローラポンプ234を駆動して、薬液カートリッジ231に収納された注入体の弾性チューブを扱くことにより、薬液パック内の薬液W2をノズルから試料セル210に向けて注入することができる。ローラポンプ234の駆動は、制御部120から出力される駆動信号により制御される。
【0038】
ローラポンプ機構232の上部には、庇部235が設けられている。庇部235は、カートリッジ差込口233から仕切板213の背面側に向けて下がるように傾斜した板材である。カートリッジ差込口233の周囲から浸入した雨水等は、庇部235を伝わって仕切板213の背面側に導かれ、仕切板213とリアカバー500との間を落下する。そして、落下した雨水等は、ベースプレート214に形成された排水孔215から外部に排出される。これによれば、カートリッジ差込口233の周囲から浸入した雨水等が、制御基板100やローラポンプ234等に接触するのを抑制することができる。
【0039】
また、カートリッジ差込口233に装着された薬液カートリッジ231のシール部(不図示)から薬液W2が漏れた場合に、その薬液W2は、仕切板213の背面側に導かれ、仕切板213とリアカバー500との間を落下する。そして、落下した薬液W2は、ベースプレート214に形成された排水孔215から外部に排出される。これによれば、薬液カートリッジ231のシール部から漏れた薬液W2が、制御基板100やローラポンプ234等に接触するのを抑制することができる。
【0040】
光学検出部240は、薬液W2と共に攪拌された試料液W1の透過光強度を検出する設備である。光学検出部240は、図1及び図3に示すように、発光基板241と、受光基板244と、を備える。
【0041】
図3に示すように、発光基板241は、試料セル210の光透過窓211に向けて光を照射する設備である。発光基板241は、第1発光素子242と、第2発光素子243と、を備える。第1発光素子242及び第2発光素子243は、それぞれ発光波長の異なるLED(発光ダイオード)により構成される。第1発光素子242及び第2発光素子243の点灯/消灯は、制御部120から出力される駆動信号により制御される。
【0042】
発光基板241は、図1に示すように、発光基板防水ケース247に収納される。発光基板防水ケース247は、試料セル210の側壁に取り付けられる。これにより、第1発光素子242及び第2発光素子243は、試料セル210の光透過窓211に向くように配置される。
【0043】
また、図3に示すように、受光基板244は、試料セル210の光透過窓212を通過した透過光を受光する設備である。受光基板244は、第1受光素子245と、第2受光素子246と、を備える。第1受光素子245及び第2受光素子246は、フォトトランジスタにより構成される。第1受光素子245及び第2受光素子246は、受光した透過光強度に対応した検出信号を制御部120に出力する。
【0044】
受光基板244は、図1に示すように、受光基板防水ケース248に収納される。受光基板防水ケース248は、試料セル210の側壁に取り付けられる。これにより、第1受光素子245及び第2受光素子246は、試料セル210の光透過窓212に向くように配置される。
【0045】
攪拌部250は、試料セル210の内部に収容された試料液W1及び薬液W2を攪拌する設備である。図1に示すように、攪拌部250は、試料セル210の底部に設けられている。攪拌部250は、攪拌子251(図3参照)と、ステータコイル252と、防水カバー253と、を備える。攪拌子251は、試料セル210の底部に、回転可能に配置されている。ステータコイル252は、試料セル210の周囲を囲むようにリング状に形成された電磁誘導コイルである。ステータコイル252に駆動電流を供給すると、電磁誘導の作用により、試料セル210の底部に配置された攪拌子251が非接触で回転する。ステータコイル252の動作は、制御部120から供給される駆動電流により制御される。
【0046】
ステータコイル252には、防水カバー253が装着される。防水カバー253は、下方に向けて開口した、断面略コ字形の部材である。ステータコイル252に防水カバー253を装着することにより、試料セル210の上部から落下した雨水等や薬液カートリッジ231から漏れた薬液W2が、ステータコイル252に接触するのを抑制することができる。
【0047】
次に、上記のように構成された測定部200の動作について簡単に説明する。まず、測定セル210内には、前回の測定時に導入された試料液W1が貯留されている。この状態で、制御部120は、試料液導入排出部220の電磁弁222を開状態に制御する。これにより、新たな試料液W1として、処理水が試料液導入管221から試料セル210へ導入される。制御部120は、試料セル210の内部が新たな試料液W1で置換され、且つ所定量が貯留されると、電磁弁222を閉状態に制御する。
【0048】
次に、制御部120は、光学検出部240の第1発光素子242又は第2発光素子243を点灯させる。同時に、制御部120は、光学検出部240の第1受光素子245又は第2受光素子246から検出信号を取得し、薬液W2の注入前の透過光強度を測定する。続いて、制御部120は、攪拌部250のステータコイル252を制御して、攪拌子251を回転させる。また同時に、制御部120は、薬液注入部230のローラポンプ234を駆動して、薬液カートリッジ231から試料セル210に向けて薬液W2を所定量注入させる。
【0049】
試料液W1と薬液W2とを攪拌したときに、試料液W1に特定成分が含まれる場合、薬液W2に含まれる呈色試薬がこの特定成分と反応し、試料液W1が発色(又は変色)する。制御部120は、試料液W1中の特定成分と薬液W2の呈色試薬とを所定時間反応させた後、光学検出部240の第1発光素子242又は第2発光素子243を点灯させる。同時に、制御部120は、光学検出部240の第1受光素子245又は第2受光素子246から検出信号を取得する。そして、制御部120は、光学検出部240により検出された透過光強度と薬液W2の注入前の透過光強度との比から透過率を計算し、この透過率に対して所定の濃度判定テーブルや検量線を参照して、試料液W1に含まれる特定成分の濃度を測定する。特定成分の濃度が測定されると、制御部120は、濃度測定値を表示部110に表示する。また、制御部120は、その濃度測定値が基準値を超えるか否かを判定する。濃度測定値が基準値を超える場合、制御部120は、アラームを表示部110に表示させる。
【0050】
上述した第1実施形態の濃度測定装置1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態の濃度測定装置1において、電圧変換アダプタ20は、商用電源から入力された電源電圧を、その電圧よりも低い弱電電圧に降圧して電圧供給部130に出力する。電圧供給部130では、電圧変換アダプタ20から出力された弱電電圧を、試料液導入排出部220、薬液注入部230、制御部120、光学検出部240及び攪拌部250に電力として供給する。
【0051】
そのため、外部から浸入した雨水等や漏れた試料液W1等が制御基板100に接触した場合でも、内部で使用される電圧は電源電圧よりも低い弱電電圧であるため、電気的な不具合の発生が抑制される。従って、電気的な不具合の発生により装置が正常に動作しなくなる可能性を小さくすることができる。
【0052】
また、本実施形態の濃度測定装置1において、電圧変換アダプタ20は、商用電源から入力された電源電圧V0を、第1弱電電圧V1及び第2弱電電圧V2に降圧して電圧供給部130に出力する。電圧供給部130では、電圧変換アダプタ20から出力された第1弱電電圧V1を少なくとも試料液導入排出部220、薬液注入部230に電力として供給し、第2弱電電圧V2を少なくとも制御部120、光学検出部240及び攪拌部250に電力として供給する。
【0053】
そのため、濃度測定装置1の内部に、電源電圧を2つの弱電電圧に降圧する変圧器を設ける必要がない。これによれば、外部から浸入した雨水等や漏れた試料液W1等が変圧器に接触して電気的な不具合を発生することがない。このため、電気的な不具合の発生により装置が正常に動作しなくなる可能性をより小さくすることができる。また、濃度測定装置1を小型化することができる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明の濃度測定装置の第2実施形態を、図4を参照しながら説明する。図4は、第2実施形態における制御基板100Aの構成を模式的に示す概略構成図である。なお、本実施形態の濃度測定装置1Aの基本構成は第1実施形態と同じである。そのため、本体ブロック10や測定部200の構成については説明を省略する。また、同等部分については、第1実施形態と同一符号を付して説明する。
【0055】
図4において、電圧供給部130Aは、電圧変換アダプタ20Aから出力された弱電電力を、表示部110、制御部120、試料液導入排出部220、薬液注入部230、光学検出部240及び攪拌部250に電力として供給する装置である。電圧供給部130Aは、本体ブロック10(図1参照)の外部に設けられた電圧変換アダプタ20Aと電気的に接続されている。
【0056】
本実施形態の電圧供給部130Aは、第1受電部131と、第2弱電電圧変換部133と、を備える。第1受電部131は、電圧変換アダプタ20Aの第1送電部21から出力された第1弱電電圧V1(24V)を入力する設備である。第2弱電電圧変換部133は、第1弱電電圧V1を、これよりも低い第2弱電電圧V2(15V)に降圧する変圧器である。
【0057】
電圧供給部130Aは、第1受電部131に入力した第1弱電電圧V1(24V)を、少なくとも試料液導入排出部220、薬液注入部230に電力として供給する。また、電圧供給部130Aは、第2弱電電圧変換部133において、第1弱電電圧V1(24V)を第2弱電電圧V2(15V)に降圧して、少なくとも制御部120、光学検出部240及び攪拌部250に電力として供給する。図4において、破線の矢印は、電力の供給経路を示している。
【0058】
電圧変換アダプタ20Aは、商用電源(不図示)から入力された電源電圧V0(100V)を、この電源電圧よりも低い第1弱電電圧(V1)に降圧して出力する変圧器を備えた装置である。本実施形態の電圧変換アダプタ20Aは、第1送電部21を備える。第1送電部21は、電源電圧V0から降圧した第1弱電電圧V1(24V)を出力する設備である。電圧変換アダプタ20Aの第1送電部21と電圧供給部130Aの第1受電部131との間は、第1ケーブル31により接続されている。
【0059】
上述した第2実施形態の濃度測定装置1Aによれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態の濃度測定装置1Aにおいて、電圧変換アダプタ20Aは、商用電源から入力された電源電圧V0を、第1弱電電圧V1に降圧して電圧供給部130Aに出力する。電圧供給部130Aでは、電圧変換アダプタ20Aから出力された第1弱電電圧V1を、少なくとも試料液導入排出部220、薬液注入部230に電力として供給する。また、第2弱電電圧変換部133において、第1弱電電圧V1を第2弱電電圧V2に降圧して、少なくとも制御部120、光学検出部240及び攪拌部250に電力として供給する。
【0060】
そのため、外部から浸入した雨水や漏れた試料液W1等が制御基板100Aに接触した場合でも、内部で使用される電圧は電源電圧よりも低い弱電電圧であるため、電気的な不具合の発生が抑制される。従って、電気的な不具合の発生により装置が正常に動作しなくなる可能性を小さくすることができる。
【0061】
また、電圧変換アダプタ20Aと電圧供給部130Aとの間を接続するケーブルの数を1本に削減することができる。
更に、制御基板100Aに、24V及び15V以外の弱電電圧で動作する装置が接続された場合でも、第1弱電電圧V1(24V)から要求される電圧に降圧可能な変圧器を備えた電圧供給部130Aに交換することで対応することができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した第1及び第2実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、第1及び第2実施形態では、第1弱電電圧V1が供給される動力系の設備として、試料液導入排出部220及び薬液注入部230について説明した。これに限らず、第1弱電電圧V1が供給される他の動力系の設備が設けられていてもよい。また、第1及び第2実施形態では、第2弱電電圧V2が供給される測定系の設備として、制御部120、光学検出部240及び攪拌部250について説明した。これに限らず、第2弱電電圧V2が供給される他の測定系の設備が設けられていてもよい。他の測定系の設備としては、例えば、薬液カートリッジ231の挿入検出用のフォトセンサ、ローラポンプ234の回転位置検出用のフォトセンサ等が挙げられる。
【0063】
また、第1実施形態では、電圧変換アダプタ20において、商用電源から入力された電源電圧V0を第1弱電電圧V1及び第2弱電電圧V2に降圧して電圧供給部130に出力する例について説明した。これに限らず、電源電圧V0を、本体ブロック10に接続された機器の電圧に応じて、更に複数の弱電電圧に降圧して電圧供給部130に出力する構成としてもよい。
【0064】
また、第2実施形態では、電圧供給部130Aの第2弱電電圧変換部133において、電圧変換アダプタ20Aから出力された第1弱電電圧V1を第2弱電電圧V2に降圧する例について説明した。これに限らず、電圧供給部130Aにおいて、本体ブロック10に接続された機器の電圧に応じて、第1弱電電圧V1を更に複数の弱電電圧に降圧する構成としてもよい。
【0065】
また、第1及び第2実施形態では、第1弱電電圧V1を24V、第2弱電電圧V2を15Vとした例について説明した。しかし、第1弱電電圧V1及び第2弱電電圧V2は、第1弱電電圧V1>第2弱電電圧V2の関係を満たせば、他の電圧であってもよい。更に、第1弱電電圧V1及び第2弱電電圧V2は、交流電圧又は直流電圧のいずれであってもよい。
【0066】
また、薬液カートリッジ231に充填される薬液W2は、試料液W1に含まれる硬度成分と呈色反応する薬液、試料液W1に含まれる溶存酸素と呈色反応する薬液又は試料液W1に含まれる残留塩素と呈色反応する薬液のいずれであってもよく、更には、他の特定成分(例えば、シリカ、炭酸イオン、炭酸水素イオン、水素イオン等)と呈色反応する薬液であってもよい。
【0067】
また、第1及び第2実施形態では、フロントカバー300及び中間カバー400の下方に開口(不図示)が形成されている。これに限らず、フロントカバー300及び中間カバー400の下方を閉鎖し、基板収納部402を略密閉する構造としてもよい。この場合、基板収納部402の下方に、配線用のスリットを形成することにより、第1ケーブル31及び第2ケーブル32を濃度測定装置1(1A)の内部に導入することができる。このような構造とすることにより、制御基板100(100A)の防水性をより高めることができる。
【符号の説明】
【0068】
W1:試料液(処理水)
W2:薬液
1,1A:濃度測定装置
10:本体ブロック
20,20A:電圧変換アダプタ(電圧変換手段)
21:第1送電部
22:第2送電部
100:制御基板
120:制御部(測定手段、制御手段)
130,130A:電圧供給部(電圧供給手段)
131:第1受電部
132:第2受電部
133:第2弱電電圧変換部
200:測定部
210:試料セル
220:試料液導入排出部(試料液導入排出手段)
230:薬液注入部(薬液注入手段)
240:光学検出部(光学検出手段)
250:攪拌部(攪拌手段)
300:フロントカバー
400:中間カバー
500:リアカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液と薬液との呈色反応により試料液の成分濃度を測定する濃度測定装置であって、
試料液を収容する試料セル;
前記試料セルへの試料液の導入及び前記試料セルからの試料液の排出を行う試料液導入排出手段;
前記試料セルへ薬液を注入する薬液注入手段;
前記試料セル内の試料液及び薬液を攪拌する攪拌手段;
薬液と共に攪拌された試料液の透過光強度を検出する光学検出手段;
前記光学検出手段により検出された透過光強度に基づいて、試料液に含まれる特定成分の濃度を測定する測定手段;
前記試料液導入排出手段、前記薬液注入手段、前記攪拌手段、前記光学検出手段及び前記測定手段の動作を制御する制御手段;及び
前記試料液導入排出手段、前記薬液注入手段、前記攪拌手段、前記光学検出手段、前記測定手段及び前記制御手段に電力を供給する電力供給手段を有する本体ブロックと、
前記本体ブロックの外部に設けられ、商用電源から入力された電源電圧を当該電源電圧よりも低い弱電電圧に降圧して出力する電圧変換手段と、を備え、
前記電力供給手段は、前記電圧変換手段から出力された弱電電圧に基づいて、少なくとも前記試料液導入排出手段、前記薬液注入手段、前記攪拌手段、前記光学検出手段、前記測定手段及び前記制御手段に電力を供給する、
濃度測定装置。
【請求項2】
前記電圧変換手段は、電源電圧から降圧した第1弱電電圧を出力する第1送電部と、第1弱電電圧より低い第2弱電電圧を出力する第2送電部と、を備え、
前記電力供給手段は、前記第1送電部から出力された第1弱電電圧を、少なくとも前記試料液導入排出手段及び前記薬液注入手段に電力として供給し、且つ前記第2送電部から出力された第2弱電電圧を、少なくとも前記光学検出手段、前記測定手段、前記攪拌手段及び前記制御手段に電力として供給する請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記電圧変換手段は、電源電圧から降圧した第1弱電電圧を出力する送電部を備え、
前記濃度測定装置は、前記第1弱電電圧を当該第1弱電電圧よりも低い第2弱電電圧に降圧して出力する第2弱電電圧変換部を備え、
前記電力供給手段は、前記送電部から出力された第1弱電電圧を、少なくとも前記試料液導入排出手段及び前記薬液注入手段に電力として供給し、且つ前記第2弱電電圧変換部から出力された第2弱電電圧を、少なくとも前記光学検出手段、前記測定手段、前記攪拌手段及び前記制御手段に電力として供給する請求項1に記載の濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247345(P2012−247345A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120278(P2011−120278)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】