説明

濡れセンサ、濡れ測定システム、濡れ測定方法、及び、濡れ測定プログラム

【課題】ダミー部材に接触している測定対象物の濡れを測定可能な濡れセンサ等を提供する。
【解決手段】濡れセンサ110は、生物の少なくとも一部の形状を模し、測定対象物99に接触し、接触した前記測定対象物99に対して液体を吐出するダミー部材111と、前記ダミー部材111に形成され、前記測定対象物99に接触し、前記ダミー部材111によって前記液体が吐出された前記測定対象物99の濡れを測定するための一対の電極113と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の濡れを測定するための、濡れセンサ、濡れ測定システム、濡れ測定方法、及び、濡れ測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば非特許文献1には、ISO16840−7における、シートクッションの熱特性と水蒸気の発散特性とを特定する試験方法が開示されている。この試験方法は、臀部の形状を模したダミー部材と、ダミー部材に形成された、水蒸気を放出する複数の孔からなる水蒸気放出部と、ダミー部材における前記水蒸気放出部の近傍に形成された湿度センサと、を備える装置を使用して、ダミー部材に接触したシートクッションの湿度(シートクッションとダミー部材との間の湿度)を測定する方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「第3回日本シーティング・シンポジウム抄録集」、特定非営利活動法人 日本シーティング・コンサルタント協会、平成19年11月23日、P78からP79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1に記載された試験方法では、シートクッション(測定対象物)とダミー部材との間の湿度を測定できるが、湿度が100パーセント以上の場合、つまり、ダミー部材に接触している測定対象物が濡れている場合における測定対象物の濡れを計測することができなかった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダミー部材に接触している測定対象物の濡れを測定可能な、濡れセンサ、濡れ測定システム、濡れ測定方法、及び、濡れ測定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点に係る濡れセンサは、
生物の少なくとも一部の形状を模し、測定対象物に接触し、接触した前記測定対象物に対して液体を吐出するダミー部材と、
前記ダミー部材に形成され、前記測定対象物に接触し、前記ダミー部材によって前記液体が吐出された前記測定対象物の濡れを測定するための一対の電極と、
を備える。
【0007】
前記生物の少なくとも一部は、人体の臀部であってもよい。
【0008】
前記濡れセンサは、前記ダミー部材を加温する加温部をさらに備えてもよい。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第2の観点に係る濡れ測定システムは、
生物の少なくとも一部の形状を模し、測定対象物に接触し、接触した前記測定対象物に対して液体を吐出するダミー部材と、前記ダミー部材に形成され、前記測定対象物に接触し、前記ダミー部材によって前記液体が吐出された前記測定対象物の濡れを測定するための一対の電極と、を備える濡れセンサと、
前記濡れセンサを用いて前記測定対象物の濡れを測定する濡れ測定装置と、
を備える。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第3の観点に係る濡れ測定方法は、
生物の少なくとも一部の形状を模したダミー部材に測定対象物を接触させる接触ステップと、
前記接触ステップで前記ダミー部材に接触させた前記測定対象物に対して前記ダミー部材から液体を吐出させる吐出ステップと、
前記ダミー部材に形成された一対の電極を用いて、前記吐出ステップで前記液体が吐出された前記測定対象物の濡れを測定する測定ステップと、
を備える。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第4の観点に係る濡れ測定プログラムは、
コンピュータに、
生物の少なくとも一部の形状を模したダミー部材に接触した測定対象物に対して前記ダミー部材から液体を吐出させる吐出ステップと、
前記ダミー部材に形成された一対の電極を用いて、前記吐出ステップで前記液体が吐出された前記測定対象物の濡れを測定する測定ステップと、
を行わせる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る濡れセンサ、濡れ測定システム、濡れ測定方法、及び、濡れ測定プログラムによれば、ダミー部材に接触している測定対象物の濡れを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る濡れ測定システムの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る濡れセンサの表面を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る濡れセンサの側面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る濡れセンサの図2におけるA−A断面を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る濡れ測定装置が行う濡れ測定処理のフローチャートである。
【図6】各測定対象物の濡れの測定結果の一例のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施形態及び図面によって限定されるものではない。下記の実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0015】
なお、本実施形態では、人が座る車椅子に使用されるシートクッションを測定対象物とする。
【0016】
図1のように、濡れ測定システム100は、濡れセンサ110と、加圧部120と、濡れ測定装置130と、液量調整部150と、タンク160と、を備える。
【0017】
濡れセンサ110は、測定対象物99の濡れを測定するために使用される装置である。濡れセンサ110は、液体吐出部112と、電極113と、検出回路114と、加温部115と、を備える。液体吐出部112は、測定対象物99に対して液体を吐出する。電極113は、液体吐出部112が吐出した液体によって濡れた測定対象物99の濡れを測定するのに使用される。検出回路114は、電極113を用いて測定対象物99の濡れに応じた情報を生成して出力する。加温部115は、濡れセンサ110の表面を加温する。
【0018】
濡れセンサ110の構成を図2乃至4も参照して詳しく説明する。なお、濡れセンサ110における、測定対象物99が位置する方向を下方といい、その反対の方向を上方という(図4の矢印参照)。また、下方側に向いた面(測定対象物99が接触する領域を備える面)を表面といい、上方側に向いた面を背面という。
【0019】
濡れセンサ110は、ダミー部材111と、二つの液体供給路112bと、二組の一対の電極113と、四つの加温部115と、検出回路114と、を備える。
【0020】
ダミー部材111は、臀部(ここでは、太ももの一部も含まれる。)の形状を模し、測定対象物99に接触する(図4の点線の測定対象物99を参照)。ダミー部材111は、上方の面が開口した箱体111aと、この箱体111aに蓋をする蓋体111bとを備える。蓋体111bは適宜省略できる。箱体111aと蓋体111bとは、合成樹脂等、適宜の材料で形成できる。
【0021】
箱体111aの表面が測定対象物99に接触する接触面になる。そして、この表面が臀部の形状を模した形状になっている。箱体111aは、表面に、盛り上がった部分(以下では、盛り上がり部という。)を二つ備える。この二つの盛り上がり部(坐骨結節部)が、臀部の盛り上がった部分に相当する。
【0022】
盛り上がり部それぞれの頂部(つまり、ダミー部材111の略最下部)には、それぞれ、箱体111aに形成された貫通孔からなる吐出口112aが形成される。この吐出口112aにチューブ等から構成される液体供給路112bが接続されている。液体供給路112bには、タンク160から液量調整部150を介して供給される液体が流れる。液体供給路112bを流れる液体は、吐出口112aから吐出する。液体供給路112bと吐出口112aとによって、液体吐出部112が構成される。液体供給路112bは、その一部がダミー部材111に収容される。また、蓋体111bには貫通孔が設けられ、この貫通孔内を液体供給路112bが通る。
【0023】
箱体111aの表面の盛り上がり部の頂部それぞれの吐出口112aの近傍には、それぞれ、一対の電極113が形成される。この一対の電極113は、吐出口112aを挟んで形成される。各電極113は、各接続線116を介して検出回路114に電気的に接続される。なお、検出回路114及び各接続線116は、ダミー部材111の内部に収納される。
【0024】
一対の電極113は、測定対象物99に接触する。一対の電極113は、測定対象物99の抵抗値の測定に使用されるものである。測定対象物99の抵抗値は、測定対象物99の濡れに応じて変化する。例えば、測定対象物99が濡れれば濡れるほど、抵抗値は低くなる。これは、測定対象物99が濡れている場合、測定対象物99が液体によって電気を通しやすくなるからである。なお、測定対象物99は、絶縁物であることはいうまでもない。以上のように、測定対象物99の抵抗値を測定するということは、測定対象物99の濡れを測定することと同等である。このように、一対の電極113は、抵抗値の測定に使用されることによって、測定対象物99の濡れの測定に使用される。
【0025】
検出回路114は、図示しない交流電源回路(ダミー部材111の内部にあってもよいし、外部にあってもよい。)と接続される。検出回路114は、交流電源回路から供給される交流信号を一対の電極113が接触する測定対象物99の抵抗値に応じた信号(電圧)に変換する回路である。つまり、検出回路114は、測定対象物99の抵抗値を測定するための抵抗−電圧変換器として機能するものである。検出回路114の構成は、公知のものを採用できる。検出回路114は、変換した信号を濡れ測定装置130に供給する。この信号は、抵抗値に応じた電圧なので、この電圧に基づいて測定対象物99の抵抗値が算出できる。つまり、この信号は抵抗値に応じた信号(情報)であり、検出回路114は、電極113を用いて測定対象物99の濡れ(抵抗値)に応じた情報を生成して出力する。なお、この情報は、アナログの情報である。
【0026】
加温部115は、箱体111a内に収納される。加温部115は、所定のヒータ等によって構成される。加温部115は、箱体111a内の盛り上がり部に対応する位置に配置され、箱体111aの表面内の盛り上がり部の温度を上げるために、ダミー部材111を加温する。加温部115の数は、適宜決定できる。また、加温部115は、例えば、濡れ測定装置130によって制御される。また、濡れ測定装置130は、箱体111aの表面の盛り上がり部の温度を盛り上がり部に配置した温度計を用いて測定し、盛り上がり部の温度が所定の温度になるように、加温部115の加温の度合いを調整してもよい。この調整方法は、適宜の方法で行われる。
【0027】
加圧部120は、濡れ測定装置130によって制御され、ダミー部材111を測定対象物99に所定の荷重で押しつける。加圧部120は、適宜の装置によって構成される。
【0028】
タンク160は、液体を貯蔵する。タンク160は、図示しないチューブ等によって液量調整部150に接続される。
【0029】
液量調整部150は、濡れ測定装置130によって制御され、タンク160から液体供給路112bに流す液体の液量を調整する。液量調整部150は、ポンプ、弁等の適宜の装置によって構成される。
【0030】
濡れ測定装置130は、濡れ測定処理を行う。この濡れ測定処理は、濡れセンサ110から所定の情報を受け取って、受け取った所定の情報をもとにして濡れを算出する処理である。この処理を行うことによって、濡れ測定装置130は、濡れセンサ110を用いて測定対象物99の濡れ(ここでは、抵抗値)を測定する。
【0031】
濡れ測定装置130は、制御部131と、記憶部132と、表示部133と、A/Dコンバータ134と、タイマ136と、入力部137と、を備える。
【0032】
制御部131は、例えば、CPU(Central Processing Unit)131aとROM(Read Only Memory)131bとRAM(Random Access Memory)131cとによって構成され、濡れ測定装置130全体の制御を行うとともに、濡れ測定処理を行う。具体的には、CPU131aがROM131bに記録された濡れ測定プログラム131dに従って濡れ測定処理を行う。濡れ測定プログラム131dは、必要に応じてRAM131cに読み出される。RAM131cは、例えば、CPU131aのワーキングメモリとして機能する。
【0033】
なお、濡れ測定プログラム131dは、OS(Operation System)と協働してCPU131aに濡れ測定処理を行わせるものであってもよい。この場合、ROM131bには、OSも記録される。また、必要に応じてOSもRAM131cに読み出される。また、濡れ測定プログラム131dは、持ち運び可能な記憶媒体(例えば、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)131b、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)131b)に記録され、濡れ測定装置130に供給されてもよい。また、濡れ測定プログラム131dは、ネットワークを介して濡れ測定プログラム131dに供給されてもよい。濡れ測定プログラム131dが記録されたROM131b、RAM131c、持ち運び可能な記録媒体等は、コンピュータが読み取り可能なプログラム製品になる。
【0034】
記憶部132は、制御部131の制御のもと、制御部131が生成したデータ(例えば、濡れを示すデータ)等を記憶する。記憶部132は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の適宜の記憶装置によって構成される。
【0035】
表示部133は、制御部131の制御のもと、所定の画面を表示する(例えば、濡れについての画面)。表示部133は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイによって構成される。
【0036】
A/Dコンバータ134は、濡れセンサ110から供給される情報(アナログ情報)をデジタル情報に変換し、制御部131に出力する装置である。制御部131は、このデジタル情報に基づいて、濡れ測定処理を行い、測定対象物99の濡れ(抵抗値)を算出する。
【0037】
タイマ136は、制御部131の制御のもと、時間を測定する。
【0038】
入力部137は、ユーザからの操作を受け付け、受け付けた操作に応じた入力情報を制御部131に供給する。入力部137は、キーボード、マウス等によって構成される。
【0039】
次に、濡れ測定処理について説明する。本実施形態では、濡れの測定を濡れ測定処理によって行っているが、この処理は以下に説明する方法に限られない。例えば、本実施形態では、液量調整部150がタンク160の液体の液体供給路112bへの供給量(つまり、吐出口112aからの液体の吐出量)を調整するが、液体供給路112bへの液体の供給は、手動等によって行っても良い。また、液量調整部150、加温部115、加圧部120等の制御は、手動等によって行われても良い。
【0040】
所定量の液体は、液体供給路112bを介して吐出口112aから吐出される。このとき、測定対象物99は、ダミー部材111の表面に接触しているものとする。また、ダミー部材111には荷重がかけられ、図4の点線で示すように、測定対象物99はダミー部材111によって変形するものとする。また、加温部115によって、ダミー部材111の表面は加温され、人の体温が再現されているものとする。このように、測定対象物99は、人がこの測定対象物99に腰掛けた状態と略同様になっているものとする。以上のような測定対象物99の状態を以下では、再現状態という。
【0041】
吐出口112aから吐出された液体、つまり、ダミー部材111から吐出された液体は、測定対象物99に吸収され、測定対象物99を濡らす。吐出口112a近傍に一対の電極113によって、この濡れた測定対象物99の所定領域(一対の電極113の間の領域等)の抵抗値を測定することによって、測定対象物99の濡れを測定できる。
【0042】
なお、液体は、測定対象物99の抵抗値を測定するために好適なものが採用される。液体の例としては、水道水、純水(バッテリー溶液(高純度精製水)等であってもよい。)、生理食塩水、各種無機あるいは有機塩類を含む電解質溶液(例えば重量比で0.01%程度のNaCl溶液)等がある。このような液体によって測定対象物99の抵抗値の測定が精度良く行える。また、このような液体(水道水以外の液体)によって、液体の性質の共通化が図れ、場所によって、測定の結果が変わるということが無くなる又は軽減される。なお、純水には電流が流れにくいが、全く流れないわけではない(少なくとも5.5x10−8S/cmの導電率がある)。また、実際には空気中の二酸化炭素の吸収による炭酸イオンにより純水の導電率が上がる他、測定対象物99や濡れ測定システム100に残存するイオンが純水に溶解するため、実際には測定可能な程度に純水に電流が流れるものとなるので、液体は純水であってもよい。なお、重量比で0.01%程度のNaCl溶液である電解質溶液(溶媒は高純度精製水)が液体として望ましい場合がある。液体の性質の共通化が図れ、場所によって、測定の結果が変わるということが無くなる又は軽減される。
【0043】
また、液体の吐出後、測定対象物99をダミー部材111に接触させたまま、一定時間毎に、前記の抵抗値を測定すれば、測定対象物99の濡れの経時的変化を測定できる。これによって、測定対象物99が濡れた場合の、測定対象物99の液体(人の汗と想定することができる。)の蒸散性を測定する事ができる。このような測定によって、人がこの測定対象部に腰掛けた場合に、この人が汗をかいた場合における測定対象物99の汗の蒸散性等を予測することができる。これによって、測定対象物99の使い心地等を評価できる。
【0044】
濡れ測定処理の詳細を図5を参照して説明する。この処理は、ダミー部材111が37℃に加温(この温度は、濡れ測定処理が終了するまで保たれるものとする。また、この処理での室温は23℃であるとする。)されるとともに、入力部137が操作されて入力部137が入力情報を制御部131に供給することを契機として始まる。また、ここでの説明では、二つの吐出口112a及び二組の電極113のうちのいずれか一方を用いて濡れ測定処理を行うものとする。また、再現状態は、処理終了まで保たれるものとする。
【0045】
また、電極113は、導電性の材料であればあらゆるものが使用可能である。この様な導電性の材料としては、例えば、ステンレスや白金などの金属材料、カーボン、有機導電性ポリマー等が挙げられる。電極113は、好適には、加工が容易で錆びにくく、測定電圧程度の電圧を印加しても電気分解を生じにくく、かつ入手が容易なステンレス(SUS430)製のものが良い(ここでは、これによって電極113が形成されている。)。また、検出回路114が一対の電極113の間に印加する交流電圧は、0±50mV程度で、周波数が5KHz程度のものである。接続線116は、外部からの外乱を最小にするように、シールド線とする。また、液体は蒸留水(純水)とした。一対の電極113の間は5mmとした。また、この処理の前のダミー部材111と測定対象物99との間の相対湿度を50%とする。この湿度の制御については、公知のものを適宜使用するものとする。ダミー部材111は、その外形がISO16840−2で規定されたものである。
【0046】
また、測定対象物99は、代表的車いすクッション(シートクッション)とする。ここでは、CLOUD(厚さ:10cm、形状:ブロック、主材質:ゲル)、ニコニコクッション(厚さ:10cm、形状:ブロック、主材質:フォーム)、PROFORM(厚さ:10cm、形状:カンツア、主材質:空気)、RIDE(厚さ:10cm、形状:カンツア、主材質:フォーム)、ROHO(厚さ:10cm、形状:ブロック、主材質:空気)の5種類のクッションそれぞれを測定対象物99として、5種類のクッションそれぞれについて濡れ測定処理を行って、5種類のクッションそれぞれについての濡れの経時変化を測定するものとする。
【0047】
濡れ測定処理の開始後、制御部131は、タイマ136をスタートする(ステップS101)。これにより、制御部131は、濡れ測定処理の開始時からの時間を測定する。
【0048】
次に、制御部131は、タイマ136を用いて測定する時間に基づいて、第1所定時間毎(ここでは1分間毎)に濡れセンサ110を用いて濡れの測定を行う(ステップS102)。濡れの測定は、検出回路114から供給される情報をA/Dコンバータ134によって、デジタル情報に変換し、変換したデジタル情報(電圧を示す情報)に基づいて一対の電極113間の抵抗値(測定対象物99の抵抗値)を算出することによって行う。デジタル情報は、抵抗値に応じた電圧の情報であり、電圧信号に変換された抵抗値を示す情報なので、この情報から抵抗値は算出できる。算出方法は、予め設定されているものとする。抵抗値の算出方法は、例えば、抵抗値と電圧とを互いに対応付けたデータテーブルを参照して抵抗値を導出する方法も含む。制御部131は、算出した抵抗値を示す情報を記憶部132に記録する。制御部131は、この濡れ測定処理を終了するまで、この濡れの測定を下記の処理と並行して行う。
【0049】
次に、制御部131は、タイマ136による時間の測定を開始した時から第2所定時間(ここでは、1分間)が経過したかを判別し(ステップS103)、第2所定時間になっていないと判別すれば(ステップS103;NO)、再び、ステップS103の処理を行う。このように制御部131は、濡れ測定処理の開始時から第2所定時間経過するまで待機する。
【0050】
測定している時間が第2所定時間を経過したと判別すると(ステップS103;YES)、制御部131は、加圧部120を制御し、ダミー部材111に荷重(ここでは、500N(ニュートン))を負荷する(ステップS104)。この処理によって、測定対象物99には、荷重及び加温がなされ、測定対象物99の状態は、再現状態になる。
【0051】
次に、制御部131は、タイマ136による時間の測定を開始した時から第3所定時間(ここでは、2分間)が経過したかを判別し(ステップS105)、第3所定時間になっていないと判別すれば(ステップS105;NO)、再び、ステップS105の処理を行う。このように制御部131は、濡れ測定処理の開始時から第3所定時間経過するまで待機する。
【0052】
測定している時間が第3所定時間を経過したと判別すると(ステップS105;YES)、制御部131は液量調整部150を制御し、タンク160の液体(ここでは水道水)を、液体供給路112bを介して吐出口112aから所定量(ここでは、10cc)吐出させる(ステップS106)。これにより、測定対象物99における吐出口112a近傍の部分が液体を吸収し、この部分が濡れた状態になる。これ以降、濡れた測定対象物99の濡れの測定が行われることになる。
【0053】
次に、制御部131は、タイマ136による時間の測定を開始した時から第4所定時間(ここでは、1時間)が経過したかを判別し(ステップS107)、第4所定時間になっていないと判別すれば(ステップS107;NO)、再び、ステップS107の処理を行う。このように制御部131は、濡れ測定処理の開始時から第4所定時間経過するまで待機する。測定している時間が第4所定時間を経過したと判別すると(ステップS107;YES)、制御部131は濡れ測定処理を終了する。このようにして、制御部131は、濡れ測定をタイマ136による時間の測定を開始した時から第4所定時間の間中行う。
【0054】
濡れ測定装置130の入力部137が操作されると制御部131は、記憶部132に記録した抵抗値を示す複数の情報を用いて、抵抗値を表示部133に表示する。制御部131が表示部133に表示するグラフ(ここでの処理による測定結果のグラフである。)を図6に示す。図6に示すように、制御部131は、抵抗値を示す複数の情報を用いて、縦軸を抵抗値、横軸を経過時間としたグラフを生成し、表示部133に表示する。抵抗値の小さいものほど(グラフにおいて、下にあるほど)、測定対象物99は濡れていることになる。図6のグラフを参照すると、RIDEが最も濡れていないことになる。また、このグラフを参照すると、経過時間が過ぎるとともに抵抗値が上がれば上がるほど、濡れた測定対象物99は乾きやすい(液体が蒸散し易い)ものであると判断できる。乾きやすい濡れた測定対象物99は、液体(汗)の蒸散が優れているものと判断できる。
【0055】
なお、本願発明者は、上記の濡れ測定処理を1週間後に再度行い、処理結果を比較して、濡れ測定処理の信頼性を確かめた。なお、1週間後の濡れ測定処理では12分おきの濡れの測定を行った。2回の濡れ測定処理の信頼性ではCronbachのアルファ係数が0.9以上を示し、この処理は信頼性があることが分かった。
【0056】
上記のように、濡れセンサ110は、臀部の形状を模し、測定対象物99に接触し、接触した測定対象物99に対して液体を吐出するダミー部材111と、ダミー部材111に形成され、測定対象物99に接触し、ダミー部材111によって液体が吐出された測定対象物99の濡れを測定するための一対の電極113と、を備えるので、この濡れセンサ110を用いれば、電極113によって抵抗値等を測定でき、ダミー部材111に接触する測定対象物99の濡れを測定できる。
【0057】
また、上記の、電極113の位置と吐出口112aの位置とは、適宜変更できるが、ここでは、電極113と吐出口112aとの位置が、箱体111aの表面の盛り上がり部の頂部にあることによって、測定対象物99に最も負荷がかかる部分についての濡れの測定が可能である。吐出口112aと電極113とは、測定対象物99の接触面の面内に形成されることが望ましい。また、一対の電極113は、吐出口112aを挟んで配置されることによって、吐出口112aから吐出された液体によって濡れた領域(測定対象物99の一部の領域)の濡れの測定が効果的に出来る。
【0058】
なお、ダミー部材111は、生物の少なくとも一部の形状を模したものであればよい。生物は、例えば、ほ乳動物であり、例えば、ここでは人である。生物の一部は、人の背中、臀部等である。また、測定対象物99は、ダミー部材111が模す生物の少なくとも一部に接触等するものであればよく、測定対象物99は、例えば、人の着衣(下着、おむつ、生理用品等を含む)、椅子の一部(背もたれ、座部等)、クッション等であってもよい。このような濡れセンサでも上記と同様の効果が得られる。
【0059】
電極113の位置(及び数)と吐出口112aの位置(及び数)とは、測定対象物99の種類、及び、ダミー部材111がどのような部分を模した形状であるか等によって決定される。例えば、測定対象物99がおむつ等である場合、電極113の位置と吐出口112aの位置とは、例えば、ダミー部材111における殿裂部(又は殿裂部の前方(脚側))であることが望ましい。また、液体の吐出量も、測定対象物99の種類、及び、ダミー部材111がどのような部分を模した形状であるか等によって決定される。例えば、測定対象物99がおむつ等である場合、液体は尿に相当するものになるので、吐出量は10cc以上であることが望ましい。液体が電解質溶液の場合、この電解質溶液の濃度も、測定対象物99の種類、及び、ダミー部材111がどのような部分を模した形状であるか等によって決定される。例えば、測定対象物99がおむつ等である場合、電解質溶液は、例えば、純水(バッテリー溶液(高純度精製水)等であってもよい。)に重量比で0.9%程度のNaclが溶解した液体にするとよい。
【符号の説明】
【0060】
99 測定対象物
100 濡れ測定システム
110 濡れセンサ
111 ダミー部材
111a 箱体
111b 蓋体
112 液体吐出部
112a 吐出口
112b 液体供給路
113 電極
114 検出回路
115 加温部
116 接続線
120 加圧部
130 濡れ測定装置
131 制御部
131a CPU
131b ROM
131c RAM
131d 濡れ測定プログラム
132 記憶部
133 表示部
134 A/Dコンバータ
135 バス
136 タイマ
137 入力部
150 液量調整部
160 タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の少なくとも一部の形状を模し、測定対象物に接触し、接触した前記測定対象物に対して液体を吐出するダミー部材と、
前記ダミー部材に形成され、前記測定対象物に接触し、前記ダミー部材によって前記液体が吐出された前記測定対象物の濡れを測定するための一対の電極と、
を備えることを特徴とする濡れセンサ。
【請求項2】
前記生物の少なくとも一部は、人体の臀部である、
ことを特徴とする請求項1に記載の濡れセンサ。
【請求項3】
前記ダミー部材を加温する加温部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の濡れセンサ。
【請求項4】
生物の少なくとも一部の形状を模し、測定対象物に接触し、接触した前記測定対象物に対して液体を吐出するダミー部材と、前記ダミー部材に形成され、前記測定対象物に接触し、前記ダミー部材によって前記液体が吐出された前記測定対象物の濡れを測定するための一対の電極と、を備える濡れセンサと、
前記濡れセンサを用いて前記測定対象物の濡れを測定する濡れ測定装置と、
を備えることを特徴とする濡れ測定システム。
【請求項5】
生物の少なくとも一部の形状を模したダミー部材に測定対象物を接触させる接触ステップと、
前記接触ステップで前記ダミー部材に接触させた前記測定対象物に対して前記ダミー部材から液体を吐出させる吐出ステップと、
前記ダミー部材に形成された一対の電極を用いて、前記吐出ステップで前記液体が吐出された前記測定対象物の濡れを測定する測定ステップと、
を備えることを特徴とする濡れ測定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
生物の少なくとも一部の形状を模したダミー部材に接触した測定対象物に対して前記ダミー部材から液体を吐出させる吐出ステップと、
前記ダミー部材に形成された一対の電極を用いて、前記吐出ステップで前記液体が吐出された前記測定対象物の濡れを測定する測定ステップと、
を行わせることを特徴とする濡れ測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106818(P2011−106818A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258824(P2009−258824)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】