説明

濫用耐性製剤

【解決手段】 この開示は1日2回の投与に適した、粘度調整剤およびヒドロコドンを含む被覆顆粒を含む基質を有する、徐放性経口剤形に関するものである。剤形は、投与から6時間後に、ヒドロコドンの約80%以下が放出されるような放出特性を有することができる。加えて、剤形は、アルコールおよび/または破砕耐性を有することがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年2月24日に提出された米国仮出願第61/307,588号の出願日の利益を請求するものであり、その開示は、完全に参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
この発明は、1日2回の投与に適しているヒドロコドンの徐放性経口剤形に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ヒドロコドンは痛みを軽減させるために患者に投与されるものである。これらの患者の多くにおいて良好な疼痛管理は、1日を通してのヒドロコドンの一定の血中濃度の維持を必要とする。製薬業界において一般的に使用される、許容可能な血中濃度を得る一つの方法は、所望の血中濃度を得るために必要な量よりはるかに多くの薬を含む投与量を提供する。錠剤が摂取された後すぐに血中濃度またはCmaxは比較的短い時間で最大に達し、しばしば摂取の数時間以内にTmaxに達する。その後、体は血液システムによって使用し、処理し、及び排出して血中濃度を下げる。Cmaxが十分に高い値に達し、体の薬のクリアランスが十分に遅い場合、血中濃度は4〜12時間またはそれより長く治療量以下にはならないことがある。しかしながら、ヒドロコドンのような薬剤においては、これは非実用的で役に立たない投与システムである。加えて、そのような高い初期API濃度が顕著な副作用を起こしうるというリスクが患者にある。
【0004】
ヒドロコドンを投与する他の方法は、拡張された放出機構の使用を含む。拡張された放出は多くの異なる方法で達成されることができ、到達されることのできる多くの異なる放出特性がある。この戦略は一日に必要とされる服用回数を減らすことができるのみでなく、不必要に高い最初の血液濃度からくることがある副作用に曝されるのを防止することができる。
【0005】
「ハイになる」ためにヒドロコドンを乱用しようとする人々は、このような拡張された、および、まさに他の制御された放出戦略によって失望する。これらの戦略は、彼らが実際に求めている幸福感または他の生理学的効果を引き起こすことができるが、通常の患者には望ましくない、または危険ですらある副作用を引き起こす、薬の高い血中濃度を得ることを妨げる。この種の処方薬濫用者は、単に拡張した放出性錠剤を噛む、または、注入などのために乳鉢および乳棒を使用し、それらを砕くことを含む、さまざまな濫用手段によって制御された放出機構を避けることを学んだ。制御された放出性被覆を迂回する他の方法は、水やエタノールのような溶媒に剤形を溶解することを試みることである。後者は、ヒドロコドンがアルコールと併用されると特に危険であり得る。拡張された放出性製剤によっては、エタノールまたは水は溶媒として作用することができ、剤形を溶解、または浸食して、意図された管理された放出性を避ける。その後、結果として生じる材料は、通常、経口、または、シリンジで薬物濫用者によって投与されることができる。
【0006】
このような濫用は、むしろはるかに変動する結果を有することができる。例えば、癌患者、手術後または手術前の痛みをもつ患者、および、関節炎または背中の損傷から慢性的な痛みをもつ患者は、彼らに利用できる有用な薬剤(例えばヒドロコドン)を有する必要がある。しかしながら、濫用への可能性は、取締官にとって恒常的な懸念であり、これらの処方薬としての法的処置は、真に違法な違法物質より自由に入手することが出来る。健康管理の費用、リハビリテーションの費用、薬物濫用を支えることから生じる犯罪の増加などを含む、薬物使用に関する社会的な課題も存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ヒドロコドンの1日2回の投与に適した徐放性経口剤形が提供される。剤形は、粘度調整剤およびヒドロコドンまたはそれらの塩形態(例えば酒石酸水素ヒドロコドン)を有する被覆顆粒を有する基質を含むことができる。場合によっては、剤形は、本明細書に記載されたように、0.1N塩酸の500mlにおいて6時間後にヒドロコドンの約80%以下が放出されるような放出特性を有する。加えて、剤形はアルコール耐性、破砕耐性及び/または食効に対する耐性を有することがある。食効に対して耐性がある剤形はさらに以下に記載される。食効に対して耐性がある製剤は、摂食で測定されたTmaxが絶食で測定されたTmaxと比較された場合、2、1.5、または1時間以下のTmax変化を有するとして記載されることができる。その安全性が患者の服用遵守に依存していないことから、当業者はアルコール耐性、破砕耐性および/または食効に耐性のある製剤が安全であることを認めるであろう。
【0008】
本明細書で提供された1日2回の投与に適した徐放性経口剤形は、剤形の約1から約10重量パーセントの量で粘度調整剤およびヒドロコドンまたはその塩形態、例えば酒石酸水素ヒドロコドンを有する被覆顆粒を有する基質を有する。実施形態によっては、6時間後の剤形からのヒドロコドンの放出は約80パーセント以下である。実施形態によっては、10時間後の剤形からのヒドロコドンの放出は約85パーセント以下である。
【0009】
実施形態によっては、0.1N塩酸および40%のアルコールの溶液中に2時間後に放出されたヒドロコドンの割合は、アルコールなしの0.1N塩酸溶液において放出されたヒドロコドンの割合よりも10%上回っていた。実施形態によっては、経口不正使用をシミュレーションした30分後の剤形からのヒドロコドンの放出は約50%以下である。
【0010】
粘度調整剤は、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸、ゼラチン、ペクチン、ゴム、ポリエチレン酸化物、こんにゃく粉、カラゲーニン、キサンタンゴム、またはそれらの混合物からなる群から選択されることができる。例えば、粘度調整剤は、例えば、天然および合成デンプン、天然および合成セルロース、アクリル酸、およびポリアルキレン酸化物のようなゲル化ポリマーであることができる。実施形態によっては、当該ゲル化ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される。例えば、場合によっては、ゲル化ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロースであることがある。
【0011】
実施形態によっては、粘度調整剤は剤形の約5から約10重量%の量で存在する。実施形態によっては、粘度調整剤は剤形の約6重量%の量で存在する。実施形態によっては、粘度調整剤は剤形の約10重量%の量で存在する。
【0012】
本明細書に記載された被覆顆粒は、顆粒の約0.1から約90重量%の量でヒドロコドンまたはその塩形態、顆粒の約1から約90重量%の量の第1の強力皮膜形成剤、顆粒の約1から約90重量%の量の第2粘度調整剤、および、顆粒の約0から約40重量%の量の第1の脂質/ワックスを有する顆粒、および顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は、被覆顆粒の約20から約80重量%で存在し、被覆顆粒の約10から約50重量%の第2の強力皮膜形成剤および被覆顆粒の約10から約30重量%の第2の脂質/ワックスを有する。
【0013】
第1および第2の強力皮膜形成剤は、天然および合成デンプン、天然および合成セルロース、アクリル酸、ビニル、樹脂、メタクリル樹脂またはセラックからなる群からそれぞれ独立に選択されることができる。例えば、第1および第2の強力皮膜形成剤は、エチルセルロース、メタクリル酸アンモニウム共重合体、タイプBメタクリル酸アンモニウム共重合体、タイプAメタクリル酸アンモニウム共重合体、アクリル酸エチル、およびメタクリル酸メチル共重合体分散、タイプAメタクリル酸メチル共重合体、タイプBおよびセラックからなるい群からそれぞれ独立に選択されることができる。実施形態によっては、第1および第2の強力皮膜形成剤はエチルセルロースである。実施形態によっては、第1の強力皮膜形成剤および第2の強力皮膜形成剤は、同じである。
【0014】
実施形態によっては、第1の強力皮膜形成剤は、顆粒の約30から約80重量%の量で存在する。例えば、第1の強力皮膜形成剤は顆粒の約40から約70重量%の量で存在する。
【0015】
第2の粘度調整剤は、第1の粘度調整剤として上記に定義されたものと同一の群から選択されることができる。例えば、第2の粘度調整剤は、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸、ゼラチン、ペクチン、ゴム、ポリエチレン酸化物、こんにゃく粉、カラゲーニン、キサンタンゴム、またはそれらの混合物からなる群から選択されることができる。実施形態によっては、第2の粘度調整剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される。例えば、第2の粘度調整剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0016】
実施形態によっては、第2の粘度調整剤は顆粒の約10から約70重量%の量で存在する。例えば、第2の粘度調整剤は顆粒の約15から約40重量%の量で存在することができる。
【0017】
第1および第2の脂質/ワックスは、グリセロール脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド誘導体、ワックス、または脂肪酸アルコールからなる群からそれぞれ独立に選択されることができる。例えば、第1および第2の脂質/ワックスは、グリセリルベヘナート、パルミトステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マクログリセリド、カルナバワックス、蜜ロウ、微結晶ワックスおよびセチルアルコールからなる群からそれぞれ独立に選択されることができる。実施形態によっては、第1および第2の脂質/ワックスはグリセリルベヘナートである。実施形態によっては、第1の脂質/ワックスおよび第2の脂質/ワックスは同じものである。
【0018】
実施形態によっては、第2の脂質/ワックスは、被覆顆粒の約10から約25重量%の量で存在する。実施形態によっては、顆粒は、第1の脂質/ワックスを含まず、第2の脂質/ワックスは被覆顆粒の約10から約25重量%の量で存在する。
【0019】
実施形態によっては、ヒドロコドン塩は酒石酸水素ヒドロコドンである。実施形態によっては、ヒドロコドンまたはその塩形態は顆粒の約1から約60重量%の量で存在する。例えば、ヒドロコドンまたはその塩形態は、顆粒の約5から約35重量%の量で存在する。
【0020】
顆粒は被覆されており、実施形態によっては、被覆部分は、被覆顆粒の約30から約70重量%の量で存在する。例えば、被覆部分は、被覆顆粒の約30から約55重量%の量で存在することができる。
【0021】
実施形態によっては、被覆顆粒は、被覆顆粒の約10重量%以下の水を有する。例えば、被覆顆粒は、被覆顆粒の約6重量%以下の水を有する。
【0022】
また、本明細書では、ヒドロコドンの1日2回の投与に適した徐放性経口剤形が提供される。前記剤形は、剤形の約1から約10重量%の量の粘度調整剤を有する基質、および、顆粒の約0.1から約90重量%の量のヒドロコドンまたはその塩形態、顆粒の約1から約90重量%の量の第1の強力皮膜形成剤、顆粒の約1から約90重量%の量の第2の粘度調整剤、および顆粒の約0から約40重量%の量の脂質/ワックスを有する被覆顆粒、および顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は、被覆顆粒の約20から約80重量%の量で存在し、被覆顆粒の約10から約50重量%の量の第2の強力皮膜形成剤、および被覆顆粒の約10から約25重量%の量の第2の脂質/ワックスを有する。
【0023】
場合によっては、剤形は基質および被覆顆粒を有する。前記基質は、剤形の約1から約10、20または30重量%の量の粘度調整剤を有する。前記被覆顆粒は、顆粒の約1から約60重量%の量のヒドロコドンまたはその塩形態、顆粒の約30から約80重量%の第1の強力皮膜形成剤、および、存在する場合は、顆粒の約10から約70重量%の量の第2の粘度調整剤、および、顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は被覆顆粒の約30から約70重量%の量で存在し、被覆顆粒の約10から約50重量%の量の第2の強力皮膜形成剤、および、被覆顆粒の約10から約25重量%の量の第2の脂質/ワックスを有する。
【0024】
場合によっては、剤形は、基質および被覆顆粒を有することができる。前記基質は剤形の約1から約10重量%の量でヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する。前記被覆顆粒は、顆粒の重量の約5から約35%の量のヒドロコドン、顆粒の約40から約70重量%の量のエチルセルロース、顆粒の約15から約40重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は被覆顆粒の約30から約55重量%の量で存在し、被覆顆粒の約10〜約50重量%の量のエチルセルロース、および、被覆顆粒の約10〜約25重量%の量のグリセリルベヘネートを有する。
【0025】
剤形は、食効に耐性を示すことがある。食効への耐性は、本明細書で提供された実施例4に記載された方法論を使用して測定される。通常、食効への耐性は、絶食された患者の薬物動態パラメーターと、例えば投与前に標準的な食事を消費した患者の薬物動態パラメーターとを比較することによって識別される。状況によっては、標準的な食事は高脂肪(つまり、カロリーの約50%が脂肪によるもの)、高炭水化物または任意の他の標準的な食事であることがある。食効に対して耐性のある剤形は、食効に対して耐性のない他の製剤と比較して、与えられた薬物動態パラメーターにおいて、小さな変化率(絶食薬物動態パラメーターによって分割された絶食および絶食薬物動態パラメーター間の違い)を示す。比較において有用な薬物動態パラメーターは、CmaxおよびTmaxを含む。これらの薬物動態パラメーターの1以上は、様々な時点において比較されることができる。例えば、実施例4において記載され、テストされた製造は、以下において、25%のTmaxの変化率を示す。Tmaxにおける変化は実施例5と比較されることができる。実施例5におけるデータは、38%のTmaxの変化率を示す。したがって、実施例5における製剤は実施例4における製剤ほど食効に対する耐性はない。特に実施例5における基質は脂質/ワックスを有する。実施例によっては、食効耐性製剤は、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下のTmaxにおける変化率を有する。食効耐性製剤は、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%または5%以下のCmaxにおける変化率を提供することもできる。
【0026】
さらに、本明細書では、基質、および被覆顆粒を有する剤形が提供される。前記基質は、剤形の約1から約10重量%の量でヒドロキシプロピルメチルセルロースを有するものである。前記被覆顆粒は、顆粒の約27重量%の量のヒドロコドン、顆粒の約40から約70重量%の量のエチルセルロース、および、顆粒の約15から約40重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する顆粒と顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は、被覆顆粒の約30から約55重量パーセとの量で存在し、基本的に、被覆顆粒の約10から約50重量%のエチルセルロース、および、被覆顆粒の約10から約25重量%の量のグリセリルベヘネートを有する。
【0027】
さらに本明細書では基質および被覆顆粒を有する剤形が提供される。前記基質は剤形の約1から約10重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する。前記被覆顆粒は、顆粒の約9重量%の量のヒドロコドン、顆粒の約40から約70重量%の量のエチルセルロース、および、顆粒の約15から約40重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する顆粒、および、顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は被覆顆粒の約30から約55重量%の量で存在し、および、被覆顆粒の約10から約50重量%の量のエチルセルロース、被覆顆粒の約10から約25重量%の量のグルセリルベヘナートを基本的に含有する。
【0028】
さらに本明細書では基質および被覆顆粒を有する剤形が提供される。前記基質は剤形の約5から約10重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する。前記被覆顆粒は、顆粒の約5から約35重量%の量のヒドロコドン、顆粒の約40から約70重量%の量のエチルセルロースおよび顆粒の約30重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する顆粒および顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は、被覆顆粒の約30から約55重量%の量で存在し、および、被覆顆粒の約10から約40重量%の量のエチルセルロース、および被覆顆粒の約10から約25重量%の量のグリセリルベヘナートを有する。
【0029】
さらに本明細書では基質および被覆顆粒を有する剤形が提供される。前記基質は剤形の約5から約10重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する。前記被覆顆粒は、顆粒の約5から約35重量%の量のヒドロコドン、顆粒の約40から約70重量%の量のエチルセルロースおよび顆粒の約30重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する顆粒および顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は、被覆顆粒の約30から約55重量%の量で存在し、および、被覆顆粒の約10から約40重量%の量のエチルセルロース、および被覆顆粒の約10から約25重量%の量のグリセリルベヘナートを有する。
【0030】
実施形態によっては、6時間後の剤形からのヒドロコドンの放出は、USP溶出試験器を使用して0.1N塩酸の500mlでテストされた場合、約80%以下である。実施形態によっては、0.1N塩酸および40%アルコールにおける2時間後のヒドロコドン放出の割合は、アルコールが存在しない0.1N塩酸の溶液において放出されたヒドロコドンの割合よりも10%多い。実施形態によっては、経口不正使用をシミュレーションした30分後の剤形からのヒドロコドンの放出は、約50%以下である。
【0031】
本発明の1以上の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的および効果は、説明および図面、および請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、45mgヒドロコドンER錠剤または4×10mgヒドロコドンIR錠剤を単回投与された健康なボランティアにおける、ヒドロコドンに対する平均(+SD)プラズマ濃度対時間特性を示す。
【図2】図2は、絶食または摂食条件下で、またはエタノールと一緒に15mgのヒドロコドンER錠剤(実施例の表3を参照)を単回投与された健康なボランティアにおける、ヒドロコドンに対する平均(+SD)プラズマ濃度対時間特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ヒドロコドンの1日2回の投与に適した徐放性経口剤形が提供される。剤形は、粘度調整剤を有する基質、および、ヒドロコドンまたはそれらの塩形態(例えば、酒石酸水素ヒドロコドン)を有する被覆顆粒を含む。場合によっては、剤形は、本明細書に記載されたように、0.1N塩酸の500mlにおける6時間後、ヒドロコドンの約80%以下が放出されるような放出特性を有する。加えて、剤形は、アルコールおよび/または破砕耐性を有することがある。
【0034】
用語「基質」は、賦形剤の連続体に分散され、封入された粒子(例えば、被覆顆粒)を含む活性物質、つまり、「基質形成」物質を有する単体システムを意味する。例えば、Colombo、P.,Santi、P.,Siepmann、J.,Colombo、G.,Sonvico、F.,Rossi、A.,Luca Strusi、O.,2008.Swellable and Rigid Matrices:Controlled Relelase Matrices with Cellulose Ethers. In:Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Volume 2:Rational Design and Formulation.Third Edition、Augsburger、L.and Hoag、S.(eds.).Informa Healthcare、New York、Londonを参照。さらに本明細書において述べられているように、ヒドロコドンを有する被覆顆粒は、記載された基質内に分散される。
【0035】
本明細書では、剤形の約1から約10重量%(例えば、約5から約10重量%、約6重量%を含み、および、約10%も含む)の粘度調整剤およびヒドロコドンまたはそれらの塩形態を有する被覆顆粒を有する基質を含む徐放性経口剤形が提供される。
【0036】
本明細書に記載された剤形は、6時間後の剤形からのヒドロコドンの放出が約80%以下となるような放出特性を有することができる。実施形態によっては、10時間後の剤形からのヒドロコドンの放出は約85%以下である。ヒドロコドンの放出は、USP溶出試験器ナンバー2および溶出溶媒として0.1N塩酸溶液の500mlを使用して測定される。
【0037】
剤形はアルコール耐性を示すことがある。アルコール耐性は、USP溶出試験器ナンバー2および溶出溶媒として0.1N塩酸溶液(通常溶解)または0.1N塩酸および40%エタノール溶液(アルコール濃度は40%v/v、過量放出溶解)を使用して測定される。アルコール耐性製剤において、本明細書に記載されたように、0.1N塩酸および40%エタノール中で2時間後、ヒドロコドンの放出率は、アルコール非存在下での0.1N塩酸溶液中で放出されたヒドロコドンの割合よりもわずか10%多いだけである。例えば、剤形がアルコール非存在の0.1N塩酸溶液において2時間後にヒドロコドンの20%を放出する場合、アルコール耐性剤形は、本明細書に記載したように、0.1N塩酸および40%エタノールを有する溶液中において、ヒドロコドンを30%より多くは放出しない。
【0038】
実施形態によっては、剤形は、本明細書に記載されたように、破砕耐性がある。破砕耐性は経口不正使用をシミュレーションするための技術を使用して測定される。このような方法はセラミックモルタル(外周直径13cm)に剤形の錠剤をおくことを含む。それから錠剤が破砕されるまで垂直に下向きの力を加えるために乳棒が使用される。破砕された錠剤は、下方への力を有する360°の循環運動を加えられて、さらに圧壊される。循環圧壊運動は、11回繰り返される(合計で12ストローク)。結果として生じる粉末は、生体外薬剤放出を測定するために、溶解容器に移される。破砕された錠剤試料の生体外での放出特性は、500mlの0.1N塩酸溶出溶媒で得られる。試料は、37℃で、USP溶出試験器ナンバー2(パドル)を使用して50rpmで撹拌される。溶出溶媒において30分後、破砕耐性剤形は、約50%以下の剤形からのヒドロコドンの放出を示す。
【0039】
本明細書に記載された剤形は、前記拡張された放出および不正開封防止装置がついた性質の1以上を示す。
【0040】
本明細書で記載されたように、粘度調整剤は材料であり、2%w/w(乾燥材料に基づく)濃度で水溶液または分散(例えば水)中での溶解または分散で、ヒプロメロースのためのUSP33モノグラフ(参照により本明細書に組み込まれている)において記載された分析方法を使用して、20℃(±0.2℃)で測定された、約100から約200,000mPa・s(例えば、4,000から175,000mPa・sおよび75,000から140,000mPa・s)の粘度を有する溶液/分散を作成する。粘度調整剤の例は、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸(例えばカルボマー)、ゼラチン、ペクチン、ゴム(例えばアラビアゴム、タラカントゴム、グアーゴム)、ポリエチレン酸化物、こんにゃく粉、カラゲーニンまたはそれらの混合物を含む。実施形態によっては、粘度調整剤は、ゲル化ポリマーであることがある。ゲル化ポリマーは天然および合成デンプン、天然および合成セルロース、アクリル酸、およびポリアルキレン酸化物を含むことができる。例はヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースを含む。実施形態によっては、ゲル化ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0041】
HPMCが剤形において使用される場合、HPMCは、DOW Chemical Companyから全て入手可能である、A−タイプにおける30:0から、E−タイプにおける29:8.5、F−タイプにおける28:5、K−タイプにおける22:8へとヒドロキシル置換パーセント比率の異なるメチルを有することができ、または、任意の他のHPMCポリマーはAqualonのような他の供給者から入手可能である。
【0042】
本明細書に記載された剤形の被覆顆粒は、ヒドロコドンまたはその塩形態を有する顆粒および顆粒の被覆部分を含む。実施形態によっては、被覆顆粒は顆粒の約0.1から約90重量%の量のヒドロコドンまたはその塩形態、顆粒の約1から約90重量%の量の第1の強力皮膜形成剤、顆粒の約1から約90重量%の量の第2粘度調整剤、および、顆粒の約0から約40重量%の量の第1の脂質/ワックスを有する顆粒、および、顆粒の被覆部分を含むことができる。顆粒の被覆部分は、被覆顆粒の約20から約80重量%の量で存在し、被覆部分は顆粒の約10から約50重量%の量の第2の強力皮膜形成剤および被覆顆粒の約10から約30重量%の量の第2の脂質/ワックスを有する。
【0043】
ヒドロコドンは中性化合物または塩形態(例えば、酒石酸水素ヒドロコドン)として剤形に存在することができる。本明細書で使用されているように、ヒドロコドンの参照は、ヒドロコドンおよびその塩形態、特に酒石酸水素ヒドロコドンを含む。当業者は、適当な塩形態をどのように調製および選択するかについて既知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use By P. H. Stahl and C. G. Wermuth (Wiley−VCH 2002)に記載がされている。実施形態によっては、ヒドロコドンまたはその塩形態は顆粒の約1から約60重量%の量で存在する。実施形態によっては、ヒドロコドンまたはその塩形態は顆粒の約1から約50重量%の量で存在する。実施形態によっては、ヒドロコドンまたはその塩形態は顆粒の約5から約35重量%の量で存在する。
【0044】
強力皮膜形成剤はポリマーであり、少なくとも溶けにくく、好適にはアルコールに可溶性であり、および、水に最も溶けにくく、Texture Technologies、Brookfield、Lloyd Instrumentsなどによって製造される組織分析器のような適当な抗張力測定器によって測定された場合、1000lb/in2未満ではない抗張力を有する乾燥した3−milフィルムを形成する。例えば、強力皮膜形成剤は、天然および合成デンプン、天然および合成セルロース、アクリル、ビニルおよび樹脂から選択されることができる。実施形態によっては、強力皮膜形成剤は、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、アンモニオメタクリル酸コポリマー、タイプB(Eudragit RS);アンモニオメタクリル酸コポリマー、タイプA(Eudragit RL);アミノメタクリル酸コポリマー(Eudragit E);エチルアクリル酸およびメチルメタクリル酸コポリマー分散(Eudragit NE);メタクリル酸コポリマー、タイプA(Eudragit L);メタクリル酸コポリマー、タイプB(Eudragit S);およびシェラックのような(メセドリン)アクリル酸コポリマーから選択されることができる。場合によっては、第1および第2の強力皮膜形成剤は同一である。
【0045】
実施形態によっては、強力皮膜形成剤はエチルセルロース(EC)のような天然または合成セルロースである。エチルセルロースは不活性、疎水性ポリマーであり、および、本質的に、無味、無臭、無色、カロリーゼロおよび生理的に不活性である。アルコール溶解度のような本明細書で議論された他の要件を満たす限り、数多くの使用することのできるエチルセルロースのタイプがある。使用されるエチルセルロースは、N−タイプとして記載された48.0〜49.5%、T−タイプとして記載された49.6〜51.5%、X−タイプとして記載された50.5〜52.5%のような異なるエトキシ含有量を有することができる。これらは全て、Aqualon、Hercules Research Center、Wilmington、Delから入手可能である。
【0046】
使用されるエチルセルロースは、N7として記載された5.6〜8.0センチポアズ(cps);N10として記載された8.0〜11cps、N14として記載された12〜16cps、N22として記載された18〜24cps、N50として記載された40〜52cps、N100として記載された80〜105cpsの粘度範囲を有するトルエン:エタノール(80:20)における5%w/w溶液を形成するN−タイプのECポリマーを含むような異なる分子量を有することが出来る。使用されるエチルセルロースは、X−タイプにおける2.65〜2.81のようなアンヒドログルコース単位につきエトキシ基の置換の異なる程度を含むことができる。N−タイプは2.46−2.58の値を有する。
【0047】
実施形態において、第1の強力皮膜形成剤は顆粒の約30から約80重量%の量で存在する。例えば、第1の強力皮膜形成剤は顆粒の約40から約70重量%の量で存在することができる。場合によっては、第2の強力皮膜形成剤は被覆顆粒の約10から約50重量%で存在する。場合によっては、第2の強力皮膜形成剤は被覆顆粒の約10から約40重量%で存在することができる。
【0048】
実施形態によっては、第2の粘度調整剤は、剤形の基質において使用される粘度調整剤と同じである。場合によっては、第2の粘度調整剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。実施形態によっては、第2の粘度調整剤は、顆粒の約10から約70重量%の量で存在する。実施形態によっては、顆粒の約15から約40重量%の量、例えば、顆粒の約30重量%で存在する。
【0049】
本明細書で使用された脂質/ワックスは通常疎水性であり、室温(25℃)で固体である。脂質は通常、約6以下(例えば4以下、2以下)の親水性/親油性バランス(HLB)を有し、少なくとも30℃(例えば少なくとも40℃、少なくとも50℃)の融点を有する。一実施形態において、脂質は約6以下のHLBおよび少なくとも約30℃の融点を有する。他の実施形態において、脂質は約4以下のHLBおよび少なくとも約40℃の融点を有する。他の実施形態において、脂質は約2以下のHLBおよび少なくとも50℃の融点を有する。脂肪酸および脂肪酸エステルを含む脂質は、置換または非置換、飽和または不飽和であることがある。場合によっては、それらは少なくとも約14の鎖長を有する。脂肪酸エステルは、アルコール、グリコール、またはグリセロールと結合する脂肪酸群を含むことがある。グリセロールに関して、グリセロールは、モノ−、ジ−、およびトリ−脂肪置換グリセロールまたはそれらの混合物であることがある。チキソトロピー性脂質/ワックスが使用されることもできる。
【0050】
適当な脂質成分は、これに限定されるわけではないが、グリセロール脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド誘導体、ワックス、および、グリセリルベヘネート(COMPRITOL(登録商標))、パルミトステアリン酸グリセリン(PRECIROL(登録商標))、ステアロイルマクログリセリド(GELUCIRE(登録商標)50/13)のような脂肪酸アルコールを含む。実施形態によっては、脂質/ワックスは、グリセリルベヘネートである。
【0051】
ワックスは分類するのが非常に複雑で難しい。Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology(4th ed.1998)Vol.25 pp.614−26を参照、この文献の本部は参照により組み込まれている。それらは、しばしば脂質において以前に記載された基準を満たすものである(例えば、約6以下のHLBおよび少なくとも約30℃の融点、約4以下のHLBおよび少なくとも約40℃の融点、約2以下のHLBおよび少なくとも50℃以下の融点)が、これらの基準を満たさないワックスも使用されることがある。ワックスは、これに限定されないが、昆虫および動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、石油ワックスおよび合成ワックスを含む。例えば、蜜ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、ブラジルパームワックス、米ぬかワックス、ホホバワックス、微結晶ワックス、セチルエステルワックス、アニオン性乳剤ワックス、ノニオン性乳剤ワックス、およびパラフィンワックス。一実施形態において、脂質/ワックスはグリセロールの脂肪酸エステルである。例えば、グリセロールの脂肪酸エステルはグリセリルベヘネートであることができる。
【0052】
本発明に関連して使用される脂質/ワックスは溶かして使用されることがある。しかしながら、室温で、一般的には固体、比較的小さい粒子のような非溶融形として使われるときでも、それらが、溶融材料としての効果の全てとまではいかないが、いくつかを提供することができるということが発見された。顆粒または被覆部分の適当な形成を可能にし、所望の特性を提供する任意の使用可能な粒子サイズが使用されることができる。実施形態によっては、第1および第2の脂質/ワックスは同一である。場合によっては、第1の脂質/ワックスは顆粒の約0から約20重量%の量で存在することがある。実施形態によっては、第2の脂質/ワックスは被覆顆粒の約10から約30重量%の量で存在する。例えば、第2の脂質/ワックスは被覆顆粒の約10から約25重量%で存在することができる。実施形態によっては、脂質/ワックスは顆粒の被覆部分中に存在することがあるが、顆粒の芯には存在しない。
【0053】
実施形態によっては、被覆顆粒は、被覆顆粒の10重量%以下の水を有する。場合によっては、顆粒の処理において有機溶媒が水の代わりをすることもある。例えば、エタノールのようなアルコール、またはアセトンが使用されることがある。
【0054】
用語「被覆部分」とは顆粒を実質的に取り囲み、何らかの付加的な機能、例えば、これに限定されないが、矯味、貯蔵安定性、反応性の減少、放出制御、及び/または濫用耐性を提供する材料を包含することを意味する。実施形態によっては、被覆部分は、被覆顆粒の約30から約70重量%の量で存在する。例えば、被覆部分は、被覆顆粒の約35から約50重量%、例えば約40重量%を含む、約30から約55重量%の量で存在する。
【0055】
実施形態によっては、本明細書に記載された徐放性経口剤形は、基質および被覆顆粒を有する。前記基質は、剤形の約1から約10重量%、例えば剤形の約6重量%および約10重量%を含む約5から約10重量%の量でヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する。前記被覆顆粒は、顆粒の約1から約60重量%、例えば、約5から約35重量%の量のヒドロコドンまたはその塩形態、顆粒の約30から約80重量%、例えば約40から約70重量%の量のエチルセルロース、顆粒の約10から約70重量%、例えば、約30重量%を含む約15から約40重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および、顆粒の約0から約20重量%の量のグリセリルベヘナート、および顆粒の被覆部分を有する。前記被覆部分は、被覆顆粒の約30から約70重量%、例えば、被覆顆粒の約35から約50重量%、例えば約40%を含む約30から約55重量%の量で存在し、被覆顆粒の約10から約50重量%または約10重量%から約40重量%の量のエチルセルロース、および被覆顆粒の約10から約25重量%の量のグリセリルベヘネートを有する。
【0056】
本明細書に記載された被覆顆粒および剤形は、当業者において既知の方法、例えば、参照により本明細書に組み込まれた米国公報番号第2008/0311205号を参照、を使用して調製されることができる。通常、ヒドロコドンまたはその塩形態は重合コートが適用されるポリマーの豊富な顆粒に製剤化される。被覆顆粒は、続いて、粘度調整剤と混合される。
【0057】
実施形態によっては、剤形は、被覆された粒子および基質中の粘度調整剤に加えて少なくとも一つの他の成分または賦形剤を含むこともできる。他の成分または賦形剤は、これに限定されないが、矯味剤、結合剤、充填剤、糖、人工甘味料、ポリマー、香味剤、着色剤、潤滑油、滑走剤、ビオ−またはムコ−接着剤、界面活性剤、バッファー、および崩壊剤を含む。これらの成分の任意の1つ以上の量は、被覆部分、顆粒サイズ、剤形の形、剤形の外形、使用された成分の数、使用された成分の特定の混合、服用を処方する剤形の数、服用につきヒドロコドンの量などの量によって変化する。任意の組み合わせまたは量も、記載された放出特性および/または提供されたタンパー耐性を有する剤形を製造するために十分に考察される。
【0058】
「矯味剤」は当業者において矯味剤として知られている任意のものを含む。例にはEudragit E−100、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セラック、ゼイン、カルボマー、脂質、ワックス、グリセロール モノ−、ジ−、トリ−グリセリド、コンプリトール、プレシロール、ゲルシア、ポロキサマー、修飾されたキトサン、アセチルセルローストリメリト酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、Eudragit L 100、S 100、L30D−55を含むメタクリル酸共重合体、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)を含む。矯味剤は慣習的な量で使用されることができ、例えば、剤形の総量の約0から約50重量%(例えば、剤形の総量の約5から約40重量%、剤形の総量の約10から約30重量%)の量で使用されることができる。
【0059】
結合剤は、粘着性を粉末に加え、次の処理または輸送および取扱に耐えるための許容可能な機械的強さを有する硬い錠剤に圧縮されることができる顆粒を形成するために必要な結合を提供するために用いることができる。結合剤の例は、アカシア、トラガカントゴム、ゼラチン、デンプン(修飾されたものも修飾されていないものも含む)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびナトリウムカルボキシメチルセルロースのようなセルロース材、アルギン酸およびその塩形態、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、ポリエチレングリコール、グアーゴム、多糖類酸、ベントナイト、糖、転化糖など、脂肪、ワックス、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸塩および他のアクリルおよびビニル系ポリマーを含む。結合剤は慣習的な量で使用されることができ、例えば、全剤形の約0から約50重量%の量で使用されることができる(例えば、剤形の総量の約2から約10重量%)。
【0060】
賦形剤は、マンニトール、デキストロース、ソルビトール、ラクトース、スクロース、および炭酸カルシウムを含むことができる。賦形剤は慣習的な量で、例えば、剤形の総量の約0から約90重量%の量で(例えば、剤形の総量の約10から約50重量%の量)使用されることができる。実施形態によっては、賦形剤は砂糖であることもできる。例えば、セルロースおよび修飾されたセルロースと同様に砂糖、糖アルコール、ケトース、糖類、多糖類、少糖類などである。
【0061】
砂糖は直接圧縮砂糖および/または間接圧縮砂糖を含む。間接圧縮砂糖は、これに限定されないが、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、ラクトースおよびスクロースを含む。これらの砂糖は通常、直接圧縮砂糖、つまり、その圧縮率または流れを増加させるために修飾された砂糖、または、これに限定されないが、流れを増加させるための滑走剤、流れおよび/または圧縮率などを増加させるための顆粒化などのようなある種の増加をせずに、高速処理およびマルチ−錠剤押圧において使用できるように十分な流動性および/または圧縮率を有しない間接圧縮砂糖が存在する。限定的ではないが、場合によっては、間接圧縮砂糖は、約200ミクロン未満の粒子の少なくとも約90%を有し、より好適には、80%が約150ミクロン未満である。
【0062】
砂糖の総量は剤形の総量の約0から約90(例えば約5から約75、約10および50)重量%で変動することができる。使用することのできる他の非炭水化物希釈剤および賦形剤は、例えば、二水和物または無水リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、無水または水和硫酸カルシウム、乳酸カルシウム三水和物を含む。非炭水化物希釈剤および賦形剤は、剤形の総量の約0から約90重量%(例えば約5から約75重量%、約10から約50重量%)の量で使用されることがある。
【0063】
人工甘味料はサッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、およびアセサルフェームカリウムを含むことができる。人工甘味料は慣習的な量、たとえあ、剤形の総量の約0.1から約2重量%の範囲の量で使用されることがある。
【0064】
香味剤は合成香味オイルおよび香味香料および/または天然オイル、植物、葉、花、果実などからの抽出物、およびそれらの組合せを含むことができる。例えば、シナモンオイル、ウィンターグリーンのオイル、ペッパーミントオイル、クローブオイル、ベイオイル、アニスオイル、ユーカリ、タイムオイル、ニオイヒバオイル、ナツメグのオイル、セージのオイル、苦扁桃のオイルおよび桂皮のオイルが挙げられる。香味剤として、ヴァニラ、レモン、オレンジ、バナナ、グレープ、ライムおよびグレープフルーツを含むシトラスオイル、および、リンゴ、洋梨、桃、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、アプリコットなどの果実精も有用である。
【0065】
香味剤は慣習的な量で使用されることがあり、例えば、剤形の約0.01から約3重量%の範囲の量(例えば、剤形の約0.1から約2.5重量%、剤形の約0.25重量%から約2重量%)で使用されることができる。
【0066】
着色剤は、二酸化チタン、赤色酸化鉄または黄色酸化鉄のような酸化鉄、およびFD&C色素として知られている食品に適した色素、およびブドウの皮抽出物、ビーツの赤い粉末、ベータ・カロテン、アナトー、カーミン、ターメリックおよびパプリカのような天然着色剤を含むことができる。着色剤は慣習的な量、例えば、剤形総量の約0.001から約1重量%の範囲で使用されることができる。
【0067】
潤滑油は、内因潤滑油と外因潤滑油を含むことができる。内因潤滑油は、マグネシウム、カルシウム、ステアリン酸の亜鉛塩、水素化および部分的に水素化された植物油、動物性脂肪、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンモノステアリン酸塩、タルク、軽鉱油、安息香酸ナトリウム、ナトリウムラウリル硫酸塩、酸化マグネシウムなどを含むことができる。潤滑油は慣習的な量で使用されることができ、例えば、剤形の約0.1から約5重量%で使用されることができる(例えば、約0.25から約2.5%;約0.5から約2%)。潤滑油とよばれる化合物のいくつかは、脂肪/ワックスと呼ばれることもあるが、潤滑油は通常、脂肪/ワックスよりも低い濃度で製剤において使用され、潤滑油は通常、機能性を与えるというよりはむしろ処理を容易にするために使用される。
【0068】
界面活性剤は、これに限定されないが、以下の様々なグレードの市販の製品、Arlacel(登録商標)、Tween(登録商標)、Capmul(登録商標)、Centrophase(登録商標)、Cremophor(登録商標)、Labrafac(登録商標)、Labrafil(登録商標)、Labrasol(登録商標)、Myverol(登録商標)、Tagat(登録商標)、および任意の非毒性短鎖および中鎖アルコールを含むことができる。界面活性剤は慣習的な量で使用されることができ、例えば、剤形の約0.01から約5重量%の量で(例えば、約0.1から約2重量%の量で)使用されることができる。
【0069】
バッファーは任意の弱酸または弱塩基、または好適には胃腸粘膜に有害でない任意のバッファーを含むことができる。これらは、限定はされないが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素ニナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、および当量カリウム塩を含む。バッファーは慣習的な量で使用されることができ、例えば、剤形の約0.1から約10重量%(例えば、約1から約5重量%)の量で使用されることができる。
【0070】
剤形は、湿潤剤または乳化剤、pHバッファー剤のような非毒性物質を含むこともできる。上記非毒性物質は、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンラウリン酸モノエステル、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがある。
【0071】
本明細書で使用される「剤形」は、経口薬の投与において知られている錠剤、カプセル、カプレット、サシェ、粉末または他の固体である。剤形は通常本明細書で定義されたように混合物から成形され、投与のために医師または患者によって使用される形態(例えば錠剤)に成形される。
【0072】
剤形は様々な形およびサイズで提供されることができる。実施形態によっては、剤形は経口投与できるサイズであり、ヒドロコドンの治療量を提供する。通常、このような剤形は、どの方向においても1.5インチ以下であり、さらに好適には1インチ以下、最も好適には0.75インチ以下である。形は、これに限定されるわけではないが、表面が平坦または凸面である円形、カプセル形(カプレット)、ひし形、三角形、長方形、五角形、六角形、ハート形、うさぎや象などの動物形の錠剤を含む。剤形は任意のサイズおよび形でありうるが、破砕または濫用を避けるサイズおよび形が好適である。
【0073】
剤形、特に錠剤は、剤形の外観を改善するため、および、破砕または濫用を避けるために被覆されることもある。
【0074】
剤形は1日2回の投与に適するように製剤される。剤形に存在するヒドロコドンの量は、約10mgから約90mg(例えば、15mg、30mgおよび45mg)で変動することができる。剤形は、長期間にわたる連続した、24時間体制での鎮痛を必要としている患者における中度から重度の痛みの持続的な管理に使用される。
【0075】
実施形態によっては、錠剤は、約20から200ニュートンの硬さを有することができる。
【0076】
錠剤は、直接圧縮、湿式造粒法、被覆工程が続く乾式造粒法、および錠剤圧縮、または他の錠剤製造技術によって製造されることができる。例えば、本明細書に参照によって組み込まれている米国特許第5,178,878号、第5,223,264号および第6,024,981号を参照。
【0077】
以下の実施例において、酒石酸水素ヒドロコドンは9.1%の結晶水を含む。
【実施例】
【0078】
実施例1.芯部分、被覆部分、被覆及び芯部分中の脂質/ワックスを含む用量設定
【表1】

【0079】
酒石酸水素ヒドロコドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コンプリトール、及びエチルセルロースの一部を高剪断造粒機中で2分間乾式混合することで、顆粒を製造した。次いで、残ったエチルセルロースの10%水−エタノール(30:70)溶液を、前記造粒機の撹拌羽根及び裁断機の速度を、顆粒の形成及び成長に十分な剪断力を与えるように予め選択した値を維持しながら、ゆっくりと加えた。上記のエチルセルロースのパーセントが達成されるまで、溶液の添加を続けた。前記顆粒を、次いで衝撃式製粉機中で粉砕し、最後に乾燥した。
【0080】
非被覆の前記顆粒を、次いでボトムスプレー流動層の中で、2:1エチルセルロース/コンプリトール混合物の15%アルコール懸濁液を用いて被覆し、重量比で20%の被覆を持つ被覆顆粒を得た。被覆顆粒を拡散混合機の中で、ラクトース一水和物、酒石酸水素ヒドロコドン、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合した。ステアリン酸マグネシウムを加え、前記混合物をさらに混合した。錠剤中に装填する被覆顆粒の量は、ヒドロコドンの当該被覆顆粒中の実質的な含有量に基づくものであって、理論的な含有量に基づくものではない。前記混合した混合物を、次いで回転式錠剤プレス機中で圧縮し、錠剤を形成した。3/8インチ丸型の前記錠剤は、400mgの重さであって、95Nの平均硬度を持つ。
【0081】
この錠剤の処方は、表2中にも記載されている。表2はまた、多数の追加的な処方(表2中のロット番号によって参照される)についての記述と、それらに対応する、破砕耐性及びアルコール耐性を調べるために実施された試験から得られた結果についての記述とを含むものである。
【0082】
表2で与えられている着色剤を含有する各処方は、以下のように、圧縮に先立って基質に着色剤を加えることによって処方された。前記被覆顆粒を、拡散混合機中において、前記着色剤、ラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合した。ステアリン酸マグネシウムを加え、前記混合物をさらに混合した。錠剤中に装填する被覆顆粒の量は、ヒドロコドンの当該被覆顆粒中の実質的な含有量に基づくものであって、理論的な含有量に基づくものではない。前記混合した混合物を、次いで回転式錠剤プレス機中で圧縮し、錠剤を形成した。幾つかの実施例においては、前記着色剤を前記ラクトースと予め混合し、塊を崩し(delump)、ふるいにかけ、次いで圧縮前に残りの前記処方成分と混合した。
【0083】
【表2】

【0084】

【0085】

【0086】

【0087】

【0088】

【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】

【0094】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】

【0099】
実施例2.溶解速度と不正使用耐性
0.1N塩酸及び40%(v/v)アルコールへの溶解、並びに本明細書で開示される様々な処方の模擬的な経口不正使用をテストした。USP溶出試験器ナンバー2を使用し、溶出溶媒として、500mlの0.1N塩酸(通常の溶解条件)又は40%エタノール溶液(服用不正の溶解条件)を用いてテストした。特に指定のない限り、前記通常溶解条件において、60、120、240、480、720、960、1220、及び1440分の撹拌後、前記服用不正溶解条件において、15、30、45、60、120、180、240、及び360分の撹拌後に、分取物を得た。サンプルを、ヒドロコドンについてHPLCを用いて解析した。
【0100】
模擬的な経口不正使用のテストを、前記錠剤をセラミック製の乳鉢及び乳房を用いて破砕することで実施した。錠剤をセラミック製の乳鉢(13cmの外径)中に置く。乳棒を用いて、前記錠剤に対して破砕されるまで下方向に垂直の力を掛ける。前記破砕された錠剤を、下方向の力を掛けながら360度の円状の動きを用いて、さらに破砕する。この円状の破砕するための動きを、11回繰り返す(合計で12回のストローク)。結果得られた粉末を、インビトロ薬剤放出のために溶解容器に移す。破砕された前記錠剤サンプルのインビトロ放出プロファイルを、500mlの0.1N塩酸の溶解溶媒中で得た。前記サンプルをUSP試験器ナンバー2(パドル)を用いて、37℃、50rpmで撹拌した。これらの条件は、上記のインビトロ溶解テストにおいて用いられたものと同じである。特に指定がない限り、15、30、45、60、120、180、240、及び360分の撹拌後に、分取物を得た。
【0101】
上記実験の結果は、表2に詳細を記載している。本技術分野の当業者は、特定の処方によって示される破砕耐性が、当該処方の組成に依存することを理解するであろう。2つの組成間の相対的な破砕耐性を比較するために、第1の処方について所与の時点で示される放出パーセントの差を、第2の処方に対して比較することができ、例えば表2を参照すると、処方(1)は破砕後0.5時間の時点で81%の放出率を持ち、処方(2)は破砕後0.5時間の時点で55%の放出率を持つ。これら2つの処方を比べたとき、処方(2)について、26%大きい破砕耐性を持つものとして特徴づけることができる(例えば、処方(1)の破砕から0.5時間以内の放出パーセントと、処方(2)の破砕から0.5時間以内の放出パーセントの違い)。また、処方(2)を20%又は25%良い破砕耐性を持つものとして特徴付けることもできる。
【0102】
実施例3.薬物動態学試験(PK Study)
これは、単施設無作為化非盲検4期クロスオーバー第I相試験であって、健康な男性及び女性のボランティアにおいて、酒石酸水素ヒドロコドンの徐放性(ER:extended release)錠剤の3つのプロトタイプ(治療A,B、及びC)並びに市販の酒石酸水素ヒドロコドン/アセトアミノフェンの即時放出性(IR:immediate−release)錠剤(治療D)についての薬物動態を特徴づけるためのものであった。
【0103】
被験者(n=40)は、ABCD、BCDA、CDAB、又はDABCの4つの治療シーケンスのうちの1つに無作為に割り当てられた。ここで、Aは実施例35(35%の被覆レベルをもつ被覆顆粒)に従って調製された45mgの酒石酸水素ヒドロコドンER錠剤であって、Bは上記の表2において太字で示されているロット200905(42.5%の被覆レベルをもつ被覆顆粒)に従って調製された45mgの酒石酸水素ヒドロコドンER錠剤であって、Cは実施例33(50%の被覆レベルをもつ被覆顆粒)に従って調製された45mgの酒石酸水素ヒドロコドンER錠剤であって、Dは10mg/325mgの酒石酸水素ヒドロコドン/アセトアミノフェンのIR錠剤(NORCOにより市販)を毎6時間に1個ずつ4錠剤が投与されるまで投薬を続けたものであった。ヒドロコドンは、絶食状態の被験者に投与された。被験者はこの試験の間、投薬セッションの間に最低5日の休薬期間を挟みつつ、それぞれの治療を受けた。被験者にはまた、オピオイド効果の遮断を目的に、それぞれの治療期間における治験薬投薬の、約15時間前及び約3時間前、並びに約9時間後及び約21時間後に、ナルトレキソンの50mg錠剤1個を与えた。ヒドロコドン投与直前、及び投与後72時間にわたって、静脈穿刺カテーテル又は留置カテーテルによって静脈血サンプルを収集し、ヒドロコドン及びヒドロモルフォン(活性代謝物)の薬物動態を特徴決定した。治療A、B,及びCについては、投与直前、並びに、15、30、及び45分後、並びに、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、3、3.5、4、5、6、8、10、12、18、24、30、36、48、60、及び72時間後にサンプルを収集し、治療Dについては、初回の薬剤投与から、その直前、並びに15、30、及び45分後、並びに、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、3、3.5、4、5、6、7、7.25、7.5、12、13、13.25、13.5、18、18.25、18.5、18.75、19、19.25、19.5、19.75、20、20.25、20.5、21、21.5、22、23、24、30、36、48、60、及び72時間後にサンプルを収集した。
【0104】
ヒト血漿サンプル中のヒドロコドン及びヒドロモルフォンの濃度を、妥当性が実証されている高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS/MS)を用いて決定した。
【0105】
この試験の結果を、図1及び下の表3に示す。
【0106】
【表3】

【0107】
実施例4
PKパラメーターへの食事及びアルコールの影響
これは、単施設無作為化非盲検5期クロスオーバー第I相試験であって、上の表2に示されているロット200923(42.5%の被覆レベルを持つ被覆顆粒)に従って作成された酒石酸水素ヒドロコドンの徐放性錠剤15mgを、絶食時で水と一緒に、摂食時に水と一緒に、及び絶食時に様々な量のアルコール(4、20、及び40%(v/v))と一緒に投与した後の、薬物動態を特徴づけるためのものであった。
【0108】
被験者は、ABCDE、BCDEA、CDEAB、EABCD、又はEABCDの5つの治療シーケンスのうちの1つに無作為に割り当てられた。これらの治療については、下の表4において記載されている。
【0109】
【表4】

【0110】
全ての被験者は、治験薬投与の前の晩、およそ22時に絶食を開始した。治療A、C、D、及びEを受ける被験者は、それぞれの投薬期間において、投与後に4時間の絶食状態を維持した。治療Bを受ける被験者は、治験薬投与の約30分前まで絶食し、その時点で平均的な高脂肪の朝食を与えられ、次いで治験薬投与後は最低4時間経つまで絶食状態を維持した。
【0111】
連続した治験薬投与の間には最短でも5日間の休薬期間をおいた。被験者は前記5つの治療を各1回受けた。被験者には、オピオイド受容体を遮断し、オピオイド関連の有害事象を最小限に下げるために、それぞれの治療期間における治験薬投薬の、約15時間前及び約3時間前、並びに約9時間後及び約21時間後に、ナルトレキソンの50mg錠剤1個を240mlの水と一緒に与えた。
【0112】
前記5つの治療期間のそれぞれについて、各治験薬投与の直前(約5分以内)、各地検約投与の15、30、及び45分後、並びに、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、3、3.5、4、5、6、8、10、12、18、24、30、36、48、60、及び72時間後に、薬物動態解析のための脈血サンプルを収集した。ヒト血漿サンプル中のヒドロコドン及びヒドロモルフォンの濃度を、妥当性が実証されている高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS/MS)を用いて決定した。
【0113】
【表5】

【0114】
上の表5に示されているように、試験された剤形は食事効果に抵抗性があり(Tmaxに僅か25%の変化とCmaxに48%の変化)、エタノールの過量放出に抵抗性があった(例えば、40%エタノールのサンプルと、絶食エタノール無しサンプルとを比べたとき、Cmaxに6%の変化)。
【0115】
実施例5
粘度調整剤無しの処方への食事の影響
公報US2008/0069891(この全開示は参照により本明細書中に援用される)の実施例1及び14に記載されている方法と類似のものを用いて、以下の処方を持つ顆粒を作成した。
【0116】
【表6】

【0117】
【表7】

【0118】
前記顆粒を次いで、表8で示されている基質材料に結合させ、錠剤に圧縮する。
【0119】
【表8】

【0120】
コンプリトールは前記剤形(錠剤)の総重量の10%を常に保っているが、実際の分析上での量の、理論的な値からの差異は、塩酸オキシコドンの量を1錠につき80mgに保つためにラクトース及び被覆顆粒の量を変化させたことによるものと考えられた。平均的な前記錠剤の重量は850mgであり、平均硬度は140〜155Nである。前記錠剤の寸法は、0.3125インチx0.5625インチである。
【0121】
前記錠剤を次いで、健康的な被験者において、塩酸オキシコドンの徐放性錠剤80mgの単回投与時の薬物動態への食事の影響を見積り、塩酸オキシコドンの徐放性錠剤80mgの単回及び複数回投与の薬物動態を特徴決定するための、単施設無作為化非盲検3期第I相試験で使用した。
【0122】
被験者は、ABC又はBACの2つの治療シーケンスのうちの1つに無作為に割り当てられた。ここで、Aは80mgの塩酸オキシコドンの徐放性錠剤の絶食状態の被験者に対する単回投与であって、Bは80mgの塩酸オキシコドンの徐放性錠剤の摂食状態の被験者に対する単回投与であって、Cは80mgの塩酸オキシコドンの徐放性錠剤を1錠ずつ1日2回で4.5日間与えるものであった(治療グループCのデータは示していない)。
【0123】
この試験は、治験薬1回目投与前21日以内に行うスクリーニング来院(来院1)と、それに続く2回の非盲検単回投与の投薬期間(期間1及び2、来院2及び3)、1回の非盲検複数回投与4.5日間の投薬期間(期間3、来院3に含まれる)、並びに経過観察来院(来院4)から構成されるものであった。期間1及び2の治験薬投与の間に最低5日間の休薬期間が設けられた。投薬期間3は、渡欧約期間2における48時間にわたる薬物動態サンプルの収集後、すぐに開始した。
【0124】
被験者はこの治験の間、3つの治療全てを受けた。被験者には、オピオイド受容体を遮断し、オピオイド関連の有害事象を最小限に下げるために、期間1及び2における投薬の、約15時間前及び約3時間前、並びに約9時間後及び約21時間後に、ナルトレキソンの50mg錠剤1個を240mlの水と一緒に与えた。 さらに投薬期間2の間、被験者には、被験薬の投薬から約33及び45時間後に、ナルトレキソンを与えた(期間3の治験薬投与の準備として)。
【0125】
投薬期間3の間、被験者には、5日目の最後の治験薬投与後、12時間から21時間毎にナルトレキソンを与えた。
【0126】
期間1及び2において、被験者は終夜の絶食状態(食事及び飲料無し)が要求され、被験薬投与前の夕方およそ21時から絶食を開始した。治療Aに無作為に割り当てられた被験者は、被験薬投与後、最短でも4時間絶食を続けた。治療Bに無作為に割り当てられた被験者は、治験薬投与の約30分前まで絶食し、その時点で平均的な高脂肪の朝食を与えられ、投薬前にそれを全部平らげなければならなかった。治療Bを受ける被験者は、次いで、治験薬の投薬後最低4時間まで絶食状態の維持が要求された。全ての被験者(無作為に割り当てた治療とは関係なく)は、各治験薬投与の1時間前まで、及び1時間後から、ミネラル非含有の水を飲むことが許可された。
【0127】
治療A及びBの投薬期間の間、静脈穿刺カテーテル又は留置カテーテルによって、血液サンプル(3ml)を収集した。各治験薬投与の、投与直前(約5分位内)、並びに、15、30、及び45分後、並びに、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、10、12、16、24、36、及び48時間後にサンプルを収集した。
【0128】
この試験においては、30人の被験者が登録され、治療シーケンス無作為に割り当てられ、30人の全被験者が少なくとも1回の治験薬投与を受け、25人(83%)の被験者が薬物動態解析の評価が可能であり、23人(77%)の被験者がこの試験を完了した。
【0129】
【表9】

【0130】
上の表9で確認できるように、試験した処方を与えられた被験者からのサンプルは、当該処方が食事効果にあまり抵抗性が無いことを示している(絶食状態と摂食状態の間で65%の違い)。
【0131】
本発明についての数多くの実施形態を記載してきた。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変形が行われてもよいと、理解されるであろう。したがって、他の実施形態は以下の請求項の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐放性の経口剤形であって、
前記剤形に対する重量比で約1〜約10%の量の粘度調整剤を有する基質と、
ヒドロコドン又はその塩形態を有する被覆顆粒であって、芯部分に5%未満の脂質/ワックスを含むものである、前記被覆顆粒とを有し、
模擬的な経口不正使用の30分後における前記剤形からのヒドロコドンの放出が、約50%未満である、経口剤形。
【請求項2】
徐放性の経口剤形であって、
前記剤形に対する重量比で約1〜約10%の量の粘度調整剤を有する基質と、
ヒドロコドン又はその塩形態を有する被覆顆粒であって、芯部分に5%未満の脂質/ワックスを含むものである、前記被覆顆粒とを有し、
0.1N塩酸及び40%アルコールの溶液中において、2時間後のヒドロコドンの放出パーセントが、アルコール非含有の0.1N塩酸溶液中におけるヒドロコドンの放出パーセントと比べて、10%大きい値を超えないものである、経口剤形。
【請求項3】
徐放性の経口剤形であって、
前記剤形に対する重量比で約1〜約10%の量の粘度調整剤を有する基質と、
ヒドロコドン又はその塩形態を有する被覆顆粒であって、芯部分に5%未満の脂質/ワックスを含むものである、前記被覆顆粒とを有し、
試験の6時間後における前記剤形からのヒドロコドンの放出が、500mlの0.1N塩酸溶液中で、USP溶出装置を用いて試験したときに、約80%未満である、経口剤形。
【請求項4】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、前記ヒドロコドンが酒石酸水素ヒドロコドンである、剤形。
【請求項5】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、前記粘度調整剤が、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸、ゼラチン、ペクチン、ゴム、ポリエチレンオキシド、こんにゃく粉、カラギーナン、キサンタンガム、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものである、剤形。
【請求項6】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、前記粘度調整剤が、ゲル化ポリマーである、剤形。
【請求項7】
請求項6記載の剤形において、前記ゲル化ポリマーが、天然及び合成のでんぷん、天然及び合成のセルロース、アクリル酸塩、及びポリアルキレンオキシドからなる群から選択されるものである、剤形。
【請求項8】
請求項7記載の剤形において、前記ゲル化ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択されるものである、剤形。
【請求項9】
請求項8記載の剤形において、前記ゲル化ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、剤形。
【請求項10】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、前記粘度調整剤が、前記剤形との重量比で約5〜約10%の量で存在するものである、剤形。
【請求項11】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、当該剤形が、前記基質中に3%未満の脂質/ワックスを有するものである、剤形。
【請求項12】
請求項11記載の剤形において、絶食状態と摂食状態との間のCmaxの%変化が50%未満である、剤形。
【請求項13】
請求項11記載の剤形において、絶食状態と摂食状態との間のTmaxの%変化が35%未満である、剤形。
【請求項14】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、前記被覆顆粒が、
顆粒であって、当該顆粒との重量比で約0.1〜約90%の量のヒドロコドン又はその塩形態と、当該顆粒との重量比で約1〜約90%の量の第1の強力皮膜形成剤と、当該顆粒との重量比で約1〜約90%の量の第2の粘度調整剤とを有するものである、顆粒と、
前記顆粒上の被覆であって、当該被覆が、前記被覆顆粒との重量比で約20〜約80%の量で存在するものであり、当該被覆が、前記被覆顆粒との重量比で約10〜約50%の量の第2の強力皮膜形成剤と、前記被覆顆粒との重量比で約10〜約30%の量の脂質/ワックスとを有するものである、前記被覆と
を有するものである、被覆顆粒。
【請求項15】
請求項14記載の剤形において、当該剤形が破砕耐性を持つものである、剤形。
【請求項16】
請求項14記載の剤形において、当該剤形がアルコール過量放出に耐性を持つものである、剤形。
【請求項17】
請求項14記載の剤形において、前記第1の強力皮膜形成剤及び前記第2の強力皮膜形成剤が同じものである、剤形。
【請求項18】
請求項14記載の剤形において、前記第1及び第2の強力皮膜形成剤が、天然及び合成のでんぷん、天然及び合成のセルロース、アクリル、ビニル、樹脂、メタクリル酸塩、又はセラックからなる群から独立に選択されるものである、剤形。
【請求項19】
請求項18記載の剤形において、前記第1及び第2の強力皮膜形成剤が、エチルセルロース、アンモニオメタクリレートコポリマータイプB、アンモニオメタクリレートコポリマータイプA、アミノ メタクリレートコポリマー、エチルアクリレート及びメチルメタクリレートコポリマー分散液、メタクリル酸コポリマータイプAメタクリル酸コポリマータイプB、並びにセラックからなる群から独立に選択されるものである、剤形。
【請求項20】
請求項14記載の剤形において、前記脂質/ワックスが、グリセロール脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド誘導体、ワックス、脂肪酸アルコール、又はそれらの組合せからなる群から選択されるものである、剤形。
【請求項21】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、0.1N HCl及び40%アルコールの溶液中において2時間後に放出されるヒドロコドンのパーセントが、アルコール非含有の0.1N HCl溶液中において放出されるヒドロコドンのパーセントと比べて、10%大きい値を超えないものである、剤形。
【請求項22】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、当該剤形を少なくとも5人の絶食した健康なヒトの群に、アルコールの共摂取有り及び無しの条件で投与したとき、アルコール共摂取後の平均Cmaxの、アルコール摂取無しの平均Cmaxに対する比率が、約0.5〜約1.8である、剤形。
【請求項23】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、当該剤形を少なくとも5人の絶食した健康なヒトの群に1回用量として投与したとき、前記剤形の投与2時間後において、血漿中平均ヒドロコドン濃度に対する平均Cmaxの比率が約1.5〜約4.5であり、12時間後において、血漿中平均ヒドロコドン濃度に対する平均Cmaxの比率が約0.5〜約2.5である、剤形。
【請求項24】
請求項1又は2又は3記載の剤形において、当該剤形を少なくとも5人の絶食した健康なヒトの群に1回用量として投与したとき、前記剤形の投与2時間後において、血漿中平均ヒドロコドン濃度に対する平均Cmaxの比率が約2.0〜約4.0であり、12時間後において、血漿中平均ヒドロコドン濃度に対する平均Cmaxの比率が約1.0〜約2.0である、剤形。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−520514(P2013−520514A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555111(P2012−555111)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2011/025914
【国際公開番号】WO2011/106416
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511059542)シマ ラブス インク. (3)
【Fターム(参考)】