説明

濾板の製造方法

実質的に平坦な、好ましくは熱可塑性のポリマー製の枠、ならびにその中に固定して着座される実質的に平坦な濾過材。この方法は、ポリマー製枠の形成および硬化から生じる不利な機械的応力への濾過材の曝露が少ないことを特徴とする。このような目的に向けて、実質的に平坦なポリマー製枠が、少なくとも2つの別のステップで形成されるが、その過程で上記実質的に平坦な濾過材が組み込まれる。最初に形成される部分100は機械的抑制具として働いて、第2の「嵌め込んでいる」部分18がその形成中に収縮または他の形で反る傾向から、後で組み込まれる濾過材を保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年6月17日出願の米国特許出願10/870802の一部継続出願(CIP)であり、その全内容を本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は一般に、複合濾板を製造する方法論を対象とし、特に熱可塑性材製枠と濾過材を備える実質的に平坦な濾板を製造する方法であって、濾過材が上記枠に固定して嵌め込まれ、かつ機械的応力への曝露が軽減される方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
濾板はよく知られている。その多様な構造、用途、および機能は広範に及ぶ。その基本形式、すなわち熱可塑性材製外枠内に組み込まれ、保持される実質的に平坦な濾過材を備える構成が、例えば圧搾濾過器、法線フロー円形濾紙、電気脱イオン化デバイス、マルチウェルプレート、およびタンジェンシャルフロー濾過装置などの構造で広く使用されている。
【0004】
濾板を製造する従来の方法論では、熱可塑性材製外枠組の形成と同時または同時期に濾過材が固定して組み込まれる場合が多い。このような方法論は、特定の用途に対しては好結果をともなって引き続き使用されているが、多くの熱可塑性材の、充分に立証されている形成後かつ硬化前の寸法不安定(例えば収縮性)が、組み込まれた濾過材の構造的完全性に予期しない影響を及ぼす可能性がある。例えば、組み込もうとしている濾過材が、高分解流体分離を可能にするように設計されたタイプのもの(生物薬剤学的流体分離で一般的なものなど)である場合、取り囲んでいるポリマー製枠組の僅かな構造的置換さえも、短命で一時的なものであっても、上記濾過材の構造的完全性を受け入れがたいほど損なう可能性がある。特定のポリマー原材料は、大型のバルク枠形式の場合とも同様に、丈夫な濾過材の構造的および機能的完全性さえもそのような影響に対して耐性を有さなくなるほどの厳しい構造的歪みを硬化中に生み出す可能性がある。
【0005】
技術的進歩によって、ガラス繊維ポリマー複合材料などの、形成および硬化を通して大きな寸法安定性を保持するポリマー原材料の開発が起こったが、そのような革新的な材料はコスト高である場合が多い。製薬産業で所謂「使い捨て製品の製造」に向かう動きが益々高まっていることを考慮すると、このような革新的ポリマー材料は法外にコスト高となり得る。それらは多くの場合、使い捨ての濾過構成要素およびデバイスの製造に使用するには経済的に利用不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、実質的に平坦な濾板を製造する代替的方法であって、濾過材をポリマー製枠内にしっかりと嵌め込み、または他のやり方で組み込み、しかも上記枠を形成するのに使用するポリマー原材料の寸法不安定に対する曝露が小さい代替的方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述および他の必要に応えて、本発明は、一般に、実質的に平坦な濾過材が中に固定して着座される実質的に平坦な高分子ポリマー製枠を備える実質的に平坦な濾板を製造する方法であって、ポリマー製枠の形成および硬化の結果生じる不利な機械的応力への濾過材の曝露が軽減されることを特徴とする方法を提供するものである。
【0008】
特に、この方法は、好ましくは熱可塑性であるポリマー(またはその前駆物質)から、実質的に平坦なポリマー製枠の第1外側部分を形成するところから始まり、第1外側部分は、上記実質的に平坦な濾過材を上記ポリマー製枠内に実質的に同一平面の関係で保持するのに充分過ぎるほどの深さおよび幅を有する周囲方向に変位された内側押縁を有する。第1外側部分は、例えば硬化によって大幅に寸法安定にされる。次いで所望の実質的に平坦な濾過材が、上記周囲方向に変位された内側押縁の上に着座される。最後に、上記実質的にポリマー製枠の第2内側部分が、それと同じまたは類似のポリマー(またはその前駆物質)を、上記周囲方向に変位された内側押縁の未充填域に注入することによって形成され、それによって上記ポリマー製枠を実質的に完成し、上記着座した濾過材を定位置に固定する。
【0009】
本発明の主たる目的は、実質的に平坦な濾板を製造する方法であって、上記実質的に平坦な濾板が、実質的に平坦な濾過材が中に固定して着座される実質的に平坦なポリマー製枠を備える方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、実質的に平坦な濾過材が中に固定して着座される実質的に平坦なポリマー製枠を備える実質的に平坦な濾板を製造する方法であって、上記実質的に平坦なポリマー製枠が少なくとも2つの別のステップで形成され、その間上記実質的に平坦な濾過材が組み込まれる方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、実質的に平坦な濾過材が中に固定して着座される実質的に平坦なポリマー製枠を備える実質的に平坦な濾板を製造する方法であって、上記実質的に平坦なポリマー製枠が、少なくとも2つの異なったポリマー原材料から、少なくとも2つの異なった別のステップで形成され、その間上記実質的に平坦な濾過材が組み込まれる方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、実質的に平坦であるが比較的厚い濾過パケットを中に固定して嵌め込んで有する実質的に平坦なポリマー製枠を備える実質的に平坦な濾板を製造する方法であって、上記濾過パケットが複数層の濾過材を備える方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、実質的に平坦な濾板であって、濾過材がポリマー製枠内に固定して嵌め込まれるプロセスから、機械的応力への曝露が軽減されて製造される濾板を提供することである。
【0014】
添付の図面と併せて以下の詳しい記述を考慮すれば、本発明のこれらの目的および他の目的を充分に理解することができよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、一般に、実質的に平坦な濾板を製造する二段階方法であって、上記板が、実質的に平坦な濾過材が中に嵌め込まれ、そこで固定して着座されてある実質的に平坦な高分子ポリマー製枠を備える方法を提供する。
【0016】
この二段階方法論は、嵌め込まれた実質的に平坦な濾過材の予期せぬ不用の変形を軽減して、たとえあったとしても、反り、捻れ、膨れ、および他の同様の変形が比較的少ない製品をもたらすやり方で使用される材料の構造的可変性に適応するように行われる。このような変形は、得られた濾板の機能、効果、および/または耐用期間に対して好ましくない影響を有する可能性がある。この方法は着実であり、これを実行して、比較的大きな製品収量を達成することができる。
【0017】
二段階式嵌め込み方法論のステップを図2Aから図2Cに概略的に示す。
【0018】
図2Aに示すように、最初に上記実質的に平坦なポリマー製枠10の第1外側部分12が、高分子ポリマー(またはその前駆物質)から形成される(図1も参照)。第1外側部分12の構成は変化可能であるが、所望の実質的に平坦な濾過材30を上記ポリマー製枠100内に実質的に同一平面の関係で保持するのに充分過ぎるほどの深さおよび幅を有する周囲方向に変位された内側押縁14を少なくとも有するべきである。
【0019】
2番目に、第1外側部分12が、ポリマー製枠100の第1外側部分12を大幅に寸法安定にするのに持続時間、温度、および同様の条件に関して充分な条件下でアニールされ、硬化され、または他のやり方で処理される。
【0020】
3番目に、第1外側部分が所望程度の寸法安定にされると、図2Bに示すように、実質的に平坦な濾過材30が、上記周囲方向に変位された内側押縁12内に、上記実質的に平坦なポリマー製枠10の上記第1部分112と実質的に同一平面の関係で着座される。
【0021】
4番目に、最後に、図2Cで示すように、上記実質的にポリマー製の枠10の第2内側部分18が形成されるが、これは同一の、類似の、または適合性のある高分子ポリマー(またはその前駆物質)を、上記周囲方向に変位された内側押縁14の未充填域、すなわち濾過材と第1外側部分12との間にある(複数の)隙間または(複数の)空間に注入する(好ましくはその後硬化させる)ことによって行われ、そのようにしてポリマー製枠100を完成し、上記着座された濾過材30を定位置に固定する。
【0022】
好ましくは、コストと製造および取り扱いの容易さとの観点から、第1外側部分12は、少なくとも最初は、一体的な、すなわち単一の、統合された、組み立てられていない部品として形成されるべきである。必要であれば、他の部品または構成要素をこの発明的方法論の後のステップで、あるいは濾過材が嵌め込まれたポリマー製フレーム100の製造完了後に付け加えることができる。
【0023】
本発明のポリマー製枠10は、本質的に第1外側部分12(最初に形成される)と第2内側部分18(後に形成される)との組合せを備える。したがって、第1内側部分12は本質的に、第2内側部分18分を差し引いたポリマー製枠100を構成するものとして定義することができる。
【0024】
第1外側部分12は、いくつかの異なった一体的に形成された構造的特徴を含むことができる。例えば、図1に示す実施形態では、第1外側部分は、流体流れを適切に、いくつかのこの発明的濾板10から組み立てられたより大きなデバイスに向けるよう構成することができる入口22を含むことができる。他の構造的特徴も必要に応じて統合することができ、それらは一体的に形成された分岐管システムまたは同様の流路または流導管、内側および/または外側壁構造物、いくつかの濾板1を積み重ねる助けとなる位置合わせ案内部または連結器、板から板への入口プラグおよびスペーサ、強度を高めるうね(rib)、支え、およびブラケット、ならびに濾過に関係する、アセンブリに関係する、および/または製造に関係する追加の機能をもたらす他の同様の構造物などである。
【0025】
その全体寸法および量に関して述べると、第1外側部分12がポリマー製枠100全体の大きな部分を構成し、第2内側部分18はそのほんの一部分しか構成しない。大きな第1外側部分12は、小さな第2内側部分18に対して機能的に良好な支えとして働き、したがってこの発明的な方法論の残りのステップ全てを通してより大きな寸法安定をもたらす。同じように、第2内側部分の収縮(および/または厄介な変形)は、その部分の質量および体積が比較的小さい場合は、収縮が後の硬化ステップ中に起こる時または場合にも、それが嵌め込んでいる濾過材の完全性に悪影響を及ぼすことは少ない。
【0026】
図1に示すように、第1外側部分12は、大きな構造的変化を受けるが、上記実質的に平坦な濾過材を上記ポリマー製枠10内に実質的に同一平面の関係で保持するのに充分過ぎるほどの深さおよび幅を有する周囲方向に変位された内側押縁14を少なくとも有する。
【0027】
周囲方向に変位された内側押縁14は、実質的に平面の濾過材30がこの方法の後のステップで上に着座されるプラットフォームを提供する。周囲方向に変位された内側押縁の構造は、単に、枠の第1外側部分12の内周のまわりに成形され、彫刻され、または切り込まれ、あるいは他のやり方で設けられた溝または端面取部(bevel)または押縁またはタブであることができる。周囲方向に変位された内側押縁は、例えば、濾過材30の容易なアクセスを阻止または妨害し、あるいはその他のやり方で抑制し得る不必要な構造的特徴を作り出さないことなどによって、実質的に平坦な濾過材30を容易に着座させることに配慮して構築するべきである。容易にアクセス可能な周囲方向に変位された内側押縁14は、繊細な濾過材の丁寧な取り扱いを促進して、嵌め込まれた濾過材30のその後の機能を損なう可能性のある粗野で無理な操作を軽減する。必要な場合、周囲方向に変位された内側押縁14には、実質的に平面の濾過材30の適切な位置合わせおよび/または方向付けの助けとなる一体的に形成されたスペーサ、挿入物、うね、レール、または他の同様の案内部も設けてよい。
【0028】
形成方法に関して述べると、ポリマー製枠は、多様なポリマー材料(あるいはその単量体またはオリゴマー前駆物質)から、例えばよく知られている射出成形法によって形成することができる。他のプラスチック形成方法論は、例えば熱形成、トランスファ成形、熱間鍛造、反応射出成形、圧縮成形、押出加工、液体鋳造、選択的レーザー焼結、および立体造形が含まれる。ポリマー製部品の他の形成技術も当業者によく知られている。
【0029】
適切なポリマー材料の例には、以下に限らないが、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、PTFE樹脂および他のフッ素ポリマー、アクリルおよびメタクリル樹脂およびコポリマー、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリル−サルホン、ポリスチレン、ポリビニル塩化物、塩素化ポリビニル塩化物、ABSとその合金および混合物、ポリオレフィン(例えば低濃度ポリエチレン、高濃度ポリエチレン、および超高分子量ポリエチレンおよびそのコポリマーなど)、ポリプロピレンおよびそのコポリマー、メタロセン生成ポリオレフィンなどの熱可塑性プラスチック、ならびにポリウレタン、エポキシなどの熱硬化性ポリマーが含まれる。
【0030】
ここに示すように、第1外側部分12は、形成してから、所望の寸法安定に硬化(またはその他のやり方で「固める(harden)」)することができる。
【0031】
寸法安定とは、本明細書では、材料がその寸法および形状を様々な温度および応力下で維持する能力と規定する。本発明の実践では、寸法安定が、広くかつ/または極端な範囲の諸条件でも維持される必要はない。むしろ、本発明の目的を考慮すると、成形部品は、上記高分子ポリマー製フレーム10の第2内側部分18の形成および硬化中に生じそうな温度および他のストレスにしっかりと耐えるのに「充分に」寸法安定であるべきである。
【0032】
寸法安定性は、捻れ、反り、フィブリル化などの望ましくない多様な潜在的構造変化を含むが、以下に限定されないものの、本発明の主要な懸案事項は収縮である。本明細書で使用する収縮とは、部品が通常または周囲温度に達した後のその寸法と形成直後の部品の寸法との差異と考える。例えば、汎用ポリスチレン樹脂から成形されたポリマー製枠は、空洞部圧力などの成形変数に応じて0.003インチ/インチから0.007インチ/インチ(0.0076cm/cmから0.0178cm)の成形収縮を呈する。他のポリマー材料は異なった収縮率および割合を呈する。
【0033】
広範なポリマー出発材料とその前駆物質との有用性を含む、本発明の実施に利用可能な広範な変数を前提とすると、寸法安定が達成される特定の1つの(または複数の)ステップにも広範な変化形態がある。出発材料に応じて大きな寸法安定を達成することができ、これは例えば、形成部品を数分から数時間寝かせることによって、かつ/あるいはそれを高温のオーブンに配置することによって、かつ/あるいはそれを圧搾機で圧縮することによって、かつ/あるいはホウ酸槽または他の化学安定剤または化学架橋剤にそれを浸すことによって、かつ/あるいはそれを化学線照射に曝露することによって行う。他の同様の戦略も当業者は使用することができる。これらおよび他の戦略を、潜在的に同一の使用製造装置内で、第1成形ステップと同時に使用することができる。
【0034】
「大幅な寸法安定」を達成するために必要なステップを決定するには、使用する特定の出発材料を考慮することが必要である。例えば所謂「結晶化可能な」ポリマーを使用するときは、収縮の量が、所謂「ガラス成形」ポリマーを使用するときよりも大きな懸案事項となり、すなわちこれは結晶化の際の比較的大きな縮小のためである。結晶化の量は、製品の縮小および収縮の大きさだけでなく、その機械的特性も決定する。したがって、製品の寸法上および機械的一貫性は、結晶化を測定し、制御することによって維持することができる。寸法安定を維持する他のアプローチとしては、射出樹脂の温度、鋳型の温度、射出圧力および保持圧力などの動作条件をフィードバック制御することによって、成形サイクルの所定時に収縮率を測定し、制御することがある。
【0035】
特に射出成形処理に関しては、成形収縮は、用途およびプロセスに左右されることが理解されるであろう。全てのポリマー材料で、融解および成形温度が高くなるほど部品の収縮が増大し、成形圧力が高くなるほど部品の収縮が軽減される。
【0036】
成形部品の寸法安定度は、材料本来の特徴と、完成部品が使用中または保管中に曝される諸条件との関数である。寸法安定度はまた、処理方法に強く影響され、形成温度、圧力、冷却速度、および断面の厚さに関係する。
【0037】
成形部品の最終寸法は、成形用空洞の複雑さおよびサイズと、成形中の材料が鋳型内で冷却される際の収縮傾向とによって決定される。例えばポリスチレン樹脂は不定形(非結晶質)材料であることから、それらは、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの結晶性材料よりも小さな成形収縮しか呈さない。
【0038】
特定の材料については、より高度の寸法安定を達成することが望ましい場合がある。よく知られている焼鈍しプロセスを、そうした目的に向けて実施することができる。焼鈍しは本質的に、組み立てられた部品が、焼鈍しをしない場合にあり得る温度よりも高い温度で、性能特性および寸法公差を維持するのを可能にする。
【0039】
焼鈍しは、最終用途部品で決定される実際的な加熱撓み温度よりもおよそ華氏5度から10度分低い温度で制御され、空気循環する炉で最もうまく行われる場合が多い。熱水槽で焼鈍した部品の性質は、熱風で焼鈍した部品のそれよりも僅かに劣ることが検査によって示されている。最適な性質を得るには、炉の焼鈍しを推奨する。
【0040】
ここに示すように、第1外側部分12が所望の寸法安定に硬化された後、実質的に平坦な濾過剤が、周囲方向に変位された内側押縁14内に着座される。図2Cに示すように、実質的に平坦な濾過材30は、着座されるとき、ポリマー製枠と「実質的に同一面の」関係で位置決めされるのが好ましい。当然ながらこのような好ましさは、例えば濾過材30の僅かな傾きまたは傾斜が機能上または他の理由から求められるときなど、全ての状況で必要なわけではない。それには関係なく、当業者は、濾過材がポリマー製枠12内で斜めに、不適切に着座される場合に起こる組立て上および機能上のいくつかの問題を承知するであろう。
【0041】
本発明の望ましい実施形態では、実質的に平坦な濾過材30は、概ね長方形状または円形状の構成を有して、本質的に、周囲方向に変位された内側押縁14の形状に一致する。濾過材は、周囲方向に変位された内側押縁14よりも、僅かに小さな長さ、幅、厚さに(長方形の場合)、あるいは僅かに小さな直径および厚みに(円形の場合)形成して、濾過材がその外側縁のまわりに比較的均一な空間(隙間など)をともなって位置決めされてそこに着座されるとき、周囲方向に変位された内側押縁の所望の未充填区域(隙間など)が、第2の枠形成ステップのために残るようになるのが好ましい。
【0042】
代替的に、濾過材30を、周囲方向に変位された内側押縁14内で、側面同士でしまり嵌めするように構成することができる。しかしこのような実施形態では隙間が存在しないことから、濾過材は依然好ましくは、厚みをより小さく、かつ/あるいは穴または同様の開口部をドリル開け、パンチ開け、またはその他のやり方でその外側(複数)縁上に、またはそれを通して設けるように設計する必要がある。このような「より小さな厚み」および「開口部」は、本明細書では、上述の隙間と同じ形で機能する上述の「未充填区域」と解釈する。
【0043】
本発明は、実質的に平坦な濾過材の、任意の特定種類の組成または製造に限定されない。
【0044】
実質的に平坦な濾過材30は、いくつかの市販のまたは他の形で知られている濾過材、膜、および他の同様の気体もしくは液体流分離製品および技術のいずれからも選択し、または構築することができる。実質的に平坦な濾過材は単一形式(1枚の膜など)あるいは複合形式(複数層の異なった濾過材を備える「パッド濾過材」など)であることができる。濾過材30は、その透過性(例えば「1次清澄化」、「2次清澄化」、「研磨」などに対する適合性など)と、その化学的性質(例えば疎水性、親水性、疎油性、親油性等)と、その対象用途(例えばタンジェンシャルフロー濾過、気体濾過、透析、電気脱イオン化、深層濾過など)との点で、本発明のいくつかの実施形態で様々であることができる。
【0045】
実質的に平坦な濾過材30の製造に有用な材料には、合成または天然組成が含まれ、無機的、有機的、またはその混合であってよい。典型的な無機的材料には、以下に限定されないが、ガラス、セラミック、金属、陶製合金(すなわちセラミック/金属複合物)、および同様のものが含まれる。有機的材料は、一般的に本来重合体であり、置換または非置換であることができる。典型的なポリマーには、以下に限定されないが、ポリサルホンと、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、およびスチレン−ビニルベンジルハロゲンコポリマーなどのスチレン含有コポリマーを含むポリスチレンと、ポリカーボネートと、セルロースアセテート−ブチレートなどのセルロースポリマーと、セルロースプロピオン酸塩、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース等と、アリールポリアミドおよびアリールポリイミドを含むポリアミドおよびポリイミドと、ポリエーテルと、ポリ(フェニレンオキサイド)およびポリ(キシレンオクサイド)などのポリ(アリーレンオクサイド)と、ポリ(エステルアミド−ジイソシアン酸)と、ポリウレタンと、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アリキルアクリレート)、ポリ(フェニレンテレフタレート)等などのポリエステル(ポリアリレートを含む)と、ポリ硫化物と、ポリ(シロキサン)と、上述のもの以外のアルファ−オレフィン系の不飽和を有するモノマーからのポリマー、すなわちポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(ブテン−1)、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリビニルなど(これには例えばポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)およびポリ(ビニルプロピネート)などのポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ビニルフォーマル)およびポリ(ビニルブチラル)などのポリ(ビニルアルデヒド)、ポリ(ビニルアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルリン酸塩)、およびポリ(ビニル硫酸)がある)と、ポリアリルと、ポリ(ベンゾベンジミダゾール)と、ポリヒドラジドと、ポリオクサジアゾールと、ポリトリアゾールと、ポリ(ベンジミダゾール)と、ポリカルボジイミドと、ポリポスファゼン等と、上述からの反復単位、上述の任意のものを含有する移植片および混合物を含有するブロックインターポリマーを含むインターポリマーとが含まれる。典型的な置換基には、フッ素、塩素、臭素などのハロゲンと、ヒドロキシ基と、低アルキル基と、低アルコキシル基と、単環式アリールと、低アシル基と、同様のものとが含まれる。
【0046】
実質的に平坦な濾過材の特に好ましい実施形態は、パッド様の密度勾配濾過パケットであり、これは、「使い捨て可能な一体式濾過ユニット」という名称の2004年6月17日出願の、関連する同時係属の米国特許出願10/871694に記載されているようなものである。そこで述べているように、この深勾配の濾過パケットは、1対の濾網352同士の間に挿置された複数の隣接する濾過層を備え、各上記濾過層の保持力は、それに先行する層よりも大きい(すなわちより選択的である)。特定の一実施形態では、深勾配濾過パケットは以下のように構成される。
【表1】

【0047】
図2Cで示すように、この発明的な方法論の最終ステップは、ポリマー(またはその前駆物質)を上記周囲方向に変位された内側押縁14の未充填区域に注入することによって、実質的にポリマー製の枠100の第2内側部分18を形成し、そのようにして上記実質的にポリマー製の枠100を完成し、着座された実質的に平坦な濾過材30を定位置に固定することを含む。
【0048】
第2の枠形成ステップで使用するポリマー(またはその前駆物質)は、第1枠形成ステップで使用する熱可塑性材と同一または類似のものでよい。同一でない材料を使用する場合、第2材料の第2材料との適合性を、本発明の目的に照らして考慮するべきである。したがって、第2材料は、注入し、硬化されると、形成された第1外側部分12と良好な結合を形成するべきである。また第2材料は、嵌め込まれた濾過材30を広範な潜在的濾過条件下で固定して保持するのに充分な耐久力のある第2外側部分を形成することが可能でなければならない。
【0049】
第1熱可塑性材と第2熱可塑性材に同一性が必要ないのとほぼ同じように、第2枠形成ステップの形成で使用する方法は、第1枠形成ステップで使用するものと同じである必要はない。言い換えれば、第2枠形成ステップを、同じ上述の方法論から選択することができても、それを同じものにする必要はない。例えば、第1外側部分12を射出成形によって形成し(すなわち「第1枠形成ステップ」)、その後第2内側部分18を押し出しおよび焼鈍しによって形成する(すなわち「第2枠形成ステップ」)ことができる。選択する形成方法論によって左右されるが、完成された枠が、第1と第2枠部分の溶融の結果として一体構造であっても、第1部分と第2部分の界面結合は、完成されたポリマー製枠10の断面で可視または他の形で検出可能のままとなる場合が多い。
【0050】
注入されると、選択されたポリマー材料(またはその前駆物質)は、周囲方向に変位された内側押縁14の「未充填区域」内に流れ、それを充填して、周囲方向に変位された内側押縁と、濾過材30の外側縁のまたはそれに近接したものと両方の、まだ露出しているまたは他の形で「開いて」いる表面と接触し、それらを覆う。熱可塑性材が硬化する(または他の形で固まる)と、収縮または捻れが起こる場合が多いが、寸法安定化された第1外側部分12によって課せられる空間制約、ならびにその比較的小さな質量を考慮すると、それらの程度はより限定される。したがって濾過材30は、比較的応力の小さい、したがって濾過材の構造および機能的完全性を損ないにくい条件下で、完成されたポリマー製枠10内にしっかりと嵌め込まれるようになる。
【0051】
実質的に平坦な濾板10が完成すると、例えば、追加の機能をもたらし、かつ/または濾板を、後続のより大きな濾過デバイスへの追加的組立てに対して修正可能にするなどの、さらなるステップを行うことができる。この点で、「最終」濾板10は目的用途で使用できる状態の「完成品」、あるいは据え付けができる状態の「完成構成要素」のいずれであることもできることが理解されるであろう。他の嵌め込み後のステップには、例えば濾板に入口をドリル開けすることと、分流器および流路を追加することと、バリ、スプルー、および/または他の同様の不必要な成形の残留廃棄物の除去と、疎水性または親水性被覆の表面への塗布と、表面研磨または粗面処理と、高圧蒸気殺菌、蒸気滅菌、または他の消毒用薬品処理と、梱包とが含まれる。
【0052】
本発明を、その特定の実施形態を参照して述べたが、本明細書に明記した本発明の教示の恩典を有する当業者は、本発明に多数の修正形態をもたらすことができる。それらの修正形態は、添付の請求項で明記する本発明の範囲内に包含されると見なすものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明的方法論を実践する代表的様態に従って形成されたポリマー製枠100の第1外側部分12の概略を示す図である。
【図2A】この発明的方法論を実践する代表的様態による、実質的に平坦な濾板10へ段階的に製造されつつある第1外側部分12の側面図(図1の横断軸A−Aによる)である。
【図2B】この発明的方法論を実践する代表的様態による、実質的に平坦な濾板10へ段階的に製造されつつある第1外側部分12の側面図(図1の横断軸A−Aによる)である。
【図2C】この発明的方法論を実践する代表的様態による、実質的に平坦な濾板10へ段階的に製造されつつある第1外側部分12の側面図(図1の横断軸A−Aによる)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に平坦な濾板を製造する方法であって、前記濾板が、実質的に平坦な濾過材が中に固定して着座された実質的に平坦なポリマー製枠を備え、方法が、
(a)ポリマーまたはその前駆物質から前記実質的に平坦なポリマー製枠の第1外側部分を形成するステップであって、前記第1外側部分が、前記実質的に平坦な濾過材を前記熱可塑性材製枠内に実質的に同一平面の関係で保持するのに充分過ぎるほどの深さおよび幅を有する周囲方向に変位された内側押縁を有するステップと、
(b)前記第1外側部分を実質的に寸法安定にするステップと、
(c)前記実質的に平坦な濾過材を、前記周囲方向に変位された内側押縁内に着座させるステップと、
(d)前記実質的にポリマー製の枠の第2内側部分を、前記周囲方向に変位された内側押縁の未充填区域に前記ポリマーまたはその前駆物質を注入することによって形成し、それによって前記枠を実質的に完成し、前記着座された濾過材を定位置に固定するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記第1外側部分が、前記固定して着座される実質的に平坦な濾過材との往復流路を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1外側部分が、前記実質的に平坦な枠の主要部分を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーが、実質的により高い温度から前記熱可塑性ポリマーのガラス転位温度に冷却されると収縮する熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーがポリプロピレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーがポリサルホンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1外側部分が射出成形によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記実質的に平坦な濾過材が、多孔性外殻内に封入された複数層の濾過材を備える深勾配の濾過パケットである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
実質的に平坦な濾板を製造する方法であって、前記濾板が、実質的に平坦な濾過材が中に固定して着座された実質的に平坦なポリマー製枠を備え、方法が、
(a)第1ポリマーまたはその前駆物質から前記実質的に平坦なポリマー製枠の第1外側部分を形成するステップであって、前記第1外側部分が、前記実質的に平坦な濾過材を前記枠内に実質的に同一平面の関係で保持するのに充分過ぎるほどの深さおよび幅を有する周囲方向に変位された内側押縁を有するステップと、
(b)前記第1外側部分を実質的に寸法安定にするステップと、
(c)前記実質的に平坦な濾過材を、前記周囲方向に変位された内側押縁内に着座させるステップと、
(d)前記枠の第2内側部分を、前記周囲方向に変位された内側押縁の未充填区域に第2ポリマーまたはその前駆物質を注入することによって形成し、それによって前記枠を実質的に完成し、前記着座された濾過材を定位置に固定するステップとを含む、方法。
【請求項10】
前記第1外側部分が、前記固定して着座された実質的に平坦な濾過材との往復流路を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1外側部分が、前記実質的に平坦な枠の主要な部分を備える、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2008−503333(P2008−503333A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516579(P2007−516579)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/020591
【国際公開番号】WO2006/009638
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】