説明

火格子式廃棄物焼却炉及びその燃焼制御方法

火格子式廃棄物焼却炉の燃焼制御方法であって、燃焼用一次空気Aを火格子下から燃焼室内に吹き込み、高温ガスBを前記燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込み、焼却炉から排出された排出ガスを少なくとも一部に含む循環排ガスCを前記高温ガスBの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込み、空気、循環排ガス、又は、空気と循環排ガスとの混合ガスのいずれかからなる攪拌用ガスDを二次燃焼領域に吹き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、一般廃棄物、産業廃棄物、下水汚泥等の廃棄物を焼却する火格子式廃棄物焼却炉の燃焼制御方法、及びこのような燃焼制御方法を実施するのに好適な火格子式廃棄物焼却に関する。
【背景技術】
都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する焼却炉として、火格子式廃棄物焼却炉が広く用いられている。その代表的なものの概略図を図3に示す。ホッパ31に投入された廃棄物32は、シュートを通して乾燥火格子33に送られ、下からの空気と炉内の輻射熱により乾燥されると共に、昇温されて着火する。着火して燃焼を開始した廃棄物32は、燃焼火格子34に送られ、下から送られる燃焼空気により熱分解されてガス化され、一部は燃焼する。そして、更に後燃焼火格子35で、廃棄物中の未燃分が完全に燃焼する。そして、燃焼後に残った灰は、主灰シュート36より外部に取り出される。
燃焼は燃焼室37内で行われ、二次燃焼室41で二次的な燃焼が行われて可燃性ガスが完全に燃焼する。二次燃焼室41からの排ガスは、廃熱ボイラ43に送られ、熱交換された後に減温塔、バグフィルタ等を経由して外部に放出される。
このような火格子式廃棄物焼却炉において、廃棄物を焼却処理する場合、廃棄物が性状の異なる数多くの物質からなるため、炉内の燃焼状態を一定に維持することは困難であり、燃焼室37内の温度や燃焼ガスの濃度の分布が時間的、空間的に不均一となることは避けられない。
このような課題を解決する方法として、特開平11−211044号公報(特許文献1)には、蓄熱式バーナで発生させた高温気体を、焼却炉の主燃焼室又は二次燃焼室に吹き込む方法が開示されている。この技術は、焼却炉において発生する排ガス中の、CO及び芳香族系炭化水素等を多く含む未燃ガスや有害物質等を低減させることを目的としたものである。
また、特開平11−270829号公報(特許文献2)には、ごみ焼却炉において発生した燃焼排ガス中のCO濃度が、予め設定されているダイオキシン低減のための値となるように、燃焼排ガス中のCO値、O値および焼却炉の炉内温度に基づいて、ごみ焼却炉の火格子速度、燃焼用空気量および炉温冷却用空気量を制御する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−211044号公報
【特許文献2】特開平11−270829号公報
従来、廃棄物焼却炉において、廃棄物の燃焼に必要な理論空気量で実際に炉内に供給する空気量を除した比(空気比)は1.7〜2.0程度である。これは、一般的な燃料の燃焼に必要な空気比である1.05〜1.2に比べて大きくなっている。この理由は、廃棄物には他の液体燃料や気体燃料に比べて不燃分が多く、かつ不均質なため、空気の利用効率が低く、燃焼を行うには多量の空気が必要となるためである。しかし、空気比が多くなるに従って排ガス量も多くなり、これに伴ってより大きな排ガス処理設備が必要となる。
空気比を小さくすれば排ガス量は低減し、排ガス処理設備がコンパクトになり、その結果、廃棄物焼却施設全体が小型化して設備費を低減することができる。これに加えて、排ガス処理のための薬剤量も低減できるので、運転費を低減できる。さらに、熱回収できずに大気に捨てられる熱量を低減できるので、廃熱ボイラの熱回収率が向上し、これに伴ってごみ発電の効率を上げることができる。
このように、低空気比燃焼に対する利点は大きいが、低空気比燃焼では燃焼が不安定になるという問題がある。すなわち、低空気比で燃焼させると、燃焼が不安定となり、COの発生が増加したり、火炎温度が局所的に上昇してNOxが急増したり、煤が大量に発生したり、クリンカが発生したり、局所的な高温により炉の耐火物の寿命が短くなるという問題点があった。上記特許文献1及び特許文献2に記載されている燃焼技術では、このような問題点を解決することが不十分であった。
また、炉温冷却用空気として、空気のみ、或いは、空気に焼却炉からの排ガスを混合して用いることは、新たな空気を炉内に導入することとなるので排ガス総量の低減ができないという問題もある。
また、予熱空気や酸素富化空気を適用して、燃焼の安定性の改善や排ガス中の未燃分を低減する方法が知られているが、ランニングコストや設備コストの増大を引き起こすと共に、NOxが増加する傾向にあり実用上問題がある。
一方、旋回燃焼に代表されるように、炉内への空気の吹き込み形態を工夫することにより、排ガス中の未燃分の濃度を低減する方法が一般に適用されているが、燃焼性を改善するためにはより多くの空気を必要とし、より大きな送風機や排ガス処理設備が必要であり、ランニングコストと設備コストが増加すると共に排ガスが持ち去る熱量(顕熱)が増加するため、発電効率が低くなるという問題がある。
また、二次燃焼領域のように燃料濃度が低い領域に排ガスを過大に吹き込むと反応性の低下に伴って燃焼が不安定になり、失火や排ガス中未燃分の増加を引き起こす場合がある。特に、ごみ質の変動が大きい場合にはこのような現象が増幅して現れるため、公害対策上問題がある。
以上に述べたように、従来の燃焼改善手段単独では、低公害化(NOx、CO等の低減)と低コスト化との同時達成は困難である。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、廃棄物焼却炉において低空気比燃焼を行った場合においてもCOやNOx等の有害ガスの発生量が低減でき、さらに、煙突から排出される排ガス総量を大幅に低減できる廃棄物焼却炉の燃焼制御方法及び廃棄物焼却炉を提供することを目的とする。
【発明の開示】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
[1].火格子式廃棄物焼却炉の燃焼制御方法であって、燃焼用一次空気Aを火格子下から燃焼室内に吹き込み、高温ガスBを前記燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込み、焼却炉から排出された排出ガスを少なくとも一部に含む循環排ガスCを前記高温ガスBの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込み、空気、循環排ガス、又は、空気と循環排ガスとの混合ガスのいずれかからなる攪拌用ガスDを二次燃焼領域に吹き込むことを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[2].上記[1]において、循環排ガスCが焼却炉から排出された排ガスのみからなることを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[3].上記[1]又は[2]において、燃焼用一次空気Aにより供給される単位時間当りの酸素量Q1と、高温ガスBにより供給される単位時間当りの酸素量Q2と、循環排ガスCにより供給される単位時間当りの酸素量Q3と、攪拌用ガスDにより供給される単位時間当りの酸素量Q4とが、廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量を1とした場合に、下式(1)及び(2)を満足することを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
Q1:Q2:Q3:Q4=0.75〜1.20:0.05〜0.20:0.02〜0.20:0.02〜0.25 (1)
1.2≦Q1+Q2+Q3+Q4≦1.5 (2)
[4].上記[1]又は[2]において、燃焼用一次空気Aにより供給される単位時間当りの酸素量Q1と、高温ガスBにより供給される単位時間当りの酸素量Q2と、循環排ガスCにより供給される単位時間当りの酸素量Q3と、攪拌用ガスDにより供給される単位時間当りの酸素量Q4とが、廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量を1とした場合に、下式(3)及び(4)を満足することを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
Q1:Q2:Q3:Q4=0.75〜1.1:0.07〜0.15:0.02〜0.15:0.02〜0.25 (3)
1.25≦Q1+Q2+Q3+Q4≦1.35 (4)
[5].上記[1]乃至[4]のいずれかにおいて、Q1とQ2とを所定の値に維持しつつ、Q3及び/又はQ4を焼却炉内の状況を監視する因子に基づいて調節することを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[6].上記[5]において、焼却炉内の状況を監視する因子が、燃焼室内で発生した可燃性ガスの二次燃焼を行う二次燃焼領域出口近傍における、ガス温度、ガス中O濃度、ガス中CO濃度、ガス中NO濃度のいずれか一つ以上であることを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[7].上記[1]乃至[6]のいずれかにおいて、高温ガスBが、燃焼室高さの50%を超えない高さ位置から燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれることを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[8].上記[1]乃至[7]のいずれかにおいて、高温ガスBが、火格子上の廃棄物層表面から鉛直上方に0.2〜1.5mの範囲内の高さ位置から、燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれることを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[9].上記[1]乃至[7]のいずれかにおいて、高温ガスBが、火格子面から鉛直上方に0.2〜2.5mの範囲内の高さ位置から、燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれることを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[10].上記[1]乃至[9]のいずれかにおいて、高温ガスBが、少なくとも10m/s 以上の吹き込み速度で燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれることを特徴とする燃焼制御方法である。
[11].上記[1]乃至[10]のいずれかにおいて、二次燃焼領域のガス温度が800〜1050℃の範囲となるように、循環排ガスC及び/又は攪拌用ガスDの流量を調整することを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[12].上記[1]乃至[11]のいずれかにおいて、二次燃焼領域内に旋回流が形成されるように、攪拌用ガスDを吹き込むことを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[13].上記[1]乃至[12]のいずれかにおいて、燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度が、後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度より高くなるように、高温ガスBの流量を調整することを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[14].上記[1]乃至[13]のいずれかにおいて、主燃焼領域及び後燃焼領域の温度がそれぞれ800〜1050℃の範囲内となるように、高温ガスB及び/又は循環排ガスCの流量を調整することを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[15].上記[1]乃至[14]のいずれかにおいて、主燃焼領域及び後燃焼領域の温度がそれぞれ800〜1050℃の範囲内となるように、高温ガスBの酸素濃度及び/又はガス温度を調整することを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法である。
[16].燃焼用一次空気Aを火格子下から燃焼室内に吹き込む燃焼用一次空気吹き込み手段と、高温ガスBを前記燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込む高温ガス吹き込み手段と、焼却炉から排出された排ガスを少なくとも一部に含む循環排ガスCを前記高温ガスBの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込む循環排ガス吹き込み手段と、空気、循環排ガス、又は、空気と循環排ガスとの混合ガスの内のいずれかからなる攪拌用ガスDを二次燃焼領域に吹き込む攪拌用ガス吹き込み手段とを備えることを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉である。
[17].上記[16]において、高温ガスBの吹き込みノズルが、燃焼室高さの50%を超えない高さ位置に設けられていることを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉である。
[18].上記[16]又は[17]のいずれかにおいて、高温ガスBの吹き込みノズルが、火格子上の廃棄物層表面から鉛直上方に0.2〜1.5mの範囲内の高さ位置に設けられていることを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉である。
[19].上記[16]又は[17]のいずれかにおいて、高温ガスBの吹き込みノズルが、火格子面から鉛直上方に0.2〜2.5mの範囲内の高さ位置に設けられていることを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉である。
[20].上記[16]乃至[19]のいずれかにおいて、二次燃焼領域に旋回流が形成されるように、攪拌用ガスDの吹き込みノズルが設けられていることを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉である。
[21].上記[16]乃至[20]のいずれかにおいて、燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度が、後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度より高くなるように、高温ガスBの流量を調整可能な手段を備えたことを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉である。
[22].上記[16]乃至[21]のいずれかにおいて、高温ガスB及び/又は循環排ガスCの流量を調整可能な手段を備えたことを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉である。
[23].上記[16]乃至[22]のいずれかにおいて、高温ガスBの酸素濃度及び/又はガス温度を調整可能な手段を備えたことを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る廃棄物焼却炉の一実施形態を示す概略側断面図である。
図2は、本発明に係る排ガスに混合される空気量調節手段の概略構成の一例を示す図である。
図3は、従来技術に係る廃棄物焼却炉の一例を示す概略側断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明に係る廃棄物焼却炉30の一実施形態を示す概略側断面図である。
図1に示す廃棄物焼却炉30は、燃焼室3と、この燃焼室3の上流側(図1の左側)に配置され廃棄物2を燃焼室3内に投入するためのホッパ1と、このホッパ1と反対側の燃焼室3下流側の上方に連設されるボイラ12とを有する火格子式の二回流炉である。
燃焼室3の底部には、廃棄物2を移動させながら燃焼させる火格子(ストーカ)が設けられている。この火格子は、ホッパ1から遠ざかるに従って下がるように傾斜して設けられている。この火格子には2つの段差が形成されており、3つの部分に分かれる。この3つの火格子を、ホッパ1に近い方から、乾燥火格子5、燃焼火格子6、後燃焼火格子7と呼んでいる。乾燥火格子5では主として廃棄物2の乾燥と着火が行われる。燃焼火格子6では主として廃棄物2の熱分解、部分酸化が行われ、可燃性ガスの燃焼が行われる。燃焼火格子6において廃棄物2の燃焼は実質的に完了する。後燃焼火格子7上では、僅かに残った廃棄物2中の未燃分を完全に燃焼させる。完全に燃焼した後の燃焼灰は、主灰シュート15より排出される。
上記乾燥火格子5、燃焼火格子6及び後燃焼火格子7の下部には、それぞれ風箱8,9,10が設けられている。ブロワ13により供給される燃焼用一次空気は、燃焼用一次空気供給管16を通って前記各風箱8,9,10に供給され、各火格子5,6,7を通って燃焼室3内に供給される。なお、火格子下から供給される燃焼用一次空気は、火格子上の廃棄物2の乾燥及び燃焼に使われるほか、火格子の冷却作用、廃棄物の攪拌作用を有する。
ホッパ1と反対側の燃焼室3出口には、廃熱ボイラ12の二次燃焼領域17が連設されている。そして、燃焼室3内には、燃焼室3の出口近傍に、廃棄物から発生した可燃性ガスと燃焼ガスを分流するための障壁(中間天井)11が設けられ、可燃性ガスと燃焼ガスの流れを主煙道20と副煙道21に分流している。前記主煙道20と副煙道21に分流された可燃性ガスと燃焼ガスは、廃熱ボイラ12に導かれ、そこで混合・攪拌され、廃熱ボイラ12の一部である二次燃焼領域17内で二次燃焼し、この二次燃焼により発生した燃焼排ガスは廃熱ボイラ12で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラ12から排出された燃焼排ガスは、ダクト14を通って第一の除塵装置18に送られ、そこで前記燃焼排ガス中に含まれる飛灰の回収が行われる。前記第一の除塵装置18で除塵された後の燃焼排ガスは、消石灰による酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類の吸着が行われ、さらに第二の除塵装置19に送られ、活性炭などが回収される。前記第二の除塵装置19で除塵され、無害化された後の燃焼排ガスは、誘引ファン22により誘引され、煙突23から大気中に放出される。なお、前記除塵装置18,19としては、例えば、バグフィルタ方式、サイクロン方式、電気集塵方式等の除塵装置を用いることができる。
このような装置構成において、本発明は、燃焼用一次空気を火格子下から燃焼室内に吹き込み、高温ガスを前記燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込み、焼却炉から排出された排ガスを少なくとも一部に含む循環排ガスを前記高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込むと共に、空気、循環排ガス、又は、空気と循環排ガスとの混合ガスの内のいずれかからなる攪拌用ガスを二次燃焼領域に吹き込むことにより、廃棄物焼却炉の燃焼制御を行うものである。なお、図1においては、中間天井11を有し、火格子が傾斜して設けられている炉を図示しているが、本発明はこのような中間天井を有しない炉や火格子が水平に設けられている炉においても適用できることは言うまでもない。
[燃焼用一次空気の吹き込み]
ここで、前記燃焼用一次空気は、上述したように、ブロワ13から燃焼用一次空気供給管16を通って各乾燥火格子5、燃焼火格子6及び後燃焼火格子7のそれぞれの下部に設けられた風箱8,9,10に供給された後、各火格子5,6,7を通って燃焼室3内に供給される。燃焼室3内に供給される燃焼用一次空気の流量は、前記燃焼用一次空気供給管16に設けられた流量調節弁24により調整され、さらに、各風箱に供給される流量は、各風箱に分岐して設けられたそれぞれの供給管16a,16b,16c,16dに備える流量調節弁24a,24b,24c,24dにより調節される。また、前記風箱及び燃焼用一次空気を供給するための燃焼用一次空気供給管等の構成は図示したものに限定されず、焼却炉の規模、形状、用途等により適宜選択され得る。
[高温ガスの吹き込み]
前記高温ガスは、燃焼室3内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれる。これは、高温ガスは火炎が存在し、可燃性ガスが多く存在する領域に吹き込むことが燃焼を安定させる上で好ましいためである。なお、火格子式の廃棄物焼却炉において、可燃性ガスが多く存在する領域は、燃焼開始領域から主燃焼領域までである。
廃棄物が焼却される場合、まず水分の蒸発が起こり、次いで熱分解と部分酸化反応が起こり、可燃性ガスが生成し始める。ここで燃焼開始領域とは、廃棄物の燃焼が始まり、廃棄物の熱分解、部分酸化により可燃性ガスが生成し始める領域である。また、主燃焼領域とは、廃棄物の熱分解、部分酸化と燃焼が行われ、可燃性ガスが発生し火炎を伴って燃焼している領域であり、火炎を伴う燃焼が完了する点(燃え切り点)までの領域である。燃え切り点より後の領域では、廃棄物中の固形未燃分(チャー)が燃焼するチャー燃焼領域(熾燃焼領域)となる。火格子式焼却炉では燃焼開始領域は乾燥火格子の上方空間であり、主燃焼領域は燃焼火格子の上方空間に相当する。
高温ガスを燃焼室3内の燃焼開始領域から主燃焼領域に吹き込むことにより廃棄物層直上によどみ領域または旋回領域を形成して、廃棄物から発生した可燃性ガスの混合、攪拌が促進されるので安定した燃焼が行われる。その結果、CO,NOx、ダイオキシン類等の有害物質の発生を抑制すると共に煤の生成を抑制することができる。このため、焼却炉全体に吹き込む空気の量を減少させ、低空気比燃焼を行うことができる。
また、廃棄物層の直上に高温ガスが吹き込まれるので、高温ガスからの熱輻射と顕熱によって加熱され、廃棄物の熱分解が促進される。
ここで、前記ガス吹き込み口25から吹き込まれる高温ガスの温度は、300〜600℃の範囲とすることが好ましい。300℃未満のガスを吹き込むと、炉内の温度が低下し、燃焼が不安定となり、COが増加する。600℃を超えるガスを吹き込むと炉内におけるクリンカの生成が助長される他、高温化に見合った経済的効果がない。高温ガスの温度を300〜600℃の範囲とすることにより、炉内の廃棄物層直上付近に流体力学的に安定なよどみ領域が形成され安定した燃焼が行われる。また、高温ガスの含有する酸素濃度が5〜18%程度のものを用いることが好ましい。これにより、上述の効果がより効果的に発揮され、低NOx化、低CO化がより促進される。
前記のガス温度及び酸素濃度となるような高温ガスとしては、返送排ガス又は返送排ガスと空気の混合ガスを用いることが好適である。返送排ガスは、廃棄物焼却炉より排出される排ガスの一部であり、従来はこれを燃焼室内あるいは二次燃焼領域に戻すことによりその顕熱を利用したり、燃焼室内のガス混合を改善して燃焼状態の改善を図ることに用いられているものである。
前記返送排ガスが所定の条件を満たしている場合は、返送排ガスをそのまま炉内に吹き込めばよいが、返送排ガスの温度が低く、かつ、酸素濃度が低いことがある。この場合、バーナ燃焼ガス等の高温燃焼ガス、或いは、高温空気製造装置や熱風炉による高温の空気を返送排ガスに混合して、温度と酸素濃度が所定の条件を満たすような高温ガスとして炉内に吹き込むか、又は、返送排ガスを加熱して炉内に吹き込むようにしてもよい。
また、二次燃焼領域からの排ガスを返送して使用する場合、その返送排ガスが、温度が十分高く、かつ酸素濃度が高いものであれば、高温空気製造装置等を設けることなく、その返送排ガスを高温空気の代わりに使って、空気と混合して吹き込んでもよい。さらに、二次燃焼領域からの返送排ガスの温度と酸素濃度が所定の条件を満たすようなものであれば、その返送排ガスを高温ガスとして直接炉内に吹き込んでもよい。
前記高温空気製造装置の例としては、蓄熱バーナや、レキュペレータ、燃焼バーナからの燃焼ガスに空気や酸素を混合するもの、酸素富化バーナ等が使用できる。
ここで、返送排ガスと、高温燃焼ガス或いは高温空気とをガス混合装置により混合して高温ガスを調製する場合に、前記ガス混合装置をエゼクタ装置29とすることもできる。この場合、前記高温燃焼ガス或いは高温空気をエゼクタ装置29に導いて、これを駆動流として、前記返送排ガスを吸引しながら混合して、燃焼室3内に吹き込むようにする。このようにすれば、返送排ガスを導出するためのブロワが必要でないので、装置構成が簡単になると共に、返送排ガス中に含まれるダスト等によるトラブルを軽減することが可能となる。
図1においては、高温ガス吹き込み口25は燃焼室3内の燃焼開始領域から主燃焼領域に相当する乾燥火格子5の上方及び燃焼火格子6の上方に設置されている。ここで、廃棄物の熱分解反応は温度が200℃程度で起こり、温度が400℃程度となった段階でほぼ完了する。高温ガスを可燃性ガスが生成している領域に少なくとも一対のガス吹き出し口を対向させ、かつ、ガスの吹き込み方向が水平又は下向きとなるように吹込むことにより、炉内の廃棄物層直上付近に流体力学的に安定なよどみ領域を形成させ安定した燃焼が行われる。図1に示す例では、乾燥火格子5の後部及び燃焼火格子6の前部に相当するので、これらの位置にガス吹き込み口25を設けて高温ガスを吹き込んでいる。廃棄物2の組成、性状によっては、もっと高い温度で熱分解反応が完了するものがあり、この場合は、図1に示す位置より後側(図の右側)にも、ガス吹き込み口25を設けることが好ましい。なお、ガス吹き込み口25の設置数或いは吹き出し口の形状は焼却炉の規模、形状、用途等により適宜選択され得る。
また、ガス吹き込み口25は、図1に示すように、燃焼開始領域から主燃焼領域の各領域における燃焼室高さの50%を超えない高さ位置に、より好ましくは燃焼室高さの40%を超えない高さ位置、具体的には火格子上の廃棄物層表面から鉛直上方に0.2〜1.5mの範囲内の高さ位置に、又は火格子面から鉛直上方に0.2m〜2.5mの範囲内の高さ位置に少なくとも一対のガス吹き出し口を対向させて設けることが好ましい。これにより、燃焼室内の廃棄物層直上において、ガス吹き込み口25から吹き込まれた高温ガスによって保炎効果が現われるため、炉内の廃棄物層直上に高温領域(火炎)を定在させることができる。よって、廃棄物の熱分解が効率的に行われると共に、高温領域が天井から遠くなるので、天井の焼損程度を軽減することができる。なお、前記燃焼室高さとは、火格子の各部において、主燃焼が行われる空間の高さであって、火格子から燃焼室天井までの高さをいう。
図1においては、燃焼室3の両側面に対向して少なくとも一対のガス吹き込み口25を設け、ここから高温ガスを吹き込んでいる。ここで、ガス吹き込み口25は上述したように、ガスの吹き込み方向が水平、又は下向きとなるように設けることが好ましい。
廃棄物から発生する可燃性ガスは、通常上向きに流れる。よって、高温ガスの吹き込み方向が上向きであると、可燃性ガスと高温ガスの流れが同じ方向の速度成分を持つことになり、ガスの流れをせき止める効果が小さくなり、高温ガス吹き込みの効果が低減する。これに対し、高温ガスの吹き込み方向が水平あるいは下向きであると、上昇する可燃性ガスと高温ガスとのよどみ領域が形成され、ここでのガスの実質滞留時間が増加することにより、可燃性ガスの反応量が増加すると共に火炎が引き延ばされるため、NOxの発生量が低下する。このような作用を促す意味では、ガス吹き出し口は下向けに設けることが好ましいが、あまり角度を付けすぎると、燃焼室3の幅方向全体に高温ガスが届かなくなると共に、炉壁近傍に局所高温領域が形成され、クリンカの形成や炉壁の焼損を助長する。よって角度は下向き10〜20°の範囲とすることが特に好ましい。なお、一般に焼却炉の燃焼におけるダイオキシン類などの有害物質を低減する要因は3Tといわれている。これらは、温度(Temperature)、攪拌(Turbulence)、滞留時間(Time)であるが、特に、高温ガスを高速で吹き込むことにより、高温ガスの噴流が周囲のガスを巻き込むため攪拌(Turbulence)と滞留時間(Time)を向上させることができ、焼却炉内の空間温度をより均一化することができる。
なお、前記高温ガスの燃焼室3内への吹き込みは燃焼室3の片側側面からのみ行うようにしてもよい。さらに、燃焼室3の側面からではなく、中間天井、又は天井から吹き込むようにしてもよい。但し、いずれの場合にも、燃焼室の天井付近でのクリンカ生成や炉材の焼損を防止するための注意が必要である。
また、前記ガス吹き込み口25から吹き込まれる高温ガスは、少なくとも10m/s以上の吹き込み速度で燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込むことが好ましい。10m/s以上の吹き込み速度とするのは、炉内における平均の空塔速度(max1m/s程度)の10倍以上の相対速度を確保するためである。なお、前記高温ガスの吹き込み速度は、例えば、返送排ガスの混合割合を調整することにより行われる。
これにより、炉内の廃棄物層直上付近に安定なよどみ領域を形成させることができ、安定した燃焼が行われ、CO,NOx、ダイオキシン類等の有害物質の発生を抑制すると共に煤の生成を抑制することができる。このため、焼却炉全体に吹き込む空気の量を減少させ、低空気比燃焼を行うことができる。
また、燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度が、後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度より高くなるように、複数設置された吹き込みノズルから吹き込まれる高温ガスの吹き込み流量を調整することが好ましい。ここで、焼却炉の燃焼室内での燃焼を一次燃焼とよび、前記燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスとは、図1において、副煙道21を通過するガスをいい、前記後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスとは、図1において、主煙道20を通過するガスをいう。
燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度が後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度より高くなるような燃焼状態とすることにより、燃焼開始領域又は主燃焼領域での廃棄物の熱分解が促進され、二次燃焼領域への可燃性ガスの供給が促進される。また、酸素含有量の多い後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度を下げることで一次燃焼領域又は二次燃焼領域での急激な燃焼を抑制し低NOx化を図ることが可能となる。
ここで、前記燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度、及び後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度は、800〜1050℃の範囲内となるように調整することが好ましい。前記燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度が1050℃を超えると炉内におけるクリンカの生成が助長される。また、前記後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度が800℃未満となると二次燃焼領域の温度が低下し燃焼が不十分となり、COが増加する。
前記一次燃焼排ガスガス温度の調節は、複数設置された吹き込みノズルから吹き込まれる高温ガス及び/又は循環排ガスの吹き込み流量を調整することにより行われる。燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度を上げるときは、この領域に供給される高温ガスの流量を増加、循環排ガスの流量を減少させることにより調整する。また、一次燃焼排ガスの温度を下げるときは、この領域に供給される高温ガスの流量を減少、循環排ガスの流量を増加させることにより調整する。
前記後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度調整も同様に行われる。
また、一次燃焼排ガス温度の調節は、複数設置された吹き込みノズルから吹き込まれる高温ガスの酸素濃度及び/又はガス温度を調整することにより行うこともできる。燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度を上げるときは、この領域に供給される高温ガスの酸素濃度を増加、ガス温度を上昇させることにより調整する。前記一次燃焼排ガスの温度を下げるときは、この領域に供給される高温ガスの酸素濃度を減少、ガス温度を下降させることにより調整する。
前記後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度調整も同様に行われる。
ここで、前記複数設置された吹き込みノズルから吹き込まれる高温ガスの酸素濃度の調整は、5〜18%の範囲で行うことが好ましい。一次燃焼領域又は二次燃焼領域における燃焼の自己維持及び温度調節の制御性を確保するためである。
また、前記複数設置された吹き込みノズルから吹き込まれる高温ガスの温度は、300〜600℃の範囲とすることが好ましい。300℃未満のガスを吹き込むと、炉内の温度が低下し、燃焼が不安定となり、COが増加する。600℃を超えるガスを吹き込むと炉内におけるクリンカの生成が助長される他、高温化に見合った経済的効果がない。高温ガスの温度を300〜600℃の範囲とすることにより、炉内の廃棄物層直上付近に流体力学的に安定なよどみ領域が形成され安定した燃焼が行われる。
[焼却炉から排出された排出ガスを少なくとも一部に含む循環排ガスの吹き込み]
前記焼却炉から排出された排出ガス又は空気を少なくとも一部に含む循環排ガスは、燃焼室3内の前記高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込まれる。なお、前記ガス流れ方向下流側とは、炉内のガス流れ方向に対して下流側を意味する。また、前記ガスとは、主に燃焼室内で発生する可燃性ガス及び燃焼排ガスを意味する。
ここで、前記焼却炉から排出された排出ガスを少なくとも一部に含む循環排ガスとしては、図1に示すように、例えば、焼却炉30から排出され第一の除塵装置18を通過した後の排ガスの一部を抜き出したガス(ガス温度:150〜200℃程度、酸素濃度:4〜8%程度)、或いは、第二の除塵装置19を通過した後の排ガスの一部を抜き出したガス(ガス温度:150〜190℃程度、酸素濃度:4〜8%程度)を用いることができる。また、前記循環排ガスは、焼却炉30から排出された排出ガスをそのまま用いても良く、空気を混合したものであっても良い。
前記排出ガスに空気を混合する場合、混合する空気を駆動流とするエゼクタを用いて排出ガスを吸引しながら混合して、燃焼室3内の後燃焼領域に吹き込むようにしてもよい。このようにすれば、排ガスを抜き出すためのブロワが必要でないので、装置構成が簡単になると共に、排ガス中に含まれる腐食性ガス等によるトラブルを軽減することが可能となる。
前記循環排ガスを前記高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込むことにより、燃焼室3内の高温ガスの吹き込みによって安定化された燃焼領域の上方又はガス流れ方向下流側の火炎温度を低下させ、広範囲に及ぶ高温領域の発生を防止して、NOxの発生をより効果的に抑制する。さらに、低酸素濃度(4〜8%程度)の循環排ガスを吹き込むことにより、前記高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側領域を還元雰囲気に近づけ、NOxの発生を抑制する。
ここでは、高温ガスの吹込みによって形成されたガスのよどみ領域の上方又はガス流れ方向下流側領域に前記循環排ガスを吹込むことで、よどみ領域の上方又はガス流れ方向下流側における局所高温領域の発生を抑制、つまり温度分布を平均化し、さらに、当該領域での攪拌を促進させることで酸素濃度分布の平均化を図ることで、さらに優れた低NOx化を達成することが可能となる。
また、前記高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側領域に循環排ガスを吹き込むための循環排ガス吹き込み口27は、高温ガス吹き込み口25の上方又はガス流れ方向下流側(図1の場合直上)に、燃焼室高さの10%程度の距離を離して設置することが好ましい。安定したよどみ領域の形成及び局所高温領域の発生の抑制を効果的に行うことにより、NOxの発生をより顕著に抑制するためである。
但し、循環排ガス吹き込み口27と高温ガス吹き込み口25とを1枚の隔壁で分離した一体型の吹き込み口とすることもできる。この場合、前記の場合と比較してNOxの発生抑制効果はわずかに劣るものの、施工費は一体型の吹き込み口の方が低減でき、また、スペースの確保の面でも有利である。
なお、前記循環排ガス吹き込み口27は、高温ガスの吹込みによって形成されたガスのよどみ領域の上方又はガス流れ方向下流側領域のガス温度分布及び酸素濃度分布を平均化するのが目的であるため、少なくとも一対を対向させ或いはガスの吹き込み方向が水平又は下向きとなるように設ける必要はない。
[攪拌用ガスの吹き込み]
空気、循環排ガス、又は、空気と循環排ガスとの混合ガスのいずれかからなる攪拌用ガスが二次燃焼領域に吹き込まれる。
ここで、前記攪拌用ガスの吹き込み口31は、二次燃焼領域17内に旋回流が生じる方向にガスを吹き込めるように1又は複数設置することが好ましい。ガスを二次燃焼領域17内に旋回吹き込みすることにより、二次燃焼領域17内のガス温度及び酸素濃度分布を平均化でき、局所高温領域の発生を抑制し、さらなる低NOx化を図ることが可能となる。さらに、可燃成分と酸素との混合が促進されるため燃焼の安定性が向上し、完全燃焼が達成できるため低CO化を図ることも可能となる。
前記攪拌用ガスは、図1に示すように、ブロワ56により供給される燃焼用二次空気のみ、第一の除塵装置18を通過した後の排ガスの一部、或いは、第二の除塵装置19を通過した後の排ガスの一部を抜き出した循環排ガスのみ、又は、前記燃焼用二次空気と循環排ガスを混合したガスのいずれかを用いることができる。
ここで、前記二次燃焼領域17内のガス温度は、800〜1050℃の範囲となるように、前記循環排ガス及び/又は攪拌用ガスの流量を調整することが好ましい。二次燃焼領域17内のガス温度が800℃未満となると燃焼が不十分となり、COが増加する。また、二次燃焼領域17内のガス温度が1050℃を超えると二次燃焼領域17内におけるクリンカの生成が助長され、さらに、NOxが増加する。
前記循環排ガスの流量を低減することにより二次燃焼領域17内のガス温度を上昇させることができ、前記攪拌用ガスの流量を増やすことにより二次燃焼領域17内のガス温度を低下させることができる。
また、前記火格子下から燃焼室3内に吹き込まれる燃焼用一次空気により供給される単位時間当りの酸素量Q1と、前記燃焼室3内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれる高温ガスにより供給される単位時間当りの酸素量Q2と、前記高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込まれる循環排ガスにより供給される単位時間当りの酸素量Q3と、前記二次燃焼領域に吹き込まれる攪拌用ガスにより供給される単位時間当りの酸素量Q4とは、廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量を1とした場合に、下式(1)及び(2)、より好ましくは下式(3)及び(4)を満足するように吹き込むことが好ましい。
Q1:Q2:Q3:Q4=0.75〜1.20:0.05〜0.20:0.02〜0.20:0.02〜0.25 (1)
1.2≦Q1+Q2+Q3+Q4≦1.5 (2)
Q1:Q2:Q3:Q4=0.75〜1.1:0.07〜0.15:0.02〜0.15:0.02〜0.25 (3)
1.25≦Q1+Q2+Q3+Q4≦1.35 (4)
ここで、前記廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量は、燃焼室内に投入される廃棄物の性状及び成分等から決定される廃棄物の単位質量当りの燃焼に必要な酸素量(Nm/kg)と、焼却炉における廃棄物の焼却速度(kg/hr)との積(Nm/hr)により決定される。また、前記Q1は、火格子5,6,7から燃焼室3内に供給される燃焼用一次空気により供給される単位時間当りの酸素量であり、前記燃焼用一次空気の流量を増減させることにより調整する。また、Q2は、燃焼室3内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれる高温ガスの流量を増減させることにより調整される。また、Q3は、燃焼室3内の前記高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込まれる循環排ガスの流量を増減させることにより調整される。また、Q4は、二次燃焼領域に吹き込まれる攪拌用ガスの流量を増減させることにより調整される。
なお、以下において、Q1+Q2+Q3+Q4をλと記載する。
前記Q1,Q2,Q3,Q4を上式の範囲とすることにより、廃棄物焼却炉において低酸素比燃焼(1.2≦λ≦1.5)(すなわち、低空気比燃焼に相当する)を行った場合においてもCOやNOx等の有害ガスの発生量が低減でき、焼却炉から排出される排ガス総量を大幅に低減できる。
廃棄物の燃え残りや有害物質の発生を抑制して安定した低空気比燃焼を達成させる配分比としては、Q1:Q2:Q3:Q4=0.98:0.10:0.12:0.10、λ=1.30を基準とし、炉内に投入される廃棄物の組成や性状等に基づきλを1.2〜1.5の範囲でQ1,Q2,Q3,Q4を上記の範囲内で調整する。
Q1,Q2,Q3,Q4,λの具体例を以下に記載する。
Q1:Q2:Q3:Q4=0.98:0.10:0.12:0.10、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.98:0.12:0.12:0.08、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.98:0.14:0.12:0.06、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.98:0.10:0.15:0.12、λ=1.35
Q1:Q2:Q3:Q4=0.98:0.10:0.13:0.14、λ=1.35
Q1:Q2:Q3:Q4=0.98:0.10:0.12:0.15、λ=1.35
Q1:Q2:Q3:Q4=1.05:0.10:0.09:0.06、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=1.05:0.10:0.08:0.07、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=1.05:0.12:0.10:0.08、λ=1.35
Q1:Q2:Q3:Q4=1.05:0.12:0.12:0.06、λ=1.35
Q1:Q2:Q3:Q4=1.05:0.14:0.13:0.08、λ=1.40
Q1:Q2:Q3:Q4=1.05:0.14:0.15:0.06、λ=1.40
Q1:Q2:Q3:Q4=1.10:0.05:0.10:0.05、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.90:0.10:0.12:0.18、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.90:0.10:0.15:0.15、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.90:0.12:0.12:0.16、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.90:0.15:0.12:0.13、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.90:0.12:0.03:0.25、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.90:0.15:0.15:0.10、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.75:0.15:0.15:0.25、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.78:0.12:0.15:0.25、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.78:0.15:0.12:0.25、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.78:0.15:0.15:0.22、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.80:0.10:0.15:0.25、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.80:0.12:0.13:0.25、λ=1.30
Q1:Q2:Q3:Q4=0.80:0.15:0.15:0.20、λ=1.30
以下、Q1,Q2,Q3,Q4の調整基準を説明する。
[Q1の調整基準]
通常の都市ごみ等の廃棄物を乾燥させ燃焼させるにはQ1=0.9を基準とし、灰分の少ない廃棄物や水分の少ない廃棄物、例えばプラスチック等を燃焼する際には、Q1を0.75〜0.9程度に減らし、その代わりにQ2を増加させる。
[Q2の調整基準]
通常の都市ごみ等の廃棄物を燃焼させるにはQ2=0.1を基準とし、灰分や水分が少なく可燃分が大部分である廃棄物、例えばプラスチック等、或いは、揮発分の大きい廃棄物を燃焼させる場合には、Q2を増加させる。Q2が少ないと、上述の高温ガス吹き込みの効果が十分に得られない。なお、上記範囲を超えてQ2を増加させると、低空気比燃焼が達成できず、高温ガスを発生させるための燃料代が嵩むと共に、燃焼室内の温度が過大となり、内壁にクリンカが生成したり、NOxが増加する。
[Q3,Q4の調整基準]
まず、廃棄物焼却炉の標準操業基準として、上記基準に基づき、廃棄物の組成や性状等を考虞してQ1及びQ2を決定し、次いでQ3及びQ4の標準値を設定する。
ここで、Q3の値を調整することで燃焼室内での燃焼状態を調整し、Q4の値を調整することで二次燃焼領域内での燃焼状態を調整する。Q3は、Q3=0.12を基準とし、0.02〜0.2の範囲で調整する。Q4は、Q4=0.18を基準とし、0.02〜0.25の範囲で調整する。Q3+Q4は、Q3+Q4=0.3を基準とし、0.15〜0.4の範囲で調整するものとする。
廃棄物焼却炉の実際の操業では標準操業基準で操業していても、焼却炉内の燃焼状況が変化し排出される排ガス中の有害物質量が変動することがある。そこで、前記決定したQ1及びQ2の値は維持したまま、廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子に基づいてQ3、Q4、又は、Q3とQ4とを合計した値の内のいずれかを調節する。このような燃焼制御方法をとることにより、焼却炉内の燃焼状況が変化しても、燃焼を安定して行うように調整でき、最終的に廃棄物焼却炉から排出される排ガス中の有害物質量を制御しやすくなり、さらに、焼却炉の燃焼制御系を簡単にすることができる。
ここで、前記廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子としては、例えば、燃焼室3内で発生した可燃性ガスと燃焼ガスの二次燃焼を行う二次燃焼領域17出口近傍における、ガス温度、ガス中O濃度、ガス中CO濃度、ガス中NO濃度のいずれか一つ以上とすることが好ましい。前記監視因子の具体的な組み合わせとしては、例えば、(1)ガス温度、(2)ガス中O濃度、(3)ガス温度とガス中O濃度、(4)ガス温度とガス中CO濃度、(5)ガス中NO濃度とガス温度、(6)ガス中NO濃度とガス中CO濃度、を用いることができる。
また、前記Q3を調節する方法としては、燃焼室3内の後燃焼領域に吹き込まれる循環排ガスが焼却炉から排出された排ガスのみからなる場合には、前記排ガスの流量を調節することにより行われ、前記循環排ガスが、例えば、焼却炉から排出された排ガスと空気との混合ガスである場合には、この混合される空気量を調節することにより行うことができる。
図2に、Q3の調節方法として、排ガスに混合される空気量を調節する場合における調節手段26の概略構成の一例を示す。図2に示す調節手段26は、第一の除塵装置18を通過した後の排ガスの一部、或いは、第二の除塵装置19を通過した後の排ガスの一部を抜き出し、ブロワ52を介して燃焼室3の高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に設けた循環排ガス吹き込み口27から循環排ガスを吹き込むための配管28の途中に設けられる。前記調節手段26は、排ガスと空気を混合するためのガス混合装置50と、前記ガス混合装置50に空気を供給するための空気供給配管51と、前記ガス混合装置50に供給する空気量を制御するための空気量制御装置58とを有する。
前記空気供給配管51には、空気を取り込むためのブロワ56と、ガス混合装置50に供給する空気量を調節する流量調節弁54とが備えられている。また、前記空気量制御装置58は、前記監視因子を計測する計測手段59からの計測信号に基づき排ガスに混合する空気量を決定し、その空気量となるように前記流量調節弁54を制御する。
なお、前記高温ガスの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込まれる循環排ガスが焼却炉から排出された排ガスのみからなる場合には、前記配管28の途中に設けられたダンパの開度を制御することにより循環排ガス流量の調節が行われる。
また、前記Q4を調節する方法としては、二次燃焼領域に吹き込まれる攪拌用ガスが空気のみ或いは循環排ガスのみからなる場合には、前記空気或いは循環排ガスの流量を調節することにより行われる。前記攪拌用ガスが空気と循環排ガスとの混合ガスである場合には、この混合される空気量或いは循環排ガス量を調節することにより行うことができる。
表1及び表2に実際の廃棄物焼却炉におけるQ3、Q4、又は、Q3とQ4とを合計した値の調節方法の一例を示す。監視因子が基準値から変動した場合における排ガス中における有害物質量の変動と、Q3、Q4、又は、Q3とQ4とを合計した値をどのように調節するのかを示している。
なお、前記攪拌用ガスは、二次燃焼領域17入口近傍の側壁から、水平面上で後燃焼領域内の雰囲気ガスの流れに対向する方向に旋回流を形成するように吹き込む。
ここで、前記廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子である二次燃焼領域17出口近傍でのガス温度、ガス中O濃度、ガス中CO濃度、ガス中NO濃度のそれぞれの基準値、及び、その計測手段は以下に示すとおりである。
[基準値]
ガス温度:950±50℃
ガス中O濃度:5.5±0.5%
ガス中CO濃度:平均30ppm以下
(瞬間値が100ppmを超えないように制御)
ガス中NO濃度:100ppm以下
[計測手段]
ガス温度:温度センサ(熱電対、放射温度計)
ガス中O濃度:酸素濃度計
ガス中CO濃度:CO濃度計
ガス中NO濃度:NO濃度計
【表1】

【表2】

焼却炉内で廃棄物と熱分解によって発生する可燃性ガスを適正な酸素濃度や温度等の範囲内で燃焼させた場合に、CO、NOx、DXN(ダイオキシン類)等の有害物質の発生が最も抑制される。
表1において、二次燃焼領域17出口近傍でのガス温度が高い場合((1)の場合)は、燃焼室での燃焼が抑制され、その結果二次燃焼領域での燃焼が急激に行われるためガス温度が上昇していると考えられる。この場合、焼却炉から排出されるCO濃度及びDXN濃度は減少するか変化が無いがNOx濃度は増加する。そのため、Q3のみを調整する場合は、Q3を増加させて燃焼室内への酸素の供給量を増加し、燃焼室内での燃焼を活発に行うようにして二次燃焼領域での燃焼を適正化させる。Q4のみを調整する場合は、Q4を減少させ、二次燃焼領域への酸素の供給量を減少させて二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。Q3+Q4の合計値を調整する場合は、Q3を増加させ、Q4を減少させて、Q3+Q4の合計値は増加させるか変化無しで燃焼室及び二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス中O濃度が高い場合((2)の場合)は、焼却炉から排出されるCO濃度及びDXN濃度は減少するが変化は無いが、NOx濃度は増加する。そのため、Q3のみを調整する場合は、Q3を増加させて燃焼室内への酸素の供給量を増加し、燃焼室での燃焼を活発に行うようにして酸素の消費量を増加させる。Q4のみを調整する場合は、Q4を減少させ、二次燃焼領域への酸素の供給量を減少させて二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。Q3+Q4の合計値を調整する場合は、Q3を増加させ、Q4を減少させて、Q3+Q4の合計値は増加させるか変化無しで燃焼室及び二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
反対に、二次燃焼領域17出口近傍でのガス中O濃度が低い場合((3)の場合)は、焼却炉から排出されるNOx濃度は減少するが、CO濃度及びDXN濃度は増加するか変化の無い状態となる。そのため、Q3のみを調整する場合は、Q3を減少させて燃焼室内での循環排ガスによる希釈割合を減らし、二次燃焼領域における酸素濃度を高める。Q4のみを調整する場合は、Q4を増加させ、二次燃焼領域への酸素の供給量を増やす。Q3+Q4の合計値を調整する場合は、Q3を減少させ、Q4を増加させて、Q3+Q4の合計値は増加させて燃焼室及び二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス中CO濃度が高い場合((4)の場合)は、二次燃焼領域での燃焼が不十分であり、未燃焼の可燃性ガスが残存していると考えられる。そのため、Q3のみを調整する場合は、Q3を減少させて二次燃焼領域での温度を高めて燃焼を安定化させCOの排出を抑制する。Q4のみを調整する場合は、Q4を増加させて二次燃焼領域への酸素の供給量を増やし二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。Q3+Q4の合計値は増加させて燃焼室及び二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス温度が低く、ガス中O濃度が高い場合((5)の場合)は、攪拌用ガスの流量が過剰であるため、二次燃焼領域内の温度が低下し、燃焼が不安定になっていると考えられる。この場合、焼却炉から排出されるCO濃度及びDXN濃度が増加する。そのため、Q3は増加か変化無しで、Q4を減少させ、二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス温度が低く、ガス中O濃度が低い場合((6)の場合)は、二次燃焼領域内での燃焼が抑制され、ガス温度が低下していると考えられる。この場合、焼却炉から排出されるCO濃度及びDXN濃度が増加する。そのため、Q3を減少させ燃焼室での温度を高めて可燃性ガスの二次燃焼領域への流入量を増やし、Q4を増加させて二次燃焼領域への酸素の供給量を増やし二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。Q3+Q4の合計値は増加させるか変化無しで燃焼室及び二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス中CO濃度が高く、ガス温度が高い場合((7)の場合)は、燃焼室での燃焼が不完全で、二次燃焼領域での燃焼が急激に行われるためガス温度が上昇しており、また、未燃焼の可燃性ガスが残存していると考えられる。この場合、焼却炉から排出されるCO濃度及びDXN濃度が増加する。そのため、Q3を増加させて燃焼室内の温度を低下させると共に、Q4を増加させて二次燃焼領域の温度を低下させつつ二次燃焼領域への酸素の供給量を増やし二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス中CO濃度が高く、ガス温度が低い場合((8)の場合)は、廃棄物の供給量が減って燃焼室内に吹き込む循環排ガスの流量が過剰になったため、炉内温度が低下し、燃焼が不安定になっていると考えられる。この場合、焼却炉から排出されるCO濃度及びDXN濃度が増加する。そのため、Q3を減少させて炉内温度を上昇させ燃焼を安定化させると共に、Q4を増加させて二次燃焼領域への酸素の供給量を増やし二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。Q3+Q4の合計値は増加させるか変化無しで燃焼室及び二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス中NO濃度が高く、ガス温度が高い場合((9)の場合)は、燃焼室での燃焼が抑制され、その結果二次燃焼領域での燃焼が急激に行われるためガス温度が上昇し、ガス中NO濃度が増加していると考えられる。そのため、Q3を増加させて燃焼室内の温度を低下させ、燃焼室での燃焼を抑制すると共に、Q4を減少させ、二次燃焼領域への酸素の供給量を減少させて二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。Q3+Q4の合計値は増加させるか変化無しで燃焼室及び二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス中NO濃度が低いが、CO濃度が高い場合((10)の場合)は、二次燃焼領域内での燃焼が不十分であり、未燃焼の可燃性ガスが残存していると考えられる。そのため、Q3を減少させ燃焼室内での温度を高めて可燃性ガスの二次燃焼領域への流入量を増やし、Q4を増加させて二次燃焼領域への酸素の供給量を増やし二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。Q3+Q4の合計値は増加させて燃焼室及び二次燃焼領域での燃焼を適正に行うようにする。
二次燃焼領域17出口近傍でのガス中NO濃度が低く、CO濃度も低い場合((11)の場合)は、炉内の燃焼が適正に行われている状態と考えられる。この場合は特に調節の必要は無くQ3,Q4,Q3+Q4の合計値はそのままで維持する。
上記のように制御することにより、複雑な制御を行うことなく効果的に廃棄物焼却炉から排出されるCO、NOx、DXN等の有害物質の量を低減することが可能となる。
また、表3には、実際の廃棄物焼却炉において、実施例としてQ1:Q2:Q3:Q4=0.98:0.10:0.12:0.10、λ=1.30として廃棄物の燃焼を行った場合に、焼却炉から排出される排ガス中のCO濃度、NOx濃度、DXN濃度を測定した結果を示す。なお、表3には、比較例1及び比較例2として、従来技術に係る廃棄物焼却炉において、火格子下から吹き込む燃焼用一次空気により供給される単位時間当りの酸素量r1、主燃焼領域に吹き込む空気により供給される単位時間当りの酸素量r2、後燃焼領域に吹き込む空気により供給される単位時間当りの酸素量r3及びλ’=r1+r2+r3を表2に示すように設定した場合の焼却炉の炉出口から排出される排ガス中のCO濃度、NOx濃度、DXN濃度を測定した結果を示す。
【表3】

表3に示すように、実施例では、低空気比燃焼(λ=1.30)が達成でき、CO、NOx、DXNの発生が抑制されている。それに対し、比較例1では、低空気比燃焼が達成できず(λ’=1.7)、またNOxの発生量が多い。比較例2では、低空気比燃焼(λ’=1.3)を行うと、NOxの発生量は低くなるが、COの発生が多い。これは、炉内の燃焼状態が不安定になり、可燃性ガスが未燃のままCOとして排出されており、さらに煤などの未燃分が発生し、これらによりダイオキシン類の発生量も高くなっていると考えられる。
また、高温ガス、循環排ガス及び攪拌用ガスの吹き込み流量の調整を焼却炉から排出される排ガス流量に対する比率を用いて行ってもよい。これにより、簡便に吹き込み流量の設定や調整を行うことができる。
なお、上述した廃棄物焼却炉が灰溶融炉を一体化した灰溶融炉一体型廃棄物焼却炉である場合、上述の循環排ガス及び/又は攪拌用ガスの全部又は一部を灰溶融炉の排ガスを使用するようにしてもよい。また、前記灰溶融炉が、キルンフードを備えたキルン式灰溶融炉である場合には、上述の高温ガス及び/又は攪拌用ガスの全部又は一部に前記キルンフードを介して誘引された該キルンフード内で加熱された空気を使用することもできる。灰溶融炉の排ガス又はキルンフード内で加熱された空気を用いることにより廃熱を有効に活用することができ、省エネルギー化を図ることが可能となる。
以上説明したように本発明によれば、廃棄物焼却炉において低空気比燃焼を行った場合においても燃焼の安定性が維持され、且つ、局所高温領域の発生が抑制され、COやNOx等の有害ガスの発生量が低減できる廃棄物焼却炉の燃焼制御方法及び廃棄物焼却炉が提供される。さらに、低空気比燃焼を行えるので焼却炉から排出される排ガス総量を大幅に低減でき、また、廃熱の回収効率を向上できる廃棄物焼却炉の燃焼制御方法及び廃棄物焼却炉が提供される。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
火格子式廃棄物焼却炉の燃焼制御方法であって、
燃焼用一次空気Aを火格子下から燃焼室内に吹き込み、
高温ガスBを前記燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込み、
焼却炉から排出された排出ガスを少なくとも一部に含む循環排ガスCを前記高温ガスBの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込み、
空気、循環排ガス、又は、空気と循環排ガスとの混合ガスのいずれかからなる攪拌用ガスDを二次燃焼領域に吹き込むことを特徴とする廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項2】
循環排ガスCが焼却炉から排出された排ガスのみからなることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項3】
燃焼用一次空気Aにより供給される単位時間当りの酸素量Q1と、
高温ガスBにより供給される単位時間当りの酸素量Q2と、
循環排ガスCにより供給される単位時間当りの酸素量Q3と、
攪拌用ガスDにより供給される単位時間当りの酸素量Q4とが、
廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量を1とした場合に、下式(1)及び(2)を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
Q1:Q2:Q3:Q4=0.75〜1.20:0.05〜0.20:0.02〜0.20:0.02〜0.25 (1)
1.2≦Q1+Q2+Q3+Q4≦1.5 (2)
【請求項4】
燃焼用一次空気Aにより供給される単位時間当りの酸素量Q1と、
高温ガスBにより供給される単位時間当りの酸素量Q2と、
循環排ガスCにより供給される単位時間当りの酸素量Q3と、
攪拌用ガスDにより供給される単位時間当りの酸素量Q4とが、
廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量を1とした場合に、下式(3)及び(4)を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
Q1:Q2:Q3:Q4=0.75〜1.1:0.07〜0.15:0.02〜0.15:0.02〜0.25 (3)
1.25≦Q1+Q2+Q3+Q4≦1.35 (4)
【請求項5】
Q1とQ2とを所定の値に維持しつつ、
Q3及び/又はQ4を焼却炉内の状況を監視する因子に基づいて調節することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項6】
焼却炉内の状況を監視する因子が、燃焼室内で発生した可燃性ガスの二次燃焼を行う二次燃焼領域出口近傍における、ガス温度、ガス中O濃度、ガス中CO濃度、ガス中NO濃度のいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項5に記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項7】
高温ガスBが、燃焼室高さの50%を超えない高さ位置から燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項8】
高温ガスBが、火格子上の廃棄物層表面から鉛直上方に0.2〜1.5mの範囲内の高さ位置から、燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項9】
高温ガスBが、火格子面から鉛直上方に0.2〜2.5mの範囲内の高さ位置から、燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項10】
高温ガスBが、少なくとも10m/s 以上の吹き込み速度で燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込まれることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項11】
二次燃焼領域のガス温度が800〜1050℃の範囲となるように、循環排ガスC及び/又は攪拌用ガスDの流量を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項12】
二次燃焼領域内に旋回流が形成されるように、攪拌用ガスDを吹き込むことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項13】
燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度が、後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度より高くなるように、高温ガスBの流量を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項14】
主燃焼領域及び後燃焼領域の温度がそれぞれ800〜1050℃の範囲内となるように、高温ガスB及び/又は循環排ガスCの流量を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項15】
主燃焼領域及び後燃焼領域の温度がそれぞれ800〜1050℃の範囲内となるように、高温ガスBの酸素濃度及び/又はガス温度を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の廃棄物焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項16】
燃焼用一次空気Aを火格子下から燃焼室内に吹き込む燃焼用一次空気吹き込み手段と、
高温ガスBを前記燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹き込む高温ガス吹き込み手段と、
焼却炉から排出された排ガスを少なくとも一部に含む循環排ガスCを前記高温ガスBの吹き込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込む循環排ガス吹き込み手段と、
空気、循環排ガス、又は、空気と循環排ガスとの混合ガスの内のいずれかからなる攪拌用ガスDを二次燃焼領域に吹き込む攪拌用ガス吹き込み手段とを備えることを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項17】
高温ガスBの吹き込みノズルが、燃焼室高さの50%を超えない高さ位置に設けられていることを特徴とする請求項16に記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項18】
高温ガスBの吹き込みノズルが、火格子上の廃棄物層表面から鉛直上方に0.2〜1.5mの範囲内の高さ位置に設けられていることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項19】
高温ガスBの吹き込みノズルが、火格子面から鉛直上方に0.2〜2.5mの範囲内の高さ位置に設けられていることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項20】
二次燃焼領域に旋回流が形成されるように、攪拌用ガスDの吹き込みノズルが設けられていることを特徴とする請求項16乃至請求項19のいずれかに記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項21】
燃焼開始領域又は主燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度が、後燃焼領域を経由した一次燃焼排ガスの温度より高くなるように、高温ガスBの流量を調整可能な手段を備えたことを特徴とする請求項16乃至請求項20のいずれかに記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項22】
高温ガスB及び/又は循環排ガスCの流量を調整可能な手段を備えたことを特徴とする請求項16乃至請求項21のいずれかに記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項23】
高温ガスBの酸素濃度及び/又はガス温度を調整可能な手段を備えたことを特徴とする請求項16乃至請求項22のいずれかに記載の火格子式廃棄物焼却炉。

【国際公開番号】WO2004/092648
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505399(P2005−505399)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005232
【国際出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】