説明

火災警報器点検装置

【課題】 火災警報器の点検を簡単な構成で容易に行えるようにする。
【解決手段】 スイッチ35をオン状態とすることで、ヒータ27およびダイヤフラムポンプ31がそれぞれ作動する。ヒータ27の作動により加熱された空間部25b内の空気が、ダイヤフラムポンプ31の作動により送られた空気により、熱風となって空気排出口25aから検査対象の火災警報器に向けて吹き付けられる。ヒータ27は、ガスセンサなどで使用される、アルミナ基板上に白金が設けられたもので、小型かつ低消費電力である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、火災警報器の動作点検を行うための火災警報器点検装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、建物の天井に設置される火災警報器は、正常に動作するか否かを定期的に検査する必要があり、その検査に用いる従来の火災警報器点検装置としては、例えば図4および図4の平面図である図5に示すようなものがある。これは、燃料タンク1に収容したベンジンなどの液体燃料が自然気化し、この気化燃料が、上部開口している外筒3の底部中央に形成した貫通孔3aを通して火口5に供給され、この供給された燃料に対しマッチなどの着火源により着火させる。着火後に、外筒3の先端を図示しない火災警報器に接近させることで熱を送り込み、検査を行う。
【0003】検査後、火炎の消化には、燃料タンク1を取り外して消化を確認後、タンクキャップ7を燃料タンク1に被せる。なお、図4は、この消化キャップ7を被せた燃料タンク1を外筒3の下部に取り付けた状態である。また、火炎の熱が直接外筒3に加わらないよう温度調節するために、貫通孔3aを開放遮断する温度調節板9が設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来の火災警報器点検装置においては、熱源にベンジンなどの液体燃料を使用しているため、燃料タンク1、着火源、消化キャップ7などが必要である上、温度調節板9も必要であることから、全体として構成が複雑で大型化し、コスト高を招くものとなっている。
【0005】火災警報器の点検に際し専用の装置を用いず、例えば図6に示すように、市販のヘアドライヤ13を用い、火災警報器15に向けて熱風を吹き付ける方法もある。ところが、この場合には、電源プラグ17を差し込むコンセントが、火災警報器15が装着された天井からは通常離れた床面付近にあるので、延長コードなどが必要になるなど作業が面倒なものとなる。
【0006】そこで、この発明は、火災警報器の点検を簡単な構成で容易に行えるようにすることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、請求項1の発明は、空間部に収容された熱源と、この熱源により加熱された前記空間部内の空気を外部に排出する空気排出口と、前記空間部に空気を供給する空気供給手段とを備えている構成としてある。
【0008】このような構成の火災警報器点検装置によれば、熱源により空間部内の空気が熱せられ、この熱せられた空気は、空気供給手段により空間部内に供給される空気により熱風となって押し出され、空気排出口から外部の火災警報器に向けて吹き付けられる。
【0009】請求項2の発明は、請求項1の発明の構成において、空気供給手段はポンプで構成され、このポンプと空間部とを空気供給パイプで接続した構成としてある。
【0010】上記構成によれば、ポンプが駆動することで、空気供給パイプを通して空気が空間部に送られる。
【0011】請求項3の発明は、請求項2の発明の構成において、空気排出口の空間部側の開口と、空気供給パイプの空間部側の開口とが相互に対向して形成され、熱源は、前記各開口相互を結ぶ延長上の空間部に配置されている。
【0012】上記構成によれば、空気供給パイプを流れる空気は熱源に向けて空間部に流出し、熱源により加熱された空気が、その前方の空気排出口から外部の火災警報器に向けて吹き出される。
【0013】請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明の構成において、熱源は、通電により発熱する発熱体で構成されている。
【0014】上記構成によれば、発熱体は通電されることで発熱し、この熱が火災警報器に供給される。
【0015】請求項5の発明は、請求項4の発明の構成において、発熱体は、アルミナ基板上に白金が設けられている構成である。
【0016】上記構成の発熱体は、例えばガスセンサなどに使用されており、極めて消費電力が少なくて済む。
【0017】請求項6の発明は、請求項4または5の発明の構成において、発熱体の電源となる乾電池を内蔵している。
【0018】上記構成によれば、発熱体は、内蔵する乾電池を電源として発熱する。
【0019】請求項7の発明は、ポンプは乾電池を駆動源としており、このポンプおよび発熱体の双方を作動させるための共通のスイッチが設けられている。
【0020】上記構成によれば、共通のスイッチを投入することで、発熱体およびポンプの双方が共通の乾電池を電源として作動する。
【0021】請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明の構成において、点検作業時に火災警報器の少なくとも感知部を覆い、かつ内部に空気排出口が開口しているカバーが先端に設けられている。
【0022】上記構成によれば、カバーにより火災警報器を覆うように、カバーの先端を火災警報器が取り付けられた天井などに密着させた状態で、点検作業を行う。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0024】図1は、この発明の実施の一形態を示す火災警報器点検装置19の断面図である。導電性材料からなる本体ケース21の図中で左側の先端部には、いずれも耐熱性樹脂からなるヒータ保持具23を介してヒータカバー25が装着されている。ヒータ保持具23は、円筒部23aとフランジ部23bとを有し、ヒータカバー25は、フランジ部23bより図中で左側の円筒部23aに嵌合し、かつフランジ部23bを挟持するようにして本体ケース21に装着されている。ヒータ保持具23のフランジ部23bより右側の円筒部23aは、本体ケース21に形成した貫通孔21aに挿入されている。
【0025】ヒータカバー25は、キャップ状を呈し、先端側の端面中央に空気排出口25aを備え、内部に形成された空間部25bに熱源としてのヒータ27が収容されている。ヒータ27は、アルミナ基板上に白金が設けられ、通電によって発熱する発熱体を構成しており、小型で消費電力が少なく、例えばガスセンサなどに使用されている。このヒータ27は、ヒータ保持具23の円筒部23aに埋め込まれた2本の導電部材29のそれぞれの一端に、両端の端子が接続されている。
【0026】本体ケース21の内部は、図中で左右方向のほぼ中央部が隔壁21bによって仕切られ、隔壁21bの図中で左側の内部における隔壁21bの近傍には、空気供給手段としてのダイヤフラムポンプ31が収容固定されている。ダイヤフラムポンプ31の吐出口には空気供給パイプ33の一端が接続され、空気供給パイプ33の他端は、前記ヒータ保持具23における円筒部23a内の連通孔23cに連通接続されている。ダイヤフラムポンプ31は、図示していないが、電気モーターにより、ダイヤフラムを往復変位させる。
【0027】空気排出口25aと円筒部23a内の連通孔23cとは同一直線上に位置しており、このため空気排出口25aの空間部25b側の開口と、空気供給パイプ33の空間部25b側の開口とは相互に対向して形成され、ヒータ27は、前記各開口相互を結ぶ延長上の空間部25bに配置されることになる。
【0028】ダイヤフラムポンプ31の前記隔壁21bと反対側近傍の本体ケース21には、ダイヤフラムポンプ31とヒータ27を作動させるための共通のスイッチ35が設けられている。また、隔壁21bの図中で右側の本体ケース21内には、ヒータ27およびダイヤフラムポンプ31の電源となる単2型の乾電池37が2本収容されている。本体ケース21の右側端部は開口しており、この開口部には、本体ケース21と電気的に導通する導電性材料からなるキャップ39がねじ込まれている。キャップ39には、乾電池37のマイナス端子に弾性的に押し付ける導電性材料からなるスプリング41が装着され、これにより乾電池37のマイナス端子が本体ケース21に電気的に導通した状態となる。
【0029】乾電池37のプラス端子は、隔壁21bに対して電気的に絶縁された導電部43に接触し、この導電部43と前記スイッチ35の一方の端子45とは、配線47により接続されている。スイッチ35の他方の端子49は、配線51および53を介して一方の導電部材29およびダイヤフラムポンプ31の一方の端子55にそれぞれ接続され、他方の導電部材29およびダイヤフラムポンプ31の他方の端子57は、配線59および61を介して本体ケース21に電気的に接続されている。
【0030】図2は、上記した構成の火災警報器点検装置19により火災警報器63に対して点検作業を行っている状態を示している。火災警報器点検装置19先端のヒータカバー25を、空気排出口25aが感知部を構成する火災センサ65に対向するよう火災センサガード67に接近または接触させる。
【0031】この状態で、スイッチ35をオンに切り換えることで、ヒータ27が発熱するとともにダイヤフラムポンプ31が作動する。ヒータ27の発熱により空間部25b内の空気が暖められ、この暖められた空気は、ダイヤフラムポンプ31によって空気供給パイプ33から連通孔23cを経て空間部25b内に送り込まれた空気によって、空気排出口25aから火災警報器63の火災センサ65に向けて熱風となって吹き付けられ、これにより点検作業が終了する。点検作業終了後は、スイッチ35をオフに切換える。
【0032】このような火災警報器点検装置19によれば、熱源としてガスセンサなどに使用される小型のヒータ27を用いているため、燃料タンクや他の着火源などが不要であり、全体として構成が簡単で小型化が可能であり、点検作業時にはスイッチ35を投入すればよいので、点検作業も容易に行える。
【0033】また、上記したヒータ27は、消費電力が少なくて済み、このため、ダイヤフラムポンプ31の駆動電力を考慮しても、例えば単2型の乾電池2本程度で繰り返し点検が可能である。ヒータ27で加熱した空気は、空気排出口25aから点検に必要な部分に効率よく熱風として送り出すことができ、熱の拡散による損失が少ないものとなる。
【0034】図3は、図1の火災警報器点検装置19先端のヒータカバー25に、火災警報器の少なくとも火災センサ65を覆うカバー69を設けたものである。点検作業時にカバー69により火災センサ65周囲の火災センサガード67を覆うことで、空気排出口25aから送り出された熱の拡散防止や、外気流の影響防止がなされ、より確実に点検作業を行うことができる。
【0035】
【発明の効果】以上説明してきたように、請求項1の発明によれば、空間部に収容された熱源により加熱された空気を、空気供給手段により熱風として空気排出口から外部の火災警報器に向けて吹き付けるようにしたので、燃料タンクや外部の着火源が不要となり、全体として構成が簡単で小型化が可能であり、点検作業も容易に行うことができる。
【0036】請求項2の発明によれば、空気供給手段はポンプで構成され、このポンプと空間部とを空気供給パイプで接続したため、ポンプの駆動により、熱源が収容されている空間部に空気供給パイプを通して空気を送ることができる。
【0037】請求項3の発明によれば、空気排出口の空間部側の開口と、空気供給パイプの空間部側の開口とが相互に対向して形成され、熱源は、前記各開口相互を結ぶ延長上の空間部に配置されているので、熱源により加熱された空気を、その前方の空気排出口から外部の火災警報器に向けて効率よく吹き付けることができる。
【0038】請求項4の発明によれば、熱源は、通電により発熱する発熱体で構成されているため、発熱体が発生する熱を火災警報器に供給することで、点検作業を行うことができる。
【0039】請求項5の発明によれば、発熱体は、アルミナ基板上に白金が設けられている構成としたため、熱源として小型で消費電力も少なくて済む。
【0040】請求項6の発明によれば、発熱体の電源となる乾電池を内蔵しているため、外部の電源が不要となり、取り扱いが容易となる。
【0041】請求項7の発明によれば、ポンプは発熱体の電源と共通の乾電池を駆動源としており、このポンプおよび発熱体の双方を作動させるための共通のスイッチが設けられているため、共通のスイッチを投入することで、ヒータおよびポンプの双方が作動し、操作性が向上する。
【0042】請求項8の発明によれば、点検作業時に火災警報器の少なくとも感知部を覆い、かつ内部に空気排出口が開口しているカバーが先端に設けられているため、空気排出口から感知部に向けて送り出された熱の拡散防止や、外気流の影響防止がなされ、より確実に点検作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示す火災警報器点検装置の断面図である。
【図2】図1の火災警報器点検装置により点検作業をしている状態を示す動作説明図である。
【図3】この発明の他の実施形態を示す火災警報器点検装置の側面図である。
【図4】従来例を示す火災警報器点検装置の側面図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】他の従来例に係わる火災警報器点検方法を示す説明図である。
【符号の説明】
19 火災警報器点検装置
25a 空気排出口
25b 空間部
27 ヒータ(熱源)
31 ダイヤフラムポンプ(空気供給手段)
33 空気供給パイプ
35 スイッチ
37 乾電池
65 火災センサ(感知部)
69 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 空間部に収容された熱源と、この熱源により加熱された前記空間部内の空気を外部に排出する空気排出口と、前記空間部に空気を供給する空気供給手段とを備えていることを特徴とする火災警報器点検装置。
【請求項2】 空気供給手段はポンプで構成され、このポンプと空間部とを空気供給パイプで接続したことを特徴とする請求項1記載の火災警報器点検装置。
【請求項3】 空気排出口の空間部側の開口と、空気供給パイプの空間部側の開口とが相互に対向して形成され、熱源は、前記各開口相互を結ぶ延長上の空間部に配置されていることを特徴とする請求項2記載の火災警報器点検装置。
【請求項4】 熱源は、通電により発熱する発熱体で構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の火災警報器点検装置。
【請求項5】 発熱体は、アルミナ基板上に白金が設けられていることを特徴とする請求項4記載の火災警報器点検装置。
【請求項6】 発熱体の電源となる乾電池を内蔵していることを特徴とする請求項4または5記載の火災警報器点検装置。
【請求項7】 ポンプは乾電池を駆動源としており、このポンプおよび発熱体の双方を作動させるための共通のスイッチが設けられていることを特徴とする請求項6記載の火災警報器点検装置。
【請求項8】 点検作業時に火災警報器の少なくとも感知部を覆い、かつ内部に空気排出口が開口しているカバーが先端に設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の火災警報器点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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