説明

災害支援システム及び災害支援プログラム

【課題】少なくとも災害支援物資の管理から輸送までを一元管理する災害支援システムを提供することである。
【解決手段】災害支援システム10は、地域毎の人口を含む居住関連情報と、各種災害支援物資の名称及び量と、災害支援物資の輸送量に応じた輸送手段とを記憶した記憶部112と、ユーザの操作により指示が入力される入力部113と、準備する災害支援物資の名称及び量と、輸送手段とを決定する制御部115と、制御部115の指示により各種情報を出力する出力部114と、を備え、入力部113で被災地域の地域名が入力された場合、制御部115は、該地域名に対応した前記居住関連情報の各項目の値を所定の式に代入して準備する各種災害支援物資の名称及び量を決定し、準備する各種災害支援物資の名称及び量から輸送手段を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害対策の助けとなる災害支援システム及び災害支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震や水害などの自然災害が増加傾向にあり、災害時における人命救助、避難誘導、避難場所設営、物資の供給などの災害対策が急務事項となっている。そして、災害対策として様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、災害発生情報と避難誘導対象者の現在位置とに応じて避難誘導する避難誘導システムについて記されている。具体的には、各種災害の発生に関する災害発生情報を受信する受信装置と、前記受信装置で受信された災害発生情報により避難制御信号を生成する制御手段と、前記避難制御信号を送信する送信機と、避難誘導対象者によって所持され、生体センサにより前記避難誘導対象者の生体データ値を検出し、位置検出手段により前記避難誘導対象者の位置を検出し、前記位置を通知手段により前記制御手段に通知する生体データ検出端末装置と、室内各出入り口あるいは通路に配置され、前記避難制御信号を受信して避難誘導の表示あるいは音声出力を行う避難誘導部と、ユーザと通信を行う通信手段と、を備え、前記制御手段は、前記位置検出手段で検出された前記避難誘導対象者の現在位置に応じて、前記避難誘導部で避難誘導を行うよう前記避難制御信号を生成し、前記ユーザに対して承認を求める通知とともに、予め登録された知人の連絡先一覧とその現在地情報の一覧とを通知し、該ユーザからの承認が得られた場合、もしくは該ユーザからの応答がなかった場合に、避難制御信号を送信することを特徴とする避難誘導システムが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、緊急地震速報や各種災害情報などのデータを利用して動物あるいは避難誘導対象者を拘束しているロックを解除するとともに避難誘導する避難誘導システムについて記されている。具体的には、災害情報センターからの災害発生情報を受信する受信装置と、動物の建物内における位置を検出する位置検出手段と、ユーザと通信を行う通信手段と、前記通信手段を介してユーザからの承認を得るとともに、前記受信装置で受信された災害発生情報とユーザからの前記承認とにより避難制御信号を生成する制御手段と、前記避難制御信号を生成する送信機と、動物の首輪もしくは鎖、または、檻もしくは柵のゲートをロックしており、前記避難制御信号を受信してロックが解除されるロック部と、室内各出入り口あるいは通路に配置され、前記避難制御信号を受信して避難誘導の表示あるいは音声出力を行う避難誘導部と、を備え、前記制御手段は、前記位置検出手段で検出された動物の現在位置に応じて、現在位置に近い出入り口から建物外へ至る通路と出入り口とについて避難誘導部から避難誘導の表示あるいは音声出力を行うように制御することを特徴とする避難誘導システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4093319号公報
【特許文献2】特許第3893428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2で触れられていない災害対策における現状の一つに、各都道府県で備蓄物資の量に大きな格差があるという問題がある。この問題を解決するためには、都道府県の枠を超えて備蓄物資の管理・輸送・設営を一元化することが有効であると考えられる。ここで、備蓄物資の管理は民間企業で行うとしても、災害時の物資の輸送・設営は自衛隊等の協力が必要であり、官民協同することが不可欠となる。その際、管理と輸送・設営とが別々の指示の元に行われると、無駄なく迅速に対応することが難しい。
【0007】
そこで本発明者は上記の問題を解決するため、管理・輸送・設営の一元化をどのような形で行うのが有効であるかを考え、少なくとも管理から輸送までの一元管理を支援することができるシステムを構築することが有効であると考えた。
【0008】
本発明は、少なくとも災害支援物資の管理から輸送までを一元管理する災害支援システムを提供することを目的とする。また、その災害支援システムを稼働させる災害支援プログラムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の災害支援システムは、地域毎の人口を含む居住関連情報と、各種災害支援物資の名称及び量と、災害支援物資の輸送量に応じた輸送手段とを記憶した記憶部と、ユーザの操作により指示が入力される入力部と、準備する災害支援物資の名称及び量と、輸送手段とを決定する制御部と、前記制御部の指示により各種情報を出力する出力部と、を備え、前記入力部で被災地域の地域名が入力された場合、前記制御部は、該地域名に対応した前記居住関連情報の各項目の値を所定の式に代入して準備する各種災害支援物資の名称及び量を決定し、準備する各種災害支援物資の名称及び量から輸送手段を決定することを特徴とする。
【0010】
この構成によると、電気通信回線を介した端末装置の入力部又はコンピュータの入力部から地域名が入力されると、制御部は、人の手を介すことなく、該地域に必要な災害支援物資の名称及び量と輸送手段とを正確かつ迅速に決定することができる。
【0011】
上記の災害支援システムにおいて、前記記憶部は、災害支援物資の名称に応じた単位数量当たりの大きさ及び重さと、各種梱包形態に収容可能な大きさ及び重さと、各種梱包形態に応じた輸送手段の候補及び積載可能梱包数と、各輸送手段の優先順位と、各輸送手段の稼働可能台数とを記憶し、前記制御部は、準備する各種災害支援物資の名称及び量と、前記災害支援物資の名称に応じた単位数量当たりの大きさ及び重さと、前記各種梱包形態に収容可能な大きさ及び重さとから梱包形態と梱包数とを算出し、算出した梱包形態と、各種梱包形態に応じた輸送手段の候補とから輸送手段の候補を算出し、算出した梱包数と、算出した輸送手段の候補と、前記各輸送手段の優先順位と、前記各輸送手段の稼働可能台数とから優先順位の高い順に輸送手段を決定するようにしてもよい。
【0012】
この構成によると、決定された形態(例えば段ボール、コンテナ等)によって梱包することを可能にする。
【0013】
また上記の災害支援システムにおいて、被災地域及び災害内容を含む被災情報を受信する被災情報受信部を備え、前記被災情報を受信した場合、前記制御部は、該地域名に対応した前記居住関連情報の各項目の値を所定の式に代入して準備する各種災害支援物資の名称及び量を決定し、準備する各種災害支援物資の名称及び量から輸送手段を決定するようにしてもよい。
【0014】
また上記の災害支援システムにおいて、前記記憶部は、役割毎の出勤人数を算出するための人員シフト表と、災害支援物資の名称及び量に応じた梱包時間と、梱包形態及び梱包数に応じた積載時間と、出動の承認に要する承認時間とを記憶し、前記制御部は、前記人員シフト表から当日の準備係の出勤人数を算出し、前記梱包時間を前記出勤人数で除して最短梱包時間を算出し、前記積載時間を前記出勤人数で除して最短積載時間を算出し、前記最短梱包時間と前記最短積載時間と前記承認時間との和である最短準備時間を求めるようにしてもよい。
【0015】
この構成によると、制御部は、人員シフト表を参照し、被災地へ輸送する災害支援物資の最短準備時間を求めることができる。
【0016】
また上記の災害支援システムにおいて、前記記憶部は、地図情報と、前記各輸送手段の平均速度と、前記梱包形態及び梱包数に応じた引き渡し時間とを記憶し、前記制御部は、前記地図情報を用いて被災地域までの輸送経路を算出し、該輸送経路の距離を使用する輸送手段の平均速度で除して最短輸送時間を算出し、前記引き渡し時間を前記輸送手段毎の輸送係の出勤人数で除して最短引き渡し時間を算出し、前記最短輸送時間と前記最短引き渡し時間との和である最短供給時間を求めるようにしてもよい。
【0017】
この構成によると、制御部は、最短輸送時間と最短供給時間とを求めることができる。それにより、災害発生日時と最短輸送時間とから最短準備完了日時を、災害発生日時と最短供給時間とから最短供給開始日時を決定できる。
【0018】
これまで一刻を争う被災地では、情報の断絶と混乱によって、人(救急隊員、医師等)・物(病院のベット、食糧)の配分決定は、現場の指揮官による決断が基本とされてきた。しかし、災害支援物資(例えば救援隊)の到着予想日時については、災害規模や種類によって曖昧であり、指揮官の決断上大きな隘路となっていた。そこで、この災害支援システムによって、制御部が、必要な災害支援物資とその到着日時を自動的に計算することにより、現場の指揮官は、あとどれだけの期間、現場の人・物で対応せざるを得ないということが情報として取得できるため、より的確な判断を可能とする。
【0019】
また上記の災害支援システムにおいて、災害発生後の被災地域の衛星画像を受信する衛星画像受信部を備え、前記記憶部は、災害発生前の各地域の衛星画像を記憶し、複数の被災地域について災害発生後の衛星画像を受信した場合、前記制御部は、それぞれ被災前後の衛星画像を照合して被災した建物数を算出し、被災した建物数が多い又は少ない被災地域順に優先順位を付けるようにしてもよい。
【0020】
この構成によると、災害発生後、制御部は、電気通信回線を介して衛星から受け取った被災地の衛星画像と、災害発生前の被災地の衛星画像を照合することにより、輸送する救援物資の被災地(例えば、山陰地方、鳥取県東部など)の優先順位を決定する。その結果、人が判断するとされてきた被災地の輸送優先順位を、制御部が機械的に判断することにより、誤りなく災害支援物資を被災地に供給することが可能になる。
【0021】
また上記の災害支援システムにおいて、前記記憶部は、地域毎の避難場所及びその優先順位を記憶し、前記制御部は、該優先順位にしたがって輸送する避難場所の順位を決定するようにしてもよい。
【0022】
この構成によると、制御部が避難場所(例えば、鳥取市明徳小学校グランドなど)の優先順位を機械的に判断することにより、より多くの被災者へ、より早く、災害支援物資を供給することが可能になる。
【0023】
また上記の災害支援システムにおいて、気象情報を受信する気象情報受信部を備え、前記記憶部は、地図情報と、輸送経路として危険な場所を示す危険場所情報とを記憶し、気象情報及び被災情報を受信した場合、前記制御部は、前記地図情報を用いて被災地域までの輸送経路を算出する際、前記気象情報及び危険場所情報を加味するようにしてもよい。
【0024】
この構成によると、制御部は、電気通信回線を介して収集された、災害情報センターからの被災情報、及び気象情報センターからの気象情報に基づき、記憶部に記憶された各種危険場所情報を特定後、危険場所を回避し、被災地までの輸送航路を決定する。その結果、危険場所を避けるとともに、気象状況に応じて輸送することができるため、ロスなく被災地まで災害支援物資を供給することが可能になり、なおかつ、輸送途中の事故発生リスクを極めて少なくすることを可能にする。
【0025】
また上記の災害支援システムにおいて、前記記憶部は、地域毎の避難場所を記憶し、前記制御部は、被災地域の避難場所までの輸送経路を算出するようにしてもよい。
【0026】
また上記の災害支援システムにおいて、前記記憶部は、前記避難場所の3次元画像及び設営配置画像を記憶し、前記制御部は、輸送先の避難場所の3次元画像及び設営配置画像を前記出力部に出力させるようにしてもよい。
【0027】
また上記の災害支援システムにおいて、前記入力部が電気通信回線を介して前記制御部の遠隔地に設置され、前記入力部で被災地域の地域名が入力されることは、前記入力部の所定ボタンが押下されることであるとしてもよい。
【0028】
この構成によると、制御部は、電気通信回線を介して、端末装置の入力部から送受信部に受信した特殊信号に基づき、記憶部に記憶された災害支援物資の輸送指示を出力部に表示することができる。その結果、制御部は、災害支援物資の輸送指示を、中央の災害対策本部を介すことなく、被災地の首長(知事及び市区町村長)から、直接かつ迅速に災害支援物資備蓄基地に送ることを可能にする。
【0029】
また上記の災害支援システムにおいて、前記電気通信回線が専用回線であることとしてもよい。
【0030】
この構成によると、電気通信回線に専用回線を使うことにより、クラッカーによる悪意を持った行為を未然に防止することを可能にする。
【0031】
また本発明の災害支援プログラムは、上記の何れかに記載の災害支援システムを稼働させるものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、準備する各種災害支援物資と輸送手段とを決定することで、災害支援物資の管理から輸送までを一元管理することができる。加えて、最短準備時間及び最短供給時間を決定することで、災害支援物資の管理から輸送、引き渡しまでを一元管理することができる。加えて、避難場所までの輸送経路や設営配置を示すことで、災害支援物資の管理から輸送、設営までを一元管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の災害支援システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態のコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の災害支援物資情報表の一例である。
【図4】本発明の梱包形態・輸送手段対応表の一例である。
【図5】本発明の輸送手段優先順位表の一例である。
【図6】本発明の倉庫・棚対応表の一例である。
【図7】本発明の出力部に表示される画面の一例である。
【図8】第2実施形態のコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の人員シフト表の一例である。
【図10】本発明の出力部に表示される画面の一例である。
【図11】第3実施形態のコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の避難場所情報の一例である。
【図13】本発明の出力部に表示される画面の一例である。
【図14】第4実施形態のコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の出力部に表示される画面の一例である。
【図16】本発明の出力部に表示される画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の災害支援システムの構成を含むブロック図である。災害支援物資備蓄基地10には、災害支援システムであるコンピュータ11と、各種災害支援物資を保管する倉庫12、13と、物資の梱包等のシミュレーションを行うためのシミュレーションルーム14とが設けられている。そして、災害支援システム11はインターネット等の電気通信回線15を介して、各自治体等に設けられた端末装置16、17と、気象庁等の災害情報センター18と、気象庁等の気象情報センター19と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等の災害監視衛星20とに接続されている。なお、端末装置16、17は災害支援システムに含めて説明することもある。また、セキュリティーを向上させるため、コンピュータ11と端末装置16、17とは専用回線で接続してもよい。
【0035】
災害支援物資備蓄基地10は、物資の輸送手段と人員を迅速に確保する観点から、例えば鳥取県美保基地等の自衛隊駐屯地に隣接していることが望ましい。
【0036】
災害支援物資としては、水、食料(米、クラッカー、乾パン、おかゆ等)、毛布、医薬品、燃料、浄水器、投光器、テント、発電機、太陽光パネル、仮設住宅、簡易トイレなどがある。災害支援物資はその名称及び量に応じて、倉庫12、13の番号が付された各棚121〜123、131〜133に、十分な量が保管されていることを前提とし、在庫管理は他のコンピュータ、又はコンピュータ11の他のプログラムで行っているものとする。
【0037】
コンピュータ11は、電気通信回線15を介してデータの送受信を行う送受信部111と、各種情報を記憶したハードディスクドライブ等からなる記憶部112と、ユーザの操作により指示が入力されるキーボード等からなる入力部113と、各種情報を出力する液晶ディスプレイ等からなる出力部114と、各部を制御する制御部115とを備えている。なお、送受信部111、記憶部112、入力部113、出力部114は制御部115と別体であってもよい。
【0038】
端末装置16、17は、ユーザの操作により指示が入力されるキーボード等からなる入力部161、171と、各種情報を出力する液晶ディスプレイ等からなる出力部162、172とを備えており、パソコン等のコンピュータであってもよい。なお、端末装置16、17が各自治体に設けられて最低限災害発生をコンピュータ11に知らせることができればよいことを考えると、少なくとも電気通信回線15に接続可能な非常ボタン等の所定ボタンであればよい。
【0039】
次に、災害支援システムであるコンピュータ11の動作について実施形態毎に説明する。
【0040】
(第1実施形態)
第1実施形態は、被災した地域をコンピュータ11に手入力するものである。図2は、第1実施形態のコンピュータ11の動作を示すフローチャートである。
【0041】
コンピュータ11が待機状態のとき、ステップS10において制御部115は、入力部113(入力部161、171でもよい)で被災地域の地域名が入力されたか否かを判別する。国などからの指示によって地域名が入力されると、ステップS11へ進んで制御部115は入力された地域名を抽出する。
【0042】
そして、ステップS12へ進んで制御部115は記憶部112から該地域名に対応した居住関連情報を読み出す。居住関連情報は、国勢調査の結果等を用いて予め記憶部112に記憶されており、少なくとも地域毎の人口を含み、他に年齢別人口、男女別人口、世帯数、高齢者(例えば60歳以上又は65歳以上)の居る世帯数、住居の状態などの項目を含めることができる。
【0043】
ステップS12からはステップS13へ進んで、制御部115は被災地域への輸送のために準備する災害支援物資を算出する。具体的には、居住関連情報の各項目の値を災害支援物資毎に予め決められた所定の式に代入して準備する各種災害支援物資の名称とその量とを決定する。
【0044】
例えば、米又は乾パンの必要量は(その地域の人口)×0.4で算出する。また、おかゆの必要量は(その地域の高齢者人口)×0.4で算出する。また、毛布は(その地域の人口)−(その地域の6歳未満人口)で算出する。上記の0.4という係数は、平成13年4月1日現在の「消防防災震災対策現況調査」(消防庁調べ)を参照し、東京都の人口1万人当たりの乾パン備蓄量(4140食)より割り出した値である。なお、他の係数を用いてもよい。
【0045】
次にステップS14へ進んで、制御部115は災害支援物資を輸送する輸送手段を決定する。なお、輸送手段を決定するか否かをユーザが選択できるようにしてもよい。輸送手段は準備する(輸送する)各種災害支援物資の名称及び量から決定する。輸送手段とは、例えば、トラック、保冷車、冷凍車、冷蔵車、輸送艦(船)、輸送ヘリなどである。このとき、予め記憶部112に記憶されている災害支援物資情報表、梱包形態・輸送手段対応表、輸送手段優先順位表も用いる。
【0046】
図3に災害支援物資情報表の一例を、図4に梱包形態・輸送手段対応表の一例を、図5に輸送手段優先順位表の一例を示す。図3の支援物資情報表には、各災害支援物資の名称に対応して、保管の形態、入数(単位数量)、長さ・幅・高さ(大きさ)、内容量(重さ)が登録されている。図4の梱包形態・輸送手段対応表には、各梱包形態に対応して、梱包可能な長さ、幅、高さ及び内容量と、その梱包形態を輸送可能な輸送手段及び個数(積載可能梱包数)とが登録されている。図5の輸送手段優先順位表には、各輸送手段に対応して、積載量、保有台数、稼働可能台数、優先順位、割り当てフラグが登録されている。
【0047】
制御部115は、算出した準備する災害支援物資の名称及び量と、図3の災害支援物資情報表とを用い、算出した準備する災害支援物資の名称を支援物資情報表で検索し、該当する災害支援物資の各情報を読み出す。そして、準備する災害支援物資の量を検索した災害支援物資の名称に対応する入数で除して単位数量の災害支援物資がいくつ必要かを算出し、大きさ(長さ・幅・高さ)及び重さ(内容量)の合計を求める。そして、その合計と図4の梱包形態・輸送手段対応表とを用い、梱包形態と梱包数とを算出する。例えば、梱包形態は、小さな形態を優先して割り当て、小さな梱包形態で梱包数を多くするように算出する。図4では梱包形態の小さい順にボックス、カーゴ、コンテナである。
【0048】
さらに制御部115は、図4から、算出した梱包形態に対応した輸送手段の候補を読み出す。そして、算出した梱包数と、算出した輸送手段の候補と、図5の各輸送手段の優先順位と、図5の各輸送手段の稼働可能台数とから優先順位の高い順に輸送手段を決定する。割り当てた輸送手段の台数を稼働可能台数から減算していき、梱包数が多く優先順位上位の輸送手段の稼働可能台数を超える場合は、その輸送手段の割り当てフラグ(図5参照)をオンにし、次順位の輸送手段の候補も使用する輸送手段に加える。
【0049】
なお、準備する災害支援物資がどの倉庫及び棚に保管されているかは、予め記憶部112に倉庫・棚対応表を記憶しておけば以下のように算出できる。図6に倉庫・棚対応表の一例を示す。図6の倉庫・棚対応表には、各倉庫番号及び棚番号に対応して、保管されている災害支援物資の名称、数量、入数(単位数量)、割り当てフラグが登録されている。
【0050】
制御部115は、算出した準備する災害支援物資の名称及び量と、図6の倉庫・棚対応表とを用い、算出した準備する災害支援物資の名称を倉庫・棚対応表で検索し、該当する災害支援物資の数量×入数を算出して、準備する災害支援物資の量から差し引き、割り当て済みを示す割り当てフラグをオンにする(図6では米500袋の割り当てが完了している)。準備する災害支援物資の量が全て割り当てられるまでこの処理を繰り返す。そして、図6の倉庫・棚対応表で割り当てフラグがオンになっている倉庫番号及び棚番号を読み出すことで、準備する災害支援物資がどの倉庫及び棚に保管されているかを示すことができる。
【0051】
ステップS14からはステップS15へ進んで、制御部115は出力部114に算出、決定した各種結果を表示する。図7に、出力部114に表示される画面の一例を示す。この例では、入力された被災地域が「大阪府大阪市中央区」である。記憶部112には、この地域の人口は67000人、6歳未満人口は2000人、高齢者人口は9000人と記憶されている。したがって、災害支援物資としては、毛布が67000−2000=65000枚、乾パンが67000×0.4=26800食、おかゆが9000×0.4=3600食となっている。そして、輸送手段は輸送ヘリ、梱包形態はコンテナとなっている。
【0052】
このように、第1実施形態の災害支援システムによれば、災害が発生した地域名をユーザ(入力部113を操作する人)が入力することで、供給すべき災害支援物資とその量が自動的に決定され、輸送形態も自動的に決定される。したがって、災害支援システムで災害支援物資の管理から輸送までを一元管理することができる。
【0053】
また、この災害支援システムは訓練にも用いることができる。すなわち、災害が発生したと仮定した地域名をユーザ(入力部113を操作する人)が入力することで、供給すべき災害支援物資とその量、輸送形態がわかるので、シミュレーションルーム14で梱包作業や設営作業等の訓練を行うことができる。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態は、コンピュータ11が災害情報センター18から被災した地域等を自動的に受信するものである。図8は、第2実施形態のコンピュータ11の動作を示すフローチャートである。
【0055】
コンピュータ11が待機状態のとき、ステップS20において制御部115は、送受信部111が災害情報センター18から被災情報を受信したか否かを判別する。被災情報は、少なくとも被災地域名及び災害内容(例えば地震の場合、震度と津波情報)を含み、さらに道路状況、国が発表する各種防災情報、ライフラインに関する情報、公共交通機関の運行状況などを含んでいてもよい。被災情報を受信すると、ステップS21へ進んで制御部115は被災情報から少なくとも被災地域及び災害内容を抽出する。
【0056】
そして、ステップS22へ進んで制御部115は記憶部112から災害種別・規模情報を読み出し、受信した災害内容と比較して災害支援物資の供給の要否を判別する。災害種別・規模情報は、予め記憶部112に記憶されており、少なくとも各種災害種別に対して災害支援物資の供給が必要となる災害の規模(大きさ)を含んでいる。よって、制御部115は発生した災害の規模がこの記憶されている規模以上である場合、災害支援物資の供給が必要と判断する。災害種別・規模情報としては、例えば、地震・震度5、津波・大津波、台風・最大風速50m、洪水・床上浸水などとすることができる。
【0057】
ステップS22で災害支援物資の供給が必要であると判別した場合、ステップS23へ進んで制御部115は記憶部112から被災情報の被災地域名に対応した居住関連情報(第1実施形態と同様)を読み出す。
【0058】
ステップS23からはステップS24へ進んで、制御部115は被災地域への輸送のために準備する災害支援物資を算出する。次に、ステップS25へ進んで、制御部115は災害支援物資を輸送する輸送手段を決定する。次に、ステップS26へ進んで、制御部115は出力部114に算出、決定した各種結果を表示する。ステップS23〜S26は第1実施形態のステップS12〜S15と同様の処理であるので詳細な説明は省略する。
【0059】
ステップS26からはステップS27へ進んで、制御部115は最短準備時間を算出する。最短準備時間は最短梱包時間と最短積載時間と承認時間との和である。最短梱包時間は、役割毎の出勤人数を算出するための人員シフト表から当日の準備係の出勤人数を算出し、災害支援物資の名称及び量に応じた梱包時間を当日の準備係の出勤人数で除した値である。最短積載時間は、梱包形態及び梱包数に応じた積載時間を当日の準備係の出勤人数で除した値である。承認時間は、指揮官が出動の承認を行うのに要する時間であり、予め所定値(例えば0.5時間)が記憶部112に記憶されている。
【0060】
人員シフト表は、予め記憶部112に記憶されており、登録されている人員の近日中の出勤予定が登録されたものである。図9に、人員シフト表の一例を示す。人員毎に付された人員コードに対応するように、人員氏名、役割、近日中の出勤・休暇の予定が登録されている。制御部115はこの表から当日の日付の役割毎の出勤人数を算出できる。なお、人員コードは必須の項目ではない。なお、人員シフト表には他に出勤時間、連絡先等を含めてもよい。
【0061】
上記の災害支援物資の名称及び量に応じた梱包時間は、予め記憶部112に記憶されており、災害支援物資毎に決められた梱包に要する想定時間であり、所定数(例えば1)のある災害支援物資を一人で梱包する場合に要する時間である。したがって、準備する災害支援物資それぞれの梱包時間を合計し、この値を梱包に関われる準備係の出勤人数で除した値が最短梱包時間となる。
【0062】
上記の梱包形態及び梱包数に応じた積載時間は、予め記憶部112に記憶されており、その形態で梱包された1つの梱包物を一人で輸送手段に積載するのに要する想定時間であり、梱包形態毎に想定される積載時間が記憶されている。したがって、梱包形態及び梱包数が決定されると、それぞれの梱包形態の積載時間を読み出してそれぞれの梱包数との積を算出し、それら積算した値を合計し、その合計値を積載に関われる準備係の出勤人数で除すれば最短積載時間となる。
【0063】
ステップS27からはステップS28へ進んで、制御部115は最短供給時間を算出する。最短供給時間は最短輸送時間と最短引き渡し時間との和である。最短輸送時間は、輸送経路の距離を使用する輸送手段の平均速度で除した値である。最短引き渡し時間は、梱包形態及び梱包数に応じた引き渡し時間を輸送手段毎の輸送係の出勤人数で除した値である。
【0064】
輸送経路は、予め記憶部112に記憶されている全国の地図情報に災害支援物資備蓄基地10の位置と物資の輸送先である被災地域の位置とを重ね、陸海空それぞれの輸送手段に応じて最適な経路を算出する。これには、一般的なナビゲーション装置の経路案内の機能を制御部115に搭載しておけばよい。輸送経路が決定されると、地図上で輸送経路の距離が算出できる。
【0065】
輸送手段の平均速度は、輸送手段毎の想定される平均速度が予め記憶部112に記憶されている。したがって、輸送手段と輸送経路とが決定されると、使用する輸送手段の平均速度を読み出し、輸送経路の距離を算出し、輸送経路の距離を平均速度で除すれば最短輸送時間を算出できる。
【0066】
上記の梱包形態及び梱包数に応じた引き渡し時間は、予め記憶部112に記憶されており、その形態で梱包された1つの梱包物を一人で輸送手段から積み下ろすのに要する想定時間であり、梱包形態毎に想定される引き渡し時間が記憶されている。したがって、梱包形態及び梱包数が決定されると、それぞれの梱包形態の引き渡し時間を読み出してそれぞれの梱包数との積を算出し、それら積算した値を合計し、その合計値を積み下ろしに関われる輸送手段毎の輸送係の出勤人数で除すれば最短供給時間となる。
【0067】
ステップS28からはステップS29へ進んで、制御部115は出力部114に算出、決定した各種結果を表示する。図10に、出力部114に表示される画面の一例を示す。出力部114には図7の画面に続いて図10の画面が表示される。図10の画面において、時間情報の欄に災害発生日時と最短準備完了日時(最短準備時間)と最短供給開始日時(最短供給時間)とが記されている。災害発生日時は被災情報から抽出すればよい。最短準備完了日時は、ステップS20で被災情報を受信した日時にステップS27で算出した時間を加算して求めたものである。同様に最短供給開始日時も、ステップS20で被災情報を受信した日時にステップS27及びS28で算出した時間を加算して求めたものである。
【0068】
このように、第2実施形態の災害支援システムによれば、被災情報を自動的に受信することで、供給すべき災害支援物資とその量が自動的に決定され、輸送形態も自動的に決定され、最短準備時間及び最短供給時間も自動的に決定される。したがって、災害支援システムで災害支援物資の管理から輸送、引き渡しまでを一元管理することができる。
【0069】
なお、ステップS26を省略し、ステップS29で表示する画面においてステップS26で表示する内容も合わせて表示するようにしてもよい。また、ステップS27〜S29又はステップS28を省略した形態も考えられる。
【0070】
(第3実施形態)
第3実施形態は、災害発生前後の被災地域の衛星画像を利用するものである。図11は、第3実施形態のコンピュータ11の動作を示すフローチャートである。
【0071】
コンピュータ11が待機状態のとき、ステップS30において制御部115は、送受信部111が災害情報センター18から被災情報(第2実施形態と同様)を受信したか否かを判別する。被災情報を受信すると、ステップS31へ進んで制御部115は被災情報から少なくとも被災地域及び災害内容を抽出する。大規模な災害の場合、複数の被災地域の被災情報を受信することになる。
【0072】
そして、ステップS32へ進んで制御部115は、送受信部111が災害監視衛星20から災害発生後の被災地域の衛星画像を受信したか否かを判別する。被災地域が複数である場合はそれぞれの被災地域の衛星画像を受信したか否かを判別する。この衛星画像はコンピュータ11からどの地域の画像が必要かを要求してもよいし、コンピュータ11が要求しなくても災害監視衛星20から自動的に送られてくるようにしてもよい。
【0073】
災害発生後の全ての被災地域の衛星画像を受信すると、ステップS33へ進んで制御部115はそれぞれの被災地域に優先順位を付ける。具体的には、それぞれ被災前後の衛星画像を照合して被災した建物数を算出し、被災した建物数が多い被災地域順に優先順位(1位、2位、3位・・・)を付ける。被災前の衛星画像は予め記憶部112に全国の衛星画像を記憶しておく。建物数は画像解析によって判定すればよく、どのような解析法を用いるかは特に限定はない。なお、被災した建物数が少ない被災地域順に優先順位(1位、2位、3位・・・)を付けるようにしてもよい。
【0074】
そして、ステップS34へ進んで制御部115は、優先順位が1位の被災地域について、記憶部112から災害種別・規模情報(第2実施形態と同様)を読み出し、受信した災害内容と比較して災害支援物資の供給の要否を判別する。
【0075】
ステップS34で災害支援物資の供給が必要であると判別した場合、ステップS35へ進んで制御部115は、記憶部112から優先順位1位の被災地域名に対応した居住関連情報(第1実施形態と同様)を読み出す。
【0076】
ステップS35からはステップS36へ進んで、制御部115は被災地域への輸送のために準備する災害支援物資を算出する。次に、ステップS37へ進んで、制御部115は災害支援物資を輸送する輸送手段を決定する。次に、ステップS38へ進んで、制御部115は出力部114に算出、決定した各種結果を表示する。ステップS35〜S38は第1実施形態のステップS12〜S15と同様の処理であるので詳細な説明は省略する。
【0077】
ステップS38からはステップS39へ進んで、制御部115は優先順位が1位の被災地域において、どの避難場所に災害支援物資を輸送するかを決めるために避難場所の順位を決定する。具体的には、地域毎の避難場所及びその優先順位を記した避難場所情報を用い、該当する被災地域の避難場所の中から記された優先順位にしたがって輸送する避難場所の順位を決定する。なお、災害発生後の衛星画像で優先順位が1位の避難場所が崩壊していれば、2位の避難場所を1位に繰り上げる。
【0078】
図12は、避難場所情報の一例である。避難場所の優先順位の決定の方法は、まず種別を優先する。優先順位が高い順に避難所、一次避難所である。そして、種別が同じ場合は次に収容人数の多い順に順位を付ける。図12では鳥取市用瀬町用瀬の避難場所を示しており、避難場所の優先順位は1位が用瀬地区公民館、2位が用瀬小学校となっている。
【0079】
ステップS39からはステップS40へ進んで、制御部115は出力部114に算出、決定した各種結果を表示する。図13に、出力部114に表示される画面の一例を示す。出力部114には図7の画面に続いて図13の画面が表示される。図13の画面において、優先順位の被災地域名の欄に、被災地域の優先順位(1位、2位、3位)が記されている。また、優先順位の避難場所の欄に、優先順位が1位の被災地域である大阪市中央区における避難場所の優先順位(1位、2位、3位)が記されている。
【0080】
このように、第3実施形態の災害支援システムによれば、供給すべき災害支援物資とその量が自動的に決定され、輸送形態も自動的に決定され、さらに災害発生前後の被災地域の衛星画像を利用することで、災害支援物資の輸送先の優先順位を決定することができる。したがって、大規模な災害が発生した場合でも、災害支援システムで災害支援物資の管理から輸送までを一元管理することができる。
【0081】
なお、ステップS38を省略し、ステップS40で表示する画面においてステップS38で表示する内容も合わせて表示するようにしてもよい。なお、優先順位が2位以下の被災地域についても順次ステップS34以下の処理を行って順に災害支援物資を供給することが望ましい。
【0082】
(第4実施形態)
第4実施形態は、避難場所までの輸送経路を示すことができるものである。図14は、第4実施形態のコンピュータ11の動作を示すフローチャートである。
【0083】
ステップS50〜S56までは第2実施形態のステップS20〜S26と同様の処理であるので詳細な説明は省略する。ステップS56からはステップS57へ進んで、制御部115は、送受信部111が気象情報センター19から気象情報を受信したか否かを判別する。気象情報はコンピュータ11からどの地域の情報が必要かを要求してもよいし、コンピュータ11が要求しなくても災害監視衛星20から自動的に送られてくるようにしてもよい。
【0084】
気象情報は、少なくとも各種警報を含み、さらに各種注意報、天気予報などを含んでいてもよい。被災情報を受信すると、ステップS58へ進んで制御部115は輸送経路を算出する。ここでの輸送経路の算出法は、第2実施形態のステップS28の算出方法において、気象情報及び危険場所情報を輸送手段に応じて加味する。危険場所情報は、地図上の高い山、高圧電線、高層ビルなど輸送の際に注意しなければならない場所であり、予め記憶部112に記憶されている。輸送経路は災害支援物資備蓄基地10から被災地域又は避難場所までの経路を算出すればよい。
【0085】
例えば、輸送ヘリで輸送する場合、気象情報として強風警報が出ている地域を避けた経路とし、経路上に危険場所がある場合は、経路を表示する際に危険場所も表示して注意を促す。この輸送経路の算出法は第2実施形態のステップS28に適用してもよい。
【0086】
ステップS58からはステップS59へ進んで、制御部115は輸送先の避難場所の3次元画像及び設営配置画像を記憶部112から読み出す。これらの画像は予め記憶部112に記憶されている。設営配置画像とは、避難場所におけるテント、休憩所、集会所、仮設診療所、炊き出し・調理場、風呂、簡易トイレ、ヘリポート、パーテーション、通信設備などの設営配置情報を画像で記したものである。
【0087】
ステップS59からはステップS60へ進んで、制御部115は出力部114に算出、決定、読み出した各種結果を表示する。図15に、出力部114に表示される画面の一例を示す。出力部114には図7の画面に続いて図15の画面が表示される。図15の画面において、輸送経路の欄に輸送経路上の危険場所と輸送経路の地図とが記されている。また、輸送先の避難場所の3次元画像(不図示)と、設営配置画像(不図示)とが記されている。
【0088】
なお、設営配置画像は輸送人員が所持するタブレットPC等の携帯端末に表示すれば、輸送人員がいつでも確認することができ、避難場所での設営をスムーズに行うことができる。
【0089】
このように、第4実施形態の災害支援システムによれば、供給すべき災害支援物資とその量が自動的に決定され、輸送形態も自動的に決定され、さらに避難場所までの輸送経路や設営配置を示すことができる。したがって、災害支援システムで災害支援物資の管理から輸送、設営までを一元管理することができる。
【0090】
なお、気象情報及び危険場所情報は輸送手段を決定する際に加味してもよい。例えば、被災地域に洪水警報が出ていれば陸上輸送は無理なので輸送ヘリに決定するなどである。
【0091】
なお、上記の各実施形態において、端末装置16、17が各自治体に設けられた非常ボタンである場合は、この非常ボタンが押されると、自治体(自治体の首長)から直接災害支援システムに支援要請することになるので、国を通らずに迅速に対応できる。図16に、非常ボタンが押された場合にコンピュータ11の出力部114に表示される画面の一例を示す。画面の受信状態の欄が「災害発生」を示しており、大阪市中央区長からの支援要請であることがわかる。
【0092】
なお、上記の各実施形態において、輸送手段決定の際、輸送ヘリは夜間使えないとう条件を加えてもよい。この条件を加えると、輸送予定時刻が夜間になる場合には輸送ヘリを省いて輸送手段を決定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、災害支援物資を備蓄基地で保管・管理し、災害発生時に被災地に迅速に災害支援物資を供給することを支援する災害支援システムに利用することができる。また、最短到着日時を明らかにすることは、特に被災地側の首長に対して、現地の限られたリソース(人、物、時間等)の配分を決定する上で大変有益な情報となる。
【符号の説明】
【0094】
10 災害支援物資備蓄基地
11 災害支援システム
12、13 倉庫
14 シミュレーションルーム
15 電気通信回線
16、17 端末装置
18 災害情報センター
19 気象情報センター
20 災害監視衛星
111 送受信部
112 記憶部
113 入力部
114 出力部
115 制御部
121〜123、131〜133 棚
161、171 入力部
162、172 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域毎の人口を含む居住関連情報と、各種災害支援物資の名称及び量と、災害支援物資の輸送量に応じた輸送手段とを記憶した記憶部と、
ユーザの操作により指示が入力される入力部と、
準備する災害支援物資の名称及び量と、輸送手段とを決定する制御部と、
前記制御部の指示により各種情報を出力する出力部と、を備え、
前記入力部で被災地域の地域名が入力された場合、前記制御部は、該地域名に対応した前記居住関連情報の各項目の値を所定の式に代入して準備する各種災害支援物資の名称及び量を決定し、準備する各種災害支援物資の名称及び量から輸送手段を決定することを特徴とする災害支援システム。
【請求項2】
前記記憶部は、災害支援物資の名称に応じた単位数量当たりの大きさ及び重さと、各種梱包形態に収容可能な大きさ及び重さと、各種梱包形態に応じた輸送手段の候補及び積載可能梱包数と、各輸送手段の優先順位と、各輸送手段の稼働可能台数とを記憶し、
前記制御部は、
準備する各種災害支援物資の名称及び量と、前記災害支援物資の名称に応じた単位数量当たりの大きさ及び重さと、前記各種梱包形態に収容可能な大きさ及び重さとから梱包形態と梱包数とを算出し、
算出した梱包形態と、各種梱包形態に応じた輸送手段の候補とから輸送手段の候補を算出し、
算出した梱包数と、算出した輸送手段の候補と、前記各輸送手段の優先順位と、前記各輸送手段の稼働可能台数とから優先順位の高い順に輸送手段を決定することを特徴とする請求項1記載の災害支援システム。
【請求項3】
被災地域及び災害内容を含む被災情報を受信する被災情報受信部を備え、
前記被災情報を受信した場合、前記制御部は、該地域名に対応した前記居住関連情報の各項目の値を所定の式に代入して準備する各種災害支援物資の名称及び量を決定し、準備する各種災害支援物資の名称及び量から輸送手段を決定することを特徴とする請求項1又は2記載の災害支援システム。
【請求項4】
前記記憶部は、役割毎の出勤人数を算出するための人員シフト表と、災害支援物資の名称及び量に応じた梱包時間と、梱包形態及び梱包数に応じた積載時間と、出動の承認に要する承認時間とを記憶し、
前記制御部は、前記人員シフト表から当日の準備係の出勤人数を算出し、前記梱包時間を前記出勤人数で除して最短梱包時間を算出し、前記積載時間を前記出勤人数で除して最短積載時間を算出し、前記最短梱包時間と前記最短積載時間と前記承認時間との和である最短準備時間を求めることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の災害支援システム。
【請求項5】
前記記憶部は、地図情報と、前記各輸送手段の平均速度と、前記梱包形態及び梱包数に応じた引き渡し時間とを記憶し、
前記制御部は、前記地図情報を用いて被災地域までの輸送経路を算出し、該輸送経路の距離を使用する輸送手段の平均速度で除して最短輸送時間を算出し、前記引き渡し時間を前記輸送手段毎の輸送係の出勤人数で除して最短引き渡し時間を算出し、前記最短輸送時間と前記最短引き渡し時間との和である最短供給時間を求めることを特徴とする請求項4記載の災害支援システム。
【請求項6】
災害発生後の被災地域の衛星画像を受信する衛星画像受信部を備え、
前記記憶部は、災害発生前の各地域の衛星画像を記憶し、
複数の被災地域について災害発生後の衛星画像を受信した場合、前記制御部は、それぞれ被災前後の衛星画像を照合して被災した建物数を算出し、被災した建物数が多い又は少ない被災地域順に優先順位を付けることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の災害支援システム。
【請求項7】
前記記憶部は、地域毎の避難場所及びその優先順位を記憶し、
前記制御部は、該優先順位にしたがって輸送する避難場所の順位を決定することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の災害支援システム。
【請求項8】
気象情報を受信する気象情報受信部を備え、
前記記憶部は、地図情報と、輸送経路として危険な場所を示す危険場所情報とを記憶し、
気象情報及び被災情報を受信した場合、前記制御部は、前記地図情報を用いて被災地域までの輸送経路を算出する際、前記気象情報及び危険場所情報を加味することを特徴とする請求項3記載の災害支援システム。
【請求項9】
前記記憶部は、地域毎の避難場所を記憶し、
前記制御部は、被災地域の避難場所までの輸送経路を算出することを特徴とする請求項8記載の災害支援システム。
【請求項10】
前記記憶部は、前記避難場所の3次元画像及び設営配置画像を記憶し、
前記制御部は、輸送先の避難場所の3次元画像及び設営配置画像を前記出力部に出力させることを特徴とする請求項9記載の災害支援システム。
【請求項11】
前記入力部が電気通信回線を介して前記制御部の遠隔地に設置され、
前記入力部で被災地域の地域名が入力されることは、前記入力部の所定ボタンが押下されることであることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の災害支援システム。
【請求項12】
前記電気通信回線が専用回線であることを特徴とする請求項11記載の災害支援システム。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかに記載の災害支援システムを稼働させる災害支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−173836(P2012−173836A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32820(P2011−32820)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【特許番号】特許第4787380号(P4787380)
【特許公報発行日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(505312464)
【Fターム(参考)】