説明

炊飯器

【課題】保温中のご飯の劣化(黄変、保温臭)を抑えるようにした炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】水あるいは薬剤7を入れるための容器6と、水あるいは薬剤7を噴霧するための霧化装置10とを備え、保温中のご飯4に霧化装置10によりミストを噴霧するようにしたものである。これによって、霧化装置10より噴霧されるミストがご飯4の劣化を抑え、ある程度長時間保温しても、風合いの損ないにくい状態での保温を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯後にご飯を一定の温度で数時間保温する機能を有している炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保温中のご飯の劣化を防止するために水を保温中の一定時間に噴射するもの(例えば、特許文献1参照)、あるいは蒸気を噴射するもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【特許文献1】特開平5−56844号公報
【特許文献2】特開平7−39454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1参照の従来の構成では、ご飯の水分量は上がりご飯の乾燥が抑えられることによって、ある程度黄変は抑えられるが、保温臭までは完全には抑えられない。さらに、前記特許文献2参照の従来の構成では、スチームにより水分量の補給は可能であり乾燥は抑えられるが、過剰な熱がご飯に作用し、逆に黄変を助長するものであった。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、保温中のご飯の劣化(黄変、保温臭)を抑えるようにした炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、水あるいは薬剤を入れるための容器と、前記水あるいは薬剤を噴霧するための霧化装置とを備え、保温中のご飯に霧化装置によりミストを噴霧するようにしたものである。
【0006】
これによって、霧化装置より噴霧されるミストがご飯の劣化を抑え、ある程度長時間保温しても、風合いの損ないにくい状態での保温を実現できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炊飯器は、保温中のご飯の劣化(黄変、保温臭)を抑え、風合いの損ないにくい状態での保温を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、水あるいは薬剤を入れるための容器と、前記水あるいは薬剤を噴霧するための霧化装置とを備え、保温中のご飯に霧化装置によりミストを噴霧するようにした炊飯器とすることにより、霧化装置より噴霧されるミストがご飯の劣化が抑え、ある程度長時間保温しても、風合いの損ないにくい状態での保温を実現できる。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明において、水あるいは薬剤を噴霧するための霧化装置が超音波霧化装置であることにより、ミスト粒径を小さくでき、さらに溶液状態のものであれば(ただし粘度があまり大きくない)噴霧することが可能であり、コンパクトに機器を設計することができる。
【0010】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、水あるいは薬剤を入れるための容器内に、液体を電気分解するための電気分解装置を装備したことにより、酸性溶液とアルカリ性溶液を生成することができ、このミストを状況に応じてご飯に噴霧することにより、効果的にご飯の劣化を抑えることができる。
【0011】
第4の発明は、特に、第3の発明において、電気分解により生成された酸性溶液とアルカリ性溶液を切り替えて霧化装置によりミストを噴霧するようにしたことにより、切り替え操作でより効果的にご飯の劣化を抑制することができる。
【0012】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、水あるいは薬剤を入れる容器を加温するようにしたことにより、ミストとして噴霧した際に、保温中のご飯が冷やされることがなくご飯の風合いを損なわないようにすることができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示している。この炊飯器は炊飯後にご飯を一定の温度で数時間保温する機能を有しているものである。
【0015】
図に示すように、本実施の形態における炊飯器は、炊飯器本体1にご飯4が入った内釜5がセットされており、内釜5の下部にある誘導加熱コイルなどの加熱手段3で直接内釜5を加熱して炊飯するものである。蓋部2には、炊飯器本体1の側部に取り付けられた容器6に水または薬剤7が入れられており、ポンプ8によって水または薬剤7はチューブ9を通って蓋部2に導かれ、内釜5に向かって、水または薬剤7を霧化するための霧化装置10に導かれる。ここで、水または薬剤7は霧化されてミスト11となって、保温中のご飯4に均一に拡散噴霧されるものである。
【0016】
霧化装置10は、ポンプ8によって加えられた圧力によって微細化されるスプレー式のものである。なお、霧化装置10を超音波霧化装置とすることで、ミスト11がさらに微細化し、ご飯の隙間に入って行きやすくなるために保温中のご飯に均一に行き届けることができるものである。容器6に入れる薬剤として、弱酸性を呈し、食品衛生上問題のないものを選択するものである。例えば、食酢を希釈した水溶液、希クエン酸水溶液などご飯の食味に影響を与えない濃度を調整するものである。
【0017】
ご飯を保温しておくと黄変したり保温臭がしたりする要因一つとして、一般にメイラード反応(アミノ酸と還元糖が反応)が大きく寄与していると言われている。この反応は、水分、温度、pHなどによる因子が強く作用しており、水分、温度、pHをコントロールすることによって、ある程度は遅らせることが可能なものである。
【0018】
そこで、本実施の形態では、保温時に容器6から非常に弱い酸性の薬剤を噴霧しミストを供給することで、pHを弱酸性側にコントロールし黄変や保温臭を抑えるように作用させているものである。
【0019】
なお、ミストの供給は、図示していないが、炊飯器に装備した制御手段により制御されるものであり、炊飯後にご飯に自動供給されるものである。また、供給のタイミング、供給時間、供給量なども自動的に制御されるようになっている。
【0020】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における炊飯器のミスト供給の要部を示している。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0021】
図に示すように、本実施の形態における炊飯器は、容器6内に、液体を電気分解するための電気分解装置を装備したものである。すなわち、容器6内の水または薬剤7は、炊飯器本体1の別の部分に設置されたDC電源13により直流電圧を加えられる浸漬された電極12によって、電気分解される。容器6内は隔膜15によって隔てられており、電気分解によりそれぞれの部屋に酸性溶液とアルカリ性溶液が生成されるものである。生成された酸性溶液あるいはアルカリ性溶液は、それぞれ目的に応じて、切り替えバルブ14によって切り替えることが可能であり、ポンプ8により霧化装置10まで送り込まれ、そこからミスト11として噴霧される。
【0022】
なお、ご飯の保温中の比較的早い段階で所定時間、酸性のミスト11を供給すると、ご飯劣化の一要因である黄変を抑えることができる。
【0023】
このように、電気分解により生成された酸性溶液とアルカリ性溶液のミストを状況に応じてご飯に噴霧することにより、効果的にご飯の劣化を抑えることができる。これは、切り替えバルブの切り替え操作で行うことができ、より効果的にご飯の劣化を抑制することができる。
【0024】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における炊飯器を示している。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0025】
図に示すように、本実施の形態における炊飯器は、水または薬剤7が入った容器6を加熱し、水または薬液7を所定の温度まで加熱できる加熱用ヒータ16を有しているもので、容器6を加温するようにしたものである。
【0026】
ここで、所定温度に加熱された水または薬剤7は、ポンプ8によって、霧化装置10に送られミスト11として、炊飯器本体1に備えられた内釜5のご飯4に噴霧されるものである。
【0027】
このように、保温中のご飯に噴霧されるミストは加温されているため、保温中のご飯が冷やされることがなくご飯の風合いを損なわないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、保温中のご飯の劣化(黄変、保温臭)を抑え、風合いの損ないにくい状態での保温を実現することができるので、一般家庭だけでなく業務用の炊飯器にも幅広く使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】本発明の実施の形態2における炊飯器のミスト噴霧構成部を示した断面図
【図3】本発明の実施の形態3における炊飯器の断面図
【符号の説明】
【0030】
1 炊飯器本体
2 蓋部
3 加熱手段
4 ご飯
5 内釜
6 容器
7 水または薬剤
10 霧化装置
11 ミスト
12 電極
14 切り替えバルブ
15 隔膜
16 加熱用ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水あるいは薬剤を入れるための容器と、前記水あるいは薬剤を噴霧するための霧化装置とを備え、保温中のご飯に霧化装置によりミストを噴霧するようにした炊飯器。
【請求項2】
水あるいは薬剤を噴霧するための霧化装置が超音波霧化装置である請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
水あるいは薬剤を入れるための容器内に、液体を電気分解するための電気分解装置を装備した請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
電気分解により生成された酸性溶液とアルカリ性溶液を切り替えて霧化装置によりミストを噴霧するようにした請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
水あるいは薬剤を入れる容器を加温するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−209383(P2007−209383A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29361(P2006−29361)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】