説明

炊飯器

【課題】炊飯器の蒸気発生用の貯水容器を内フタ側に装着することにより炊飯時の内圧を受けない位置に配置して、取付け・取外しのための荷重が少なく作業性が良く、必要な蒸気量が得られる炊飯器とする。
【解決手段】本体1に着脱自在に収納される内鍋2と、内鍋2を加熱する加熱手段3と、内鍋2の開口を覆う内フタ5が取付けられたフタ4を備え、該フタ4には前記内フタ5を介して内鍋2を加熱するフタ加熱板11と、このフタ加熱板11を加熱するフタヒータ28を有している炊飯器において、前記内フタ5にフタ加熱板11側に突出させた貯水容器29の取付け部30を設け、該取付け部30の内鍋2側に貯水容器29を着脱自在に取付けるとともに該取付け部30はフタ加熱板11に近接させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気を利用し、保温性を良くした炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器内に貯水容器を取付け・取外し自在に備え、炊飯およびむらし工程等に貯水容器内の水を沸騰させて蒸気を内鍋内に供給し、炊き上りのムラを改良した炊飯器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示すものは、内鍋の上部を加熱する蓋加熱板に蒸気発生手段を設け、内鍋および加熱された飯からの放熱を受けて蒸気を発生させるようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−304674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている炊飯器の貯水容器は、内鍋内の内圧が直接かかる部分を取り外しできるようにしているため、フタと貯水容器の気密のためのシールを高圧に耐えられるようにする必要があり、内鍋内を高圧にしようとするほど取外しのための荷重が大きくなり、着脱の作業性が悪くなる問題があった。
【0006】
また、蒸気発生手段は間接的に加熱されて蒸気を発生させるので、十分な蒸気を得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は係る問題点を解決するため請求項1の炊飯器では、本体に着脱自在に収納される内鍋と、内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋の開口を覆う内フタが取付けられたフタを備え、該フタには前記内フタを介して内鍋を加熱するフタ加熱板と、このフタ加熱板を加熱するフタ加熱手段を有している炊飯器において、前記内フタにフタ加熱板側に突出させた貯水容器の取付け部を設け、該取付け部の内鍋側に貯水容器を着脱自在に取付けるとともに該取付け部はフタ加熱板に近接させるようにしたものである。
【0008】
また、請求項2では、内フタには貯水容器を取付ける複数のピンを有するとともに、これらピンは貯水容器取付け部の径を異なるようにしたものである。
【0009】
また、請求項3では、前記ピンの内フタに固定する部分には凹部を設け、この凹部にOリングを挟み込んで固定したものである。
【0010】
また、請求項4では、前記ピンが内フタに当接する部分にはOリングの入る凹部とこの内側に座部とを設けたものである。
【0011】
また、請求項5では、貯水容器は内フタに取付けるためのホルダを有し、このホルダの側面には厚さ方向に複数のリブを設けているものである。
【0012】
また、請求項6では、貯水容器を回転させて内フタに取付けるようにしたものにおいて、貯水容器の注水口は内フタに取付けられたときに真上になる位置から、内フタに取付けるときに回転させる方向に回転させた位置に設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貯水容器の取付け場所を同じ圧力内にある内フタに設けているので、貯水容器を内フタに取付ける場所のシールが不要となり、取付け取外しのための荷重が少なく組み立ての作業性が容易であるとともに、使い勝手が向上するものである。
【0014】
また、内フタの加熱手段を利用して貯水容器を加熱するようにしたので、専用の加熱手段を設けることなく簡単な構成で、必要な蒸気の供給を可能にすることができる。
【0015】
また、貯水容器を取付けるピンが内フタに当接する部分には、座部を設けてOリングを挟み込んで加締めているので、内フタが変形することなくOリングを取付けできるので圧力漏れの恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例について図を用いて説明する。図1は本発明の炊飯器の側面から見た外観図、図2は同概略断面図、図3は貯水容器取付け部の要部構成を示す断面図、図4は同炊飯器の内フタの貯水容器の取付部を説明する斜視図、図5は同炊飯器の貯水容器を開けた状態の概略斜視図、図6は同炊飯器の貯水容器の要部断面図、図7は同炊飯器のピンの固定部の要部断面図、図8は同炊飯器の貯水容器を取付けた状態の要部断面図である。
【0017】
本体1には内鍋2が着脱自在に挿入され、本体1の下部と側面部には内鍋2を加熱するための加熱手段10が設けられている。本体1の上面には内鍋2の上部開口部を覆う内フタ5を備えたフタ4が開閉自在に設けられ、内フタ5で内鍋2の上部開口を閉塞して密閉している。
【0018】
フタ4の内フタ5と対向する面にはフタ加熱板11があり、内フタ5を介して内鍋2内を加熱するようにしている。そして、フタ加熱手段であるフタヒータ28がフタ加熱板
11の内側に設けられてフタ加熱板11を加熱している。
【0019】
内フタ5と内鍋2とをシールするためのパッキン6が、内フタ5に一体で固定されている。さらに、内フタ5とフタ加熱板11とをシールするパッキン6bがフタ加熱板11に一体に設けられている。
【0020】
内フタ5は炊飯使用後には必ず水洗いするのでフタ4から取外しが自在で、かつ、容易に取付けできる構造としている。
【0021】
本体1の上面には操作,表示を行うためのパネル7が取付けられている。パネル7には、図示していないが炊飯の開始や停止を行う(切)と(炊飯)の操作ボタンや、炊飯のメニューを選択する操作ボタン,設定内容や炊飯の進行状況などを表示する表示部などを配置している。
【0022】
また、本体1には前後に回動可能なハンドル52が取付けられており、本体1を自由に持ち運ぶことができる。
【0023】
フタ4には、内鍋2内の密閉空間から外部への唯一の蒸気の出口となる蒸気通路23が設けられ、蒸気通路23には調圧手段22が設けられている。
【0024】
調圧手段22は、蒸気通路23を狭くして形成した孔24と、この孔24を塞ぐ鋼球
25によって構成されている。そして内鍋2内部の蒸気圧が所定圧力より高まると、その過剰な蒸気圧により鋼球25が持ち上げられて孔24から圧力が抜け、圧力が所定の圧力より低くなると再び鋼球25が孔24を塞いで蒸気圧が高まる、この繰り返しで内鍋2と内フタ5内の圧力が一定圧力に調整される。
【0025】
また、内鍋2の内圧を大気圧にするために開放手段としてソレノイド26が設けられている。通常、すなわち圧力をかけない時はソレノイド26により鋼球25を孔24の位置からずらしている。
【0026】
蒸気通路23には沸騰検知手段27が設けられており、蒸気通路23を通る蒸気によって温められる温度で蒸気を検知する。本体1には制御部20が設けられ、この制御部20には沸騰検知手段27の沸騰検知情報が入力され、加熱手段10及びソレノイド26の動作が制御される。
【0027】
内フタ4には貯水容器29を取付けるための取付部30が設けられている。この取付部30は、フタ加熱板11側に突出させて内鍋2側が低くなった形状になっており、取付部30の内鍋2側に貯水容器29を取付けている。この取付部30の周囲には、フタ4を開けたときに上下方向になる位置に、貯水容器29,取付け用のピン33,34が固定されている。このピン33,34と貯水容器29のホルダ35に設けられている取付溝35a,35bとが嵌合して、貯水容器29を内フタ5に着脱自在に固定している。
【0028】
また、取付部30の高さは、内フタ5をフタ4に取付けたときにフタ加熱板11とほぼ接する高さに設定してある。これにより、貯水容器29は内鍋2から加熱されるだけでなくフタヒータ28によっても加熱されることになる。
【0029】
また、前記ピン33と34がホルダ35の取付溝35a,35bと嵌合する部分の径を異なる大きさとしている。これは、貯水容器29を内フタ5に取付けるときに水漏れすることがないように確実に取付けるために、逆付けできないようにしているためである。なお、取付溝35a,35bもピン33,34の径に対応するように溝の大きさを異なる大きさにしている。
【0030】
貯水容器29は、水を貯水する内鍋2側の上ケース29aと内フタ5側の下ケース29bおよびこれらを持ち運び内フタ5に取付けるためのホルダ35とホルダB36とで構成している。そして、上ケース29aがホルダB36に固定され、下ケース29bがホルダ
35に固定されている。さらに、ホルダ35とホルダB36が嵌合して貯水容器29を構成している。
【0031】
ホルダ35の側壁部35aの内側にはホルダB36と嵌合する取付溝35bがあり、ホルダB36の外周部にはホルダ35の取付溝35bに対応する結合用の凸部36aがある。ホルダB36の凸部36aをホルダ35の取付溝35bに合わせ、回転させると凸部
36aと取付溝35aが嵌合して、パッキン37をホルダB36と下ケース29bのフランジとの間に挟み込んで締め付けられ、水漏れしない状態で貯水容器29が構成される。
【0032】
このとき、上ケース29aと下ケース29bのフランジ同士が直接接触するようになるので、フタ4を閉めたときに水が貯留される下ケース29bにも上ケース29aを介してフタ加熱板11からの熱伝導があり、効率よく蒸気を発生させることができる。
【0033】
下ケース29bは底面の一部が一段高くなっており、この部分に蒸気噴出と注水をかねた注水口38が設けられている。この注水口38から必要量の水を入れる。注水口38の近傍にある小穴38aは、水を入れるときに貯水容器29内の空気が抜けるようにして水が入りやすくするものである。
【0034】
また、注水口38は、ホルダ35の取付溝35aと取付溝35bの前記ピン33,34に対応するを位置を結んだ直線上でなく、内フタ5に取付けるときに回転させる方向に回転させた位置に設けている。これにより、取付けるために貯水容器29の取付溝35a,35bをピン33,34に合わせたときに注水口38が傾いた位置になって、貯水容器
29内の水がこぼれてしまうのを防止することができる。
【0035】
ここで、貯水容器29を内フタ5に取付けるピン33,34の固定部の構造について、ピン33の部分を示す図6により説明する。ピン34を固定している部分も同様の構造であり、説明は省略する。
【0036】
貯水容器29を取付ける部分を、内フタ5とフタ加熱板11との間をシールしているパッキン6bの内側に入れようとすると、パッキン6bが大きくなりすぎて十分なシール性が得られない恐れがある。このため、貯水容器29を取付ける部分はパッキン6bの外側に設けられるので、内フタ5を貫通して取付けられるピン33,34の部分は圧力漏れのない構造にする必要がある。
【0037】
本実施例では、ピン33はOリング41を挟み込んで内フタ5に加締めてシールするようにしているが、ピン33が内フタ5に当接する部分にOリング41が入る凹部33bと座部33cとを設けて、この凹部33bにOリング41を挟み込んで内フタ5に加締めるようにしている。
【0038】
ここで、座部33cを設けて加締めているのは、座部33cを設けない構造だとピン
33を加締めたときに内フタ5の端部5aが変形してしまい、Oリング41を挟み込んでも気密を保つことができないためである。座部33cがあると加締めたときに端部5aが座部33cによって支えられて変形せず、Oリング41がシール部材として十分な機能を発揮することができる。
【0039】
次に実際の使用手順に添って動作を説明する。
【0040】
使用者は内鍋2に所要量の研いだお米と適量の水を入れ、本体1に挿入する。また、貯水容器29に所要量の水を入れ、内フタ5のピン33,34に嵌合させて取付け、フタ4を閉める。
【0041】
次にパネル7にある(炊飯)ボタン(図示せず)を操作すると、制御部20により炊飯が開始され、制御部20は加熱手段3を動作させ、内鍋2を加熱する。
【0042】
このときは、ソレノイド26により調圧手段22の鋼球25が孔24を塞がないようにすることで、内鍋2内部の圧力が高まらないようにしている。
【0043】
美味に炊き上げるための加熱制御が制御部20で行われ、やがて内鍋2内部が沸騰点に近づいてくると蒸気が孔24から蒸気通路23を経てフタ4の外に放出される。
【0044】
この過程で沸騰検知手段27が温められ、温度が上昇する。そして、98℃を超えて沸騰まで至ると放出蒸気が増すので、沸騰検知手段27の温度が一気に上がり、制御部20はこの温度により沸騰と判断し、ソレノイド26を調圧手段22が有効になる側に動作させる。これは、制御部20によりソレノイド26に通電されることで、鋼球25が孔24を塞ぐ位置に移動し、調圧手段が有効になる。
【0045】
内鍋2内部では、発生する蒸気の出口が塞がれるため、蒸気圧が高まり、沸点が上昇する。やがて蒸気圧が鋼球25を持ち上げるレベルに達すると、孔24と鋼球25の隙間から蒸気が抜け、これを小刻みに繰り返すことにより一定の圧力に調整される。
【0046】
高い圧力を加え続けると、その高い浸透性のため米が煮崩れるため、再び、ソレノイド26が調圧手段22の鋼球25を押して孔24が開放したままの状態に戻し、調圧手段
22が無効になるようにする。
【0047】
制御部20は、加熱手段3による加熱を続けるので、内鍋2内部は大気圧での沸騰
(100℃)を継続(沸騰維持の工程)し、やがて内鍋2内部の水を米が全て吸ってなくなる。制御部20はこれを判断すると、加熱を弱め、むらしの工程に移行する。一定時間蒸らすと炊飯が完了し、保温の工程に移行する。
【0048】
保温の工程では米の温度を70〜80℃に維持するため、加熱手段3を制御するとともにフタヒータ28を通電させている。フタヒータ28は発熱量が少ないため、内フタ5の温度が上がるのに時間を要するので沸騰維持の段階で通電して、内フタ5の温度を上げて結露水がつかないようにしている。
【0049】
内フタ5に取付けられている貯水容器29の水温は、むらし工程の直後は炊飯の水温とほぼ同じで推移しているが、本実施例では貯水容器29の取付部30をフタ加熱板11に近接して配置しているので、保温工程ではフタヒータ28からの熱により70〜95℃に維持することができる。そして貯水容器29内で発生した蒸気が注水口38から内鍋内に供給される。
【0050】
このとき、フタヒータ28の配列をフタ4内で均等にするのではなく、貯水容器29に対向する部分の電力密度を大きくするなどの調整をすることで必要な蒸発量が得られるように調整するのが望ましい。
【0051】
これにより、保温工程におけるご飯の水分が無くなり硬くなるのを防止できるとともに、長時間の保温に対しても炊き立てに近い状態のご飯を提供することができる。また、再加熱における水分不足に対しても同様に改善することができる。
【0052】
なお、むらしの工程では水分は不要なので、95℃以上で蒸気の供給を遮断しそれ以下のときは供給する手段を使用すると、貯水容器29の大きさを小さくすることができる。
【0053】
なお、貯水容器29は、ホルダB36を回転させれば開けることができるので、内部を簡単に清掃することができる。このとき、ホルダ35およびホルダB36の側面には、厚さ方向に複数のリブ35f,36bを設けているので、これが滑り止めとなって、炊飯器を使用直後で貯水容器29が多少濡れているときでも、内フタ5からの取外しや貯水容器29の開閉を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例の炊飯器の側面から見た外観図である。
【図2】同炊飯器の概略断面図である。
【図3】同炊飯器の貯水容器取付け部の要部構成を示す断面図である。
【図4】同炊飯器の内フタの貯水容器の取付部を説明する斜視図である。
【図5】同炊飯器の貯水容器を開けた状態の概略斜視図である。
【図6】同炊飯器の貯水容器の要部断面図である。
【図7】同炊飯器のピンの固定部の要部断面図である。
【図8】同炊飯器の貯水容器を取付けた状態の要部断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…本体、2…内鍋、3,10…加熱手段、4…フタ、5…内フタ、11…フタ加熱板、20…制御部、28…フタヒータ、29…貯水容器、30…取付部、33,34…ピン、33c…座部、35…ホルダ、38…注水口、40…Oリング。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に着脱自在に収納される内鍋と、内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋の開口を覆う内フタが取付けられたフタを備え、該フタには前記内フタを介して内鍋を加熱するフタ加熱板と、このフタ加熱板を加熱するフタ加熱手段を有している炊飯器において、前記内フタにフタ加熱板側に突出させた貯水容器の取付け部を設け、該取付け部の内鍋側に貯水容器を着脱自在に取付けるとともに該取付け部はフタ加熱板に近接させたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
内フタには貯水容器を取付ける複数のピンを有するとともに、これらピンは貯水容器取付け部の径を異なるものであることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記ピンの内フタに固定する部分には凹部を設け、この凹部にOリングを挟み込んで固定したことを特徴とする請求項2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記ピンが内フタに当接する部分にはOリングの入る凹部とこの内側に座部とを設けたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の炊飯器。
【請求項5】
貯水容器は内フタに取付けるためのホルダを有し、このホルダの側面には厚さ方向に複数のリブを設けていることを特徴とする請求項1から請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
貯水容器を回転させて内フタに取付けるようにしたものにおいて、貯水容器の注水口は内フタに取付けられたときに真上になる位置から、内フタに取付けるときに回転させる方向に回転させた位置に設けていることを特徴とする請求項1から請求項5記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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