説明

炊飯器

【課題】鍋内に高温蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザに余分な作業を強いることがない炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯器は、上面が開口した本体1と、本体1内に着脱自在に収納される鍋2と、本体1を開閉自在に覆う蓋3と、鍋2を加熱する鍋加熱手段4と、一端から鍋2内で炊飯中に発生する蒸気を取り込み、他端から前記蒸気を鍋2内に投入する蒸気経路54と、蒸気経路54において前記蒸気を加熱するヒータ55と、蒸気経路54において前記蒸気の流れを発生させるためのファン56とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な家庭用の炊飯器においては、鍋底部に配置した、鍋内の米と水を加熱するための鍋加熱手段が主な加熱手段である。ご飯をおいしく炊くためには、米の澱粉を十分に糊化させることが重要である。特に、追い炊き時に高温で米を加熱することで澱粉の糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。しかし、追い炊き時には水がほぼ無くなった状態であるため、鍋加熱手段による加熱を継続すると、鍋底付近のご飯が焦げてしまうため、加熱を弱めざるを得なかった。
【0003】
特許文献1に開示された従来例の炊飯器は、鍋加熱手段による加熱に加えて、鍋上方から蒸気を鍋内に噴射し米飯及び水の加熱を行う。図6を用いて、従来例の炊飯器を説明する。図6は従来例の炊飯器の断面図である。図6において、901は炊飯器本体、902は本体901に着脱自在に内装される鍋、903は鍋902の上面を開閉自在に覆う蓋である。904は鍋を加熱する鍋加熱手段である。938は本901に内装される蒸気発生手段であり、水タンク906と水タンク加熱手段907とを有する。水タンク906内の水は水タンク加熱手段907によって加熱され、沸騰する。水タンク906で発生した水蒸気は、蒸気管908を通って蒸気孔909から鍋902に供給される。従来例の炊飯器は、上層のご飯を乾燥させることなく、鍋902内に温度の高い蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給して糊化を促進させるので、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−144308号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例の炊飯器を用いて炊飯を行う場合、ユーザは、洗米した米と計量した水とを鍋902に入れ、その鍋902を炊飯器本体901の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業に加えて、水タンク902に所定量の水を入れ、水タンク902を本体901の所定の位置にセットするという新たな作業を行う必要があった。更に、従来例の炊飯器は水タンク906というこれまでの炊飯器には存在しなかった部品を有するため、ユーザが掃除を行うべき部品点数が多かった。即ち、従来例の炊飯器は高い炊飯性能を実現する(おいしいご飯を炊く)ために、ユーザに新たな作業を強いていた。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、鍋内に高温蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザに余分な作業を強いることがない炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は以下の構成を有する。第1の発明に係る炊飯器は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記蓋に配設され、前記鍋内で発生する蒸気を排出する第1の蒸気孔と、前記第1の蒸気孔を開閉する開閉弁と、前記鍋内で加熱された水及び蒸気を液化して溜める貯水部と、前記鍋と連通した第2の蒸気孔とを有する蒸気筒と、前記第1の蒸気孔が閉じている時に前記貯水部を加熱し、前記貯水部内の水から蒸気を生成する貯水部加熱手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の炊飯器は、炊飯中に発生する蒸気を蒸気筒内の貯水部に溜め、再加熱し鍋内に蒸気を投入する。この構成により温度の高い蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給してご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。ユーザが手入れを行う部品の点数が、蒸気筒を有する一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。
【0009】
第2の発明に係る炊飯器は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記蓋に配設され、前記鍋内で発生する蒸気を排出する第1の蒸気孔と、前記鍋と連通した第2の蒸気孔とを有する蒸気筒と、前記鍋から外部に連通した経路のいずれかの位置において前記経路を開閉する開閉弁と、前記蓋に配設されて前記鍋の開口部を覆い、前記鍋内で加熱された水及び蒸気を液化して溜める貯水部と、前記鍋に蒸気を投入するための第3の蒸気孔とを有する加熱板と、前記開閉弁が閉じている時に前記加熱板を加熱し、前記貯水部内の水から蒸気を生成する加熱板加熱手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の炊飯器は、炊飯中に発生する蒸気を加熱板に設けられる貯水部に溜め、加熱板加熱手段によって加熱し鍋内に蒸気を投入する。この構成により温度の高い蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給してご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。貯水部は、加熱板の一部にくぼみを設けることで実現できるので、本発明の炊飯器は従来の炊飯器とほぼ同じコストで製造可能である。本発明の炊飯器は、ユーザが手入れを行う部品の点数が、加熱板及び加熱板加熱手段を有する一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。開閉弁は、鍋から炊飯器の外部に連通した経路のいずれかの位置に設けられ、その経路を開閉することができれば良い。例えば、開閉弁を第1の蒸気孔、第2の蒸気孔、加熱板の上部空間を仕切る天面に設けた蒸気孔に設ける。
【0011】
第3の発明に係る炊飯器は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記蓋に配設され、前記鍋内で発生する蒸気を排出する第1の蒸気孔と、前記鍋内で加熱された水及び蒸気を液化して溜める貯水部と、前記貯水部内の水を前記貯水部の外に出す経路と、前記経路を開閉する経路開閉弁とを有する蒸気筒と、前記蓋に配設されて前記鍋の開口部を覆う加熱板であって、前記経路から導かれた水を加熱し蒸気を発生させる蒸気発生部と、前記鍋に蒸気を投入するための第2の蒸気孔とを有する加熱板と、前記加熱板を加熱し、前記貯水部内の水から蒸気を生成する加熱板加熱手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の炊飯器は、炊飯中に発生する蒸気を蒸気筒内の貯水部に溜め、貯水部内の水(おねばを含む)を加熱板で蒸発させて蒸気を発生し鍋内に投入する。この構成により温度の高い蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給してご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。本発明の炊飯器は、ユーザが手入れを行う部品の点数が、蒸気筒、加熱板及び加熱板加熱手段を有する一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。
【0013】
第4の発明に係る炊飯器は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、一端から前記鍋内で炊飯中に発生する蒸気を取り込み、他端から前記蒸気を前記鍋内に投入する蒸気経路と、前記蒸気経路において前記蒸気を加熱する加熱手段と、を有し、前記蒸気経路において前記蒸気の流れを発生させるためにファンを設ける、前記蒸気経路の両端開口部の断面積を異ならせる、又は前記蒸気経路内に逆流防止弁を設ける、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の炊飯器は、鍋内で炊飯中に発生した蒸気を加熱して鍋内に投入する。これにより、周囲の米粒に比べて温度が低い米粒が結露し、加熱される。従って、鍋内のご飯の温度むらを解消することができる。本発明の炊飯器は、ユーザが手入れを行う部品の点数が、高温蒸気を鍋内に投入しない従来の炊飯器と同じであり、蒸気発生用の貯水部への水の供給、貯水部の掃除の必要がない。蒸気経路内での蒸気の流れる方向は、蒸気経路の途中にファンを設ける、蒸気経路の両端開口部の断面積を変える、又は蒸気経路の両端に逆流防止弁を設けることで制御できる。
【0015】
第5の発明に係る炊飯器は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋と一体に成形され、炊飯中に発生する蒸気を液化した水を貯水する貯水部と、前記貯水部を加熱する貯水部加熱手段と、前記蓋内に配設され冷却部を有し、一端から前記鍋内で炊飯中に発生する蒸気を取り込み、前記冷却部で液化して前記貯水部に投入する第1の蒸気経路と、前記蓋内に配設され、一端から前記貯水部で発生した蒸気を取り込み他端からその蒸気を前記鍋内に投入する第2の蒸気経路と、を有することを特徴とする。
【0016】
この構成により温度の高い蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給してご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。
【0017】
上記炊飯器は、鍋内に投入する蒸気を炊飯中に発生した蒸気を一端液化した後で加熱して作り出すので、ユーザに、洗米した米と計量した水とを鍋に入れ、その鍋を炊飯器本体の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業を強いずに、鍋内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。
【0018】
上記炊飯器において、蒸らし工程において前記鍋内に蒸気を投入することを特徴とする。
【0019】
上記炊飯器は、ご飯を焦がすことなく高温で米を加熱できる。従って、澱粉の糊化が進み、おいしいご飯を炊くことができる。
【0020】
上記炊飯器において、前記蒸気筒が着脱自在に前記蓋に配設されることを特徴とする。
【0021】
蒸気筒が蓋から取り外せるので、ユーザが簡単に手入れを行える。
【0022】
上記炊飯器において、炊飯を行う米の性質に応じて前記鍋内に投入する蒸気の量を変化させることを特徴とする。
【0023】
上記炊飯器は、炊飯を行う米が柔らかく炊ける性質の米か、硬く炊ける性質の米かによって、鍋内に投入する蒸気の量を変化させるので、米の性質に合わせて最適な炊飯を行える。蒸気の量は、貯水部の容積、蒸気の投入時間によって制御できる。
【0024】
上記炊飯器において、前記貯水部加熱手段又は前記加熱板加熱手段は、前記貯水部内のおねばを焦げるまで加熱することを特徴とする。
【0025】
貯水部には、鍋内で炊飯中に発生するおねばを含む水が溜まる。本発明の炊飯器は、より良い香りのご飯を炊くことができる。
【0026】
上記炊飯器において、蒸らし工程において前記貯水部内のおねばを加熱せずに前記鍋内に投入することを特徴とする。
【0027】
貯水部には、鍋内で炊飯中に発生するおねばを含む水が溜まる。上記炊飯器によれば、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられ、つやや粘りのあるおいしてご飯を炊くことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の炊飯器は、鍋内に高温蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザに余分な作業を強いることがないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施の形態について、図面とともに記載する。
【0030】
《実施の形態1》
図1を用いて本発明の実施の形態1の炊飯器を説明する。図1は、本発明の実施の形態1の炊飯器の断面図である。図1において、1は炊飯器の本体を示す。本体1は着脱自在の鍋2を内装する。本体1には、その上面を覆う蓋3が開閉自在に配設されている。実施の形態1の炊飯器は後述する方法で鍋2を誘導加熱し、鍋2内の米と水を加熱調理する。
【0031】
本体1は、鍋2の底部を誘導加熱する鍋加熱手段4(誘導加熱コイルである)、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5及び制御手段50を有する。蓋3は更に、鍋2の開口部を覆う加熱板6、加熱板6を誘導加熱する加熱板加熱手段18(誘導加熱コイルである)、加熱板6の温度を検知する加熱板温度検知手段19、蒸気筒8、貯水部加熱コイル12、蒸気筒温度検知手段13、下マグネット17を有する。
【0032】
加熱板6は、加熱板シールパッキン20が付いた着脱式の加熱板であり、蓋3の下面に取り付けられる。加熱板6は、中心部に蒸気孔7を有する。蓋3の下面の中心部の蒸気孔7と対向する部分に、蒸気孔22及び蓋シールパッキン21が設けられる。加熱板温度検知手段19は、加熱板6に圧接される。
蒸気筒8は蓋3に着脱自在に配設され、蒸気孔23(第2の蒸気孔)、貯水部9、発熱板11、蒸気孔14(第1の蒸気孔)を有する。蒸気孔14に、上マグネット16付きの開閉弁15が設けられる。蒸気孔23は、蒸気孔22と対向する部分に設けられる。発熱板11は、貯水部9の底部に設けられる。発熱板11と貯水部加熱コイル12とは貯水部加熱手段10を構成する。貯水部加熱コイル12は発熱板11を誘導加熱する。蒸気筒温度検知手段13は、発熱板11に圧接して設けられる。開閉弁15は、下マグネット17の極性に応じて上下方向に動き、蒸気孔14を開閉する。
【0033】
制御手段50は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。制御手段50(マイクロコンピュータ)はソフトウエアにより、ユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段19、蒸気筒温度検知手段13から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板6、発熱板11の加熱制御及び開閉弁15の開閉制御を行う。制御手段50は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段18、貯水部加熱コイル12の加熱量を、各加熱手段の通電率及び/又は通電量によって制御する。制御手段50は、開閉弁15の開閉を下マグネット17の極性を変化させることによって制御する。
【0034】
以上のように構成された本発明の実施の形態1の炊飯器の炊飯工程における動作を説明する。ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。
【0035】
炊飯工程は、時間順に前炊き、炊き上げ、沸騰維持、蒸らしに大分される。前炊き工程において、鍋2の温度が米の吸水に適した温度(50℃)になるように鍋加熱手段4を制御し、鍋内の米と水とを加熱する。次に、炊き上げ工程において、鍋2の温度が所定値(100℃)になるまで鍋加熱手段4によって鍋2を所定の熱量で加熱する。この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。沸騰維持工程において、鍋2の水が無くなり、鍋2の温度が100℃を超えた所定値になるまで、鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18に通電し、米と水を加熱する。
【0036】
前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、開閉弁15は開いており、貯水部加熱コイル12は通電されていない。鍋2内で発生する蒸気とおねばは蒸気孔7、蒸気孔22を通り、蒸気筒8に蒸気孔23から入る。蒸気筒8の中に入った蒸気は、一部が蒸気孔14から炊飯器の外に排出され、残りが貯水部9に液体の状態で溜まる。従って、沸騰維持工程において、吹きこぼれが起きない。
【0037】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程では、制御手段50は開閉弁15を閉じ、貯水部加熱コイル12に通電し発熱板11の温度を所定温度に制御し、貯水部9内の水を沸騰させる。その結果、貯水部9内で蒸気が発生する。蒸気は、蒸気孔23、22、7を通り鍋2内に供給される。加熱板6と蓋3との間には蓋シールパッキン21が設けられているので、蒸気は確実に鍋2内に供給される。水蒸気は細かい粒子となって鍋2内の米の隙間を通り鍋2の下部まで行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。水蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げとを抑えることができる。貯水部9内の水が全て蒸発すると、発熱板11の温度が所定温度を超え、おねばが焦げ出す。蒸気筒温度検知手段13は、発熱板11の温度が所定温度を超えたことを検知する。制御手段50は、その後所定時間(1分〜2分程度)発熱板11の温度を所定温度以上に保ち、おねばを焦がす。おねばの焦げる香りは、蒸気孔23、22、7を通り鍋2内に供給され、ご飯の香りが更に増す。
【0038】
ユーザは炊飯開始前に、炊飯器の操作パネル(図示しない)を操作し、炊飯する米の銘柄を制御手段50に指定できる。制御手段50は指定された銘柄が、柔らかく炊ける性質の米(魚沼産コシヒカリ、宮城産ササニシキなど)か、標準的な性質の米(一般のコシヒカリ、ササニシキ、夏場の魚沼産コシヒカリ、新米のきらら397など)か、硬く炊ける性質の米(きらら397、夏場のコシヒカリ、ササニシキなど)か判断し、蒸らし工程における高温蒸気の投入時間(即ち、高温蒸気の投入量)を制御する。制御手段50は蒸らし工程において、米が、柔らかく炊ける性質の米の場合高温蒸気を3分間鍋2に供給し、標準的な性質の米の場合高温蒸気を5分間鍋2に供給し、硬く炊ける性質の米の場合高温蒸気を8分間鍋2に供給する。実施の形態1の炊飯器は、米の性質に合わせて最適な炊飯を行える。制御手段50は、高温蒸気を上記の所定時間鍋2に供給した後、開閉弁15を開き、貯水部9内の水を全て無くす。貯水部9内の水が全て蒸発すると、発熱板11の温度が所定温度を超える。蒸気筒温度検知手段13がこれを検知すると、制御部50は再び開閉弁15を閉じ、その後所定時間(1分〜2分程度)発熱板11の温度を所定温度以上に保ち、おねばを焦がす。
【0039】
なお、蒸気の投入時間に代えて、貯水部9の容積を米の性質に応じて変化させることによって、蒸気の投入量を変化させる構成としても良い。
【0040】
「所定温度」は、典型的には水の沸点温度である。
【0041】
実施の形態1の炊飯器は、ユーザに、洗米した米と計量した水とを鍋2に入れ、その鍋2を炊飯器本体1の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業を強いずに、鍋内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。ユーザが手入れを行う部品の点数が、蒸気筒を有する一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。実施の形態1において貯水部加熱手段10として誘導加熱による加熱を利用するので、蒸気筒8を簡単な構成で着脱可能に蓋3に設けることができた。
【0042】
なお、蒸気を鍋内に投入する時に、加熱板6の温度を100℃以上に加熱しておけば、蒸気温度をより高温にし、よりおいしいご飯を炊くことができることができる。
【0043】
貯水部9内の水を沸騰させて蒸気を発生させる時に、開閉弁15を強固に閉じて炊飯器内部を大気圧より高い圧力にすれば、蒸気温度を上げる(例えば、105℃)ことができる。
【0044】
実施の形態1では、貯水部9内のおねばを焦がした。これに代え、貯水部9の内部に発熱板11がある側とない側とを区切るしきりを設け、更に発熱板11がない側の底部に開閉弁を設けても良い。このように炊飯器を構成し、蒸らし工程において開閉弁を開き、発熱板11がない側に溜まったおねばを焦がさないで鍋内に落下させれば、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられ、つやや粘りのあるおいしてご飯を炊くことができる。
【0045】
《実施の形態2》
図2を用いて本発明の実施の形態2の炊飯器を説明する。図2は、本発明の実施の形態2の炊飯器の断面図である。実施の形態2の炊飯器において、実施の形態1の炊飯器と同じ部分には共通の符号を使用し、説明を省略する。本体1は着脱自在の鍋2を内装する。本体1には、その上面を覆う蓋3が開閉自在に配設されている。実施の形態2の炊飯器は後述する方法で鍋2を誘導加熱し、鍋2内の米と水を加熱調理する。
【0046】
本体1は、鍋2の底部を誘導加熱する鍋加熱手段4(誘導加熱コイルである)、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5及び制御手段50を有する。蓋3は更に、鍋2の開口部を覆う加熱板30、加熱板30を誘導加熱する加熱板加熱手段18(誘導加熱コイルである)、加熱板30の温度を検知する加熱板温度検知手段19、蒸気筒34、下マグネット17を有する。
【0047】
加熱板30は、加熱板シールパッキン20が付いた着脱式の加熱板であり、蓋3の下面に取り付けられる。加熱板30は、中心部に蒸気孔7(第3の蒸気孔)を有する。加熱板30の、加熱板加熱手段18と対向する部分に貯水部32を形成するくぼみが設けられる。加熱板30の貯水部32内に貯水部温度検知手段33が圧接される。蓋3の下面の中心部の蒸気孔7と対向する部分に、蒸気孔22が設けられる。蓋シールパッキン31は、蓋3の下面に、蒸気孔22及び貯水部32を囲むように設けられる。加熱板温度検知手段19は、加熱板30の蓋シールパッキン31の外側の部分に圧接される。
【0048】
蒸気筒34は蓋3に着脱自在に配設され、蒸気孔23(第2の蒸気孔)、蒸気孔14(第1の蒸気孔)を有する。蒸気孔14に、上マグネット16付きの開閉弁15が設けられる。蒸気筒34は、実施の形態1の炊飯器の蒸気筒8から、貯水部9、発熱板11を取り除いたものである。
【0049】
制御手段50は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。制御手段50(マイクロコンピュータ)はソフトウエアにより、ユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段19、貯水部温度検知手段33から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板30、貯水部32の加熱制御及び開閉弁15の開閉制御を行う。制御手段50は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段18の加熱量を、各加熱手段の通電率及び/又は通電量によって制御する。制御手段50は、開閉弁15の開閉を下マグネット17の極性を変化させることによって制御する。
【0050】
以上のように構成された本発明の実施の形態2の炊飯器の炊飯工程における動作を説明する。ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。
【0051】
前炊き、炊き上げの各工程において、実施の形態2の炊飯器は実施の形態1の炊飯器と同様に鍋内の米と水とを加熱調理する。沸騰維持工程において、鍋2の水が無くなり、鍋2の温度が100℃を超えた所定値になるまで、鍋加熱手段4に通電し、米と水を加熱する(加熱板加熱手段18には通電しない)。前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、開閉弁15は開いている。鍋2内で発生する蒸気とおねばは蒸気孔7、蒸気孔22を通り、蒸気筒34に蒸気孔23から入るとともに貯水部32に入る。蒸気筒34の中に入った蒸気は、蒸気孔14から炊飯器の外に排出される。貯水部32に入った蒸気とおねばは、貯水部9に液体の状態で溜まる。
【0052】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程では、制御手段50は開閉弁15を閉じ、加熱板加熱手段18に通電し、加熱板温度検知手段19の出力信号に基づき加熱板30の温度を所定温度(例えば、130℃)に制御する。貯水部32内の水が沸騰し、蒸気になり、加熱板30で加熱され、蒸気孔7を通り鍋2内に供給される。加熱板30と蓋3との間には蓋シールパッキン31が設けられており、開閉弁15が閉じているので、蒸気は確実に鍋2内に供給される。高温の蒸気は細かい粒子となって鍋2内の米の隙間を通り鍋2の下部まで行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。高温蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げとを抑えることができる。貯水部32内の水が全て蒸発すると、貯水部温度検知手段33が検知する温度が100℃を超え、おねばが焦げ出す。制御手段50は、所定時間(1分〜2分程度)発熱板11の温度を100℃以上に保ち、おねばを焦がす。おねばの焦げる香りは、蒸気孔7を通り鍋2内に供給され、ご飯の香りが更に増す。
【0053】
実施の形態2の炊飯器は、ユーザに、洗米した米と計量した水とを鍋2に入れ、その鍋2を炊飯器本体1の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業を強いずに、鍋内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。ユーザが手入れを行う部品の点数が、加熱板及び加熱板加熱手段を有する一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。蒸気を発生させるための加熱手段(例えば、実施の形態1の炊飯器の貯水部加熱コイル12)を、新たに設ける必要がない。
【0054】
実施の形態1の炊飯器と同様、米の性質に合わせて蒸気の投入時間又は投入量を変化させる構成としても良い。
【0055】
開閉弁15は、鍋2から炊飯器の外部に連通した経路のいずれかの位置に設けられ、その経路を開閉することができれば良い。例えば、開閉弁を蒸気孔22又は蒸気孔23に設け、その開閉弁を開閉する手段を設けても良い。
【0056】
《実施の形態3》
図3を用いて本発明の実施の形態3の炊飯器を説明する。図3は、本発明の実施の形態3の炊飯器の断面図である。実施の形態3の炊飯器において、実施の形態1又は実施の形態2の炊飯器と同じ部分には共通の符号を使用し、説明を省略する。本体1は着脱自在の鍋2を内装する。本体1には、その上面を覆う蓋3が開閉自在に配設されている。実施の形態2の炊飯器は後述する方法で鍋2を誘導加熱し、鍋2内の米と水を加熱調理する。
【0057】
本体1は、鍋2の底部を誘導加熱する鍋加熱手段4(誘導加熱コイルである)、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5及び制御手段50を有する。蓋3は更に、鍋2の開口部を覆う加熱板40、加熱板40を誘導加熱する加熱板加熱手段18(誘導加熱コイルである)、加熱板40の温度を検知する加熱板温度検知手段19、蒸気筒44を有する。
【0058】
加熱板40は、加熱板シールパッキン20が付いた着脱式の加熱板であり、蓋3の下面に取り付けられる。加熱板40は、中心部に蒸気孔7を有する。加熱板40の、加熱板加熱手段18と対向する部分に蒸気発生部41を形成するくぼみが設けられる。くぼみの外側に蒸気投入孔42(第2の蒸気孔)が設けられる。加熱板40の蒸気発生部41内に蒸気発生部温度検知手段49が圧接される。蓋3の下面の中心部の蒸気孔7と対向する部分に、蒸気孔22が設けられる。蓋シールパッキン21は、蓋3の下面に、蒸気孔22及び貯水部9を囲むように設けられる。加熱板温度検知手段19は、加熱板40の蓋シールパッキン21の外側の部分に圧接される。蒸気シールパッキン43は、蒸気発生部41及び蒸気投入孔42を囲むように設けられる。
【0059】
蒸気筒44は蓋3に着脱自在に配設され、蒸気孔23、貯水部9、蒸気孔14(第1の蒸気孔)、経路45、経路開閉弁46、経路開閉弁駆動手段47を有する。蒸気筒44は、実施の形態1の蒸気筒8から発熱板11及び開閉弁15を取り除き、経路45、経路開閉弁46、経路開閉弁駆動手段47を加えたものである。経路45は、貯水部9の底部に、蒸気発生部41に連通して設けられる。経路45の途中に、経路開閉弁46及び経路開閉弁46を開閉するための経路開閉弁駆動手段47が設けられる。
【0060】
制御手段50は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。制御手段50(マイクロコンピュータ)はソフトウエアにより、ユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段19、蒸気発生部温度検知手段49から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板40、蒸気発生部41の加熱制御及び経路開閉弁46の開閉制御を行う。制御手段50は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段18の加熱量を、各加熱手段の通電率及び/又は通電量によって制御する。制御手段50は、経路開閉弁駆動手段47によって、経路開閉弁46を開閉する。
【0061】
以上のように構成された本発明の実施の形態3の炊飯器の炊飯工程における動作を説明する。ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。
【0062】
前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、実施の形態3の炊飯器は実施の形態12の炊飯器と同様に鍋内の米と水とを加熱調理する。前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、経路開閉弁46は閉じている。鍋2内で発生する蒸気とおねばは蒸気孔7、22を通り、蒸気筒44に蒸気孔23から入る。蒸気筒44の中に入った蒸気の一部は、蒸気孔14から炊飯器の外に排出される。残りの蒸気とおねばは、貯水部9に液体の状態で溜まる。
【0063】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程では、制御手段50は加熱板加熱手段18に通電し、加熱板温度検知手段19の出力信号に基づき加熱板40の温度を130℃に制御する。更に制御手段50は、経路開閉弁46を開く。貯水部9内の水とおねばは、経路45を通って蒸気発生部41に流れ込み、加熱板40で加熱される。蒸気発生部41内で発生した100℃以上の温度を有する蒸気は、蒸気投入孔42から鍋2内に供給される。おねばは、蒸気発生部41で焦がされ高温蒸気に香りを付ける。加熱板40と蓋3との間には蒸気シールパッキン43が設けられており、開閉弁15が閉じているので、高温蒸気は確実に鍋2内に供給される。高温の蒸気は細かい粒子となって鍋2内の米の隙間を通り鍋2の下部まで行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。高温蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げとを抑えることができる。おねばの焦げる香りは、蒸気投入孔42を通り鍋2内に供給され、ご飯の香りが更に増す。
【0064】
ユーザは炊飯開始前に、炊飯器の操作パネル(図示しない)を操作し、炊飯する米の銘柄を制御手段50に指定できる。制御手段50は指定された銘柄が、柔らかく炊ける性質の米(魚沼産コシヒカリ、宮城産ササニシキなど)か、標準的な性質の米(一般のコシヒカリ、ササニシキ、夏場の魚沼産コシヒカリ、新米のきらら397など)か、硬く炊ける性質の米(きらら397、夏場のコシヒカリ、ササニシキなど)か判断し、蒸らし工程における高温蒸気の投入時間(即ち、高温蒸気の投入量)を制御する。制御手段50は蒸らし工程において、米が、柔らかく炊ける性質の米の場合高温蒸気を3分間鍋2に供給し、標準的な性質の米の場合高温蒸気を5分間鍋2に供給し、硬く炊ける性質の米の場合高温蒸気を8分間鍋2に供給する。実施の形態3の炊飯器は、米の性質に合わせて最適な炊飯を行える。
【0065】
なお、蒸気の投入時間に代えて、貯水部9の容積を米の性質に応じて変化させることによって、蒸気の投入量を変化させる構成としても良い。
【0066】
実施の形態3の炊飯器は、ユーザに、洗米した米と計量した水とを鍋2に入れ、その鍋2を炊飯器本体1の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業を強いずに、鍋内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。ユーザが手入れを行う部品の点数が、加熱板及び加熱板加熱手段を有する一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。蒸気を発生させるための加熱手段(例えば、実施の形態1の炊飯器の貯水部加熱コイル12)を、新たに設ける必要がない。
【0067】
実施の形態3では、蒸気発生部41の温度を130℃に制御したが、100℃に制御し蒸気発生部41に溜まった水を沸騰させることによって蒸気を発生しても良い。この場合、蒸気発生中には経路開閉弁46を閉じる。
実施の形態3では、蒸気発生部41内のおねばを焦がした。これに代え、貯水部9の内部に発経路45がある側とない側とを区切るしきりを設け、更に経路45がない側の底部に開閉弁を設けても良い。このように炊飯器を構成し、蒸らし工程において開閉弁を開き、経路45がない側に溜まったおねばを焦がさないで鍋内に落下させれば、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられ、つやや粘りのあるおいしてご飯を炊くことができる。
【0068】
《実施の形態4》
図4を用いて本発明の実施の形態4の炊飯器を説明する。図4は、本発明の実施の形態4の炊飯器の断面図である。実施の形態4の炊飯器において、実施の形態1の炊飯器と同じ部分(同じ機能を有する部分)には共通の符号を使用し、説明を省略する。本体1は着脱自在の鍋2を内装する。本体1には、その上面を覆う蓋3が開閉自在に配設されている。実施の形態2の炊飯器は後述する方法で鍋2を誘導加熱し、鍋2内の米と水を加熱調理する。
【0069】
本体1は、鍋2の底部を誘導加熱する鍋加熱手段4(誘導加熱コイルである)、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5及び制御手段50を有する。蓋3は更に、鍋2の開口部を覆う加熱板51、加熱板51を誘導加熱する加熱板加熱手段18(誘導加熱コイルである)、蒸気筒57、蒸気経路54を有する。
【0070】
加熱板51は、加熱板シールパッキン20が付いた着脱式の加熱板であり、蓋3の下面に取り付けられる。加熱板51は、中心部に蒸気孔7を有する。蒸気筒57は、蒸気孔7から入った蒸気を、蒸気孔58から外部に排出する。
【0071】
蒸気経路54は蓋3の内部に設けられる管である。蒸気経路54の一端は他端よりも断面積が大きく、加熱板51の蒸気流入孔53に挿入される。蒸気経路54の他端は加熱板の蒸気投入孔54に挿入される。蒸気経路54の蒸気流入孔53側に、鍋2から蒸気を吸い込むためのファン56が設けられる。更に、蒸気経路54には蒸気経路54内の蒸気を加熱するためのヒータ55(発熱体)が設けられる。
【0072】
制御手段50は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。制御手段50(マイクロコンピュータ)はソフトウエアにより、ユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板51、蒸気経路54の加熱制御及びファン56のON/OFF制御を行う。制御手段50は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段18の加熱量を、各加熱手段の通電率及び/又は通電量によって制御する。
【0073】
以上のように構成された本発明の実施の形態4の炊飯器の炊飯工程における動作を説明する。ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、実施の形態4の炊飯器は実施の形態1の炊飯器と同様に鍋内の米と水とを加熱調理する。
【0074】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程では、制御手段50はファン56を動作させ、ヒータ55に通電し蒸気経路54の温度を100℃以上に保つ。鍋2内の気圧が蒸気の発生によって上昇している。鍋2内の蒸気は、蒸気孔7を通って蒸気筒57の蒸気孔58から排出される蒸気と、蒸気経路54内に入る蒸気とに分かれる。蒸気流入孔53が蒸気投入孔52よりも大きな断面積を持ち、且つファン56が動作しているので、鍋2内の蒸気は蒸気流入孔53から蒸気経路54に入る。蒸気は、蒸気経路54内で100℃以上に加熱され、蒸気投入孔52から鍋2内に投入される。高温の蒸気は細かい粒子となって鍋2内の米の隙間を通り鍋2の下部まで行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。特に、周囲の米粒に比べて温度が低い米粒が結露し、加熱されるので、鍋内のご飯の温度むらを解消することができる。鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。高温蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げとを抑えることができる。
【0075】
実施の形態4の炊飯器は、ユーザに、洗米した米と計量した水とを鍋2に入れ、その鍋2を炊飯器本体1の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業を強いずに、鍋内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。更に、ユーザが手入れを行う部品の点数が、高温蒸気を鍋内に投入しない従来の炊飯器と同じであり、蒸気発生用の貯水部への水の供給、貯水部の掃除の必要がない。
【0076】
なお、実施の形態4の炊飯器において蒸気経路54、ヒータ55及びファン56を蓋3内に設けたが、炊飯器内の他の場所(例えば、本体1の内部)に設けても良い。
【0077】
なお、蒸気経路54内の蒸気を加熱するためにヒータ55を使用したが、蒸気経路54を磁性体で構成し、加熱板加熱手段18で蒸気経路54を誘導加熱する構成としても良い。この構成によりヒータ55が不要となり、より簡単な構成の炊飯器を実現できる。
【0078】
実施の形態4では、蒸気経路54の蒸気流入孔53側と蒸気投入孔52側の断面積の違い及びファン56を利用して蒸気経路54内の蒸気の流れを制御したが、蒸気流入孔53と蒸気投入孔52のいずれかに逆流防止用の開閉弁を設けて蒸気経路54内の蒸気の流れを制御する構成としても良い。
【0079】
蒸らし以外の工程で高温の蒸気を鍋2内に投入しても良い。
【0080】
《実施の形態5》
図5を用いて本発明の実施の形態5の炊飯器を説明する。図5は、本発明の実施の形態5の炊飯器の断面図である。実施の形態5の炊飯器は、実施の形態4の炊飯器の蒸気経路54、ヒータ55及びファン56を、蒸気経路62、冷却部63、ファン65、貯水部60、貯水部加熱手段61に置き換えたものである。その他の構成は実施の形態4の炊飯器と同じである。実施の形態5の炊飯器において、実施の形態4の炊飯器と同じ部分には共通の符号を使用し、説明を省略する。
【0081】
貯水部60は、鍋2と一体に形成され本体1の貯水部カバー67に収納される。貯水部カバー67には、貯水部60を誘導加熱する貯水部加熱手段61(誘導加熱コイルである)が巻き付けられる。
【0082】
蒸気経路62は、蒸気経路62a(第1の蒸気経路)及び62b(第2の蒸気経路)を有する。蒸気経路62aの一端は加熱板51の蒸気流入孔53に連結され、他端は貯水部60の開口部の上方に設けられ貯水部開閉弁64を有する。蒸気経路62aには、蒸気流入孔53から近い順に、鍋2内の蒸気を吸い上げるファン65、ペルチェ方式の冷却部63が設けられる。蒸気経路62bの一端は蒸気投入孔開閉弁66を有し、加熱板51の蒸気投入孔52に連結される。蒸気経路62bの他端はパッキン68を有し、貯水部60の開口部を密封する。
【0083】
制御手段50は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。制御手段50(マイクロコンピュータ)はソフトウエアにより、ユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板51の加熱制御、冷却部63及びファン65のON/OFF制御を行う。制御手段50は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段18の加熱量を、各加熱手段の通電率及び/又は通電量によって制御する。
【0084】
以上のように構成された本発明の実施の形態5の炊飯器の炊飯工程における動作を説明する。ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、実施の形態5の炊飯器は実施の形態4の炊飯器と同様に鍋内の米と水とを加熱調理する。
【0085】
前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、冷却部63及びファン65は動作している。これらの工程において、鍋2内で蒸気が発生し、蒸気圧によって蒸気投入孔開閉弁66は閉じる。従って、加熱によって発生した蒸気は、蒸気孔58から外部に排出される蒸気と、蒸気流入孔53から経路62aに入る蒸気とに分かれる。経路62aに入った蒸気は、冷却部63で冷却されて液化する。経路62a内で生成した水によって、貯水部開閉弁64が開き、貯水部60に水が溜まる。
【0086】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程では、制御手段50はファン65及び冷却部63の動作を停止させ、貯水部加熱手段61に通電する。貯水部60内の水は沸騰し、蒸気が発生する。発生した蒸気は蒸気経路62bを通り、蒸気投入孔開閉弁66を開き鍋2内に投入される。このとき、貯水部60で発生した蒸気の蒸気圧によって、貯水部開閉弁64は閉じているので蒸気は蒸気経路62aには侵入しない。高温の蒸気は細かい粒子となって鍋2内の米の隙間を通り鍋2の下部まで行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。高温蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段18による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げとを抑えることができる。
【0087】
以上のように実施の形態5の炊飯器は、炊飯中に発生した蒸気を冷却して液化し、生成された水を貯水部60に溜め、鍋2に投入する蒸気として再利用する。従って、ユーザに、洗米した米と計量した水とを鍋2に入れ、その鍋2を炊飯器本体1の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業を強いずに、鍋内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。
【0088】
なお、本実施の形態では、冷却部63はペルチェ方式であったが、送風式などの他の冷却方式を用いてもよい。
【0089】
貯水部加熱手段61として、誘導加熱コイルを使用したが、他の加熱方式を採用しても良い。
【0090】
蒸気経路62を2つの蒸気経路62a、62bから構成したが、両端に開閉弁を有する1つの経路にし、開閉弁を制御することで、貯水部60への貯水、鍋2への蒸気供給を行っても良い。
【0091】
貯水部60を鍋2と一体ではなく、蒸気経路62内に設けても良い。
【0092】
貯水部60を加熱するための貯水部加熱手段61を取り除き、鍋加熱手段4で貯水部9を加熱する構成としても良い。この構成により、更にシンプルな構成で蒸気を発生させることができる。
【0093】
また、鍋2の加熱手段は電磁誘導を用いた加熱ではなく、他の加熱手段を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の炊飯器は、家庭用又は業務用の炊飯器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1の炊飯器の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2の炊飯器の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3の炊飯器の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4の炊飯器の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態5の炊飯器の断面図である。
【図6】従来例の炊飯器の断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1…本体、
2…鍋、
3…蓋、
4…鍋加熱手段、
5…鍋温度検知手段、
6,30,40,51…加熱板、
7,14,22,23,58…蒸気孔、
8,34,44,57…蒸気筒、
9,32…貯水部、
10…貯水部加熱手段、
11…発熱板、
12…貯水部加熱コイル、
13…蒸気筒温度検知手段、
15…開閉弁、
16…上マグネット、
17…下マグネット、
18…加熱板加熱手段、
19…加熱板温度検知手段、
20…加熱板シールパッキン、
21,31…蓋シールパッキン、
33…貯水部温度検知手段、
41…蒸気発生部、
42,52…蒸気投入孔、
43…蒸気シールパッキン、
45…経路、
46…経路開閉弁、
47…経路開閉弁駆動手段、
49…蒸気発生部温度検知手段、
50…制御手段、
53…蒸気流入孔、
54,62,62a,62b…蒸気経路、
55…ヒータ、
56,65…ファン、
60…貯水部、
61…貯水部加熱手段、
63…冷却部、
64…貯水部開閉弁、
66…蒸気投入孔開閉弁、
67…貯水部カバー、
68…パッキン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した本体と、
前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、
前記本体を開閉自在に覆う蓋と、
前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、
一端から前記鍋内で炊飯中に発生する蒸気を取り込み、他端から前記蒸気を前記鍋内に投入する蒸気経路と、
前記蒸気経路において前記蒸気を加熱する加熱手段と、
を有し、
前記蒸気経路において前記蒸気の流れを発生させるためにファンを設ける、又は前記蒸気経路内に逆流防止弁を設ける、ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
蒸らし工程において前記鍋内に蒸気を投入することを特徴とする、請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
炊飯を行う米の性質に応じて前記鍋内に投入する蒸気の量を変化させることを特徴とする、請求項1又は2記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−178719(P2008−178719A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106396(P2008−106396)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【分割の表示】特願2003−405048(P2003−405048)の分割
【原出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】