説明

炊飯器

【課題】鍋の最も高温となる部分の温度を検知しながら炊飯を行うことで、浸水工程での米の部分的な糊化や不均一な加熱状態を解消し、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】炊飯器本体1の鍋収納部1aに収納される鍋2と、非接触でこの鍋2を加熱する鍋加熱装置5と、炊飯器本体1の開口部を開閉可能な蓋本体3と、鍋2から放射される赤外線により鍋温度を検知する赤外線センサ6とを備え、この赤外線センサ6は鍋2の鍋加熱装置5と対向する部位近傍の温度を検知するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋から放出される赤外線により鍋の温度を検知しながら炊飯する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鍋から出る赤外線により鍋の温度を検知して加熱制御を行う炊飯器は発案されている。
【0003】
図9はその具体的構成を示すもので、炊飯器本体30と、有底円筒状の鍋収納部31と、この鍋収納部31に着脱自在に内設された鍋32と、この鍋32を加熱する加熱ヒータ33と、前記鍋32からの赤外線によりその温度を検知する赤外線センサ34と、鍋32からの赤外線を通過させるために、鍋収納部31に形成した透過孔に覆設した透過材35とを備えており、赤外線センサ34は主に鍋32の加熱ヒータ33と対向する部分以外の部位からの赤外線を受けて鍋32の温度を検知するものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−3080504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、加熱時に鍋の最も高温となる部分の温度が検知できないという課題があった。
【0005】
炊飯器の浸水工程では、素早く十分に米に吸水させることを目的として、米の糊化温度未満の温度まで短時間で水温を上げる制御を行う。
【0006】
しかし、加熱ヒータで鍋を加熱する場合、鍋の加熱ヒータと対向する部分が最も高温となり、その他の部分には鍋内の熱伝導で熱が伝わる。
【0007】
短時間で水温を上げるためには、加熱ヒータで長く加熱する必要があり、鍋の加熱ヒータと対向する部分のみが他の部分に比べて高温となりやすい。
【0008】
一方、米は糊化温度に達すると米の中の澱粉が糊化し始め、米の細胞内に水を取り込み膨潤し始める。つまり、鍋内の水を糊化温度未満の温度に早く近づけるために短時間に多く加熱すると、鍋の一部が糊化温度以上の温度となってしまい、高温の鍋に接触した状態の米は糊化し始めてしまう。
【0009】
糊化が開始されると、米は水分を内部にさらに取り込んで、糊化をさらに進展させ、完全に糊化が終了するまで、熱を吸収し続けることになる。
【0010】
このため、鍋中心部の米や水には熱が伝わりにくいので、加熱効率が低下する。また鍋に接触する米は加熱され過ぎて、食味が低下してしまうという課題があった。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、鍋の最も高温となる部分の温度を検知しながら炊飯を行うことで、浸水工程での米の部分的な糊化や不均一な加熱状態を解消し、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、鍋の最も高温となる部分を検知するように赤外線センサを設けることとしたものである。
【0013】
これによって、鍋が局所的に高温になり、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることが可能となり、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炊飯器は、鍋の最も高温となる部分を検知するように赤外線センサを設けることにより、鍋が局所的に高温になり、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることが可能となり、その結果、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の発明は、内部に鍋収納部が形成された有底筒状の炊飯器本体と、前記鍋収納部に収納される鍋と、非接触で前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、前記炊飯器本体の開口部を開閉可能な蓋本体と、前記鍋から放射される赤外線により鍋温度を検知する赤外線センサとを備え、前記赤外線センサは前記鍋の前記鍋加熱装置と対向する部位の温度を検知する炊飯器とすることとした。
【0016】
これにより、鍋が局所的に高温になり、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることが可能となり、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明において、赤外線センサは、鍋底部の鍋加熱装置と対向する部位の温度を検知することとした。
【0018】
これにより、少量の米から多量の米まで米が必ず接触する鍋底面の高温部が不均一に加熱されることを低減することが可能となり、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることが可能となり、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0019】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、赤外線センサは、鍋底部の鍋加熱装置と対向する部位の温度を検知するようにした。
【0020】
これにより、少量の米から多量の米まで米が必ず接触する鍋底面の高温部が不均一に加熱されることを低減することが可能となり、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることが可能となり、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0021】
第4の発明は、特に、第1〜3いずれか1つの発明の炊飯器において、赤外線センサは、鍋加熱装置の側方に配置することとした。
【0022】
これにより、赤外線センサを鍋加熱装置のごく近傍に配置することに比べて、赤外線センサが鍋加熱装置の熱の影響を受けて鍋温度を誤検知することを低減し、鍋が不均一に加熱されることをより低減することが可能となるので、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることができ、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0023】
第5の発明は、特に、第1〜4いずれか1つの発明の炊飯器において、略鍋中心の下方に配置することとしたものである。
【0024】
これにより、鍋加熱装置からほぼ等距離に赤外線センサを配置できるので、赤外線センサの周囲の温度環境をより一定に保って鍋温度を誤検知することを低減し、鍋が不均一に加熱されることをより低減することが可能となるので、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることができ、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0025】
第6の発明は、特に、第1〜5いずれか1つの発明において、赤外線センサと鍋との間に赤外線を透過するカバーを設けたものである。
【0026】
これにより、ご飯粒や水などの異物が赤外線センサに付着することを低減して鍋温度を誤検知することを低減し、鍋が不均一に加熱されることをより低減することが可能となるので、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることができ、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0027】
第7の発明は、特に、第1〜6いずれか1つの発明において、鍋加熱装置と対向する部分の少なくとも一部を赤外線センサにより温度が検知しやすいように傾斜させたものである。
【0028】
これにより、より正確に鍋温度を検知することが可能であり、鍋が不均一に加熱されることをより低減することが可能となるので、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることができ、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0029】
第8の発明は、特に、第6の発明において、鍋のごく近傍に配置したものである。
【0030】
これにより、カバーにご飯粒や水などの異物が付着してもこれらが鍋に接触し、鍋温度とほぼ同じ温度になるので、異物がカバーに載ったまま炊飯を行っても鍋温度に近い温度を検知することが可能であり、鍋が不均一に加熱されることをより低減することが可能となるので、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることができ、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0031】
第9の発明は、特に、第1〜8いずれか1つの発明において、赤外線反射材を鍋収納部の一部に設け、赤外線センサは前記赤外線反射材を介して鍋温度を検知するものである。
【0032】
これにより、より周囲温度が安定した場所に赤外線センサを配置することができるので、赤外線センサが鍋加熱装置の熱の影響を受けて鍋温度を誤検知することを低減し、鍋が不均一に加熱されることをより低減することが可能となるので、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減し、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることができ、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1〜3において、内部に鍋収納部1aを形成した略有底筒状の炊飯器本体1と、前記鍋収納部1aに収納され、電磁誘導により発熱する磁性体の金属を含む鍋2と、炊飯器本体1の開口部を開閉可能に覆う蓋本体3と、この蓋本体3の内側(鍋2の開口部を覆う側)に着脱自在に取り付けられて、鍋2の開口部を密閉する略円盤状の内蓋4と、前記鍋2を誘導加熱する鍋加熱装置5とを有している。
【0035】
前記鍋収納部1aは、炊飯器本体1の上部開口の内周部に嵌合された略環状の上枠1bと、鍋2の形状に対応して有底円筒形状に形成され、上部が上枠1bに一体的に接続されたコイルベース1cとで構成されている。
【0036】
炊飯器本体1は、前記上枠1bと、コイルベース1cと、外殻1fとからなる。
【0037】
コイルベース1cの外周面には、鍋加熱装置5は、底内コイル5a、底外コイル5b、および側面コイル5cとからなる。
【0038】
底内コイル5aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されており、その底部を加熱し、底外コイル5bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されており、そのR部を加熱する。
【0039】
コイルベース1cの底部の底内コイル5aと底外コイル5bとの中間部には穴1gが設けられており、鍋2の温度を測定するための赤外線温度センサ6が鍋2の底部とは非接触な状態でこの穴1gに対応してコイルベース1cに固定されている。
【0040】
赤外線センサ6は底内コイル5aの側方に配置している。
【0041】
図2において、赤外線温度センサ6は、鍋2から放射される赤外線を受光する感熱素子6aと、この感熱素子6aの周囲温度を検知する感熱素子6bとを含んでいる。
【0042】
そして、感熱素子6aが主に赤外線を検知する範囲は、図中太線の内側の角度Bで示す範囲内の被検知部2bである。
【0043】
一方、底内コイル5aは鍋2の対向する部分である被加熱部2aを最も集中して加熱する。これら鍋2の被加熱部2aと被検知部2bとは、両者の範囲が重複する重複部2cが存在するように構成されている。
【0044】
炊飯器本体1内には、各部、及び各装置を駆動制御して炊飯動作を行う制御装置7が設置されている。この制御装置7は、例えば蓋本体3に設けられた操作ボタン8を介して行った使用者の指示に応じて各部、及び各装置の駆動制御を行う。
【0045】
炊飯器本体1の前壁上部(図1の左側上部)には、蓋本体3のフック9に係合可能なフック1dが設けられている。フック1dとコイルベース1cとの間にはバネ1eが設けられており、このバネ1eによりフック1dは前方(図1の左側)に付勢されている。
【0046】
蓋本体3には、蓋温度検知装置の一例である内蓋温度センサ10と、内蓋加熱装置11と、ヒンジ軸Aと、蒸気筒12とが設けられている。
【0047】
内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱装置11は、蓋本体3内に設置され、制御装置7の制御により内蓋4を誘導加熱するよう構成されている。
【0048】
ヒンジ軸Aは、蓋本体3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部ga回動自
在に固定されている。
【0049】
蓋本体3は、ヒンジ軸Aの近傍に設けた回動バネ12により開く方向に回動付勢されている。
【0050】
内蓋4の一部は、誘導加熱が可能なステンレスなどの金属で構成されており、蒸気を鍋2外へと排出するために、複数の穴からなる蒸気口4a(例えば0.5cm2)が設けられている。
【0051】
内蓋4の外周部の鍋2側の面には、蓋本体3が閉状態にあるとき、鍋2と密接するゴムなどの弾性体からなる略環状の内蓋パッキン13が取り付けられている。
【0052】
蒸気筒12は、蓋本体3に着脱自在に取り付けられており、その蒸気口4aから出てきた蒸気が通過して炊飯器外へと放出されるように構成されている。
【0053】
蒸気筒12の内部には磁石14が存在し、この磁石14は蓋本体3を開いたときや、炊飯中に水や米中のデンプンが水中に溶け出し粘度の高い水となったおねばが蒸気筒13内を通過したときにヒンジ軸A側に移動可能に構成されている。
【0054】
前記磁石14の近傍には、磁力センサ15が設けられており、磁石14が所定の位置にあるかどうかを検知することができるように構成されている。
【0055】
炊飯器本体1の上面のヒンジA近傍には溝16が設けられている。外気温が非常に低い場合などでは、炊飯が終了した後に蓋本体3を開けた際に、内蓋4の鍋2側に付着した水滴が落下する場合があるが、溝16はこの水滴が落下する範囲に設けられている。
【0056】
蓋本体3の外表面には、炊飯のメニュー、時間などの各種情報を表示する表示装置17と、先に述べた炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を行うための操作ボタン8が搭載されている。
【0057】
操作ボタン8の操作により、炊飯器本体1に内蔵された制御装置7に内蔵された炊飯プログラムが実行され、鍋加熱装置5、内蓋加熱装置11を炊飯プログラムの進行に合わせて動作、停止させて炊飯を実施する。
【0058】
炊飯器本体1には炊飯器を運搬するためのハンドル18が設けられている。ハンドル18は、炊飯器本体1の側面上部の略前後中央に軸支されており、その回転方向は蓋本体3の回転方向と略同一である。運搬時にはハンドル18を回転させて、その軸支点のほぼ直上に位置するように持ち上げ、これにより、使用者はハンドル18のみを持って炊飯器を運搬することが可能となる。運搬しない場合には、蓋本体3の開閉の邪魔にならないよう、ヒンジカバー19の上に位置させておく。ヒンジカバー19は炊飯器本体1の後部に取り付けられており、蓋本体3の回動支点となるヒンジAを炊飯器外から隠して、水滴や異物がこれに付着しないようにするとともに、ハンドル18がそれ以上下方に回転しないようにストッパーの役割も果たしている。
【0059】
また、制御装置7の部品を冷却するためのヒートシンク20と、冷却ファン21とが設けある。
【0060】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用について説明する。
【0061】
まず、鍋2内に所定の米と水をセットし、操作ボタン8で、表示手段17に表示される
炊飯メニューを選択し、炊飯開始ボタンを押下することで、炊飯工程が開始される。
【0062】
炊飯工程は、水を一定温度に保って米に水を吸収させる浸せき工程、鍋2を鍋加熱装置5により一気に加熱し、鍋2内の水を沸騰状態にする炊き上げ工程、鍋2内の水がほとんどなくなった状態で加熱を抑える蒸らし工程からなり、これらの工程の間に米の糊化を進めて炊飯する。
【0063】
制御装置7は赤外線温度センサ6により鍋2の温度に応じて最適に鍋加熱装置5を制御し、あらかじめ決められた炊飯プログラムに従って炊飯を行う。
【0064】
炊飯プログラムは米の種類などによって複数のコースが準備されている。この蒸らし工程が終了すると炊飯が終了し、自動的に保温工程へと移行し、炊き上がったご飯の温度が低下しないようにして、使用者がいつでも温かいご飯を得られる。
【0065】
炊飯プログラム実行による動作の詳細を以下に説明する。
【0066】
炊飯が開始されると、まず米に水を吸収させる浸せき工程が始まる。制御装置7は、鍋加熱装置5により鍋2を加熱し、鍋2内の水の温度を赤外線温度センサ6によって検知し、米の糊化が始まらない温度(約60℃未満)に調整して米の吸水を促進する。
【0067】
米は糊化が始まらない範囲で最も高い温度とし、さらにその温度を一定時間(例えば30分〜2時間)継続すると吸水率が向上しやすい。
【0068】
一方、炊飯時間はできるだけ短時間でおいしいご飯が炊き上がることが求められることが多いため、短時間で鍋2を糊化が始まらない温度にまで上昇させている。
【0069】
しかし、誘導加熱によって鍋2を急激に加熱すると、鍋加熱装置5と対向する部分のみが急激に温度上昇してしまう。
【0070】
そのため、従来の温度検知手段では、鍋2内の中心部は米の糊化が始まらない最高温度に近づけたとしても、鍋2の温度はそれを大きく超えるような温度となってしまい、鍋2に接触している米は糊化が始まってしまう。
【0071】
本実施の形態においては、赤外線センサ6を鍋2の測定部に対して傾斜して設置することにより、鍋2の主な被加熱部2aの温度を測定して制御できるので、鍋2に接触している米も糊化が始まらない温度範囲内に抑えて加熱する。
【0072】
また、サーミスタなどの接触式温度検知素子を用いた温度検知部は、鍋2の温度が上昇し、この鍋2の熱が熱伝達で温度検知部に伝わり、温度検知部が加熱された結果、温度を測定することが可能となる。
【0073】
そのため、加熱が停止して鍋2が急激に温度低下しても、温度検知部は一定時間(例えば数10秒〜1分)温度低下することがなく、温度検知の応答性が非常に悪い。
【0074】
その結果、一定温度(例えば60℃)に鍋2の温度を維持する場合でも、一度加熱し加熱停止すると、温度検知部の温度が一定温度以下に下がるまで再度加熱することができないので、まばらな加熱となり、温度検知部はもちろん、鍋2の被加熱部の温度は大きく過加熱・過冷却を繰り返して均一な加熱とは程遠い状況となってしまう。
【0075】
一方、赤外線センサ6は直接鍋2の温度変化を検知することができるので、加熱が停止
したことも即座に検知することが可能で、応答性が非常に良い。
【0076】
そのため、一定温度(例えば60℃)に鍋2の温度を維持する場合でも、鍋2が一定温度になったことを即座に検知して加熱停止し、鍋2の温度が一定温度以下に下がったことを即座に検知して加熱を再開するため、非常に緊密に小刻みを行うことができ、より均一な鍋2の加熱が可能となり、引いては鍋2内部の調理物の温度もより均一にすることができる。
【0077】
炊き上げ工程では、米に水と熱を加えて糊化を進行させる。制御装置7は、鍋加熱装置5を動作させて鍋2を急速に加熱し、鍋2内の水を沸騰状態とする。
【0078】
鍋2内の水が徐々に少なくなると、鍋2の温度は被加熱部2aから100℃を超えて上昇し続ける。
【0079】
赤外線センサ6が約130℃を検知することで鍋2内の水がなくなったと判断し、鍋加熱装置5による加熱を停止する。
【0080】
蒸らし工程では、鍋2内にはほとんど水は残留しておらず、米に付着した余分な水分を蒸散させながら、鍋2内を高温状態(約100℃の状態)に維持して糊化をさらに進展させる。
【0081】
この際、制御装置7は、内蓋温度センサ9で鍋2の上部空間の温度を検知しながら、内蓋加熱装置11を動作させて、米に対して熱を与え続け、糊化の進展を促進させる。
【0082】
また、穴1gおよび赤外線センサ6は炊飯器の後方側に設けられているので、使用者は穴1gを容易に視認することができる。
【0083】
そのため、万が一ご飯粒やその他の異物が穴1gに詰まっても、容易に取り除くことができるので、使い勝手がよい。
【0084】
以上の構成により、本実施の形態の炊飯器は、鍋が被加熱部のみ高温になり、浸水工程で鍋の高温部に接触している米だけが糊化してしまうことを低減する。
【0085】
鍋に接触している米が糊化を開始してしまうと、米と熱を吸収し始め、熱が鍋中心部にまで伝わりにくくなるため、鍋中心部の温度が上がりにくくなり、そのため鍋中心部の米の吸水が悪くなってしまう。
【0086】
鍋に接触している米の糊化を開始させないことで、鍋内を均一に昇温させて浸水工程での米の吸水を加速させることが可能となり、炊飯性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0087】
なお、本実施の形態において、鍋2の温度を測定する手段として赤外線センサ6を採用しているが、他の非接触式センサや接触式センサも使用して鍋2の温度を測定してもよい。
【0088】
なお、炊き上げ工程の初期の水がなくならない時間帯において、赤外線センサ6により鍋2の被加熱部2aの温度が100℃を超える温度(例えば110℃)になると、鍋加熱装置5による加熱を一旦停止してもよい。
【0089】
これにより、鍋2だけが急激に加熱されて鍋2に接触している水の蒸発に熱を奪われる
ことを低減し、より均一に米に熱を加えることが可能となる。
【0090】
(実施の形態2)
図4,5は、実施の形態2の炊飯器を示し、図1,2と同一構成については、同一符号を付して具体的な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0091】
図4,5において、赤外線センサ6は底内コイル5aの側方かつ鍋2の略中心の下方に傾斜して配置されている。
【0092】
本実施の形態においても鍋2の被加熱部2aと被検知部2bとは、両者の範囲が重複する重複部2cが存在するように構成されている。
【0093】
また、鍋2の被検知部2bは赤外線センサ6からの視線の方向(図中矢印C)に対して垂直に近づく方向に水平方向から角度Dだけ傾斜している。
【0094】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用について説明する。
【0095】
基本的な動作は前記実施の形態1と同様であるので省略する。
【0096】
赤外線センサ6が底内コイル5aと底外コイル5bの間に設置した場合には、底内コイル5aと底外コイル5bとの発熱量に差があり、赤外線センサ6の周囲温度が安定しにくかった。
【0097】
また、本実施の形態1のように、赤外線センサ6を炊飯器の後方側に配置すると、冷却ファン22に近いため、その風が当たりやすく、さらに赤外線センサ6の周囲温度が安定しにくい。
【0098】
感熱素子6bは鍋2からの赤外線によって感熱素子6a自体の温度と鍋2との温度差を検出し、これと周囲温度を測定する感熱素子6bとを足し合わせて検知温度として判定するので、感熱素子6aと感熱素子6bとの温度にずれが生じると、結果として検知温度にもずれが生じてしまい、正確な温度制御ができなくなってしまう。
【0099】
このため、周囲温度はできるだけ均一になるよう構成することが検知精度を高める上で重要となる。
【0100】
本実施の形態においては、赤外線センサ6は冷却ファン22からも離れた場所に配置されており、また近傍にある熱源は底内コイル5aのみであるので、比較的周囲温度も安定しやすい。
【0101】
赤外線センサ6は感熱素子6aの視線の方向に対して垂直な面の方がより赤外線量が安定し、精度良く温度検知が可能となるため、鍋2の被検知部2bを傾斜させることで検知精度を確保しやすくなる。
【0102】
以上の構成により、本実施の形態の炊飯器は、赤外線センサを鍋の略中心の下方に配置することで周囲温度を安定化させやすくなり、赤外線センサによる検知温度の精度を向上させることが可能となる。
【0103】
また、鍋の被検知部を赤外線センサからの視線方向にたいして垂直となる方向に傾斜させることで、赤外線センサが受ける赤外線を安定化させることができ、これによってもさらに赤外線センサによる検知温度の精度を向上させることが可能となる。
【0104】
なお、本実施の形態では赤外線センサ6を底内コイル5aの近傍に配置しているが、もっと鍋中心近傍に配置し、赤外線センサ6の傾斜角度をもっと大きくとれば、同じ効果が得られるのでよい。
【0105】
また、図6に示すように、赤外線センサ6の全体を赤外線透過材料(例えばポリエチレン樹脂やサファイアなどの鉱物など)からなるカバー22で覆うと、より赤外線センサ6周囲の温度を安定化させることができ、感熱素子6aおよび感熱素子6bの温度を均一化しやすいので、さらに赤外線センサ6による鍋2の検知温度精度が向上するのでよい。
【0106】
赤外線センサ6の全体をカバー22で覆うことで、ご飯粒やその他の異物が感熱素子6aや感熱素子6a、基板などに付着することを防ぐことができるので、赤外線センサ6が壊れたり、温度検知できなくなることを防ぐことができる。
【0107】
なお、カバー22全体を赤外線透過材料で構成する必要はなく、赤外線を受ける感熱素子6aの一部のみを赤外線透過材料からなるカバーで構成し、その他の部分は汎用性の高い材料で構成してもよい。
【0108】
(実施の形態3)
図7は実施の形態3を示し、図2,4,6と同一構成については、同一符号を付して具体的な説明は実施の形態1,2のものを援用する。
【0109】
図7において、鍋2の中心の下方に赤外線センサ6を固定するセンサ台23を設けている。
【0110】
このセンサ台23は鍋2との接触部であるコンタクト24を一体に固定しており、また、センサ台23はセンサばね25によって鍋2に押し付けられている。
【0111】
センサばね25はセンサ台23とコイルベース1cとの間に挟まれている。コンタクト24の一部には穴が設けてあり、その穴に赤外線透過材26がコンタクト24とセンサ台23とに挟まれて固定されている。
【0112】
図7(a)は鍋2を炊飯器本体1にセットした状態を示しており、図7(b)は赤外線透過材26と鍋2との間にご飯粒が挟まった場合の状態を示している。
【0113】
鍋2がセットされていない場合は、一体化しているセンサ台23、コンタクト24、赤外線透過材26がセンサばね25によって上に押し上げられ、センサ台23の突起部23bがコイルベース1cに接触してセンサ台23が押し上げられた状態で保持される。
【0114】
センサ台23は内部に赤外線センサ6を固定するためのリブ23aを有しており、この赤外線センサ6の検知範囲に合わせて赤外線透過材26を設けている。
【0115】
赤外線センサ6はセンサ台23と一体的に固定されるので、センサばね25によってセンサ台23と共に上下可動な状態となっている。
【0116】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用について説明する。
【0117】
基本的な動作は前記実施の形態と同様であるので省略する。鍋2をセットすると通常は図7(a)のような状態となり、赤外線センサ6により鍋2の温度を検知し、炊飯が進行していく。
【0118】
しかし、例えば赤外線透過材26にご飯粒が付着した状態のまま、鍋2がセットされると、図7(b)のような状態となる。
【0119】
実施の形態1や2でカバー22あるいは赤外線センサ6自身にご飯粒が付着すると、赤外線センサ6はご飯粒の温度を主に検知してしまい、鍋2の実際の温度よりも大きくずれを生じた検知結果を制御装置7に伝達してしまう。
【0120】
そのため、制御装置7は加熱装置5によって鍋2を長時間加熱しても一向に温度上昇しないため、なんらかの異常と判断して加熱を停止し、うまく炊けないまま炊飯を終了してしまうか、最初から鍋2温度が高いとして炊飯が開始されないなど、通常の炊飯が行えなくなってしまう。
【0121】
ところが、赤外線透過材26を鍋2のごく近傍に設置することによって、赤外線透過材26は鍋2に加熱されやすく、またご飯粒が鍋2と赤外線透過材26との間に挟まれるので、ご飯粒も鍋2とほぼ同じように温度上昇し、赤外線透過材26はご飯粒を伝わってきた熱によっても加熱され、温度上昇する。
【0122】
赤外線センサ6は鍋2およびご飯粒、赤外線透過材26からの赤外線を検知することとなるが、そのすべてが短時間でほぼ同じ温度となるので、異物が挟まっても非常に精度良く、応答性良く検知することが可能となる。
【0123】
以上の構成により、本実施の形態の炊飯器は、赤外線透過材と鍋との間に異物が介在しても、赤外線透過材と鍋との距離を短く構成することで、異物を鍋に押し付けて鍋とほぼ同じ温度となり、鍋の温度検知精度を高く保つことが可能となる。
【0124】
(実施の形態4)
図8は実施の形態4を示し、図2,4,6と同一構成については、同一符号を付して具体的な説明は実施の形態1,2のものを援用する。
【0125】
図8において、赤外線センサ6を底内コイル5aと底外コイル5bとの間の下方に、赤外線センサ6の視線方向が水平方向となるようにコイルベース1cに固定している。
【0126】
鍋2の略中心下方には赤外線光を反射する赤外線反射材27を設けており、赤外線反射材27はコイルベース1cに固定されている。
【0127】
赤外線センサ6には筒状で内側が赤外線を反射する鏡面状になっている鏡筒28が設置されており、鍋2の赤外線光が赤外線反射材27によって反射されて鏡筒28を通過して赤外線センサ6に届くように構成されている。
【0128】
赤外線反射材276は、コイルベース1cの穴1gの直下以外の場所に配置している。
【0129】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用について説明する。
【0130】
基本的な動作は前記実施の形態と同様であるので省略する。赤外線反射材27は穴1gの下方に存在しないので、ご飯粒などの異物が1gを通して落下しても赤外線反射材27には付着しにくい。
【0131】
赤外線反射材27は赤外線センサ6と比較して小さいので、赤外線センサ6に比べて設置性がよい。
【0132】
そのため、小さな隙間にも容易に設置できる。また、赤外線反射材27は熱的に不安定な場所に設置しても温度検知に誤差を生じにくいため、さらに設置性がよい。
【0133】
赤外線反射材27を用いることで、より大きい赤外線センサ6の配置も自由度が高まり、熱的に安定した場所(例えば鍋加熱装置5から離れた場所や、冷却ファン22から離れた場所など)への配置、誘導加熱によるノイズなどを受けにくい場所への配置することが可能となることにより精度の高い温度検知を実現することが可能となる。
【0134】
以上の構成により、本実施の形態の炊飯器は、赤外線反射材を介して赤外線センサにより温度検知することで、赤外線センサの配置の自由度が増し、より炊飯器をコンパクトにすることが可能となる。また、赤外線センサをより熱的に安定な環境に置くことも可能となるので、より正確な温度検知が可能となる。さらに、穴1gから異物が落下した場合でも直接赤外線反射材や赤外線センサに付着することが極めて少ないので、異物が存在するときでも精度の高い温度検知が可能となる。
【0135】
なお、本実施の形態においては、鏡筒28を設けているが、赤外線センサ6を赤外線反射材の近傍に配置して鏡筒28を省略してもよい。
【0136】
なお、赤外線反射材27に、鍋2以外からの赤外線を遮断する視野抑制筒(例えば鏡筒28と略同じ形状のもの)を取り付けると、より鍋2のみの温度を測定しやすくなるのでよい。
【0137】
また、赤外線反射材27に視野を抑制する筒を付けなくても、コイルベース1cに筒形状を設けるなど、他の手段でも鍋2の温度が正確に測定できればよい。
【0138】
なお、本実施の形態においては、鏡筒28はコイルベース1cの穴1gの直下に配置しているが、鏡筒28を穴1gの直下以外の場所に配置すると1gから異物が落下しても鏡筒28に付着する恐れを大幅に低減することができるので、温度検知精度が向上してよい。
【0139】
なお、上記すべての実施の形態において、赤外線センサの感熱素子は赤外線を検知するものと周囲温度を検知するものからなればよく、薄膜サーミスタ、チップサーミスタ、ビードサーミスタ、熱電対、サーモパイル型熱型赤外線センサ、量子型センサなどどの方式でもよい。
【0140】
また、上記すべての実施の形態において、赤外線センサの視野は赤外線センサ6に含まれている筒などによって約45度に調整しているが、構成にあわせて他の角度に調整してもよい。このとき、赤外線センサが検知できる範囲内に鍋2以外のものを含まないように角度を調整すると、より正確に鍋2の温度が測定できるのでよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、被加熱部の過加熱を低減して米を均一に加熱するものであるので、加熱する機能を有する他の調理機器の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器側面の断面図
【図2】同炊飯器の要部断面図
【図3】同炊飯器の鍋を露出させた状態の斜視図
【図4】本発明の実施の形態2における炊飯器側面の断面図
【図5】同炊飯器の鍋を露出させた状態の斜視図
【図6】同炊飯器の他の例の要部断面図
【図7】本発明の実施の形態3における炊飯器の要部断面図
【図8】本発明の実施の形態4における炊飯器の要部断面図
【図9】従来の炊飯器の要部断面図
【符号の説明】
【0143】
1 炊飯器本体
1a 鍋収納部
2 鍋
3 蓋本体
4 内蓋
5 鍋加熱装置
6 赤外線センサ
7 制御装置
22 カバー
27 赤外線反射材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に鍋収納部が形成された有底筒状の炊飯器本体と、前記鍋収納部に収納される鍋と、非接触で前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、前記炊飯器本体の開口部を開閉可能な蓋本体と、前記鍋から放射される赤外線により鍋温度を検知する赤外線センサとを備え、前記赤外線センサは前記鍋の前記鍋加熱装置と対向する部位近傍の温度を検知するようにした炊飯器。
【請求項2】
赤外線センサは、鍋の鍋加熱装置と対向する部位の温度を検知するようにした請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
赤外線センサは、鍋底部の鍋加熱装置と対向する部位の温度を検知するようにした請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
赤外線センサを鍋加熱装置の側方に配置した請求項1〜3いずれか1項記載の炊飯器。
【請求項5】
赤外線センサを略鍋中心の下方に配置した請求項1〜4いずれか1項記載の炊飯器。
【請求項6】
赤外線センサと鍋との間に赤外線を透過するカバーを設けた請求項1〜5いずれか1項記載の炊飯器。
【請求項7】
鍋は、鍋加熱装置と対向する部分の少なくとも一部を赤外線センサにより温度が検知しやすいように傾斜させた請求項1〜6いずれか1項記載の炊飯器。
【請求項8】
カバーは、鍋のごく近傍に配置した請求項6に記載の炊飯器。
【請求項9】
赤外線反射材を鍋収納部の一部に設け、赤外線センサは前記赤外線反射材を介して鍋温度を検知するようにした請求項1〜8いずれか1項記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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