説明

炊飯器

【課題】米飯を過剰に加熱することなく露の米飯への滴下を低減して、炊飯、保温性能を向上する炊飯器を提供する。
【解決手段】外気によって冷却できる位置に結露促進部14を設け、鍋3内で発生した蒸気をポンプ15などの空気移動手段で結露促進部14へ移動させて積極的に結露することによって、鍋3内の米飯に露が滴下する部位での結露を抑え、米飯への露の滴下による白化、べちゃつきを抑える。さらに、米飯への過剰な加熱をすることがないために、乾燥を低減して炊飯、保温性能の向上を図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に保温時の結露水が米飯に滴下するのを防止して、米飯の良好な保温状態を提供し得る炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯器で米飯の保温を行う場合には、米飯の上部に位置する鍋の鍋上部や内蓋、鍋と内蓋を密接するための内蓋パッキンなどに米飯からの蒸気が結露し、その結露水が米飯に滴下することで白化やべちゃつきを招く。
【0003】
これを解決するために、鍋上部や内蓋を加熱する加熱手段を設けて、結露を低減するように加熱制御して、米飯への結露水の滴下を防止している。
【0004】
具体的には図4に示す構成を採っており、上面が開口する略円筒状の炊飯器本体101の内部に保護枠102が配設してあり、この内部には、内周面に水位線を刻設した鍋103を着脱自在に収納している。
【0005】
前記保護枠102の外側には鍋103を誘導加熱(発熱)する鍋底面加熱コイル104a,鍋側面加熱コイル104bを配設している。
【0006】
なお、鍋底面加熱コイル104a、および鍋側面加熱コイル104bに代えてヒータであってもよい。
【0007】
炊飯器本体101の上部を閉蓋する蓋105は、ヒンジ軸106aを介して回動自在に支持され、回動バネ106bにより開方向に付勢されている。
【0008】
蓋105のもう一端には、前記回動バネ106による開放を抑止するフックボタン107が配設してある。
【0009】
蓋105の下部には、炊飯および保温中に発生する蒸気を排出する第1蒸気口108bを略中央部に形成した内蓋108を配設し、さらに、その上部には誘導コイル(またはヒータ)などからなる内蓋加熱コイル104cを設けている。
【0010】
また、蓋105には、鍋103内の蒸気を外部へする蒸気筒109を配設している。
【0011】
蒸気口パッキン108cは、蒸気が蓋105の内部に流入するのを防止している。
【0012】
また、内蓋108の外周部には、鍋103外周のフランジ部103aの上面と当接する鍋パッキン108aを介在させており、炊飯および保温中に発生する蒸気が第1蒸気口108b以外に流出するのを防止している。
【0013】
上記構成において動作を説明する。
【0014】
炊飯時には、鍋底面加熱コイル104aに電流を供給して、鍋103を加熱し、その中の米を炊飯し、炊飯終了前になると、鍋側面加熱コイル104b、内蓋加熱コイル104cにも電流を供給し、鍋103の上部および内蓋108への結露を防ぐ。
【0015】
さらに保温時には、鍋底面加熱コイル104a、鍋側面加熱コイル104b、内蓋加熱
コイル104cへの電流の供給量とタイミングを調整しながら、ご飯温度を安定させ、さらに鍋103上部および内蓋108への結露を防止する。
【0016】
さらには内蓋パッキン108cを加熱する加熱手段を付加して、同内蓋パッキン108cへの結露を防止するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2001−161554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、前記従来の構成では保温時の米飯からの蒸気よりも高い温度に鍋103の上部や内蓋108を保つようにしているために、鍋側面加熱コイル104b、内蓋加熱コイル104cによる加熱を行った結果、米飯の乾燥を促進させて品質の劣化を早めてしまう課題があった。
【0019】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、米飯を過剰に加熱することなく露の米飯への滴下を低減して、炊飯、保温性能を向上する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、炊飯器本体と、炊飯器本体に装備した鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、炊飯器本体を覆う蓋と、前記鍋から導入した蒸気を外気により冷却して結露させるとともに、結露後の水を貯留する結露促進部と、この結露促進部へ鍋内の蒸気を強制的に移動させる移動手段とを具備したものである。
【0021】
これによって、結露促進部での結露を増加させて米飯に滴下する部位への結露量を低減することができ、炊飯、保温性能の向上が図れるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、炊飯、保温時に発生した露が米飯に滴下するのを低減して、さらに従来の加熱による結露防止の方式に比べて米飯への過剰な加熱をすることがないために、米飯への露の滴下による白化、べちゃつき、また米飯への過剰な加熱による乾燥を低減して、炊飯、保温性能を向上する炊飯器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器側面の断面図
【図2】同実施の形態1の他の例を示す炊飯器側面の断面図
【図3】本発明の実施の形態2における炊飯器側面の断面図
【図4】従来の炊飯器側面の断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の炊飯器は、炊飯器本体と、炊飯器本体に装備した鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、炊飯器本体を覆う蓋と、前記鍋から導入した蒸気を外気により冷却して結露させるとともに、結露後の水を貯留する結露促進部と、この結露促進部へ鍋内の蒸気を強制的に移動させる移動手段とを具備したものである。
【0025】
これによって、結露促進部への結露を増加させて、米飯に滴下する部位への結露量を低減することができて、炊飯、保温時に米飯への過剰な加熱をすることがなく、炊飯、保温性能を向上する炊飯器を提供することができる。
【0026】
移動手段としては、例えば、ポンプ、或いは軸流型のファンなどがかんがえられる。
【0027】
また、本発明の炊飯器は、炊飯器本体と、炊飯器本体に装備した鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、炊飯器本体を覆う蓋と、鍋を閉じるとともに、内蓋加熱手段で加熱される内蓋と、前記鍋から導入した蒸気を外気により冷却して結露させるとともに、結露後の水を貯留する結露促進部と、この結露促進部へ鍋内の蒸気を強制的に移動させる移動手段とを具備し、前記結露促進部に貯留した結露水を内蓋加熱手段を有する内蓋で加熱して過熱蒸気化した後、鍋内に循環させるようにしたものである。
【0028】
したがって、炊飯動作時において、ご飯の上方を過熱蒸気で有効に加熱することができるものである。
【0029】
具体的には、内蓋と蓋の下壁との間に過熱蒸気生成室を区画形成し、この過熱蒸気生成室に連なる過熱蒸気通過孔を内蓋に設けた。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施の形態1)
図1に示すように、上方開口状の略円筒状をなす炊飯器本体1に内設した保護枠2内には、内周面に水位線を描いた鍋3が着脱自在に配設している。
【0032】
保護枠2の外側には鍋底部誘導加熱コイル4a、鍋側面加熱コイル4bからなる鍋加熱手段4を配設している。
【0033】
なお、鍋底部加熱コイル4a、および鍋側面加熱コイル4bはヒータであってもよい。
【0034】
炊飯器本体1の上部に開閉自在に取り付けた蓋5は、保護枠2の後部にヒンジ軸6aを介して回動自在に支持され、回動バネ6bにより開方向に付勢されている。
【0035】
閉状態にある蓋5は、炊飯器本体1の前方に回動自在に軸支されたフックボタン7でロックされており、したがって、このフックボタン7のロックを開放すると、先の回動バネ6bを介して蓋5が自動的に開かれるようにしてある。
【0036】
蓋5の下方には、炊飯および保温中に鍋3内に発生する蒸気を排出する蒸気口8を有する内蓋9を配設し、その上方に位置する蓋5の下壁5a上には誘導コイルなどからなる内蓋加熱手段10が配備してある。
【0037】
また、蓋5には前記蒸気口8を介して流出する鍋3内からの蒸気を炊飯器本体1の外部に導く筒形状の蒸気筒11を設けている。
【0038】
蒸気筒11と内蓋9の間に蒸気口パッキン12を介在させることで、蒸気が蓋5の内部に流入するのを防止している。
【0039】
さらに、内蓋9の外周部に鍋3のフランジ部3aの上面と当接する内蓋パッキン13を配設しており、炊飯および保温中に鍋3内に発生する蒸気が蒸気口8以外から外部に流出するのを防止している。
【0040】
ここで、蓋5の内蓋9上方部位には結露促進部14が設けてある。この結露促進部14
は金属板材をケース状に形成するとともに、その頂壁を蓋5に当接させることで外気で冷却されるように構成されている。
【0041】
前記結露促進部14の側壁上部と鍋3の上部空間を連絡し、途中に移動手段としてのポンプ15を介在させた蒸気吸引路16が設けてあり、また、蓋5の下壁5aと内蓋9との間の空間17と結露促進部14の下層部とを連絡する流出路18が形成されている。
【0042】
前記内蓋9には空間17と鍋3内を連通する連通口19が設けてある。
【0043】
上記構成において動作を説明する。炊飯時には、鍋加熱手段4の鍋底部加熱コイル4aに電流を供給することで鍋3を加熱(発熱)して内部の米を炊飯し、炊飯終了前になると、鍋側面加熱コイル4b、内蓋加熱手段10にも電流を供給して鍋3の上部、および内蓋9への露付着を防いでいる。
【0044】
保温時には鍋底部加熱コイル4a、鍋側面加熱コイル4b、内蓋加熱手段10に対する電流の供給量とタイミングを調整しながら、ご飯温度を安定させて、さらに鍋3上部、および内蓋9への露の付着を抑制している。
【0045】
ここで、炊飯、保温時に発生した米飯、水より発生した蒸気はポンプ15の作用で蒸気吸引路16から結露促進部14に強制的に導かれる。
【0046】
結露促進部14は外気で冷却される構成であるため、導入された蒸気はその内部で速やかに結露されることとなる。
【0047】
そして、結露促進部14の流出路18がその底部より立ち上がるように設けてあるところから、結露後の水、所謂、結露水はこの結露促進部14の内部に貯溜されることとなる。
【0048】
また、結露促進部14では、蒸気から水へ体積が減少して負圧となり、まわりの空気を引き込む。よって、結露促進部14へ向かう空気の流れを作り出し、さらに他の部位での結露を抑えるものである。
【0049】
以上のように、結露促進部14を外気で冷却する構成とすることで、結露量を増加させることができ、他の部位への結露を抑えて露が米飯に滴下するのを抑制し、米飯の白化、べちゃつきを抑える。
【0050】
併せて、従来の加熱による結露防止の方式に比べて米飯への過剰な加熱をすることがないために、乾燥を低減して、炊飯、保温性能を向上した炊飯器を提供することができることとなる。
【0051】
また、結露促進部14に貯溜された結露水は流出路18を介して蓋5の下壁5aと内蓋9との間の空間17に流下することとなる。内蓋9が内蓋加熱手段10で加熱されていて、前記空間17が高温領域に保たれているところから、先の流下してきた結露水は瞬時に気化して過熱蒸気化され、連通口19から鍋3の上層部へ供給されるものである。
【0052】
したがって、鍋3内のご飯は有効に加熱され、併せて、保湿も行われることになる。
【0053】
このように、本実施の形態においては、結露促進部14を低温の外気によって冷却するとともに、ポンプ15によって鍋3内の蒸気を移動することで、結露促進部14での結露量を増加させることができ、米飯の白化、べちゃつきを抑えることができるものである。
さらに、従来の加熱による結露防止の方式に比べて米飯への過剰な加熱をすることがないために、乾燥を低減して、炊飯、保温性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【0054】
図2に示すものは、結露促進部14の流出路18を蒸気筒11に開口させ、結露促進部14で結露処理しきれなかった蒸気を蒸気筒11から外部へ排出するようにしたものである。
【0055】
他の構成は図1と同じで、同作用をする構成には便宜上同一符号を付し、具体的説明は先の実施の形態1のものを援用する。
【0056】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2を示し、結露促進部14の流出路18を直接鍋3の上層部に開放するとともに、その開放部と対応して移動手段としてのファン20を配置したものである。
【0057】
他の構成は図1と同じで、同作用をする構成には便宜上同一符号を付し、具体的説明は先の実施の形態1のものを援用する。
【0058】
上記構成において動作を説明する。
【0059】
ファン20を動作させることで、矢印に示す方向に空気が移動して鍋3内の蒸気を結露促進部14に移動することができる。
【0060】
ここで、特に、ごはんからの蒸気量が多い炊き上がり時にファン20を動作させることで、それによって発生する空気の流れでごはんの余分な水分を追い出し、その蒸気を蒸気吸引路16から吸い出すことができ、炊飯直後のごはんのかき混ぜの効果を得ることができる。
【0061】
なお、ファン20がごはんや炊飯時に米でんぷんが溶け出した溶液であるおねばに接触する可能性が高い場合には、内蓋9の上にファン20を配置することも考えられるものである。
【0062】
以上のように、本実施の形態においては空気の移動手段としてファン20を設けることで鍋3内部の蒸気を結露促進部14に移動し、この結露促進部14での結露量を増加させることができ、他の部位での結露量を抑えて、露が米飯に滴下するのを低減して、白化、べちゃつきを抑える。
【0063】
さらに、従来の加熱による結露防止の方式に比べて米飯への過剰な加熱をすることがないために乾燥を低減して、炊飯、保温性能を向上した炊飯器を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、主に保温時に発生する蒸気を空気の移動手段によって結露促進部へ移動させて結露させ、他の部位での結露量を抑え、露が米飯に滴下するのを低減することで、白化、べちゃつきを抑える。さらに従来の加熱による結露防止の方式に比べて米飯への過剰な加熱をすることがないために、乾燥を低減して、さらに結露防止加熱の消費電力を抑えることができ、炊飯、保温性能を向上することができるので結露を効率よく低減する炊飯器として有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 炊飯器本体
3 鍋
4 鍋加熱手段
5 蓋
9 内蓋
10 内蓋加熱手段
14 結露促進部
15 ポンプ
20 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、炊飯器本体に装備した鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、炊飯器本体を覆う蓋と、前記鍋から導入した蒸気を外気により冷却して結露させるとともに、結露後の水を貯留する結露促進部と、この結露促進部へ鍋内の蒸気を強制的に移動させる移動手段とを具備した炊飯器。
【請求項2】
移動手段がポンプである請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
移動手段がファンである請求項1記載の炊飯器。
【請求項4】
炊飯器本体と、炊飯器本体に装備した鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、炊飯器本体を覆う蓋と、鍋を閉じるとともに、内蓋加熱手段で加熱される内蓋と、前記鍋から導入した蒸気を外気により冷却して結露させるとともに、結露後の水を貯留する結露促進部と、この結露促進部へ鍋内の蒸気を強制的に移動させる移動手段とを具備し、前記結露促進部に貯留した結露水を内蓋加熱手段を有する内蓋で加熱して過熱蒸気化した後、鍋内に循環させるようにした炊飯器。
【請求項5】
内蓋と蓋の下壁との間に過熱蒸気生成室を区画形成し、この過熱蒸気生成室に連なる過熱蒸気通過孔を内蓋に設けた請求項4記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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