炊飯器
【課題】炊きむらを防ぐことができる炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯器は、米を収容する内鍋3と、内鍋3が収納される炊飯器本体と、炊飯器本体内に配置されたヒータ10と、内鍋3の外面に接触すると共に、ヒータ10からの熱を内鍋3に伝える伝熱板9とを備える。伝熱板9の上面は内鍋3の底部3cの外面に接触し、この上面には複数の溝14,14,…が設けられている。これにより、伝熱板9と内鍋3の間に異物(例えば米粒)があっても、その異物を溝に入れて、伝熱板9に対する内鍋3の密着性の悪化を防ぐことができる。
【解決手段】炊飯器は、米を収容する内鍋3と、内鍋3が収納される炊飯器本体と、炊飯器本体内に配置されたヒータ10と、内鍋3の外面に接触すると共に、ヒータ10からの熱を内鍋3に伝える伝熱板9とを備える。伝熱板9の上面は内鍋3の底部3cの外面に接触し、この上面には複数の溝14,14,…が設けられている。これにより、伝熱板9と内鍋3の間に異物(例えば米粒)があっても、その異物を溝に入れて、伝熱板9に対する内鍋3の密着性の悪化を防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家庭用および業務用等の炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯器としては、ヒータプレートと、このヒータプレート上に搭載される有底円筒形状の内鍋と、この内鍋を加熱するための炊飯ヒータとを備えたものがある(例えば特開平8−215036号公報参照)。
【0003】
上記内鍋は、米および水を収容して、ヒータプレート上に配置される。この内鍋において、ヒータプレートに対向する表面は平坦面となっている。上記内鍋をヒータプレート上に配置したとき、内鍋の底部がヒータプレートの上面に線接触し、ヒータプレートが炊飯ヒータからの輻射熱を内鍋の底部に伝達可能になる。
【0004】
上記ヒータプレートは炊飯ヒータ上に所定の間隔を空けて設けられ、ヒータプレートの上面(内鍋に対向する表面)は平坦面となっている。上記ヒータプレートの上面は、通常、内鍋で覆われているが、内鍋をヒータプレート上から他の場所へ移動させると露出する。
【0005】
ところで、上記内鍋は、米および水を入れるといった理由で、頻繁に、ヒータプレート上から他の場所へ移動させられる。このとき、上記ヒータプレートの上面は露出するため、米粒やご飯粒がヒータプレートの上面に着きやすい。
【0006】
もし、上記ヒータプレートの上面において内鍋と線接触する部分に米やご飯粒が着いたなら、この部分に対する内鍋の密着性が悪くなって、ヒータプレートの熱が内鍋に均一に伝わらなくなる。
【0007】
したがって、上記従来の炊飯器には、ヒータプレートの熱が内鍋に均一に伝わらないことによって、炊きむらが発生する恐れがあるとういう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−215036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、炊きむらを防ぐことができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の炊飯器は、
被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体内に配置された加熱部と、
上記内鍋の外面に接触すると共に、上記加熱部からの熱を上記内鍋に伝える伝熱部と
を備え、
上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面と、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面との一方には、複数の溝が設けられていることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、上記被加熱物を収容した内鍋を炊飯器本体に収納すると、内鍋の外面が伝熱部に接触する。このとき、上記内鍋と接触する伝熱部の接触面と、伝熱部と接触する内鍋の接触面との一方には、複数の溝を設けているので、伝熱部と内鍋の間に異物(例えば米粒)があっても、その異物を溝に入れることができる。
【0012】
したがって、上記伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化しないようにして、伝熱部の熱を内鍋に均一に伝えることができるので、炊きむらを防ぐことができる。
【0013】
また、上記伝熱部に対する内鍋の密着性の悪化を阻止できるので、伝熱部の熱が内鍋に効率良く伝わる状態を維持できる。
【0014】
一実施形態の炊飯器では、
上記溝の幅2.0mm以上15.0mm以下であり、かつ、上記溝の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0015】
上記実施形態によれば、上記溝の幅は2.0mm以上であり、かつ、溝の深さは1.5mm以上であるので、伝熱部と内鍋の間の異物が溝に入り易くなる。したがって、上記伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化する可能性を下げることができる。
【0016】
また、上記溝の幅は15.0mm以下であるので、伝熱部と内鍋の接触面積が必要以上に小さくならず、伝熱部から内鍋への熱の伝達効率が低下するのを防ぐことができる。
【0017】
また、上記溝の深さは6.0mm以下であるので、伝熱部の強度が低下するのを防ぐことができる。
【0018】
一実施形態の炊飯器では、
上記溝同士間の部分は、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が三角形状、略三角形状、台形状または略台形状を呈する突起部である。
【0019】
上記実施形態によれば、上記溝同士間の部分は、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が三角形状、略三角形状、台形状または略台形状を呈する突起部であるので、この溝同士間の部分に異物が着いたとしても、伝熱部に内鍋の外面を接触させる段階で、集中荷重によるせん断力が異物に作用する。したがって、上記溝同士間の部分に着いた異物を切断して、その部分の隣にある溝内に入れることができる。
【0020】
一実施形態の炊飯器では、
上記複数の溝は互いに間隔をあけて同心状または放射状に設けられている。
【0021】
上記実施形態によれば、上記複数の溝を互いに間隔をあけて同心状または放射状に設けるので、伝熱部と内鍋の間の異物が溝に入り易くなる。したがって、上記伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化する可能性を下げることができる。
【0022】
一実施形態の炊飯器では、
上記複数の溝は、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面に設けられている。
【0023】
上記実施形態によれば、上記内鍋と接触する伝熱部の接触面に複数の溝を設けることにより、内鍋の熱容量が低下するのを防ぐことができる。
【0024】
一実施形態の炊飯器では、
上記加熱部は、上記伝熱部に設けた凹部に嵌合されている、または、上記伝熱部に埋め込まれている。
【0025】
上記実施形態によれば、上記加熱部は、伝熱部に設けた凹部に嵌合されている、または、伝熱部に埋め込まれているので、加熱部による伝熱部の加熱効率が高くなる。
【0026】
一実施形態の炊飯器では、
上記溝は、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面の全体、または、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面の全体にわたって設けられている。
【0027】
上記実施形態によれば、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面の全体、または、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面の全体にわたって溝を設けるので、伝熱部と内鍋の間の異物が溝に入り易くなる。したがって、上記伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化する可能性を下げることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の炊飯器によれば、伝熱部と内鍋の接触面の全部に複数の溝を設けていることによって、伝熱部と内鍋の間に異物(例えば米粒)があっても、上記溝内に異物を入れることができるので、伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化しないようにして、炊きむらを防ぐことができると共に、伝熱部の熱が内鍋に効率良く伝わる状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の炊飯器の概略断面図
【図2】図2は上記第1実施形態の伝熱板の概略斜視図である。
【図3】図3は図1の要部の拡大図である。
【図4】図4は上記第1実施形態の炊飯器の要部の概略断面図である。
【図5】図5は上記第1実施形態の炊飯器の要部の概略断面図である。
【図6】図6は上記第1実施形態の伝熱板の変形例および内鍋の概略断面図である。
【図7】図7は上記第1実施形態の伝熱板の他の変形例および内鍋の概略断面図である。
【図8】図8は上記第1実施形態の伝熱板の他の変形例および内鍋の概略断面図である。
【図9】図9は上記第1実施形態の伝熱板の他の変形例および内鍋の概略断面図である。
【図10】図10は本発明の第2実施形態の炊飯器の概略断面図である。
【図11】図11は上記第2実施形態の伝熱板の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の炊飯器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0031】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態の炊飯器の概略断面図である。
【0032】
上記炊飯器は、炊飯器本体1と、この炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられた蓋体2と、炊飯器本体1に収納され、例えば米や水を収容する有底円筒形状の内鍋3とを備えている。なお、上記米,水は被加熱物の一例である。
【0033】
上記炊飯器本体1は、外ケース91と、内鍋3が収納される内ケース92とを有する。また、炊飯器本体1にはラッチ機構(図示せず)が設けられており、蓋体2はラッチ機構に解除可能に係止されて閉じた状態となる。この状態で、フックボタン5を押すと、ラッチ機構の係止が解除されて、コイルバネ(図示せず)の付勢力で蓋体2が開く。
【0034】
上記外ケース91の前面側かつ上側には液晶表示部4が設けられている。また、外ケース91の前面側かつ上側にはフックボタン5が設けられている。そして、外ケース91の後面側には電源コード(図示せず)が接続されている。液晶表示部4は調理メニューや調理状況などを表示し、操作ボタン6を押すことにより、液晶表示部4の表示を変更できる。また、操作ボタン6によって所望の調理メニューを選択できるようになっている。
【0035】
上記内ケース92は、耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成されている。内ケース92の底部の中央部上には上下方向に移動可能に可動部材7を配置している。この可動部材7は、下側から上側に向かって徐々に小さくなる径を有し、側面がテーパ面となっている。また、可動部材7の上部には接触式の温度センサ8が取り付けられている。可動部材7の周囲には略円皿形状の伝熱板9を配置している。この伝熱板9内には1つの環状のヒータ10を埋め込んでおり、伝熱板9はヒータ10の熱を内鍋3の底部3cに伝える。内鍋3を内ケース92に収納すると、温度センサ8と伝熱板9の上面とが内鍋3の底部3cの外面に接触する。このとき、コイルバネ17が可動部材7を上方に付勢するため、温度センサ8が内鍋3の底部3cに確実に接触する。また、コイルバネ17のバネ定数は、内鍋3の底部3cが伝熱板9の上面に確実に接触するように調整されている。なお、伝熱板9は伝熱部の一例であり、ヒータ10は加熱部の一例であり、伝熱板9の上面は接触面の一例である。
【0036】
また、上記外ケース91と内ケース92との間の空間の前面側(図3の左側)には、操作ボタン6からの操作信号を受けて液晶表示部4やヒータ10などを制御する制御部11を配置している。
【0037】
上記内鍋3は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材で形成され、高熱伝導部材の内面に被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。上記高熱伝導部材はプレスまたは鋳造で成型される。この内鍋3は、上端の開口の周囲に設けられた環状のフランジ部3aと、このフランジ部3aの内周縁部から鉛直下方に向かって延びる円筒形状の周壁部3bと、この周壁部3bの下端に連なる底部3cとを有している。この底部3cの周縁部は上方に向かって湾曲している。また、底部3cにおいて伝熱板9に対向すべき外面は平坦面となっている。
【0038】
上記蓋体2は、炊飯器本体1に回動自在に支持された外蓋93と、その外蓋93の内鍋3に対向する側に着脱自在に取り付けられた内蓋94とを有している。この内蓋94の外周には環状の耐熱ゴム製のパッキン12が着脱可能に取り付けられている。蓋体2を閉じたときに、パッキン12は、内鍋3のフランジ部3aの上面に密着して、内鍋3と内蓋94との間をシールする。
【0039】
図2は、上記伝熱板9を斜め上方から見た概略図である。
【0040】
上記伝熱板9は、中央部に貫通孔13ができるように、例えば鋳込み成型で形成する。このとき、伝熱板9の材料として、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材を使用する。内ケース92から内鍋3を取り出すと、可動部材7がコイルバネ17の付勢力で上側に移動して貫通孔13に密に嵌合する。また、伝熱板9は、互いに間隔をあけて同心状に設けられた複数の溝14,14,…を上面に有している。複数の溝14,14,…は、伝熱板9の上面において内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって設けられている。
【0041】
図3は図1の要部の拡大図である。
【0042】
上記各溝14は、断面形状が矩形状または平行四辺形状であり、かつ、幅が2.0mm以上15.0mm以下であり、かつ、深さが1.5mm以上6.0mm以下である。また、溝14同士の間の部分9aの断面形状も矩形状または平行四辺形状となっている。
【0043】
上記構成の炊飯器によれば、例えば米および水を収容した内鍋3を内ケース92に収納すると、内鍋3の底部3cの外面の大部分に伝熱板9の上面が接触する。このとき、図4に示すように、伝熱板9と内鍋3の間に例えば米粒16があっても、この米粒を溝14内に入れることができる。
【0044】
したがって、上記伝熱板9に対する内鍋3の密着性が悪化しないようにして、伝熱板9の熱を内鍋3に均一に伝えることができるので、炊きむらを防ぐことができる。
【0045】
また、上記伝熱板9に対する内鍋3の密着性の悪化を阻止できるので、伝熱板9の熱が内鍋3に効率良く伝わる状態を維持できる。
【0046】
また、上記伝熱板9の上面において内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって、複数の溝14を同心状に設け、さらに、各溝14の幅を2.0mm以上にし、かつ、各溝14の深さを1.5mm以上にしているので、伝熱板9上に米粒が落ちても、その米粒が溝14に入る可能性が非常に高くなる。したがって、上記伝熱板9に対する内鍋3の密着性が悪化する可能性は非常に低くなる。
【0047】
また、上記溝14の幅は15.0mm以下であり、かつ、溝14の深さは6.0mm以下であるので、伝熱部から内鍋への熱の伝達効率と、伝熱板9の強度とが、低下するのを防ぐことができる。
【0048】
また、上記伝熱板9にヒータ10を埋め込んでいるので、ヒータ10の熱を伝熱板9に高効率に伝えることができる。
【0049】
仮に、図5に示すように、15.0mmを越える長さを有する異物16が伝熱板9上に落ちれば、その異物を溝14内に入れることができない。その結果、溝14同士の間の部分9aと内鍋3の底部3cとの間に隙間ができ、伝熱板9に対する内鍋3の密着性が悪化するという問題が発生してしまう。
【0050】
上記問題を回避するため、伝熱板9に換えて、図6〜図9に示す伝熱板29,39,49,59を用いてもよい。この伝熱板29,39,49,59の上面には、内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって、複数の溝24,34,44,54を同心状に設けている。なお、伝熱板29,39,49,59は伝熱部の一例である。
【0051】
図6の伝熱板29の溝24同士間の部分29aは、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が略台形状を呈する突起部である。各溝24の底幅は2.0mm以上15.0mm以下である。また、各溝24の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0052】
図7の伝熱板39の溝34同士間の部分39aは、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が台形状を呈する突起部である。各溝34の底幅は2.0mm以上15.0mm以下である。また、各溝34の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0053】
図8の伝熱板49の溝44同士間の部分49aは、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が略三角形状を呈する突起部である。各溝44の底幅は2.0mm以上15.0mm以下である。また、各溝44の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0054】
図9の伝熱板59の溝54同士間の部分59aは、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が三角形状を呈する突起部である。各溝54の底幅は2.0mm以上15.0mm以下である。また、各溝54の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0055】
例えば、15.0mmを越える長さを有する異物16が伝熱板29上に落ちた場合、伝熱板29の部分29aの先端部と内鍋3の底部3cとの間に荷重が集中するので、異物16を伝熱板29の部分29aでせん断して、その部分29aの隣にある溝24内に入れることができる。したがって、伝熱板29に対する内鍋3の密着性が悪化するのを防ぐことができる。
【0056】
また、図7〜図9に示す伝熱板39,49,59を用いても、図6の伝熱板29を用いた場合と同様の作用効果が得られる。
【0057】
図6,図7の伝熱板29,39は、熱の伝達効率が高くなる点で、図8,図9の伝熱板49,59よりも好ましい。
【0058】
図8,図9の伝熱板49,59は、高いせん断力が得られる点で、図6,図7の伝熱板29,39よりも好ましい。
【0059】
上記実施形態および変形例では、伝熱板9,29,39,49,59内にヒータ10を埋め込んでいたが、伝熱板9,29,39,49,59の下方に所定の間隔をあけてヒータを配置して、このヒータの輻射熱で伝熱板9,29,39,49,59を加熱するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態および変形例では、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材からなる伝熱板9,29,39,49,59を用いていたが、磁性体からなる伝熱板を用いてもよい。この伝熱板を用いる場合、加熱部の一例としての誘導コイルで、磁性体からなる伝熱板を誘導加熱するようにしてもよい。
【0061】
上記実施形態および変形例では、伝熱板9,29,39,49,59内にヒータ10を埋め込んでいたが、伝熱板9,29,39,49,59の上面または下面に凹部を設け、この凹部にヒータ10を嵌合させてもよい。
【0062】
〔第2実施形態〕
図10は本発明の第2実施形態の炊飯器の概略断面図である。また、図10において、図1に示した構成部と同一構成部は、図1における構成部の参照番号と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0063】
上記炊飯器は、上記第1実施形態とは異なる炊飯器本体201,伝熱板209を備えている。炊飯器本体201の内ケース292は、図1の内ケース92よりも底部が大きくなっている。なお、伝熱板209は伝熱部の一例である。
【0064】
上記伝熱板209は内ケース292と内鍋3との間に配置されている。伝熱板209には2つの環状のヒータ210,210を埋め込んでいる。
【0065】
図11は、上記伝熱板209を斜め上方から見た概略図である。
【0066】
上記伝熱板209は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材を略器形状に成型したものである。これにより、伝熱板209の上面の表面積は、図1の略皿形状の伝熱板9の上面の表面積よりも広く、伝熱板209の上面が内鍋3の底部3cの略全部に対向するようになっている。また、伝熱板209は貫通孔213を中央部に有し、内鍋3の非収納時、貫通孔213は可動部材7で完全に塞がれる。また、伝熱板209の貫通孔213の周縁部には、互いに間隔をあけて複数の溝214,214,…を同心状に設けている。さらに、伝熱板209の複数の溝214,214,…の周囲には、複数の溝224,224,…を設けている。複数の溝224,224,…は貫通孔213を中心に放射状に延びている。複数の溝214,214,…,224,224,…は、伝熱板209の上面において内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって設けられている。また、上記各溝214,224は、断面形状が矩形状または平行四辺形状であり、かつ、幅が2.0mm以上15.0mm以下であり、かつ、深さが1.5mm以上6.0mm以下である。また、溝214同士の間の部分、および、溝224同士の間の部分の断面形状は、矩形状または平行四辺形状となっている。
【0067】
上記構成の炊飯器によれば、伝熱板209を略器形状にしているので、伝熱板209の熱を内鍋3の底部3cの広範囲に伝えることができる。したがって、内鍋3の底部3cの一部に伝熱板209の熱が集中して伝わらず、図1の略皿形状の伝熱板29と比べて、より炊きむらのない安定した炊飯を行える。
【0068】
また、上記複数の溝224,224,…の内側に同心状の複数の溝214,214,…を設けているので、例えば米粒が溝224内に入って自重で滑り落ちても、その米粒を溝214で捕獲できる。したがって、上記米粒などの異物が溝224に沿って滑り落ちて貫通孔213から炊飯器本体201内に入るのを防ぐことができる。
【0069】
上記第2実施形態では、各溝214,224の断面形状は矩形状であったが、図6〜図9の,24,34,44,54の断面形状にしてもよい。
【0070】
上記第2実施形態では、伝熱板209の上面に、同心状の複数の溝214,214,…と、放射状の複数の溝224,224,…とを設けていたが、同心状の複数の溝214,214,…と、放射状の複数の溝224,224,…との一方のみを設けるようにしてもよい。この場合、同心状の複数の溝214,214,…、または、放射状の複数の溝224,224,…は、伝熱板209の上面において内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって設けるのが好ましい。
【0071】
上記第1,第2実施形態では、伝熱板9,29,39,49,59,209の上面に溝14,24,34,44,54を設けていたが、内鍋3の底部3cの外面に溝14,24,34,44,54を設けてもよい。この場合、溝14,24,34,44,54は、伝熱板9,29,39,49,59,209と接触する内鍋3の接触面の全体にわたって設けるのが好ましい。
【0072】
上記第1,第2実施形態において、伝熱板9,29,39,49,59,209の換わりに、例えば略直方体形状の伝熱ブロックを用いてもよい。つまり、本発明の伝熱部の形状は、板形状に限定されず、様々である。
【0073】
本発明は上記第1,第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1実施形態およびその変形例と上記第2実施形態とを適宜組み合わせたものを本発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…炊飯器本体
2…蓋体
3…内鍋
4…液晶表示部
5…フックボタン
6…操作ボタン
7…可動部材
8…温度センサ
9,29,39,49,59,209…伝熱板
10…ヒータ
11…制御部
12…パッキン
13…貫通孔
14,24,34,44,54…溝
15…米粒
16…異物
17…コイルバネ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家庭用および業務用等の炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯器としては、ヒータプレートと、このヒータプレート上に搭載される有底円筒形状の内鍋と、この内鍋を加熱するための炊飯ヒータとを備えたものがある(例えば特開平8−215036号公報参照)。
【0003】
上記内鍋は、米および水を収容して、ヒータプレート上に配置される。この内鍋において、ヒータプレートに対向する表面は平坦面となっている。上記内鍋をヒータプレート上に配置したとき、内鍋の底部がヒータプレートの上面に線接触し、ヒータプレートが炊飯ヒータからの輻射熱を内鍋の底部に伝達可能になる。
【0004】
上記ヒータプレートは炊飯ヒータ上に所定の間隔を空けて設けられ、ヒータプレートの上面(内鍋に対向する表面)は平坦面となっている。上記ヒータプレートの上面は、通常、内鍋で覆われているが、内鍋をヒータプレート上から他の場所へ移動させると露出する。
【0005】
ところで、上記内鍋は、米および水を入れるといった理由で、頻繁に、ヒータプレート上から他の場所へ移動させられる。このとき、上記ヒータプレートの上面は露出するため、米粒やご飯粒がヒータプレートの上面に着きやすい。
【0006】
もし、上記ヒータプレートの上面において内鍋と線接触する部分に米やご飯粒が着いたなら、この部分に対する内鍋の密着性が悪くなって、ヒータプレートの熱が内鍋に均一に伝わらなくなる。
【0007】
したがって、上記従来の炊飯器には、ヒータプレートの熱が内鍋に均一に伝わらないことによって、炊きむらが発生する恐れがあるとういう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−215036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、炊きむらを防ぐことができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の炊飯器は、
被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体内に配置された加熱部と、
上記内鍋の外面に接触すると共に、上記加熱部からの熱を上記内鍋に伝える伝熱部と
を備え、
上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面と、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面との一方には、複数の溝が設けられていることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、上記被加熱物を収容した内鍋を炊飯器本体に収納すると、内鍋の外面が伝熱部に接触する。このとき、上記内鍋と接触する伝熱部の接触面と、伝熱部と接触する内鍋の接触面との一方には、複数の溝を設けているので、伝熱部と内鍋の間に異物(例えば米粒)があっても、その異物を溝に入れることができる。
【0012】
したがって、上記伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化しないようにして、伝熱部の熱を内鍋に均一に伝えることができるので、炊きむらを防ぐことができる。
【0013】
また、上記伝熱部に対する内鍋の密着性の悪化を阻止できるので、伝熱部の熱が内鍋に効率良く伝わる状態を維持できる。
【0014】
一実施形態の炊飯器では、
上記溝の幅2.0mm以上15.0mm以下であり、かつ、上記溝の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0015】
上記実施形態によれば、上記溝の幅は2.0mm以上であり、かつ、溝の深さは1.5mm以上であるので、伝熱部と内鍋の間の異物が溝に入り易くなる。したがって、上記伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化する可能性を下げることができる。
【0016】
また、上記溝の幅は15.0mm以下であるので、伝熱部と内鍋の接触面積が必要以上に小さくならず、伝熱部から内鍋への熱の伝達効率が低下するのを防ぐことができる。
【0017】
また、上記溝の深さは6.0mm以下であるので、伝熱部の強度が低下するのを防ぐことができる。
【0018】
一実施形態の炊飯器では、
上記溝同士間の部分は、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が三角形状、略三角形状、台形状または略台形状を呈する突起部である。
【0019】
上記実施形態によれば、上記溝同士間の部分は、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が三角形状、略三角形状、台形状または略台形状を呈する突起部であるので、この溝同士間の部分に異物が着いたとしても、伝熱部に内鍋の外面を接触させる段階で、集中荷重によるせん断力が異物に作用する。したがって、上記溝同士間の部分に着いた異物を切断して、その部分の隣にある溝内に入れることができる。
【0020】
一実施形態の炊飯器では、
上記複数の溝は互いに間隔をあけて同心状または放射状に設けられている。
【0021】
上記実施形態によれば、上記複数の溝を互いに間隔をあけて同心状または放射状に設けるので、伝熱部と内鍋の間の異物が溝に入り易くなる。したがって、上記伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化する可能性を下げることができる。
【0022】
一実施形態の炊飯器では、
上記複数の溝は、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面に設けられている。
【0023】
上記実施形態によれば、上記内鍋と接触する伝熱部の接触面に複数の溝を設けることにより、内鍋の熱容量が低下するのを防ぐことができる。
【0024】
一実施形態の炊飯器では、
上記加熱部は、上記伝熱部に設けた凹部に嵌合されている、または、上記伝熱部に埋め込まれている。
【0025】
上記実施形態によれば、上記加熱部は、伝熱部に設けた凹部に嵌合されている、または、伝熱部に埋め込まれているので、加熱部による伝熱部の加熱効率が高くなる。
【0026】
一実施形態の炊飯器では、
上記溝は、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面の全体、または、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面の全体にわたって設けられている。
【0027】
上記実施形態によれば、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面の全体、または、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面の全体にわたって溝を設けるので、伝熱部と内鍋の間の異物が溝に入り易くなる。したがって、上記伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化する可能性を下げることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の炊飯器によれば、伝熱部と内鍋の接触面の全部に複数の溝を設けていることによって、伝熱部と内鍋の間に異物(例えば米粒)があっても、上記溝内に異物を入れることができるので、伝熱部に対する内鍋の密着性が悪化しないようにして、炊きむらを防ぐことができると共に、伝熱部の熱が内鍋に効率良く伝わる状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の炊飯器の概略断面図
【図2】図2は上記第1実施形態の伝熱板の概略斜視図である。
【図3】図3は図1の要部の拡大図である。
【図4】図4は上記第1実施形態の炊飯器の要部の概略断面図である。
【図5】図5は上記第1実施形態の炊飯器の要部の概略断面図である。
【図6】図6は上記第1実施形態の伝熱板の変形例および内鍋の概略断面図である。
【図7】図7は上記第1実施形態の伝熱板の他の変形例および内鍋の概略断面図である。
【図8】図8は上記第1実施形態の伝熱板の他の変形例および内鍋の概略断面図である。
【図9】図9は上記第1実施形態の伝熱板の他の変形例および内鍋の概略断面図である。
【図10】図10は本発明の第2実施形態の炊飯器の概略断面図である。
【図11】図11は上記第2実施形態の伝熱板の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の炊飯器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0031】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態の炊飯器の概略断面図である。
【0032】
上記炊飯器は、炊飯器本体1と、この炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられた蓋体2と、炊飯器本体1に収納され、例えば米や水を収容する有底円筒形状の内鍋3とを備えている。なお、上記米,水は被加熱物の一例である。
【0033】
上記炊飯器本体1は、外ケース91と、内鍋3が収納される内ケース92とを有する。また、炊飯器本体1にはラッチ機構(図示せず)が設けられており、蓋体2はラッチ機構に解除可能に係止されて閉じた状態となる。この状態で、フックボタン5を押すと、ラッチ機構の係止が解除されて、コイルバネ(図示せず)の付勢力で蓋体2が開く。
【0034】
上記外ケース91の前面側かつ上側には液晶表示部4が設けられている。また、外ケース91の前面側かつ上側にはフックボタン5が設けられている。そして、外ケース91の後面側には電源コード(図示せず)が接続されている。液晶表示部4は調理メニューや調理状況などを表示し、操作ボタン6を押すことにより、液晶表示部4の表示を変更できる。また、操作ボタン6によって所望の調理メニューを選択できるようになっている。
【0035】
上記内ケース92は、耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成されている。内ケース92の底部の中央部上には上下方向に移動可能に可動部材7を配置している。この可動部材7は、下側から上側に向かって徐々に小さくなる径を有し、側面がテーパ面となっている。また、可動部材7の上部には接触式の温度センサ8が取り付けられている。可動部材7の周囲には略円皿形状の伝熱板9を配置している。この伝熱板9内には1つの環状のヒータ10を埋め込んでおり、伝熱板9はヒータ10の熱を内鍋3の底部3cに伝える。内鍋3を内ケース92に収納すると、温度センサ8と伝熱板9の上面とが内鍋3の底部3cの外面に接触する。このとき、コイルバネ17が可動部材7を上方に付勢するため、温度センサ8が内鍋3の底部3cに確実に接触する。また、コイルバネ17のバネ定数は、内鍋3の底部3cが伝熱板9の上面に確実に接触するように調整されている。なお、伝熱板9は伝熱部の一例であり、ヒータ10は加熱部の一例であり、伝熱板9の上面は接触面の一例である。
【0036】
また、上記外ケース91と内ケース92との間の空間の前面側(図3の左側)には、操作ボタン6からの操作信号を受けて液晶表示部4やヒータ10などを制御する制御部11を配置している。
【0037】
上記内鍋3は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材で形成され、高熱伝導部材の内面に被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。上記高熱伝導部材はプレスまたは鋳造で成型される。この内鍋3は、上端の開口の周囲に設けられた環状のフランジ部3aと、このフランジ部3aの内周縁部から鉛直下方に向かって延びる円筒形状の周壁部3bと、この周壁部3bの下端に連なる底部3cとを有している。この底部3cの周縁部は上方に向かって湾曲している。また、底部3cにおいて伝熱板9に対向すべき外面は平坦面となっている。
【0038】
上記蓋体2は、炊飯器本体1に回動自在に支持された外蓋93と、その外蓋93の内鍋3に対向する側に着脱自在に取り付けられた内蓋94とを有している。この内蓋94の外周には環状の耐熱ゴム製のパッキン12が着脱可能に取り付けられている。蓋体2を閉じたときに、パッキン12は、内鍋3のフランジ部3aの上面に密着して、内鍋3と内蓋94との間をシールする。
【0039】
図2は、上記伝熱板9を斜め上方から見た概略図である。
【0040】
上記伝熱板9は、中央部に貫通孔13ができるように、例えば鋳込み成型で形成する。このとき、伝熱板9の材料として、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材を使用する。内ケース92から内鍋3を取り出すと、可動部材7がコイルバネ17の付勢力で上側に移動して貫通孔13に密に嵌合する。また、伝熱板9は、互いに間隔をあけて同心状に設けられた複数の溝14,14,…を上面に有している。複数の溝14,14,…は、伝熱板9の上面において内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって設けられている。
【0041】
図3は図1の要部の拡大図である。
【0042】
上記各溝14は、断面形状が矩形状または平行四辺形状であり、かつ、幅が2.0mm以上15.0mm以下であり、かつ、深さが1.5mm以上6.0mm以下である。また、溝14同士の間の部分9aの断面形状も矩形状または平行四辺形状となっている。
【0043】
上記構成の炊飯器によれば、例えば米および水を収容した内鍋3を内ケース92に収納すると、内鍋3の底部3cの外面の大部分に伝熱板9の上面が接触する。このとき、図4に示すように、伝熱板9と内鍋3の間に例えば米粒16があっても、この米粒を溝14内に入れることができる。
【0044】
したがって、上記伝熱板9に対する内鍋3の密着性が悪化しないようにして、伝熱板9の熱を内鍋3に均一に伝えることができるので、炊きむらを防ぐことができる。
【0045】
また、上記伝熱板9に対する内鍋3の密着性の悪化を阻止できるので、伝熱板9の熱が内鍋3に効率良く伝わる状態を維持できる。
【0046】
また、上記伝熱板9の上面において内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって、複数の溝14を同心状に設け、さらに、各溝14の幅を2.0mm以上にし、かつ、各溝14の深さを1.5mm以上にしているので、伝熱板9上に米粒が落ちても、その米粒が溝14に入る可能性が非常に高くなる。したがって、上記伝熱板9に対する内鍋3の密着性が悪化する可能性は非常に低くなる。
【0047】
また、上記溝14の幅は15.0mm以下であり、かつ、溝14の深さは6.0mm以下であるので、伝熱部から内鍋への熱の伝達効率と、伝熱板9の強度とが、低下するのを防ぐことができる。
【0048】
また、上記伝熱板9にヒータ10を埋め込んでいるので、ヒータ10の熱を伝熱板9に高効率に伝えることができる。
【0049】
仮に、図5に示すように、15.0mmを越える長さを有する異物16が伝熱板9上に落ちれば、その異物を溝14内に入れることができない。その結果、溝14同士の間の部分9aと内鍋3の底部3cとの間に隙間ができ、伝熱板9に対する内鍋3の密着性が悪化するという問題が発生してしまう。
【0050】
上記問題を回避するため、伝熱板9に換えて、図6〜図9に示す伝熱板29,39,49,59を用いてもよい。この伝熱板29,39,49,59の上面には、内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって、複数の溝24,34,44,54を同心状に設けている。なお、伝熱板29,39,49,59は伝熱部の一例である。
【0051】
図6の伝熱板29の溝24同士間の部分29aは、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が略台形状を呈する突起部である。各溝24の底幅は2.0mm以上15.0mm以下である。また、各溝24の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0052】
図7の伝熱板39の溝34同士間の部分39aは、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が台形状を呈する突起部である。各溝34の底幅は2.0mm以上15.0mm以下である。また、各溝34の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0053】
図8の伝熱板49の溝44同士間の部分49aは、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が略三角形状を呈する突起部である。各溝44の底幅は2.0mm以上15.0mm以下である。また、各溝44の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0054】
図9の伝熱板59の溝54同士間の部分59aは、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が三角形状を呈する突起部である。各溝54の底幅は2.0mm以上15.0mm以下である。また、各溝54の深さは1.5mm以上6.0mm以下である。
【0055】
例えば、15.0mmを越える長さを有する異物16が伝熱板29上に落ちた場合、伝熱板29の部分29aの先端部と内鍋3の底部3cとの間に荷重が集中するので、異物16を伝熱板29の部分29aでせん断して、その部分29aの隣にある溝24内に入れることができる。したがって、伝熱板29に対する内鍋3の密着性が悪化するのを防ぐことができる。
【0056】
また、図7〜図9に示す伝熱板39,49,59を用いても、図6の伝熱板29を用いた場合と同様の作用効果が得られる。
【0057】
図6,図7の伝熱板29,39は、熱の伝達効率が高くなる点で、図8,図9の伝熱板49,59よりも好ましい。
【0058】
図8,図9の伝熱板49,59は、高いせん断力が得られる点で、図6,図7の伝熱板29,39よりも好ましい。
【0059】
上記実施形態および変形例では、伝熱板9,29,39,49,59内にヒータ10を埋め込んでいたが、伝熱板9,29,39,49,59の下方に所定の間隔をあけてヒータを配置して、このヒータの輻射熱で伝熱板9,29,39,49,59を加熱するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態および変形例では、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材からなる伝熱板9,29,39,49,59を用いていたが、磁性体からなる伝熱板を用いてもよい。この伝熱板を用いる場合、加熱部の一例としての誘導コイルで、磁性体からなる伝熱板を誘導加熱するようにしてもよい。
【0061】
上記実施形態および変形例では、伝熱板9,29,39,49,59内にヒータ10を埋め込んでいたが、伝熱板9,29,39,49,59の上面または下面に凹部を設け、この凹部にヒータ10を嵌合させてもよい。
【0062】
〔第2実施形態〕
図10は本発明の第2実施形態の炊飯器の概略断面図である。また、図10において、図1に示した構成部と同一構成部は、図1における構成部の参照番号と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0063】
上記炊飯器は、上記第1実施形態とは異なる炊飯器本体201,伝熱板209を備えている。炊飯器本体201の内ケース292は、図1の内ケース92よりも底部が大きくなっている。なお、伝熱板209は伝熱部の一例である。
【0064】
上記伝熱板209は内ケース292と内鍋3との間に配置されている。伝熱板209には2つの環状のヒータ210,210を埋め込んでいる。
【0065】
図11は、上記伝熱板209を斜め上方から見た概略図である。
【0066】
上記伝熱板209は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材を略器形状に成型したものである。これにより、伝熱板209の上面の表面積は、図1の略皿形状の伝熱板9の上面の表面積よりも広く、伝熱板209の上面が内鍋3の底部3cの略全部に対向するようになっている。また、伝熱板209は貫通孔213を中央部に有し、内鍋3の非収納時、貫通孔213は可動部材7で完全に塞がれる。また、伝熱板209の貫通孔213の周縁部には、互いに間隔をあけて複数の溝214,214,…を同心状に設けている。さらに、伝熱板209の複数の溝214,214,…の周囲には、複数の溝224,224,…を設けている。複数の溝224,224,…は貫通孔213を中心に放射状に延びている。複数の溝214,214,…,224,224,…は、伝熱板209の上面において内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって設けられている。また、上記各溝214,224は、断面形状が矩形状または平行四辺形状であり、かつ、幅が2.0mm以上15.0mm以下であり、かつ、深さが1.5mm以上6.0mm以下である。また、溝214同士の間の部分、および、溝224同士の間の部分の断面形状は、矩形状または平行四辺形状となっている。
【0067】
上記構成の炊飯器によれば、伝熱板209を略器形状にしているので、伝熱板209の熱を内鍋3の底部3cの広範囲に伝えることができる。したがって、内鍋3の底部3cの一部に伝熱板209の熱が集中して伝わらず、図1の略皿形状の伝熱板29と比べて、より炊きむらのない安定した炊飯を行える。
【0068】
また、上記複数の溝224,224,…の内側に同心状の複数の溝214,214,…を設けているので、例えば米粒が溝224内に入って自重で滑り落ちても、その米粒を溝214で捕獲できる。したがって、上記米粒などの異物が溝224に沿って滑り落ちて貫通孔213から炊飯器本体201内に入るのを防ぐことができる。
【0069】
上記第2実施形態では、各溝214,224の断面形状は矩形状であったが、図6〜図9の,24,34,44,54の断面形状にしてもよい。
【0070】
上記第2実施形態では、伝熱板209の上面に、同心状の複数の溝214,214,…と、放射状の複数の溝224,224,…とを設けていたが、同心状の複数の溝214,214,…と、放射状の複数の溝224,224,…との一方のみを設けるようにしてもよい。この場合、同心状の複数の溝214,214,…、または、放射状の複数の溝224,224,…は、伝熱板209の上面において内鍋3の底部3cに接触すべき部分の全体にわたって設けるのが好ましい。
【0071】
上記第1,第2実施形態では、伝熱板9,29,39,49,59,209の上面に溝14,24,34,44,54を設けていたが、内鍋3の底部3cの外面に溝14,24,34,44,54を設けてもよい。この場合、溝14,24,34,44,54は、伝熱板9,29,39,49,59,209と接触する内鍋3の接触面の全体にわたって設けるのが好ましい。
【0072】
上記第1,第2実施形態において、伝熱板9,29,39,49,59,209の換わりに、例えば略直方体形状の伝熱ブロックを用いてもよい。つまり、本発明の伝熱部の形状は、板形状に限定されず、様々である。
【0073】
本発明は上記第1,第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1実施形態およびその変形例と上記第2実施形態とを適宜組み合わせたものを本発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…炊飯器本体
2…蓋体
3…内鍋
4…液晶表示部
5…フックボタン
6…操作ボタン
7…可動部材
8…温度センサ
9,29,39,49,59,209…伝熱板
10…ヒータ
11…制御部
12…パッキン
13…貫通孔
14,24,34,44,54…溝
15…米粒
16…異物
17…コイルバネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体内に配置された加熱部と、
上記内鍋の外面に接触すると共に、上記加熱部からの熱を上記内鍋に伝える伝熱部と
を備え、
上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面と、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面との一方には、複数の溝が設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器において、
上記溝の幅2.0mm以上15.0mm以下であり、かつ、上記溝の深さは1.5mm以上6.0mm以下であることを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炊飯器において、
上記溝同士間の部分は、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が三角形状、略三角形状、台形状または略台形状を呈する突起部であることを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の炊飯器において、
上記複数の溝は互いに間隔をあけて同心状または放射状に設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の炊飯器において、
上記複数の溝は、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面に設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の炊飯器において、
上記加熱部は、上記伝熱部に設けた凹部に嵌合されている、または、上記伝熱部に埋め込まれていることを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の炊飯器において、
上記溝は、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面の全体、または、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面の全体にわたって設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項1】
被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体内に配置された加熱部と、
上記内鍋の外面に接触すると共に、上記加熱部からの熱を上記内鍋に伝える伝熱部と
を備え、
上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面と、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面との一方には、複数の溝が設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器において、
上記溝の幅2.0mm以上15.0mm以下であり、かつ、上記溝の深さは1.5mm以上6.0mm以下であることを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炊飯器において、
上記溝同士間の部分は、先端部の幅が基部の幅よりも狭く、かつ、断面が三角形状、略三角形状、台形状または略台形状を呈する突起部であることを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の炊飯器において、
上記複数の溝は互いに間隔をあけて同心状または放射状に設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の炊飯器において、
上記複数の溝は、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面に設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の炊飯器において、
上記加熱部は、上記伝熱部に設けた凹部に嵌合されている、または、上記伝熱部に埋め込まれていることを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の炊飯器において、
上記溝は、上記内鍋と接触する上記伝熱部の接触面の全体、または、上記伝熱部と接触する上記内鍋の接触面の全体にわたって設けられていることを特徴とする炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−218083(P2011−218083A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93087(P2010−93087)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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