説明

炊飯器

【課題】各炊飯メニューに設定され、ごはんの合数などによるバラつきに対して余裕を持った正確な炊飯終了時間を炊飯開始時にユーザに知らせる炊飯器であって、制御手段が炊飯の工程全てを終了したことで炊飯終了が可能である旨をユーザに報知し、炊飯終了時間が経過する以前にユーザが炊飯終了を選択できる炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯器の状態を報知するための報知手段13と、炊飯コースごとに炊飯合数などによるバラつきに余裕を持たせた炊飯終了時間15と、炊飯工程を全て終了するのに要する全工程終了時間と、炊飯終了時間を計測するための計時手段14と、鍋加熱手段5aおよび内蓋加熱手段5bと計時手段と報知手段の動作を制御して炊飯・保温を実行するための制御手段6とを備え、制御手段が炊飯終了時間に達する前に全工程終了時間が経過することによって炊飯終了可能であることを判断して、報知手段によって報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユーザに確実な炊飯終了時間を伝えて、かつ炊飯終了時間以前に炊飯終了を選択することができる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭での調理において炊飯器による炊飯は1時間程度の時間を要し、あらかじめ各家庭で決まっている食事時間に合わせて炊飯する場合には、炊飯終了時刻が炊飯開始時に正確に知ることができると、逆算して炊飯開始することができて利便性が高い。
【0003】
従来、この種の炊飯器は、近年使用者が設定する炊飯メニューや炊き上がり状態に合わせて炊飯時間を推定し、その炊飯時間を炊飯開始時から炊飯残時間として表示する機能が追加されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図2は従来の炊飯器の炊飯工程を示すタイムチャートを示す。図2に示すように、炊飯器に搭載される炊飯工程は通常、前炊工程、炊上工程、沸騰工程、むらし工程を有している。
【0005】
それぞれ、前炊工程は米に十分な水(通常、含水率30%程度)を吸収させるための工程、炊上工程は所定の火力で鍋を加熱して鍋内を沸騰状態にするための工程、沸騰工程は吹きこぼれないように火力を制御して水を米に吸収させつつ蒸発させる工程、むらし工程は若干の加熱によって余分な水分を飛ばしてごはん全体の水分分布を整えつつ米デンプンの糊化に必要な98℃20分という温度条件を沸騰工程に引き続いて保つための工程である。
【0006】
前炊工程とむらし工程は米粒一粒が吸水する、もしくは糊化するために必要な時間が決まっており、合数などの条件によってバラつくものではない。しかし、炊上工程は合数によって調理物の熱容量が変化するため数分単位でバラつく。さらに、沸騰工程は炊上工程に掛かった時間から合数を推定し、その合数に応じて沸騰を保つための火力を調整するため、合数によるバラつきを小さくするように作用するが、鍋底から水がなくなった状態を検知して終了するためにバラつきが生じる。
【0007】
したがって、炊飯器は炊飯開始時にはそのバラつきを認識しないため、正確な炊飯終了時間(炊飯残時間)をユーザに提示するためには、炊飯時間バラつきの余裕を持たせた炊飯終了時間をあらかじめ炊飯器に記憶しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4062889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の炊飯器の構成では炊飯終了時間と全工程終了時間の差分である調整時間だけユーザが余分に炊飯終了を待つこととなる。
【0010】
使用者は炊飯をしている間におかず等の調理を行う場合があり、ご飯が炊き上がる時間とほぼ同時にその調理が完成する様に炊飯終了時間から逆算して調理を開始する。このときおかずが炊飯終了よりも先に出来上がった場合には、夕食を開始するまでに炊飯終了時
間をユーザが待つ、という状況があり得るという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、全工程が終了した時点でユーザに報知し、炊飯終了時間以前であっても炊飯の終了が可能であることをユーザに知らせて、ユーザは他の調理の終了時間や食事の開始時間などに応じて炊飯終了のタイミングをある程度選択することができ、例えば「おかずは出来上がったが、炊飯終了を待つ」といった状況を減らすことを可能とした炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、前記従来の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
【0013】
即ち、炊飯終了時間を炊飯開始時にユーザに提示するためには炊飯時間のバラつき分の余裕を持たせた炊飯終了時間を炊飯器に記憶する必要があり、炊飯に必要な工程は炊飯終了時間以前に全て終了していることを見出した。そしてこの知見により本発明に想到した。
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は炊飯終了時間以前に全工程終了を検知すると、ユーザに炊飯終了が可能である旨を報知する構成とした。
【発明の効果】
【0015】
炊飯開始時点で報知された炊飯終了時間以前に終了可能であることを報知することでユーザは他の調理の終了時間に応じて炊飯終了のタイミングをある程度選択することができ、例えば「おかずは出来上がったが、炊飯終了を待つ」といった状況を減らすことが可能である。
【0016】
したがって、本発明の炊飯器は、炊飯終了時間に幅を持たせて炊飯時間を短縮する炊飯器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の構成を示すブロック図
【図2】従来の炊飯器の炊飯工程を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、炊飯器本体と、炊飯器本体に装備する鍋と、前記鍋を加熱するための鍋加熱手段と、炊飯器本体を覆う蓋と、前記蓋の下面に具備される内蓋と、前記内蓋を加熱するための内蓋加熱手段と、ユーザに炊飯器の状態を報知するための報知手段と、炊飯コースごとに設定されて炊飯合数などによるバラつきに余裕を持たせた炊飯終了時間と、炊飯工程を全て終了するのに要する全工程終了時間と、前記炊飯終了時間を計測するための計時手段と、前記鍋加熱手段および前記内蓋加熱手段と前記計時手段と前記報知手段の動作を制御して炊飯・保温を実行するための制御手段とを備え、前記制御手段が前記炊飯終了時間に達する前に前記全工程終了時間が経過することによって炊飯終了可能であることを判断して、前記報知手段によって報知する構成としたことで、炊飯終了時間に幅を持たせて炊飯時間を短縮する炊飯器を提供することが可能となる。
【0019】
第2の発明は、特に、第1の発明において、蓋開検知手段を設け、前記制御手段が炊飯終了可能であることを判断して、ユーザが蓋開すると、炊飯を終了して保温に移行する構成とすることで、炊飯終了時間に幅を持たせて炊飯時間を短縮し、炊飯終了時間によらず確実に保温を実行させることができる炊飯器を提供することができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1において、炊飯器本体1には、鍋2を着脱自在に配設し、鍋2の外側には鍋2を加熱する鍋加熱手段5aを配設している。
【0023】
炊飯器本体1の上部に蓋(図示せず)を開閉自在に取り付けている。蓋の下部に、炊飯および保温中に鍋2と密着する内蓋4を配設し、その上部には内蓋4を加熱する内蓋加熱手段5bを配設している。そして、蓋の開を検知する蓋開検知手段16を配設している。
【0024】
また、温度検知手段8は、鍋2の底略中心部に当接して熱伝導によって鍋2の温度を検知することができる。鍋加熱手段5a、内蓋加熱手段5bを制御する制御手段6は温度検知手段8によって得られる鍋2の温度を元に、炊飯工程を実行していく。
【0025】
報知手段13としては音声、音、LEDなどの光、液晶画面などの表示、振動など、ユーザに報知する適切なものを配設する。また、時間を測定する計時手段14が配設され、記憶手段(図示せず)に記憶された炊飯終了時間15を制御手段6が参照しながら炊飯の終了を判断する。
【0026】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0027】
ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応した水を鍋2に入れて炊飯器本体1にセットし、蓋を閉めた後に、操作入力表示部(図示しない)の炊飯開始ボタン(図示しない)を操作することで炊飯工程が実施される。このとき、ユーザが選択した炊飯メニュー応じてあらかじめ記憶された炊飯終了時間15が操作入力表示部に残時間として表示されて、計時手段14によってカウントダウン表示がなされる。
【0028】
炊飯工程は、時間順に前炊、炊上、沸騰、むらしに大分される。前炊工程において、制御手段6は、鍋2の温度が米の吸水に適した温度(例えば60℃)になるように、温度検知手段8の検知温度をもとに鍋加熱手段5aを制御し、鍋内の米と水とを加熱する。
【0029】
次に、炊上工程において、内蓋4の温度が所定値(例えば80℃)になるまで鍋加熱手段5aによって鍋2を所定の熱量で加熱する。
【0030】
このとき、合数などの負荷量の違いによる温度上昇速度差によって、炊飯量を判定する。5.5合炊きの炊飯器の場合で最小合数(0.5合)と最大合数(5.5合)で、工程終了までにかかる時間には4分程度の違いが生じる。
【0031】
ここで、米を糊化させて美味な米飯とするためには中心まで吸水させた米を98℃で20分維持することが必要であることがわかっている。
【0032】
そこで沸騰工程では、鍋2の水が無くなり鍋2の温度が100℃を超えた所定値になるまで、炊上工程において判定した炊飯量に応じて水が無くなるまでの時間が合数によって同じになるようにあらかじめ記憶された加熱量になるように鍋加熱手段5aに通電し、米と水を加熱する。
【0033】
しかしながら、ユーザによって米の量や種類、水加減がバラつくことなどから、水がな
くなるまでの時間は一定ではない。
【0034】
次に、むらし工程ではごはんの温度を所定温度(例えば98℃)に保つ程度に加熱手段5を制御してごはんをむらす。
【0035】
むらし工程は、温度と時間で規定される工程であるので、沸騰工程の終了時間がバラつくことにより、全工程終了時間にはバラつきが生じる。そして炊飯器が記憶する炊飯終了時間15は、ユーザに正確に炊飯の終了を提示するために余裕を持って設定されているため、炊飯終了時間15は全工程終了時間に比べて大きい。
【0036】
そこで全工程が終了した時点で、ユーザに炊飯終了が可能である旨を報知手段13によって報知する。音声、LEDや液晶画面表示といった視覚、聴覚など複数の感覚に訴える報知の組み合わせであっても良い。
【0037】
そして炊飯終了時間15を経過すると、制御手段6は保温制御を開始して、所定の保温温度に鍋内を温調する。ここで炊飯終了可能がユーザに報知されてから炊飯終了時間を過ぎるまでに、炊飯器の蓋が開けられたことを蓋開検知手段16が検知すると、ユーザが炊飯終了を選択したと判断して制御手段6は保温制御を開始する。
【0038】
以上のように、本発明における炊飯器は、ユーザは炊飯開始時に提示された炊飯終了時間には確実に終了し、炊飯の全工程が終了したことを報知されることによって炊飯終了のタイミングをある程度選択することができる。
【0039】
これによって、ユーザは他の調理の終了時間に応じて炊飯終了のタイミングをある程度選択することができ、例えば「おかずは出来上がったが、炊飯終了を待つ」といった状況を減らすことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる炊飯器はユーザに提示した終了時間よりも実質早い時間で終了することができることから、他調理との時間調整が可能となり、調理器の用途に有効である。
【符号の説明】
【0041】
1 炊飯器本体
2 鍋
4 内蓋
5a 鍋加熱手段
5b 内蓋加熱手段
6 制御手段
8 温度検知手段
13 報知手段
14 計時手段
15 炊飯終了時間
16 蓋開検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、
前記炊飯器本体に装備する鍋と、
前記鍋を加熱するための鍋加熱手段と、
前記炊飯器本体を覆う蓋と、
前記蓋の下面に具備される内蓋と、
前記内蓋を加熱するための内蓋加熱手段と、
ユーザに炊飯器の状態を報知するための報知手段と、
炊飯コースごとに設定されて炊飯合数などによるバラつきに余裕を持たせた炊飯終了時間と、
炊飯工程を全て終了するのに要する全工程終了時間と、
前記炊飯終了時間を計測するための計時手段と、
前記鍋加熱手段および前記内蓋加熱手段と前記計時手段と前記報知手段の動作を制御して炊飯・保温を実行するための制御手段とを備え、
前記制御手段が前記炊飯終了時間に達する前に前記全工程終了時間が経過することによって炊飯終了可能であることを判断して、前記報知手段によって報知することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
蓋開検知手段を設け、前記制御手段が炊飯終了可能であることを判断して、ユーザが蓋開すると、炊飯を終了して保温に移行することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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