説明

炊飯器

【課題】より小型で、蒸気とおねばの分離性能が高い蒸気分離ユニットを備えた炊飯器を得る。
【解決手段】内蓋排出口より流出する蒸気とおねばの混合気からおねばを分離するための蒸気分離ユニット30を備え、蒸気分離ユニット30は、二重筒構造をなす外筒40と内筒50とを備え、外筒40と内筒50との間に形成された空間を第一流路91とし、内筒内の空間を第二流路92とし、内蓋排出口22から流出した蒸気とおねばを含む流体は、第一流路91及び第二流路92にて旋回するよう導入され、第一流路91及び第二流路92を経た後に蓋体排出口16から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器として、炊飯器の蓋に「蒸気口ユニット」を設け、この「蒸気口ユニット」において、内釜から発生するおねばを含む蒸気を、おねばと蒸気とに分離するものがある。この従来の炊飯器では、「おねばを含む蒸気は、案内筒15を出てから第1の上障壁29、第4の上障壁35、第2の上障壁32、下障壁21及び第3の上障壁34に衝突し、蛇行しながら流れるため案内筒15と蒸気口28間の距離がさらに長くなり、より確実に分離される。」という作用がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3820541号公報(第5頁−第6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のものにおいては、案内筒から蒸気口に至る空間に障壁を設けて蒸気とおねばとを蛇行させることにより、蒸気とおねばとが蒸気口ユニット内を流れる距離を長くして、蒸気とおねばとをより確実に分離できるようにしていた。
しかしながら、蒸気とおねばとが流れる距離を長くするためには、水平方向の経路を長くしたり障壁を高くしたりする必要がある。そうすると、蒸気口ユニットが大型化してしまうこととなる。特に、おいしいご飯を炊くために高火力での沸騰時間を長くした炊飯器においては、加熱手段への入力電力を大きくすると単位時間当たりのおねばと蒸気の発生量も増えるため、蒸気とおねばとが流れる距離をさらに長くする必要があり、蒸気口ユニットはさらに大型化してしまう。このように蒸気口ユニットが大型化すると、材料の使用量が増えて製造コストの増加につながり、また、使用者による取り扱い性も悪くなってしまう。また、炊飯器全体に対して蒸気口ユニットが占める体積の割合も大きくなり、設計的、デザイン的な制約も大きかった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、より小型で、蒸気とおねばの分離性能が高い蒸気分離ユニットを備えた炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体内に着脱可能に収容される内釜と、前記炊飯器本体の上部開口部を覆い、蒸気を外部に排出するための蓋体排出口を備えた蓋体と、前記蓋体の下面に着脱可能に装着されて前記内釜の上部開口部を覆うとともに、前記内釜内の蒸気を排出するための内蓋排出口を備えた内蓋と、前記内蓋排出口より流出する蒸気とおねばの混合気からおねばを分離するための蒸気分離ユニットとを備え、前記蒸気分離ユニットは、二重筒構造をなす外筒と内筒とを備え、前記外筒と前記内筒との間に形成された空間を第一流路とし、前記内筒内の空間を第二流路としており、前記内蓋排出口から流出した前記蒸気とおねばを含む流体は、前記第一流路及び前記第二流路にて旋回するよう導入され、前記第一流路及び前記第二流路を経た後に前記蓋体排出口から排出されるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、第一流路及び第二流路において混合気を旋回させることにより蒸気とおねばとを分離するので、蒸気とおねばの分離性能がよい。また、第一流路と第二流路は内筒を介して二重に配置されるので、蒸気とおねばの分離経路の直線距離を長くすることなく、蒸気とおねばとが流れる距離を長くすることができ、小型で分離性能のよい炊飯器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る炊飯器の断面斜視図である。
【図2】実施の形態に係る炊飯器の断面図である。
【図3】実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面斜視図である。
【図4】実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面図である。
【図5】実施の形態に係る蒸気分離ユニット近傍の断面斜視図である。
【図6】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの外観斜視図である。
【図7】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの分解斜視図である。
【図8】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの断面模式図である。
【図9】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態.
以下、本発明の炊飯器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
[炊飯器の全体構成]
図1は実施の形態に係る炊飯器の断面斜視図、図2は実施の形態に係る炊飯器の断面図である。また、図3は実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面斜視図、図4は実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面図である。なお、以降の説明において、便宜上、図1、図2における紙面上方向を「上」、紙面下方向を「下」と称する場合がある。また、図1及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。更に、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0011】
図1、図2において、炊飯器100は、上部に開口部を有する炊飯器本体1と、炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体10とを備える。
【0012】
炊飯器本体1には、水、米などが入れられる有底筒状で上面が開口した内釜2が着脱自在に収容される。この内釜2は、電磁誘導コイルや電気ヒータ等の加熱手段3により加熱され、これによって内釜2内の米が炊飯されるようになっている。蓋体10の下面側(図1、図2における蓋体10の紙面下側)には、内蓋20が着脱可能に取り付けられている。内蓋20の周縁部には、蓋体10を閉じたときに内釜2の上端部外周に設けられたフランジ2aに密接する環状の内蓋パッキン28が設けられている。
【0013】
蓋体10の上面側には、操作ボタン5が設けられている。操作ボタン5は、炊飯や保温の開始を指示する入力ボタン、炊き上がりの硬さや米の種類など炊飯動作に関する設定を行うための入力ボタン、炊飯予約に関する設定を行うための入力ボタンなどを含んでいる。なお、図示しないが、蓋体10の上面側には、例えば液晶表示装置からなり、時刻、操作ボタン5による設定内容、炊飯動作に関する情報などを表示する表示装置を備えている。
【0014】
蓋体10は、ヒンジ部15により炊飯器本体1に軸支されており、炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆っている。
蓋体10の上面には、炊飯中に発生した蒸気を炊飯器100の外部に放出するための蓋体排出口16が開口している。
【0015】
図1〜図4に示すように、蓋体10の骨格は、大まかには、最上面を構成する意匠天板11と、意匠天板11の下側に設けられた蓋上面部材12と、蓋上面部材12の下側に設けられ蓋体10の下面を構成する蓋下面部材13とによって構成されている。意匠天板11と蓋上面部材12との間に設けられた空間には、操作ボタン5や表示装置の動作を制御する回路が実装された制御基板7が収容されている。蓋上面部材12と蓋下面部材13との間に設けられた空間には、例えば電気ヒータからなる蓋体加熱手段4が設けられている。蓋下面部材13には、上方向に向かって凹んだ凹部が形成されており、この凹部の下面と内蓋20の上面との間に形成される空間を、蒸気分離ユニット収容部14(図3、図4参照)と称する。
【0016】
蒸気分離ユニット収容部14には、炊飯中に内釜2内から発生する蒸気とおねばの混合気を、蒸気とおねばとに分離する遠心分離式の蒸気分離機構(遠心分離式の気液分離機構)を有する蒸気分離ユニット30が設けられている。
【0017】
[蒸気分離機構]
図5は実施の形態に係る蒸気分離ユニット近傍の断面斜視図、図6は実施の形態に係る蒸気分離ユニットの外観斜視図、図7は実施の形態に係る蒸気分離ユニットの分解斜視図、図8は実施の形態に係る蒸気分離ユニットの断面模式図である。図8では、蒸気とおねばの流れを矢印で概念的に記している。また、図9は、実施の形態に係る蒸気分離ユニットの断面模式図であり、第二混合気流入口54を通る軸方向に直交する面での断面模式図である。
【0018】
(内蓋20)
内蓋20の一部には、下側に向かって凹となる凹部が形成されている。この凹部を、おねば溜まり部21と称する。おねば溜まり部21は、本実施の形態では、平面視ほぼ円形であって、内蓋20に設けられた開口部に皿状の別部材を取り付けることによって構成されている。
【0019】
おねば溜まり部21には、内蓋排出口22が開口している。内蓋排出口22は、内釜2内の混合気を内釜2の外に排出するための開口部である。
【0020】
内蓋排出口22からは、上側に向かって混合気案内筒23が起立している。混合気案内筒23は、内蓋排出口22からの混合気を、蒸気分離ユニット30内に導くための中空の円筒である。本実施の形態では、混合気案内筒23の上端側は先細り形状であり、蒸気分離ユニット30に設けられている第一混合気流入口41(後述する)に挿入しやすくなっている。
【0021】
おねば溜まり部21の底面には、おねば溜まり部21内と内釜2内とを連通させるおねば戻し口24が設けられている。おねば戻し口24には、上下動可能に設けられた開閉弁25が取り付けられている。
【0022】
開閉弁25は、内釜2内の内圧が低いときには下降して、おねば戻し口24を開口状態に保持する。また、炊飯中、すなわち内釜2の内圧が高いときにはこの内圧により開閉弁25は上昇し、おねば戻し口24を塞ぐ。なお、開閉弁25は、耐熱性を有し、経年変化しにくい例えばシリコンゴムの如き材料からなる。
【0023】
内蓋20の上面のうちおねば溜まり部21の周囲には、おねば溜まり部21に向かって下降する傾斜面である傾斜部26が設けられている。
【0024】
また、内蓋20の上面からは、上方に向かって係止爪27が起立している。この係止爪27と蒸気分離ユニット30に設けられた係合部(図示せず)との係合構造により、内蓋20に対して蒸気分離ユニット30が着脱可能に取り付けられる。なお、内蓋20に対する蒸気分離ユニット30の取付構造はこれに限定されず、任意のものを採用することができる。
【0025】
(蒸気分離ユニット30)
蒸気分離ユニット30は、ほぼ円筒状の外筒40と、外筒40内に挿入される内筒50と、蒸気導出管60と、外筒40の入口側開口部を覆う入口側キャップ70と、外筒40の出口側開口部を覆う出口側キャップ80とを備える。蒸気分離ユニット30は、外筒40と内筒50の筒軸がほぼ水平となるような向きで、蓋体10に取り付けられている。
【0026】
外筒40の内周面は、ほぼ円筒状に形成されている。外筒40の内部は、蒸気とおねばを分離するための空間であって、蒸気とおねばの混合気の流路となる。
【0027】
外筒40の周壁下部には、第一混合気流入口41が開口している。第一混合気流入口41は、内釜2内で発生した蒸気とおねばの混合気を、外筒40内に流入させるための開口部である。第一混合気流入口41は、外筒40の内周面のほぼ接線方向に開口している。第一混合気流入口41には、内蓋20に設けられた混合気案内筒23が挿入される。第一混合気流入口41の内周部と、混合気案内筒23の先端部外周部との間に、シリコンゴム等の弾性力を有する材料からなるパッキン等のシール部材(図示せず)を設けてもよく、このようにすることで、混合気案内筒23と第一混合気流入口41とのシール性の確保と混合気案内筒23の嵌合状態の安定化を図ることができる。
【0028】
外筒40の周壁下部であって、外筒40の円筒軸方向における第一混合気流入口41の反対側には、第一おねば流出口42が開口している。第一おねば流出口42は、外筒40内において蒸気とおねばの混合気から分離されたおねばを、外筒40の外部に流出させるための開口部である。第一おねば流出口42は、おねば溜まり部21若しくは傾斜部26の上方、又は両者に跨る位置の上方に配置される。本実施の形態では、1つの第一おねば流出口42を設ける例を示すが、複数の第一おねば流出口42を設けてもよい。また、外筒40の下部の内壁面は、第一おねば流出口42に向かってやや下降する傾斜面45となっている。
【0029】
内筒50は、内部に、軸方向と直交する断面がほぼ円形の内壁面に囲まれた空間を有する部材である。内筒50の内部は、混合気の流路(第二流路92と称する)となる。内筒50は、入口側キャップ70と一体的に構成されており、入口側キャップ70を介して外筒40内に配置される。
内筒50は、一端側に形成された入口部51と、他端側に形成されたほぼ円筒状の出口部53と、入口部51と出口部53とを接続するテーパー部52とを有している。テーパー部52の外壁面及び内壁面は、入口部51から出口部53に向かう先細りのテーパー状に形成されている。入口部51よりも出口部53の方が、その外周壁及び内周面の径が小さく構成されている。すなわち、内筒50内に形成されている第二流路92は、入口部51に対して出口部53における流路断面積が小さくなっている。
【0030】
出口部53には、第二おねば流出口55が開口している。第二おねば流出口55は、内筒50内において蒸気とおねばの混合気から分離されたおねばを、内筒50の外部に流出させるための開口部である。本実施の形態では、複数の第二おねば流出口55を設ける例を示しているが(図7参照)、この数を限定するものではない。第二おねば流出口55は、外筒40に設けられた第一混合気流入口41の上方に配置されている。
【0031】
入口部51には、内筒50内におねばと蒸気の混合気を流入させるための開口部として第二混合気流入口54が設けられている。第二混合気流入口54は、入口部51の周壁の一部を切り欠いて形成されている。図9に示すように、入口部51を軸方向に直交する断面で見ると、入口部51の周壁は螺旋状に形成されており、入口部51の外周壁に沿って旋回する流体が、第二混合気流入口54から内筒50内壁の接線方向に流入可能な構成である。
【0032】
蒸気導出管60は、外筒40、内筒50内において混合気から分離された蒸気を、蒸気分離ユニット30の外部に導くためのほぼ円筒状の管路である。蒸気導出管60は、出口側キャップ80と一体構成されており、出口側キャップ80を介して外筒40に取り付けられる。
【0033】
蒸気導出管60の上流端61は、内筒50の入口部51内に挿入されている。また、蒸気導出管60の下流端62は、外筒40の外部に露出している。
【0034】
入口側キャップ70には係止爪71が設けられ、外筒40には係合部44が設けられており、係止爪71を係合部44に係合させることで、入口側キャップ70を外筒40に取り付けることができる。係止爪71と係合部44との係合状態は、使用者の操作により解除可能であり、使用者は外筒40から入口側キャップ70を取り外すことができる。
また、外筒40には係止爪43が設けられ、出口側キャップ80には係合部81が設けられており、係止爪43を係合部81に係合させることで、出口側キャップ80を外筒40に取り付けることができる。係止爪43と係合部81との係合状態は、使用者の操作により解除可能であり、使用者は外筒40から出口側キャップ80を取り外すことができる。
このように、蒸気分離ユニット30を構成する各部材を着脱可能な構成とすることで、おねばによって汚れうる蒸気分離ユニット30の清掃を行いやくすることができる。なお、本実施の形態で示した係止爪と係合部とによる着脱構造は一例であり、任意の着脱構造を採用できる。
【0035】
次に、外筒40、内筒50、及び蒸気導出管60の配置関係を説明する。
内筒50は、外筒40とほぼ同軸に、外筒40の内壁面から隙間を設けた位置に配置される。これにより、外筒40の内壁面と、内筒50の外壁面との間には、流体の流路(第一流路91と称する)が形成される。また、前述のように、内筒50の内部には、第二流路92が形成されている。第一流路91と第二流路92は、内筒50を介して、ほぼ同軸上に二重に配置されていることとなる。
【0036】
また、外筒40の内壁面は、上流側と下流側とでほぼ同径に構成されているが、内筒50の外壁面は、出口部53、テーパー部52、入口部51の順に径が大きくなるよう構成されている。このため、第一流路91は、流体流れの上流側(内筒50の出口部53の外側に対応する部分)に対して下流側(内筒50の入口部51の外側に対応する部分)の方が、流路断面積が小さくなっている。
【0037】
蒸気導出管60は、内筒50とほぼ同軸に、入口部51の内部に上流端61が位置するように配置される。
【0038】
[蒸気分離ユニット30の作用]
次に、蒸気分離ユニット30を備えた炊飯器100の作用を説明する。
使用者が、水と米を入れた内釜2を炊飯器本体1内に収容して蓋体10を閉じ、操作ボタン5を操作すると、加熱手段3の作用によって内釜2が加熱され、内釜2内の水が沸騰すると、おねばを含んだ蒸気が発生する。このとき、内釜2の内圧が上昇しているため、開閉弁25は、押し上げられておねば戻し口24を閉塞する。このため、おねばを含む蒸気は、内釜2内を上昇し、内蓋排出口22と混合気案内筒23を通り、第一混合気流入口41に挿入された混合気案内筒23の端部から外筒40内へと導かれる。
【0039】
混合気案内筒23から出たおねばを含む蒸気(混合気X)は、ほぼ円筒状に形成された外筒40の内壁の接線方向から第一流路91の内部に流入し、外筒40の内壁面に沿って旋回しながら流れる。この旋回に伴う遠心力で、比重の異なる蒸気とおねばとが分離される。第一流路91は、流れの上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されているので、流路断面積の縮小により混合気Xの流速が上がり、圧力損失に伴う混合気Xの流速の低下を抑制することができるようになっている。第一流路91において分離されたおねばは、外筒40の内壁に沿って下方に流れ、第一流路91の下流側に開口した第一おねば流出口42を通って外筒40から出て、おねば溜まり部21内や傾斜部26上に落下する。傾斜部26は、おねば溜まり部21に向かって下降しており、傾斜部26上に落下したおねばは、傾斜部26上を流れておねば溜まり部21内に溜まる。
【0040】
第一流路91を流れてきた混合気は、内筒50の入口部51に設けられた第二混合気流入口54から内筒50内へと進入する。図9で示したように、入口部51の外周壁は、軸方向に直交する断面において螺旋状に形成されており、入口部51の外周側を旋回しながら流れる混合気Xは、第二混合気流入口54からスムースに内筒50の内壁の接線方向から内筒50内へと入る。
【0041】
内筒50内へ入った混合気(混合気Y)は、内筒50内に形成された第二流路92内を、内筒50の内壁面に沿って旋回しながら流れる。この旋回に伴う遠心力で、第一流路91内において分離しきれなかったおねばが混合気Yから分離される。第二流路92は、流れの上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されているので、流路断面積の縮小により混合気の流速が上がり、圧力損失に伴う混合気Yの流速の低下を抑制することができる用になっている。そして、第二流路92内において分離されたおねばは、内筒50の内周面に沿って下方に流れ、第二流路92の下流側に開口した第二おねば流出口55から出て、外筒40内へと落下する。
【0042】
第二おねば流出口55から出て外筒40内へと入ったおねばの一部は、外筒40の傾斜面45上を、第一おねば流出口42の方へ向かって流れ、第一おねば流出口42から外筒40の外へと出る。また、本実施の形態においては、第二おねば流出口55は第一混合気流入口41の上方に配置されているため、第二おねば流出口55から出たおねばの一部は、混合気案内筒23から新たに外筒40内へと流入する混合気と混ざって、再び第一流路91内を流れ、この過程において混合気から分離されることとなる。
【0043】
第二流路92内において混合気Yからおねばが分離された残りの流体はほぼ蒸気であり、この蒸気は、第二流路92のほぼ中央部を、旋回流の進行方向とは逆方向に流れ、内筒50とほぼ同軸上に設けられた蒸気導出管60の上流端61から蒸気導出管60内へと入る。蒸気導出管60内へ入った蒸気は、この内部を流れ、下流端62から出て、蒸気排出路17を通過し、蓋体排出口16から蓋体10の外部へと流出する。ここで、第二流路92内において分離しきれなかったおねばが蒸気導出管60の下流端62から泡として出てきたとしても、蒸気排出路17の壁面等に衝突して泡は潰れ、おねばの泡が蓋体排出口16から直接的に流出しにくくなっている。
【0044】
その後、加熱が停止して内釜2の内圧が低下すると、開閉弁25は、自重及びおねばの重量によって下降し、おねば溜まり部21の底面に設けられたおねば戻し口24を開口させる。これにより、おねば溜まり部21内に溜まったおねばは、おねば戻し口24から内釜2内に落下する。おねばが内釜2内のご飯に戻ることにより、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【0045】
以上のように本実施の形態によれば、第一流路91と第二流路92を設け、内釜2内で発生した蒸気とおねばを含む混合気を、第一流路91において旋回させた後に第二流路92において旋回させるようにした。第一流路91及び第二流路92において混合気を旋回させることにより蒸気とおねばとを分離するので、蒸気とおねばの分離性能がよい。また、第一流路91と第二流路92は内筒50を介して二重に配置されるので、蒸気とおねばの分離経路の直線距離を長くすることなく、蒸気とおねばとが流れる距離を長くすることができ、小型で分離性能のよい炊飯器を得ることができる。
【0046】
また、外筒40には第一流路91の下流側に第一おねば流出口42を設け、内筒50には第二流路92の下流側に第二おねば流出口55を設けたので、混合気から分離されたおねばを外筒40、内筒50から外部に流出させることができる。このため、外筒40、内筒50内におねばが蓄積することによっておねばと蒸気の分離性能が低下するのを抑制できる。
【0047】
また、第一流路91、第二流路92において分離され、外筒40、内筒50から流出したおねばは、内釜2内に戻すようにした。おねばを内釜2内に戻すことで、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【0048】
また、第一流路91及び第二流路92は、流れ方向の上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるように構成した。このため、第一流路91、第二流路92を混合気が流れる過程において、圧力損失に伴って混合気の流速が低下するのを抑制することができる。第一流路91、第二流路92の下流側においても混合気の流速の低下を抑制することで、混合気の旋回力を維持し、蒸気とおねばの分離性能を維持することができる。なお、第一流路91、第二流路92においておねばの分離が可能な程度に混合気の流速が確保できる場合には、上流側から下流側までほぼ同一の流路断面積を有する第一流路91、第二流路92としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 炊飯器本体、2 内釜、2a フランジ、3 加熱手段、4 蓋体加熱手段、5 操作ボタン、7 制御基板、10 蓋体、11 意匠天板、12 蓋上面部材、13 蓋下面部材、14 蒸気分離ユニット収容部、15 ヒンジ部、16 蓋体排出口、17 蒸気排出路、20 内蓋、21 おねば溜まり部、22 内蓋排出口、23 混合気案内筒、24 おねば戻し口、25 開閉弁、26 傾斜部、27 係止爪、28 内蓋パッキン、30 蒸気分離ユニット、40 外筒、41 第一混合気流入口、42 第一おねば流出口、43 係止爪、44 係合部、45 傾斜面、50 内筒、51 入口部、52 テーパー部、53 出口部、54 第二混合気流入口、55 第二おねば流出口、60 蒸気導出管、61 上流端、62 下流端、70 入口側キャップ、71 係止爪、80 出口側キャップ、81 係合部、91 第一流路、92 第二流路、100 炊飯器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、
前記炊飯器本体内に着脱可能に収容される内釜と、
前記炊飯器本体の上部開口部を覆い、蒸気を外部に排出するための蓋体排出口を備えた蓋体と、
前記蓋体の下面に着脱可能に装着されて前記内釜の上部開口部を覆うとともに、前記内釜内の蒸気を排出するための内蓋排出口を備えた内蓋と、
前記内蓋排出口より流出する蒸気とおねばを含む流体からおねばを分離するための蒸気分離ユニットとを備え、
前記蒸気分離ユニットは、
二重筒構造をなす外筒と内筒とを有し、
前記外筒と前記内筒との間に形成された空間を第一流路とし、
前記内筒内の空間を第二流路としており、
前記内蓋排出口から流出した前記蒸気とおねばを含む流体は、前記第一流路及び前記第二流路にて旋回するよう導入され、前記第一流路及び前記第二流路を経た後に前記蓋体排出口から排出される
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記外筒には、前記内蓋排出口から出た前記蒸気とおねばを含む流体が、内周面のほぼ接線方向に流入するよう開口した第一混合気流入口が形成され、
前記内筒には、前記第一流路における旋回流の旋回方向とほぼ対向するように開口し、前記第一流路と前記第二流路とを連通させる第二混合気流入口が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記第二流路における旋回流の軸流と対向する位置に開口し、内部に流路を有する蒸気導出管を備え、
前記内筒を出た前記旋回流の軸流を、前記蒸気導出管を介して前記蓋体排出口から排出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記外筒には、前記第一流路の下流側に対応する位置に、おねばを前記外筒から流出させる第一おねば流出口が形成されており、
前記内筒には、前記第二流路の下流側に対応する位置に、おねばを前記内筒から流出させる第二おねば流出口が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記内蓋には、前記第一おねば流出口または前記第二おねば流出口から流出したおねばを前記内釜内へ戻すおねば戻し穴が形成されている
ことを特徴とする請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
前記第一流路及び第二流路は、上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記内筒の外周面を、前記第一流路における上流側に対して下流側の方が径が大きくなるように構成し、
前記内筒の内周面を、前記第二流路における上流側に対して下流側の方が径が小さくなるよう構成することにより、
前記第一流路及び第二流路を、上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成した
ことを特徴とする請求項6記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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