炊飯器
【課題】より小型で蒸気とおねばの分離性能が高い蒸気分離機構を備えた炊飯器を得る。
【解決手段】第一分離部は、二重筒構造をなす外筒40と内筒50とを有し、外筒40と内筒50との間に形成された空間を第一流路91とし、内筒50内の空間を第二流路92として、内蓋排出口22から流出した蒸気とおねばを含む流体を、第一流路91で旋回するよう外筒40に導入し、第一流路91から出た流体を、第二流路92にて旋回するよう内筒50に導入するものであり、第二分離部は、第二流路92における旋回流の軸流と対向する位置に開口し、内部に第一蒸気導出路95を有する軸体73と、軸体73の外周に設けられた固定翼72と、固定翼72の外周側にて固定翼72を保持するとともに、固定翼72の下流側にて軸体73の外周面との間に隙間を設けて第三流路93を形成する固定翼保持筒70とを備えた。
【解決手段】第一分離部は、二重筒構造をなす外筒40と内筒50とを有し、外筒40と内筒50との間に形成された空間を第一流路91とし、内筒50内の空間を第二流路92として、内蓋排出口22から流出した蒸気とおねばを含む流体を、第一流路91で旋回するよう外筒40に導入し、第一流路91から出た流体を、第二流路92にて旋回するよう内筒50に導入するものであり、第二分離部は、第二流路92における旋回流の軸流と対向する位置に開口し、内部に第一蒸気導出路95を有する軸体73と、軸体73の外周に設けられた固定翼72と、固定翼72の外周側にて固定翼72を保持するとともに、固定翼72の下流側にて軸体73の外周面との間に隙間を設けて第三流路93を形成する固定翼保持筒70とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器として、炊飯器の蓋に「蒸気口ユニット」を設け、この「蒸気口ユニット」において、内釜から発生するおねばを含む蒸気を、おねばと蒸気とに分離するものがある。この従来の炊飯器では、「おねばを含む蒸気は、案内筒15を出てから第1の上障壁29、第4の上障壁35、第2の上障壁32、下障壁21及び第3の上障壁34に衝突し、蛇行しながら流れるため案内筒15と蒸気口28間の距離がさらに長くなり、より確実に分離される。」という作用がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3820541号公報(第5頁−第6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のものにおいては、案内筒から蒸気口に至る空間に障壁を設けて蒸気とおねばとを蛇行させることにより、蒸気とおねばとが蒸気口ユニット内を流れる距離を長くして、蒸気とおねばとをより確実に分離できるようにしていた。
しかしながら、蒸気とおねばとが流れる距離を長くするためには、水平方向の経路を長くしたり障壁を高くしたりする必要がある。そうすると、蒸気口ユニットが大型化してしまうこととなる。特に、おいしいご飯を炊くために高火力での沸騰時間を長くした炊飯器においては、加熱手段への入力電力を大きくすると単位時間当たりのおねばと蒸気の発生量も増えるため、蒸気とおねばとが流れる距離をさらに長くする必要があり、蒸気口ユニットはさらに大型化してしまう。このように蒸気口ユニットが大型化すると、材料の使用量が増えて製造コストの増加につながり、また、使用者による取り扱い性も悪くなってしまう。また、炊飯器全体に対して蒸気口ユニットが占める体積の割合も大きくなり、設計的、デザイン的な制約も大きかった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、より小型で、蒸気とおねばの分離性能が高い蒸気分離機構を備えた炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体内に着脱可能に収容される内釜と、前記炊飯器本体の上部開口部を覆い、蒸気を外部に排出するための蓋体排出口を備えた蓋体と、前記蓋体の下面に着脱可能に装着されて前記内釜の上部開口部を覆うとともに、前記内釜内の蒸気を排出するための内蓋排出口を備えた内蓋と、第一分離部、及び前記第一分離部よりも下流側に設けられた第二分離部を有し、前記内蓋排出口から排出される蒸気とおねばを含む流体からおねばを分離するためのおねば分離ユニットとを備え、前記第一分離部は、二重筒構造をなす外筒と内筒とを有し、前記外筒と前記内筒との間に形成された空間を第一流路とし、前記内筒内の空間を第二流路として、前記内蓋排出口から流出した前記蒸気とおねばを含む流体を、前記第一流路で旋回するよう前記外筒に導入し、前記第一流路から出た流体を、前記第二流路にて旋回するよう前記内筒に導入するものであり、前記第二分離部は、前記第二流路における旋回流の軸流と対向する位置に開口し、内部に第一蒸気導出路を有する軸体と、前記軸体の外周に設けられた固定翼と、前記固定翼の外周側にて前記固定翼を保持するとともに、前記固定翼の下流側にて前記軸体の外周面との間に隙間を設けて第三流路を形成する固定翼保持筒と、を備え、前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち中心成分は、前記第一蒸気導出路に導かれ、前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち外周成分は、前記固定翼を経て第三流路内に導かれるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、第一流路、第二流路、及び第三流路において混合気を旋回させることにより蒸気とおねばとを分離するので、蒸気とおねばの分離性能がよい。また、第一流路と第二流路は内筒を介して二重に配置されるので、蒸気とおねばの分離経路の直線距離を長くすることなく、蒸気とおねばとが流れる距離を長くすることができ、小型で分離性能のよい炊飯器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る炊飯器の断面斜視図である。
【図2】実施の形態に係る炊飯器の断面図である。
【図3】実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面斜視図である。
【図4】実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面図である。
【図5】実施の形態に係る蒸気分離ユニット近傍の断面斜視図である。
【図6】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの外観斜視図である。
【図7】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの分解斜視図である。
【図8】図6の仮想切断面Aにおける蒸気分離ユニットの断面図である。
【図9】図6の仮想切断面Bにおける蒸気分離ユニットの断面図である。
【図10】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態.
以下、本発明の炊飯器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
[炊飯器の全体構成]
図1は実施の形態に係る炊飯器の断面斜視図、図2は実施の形態に係る炊飯器の断面図である。また、図3は実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面斜視図、図4は実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面図である。なお、以降の説明において、便宜上、図1、図2における紙面上方向を「上」、紙面下方向を「下」と称する場合がある。また、図1及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。更に、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0011】
図1、図2において、炊飯器100は、上部に開口部を有する炊飯器本体1と、炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体10とを備える。
【0012】
炊飯器本体1には、水、米などが入れられる有底筒状で上面が開口した内釜2が着脱自在に収容される。この内釜2は、電磁誘導コイルや電気ヒータ等の加熱手段3により加熱され、これによって内釜2内の米が炊飯されるようになっている。蓋体10の下面側(図1、図2における蓋体10の紙面下側)には、内蓋20が着脱可能に取り付けられている。内蓋20の周縁部には、蓋体10を閉じたときに内釜2の上端部外周に設けられたフランジ2aに密接する環状の内蓋パッキン28が設けられている。
【0013】
蓋体10の上面側には、操作ボタン5が設けられている。操作ボタン5は、炊飯や保温の開始を指示する入力ボタン、炊き上がりの硬さや米の種類など炊飯動作に関する設定を行うための入力ボタン、炊飯予約に関する設定を行うための入力ボタンなどを含んでいる。なお、図示しないが、蓋体10の上面側には、例えば液晶表示装置からなり、時刻、操作ボタン5による設定内容、炊飯動作に関する情報などを表示する表示装置を備えている。
【0014】
蓋体10は、ヒンジ部15により炊飯器本体1に軸支されており、炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆っている。
蓋体10の上面には、炊飯中に発生した蒸気を炊飯器100の外部に放出するための蓋体排出口16が開口している。
【0015】
図1〜図4に示すように、蓋体10の骨格は、大まかには、最上面を構成する意匠天板11と、意匠天板11の下側に設けられた蓋上面部材12と、蓋上面部材12の下側に設けられ蓋体10の下面を構成する蓋下面部材13とによって構成されている。意匠天板11と蓋上面部材12との間に設けられた空間には、操作ボタン5や表示装置の動作を制御する回路が実装された制御基板7が収容されている。蓋上面部材12と蓋下面部材13との間に設けられた空間には、例えば電気ヒータからなる蓋体加熱手段4が設けられている。蓋下面部材13には、上方向に向かって凹んだ凹部が形成されており、この凹部の下面と内蓋20の上面との間に形成される空間を、蒸気分離ユニット収容部14(図3、図4参照)と称する。
【0016】
蒸気分離ユニット収容部14には、炊飯中に内釜2内から発生する蒸気とおねばの混合気を、蒸気とおねばとに分離する遠心分離式の蒸気分離機構(遠心分離式の気液分離機構)を有する蒸気分離ユニット30が設けられている。
【0017】
[蒸気分離機構]
図5は実施の形態に係る蒸気分離ユニット近傍の断面斜視図、図6は実施の形態に係る蒸気分離ユニットの外観斜視図、図7は実施の形態に係る蒸気分離ユニットの分解斜視図である。図8は図6の仮想切断面Aにおける蒸気分離ユニットの断面図であり、図6の蒸気分離ユニットを紙面手前から見た図である。図9は図6の仮想切断面Bにおける蒸気分離ユニットの断面図であり、図6の蒸気分離ユニットを上から見た図である。図8では、蒸気とおねばの流れを矢印で概念的に記している。また、図10は、実施の形態に係る蒸気分離ユニットの断面模式図であり、第二混合気流入口54を通る軸方向に直交する面での断面模式図である。
【0018】
(内蓋20)
内蓋20の一部には、下側に向かって凹となる凹部が形成されている。この凹部を、おねば溜まり部21と称する。おねば溜まり部21は、本実施の形態では、平面視ほぼ円形であって、内蓋20に設けられた開口部に皿状の別部材を取り付けることによって構成されている。
【0019】
おねば溜まり部21には、内蓋排出口22が開口している。内蓋排出口22は、内釜2内の混合気を内釜2の外に排出するための開口部である。
【0020】
内蓋排出口22からは、上側に向かって混合気案内筒23が起立している。混合気案内筒23は、内蓋排出口22からの混合気を、蒸気分離ユニット30内に導くための中空の円筒である。本実施の形態では、混合気案内筒23の上端側は先細り形状であり、蒸気分離ユニット30に設けられている第一混合気流入口41(後述する)に挿入しやすくなっている。
【0021】
おねば溜まり部21の底面には、おねば溜まり部21内と内釜2内とを連通させるおねば戻し口24が設けられている。おねば戻し口24には、上下動可能に設けられた開閉弁25が取り付けられている。
【0022】
開閉弁25は、内釜2内の内圧が低いときには下降して、おねば戻し口24を開口状態に保持する。また、炊飯中、すなわち内釜2の内圧が高いときにはこの内圧により開閉弁25は上昇し、おねば戻し口24を塞ぐ。なお、開閉弁25は、耐熱性を有し、経年変化しにくい例えばシリコンゴムの如き材料からなる。
【0023】
内蓋20の上面のうちおねば溜まり部21の周囲には、おねば溜まり部21に向かって下降する傾斜面である傾斜部26が設けられている。
【0024】
また、内蓋20の上面からは、上方に向かって係止爪27が起立している。この係止爪27と蒸気分離ユニット30に設けられた係合部(図示せず)との係合構造により、内蓋20に対して蒸気分離ユニット30が着脱可能に取り付けられる。なお、内蓋20に対する蒸気分離ユニット30の取付構造はこれに限定されず、任意のものを採用することができる。
【0025】
(蒸気分離ユニット30)
蒸気分離ユニット30は、ほぼ円筒状の外筒40と、外筒40内に挿入される内筒50と、外筒40に接続された固定翼保持筒70と、固定翼保持筒70に接続された蒸気導出管60と、外筒40の入口側開口部を覆う入口側キャップ81と、蒸気導出管60の出口側開口部を覆う出口側キャップ82とを備える。
【0026】
外筒40の内周壁は、ほぼ円筒状に形成されている。外筒40の内部は、蒸気とおねばを分離するための空間であって、蒸気とおねばの混合気の流路となる。
【0027】
外筒40の周壁下部には、第一混合気流入口41が開口している。第一混合気流入口41は、内釜2内で発生した蒸気とおねばの混合気を、外筒40内に流入させるための開口部である。第一混合気流入口41は、外筒40の内周壁のほぼ接線方向に開口している。第一混合気流入口41には、内蓋20に設けられた混合気案内筒23が挿入される。第一混合気流入口41の内周部と、混合気案内筒23の先端部外周部との間に、シリコンゴム等の弾性力を有する材料からなるパッキン等のシール部材(図示せず)を設けてもよく、このようにすることで、混合気案内筒23と第一混合気流入口41とのシール性の確保と混合気案内筒23の嵌合状態の安定化を図ることができる。
【0028】
外筒40の周壁下部であって、外筒40の円筒軸方向における第一混合気流入口41の反対側には、第一おねば流出口42が開口している。第一おねば流出口42は、外筒40内において蒸気とおねばの混合気から分離されたおねばを、外筒40の外部に流出させるための開口部である。第一おねば流出口42は、おねば溜まり部21若しくは傾斜部26の上方、又は両者に跨る位置の上方に配置される。本実施の形態では、1つの第一おねば流出口42を設ける例を示すが、複数の第一おねば流出口42を設けてもよい。また、外筒40の下部の内壁面は、第一おねば流出口42に向かってやや下降する傾斜面45となっている。
【0029】
内筒50は、内部に、軸方向と直交する断面がほぼ円形の内壁面に囲まれた空間を有する部材である。内筒50の内部は、混合気の流路(第二流路92と称する)となる。内筒50は、入口側キャップ81と一体的に構成されており、入口側キャップ81を介して外筒40内に配置される。
内筒50は、一端側に形成された入口部51と、他端側に形成されたほぼ円筒状の出口部53と、入口部51と出口部53とを接続するテーパー部52とを有している。テーパー部52の外壁面及び内壁面は、入口部51から出口部53に向かう先細りのテーパー状に形成されている。入口部51よりも出口部53の方が、その外周壁及び内周壁の径が小さく構成されている。すなわち、内筒50内に形成されている第二流路92は、入口部51に対して出口部53における流路断面積が小さくなっている。
【0030】
出口部53には、第二おねば流出口55が開口している。第二おねば流出口55は、内筒50内において蒸気とおねばの混合気から分離されたおねばを、内筒50の外部に流出させるための開口部である。本実施の形態では、複数の第二おねば流出口55を設ける例を示しているが(図7参照)、この数を限定するものではない。第二おねば流出口55は、外筒40に設けられた第一混合気流入口41の上方に配置されている。
【0031】
入口部51には、内筒50内におねばと蒸気の混合気を流入させるための開口部として第二混合気流入口54が設けられている。第二混合気流入口54は、入口部51の周壁の一部を切り欠いて形成されている。図10に示すように、入口部51を軸方向に直交する断面で見ると、入口部51の周壁は螺旋状に形成されており、入口部51の外周壁に沿って旋回する流体が、第二混合気流入口54から内筒50内壁の接線方向に流入可能な構成である。
【0032】
固定翼保持筒70はほぼ円筒状の胴部71を有し、胴部71の中空部に固定翼72が形成され、固定翼72の中央には軸体73が設けられている。固定翼保持筒70は、外筒40及び内筒50よりも下流側で、かつ蒸気導出管60よりも上流側に配置される。
【0033】
胴部71は、外筒40とほぼ同じ外径を有し、外筒40の流体流れ下流側に接続される。胴部71の内周壁は、ほぼ円筒状に形成されており、胴部71の内部は蒸気とおねばを分離するための空間となる。胴部71の内部であって固定翼72の下流側に形成される流路を、第三流路93と称する。
【0034】
固定翼72は、固定翼保持筒70に流入してくる流体の流れに回転力を加えて旋回流に変えるための複数の翼部を備えている。固定翼72を構成する翼部は、胴部71の内周壁に取り付けられている。
【0035】
軸体73は、胴部71の筒軸方向とほぼ同軸に延びる中空状の管状部材であり、固定翼72の中央部に設けられている。軸体73において、流体流れの上流側(図8、図9における紙面左側)端部(上流端部73aと称する)の外壁は、ややドーム状に先細った形状であり、この上流端部73aの外壁に沿って流体がスムースに固定翼72へと流れるようになっている。なお、本実施の形態では、上流端部73aがドーム状のものを例示しているが、円錐状としてもよい。軸体73の下流側の端部(下流端部73bと称する)は、胴部71よりも軸方向外側に突出している。軸体73の中空部は、蒸気が通過する流路(第一蒸気導出路95と称する)となる。
【0036】
胴部71の周壁下部であって、第三流路93の外枠を構成する部分には、第三おねば流出口77が開口している。第三おねば流出口77は、第三流路93内において蒸気とおねばの混合気から分離されたおねばを、固定翼保持筒70の外部に流出させるための開口部である。
【0037】
蒸気導出管60は、外筒40、内筒50内において混合気から分離された蒸気を、蒸気分離ユニット30の外部に導くためのほぼ円筒状の管路である。蒸気導出管60内の流路を、第二蒸気導出路96と称する。また、蒸気導出管60の、蒸気流れ上流側の端部を上流端61、下流側の端部を下流端62と称する。本実施の形態では、上流端61側の管路は、流れ方向下流側(下流端62側)に向かって内径がやや窄まっている。蒸気導出管60は、出口側キャップ82と一体構成されており、出口側キャップ82を介して外筒40に取り付けられる。
【0038】
入口側キャップ81には係止爪81aが設けられ、外筒40には係合部44が設けられており、係止爪81aを係合部44に係合させることで、入口側キャップ81を外筒40に取り付けることができる。係止爪81aと係合部44との係合状態は、使用者の操作により解除可能であり、使用者は外筒40から入口側キャップ81を取り外すことができる。
また、外筒40には係止爪43が設けられ、固定翼保持筒70には係合部74が設けられており、係止爪43を係合部74に係合させることで、固定翼保持筒70を外筒40に取り付けることができる。係止爪43と係合部74との係合状態は、使用者の操作により解除可能であり、使用者は外筒40から固定翼保持筒70を取り外すことができる。
また、出口側キャップ82には係止爪82aが設けられ、固定翼保持筒70には係合部75が設けられており、係止爪82aを係合部75に係合させることで、出口側キャップ82を固定翼保持筒70に取り付けることができる。
このように、蒸気分離ユニット30を構成する各部材を着脱可能な構成とすることで、おねばによって汚れうる蒸気分離ユニット30の清掃を行いやくすることができる。なお、本実施の形態で示した係止爪と係合部とによる着脱構造は一例であり、任意の着脱構造を採用できる。また、蒸気分離ユニット30内を清掃可能とするためには、これを構成する部材を互いに分離可能な構成とすることが好ましいが、分離させる部材の単位は実施の形態に記載のものに限らない。
【0039】
次に、外筒40、内筒50、蒸気導出管60、及び固定翼保持筒70の配置関係を説明する。
内筒50は、外筒40とほぼ同軸に、外筒40の内壁面から隙間を設けた位置に配置される。これにより、外筒40の内壁面と、内筒50の外壁面との間には、流体の流路(第一流路91と称する)が形成される。また、前述のように、内筒50の内部には、第二流路92が形成されている。第一流路91と第二流路92は、内筒50を介して、ほぼ同軸上に二重に配置されていることとなる。
【0040】
また、外筒40の内壁面は、上流側と下流側とでほぼ同径に構成されているが、内筒50の外壁面は、出口部53、テーパー部52、入口部51の順に径が大きくなるよう構成されている。このため、第一流路91は、流体流れの上流側(内筒50の出口部53の外側に対応する部分)に対して下流側(内筒50の入口部51の外側に対応する部分)の方が、流路断面積が小さくなっている。
【0041】
固定翼保持筒70は、軸体73が内筒50と同軸となるようにして、外筒40に取り付けられる。外筒40に取り付けられた状態において、軸体73の上流端部73aの先端部分は、内筒50の入口部51との間に隙間を介して挿入される。軸体73の上流端部73aの外周面と、内筒50の入口部51の内周面との間に形成される隙間を、第三混合気流入口76と称する。第三混合気流入口76は、固定翼保持筒70への混合気の流入口となる。
【0042】
固定翼保持筒70に出口側キャップ82が取り付けられた状態においては、軸体73内に形成される第一蒸気導出路95と、蒸気導出管60内に形成される第二蒸気導出路96は、同軸上に配置される。
また、軸体73の下流端部73bは、蒸気導出管60の内周壁との間に隙間を介して蒸気導出管60内に挿入される。軸体73の下流端部73bの外周面と、蒸気導出管60の内周面との間に形成される隙間を、蒸気合流口63と称する。蒸気合流口63は、第三流路93おいておねばが分離された残りの流体(蒸気)を、蒸気導出管60内に流入させる流入口となる。
【0043】
第一混合気流入口41の上方には、第二おねば流出口55が配置されている。また、第二混合気流入口54の下方には、第一おねば流出口42が配置されている。第三おねば流出口77は、本実施の形態では、内蓋20の傾斜部26の上方に配置されている。
【0044】
なお、本実施の形態では、外筒40、内筒50、及びこれらによって構成される第一流路91、第二流路92が、本発明の第一分離部に相当する。
また、本実施の形態では、固定翼保持筒70、固定翼72、軸体73、及びこれらを含む部材によって構成される第三流路93が、本発明の第二分離部に相当する。
【0045】
[蒸気分離ユニット30の作用]
次に、蒸気分離ユニット30を備えた炊飯器100の作用を説明する。
使用者が、水と米を入れた内釜2を炊飯器本体1内に収容して蓋体10を閉じ、操作ボタン5を操作すると、加熱手段3の作用によって内釜2が加熱され、内釜2内の水が沸騰すると、おねばを含んだ蒸気が発生する。このとき、内釜2の内圧が上昇しているため、開閉弁25は、押し上げられておねば戻し口24を閉塞する。このため、おねばを含む蒸気は、内蓋排出口22と混合気案内筒23を通り、第一混合気流入口41に挿入された混合気案内筒23の端部から外筒40内へと導かれる。
【0046】
混合気案内筒23から出たおねばを含む蒸気(混合気X)は、ほぼ円筒状に形成された外筒40の内壁の接線方向から第一流路91の内部に流入し、外筒40の内壁面に沿って旋回しながら流れる。この旋回に伴う遠心力で、比重の異なる蒸気とおねばとが分離される。第一流路91は、流れの上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されているので、流路断面積の縮小により混合気Xの流速が上がり、圧力損失に伴う混合気Xの流速の低下を抑制することができるようになっている。第一流路91において分離されたおねばは、外筒40の内壁に沿って下方に流れ、第一流路91の下流側に開口した第一おねば流出口42を通って外筒40から出て、おねば溜まり部21内や傾斜部26上に落下する。傾斜部26は、おねば溜まり部21に向かって下降しており、傾斜部26上に落下したおねばは、傾斜部26上を流れておねば溜まり部21内に溜まる。
【0047】
第一流路91を流れてきた混合気は、内筒50の入口部51に設けられた第二混合気流入口54から内筒50内へと進入する。図9で示したように、入口部51の外周壁は、軸方向に直交する断面において螺旋状に形成されており、入口部51の外周側を旋回しながら流れる混合気Xは、第二混合気流入口54からスムースに内筒50の内壁の接線方向から内筒50内へと入る。
【0048】
内筒50内へ入った混合気は、内筒50内に形成された第二流路92内を、内筒50の内壁面に沿って旋回しながら流れる(混合気Y)。この旋回に伴う遠心力で、第一流路91内において分離しきれなかったおねばが混合気Yから分離される。第二流路92は、流れの上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されているので、流路断面積の縮小により混合気の流速が上がり、圧力損失に伴う混合気Yの流速の低下を抑制することができる用になっている。そして、第二流路92内において分離されたおねばは、内筒50の内周壁に沿って下方に流れ、第二流路92の下流側に開口した第二おねば流出口55から出て、外筒40内へと落下する。
【0049】
第二おねば流出口55から出て外筒40内へと入ったおねばの一部は、外筒40の傾斜面45上を、第一おねば流出口42の方へ向かって流れ、第一おねば流出口42から外筒40の外へと出る。また、本実施の形態においては、第二おねば流出口55は第一混合気流入口41の上方に配置されているため、第二おねば流出口55から出たおねばの一部は、混合気案内筒23から新たに外筒40内へと流入する混合気と混ざって、再び第一流路91内を流れ、この過程において混合気から分離されることとなる。
【0050】
第二流路92内において混合気Yからおねばが分離された残りの流体は、第二流路92のほぼ中央部を、旋回流の進行方向とは逆方向に軸流として流れる(軸流Z)。この軸流Zは、第一流路91及び第二流路92においておねばが分離された後の流体であり、ほぼ蒸気であるが、おねばも残存しうる。軸流Zにおねばが残存する場合、おねばは、蒸気との比重の違いによって軸流Zの外周側を流れる。軸流Zの外周成分として流れるおねばと蒸気の混合気は、軸体73の上流端部73aの外壁に沿って流れ、第三混合気流入口76から胴部71内に進入する。胴部71内に進入した混合気は固定翼72に衝突し、固定翼72によって回転力が加えられて旋回流となり、第三流路93内を旋回する。この旋回に伴う遠心力でおねばが分離され、分離されたおねばは、胴部71の周壁に沿って下方に向かって流れ、第三おねば流出口77から外部へと流出する。第三流路93においておねばが分離された残りの流体(蒸気)は、蒸気合流口63を通って蒸気導出管60内へと進入する。
【0051】
また、第二流路92のほぼ中央部を流れる軸流Zのうち中央近傍を流れる中心成分は、軸体73内に入って第一蒸気導出路95内を流れ、さらに蒸気導出管60内に入り、蒸気合流口63から蒸気導出管60内へと進入してくる流体と合流する。蒸気導出管60内に入った流体は、第二蒸気導出路96内を流れて、蒸気導出管60の下流端62から外部に出る。蒸気導出管60を出た蒸気は、蒸気排出路17を通過し、蓋体排出口16から蓋体10の外部へと流出する。ここで、第二流路92内において分離しきれなかったおねばが蒸気導出管60の下流端62から泡として出てきたとしても、蒸気排出路17の壁面等に衝突して泡は潰れ、おねばの泡が蓋体排出口16から直接的に流出しにくくなっている。
【0052】
その後、加熱が停止して内釜2の内圧が低下すると、開閉弁25は、自重及びおねばの重量によって下降し、おねば溜まり部21の底面に設けられたおねば戻し口24を開口させる。これにより、おねば溜まり部21内に溜まったおねばは、おねば戻し口24から内釜2内に落下する。おねばが内釜2内のご飯に戻ることにより、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【0053】
以上のように本実施の形態によれば、第一流路91と第二流路92を設け、内釜2内で発生した蒸気とおねばを含む混合気を、第一流路91において旋回させた後に第二流路92において旋回させるようにした。さらに、第二流路92における旋回流の軸流のうちの外周成分を、固定翼72に衝突させて第三流路93内で旋回させることにより、おねばを分離するようにした。第一流路91、第二流路92、及び第三流路93において混合気を旋回させることにより蒸気とおねばとを分離するので、蒸気とおねばの分離性能がよい。また、第一流路91と第二流路92は内筒50を介して二重に配置されるので、蒸気とおねばの分離経路の直線距離を長くすることなく、蒸気とおねばとが流れる距離を長くすることができ、小型で分離性能のよい炊飯器を得ることができる。
【0054】
また、外筒40には第一流路91の下流側に第一おねば流出口42を設け、内筒50には第二流路92の下流側に第二おねば流出口55を設け、固定翼保持筒70に第三おねば流出口77を設けたので、混合気から分離されたおねばを外筒40、内筒50、固定翼保持筒70から外部に流出させることができる。このため、外筒40、内筒50、固定翼保持筒70内におねばが蓄積することによっておねばと蒸気の分離性能が低下するのを抑制できる。
【0055】
また、第一流路91、第二流路92、第三流路93において分離され、外筒40、内筒50、固定翼保持筒70から流出したおねばは、内釜2内に戻すようにした。おねばを内釜2内に戻すことで、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【0056】
また、第一流路91及び第二流路92は、流れ方向の上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるように構成した。このため、第一流路91、第二流路92を混合気が流れる過程において、圧力損失に伴って混合気の流速が低下するのを抑制することができる。第一流路91、第二流路92の下流側においても混合気の流速の低下を抑制することで、混合気の旋回力を維持し、蒸気とおねばの分離性能を維持することができる。なお、第一流路91、第二流路92においておねばの分離が可能な程度に混合気の流速が確保できる場合には、上流側から下流側までほぼ同一の流路断面積を有する第一流路91、第二流路92としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 炊飯器本体、2 内釜、2a フランジ、3 加熱手段、4 蓋体加熱手段、5 操作ボタン、7 制御基板、10 蓋体、11 意匠天板、12 蓋上面部材、13 蓋下面部材、14 蒸気分離ユニット収容部、15 ヒンジ部、16 蓋体排出口、17 蒸気排出路、20 内蓋、21 おねば溜まり部、22 内蓋排出口、23 混合気案内筒、24 おねば戻し口、25 開閉弁、26 傾斜部、27 係止爪、28 内蓋パッキン、30 蒸気分離ユニット、40 外筒、41 第一混合気流入口、42 第一おねば流出口、43 係止爪、44 係合部、45 傾斜面、50 内筒、51 入口部、52 テーパー部、53 出口部、54 第二混合気流入口、55 第二おねば流出口、60 蒸気導出管、61 上流端、62 下流端、63 蒸気合流口、70 固定翼保持筒、71 胴部、72 固定翼、73 軸体、73a 上流端部、73b 下流端部、74 係合部、75 係合部、76 第三混合気流入口、77 第三おねば流出口、81 入口側キャップ、81a 係止爪、82 出口側キャップ、82a 係止爪、91 第一流路、92 第二流路、93 第三流路、95 第一蒸気導出路、96 第二蒸気導出路、100 炊飯器。
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器として、炊飯器の蓋に「蒸気口ユニット」を設け、この「蒸気口ユニット」において、内釜から発生するおねばを含む蒸気を、おねばと蒸気とに分離するものがある。この従来の炊飯器では、「おねばを含む蒸気は、案内筒15を出てから第1の上障壁29、第4の上障壁35、第2の上障壁32、下障壁21及び第3の上障壁34に衝突し、蛇行しながら流れるため案内筒15と蒸気口28間の距離がさらに長くなり、より確実に分離される。」という作用がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3820541号公報(第5頁−第6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のものにおいては、案内筒から蒸気口に至る空間に障壁を設けて蒸気とおねばとを蛇行させることにより、蒸気とおねばとが蒸気口ユニット内を流れる距離を長くして、蒸気とおねばとをより確実に分離できるようにしていた。
しかしながら、蒸気とおねばとが流れる距離を長くするためには、水平方向の経路を長くしたり障壁を高くしたりする必要がある。そうすると、蒸気口ユニットが大型化してしまうこととなる。特に、おいしいご飯を炊くために高火力での沸騰時間を長くした炊飯器においては、加熱手段への入力電力を大きくすると単位時間当たりのおねばと蒸気の発生量も増えるため、蒸気とおねばとが流れる距離をさらに長くする必要があり、蒸気口ユニットはさらに大型化してしまう。このように蒸気口ユニットが大型化すると、材料の使用量が増えて製造コストの増加につながり、また、使用者による取り扱い性も悪くなってしまう。また、炊飯器全体に対して蒸気口ユニットが占める体積の割合も大きくなり、設計的、デザイン的な制約も大きかった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、より小型で、蒸気とおねばの分離性能が高い蒸気分離機構を備えた炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体内に着脱可能に収容される内釜と、前記炊飯器本体の上部開口部を覆い、蒸気を外部に排出するための蓋体排出口を備えた蓋体と、前記蓋体の下面に着脱可能に装着されて前記内釜の上部開口部を覆うとともに、前記内釜内の蒸気を排出するための内蓋排出口を備えた内蓋と、第一分離部、及び前記第一分離部よりも下流側に設けられた第二分離部を有し、前記内蓋排出口から排出される蒸気とおねばを含む流体からおねばを分離するためのおねば分離ユニットとを備え、前記第一分離部は、二重筒構造をなす外筒と内筒とを有し、前記外筒と前記内筒との間に形成された空間を第一流路とし、前記内筒内の空間を第二流路として、前記内蓋排出口から流出した前記蒸気とおねばを含む流体を、前記第一流路で旋回するよう前記外筒に導入し、前記第一流路から出た流体を、前記第二流路にて旋回するよう前記内筒に導入するものであり、前記第二分離部は、前記第二流路における旋回流の軸流と対向する位置に開口し、内部に第一蒸気導出路を有する軸体と、前記軸体の外周に設けられた固定翼と、前記固定翼の外周側にて前記固定翼を保持するとともに、前記固定翼の下流側にて前記軸体の外周面との間に隙間を設けて第三流路を形成する固定翼保持筒と、を備え、前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち中心成分は、前記第一蒸気導出路に導かれ、前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち外周成分は、前記固定翼を経て第三流路内に導かれるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、第一流路、第二流路、及び第三流路において混合気を旋回させることにより蒸気とおねばとを分離するので、蒸気とおねばの分離性能がよい。また、第一流路と第二流路は内筒を介して二重に配置されるので、蒸気とおねばの分離経路の直線距離を長くすることなく、蒸気とおねばとが流れる距離を長くすることができ、小型で分離性能のよい炊飯器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る炊飯器の断面斜視図である。
【図2】実施の形態に係る炊飯器の断面図である。
【図3】実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面斜視図である。
【図4】実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面図である。
【図5】実施の形態に係る蒸気分離ユニット近傍の断面斜視図である。
【図6】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの外観斜視図である。
【図7】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの分解斜視図である。
【図8】図6の仮想切断面Aにおける蒸気分離ユニットの断面図である。
【図9】図6の仮想切断面Bにおける蒸気分離ユニットの断面図である。
【図10】実施の形態に係る蒸気分離ユニットの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態.
以下、本発明の炊飯器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
[炊飯器の全体構成]
図1は実施の形態に係る炊飯器の断面斜視図、図2は実施の形態に係る炊飯器の断面図である。また、図3は実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面斜視図、図4は実施の形態に係る蓋体、内蓋、及び蒸気分離ユニットの断面図である。なお、以降の説明において、便宜上、図1、図2における紙面上方向を「上」、紙面下方向を「下」と称する場合がある。また、図1及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。更に、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0011】
図1、図2において、炊飯器100は、上部に開口部を有する炊飯器本体1と、炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体10とを備える。
【0012】
炊飯器本体1には、水、米などが入れられる有底筒状で上面が開口した内釜2が着脱自在に収容される。この内釜2は、電磁誘導コイルや電気ヒータ等の加熱手段3により加熱され、これによって内釜2内の米が炊飯されるようになっている。蓋体10の下面側(図1、図2における蓋体10の紙面下側)には、内蓋20が着脱可能に取り付けられている。内蓋20の周縁部には、蓋体10を閉じたときに内釜2の上端部外周に設けられたフランジ2aに密接する環状の内蓋パッキン28が設けられている。
【0013】
蓋体10の上面側には、操作ボタン5が設けられている。操作ボタン5は、炊飯や保温の開始を指示する入力ボタン、炊き上がりの硬さや米の種類など炊飯動作に関する設定を行うための入力ボタン、炊飯予約に関する設定を行うための入力ボタンなどを含んでいる。なお、図示しないが、蓋体10の上面側には、例えば液晶表示装置からなり、時刻、操作ボタン5による設定内容、炊飯動作に関する情報などを表示する表示装置を備えている。
【0014】
蓋体10は、ヒンジ部15により炊飯器本体1に軸支されており、炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆っている。
蓋体10の上面には、炊飯中に発生した蒸気を炊飯器100の外部に放出するための蓋体排出口16が開口している。
【0015】
図1〜図4に示すように、蓋体10の骨格は、大まかには、最上面を構成する意匠天板11と、意匠天板11の下側に設けられた蓋上面部材12と、蓋上面部材12の下側に設けられ蓋体10の下面を構成する蓋下面部材13とによって構成されている。意匠天板11と蓋上面部材12との間に設けられた空間には、操作ボタン5や表示装置の動作を制御する回路が実装された制御基板7が収容されている。蓋上面部材12と蓋下面部材13との間に設けられた空間には、例えば電気ヒータからなる蓋体加熱手段4が設けられている。蓋下面部材13には、上方向に向かって凹んだ凹部が形成されており、この凹部の下面と内蓋20の上面との間に形成される空間を、蒸気分離ユニット収容部14(図3、図4参照)と称する。
【0016】
蒸気分離ユニット収容部14には、炊飯中に内釜2内から発生する蒸気とおねばの混合気を、蒸気とおねばとに分離する遠心分離式の蒸気分離機構(遠心分離式の気液分離機構)を有する蒸気分離ユニット30が設けられている。
【0017】
[蒸気分離機構]
図5は実施の形態に係る蒸気分離ユニット近傍の断面斜視図、図6は実施の形態に係る蒸気分離ユニットの外観斜視図、図7は実施の形態に係る蒸気分離ユニットの分解斜視図である。図8は図6の仮想切断面Aにおける蒸気分離ユニットの断面図であり、図6の蒸気分離ユニットを紙面手前から見た図である。図9は図6の仮想切断面Bにおける蒸気分離ユニットの断面図であり、図6の蒸気分離ユニットを上から見た図である。図8では、蒸気とおねばの流れを矢印で概念的に記している。また、図10は、実施の形態に係る蒸気分離ユニットの断面模式図であり、第二混合気流入口54を通る軸方向に直交する面での断面模式図である。
【0018】
(内蓋20)
内蓋20の一部には、下側に向かって凹となる凹部が形成されている。この凹部を、おねば溜まり部21と称する。おねば溜まり部21は、本実施の形態では、平面視ほぼ円形であって、内蓋20に設けられた開口部に皿状の別部材を取り付けることによって構成されている。
【0019】
おねば溜まり部21には、内蓋排出口22が開口している。内蓋排出口22は、内釜2内の混合気を内釜2の外に排出するための開口部である。
【0020】
内蓋排出口22からは、上側に向かって混合気案内筒23が起立している。混合気案内筒23は、内蓋排出口22からの混合気を、蒸気分離ユニット30内に導くための中空の円筒である。本実施の形態では、混合気案内筒23の上端側は先細り形状であり、蒸気分離ユニット30に設けられている第一混合気流入口41(後述する)に挿入しやすくなっている。
【0021】
おねば溜まり部21の底面には、おねば溜まり部21内と内釜2内とを連通させるおねば戻し口24が設けられている。おねば戻し口24には、上下動可能に設けられた開閉弁25が取り付けられている。
【0022】
開閉弁25は、内釜2内の内圧が低いときには下降して、おねば戻し口24を開口状態に保持する。また、炊飯中、すなわち内釜2の内圧が高いときにはこの内圧により開閉弁25は上昇し、おねば戻し口24を塞ぐ。なお、開閉弁25は、耐熱性を有し、経年変化しにくい例えばシリコンゴムの如き材料からなる。
【0023】
内蓋20の上面のうちおねば溜まり部21の周囲には、おねば溜まり部21に向かって下降する傾斜面である傾斜部26が設けられている。
【0024】
また、内蓋20の上面からは、上方に向かって係止爪27が起立している。この係止爪27と蒸気分離ユニット30に設けられた係合部(図示せず)との係合構造により、内蓋20に対して蒸気分離ユニット30が着脱可能に取り付けられる。なお、内蓋20に対する蒸気分離ユニット30の取付構造はこれに限定されず、任意のものを採用することができる。
【0025】
(蒸気分離ユニット30)
蒸気分離ユニット30は、ほぼ円筒状の外筒40と、外筒40内に挿入される内筒50と、外筒40に接続された固定翼保持筒70と、固定翼保持筒70に接続された蒸気導出管60と、外筒40の入口側開口部を覆う入口側キャップ81と、蒸気導出管60の出口側開口部を覆う出口側キャップ82とを備える。
【0026】
外筒40の内周壁は、ほぼ円筒状に形成されている。外筒40の内部は、蒸気とおねばを分離するための空間であって、蒸気とおねばの混合気の流路となる。
【0027】
外筒40の周壁下部には、第一混合気流入口41が開口している。第一混合気流入口41は、内釜2内で発生した蒸気とおねばの混合気を、外筒40内に流入させるための開口部である。第一混合気流入口41は、外筒40の内周壁のほぼ接線方向に開口している。第一混合気流入口41には、内蓋20に設けられた混合気案内筒23が挿入される。第一混合気流入口41の内周部と、混合気案内筒23の先端部外周部との間に、シリコンゴム等の弾性力を有する材料からなるパッキン等のシール部材(図示せず)を設けてもよく、このようにすることで、混合気案内筒23と第一混合気流入口41とのシール性の確保と混合気案内筒23の嵌合状態の安定化を図ることができる。
【0028】
外筒40の周壁下部であって、外筒40の円筒軸方向における第一混合気流入口41の反対側には、第一おねば流出口42が開口している。第一おねば流出口42は、外筒40内において蒸気とおねばの混合気から分離されたおねばを、外筒40の外部に流出させるための開口部である。第一おねば流出口42は、おねば溜まり部21若しくは傾斜部26の上方、又は両者に跨る位置の上方に配置される。本実施の形態では、1つの第一おねば流出口42を設ける例を示すが、複数の第一おねば流出口42を設けてもよい。また、外筒40の下部の内壁面は、第一おねば流出口42に向かってやや下降する傾斜面45となっている。
【0029】
内筒50は、内部に、軸方向と直交する断面がほぼ円形の内壁面に囲まれた空間を有する部材である。内筒50の内部は、混合気の流路(第二流路92と称する)となる。内筒50は、入口側キャップ81と一体的に構成されており、入口側キャップ81を介して外筒40内に配置される。
内筒50は、一端側に形成された入口部51と、他端側に形成されたほぼ円筒状の出口部53と、入口部51と出口部53とを接続するテーパー部52とを有している。テーパー部52の外壁面及び内壁面は、入口部51から出口部53に向かう先細りのテーパー状に形成されている。入口部51よりも出口部53の方が、その外周壁及び内周壁の径が小さく構成されている。すなわち、内筒50内に形成されている第二流路92は、入口部51に対して出口部53における流路断面積が小さくなっている。
【0030】
出口部53には、第二おねば流出口55が開口している。第二おねば流出口55は、内筒50内において蒸気とおねばの混合気から分離されたおねばを、内筒50の外部に流出させるための開口部である。本実施の形態では、複数の第二おねば流出口55を設ける例を示しているが(図7参照)、この数を限定するものではない。第二おねば流出口55は、外筒40に設けられた第一混合気流入口41の上方に配置されている。
【0031】
入口部51には、内筒50内におねばと蒸気の混合気を流入させるための開口部として第二混合気流入口54が設けられている。第二混合気流入口54は、入口部51の周壁の一部を切り欠いて形成されている。図10に示すように、入口部51を軸方向に直交する断面で見ると、入口部51の周壁は螺旋状に形成されており、入口部51の外周壁に沿って旋回する流体が、第二混合気流入口54から内筒50内壁の接線方向に流入可能な構成である。
【0032】
固定翼保持筒70はほぼ円筒状の胴部71を有し、胴部71の中空部に固定翼72が形成され、固定翼72の中央には軸体73が設けられている。固定翼保持筒70は、外筒40及び内筒50よりも下流側で、かつ蒸気導出管60よりも上流側に配置される。
【0033】
胴部71は、外筒40とほぼ同じ外径を有し、外筒40の流体流れ下流側に接続される。胴部71の内周壁は、ほぼ円筒状に形成されており、胴部71の内部は蒸気とおねばを分離するための空間となる。胴部71の内部であって固定翼72の下流側に形成される流路を、第三流路93と称する。
【0034】
固定翼72は、固定翼保持筒70に流入してくる流体の流れに回転力を加えて旋回流に変えるための複数の翼部を備えている。固定翼72を構成する翼部は、胴部71の内周壁に取り付けられている。
【0035】
軸体73は、胴部71の筒軸方向とほぼ同軸に延びる中空状の管状部材であり、固定翼72の中央部に設けられている。軸体73において、流体流れの上流側(図8、図9における紙面左側)端部(上流端部73aと称する)の外壁は、ややドーム状に先細った形状であり、この上流端部73aの外壁に沿って流体がスムースに固定翼72へと流れるようになっている。なお、本実施の形態では、上流端部73aがドーム状のものを例示しているが、円錐状としてもよい。軸体73の下流側の端部(下流端部73bと称する)は、胴部71よりも軸方向外側に突出している。軸体73の中空部は、蒸気が通過する流路(第一蒸気導出路95と称する)となる。
【0036】
胴部71の周壁下部であって、第三流路93の外枠を構成する部分には、第三おねば流出口77が開口している。第三おねば流出口77は、第三流路93内において蒸気とおねばの混合気から分離されたおねばを、固定翼保持筒70の外部に流出させるための開口部である。
【0037】
蒸気導出管60は、外筒40、内筒50内において混合気から分離された蒸気を、蒸気分離ユニット30の外部に導くためのほぼ円筒状の管路である。蒸気導出管60内の流路を、第二蒸気導出路96と称する。また、蒸気導出管60の、蒸気流れ上流側の端部を上流端61、下流側の端部を下流端62と称する。本実施の形態では、上流端61側の管路は、流れ方向下流側(下流端62側)に向かって内径がやや窄まっている。蒸気導出管60は、出口側キャップ82と一体構成されており、出口側キャップ82を介して外筒40に取り付けられる。
【0038】
入口側キャップ81には係止爪81aが設けられ、外筒40には係合部44が設けられており、係止爪81aを係合部44に係合させることで、入口側キャップ81を外筒40に取り付けることができる。係止爪81aと係合部44との係合状態は、使用者の操作により解除可能であり、使用者は外筒40から入口側キャップ81を取り外すことができる。
また、外筒40には係止爪43が設けられ、固定翼保持筒70には係合部74が設けられており、係止爪43を係合部74に係合させることで、固定翼保持筒70を外筒40に取り付けることができる。係止爪43と係合部74との係合状態は、使用者の操作により解除可能であり、使用者は外筒40から固定翼保持筒70を取り外すことができる。
また、出口側キャップ82には係止爪82aが設けられ、固定翼保持筒70には係合部75が設けられており、係止爪82aを係合部75に係合させることで、出口側キャップ82を固定翼保持筒70に取り付けることができる。
このように、蒸気分離ユニット30を構成する各部材を着脱可能な構成とすることで、おねばによって汚れうる蒸気分離ユニット30の清掃を行いやくすることができる。なお、本実施の形態で示した係止爪と係合部とによる着脱構造は一例であり、任意の着脱構造を採用できる。また、蒸気分離ユニット30内を清掃可能とするためには、これを構成する部材を互いに分離可能な構成とすることが好ましいが、分離させる部材の単位は実施の形態に記載のものに限らない。
【0039】
次に、外筒40、内筒50、蒸気導出管60、及び固定翼保持筒70の配置関係を説明する。
内筒50は、外筒40とほぼ同軸に、外筒40の内壁面から隙間を設けた位置に配置される。これにより、外筒40の内壁面と、内筒50の外壁面との間には、流体の流路(第一流路91と称する)が形成される。また、前述のように、内筒50の内部には、第二流路92が形成されている。第一流路91と第二流路92は、内筒50を介して、ほぼ同軸上に二重に配置されていることとなる。
【0040】
また、外筒40の内壁面は、上流側と下流側とでほぼ同径に構成されているが、内筒50の外壁面は、出口部53、テーパー部52、入口部51の順に径が大きくなるよう構成されている。このため、第一流路91は、流体流れの上流側(内筒50の出口部53の外側に対応する部分)に対して下流側(内筒50の入口部51の外側に対応する部分)の方が、流路断面積が小さくなっている。
【0041】
固定翼保持筒70は、軸体73が内筒50と同軸となるようにして、外筒40に取り付けられる。外筒40に取り付けられた状態において、軸体73の上流端部73aの先端部分は、内筒50の入口部51との間に隙間を介して挿入される。軸体73の上流端部73aの外周面と、内筒50の入口部51の内周面との間に形成される隙間を、第三混合気流入口76と称する。第三混合気流入口76は、固定翼保持筒70への混合気の流入口となる。
【0042】
固定翼保持筒70に出口側キャップ82が取り付けられた状態においては、軸体73内に形成される第一蒸気導出路95と、蒸気導出管60内に形成される第二蒸気導出路96は、同軸上に配置される。
また、軸体73の下流端部73bは、蒸気導出管60の内周壁との間に隙間を介して蒸気導出管60内に挿入される。軸体73の下流端部73bの外周面と、蒸気導出管60の内周面との間に形成される隙間を、蒸気合流口63と称する。蒸気合流口63は、第三流路93おいておねばが分離された残りの流体(蒸気)を、蒸気導出管60内に流入させる流入口となる。
【0043】
第一混合気流入口41の上方には、第二おねば流出口55が配置されている。また、第二混合気流入口54の下方には、第一おねば流出口42が配置されている。第三おねば流出口77は、本実施の形態では、内蓋20の傾斜部26の上方に配置されている。
【0044】
なお、本実施の形態では、外筒40、内筒50、及びこれらによって構成される第一流路91、第二流路92が、本発明の第一分離部に相当する。
また、本実施の形態では、固定翼保持筒70、固定翼72、軸体73、及びこれらを含む部材によって構成される第三流路93が、本発明の第二分離部に相当する。
【0045】
[蒸気分離ユニット30の作用]
次に、蒸気分離ユニット30を備えた炊飯器100の作用を説明する。
使用者が、水と米を入れた内釜2を炊飯器本体1内に収容して蓋体10を閉じ、操作ボタン5を操作すると、加熱手段3の作用によって内釜2が加熱され、内釜2内の水が沸騰すると、おねばを含んだ蒸気が発生する。このとき、内釜2の内圧が上昇しているため、開閉弁25は、押し上げられておねば戻し口24を閉塞する。このため、おねばを含む蒸気は、内蓋排出口22と混合気案内筒23を通り、第一混合気流入口41に挿入された混合気案内筒23の端部から外筒40内へと導かれる。
【0046】
混合気案内筒23から出たおねばを含む蒸気(混合気X)は、ほぼ円筒状に形成された外筒40の内壁の接線方向から第一流路91の内部に流入し、外筒40の内壁面に沿って旋回しながら流れる。この旋回に伴う遠心力で、比重の異なる蒸気とおねばとが分離される。第一流路91は、流れの上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されているので、流路断面積の縮小により混合気Xの流速が上がり、圧力損失に伴う混合気Xの流速の低下を抑制することができるようになっている。第一流路91において分離されたおねばは、外筒40の内壁に沿って下方に流れ、第一流路91の下流側に開口した第一おねば流出口42を通って外筒40から出て、おねば溜まり部21内や傾斜部26上に落下する。傾斜部26は、おねば溜まり部21に向かって下降しており、傾斜部26上に落下したおねばは、傾斜部26上を流れておねば溜まり部21内に溜まる。
【0047】
第一流路91を流れてきた混合気は、内筒50の入口部51に設けられた第二混合気流入口54から内筒50内へと進入する。図9で示したように、入口部51の外周壁は、軸方向に直交する断面において螺旋状に形成されており、入口部51の外周側を旋回しながら流れる混合気Xは、第二混合気流入口54からスムースに内筒50の内壁の接線方向から内筒50内へと入る。
【0048】
内筒50内へ入った混合気は、内筒50内に形成された第二流路92内を、内筒50の内壁面に沿って旋回しながら流れる(混合気Y)。この旋回に伴う遠心力で、第一流路91内において分離しきれなかったおねばが混合気Yから分離される。第二流路92は、流れの上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されているので、流路断面積の縮小により混合気の流速が上がり、圧力損失に伴う混合気Yの流速の低下を抑制することができる用になっている。そして、第二流路92内において分離されたおねばは、内筒50の内周壁に沿って下方に流れ、第二流路92の下流側に開口した第二おねば流出口55から出て、外筒40内へと落下する。
【0049】
第二おねば流出口55から出て外筒40内へと入ったおねばの一部は、外筒40の傾斜面45上を、第一おねば流出口42の方へ向かって流れ、第一おねば流出口42から外筒40の外へと出る。また、本実施の形態においては、第二おねば流出口55は第一混合気流入口41の上方に配置されているため、第二おねば流出口55から出たおねばの一部は、混合気案内筒23から新たに外筒40内へと流入する混合気と混ざって、再び第一流路91内を流れ、この過程において混合気から分離されることとなる。
【0050】
第二流路92内において混合気Yからおねばが分離された残りの流体は、第二流路92のほぼ中央部を、旋回流の進行方向とは逆方向に軸流として流れる(軸流Z)。この軸流Zは、第一流路91及び第二流路92においておねばが分離された後の流体であり、ほぼ蒸気であるが、おねばも残存しうる。軸流Zにおねばが残存する場合、おねばは、蒸気との比重の違いによって軸流Zの外周側を流れる。軸流Zの外周成分として流れるおねばと蒸気の混合気は、軸体73の上流端部73aの外壁に沿って流れ、第三混合気流入口76から胴部71内に進入する。胴部71内に進入した混合気は固定翼72に衝突し、固定翼72によって回転力が加えられて旋回流となり、第三流路93内を旋回する。この旋回に伴う遠心力でおねばが分離され、分離されたおねばは、胴部71の周壁に沿って下方に向かって流れ、第三おねば流出口77から外部へと流出する。第三流路93においておねばが分離された残りの流体(蒸気)は、蒸気合流口63を通って蒸気導出管60内へと進入する。
【0051】
また、第二流路92のほぼ中央部を流れる軸流Zのうち中央近傍を流れる中心成分は、軸体73内に入って第一蒸気導出路95内を流れ、さらに蒸気導出管60内に入り、蒸気合流口63から蒸気導出管60内へと進入してくる流体と合流する。蒸気導出管60内に入った流体は、第二蒸気導出路96内を流れて、蒸気導出管60の下流端62から外部に出る。蒸気導出管60を出た蒸気は、蒸気排出路17を通過し、蓋体排出口16から蓋体10の外部へと流出する。ここで、第二流路92内において分離しきれなかったおねばが蒸気導出管60の下流端62から泡として出てきたとしても、蒸気排出路17の壁面等に衝突して泡は潰れ、おねばの泡が蓋体排出口16から直接的に流出しにくくなっている。
【0052】
その後、加熱が停止して内釜2の内圧が低下すると、開閉弁25は、自重及びおねばの重量によって下降し、おねば溜まり部21の底面に設けられたおねば戻し口24を開口させる。これにより、おねば溜まり部21内に溜まったおねばは、おねば戻し口24から内釜2内に落下する。おねばが内釜2内のご飯に戻ることにより、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【0053】
以上のように本実施の形態によれば、第一流路91と第二流路92を設け、内釜2内で発生した蒸気とおねばを含む混合気を、第一流路91において旋回させた後に第二流路92において旋回させるようにした。さらに、第二流路92における旋回流の軸流のうちの外周成分を、固定翼72に衝突させて第三流路93内で旋回させることにより、おねばを分離するようにした。第一流路91、第二流路92、及び第三流路93において混合気を旋回させることにより蒸気とおねばとを分離するので、蒸気とおねばの分離性能がよい。また、第一流路91と第二流路92は内筒50を介して二重に配置されるので、蒸気とおねばの分離経路の直線距離を長くすることなく、蒸気とおねばとが流れる距離を長くすることができ、小型で分離性能のよい炊飯器を得ることができる。
【0054】
また、外筒40には第一流路91の下流側に第一おねば流出口42を設け、内筒50には第二流路92の下流側に第二おねば流出口55を設け、固定翼保持筒70に第三おねば流出口77を設けたので、混合気から分離されたおねばを外筒40、内筒50、固定翼保持筒70から外部に流出させることができる。このため、外筒40、内筒50、固定翼保持筒70内におねばが蓄積することによっておねばと蒸気の分離性能が低下するのを抑制できる。
【0055】
また、第一流路91、第二流路92、第三流路93において分離され、外筒40、内筒50、固定翼保持筒70から流出したおねばは、内釜2内に戻すようにした。おねばを内釜2内に戻すことで、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【0056】
また、第一流路91及び第二流路92は、流れ方向の上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるように構成した。このため、第一流路91、第二流路92を混合気が流れる過程において、圧力損失に伴って混合気の流速が低下するのを抑制することができる。第一流路91、第二流路92の下流側においても混合気の流速の低下を抑制することで、混合気の旋回力を維持し、蒸気とおねばの分離性能を維持することができる。なお、第一流路91、第二流路92においておねばの分離が可能な程度に混合気の流速が確保できる場合には、上流側から下流側までほぼ同一の流路断面積を有する第一流路91、第二流路92としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 炊飯器本体、2 内釜、2a フランジ、3 加熱手段、4 蓋体加熱手段、5 操作ボタン、7 制御基板、10 蓋体、11 意匠天板、12 蓋上面部材、13 蓋下面部材、14 蒸気分離ユニット収容部、15 ヒンジ部、16 蓋体排出口、17 蒸気排出路、20 内蓋、21 おねば溜まり部、22 内蓋排出口、23 混合気案内筒、24 おねば戻し口、25 開閉弁、26 傾斜部、27 係止爪、28 内蓋パッキン、30 蒸気分離ユニット、40 外筒、41 第一混合気流入口、42 第一おねば流出口、43 係止爪、44 係合部、45 傾斜面、50 内筒、51 入口部、52 テーパー部、53 出口部、54 第二混合気流入口、55 第二おねば流出口、60 蒸気導出管、61 上流端、62 下流端、63 蒸気合流口、70 固定翼保持筒、71 胴部、72 固定翼、73 軸体、73a 上流端部、73b 下流端部、74 係合部、75 係合部、76 第三混合気流入口、77 第三おねば流出口、81 入口側キャップ、81a 係止爪、82 出口側キャップ、82a 係止爪、91 第一流路、92 第二流路、93 第三流路、95 第一蒸気導出路、96 第二蒸気導出路、100 炊飯器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、
前記炊飯器本体内に着脱可能に収容される内釜と、
前記炊飯器本体の上部開口部を覆い、蒸気を外部に排出するための蓋体排出口を備えた蓋体と、
前記蓋体の下面に着脱可能に装着されて前記内釜の上部開口部を覆うとともに、前記内釜内の蒸気を排出するための内蓋排出口を備えた内蓋と、
第一分離部、及び前記第一分離部よりも下流側に設けられた第二分離部を有し、前記内蓋排出口から排出される蒸気とおねばを含む流体からおねばを分離するためのおねば分離ユニットとを備え、
前記第一分離部は、
二重筒構造をなす外筒と内筒とを有し、
前記外筒と前記内筒との間に形成された空間を第一流路とし、
前記内筒内の空間を第二流路として、
前記内蓋排出口から流出した前記蒸気とおねばを含む流体を、前記第一流路で旋回するよう前記外筒に導入し、前記第一流路から出た流体を、前記第二流路にて旋回するよう前記内筒に導入するものであり、
前記第二分離部は、
前記第二流路における旋回流の軸流と対向する位置に開口し、内部に第一蒸気導出路を有する軸体と、
前記軸体の外周に設けられた固定翼と、
前記固定翼の外周側にて前記固定翼を保持するとともに、前記固定翼の下流側にて前記軸体の外周面との間に隙間を設けて第三流路を形成する固定翼保持筒と、を備え、
前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち中心成分は、前記第一蒸気導出路に導かれ、
前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち外周成分は、前記固定翼を経て第三流路内に導かれる
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記軸体の下流側に、前記第一蒸気導出路と連通する第二蒸気導出路を内部に有する蒸気導出管を備え、
前記軸体の下流側の端部は、その外周面と前記蒸気導出管の内周面との間に隙間を設けて蒸気合流口を形成するようにして前記蒸気導出管内に挿入されており、
前記第三流路内でおねばが分離された流体を、前記蒸気合流口を介して前記第二蒸気導出路に導いて前記第一蒸気導出路からの流体と合流させて、前記蓋体排出口から排出する
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記軸体の上流側の端部は、その外周面と前記内筒の内周面との間に隙間を設けて第三混合気流入口を形成するようにして前記内筒内に挿入されており、
前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち外周成分を、前記第三混合気流入口を介して前記固定翼に導く
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記外筒には、前記内蓋排出口から出た蒸気とおねばを含む流体が、内周面の接線方向に流入するように開口した第一混合気流入口が形成され、
前記内筒には、前記第一流路における旋回流の旋回方向とほぼ対向するように開口した第二混合気流入口が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記外筒には、前記第一流路の下流側に対応する位置に、おねばを前記外筒から流出させる第一おねば流出口が形成されており、
前記内筒には、前記第二流路の下流側に対応する位置に、おねばを前記内筒から流出させる第二おねば流出口が形成されており、
前記固定翼保持筒には、前記第三流路の下流側に対応する位置に、おねばを前記固定翼保持筒から流出させる第三おねば流出口が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記内蓋には、前記第一おねば流出口または前記第二おねば流出口から流出したおねばを前記内釜内へ戻すおねば戻し穴が形成されている
ことを特徴とする請求項5記載の炊飯器。
【請求項7】
前記第一流路及び第二流路は、上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記内筒の外周面を、前記第一流路における上流側に対して下流側の方が径が大きくなるように構成し、
前記内筒の内周面を、前記第二流路における上流側に対して下流側の方が径が小さくなるよう構成することにより、
前記第一流路及び第二流路を、上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成した
ことを特徴とする請求項7記載の炊飯器。
【請求項1】
炊飯器本体と、
前記炊飯器本体内に着脱可能に収容される内釜と、
前記炊飯器本体の上部開口部を覆い、蒸気を外部に排出するための蓋体排出口を備えた蓋体と、
前記蓋体の下面に着脱可能に装着されて前記内釜の上部開口部を覆うとともに、前記内釜内の蒸気を排出するための内蓋排出口を備えた内蓋と、
第一分離部、及び前記第一分離部よりも下流側に設けられた第二分離部を有し、前記内蓋排出口から排出される蒸気とおねばを含む流体からおねばを分離するためのおねば分離ユニットとを備え、
前記第一分離部は、
二重筒構造をなす外筒と内筒とを有し、
前記外筒と前記内筒との間に形成された空間を第一流路とし、
前記内筒内の空間を第二流路として、
前記内蓋排出口から流出した前記蒸気とおねばを含む流体を、前記第一流路で旋回するよう前記外筒に導入し、前記第一流路から出た流体を、前記第二流路にて旋回するよう前記内筒に導入するものであり、
前記第二分離部は、
前記第二流路における旋回流の軸流と対向する位置に開口し、内部に第一蒸気導出路を有する軸体と、
前記軸体の外周に設けられた固定翼と、
前記固定翼の外周側にて前記固定翼を保持するとともに、前記固定翼の下流側にて前記軸体の外周面との間に隙間を設けて第三流路を形成する固定翼保持筒と、を備え、
前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち中心成分は、前記第一蒸気導出路に導かれ、
前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち外周成分は、前記固定翼を経て第三流路内に導かれる
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記軸体の下流側に、前記第一蒸気導出路と連通する第二蒸気導出路を内部に有する蒸気導出管を備え、
前記軸体の下流側の端部は、その外周面と前記蒸気導出管の内周面との間に隙間を設けて蒸気合流口を形成するようにして前記蒸気導出管内に挿入されており、
前記第三流路内でおねばが分離された流体を、前記蒸気合流口を介して前記第二蒸気導出路に導いて前記第一蒸気導出路からの流体と合流させて、前記蓋体排出口から排出する
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記軸体の上流側の端部は、その外周面と前記内筒の内周面との間に隙間を設けて第三混合気流入口を形成するようにして前記内筒内に挿入されており、
前記第二流路における前記旋回流の軸流のうち外周成分を、前記第三混合気流入口を介して前記固定翼に導く
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記外筒には、前記内蓋排出口から出た蒸気とおねばを含む流体が、内周面の接線方向に流入するように開口した第一混合気流入口が形成され、
前記内筒には、前記第一流路における旋回流の旋回方向とほぼ対向するように開口した第二混合気流入口が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記外筒には、前記第一流路の下流側に対応する位置に、おねばを前記外筒から流出させる第一おねば流出口が形成されており、
前記内筒には、前記第二流路の下流側に対応する位置に、おねばを前記内筒から流出させる第二おねば流出口が形成されており、
前記固定翼保持筒には、前記第三流路の下流側に対応する位置に、おねばを前記固定翼保持筒から流出させる第三おねば流出口が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記内蓋には、前記第一おねば流出口または前記第二おねば流出口から流出したおねばを前記内釜内へ戻すおねば戻し穴が形成されている
ことを特徴とする請求項5記載の炊飯器。
【請求項7】
前記第一流路及び第二流路は、上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記内筒の外周面を、前記第一流路における上流側に対して下流側の方が径が大きくなるように構成し、
前記内筒の内周面を、前記第二流路における上流側に対して下流側の方が径が小さくなるよう構成することにより、
前記第一流路及び第二流路を、上流側に対して下流側の流路断面積が小さくなるよう構成した
ことを特徴とする請求項7記載の炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−34657(P2013−34657A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173001(P2011−173001)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]