説明

炊飯釜搬送装置とそれを備えた炊飯装置

【課題】 既に炊飯釜がセットされている炊飯機上等に把持装置を下降させても、把持爪が損傷を受けることがない炊飯釜搬送装置及びそのような炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 炊飯釜を把持・解放自在な把持装置と、当該把持装置を昇降させる昇降装置とを備えた炊飯釜搬送装置であって、前記把持装置は、その上面を把持すべき炊飯釜の鍔部の下面に当接させて炊飯釜を把持する少なくとも一対の把持爪と、各把持爪を水平な軸の回りに回動自在に支持する支持部材と、各把持爪が水平面よりも下向きに回動するのを阻止する手段と、一対の把持爪を、炊飯釜を把持する把持位置と、炊飯釜を解放する解放位置との間で移動させる駆動装置とを備えている炊飯釜搬送装置、及びそのような炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯釜搬送装置とそれを備えた炊飯装置に関し、詳細には、炊飯釜を把持・解放自在な把持装置と、把持装置を昇降させる昇降装置とを備えた炊飯釜搬送装置及びそのような炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、炊飯釜を把持・解放自在な把持装置と、把持装置を昇降させる昇降装置とを備えた炊飯釜搬送装置は種々提案されている。例えば、特許文献1には、炊飯釜を把持するチャックと、当該チャックを備えた腕を昇降させる手段を備えた炊飯釜搬送用走行台車が開示されており、この炊飯釜搬送用走行台車は、列状に配置された複数の炊飯機からなる炊飯機列の側部を走行し、未炊飯の炊飯釜を適宜の炊飯機へ搬送して炊飯位置にセットするとともに、炊飯が終了した炊飯釜については、炊飯機から取り出して、下流側の搬出位置へと搬送するように作動する。また、特許文献2にも、炊飯釜の搬送装置が開示されており、この搬送装置は、炊飯機列の側部ではなく、炊飯機列の上部空間を走行して、未炊飯の炊飯釜の炊飯機への搬送と炊飯位置へのセット、および、炊飯済みの炊飯釜の炊飯機からの取り出しと搬出位置への搬送を行うように作動する。
【0003】
これら従来の炊飯釜搬送装置においては、いずれも、既に炊飯釜がセットされている炊飯機上には、新たな炊飯釜を搬送しないように制御装置が搬送装置を制御しているが、時として、何らかのミスによって、既に炊飯釜がセットされている炊飯機上に、別の炊飯釜を把持した把持装置を下降させてしまうということがあった。
【0004】
既に炊飯釜がセットされている炊飯機上に、別の炊飯釜を把持している把持装置が下降すると、把持されている炊飯釜は炊飯機にセットされている炊飯釜とぶつかり、その位置で下降を停止するにもかかわらず、把持装置は尚も下降を続けるので、把持装置の把持爪が、下降を停止した炊飯釜等と接触し、変形や破損などの損傷を受ける場合があった。把持爪には、把持爪を炊飯釜に対して前進または後退させる駆動機構が取り付けられているので、把持爪が損傷を受けると、その修理ないしは交換は容易ではなく、炊飯釜搬送装置が長期間にわたって使用できなくなるという不都合が生じる。
【0005】
このような不都合は、既に炊飯釜がセットされている炊飯機上に別の炊飯釜を把持した把持装置を下降させてしまった場合に限らず、何らかの異物が存在する場所に、炊飯釜を把持した把持装置を下降させた場合や、炊飯釜を把持していない状態であっても、把持装置を誤った場所や異物が存在する場所に下降させた場合にも、同様に起こりうる不都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−104646号公報
【特許文献2】特開2005−287645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来の炊飯釜搬送装置が有する不都合を解決するために為されたもので、万が一、制御装置が誤って、既に炊飯釜がセットされている炊飯機上や他に異物が存在する場所等に把持装置を下降させても、把持爪が変形や破損などの損傷を受けることがない炊飯釜搬送装置、及びそのような炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を、炊飯釜を把持・解放自在な把持装置と、当該把持装置を昇降させる昇降装置とを備えた炊飯釜搬送装置であって、前記把持装置は、その上面を把持すべき炊飯釜の鍔部の下面に当接させて炊飯釜を把持する少なくとも一対の把持爪と、各把持爪を水平な軸の回りに回動自在に支持する支持部材と、各把持爪が水平面よりも下向きに回動するのを阻止する手段と、一対の把持爪を、炊飯釜を把持する把持位置と、炊飯釜を解放する解放位置との間で移動させる駆動装置とを備えている炊飯釜搬送装置、及びそのような炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置を提供することによって解決するものである。
【0009】
本発明の炊飯釜搬送装置においては、炊飯釜を把持する把持爪が水平軸の回りに回動自在に軸支され、かつ、把持爪が水平面よりも下向きに回動するのを阻止する手段が設けられているので、把持爪は、その上面を炊飯釜の鍔部の下面と当接させて良くこれを把持するとともに、制御装置が誤って、既に炊飯釜がセットされている炊飯機上や他に異物が存在する場所に把持装置を下降させた場合でも、把持爪が下降を停止した炊飯釜や異物等と接触すると、把持爪は上方に向かって回動して逃げることができるので、変形や破損などの損傷を受けることがない。
【0010】
本発明の炊飯釜搬送装置は、好ましくは、炊飯システムにおける炊飯釜の搬送ラインに沿って移動する移動手段を備えており、炊飯釜の搬送ラインの好ましい一例としては、複数台の炊飯機を列状に配置した炊飯機列に沿った搬送ラインが挙げられる。本発明の炊飯釜搬送装置が、それに沿って移動するところの搬送ラインは、直線状であっても、曲線状であっても、また、直線と曲線を組合せた線状であっても良い。また、本発明の炊飯釜搬送装置は、搬送ラインの側部の空間を移動しても良く、或いは、搬送ラインの上部の空間を移動しても良い。ただし、本発明の炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置の場合、炊飯装置全体の設置スペースを少なくするという観点からは、本発明の炊飯釜搬送装置は、炊飯機列の上部の空間を移動するのが望ましい。
【0011】
本発明の炊飯釜搬送装置は、その好ましい一態様において、少なくとも昇降装置による把持装置の昇降動作を制御する制御装置と、把持爪が水平面よりも一定角度以上、上向きに回動したときにこれを検知して回動信号を出力する回動センサを備え、前記制御装置が、把持装置の下降中に回動センサからの回動信号を受信した場合には、動作エラーと判断し、エラー信号を出すようにプログラムされている。これにより、本発明の炊飯釜搬送装置は、既に炊飯釜がセットされている炊飯機上や異物の存在する場所に、把持装置を誤って下降させた場合には、その誤りを直ちに検知して、把持装置のそれ以上の下降の停止や、警報音の発生など、適宜の対応を迅速に取ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炊飯釜搬送装置によれば、制御装置が誤って、既に炊飯釜がセットされている炊飯機上や異物の存在する場所に把持装置を下降させた場合でも、把持爪は、他の部材と下方から接触すると、上方に向かって回動して逃げることができるので、変形や破損などの損傷を受けることがないという利点が得られる。また、把持爪が何らかの異物と接触して上方に向かって回動した場合には、制御装置からエラー信号が出るので、炊飯釜搬送装置を停止させたり、作業者の注意を喚起して適宜の対応を取ることが可能となる。本発明の炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置によれば、たとえ制御装置が誤った場合でも、把持爪が損傷を受けることがないので、動作エラーを解除することにより、短時間で運転を再開することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置の一例を示す正面図である。
【図2】本発明の炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置の一例を示す平面図である。
【図3】炊飯釜搬送装置の平面図である。
【図4】炊飯釜搬送装置の右側面図である。
【図5】図4のX−X’線で切断した把持装置の平面図である。
【図6】把持爪が解放位置にある把持装置の平面図である。
【図7】図5のY−Y’断面図である。
【図8】図5のY−Y’断面図である。
【図9】把持爪とその支持部材の他の例を示す断面図である。
【図10】把持爪とその支持部材の他の例を示す断面図である。
【図11】本発明の炊飯釜搬送装置の動作を説明する図である。
【図12】本発明の炊飯釜搬送装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の炊飯釜搬送装置を炊飯装置に適用した場合を例に、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0015】
図1は本発明の炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置の一例を示す正面図である。図1において、1は本発明の炊飯釜搬送装置であり、2は本発明の炊飯釜搬送装置1を備えた炊飯装置である。炊飯釜搬送装置1は、炊飯釜を把持・解放自在な把持装置3と、把持装置3を、図中Aで示される実線で描かれた走行位置と、図中Bで示される破線で描かれた把持・解放位置との間で昇降させる昇降装置4とを備えている。5、5は、炊飯釜搬送装置1の走行輪であり、6は、走行輪5、5の走行路である。炊飯釜搬送装置1は、走行輪5、5を前進または後進方向に回転させることにより、図中矢印で示すように、走行路6上を往復移動する。
【0016】
7は、列状に配置された複数の炊飯機7、7、7・・・から構成される炊飯機列である。図示の例では、炊飯機列7は、炊飯機7〜7の5台の炊飯機から構成されているが、炊飯機の数は5台に限られず、6台以上であっても、4台以下であっても良い。本例においては、炊飯釜搬送装置1は炊飯機列7の上部の空間を走行するように構成されているが、炊飯釜搬送装置1は、炊飯機列7に沿って往復移動すれば良く、把持装置3を炊飯機7、7、7・・・に対して昇降させることができれば、その移動経路は、炊飯機列7の上部の空間に限られない。例えば、炊飯釜搬送装置1は、炊飯機列7の側方を炊飯機列7に沿って往復移動するものであっても良い。
【0017】
8inは、炊飯機列7の一方端の延長線上に設けられた受入部、8outは、炊飯機列7の他方端の延長線上に設けられた搬出部であり、Pは炊飯釜である。炊飯釜Pには、その上部に上下2段の鍔部Pt、Pbが設けられており、その下側の鍔部Pbは、炊飯機7に示すように、炊飯機にセットされたとき、その下面を炊飯機の側壁上面と当接させることにより、炊飯釜Pを炊飯機に対して所定の高さに保持する機能を有している。一方、上側の鍔部Ptは、後述するとおり、その下面を把持装置3の把持爪と当接させることにより、炊飯釜Pが把持爪によって把持、搬送されるのを可能にしている。
【0018】
受入部8inおよび搬出部8outのそれぞれには、炊飯釜Pを搬送する複数の回転ローラ9が設けられている。10、10は、受入部8in上で、炊飯釜Pを停止させるストッパである。受入部8inは、未炊飯の米と水を収容した炊飯釜Pを先行するラインから受け入れ、受け入れた炊飯釜Pを、炊飯釜搬送装置1に備えられた把持装置3が把持可能な位置に保持する部分であり、搬出部8outは、炊飯を終えた炊飯釜Pを把持装置3が解放するのを受け取り、後続するラインへと送り出す部分である。
【0019】
なお、本例の炊飯装置2においては、受入部8inにおいて、把持可能な位置に保持されている炊飯釜Pの高さ(図中「Hin」で示される高さ)と、搬出部8outにおいて、解放される炊飯釜Pを受け取る高さ(図中「Hout」で示される高さ)とは、共に、炊飯機7〜7にセットされたときの炊飯釜Pの高さ(図中、炊飯機7において、Hで示される高さ)と同じになるように構成されている。一つの炊飯装置で取り扱う炊飯釜Pは、通常、一定の同じ形状を有しているので、受入部8in、搬出部8out、および炊飯機7〜7において炊飯釜Pの高さが同じということは、本例の炊飯装置2では、炊飯釜Pにおける被把持部である鍔部Ptの下面の高さがいずれの位置においても同じであるということを意味する。このため、把持装置3は、受入部8in、搬出部8out、および炊飯機7〜7のいずれの位置においても、同じ高さで炊飯釜Pを把持したり、解放したりすることが可能となり、昇降装置4は、把持装置3を、炊飯釜Pを把持または解放する把持・解放位置Bと、把持した炊飯釜Pを搬送する走行位置Aの2位置間を昇降させれば良いことになる。これにより、昇降装置4の構造やその制御が極めて簡単、かつ容易になるという利点が得られる。
【0020】
11は、内部に各種信号線、電力線、および圧縮空気管を収容したケーブルベアであり、その一端は、炊飯釜搬送装置1に設けられた移動端12に、他端は、炊飯装置2のフレーム13に設けられた固定端14に取り付けられている。15は制御装置、16は電源、17は圧縮空気源であり、それぞれ、適宜の信号線15a、電力線16a、および空気管17aによって、固定端14の図示しないコネクタ部に連結されている。これにより、電源16および圧縮空気源17は、コネクタ部およびケーブルベア11に収容されている対応する線路および管路を介して、炊飯釜搬送装置1に必要な電力や圧縮空気を供給し、また、制御装置15は、炊飯釜搬送装置1との間で、各種信号をやり取りして、炊飯釜搬送装置1を制御することができるようになっている。
【0021】
本例に示すように、電源16および圧縮空気源17を共に外部に設けることによって、炊飯釜搬送装置1の構造を簡単にすることができる上に、炊飯釜搬送装置1を軽量化することができるので、炊飯釜搬送装置1の走行速度を高めることが可能となり、また、その停止位置の制御もより正確に行うことができるという利点がある。さらに、炊飯釜搬送装置1と制御装置15とが無線ではなく有線で結ばれているので、両者間での信号のやり取りに要する時間にロスがなくなり、迅速な制御が可能になるとともに、近接して配置される他の装置や機器から発せられる電波を受けて誤動作をする恐れもないという利点が得られる。
【0022】
図2は、図1に示す炊飯装置2の平面図であり、便宜上、制御装置15など、一部省略して示してある。図に示すとおり、炊飯機列7を構成する炊飯機7〜7は直線状に配置され、その一方端の船長線上に受入部8inが、他方端の延長線上に搬出部8outが配置されている。炊飯機列7を構成する炊飯機7〜7の配置は必ずしも直線状に限られず、曲線状であっても良いし、直線と曲線との組合せからなる線状に配置されていても良い。なお、図示の例では、受入部8inは、炊飯機列7の列方向と直交する方向から炊飯釜Pを受け入れ、搬出部8outは、炊飯機列7の列方向に沿った方向に炊飯釜Pを搬出するように構成されているが、炊飯機列7に対する受け入れ方向および搬出方向は、炊飯装置2が設置される周囲の環境に応じて適宜変更可能であることは勿論である。
【0023】
図3は、炊飯釜搬送装置1の平面図である。図3において、5a、5aは、走行輪5、5の車軸であり、炊飯釜搬送装置1の基板1aに取り付けられている軸受5b、5b・・・によって回転自在に軸支されている。18は電動機、18aは電動機18の回転軸に取り付けられた駆動側プーリである。電動機18が回転すると、その回転は、タイミングベルト19を介して、車軸5a、5aの一方に取り付けられた従動側プーリ5cに伝達され、走行輪5、5を回転駆動する。
【0024】
20は、走行路6と平行に設置されたチェーン、21は、このチェーン20と係合する歯を備えたスプロケットである。21aはスプロケット21の回転軸であり、炊飯釜搬送装置1に取り付けられている軸受21b、21bによって回転自在に支承され、その先端には回転伝達プーリ21cが取り付けられている。22はロータリエンコーダであり、その回転軸の先端には従動側プーリ22bが取り付けられ、回転伝達プーリ21cと従動側プーリ22bとの間にはタイミングベルト23が架け渡されている。
【0025】
炊飯釜搬送装置1が走行路6上を走行すると、その走行に伴い、チェーン20と係合するスプロケット21は回転し、その回転は、回転軸21a、回転伝達プーリ21c、タイミングベルト23、および従動側プーリ22bを介して、ロータリエンコーダ22に伝達される。ロータリエンコーダ22は、内部の回転ディスクの回転量に応じた信号を炊飯釜搬送装置1の走行路6上の位置を表す信号として出力し、その信号は、移動端12からケーブルベア11内に収容されている信号線を介して、制御装置15に送信される。制御装置15が、この信号に基づいて、炊飯釜搬送装置1が走行路6上の所定位置に移動、停止するように、炊飯釜搬送装置1の走行を制御することはいうまでもない。
【0026】
4cは、昇降装置4を構成する空気圧シリンダであり、4vは、空気圧シリンダ4cへの圧縮空気の供給を制御する電磁弁である。24、24は、把持装置3の昇降時のガイドバーである。
【0027】
図4は、炊飯釜搬送装置1の右側面図であり、把持装置3が最も上昇した走行位置Aにある状態を示している。図4において、4rは、空気圧シリンダ4cのピストンロッドであり、ピストンロッド4rは、炊飯釜搬送装置1の基板1aから下方に突出し、その先端には把持装置3の天板3aが連結されている。24a、24aは、ガイドバー24、24の案内管であり、案内管24a、24aは炊飯釜搬送装置1の基板1aを貫通している。ガイドバー24、24の下端は、ピストンロッド4rと同様に、把持装置3の天板3aに連結されている。図示の状態では、空気圧シリンダ4cのピストンロッド4rは、最もシリンダ内に引き込まれた位置にあり、把持装置3は最も上昇した走行位置にある。
【0028】
3bは、天板3aと一体に結合された板状のカバー部材であり、その大きさと形状は、把持装置3によって把持される炊飯釜Pの少なくとも上部開口部を覆う大きさ並びに形状とされている。カバー部材3bには、その上面側であって、カバー部材3bの外周よりも内側の位置に、左右一対の空気圧シリンダ3c、3cと、これら空気圧シリンダへの圧縮空気の供給を制御する電磁弁3v、3vとが取り付けられている。
【0029】
31、31は左右一対の把持爪、32、32は支持部材、33、33は、各把持爪31、31が結合された水平な回転軸であり、回転軸33、33は、後述するとおり、支持部材32、32に回転自在に軸支されている。本例においては、把持爪31、31は左右一対であるが、二対であっても良いし、三対以上であっても良い。34、34は、支持部材32、32の水平方向への移動を案内するガイドバーであり、支持部材32、32に取り付けられている案内管34a、34aの内部を貫通し、その先端は支持部材32、32よりも外側に突出している。また、この図には示されていないが、空気圧シリンダ3c、3cのピストンロッドの先端部は、それぞれ、支持部材32、32に結合されている。図示しない制御装置15からの信号によって電磁弁3v、3vを切り換え、空気圧シリンダ3c、3cへの圧縮空気の供給を制御することによって、ピストンロッドをシリンダから突出またはシリンダ内に引き込み、支持部材32、32に支持されている把持爪31、31を、解放位置と把持位置との間で移動させることができる。このように、本例においては、空気圧シリンダ3c、3cと電磁弁3v、3vとが、把持爪31、31を解放位置と把持位置との間で移動させる駆動装置を構成している。
【0030】
図4において、空気圧シリンダ3c、3cは、それぞれのピストンロッドが最もシリンダ内側に引き込まれた位置にあり、把持装置3の把持爪31、31が互いに最も近接した把持位置にある状態を示している。把持爪31、31が把持位置にあるとき、把持爪31、31は、少なくともその一部が炊飯釜Pの上側の鍔部Ptの直下にあり、把持爪31、31の上面が、炊飯釜Pの鍔部Ptの下面に当接するか、当接できる位置にある。一方、後述するように、空気圧シリンダ3c、3cのピストンロッドが最もシリンダから外側に突出した状態では、把持装置3の把持爪31、31は互いに最も離れた解放位置にある。把持爪31、31が解放位置にあるとき、把持爪31、31は、最早、炊飯釜Pの上側の鍔部Ptの直下には位置しておらず、把持装置3が上昇しても、把持爪31、31の上面は、炊飯釜Pの鍔部Ptの下面に当接しない。
【0031】
図5は、図4のX−X’線で切断した把持装置3の平面図である。図に示すとおり、左右の支持部材32、32のそれぞれには、軸受32a、32aを介して、回転軸33、33が回転自在に取り付けられている。各回転軸33、33は、取付片31a、31aを介して、把持爪31、31に結合されている。これにより、把持爪31、31は、支持部材32、32によって、水平な軸の回りに回動自在に支持されることになる。31s、31sは、取付片31a、31aに取り付けられているストッパである。
【0032】
3r、3rは、一対の空気圧シリンダ3c、3cのピストンロッドであり、ピストンロッド3r、3rは、それぞれ、その先端部が左右の支持部材32、32に結合されている。図示の状態では、ピストンロッド3r、3rは、最もシリンダ内側に引き込まれた状態にあり、支持部材32、32に回転自在に支持されている把持爪31、31は互いに最も接近した把持位置にある。ピストンロッド3r、3rが、空気圧シリンダ3c、3cから突出すると、それに伴い、支持部材32、32は、ガイドバー34、34に案内されて、それぞれ外側に向かって移動する。ピストンロッド3r、3rが、シリンダから最も突出した位置において、把持爪31、31は、互いに最も離れた解放位置になる。
【0033】
図6は、把持爪31、31が解放位置にある把持装置3の平面図である。解放位置において、把持爪31、31は、炊飯釜Pの鍔部Ptの直下には存在しない。なお、把持爪31、31の炊飯釜Pに面した側の先端部は、図示のとおり、炊飯釜Pの被把持部における外周形状に沿った逆円弧状に湾曲している。
【0034】
図7は、図5のY−Y’断面図であり、支持部材32と把持爪31の周囲部分だけを拡大して示してある。図に示すとおり、把持爪31は、取付片31aを介して回転軸33に取り付けられており、回転軸33は、支持部材32に取り付けられている軸受32aによって回転自在に軸支されている。これにより、把持爪31は、回転軸33と共に、水平な軸の回りに回動自在である。ただし、取付片31aにはストッパ31sが取り付けられており、図示の位置では、ストッパ31sは、その側面を支持部材32の側面に当接させた状態にあるので、把持爪31が図に示す状態から図中反時計回り、すなわち、水平面よりも下向きに回動することは阻止されている。このように、把持爪31は、ストッパ31sを備えているので、水平面よりも下向きに回動せず、その上面を図示しない炊飯釜Pの鍔部Ptの下面と当接させても、十分に炊飯釜Pの重量を支えつつ、炊飯釜Pを把持、搬送することができる。
【0035】
図8は、把持爪31が、回転軸33と共に、水平な軸の回りに水平面よりも上向きに回動した状態を示している。このように、把持爪31が水平面よりも上向き、つまり、図中時計回りに回動することは、ストッパ31sによる規制を受けないので、自由である。また、図から明らかなように、把持爪31の重心は、回転軸33よりも左側にあるので、外力がない状態では、把持爪31は、自重によって回転軸33に対して左回りに回動し、ストッパ31sが支持部材32の側面に当接する図7に示す位置、すなわち、炊飯釜Pを把持可能な位置へと戻ることになる。なお、図7、図8は、図5における右側の把持爪31について述べたが、左側の把持爪31についても、左右が逆になるだけで、同様である。
【0036】
また、上記の例では、把持爪31、31が水平面よりも下向きに回動するのを阻止する手段として、支持部材32、32の側面と当接するストッパ31s、31sを示したが、把持爪31、31が水平面よりも下向きに回動するのを阻止する手段は、上述したストッパ31s、31sに限られない。例えば、図9、図10に示すように、支持部材32の側にストッパ32sを取り付け、把持爪31が水平状態のときに、把持爪31の一部がストッパ32sと当接するようにしても良い。図9に示すように、ストッパ32sによって、把持爪31が水平面よりも下向きに回動することは阻止されているが、図10に示すように、把持爪31は、水平面よりも上向きに回動することは自在である。
【0037】
次に、図11、図12を用いて、本発明の炊飯釜搬送装置1における把持爪31、31の動作を説明する。
【0038】
図11は、例えば、図1に示す炊飯装置2において、既に炊飯釜Pがセットされている炊飯機7の上に、炊飯釜搬送装置1が、何らかの制御ミスによって、更に別の炊飯釜Pを把持、搬送してきた状態を示している。昇降装置4における空気圧シリンダ4cは、ピストンロッド4rが最もシリンダ内に引き込まれた位置にあり、把持装置3は走行位置にある。把持装置3における空気圧シリンダ3c、3cも、図では見えないピストンロッド3r、3rがシリンダ内に最も引き込まれた位置にあり、把持爪31、31は互いに最も接近した把持位置にある。把持爪31、31の上面には炊飯釜Pの上側の鍔部Ptの下面が当接しており、炊飯釜Pは把持爪31、31によって把持されている。なお、把持爪31、31は、上述したとおり、炊飯釜に向かって両端が突出した逆円弧状をしているので、鍔部Ptとの関係を分かりやすくするために、最も引っ込んだ中央部における切断面として示してある。35、35は、支持部材32、32の下面に設けられた近接センサである。
【0039】
図12は、図11の状態から昇降装置4の空気圧シリンダ4cが作動してピストンロッド4rが下方に突出し、把持装置3が炊飯釜Pを把持したまま下降した状態を示している。図11の状態から把持装置3が下降すると、まず、把持されていた炊飯釜Pの底部が、既に炊飯機7にセットされている炊飯釜Pの上部と当接し、下降を停止する。しかし、把持装置3は、尚も下降を続け、把持装置3の保護カバー3bが炊飯釜Pの上部と当接して、それ以上、下降できなくなったところで停止する。
【0040】
このとき、把持爪31、31は、炊飯釜Pの底部が、炊飯釜Pの上部と当接した時点で、まず、炊飯釜Pの鍔部Ptの下面との当接が解かれ、次いで、把持装置3が更に下降すると、炊飯釜Pの下側の鍔部Pbと当接するが、把持爪31、31は、回転軸33、33によって、支持部材32、32に上向きには回動自在に支持されているので、図に示すとおり、上方に回動して、鍔部Pbから受ける上向きの外力をうまく逃がすことができる。従来の炊飯釜搬送装置であれば、把持爪31、31は、その基部が支持部材32、32に固定されているので、炊飯釜Pの下側の鍔部Pbと当接した時点で、鍔部Pbから上向きの外力を受け、変形したり、損傷を受けたりしていたが、本発明の炊飯釜搬送装置1においては、把持爪31、31が、水平面より上向きには回動自在であるので、上向きの外力をうまく逃がすことができ、変形などの損傷を受けることがない。
【0041】
なお、近接センサ35、35によって、把持爪31、31の上方への回動を検知して、その信号を制御装置15に送るようにしても良い。制御装置15は、近接センサ35、35からの回動信号を受信すると、動作エラーと判断し、例えば、昇降装置4による把持装置3の下降を停止させ、警報音を発して作業者の注意を喚起する。制御装置15は、炊飯釜搬送装置1の走行等に起因する把持爪31、31の一時的な上下動を上方への回動と判断しないために、近接センサ35、35からの回動信号が一定時間以上継続した場合にのみ、把持爪31、31が上方に回動したと判断し、動作エラーと判断するようにするのが良い。近接センサ35、35を設け、把持爪31、31が上方に回動したときに制御装置15が動作エラーと判断して、把持装置3のそれ以上の下降を停止させる場合には、把持装置3が、炊飯機7にセットされている炊飯釜Pの上部と実際に当接することを避けることができるというメリットがある。
【0042】
また、空気圧シリンダ4cが、ピストン位置センサを備えており、ピストンロッド4rが最も外側に突出した位置に到達したか否かを検知することができる場合には、そのピストン位置センサからの信号によって、制御装置15が動作エラーを判断するようにしても良い。すなわち、制御装置15が、昇降装置4に把持装置3の下降命令を出した後、一定時間経過後もピストン位置センサからピストンロッド4rが最も外側に突出した位置に到達したことを検知する信号を受信しない場合には、把持装置3の下降に何らかの障害が発生したと考えられるので、制御装置15は動作エラーと判断し、把持装置3の下降を停止させたり、警報音を発したりすることができる。
【0043】
なお、以上においては、列状に配置した複数の炊飯機を備えた炊飯装置を例に本発明の炊飯釜搬送装置を説明したが、本発明の炊飯釜搬送装置の適用対象は炊飯装置に限られない。例えば、ローラコンベア、リフタ等の搬送ラインを構成する各種装置の上に炊飯釜を搬送、載置する場合にも、本発明の炊飯釜搬送装置は有効である。すなわち、装置の種類の如何を問わず、その上に既に他の炊飯釜或いは異物が存在する場所に、誤って、更に炊飯釜を搬送、載置しようとした場合であっても、本発明の炊飯釜搬送装置であれば、把持爪を変形、破損させることがないという利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明の炊飯釜搬送装置によれば、何らかのミスで、既に炊飯釜或いは他の異物が存在する場所に誤って炊飯釜を搬送、載置しようとした場合でも、炊飯釜を把持する把持爪が変形や破損などの損傷を受けることがなく、誤りを正すことにより、容易に装置ないしはシステムを原状に復帰させることが可能である。また、本発明の炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置によれば、たとえ制御装置が誤った場合でも、把持爪が損傷を受けることがないので、動作エラーを解除することにより、短時間で運転を再開することができるという利点が得られる。これらの利点は、効率の良い炊飯を行う上で極めて重要であり、本発明がもたらす産業上の利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0045】
1 炊飯釜搬送装置
2 炊飯装置
3 把持装置
4 昇降装置
5 走行輪
6 走行路
7 炊飯機列
31 把持爪
31s、32s ストッパ
32 支持部材
33 回動軸
35 近接センサ
3c、4c 空気圧シリンダ
3v、4v 電磁弁
P 炊飯釜
Pt、Pb 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯釜を把持・解放自在な把持装置と、当該把持装置を昇降させる昇降装置とを備えた炊飯釜搬送装置であって、前記把持装置は、その上面を把持すべき炊飯釜の鍔部の下面に当接させて炊飯釜を把持する少なくとも一対の把持爪と、各把持爪を水平な軸の回りに回動自在に支持する支持部材と、各把持爪が水平面よりも下向きに回動するのを阻止する手段と、一対の把持爪を、炊飯釜を把持する把持位置と、炊飯釜を解放する解放位置との間で移動させる駆動装置とを備えている炊飯釜搬送装置。
【請求項2】
炊飯釜搬送装置が、炊飯システムにおける炊飯釜の搬送ラインに沿って移動する手段を備えている請求項1記載の炊飯釜搬送装置。
【請求項3】
炊飯システムにおける炊飯釜の搬送ラインが、複数台の炊飯機を列状に配置した炊飯機列に沿った搬送ラインである請求項2記載の炊飯釜搬送装置。
【請求項4】
少なくとも昇降装置による把持装置の昇降動作を制御する制御装置と、把持爪が水平面よりも一定角度以上、上向きに回動したときにこれを検知して回動信号を出力する回動センサを備え、前記制御装置が、把持装置の下降中に回動センサからの回動信号を受信した場合には、動作エラーと判断し、エラー信号を出すようにプログラムされている請求項1〜3のいずれかに記載の炊飯釜搬送装置。
【請求項5】
複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列と、その炊飯機列に沿って走行する請求項1〜4のいずれかに記載の炊飯釜搬送装置とを備えている炊飯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−220853(P2010−220853A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72111(P2009−72111)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(599103122)精宏機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】