説明

炊飯釜

【課題】吹きこぼれが急に生じないようにする。
【解決手段】底部4から周壁5を立設した釜本体2と、周壁5の上面開口部5dを閉塞する着脱可能な蓋3を備え、蓋3は、釜本体2の周壁5の内側へ完全に没入する蓋本体6を備え、釜本体2は、周壁5の内周面5aに環状の係止段部8が設けられ、没入した蓋本体6の周縁部6aを係止段部8へ載せるようにしたこと。
【効果】炊き込みの進行に伴って吹き上がった煮汁が、蓋3を押し上げて段部8と蓋本体6との隙間から出ても、周壁5の内側に一旦溜まるため、周壁5を乗り越えない限り釜本体2の外側へ吹きこぼれることはなく、周壁5の内側に溜める間的な余裕を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炊飯時に吹き上がる煮汁を吹きこぼれ難くする炊飯釜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、釜飯は、昔ながらの素朴な料理として人気があり、外食産業等において頻繁に提供されている。この釜飯を炊きあげに用いる炊飯釜は、底部から周壁を立設した釜本体と、この周壁の上面開口部を閉塞する着脱可能な蓋とを備え、周壁の上端面に蓋を載せて使用するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】釜飯を作るきには、釜内に米と肉や野菜などの具と味付け用汁が一人分いれられ、蓋を載せた状態で炊いている。この際、炊飯釜は、炊き込みの進行に伴って吹き上がった煮汁が、蓋を押し上げて周壁の上端面と蓋との隙間から急に吹きこぼれるとがある。しかし、この吹きこぼれは、急に生じるために、火力を弱めて吹きこぼれを無くするまでの間に多量に生じて、炊飯釜の回りを汚したり、出来上がった釜飯の味を損なうことになる。
【0004】そこで、本発明は、上記問題を解決するために、吹きこぼれが急に生じないようにして、火力を弱める時間的な余裕が得られる炊飯釜を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】吹きこぼれが急に生じないようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、底部から周壁を立設した釜本体と、この周壁の上面開口部を閉塞する着脱可能な蓋を備えた炊飯釜において、前記蓋は、前記釜本体の周壁の内側へ完全に没入する蓋本体を備え、前記釜本体は、周壁の内周面に環状の係止段部が設けられ、没入した蓋本体の周縁部をこの係止段部へ載せるようにしたことを特徴とする炊飯釜である。なお、蓋を陶器製とし、吹き上がった煮汁で押し上げ難くすることもある。また、釜本体及び蓋を陶器製とし、蓄熱量を多くして冷め難くすることもある。
【0006】請求項1記載の本発明にあっては、炊き込みの進行に伴って吹き上がった煮汁が、蓋を押し上げて段部と蓋本体との隙間から出ても、周壁の内側に一旦溜まるため、周壁を乗り越えない限り釜本体の外側へ吹きこぼれることはなく、周壁の内側に溜める間的な余裕を得ることができる。
【0007】持ち運びを簡単にするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記釜本体ヘ着脱できる把手を備え、前記釜本体は、周壁に、上方へ突出して対向する山部と、これら山部の間で対向する谷部が形成され、これら山部の各々に、周壁の直径方向へ貫通する係止開口部が設けられ、前記把手は、前記釜本体の上面開口部の上方からこれら係止開口部ヘ各端部を差し込んで係合できる請求項1記載の炊飯釜である。
【0008】請求項2記載の本発明にあっては、持ち運ぶときに、上面開口部の上方から両係止開口部ヘ把手の各端部を差し込んで係合し、把手を持ち上げることで運搬することができる。また、蓋を取り外した釜本体の内部から釜飯を杓文字で掬い出すとき、谷部を利用することで容易に掬い出すことができる。
【0009】省エネルギーを図るために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記釜本体は、底面に環状凸部を形成した請求項1又は2記載の炊飯釜である。なお、環状凸部は、その複数を同心状に形成するか、一条又は複数条を渦巻き状に形成することもある。
【0010】請求項3記載の本発明にあっては、加熱する底面に環状凸部があるため、環状凸部の無い場合に比べて伝熱のための表面積が増大する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る炊飯釜(以下、「本発明釜」)を図1乃至図4に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0012】本発明釜1は、図1乃至図4に示す如く、底部4から周壁5を立設した釜本体2と、この周壁5の上面開口部5dを閉塞する着脱可能な蓋3を備えている。釜本体2は、底部4と周壁5の境界部に、環状の鍔部(羽)10を設けてある。蓋3は、釜本体2の周壁4の内側へ完全に没入する蓋本体6と、蓋本体6の上面に設けた摘み7を備えている。釜本体2は、周壁5の内周面5aの下方に環状の係止段部8が設けられ、没入した蓋本体6の周縁部6aをこの係止段部8へ載せるようにしている。釜本体2及び蓋3は、陶器又は鋳物で作られ、蓄熱量を多くして冷め難くしてある。
【0013】前記蓋3は、陶器又は鋳物で重く作ることで、吹き上がった煮汁で押し上げ難くしてある。なお、蓋本体6の周縁部6aと係止段部8の間には、図示は省略したが、ゴム又は木質の環状パッキンを挟み込ませて気密性を向上させ、炊きあげ中の釜本体2の内圧を高く維持させるようにすることもある。
【0014】本発明釜1を使用するときには、釜本体2内に米と肉や野菜などの具と味付け用汁が一人分いれられ、蓋3を載せた状態で炊かれる。この際、本発明釜1は、炊き込みの進行に伴って吹き上がった煮汁が、蓋3を押し上げて係止段部8と蓋本体6の周縁部6aとの隙間から出ると、釜本体2の起立した周壁5の内側に一旦溜まるため、周壁5を乗り越えない限り釜本体2の外側へ吹きこぼれることはなく、周壁5の内側に吹き上がった煮汁を溜める間的な余裕を得ることができる。この余裕時間を利用して火力を弱めることで、釜本体2から溢れ出る吹きこぼれを抑制することが可能となり、釜本体2の回りを汚すこともなく、また出来上がった釜飯の味を損なうこともない。
【0015】本発明釜1は、運びを簡単にするために、釜本体2ヘ着脱できる把手9を備えている。釜本体2は、把手9が着脱できるように、周壁5に、上方へ突出して対峙する山部5b,5bと、これら山部5b,5bとの間の谷部5c,5cとが形成され、これら山部5b,5bとの各々に、周壁5の直径方向へ貫通する係止開口部11が設けられている。把手9は、両端部9a,9aの各々に係止溝9bが設けられ、両端部9a,9aの間に上方へ隆起する握り部9cが形成されている。把手9は、木質から作られ、陶器製の釜本体2と衝突しても、釜本体2を破損させないようになっている。握り部9cは、図4に示すように、下方が開く略C字状となるように形成して、内側に形成される指挿入空間9dを大きくして、握り易くすることもある。
【0016】前記把手9は、釜本体2が鋳物製のときには、木質又は金属で作られる。把手9を装着するときには、周壁5の上面開口部5dの上方からこれら係止開口部11ヘ各端部9aを差し込んで、係止開口部11に係止溝9bを係合させる。蓋付きの釜本体2は、係合した把手9の握り部9cを握って運ぶことができる。また、炊き上がった釜本体2の内部から釜飯を杓文字(図示略)で掬い出すとき、谷部5cのへこみを利用することで容易に掬い出すことができる。
【0017】本発明釜1は、省エネルギーを図るために、釜本体2の底部4の底面に、環状凸部12を形成し、伝熱のための表面積を増大させている。環状凸部12は、その複数を同心状に形成するか、一条又は複数条を渦巻き状に形成してある。なお、釜本体2は、図4に示すように、底部4の平面的に広がる着座面4aを大きく形成し、この着座面4aに環状凸部12を形成することもある。
【0018】
【発明の効果】請求項1記載の本発明釜は、吹き上がった煮汁を壁の内側に溜める間的な余裕が得られるため、この余裕時間を利用して火力を弱めることで、吹きこぼれを抑制することが可能となり、釜本体の回りを汚すこともなく、また出来上がった釜飯の味を損なうこともない。
【0019】請求項2記載の本発明釜は、上面開口部の上方から両係止開口部ヘ把手の各端部を差し込んで係合する簡単な操作で、熱い蓋付きの釜本体を安全に持ち運ぶことができる。また、周壁の谷部を利用することで、釜本体の内部から釜飯を杓文字で容易に掬い出すことができ、使い勝手の向上が図れる。
【0020】請求項3記載の本発明釜は、加熱する底面の伝熱のための表面積が増大するため、炊きあがり時間が短縮して省エネルギーを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明釜の実施の形態を示すものであって、断面した正面図である。
【図2】同実施の形態を示すものであって、正面上方から見た斜視図である。
【図3】同実施の形態を示すものであって、把手を着脱する状態の途中を示す斜視図である。
【図4】別態様の実施の形態を示すものであって、断面した正面図である。
【符号の説明】
2…釜本体、3…蓋、4…底部、5…周壁、5a…内周面、5d…上面開口部、6…蓋本体、6a…周縁部、8…係止段部、11…係止開口部、12…環状凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】底部から周壁を立設した釜本体と、この周壁の上面開口部を閉塞する着脱可能な蓋を備えた炊飯釜において、前記蓋は、前記釜本体の周壁の内側へ完全に没入する蓋本体を備え、前記釜本体は、周壁の内周面に環状の係止段部が設けられ、没入した蓋本体の周縁部をこの係止段部へ載せるようにしたことを特徴とする炊飯釜。
【請求項2】前記釜本体ヘ着脱できる把手を備え、前記釜本体は、周壁に、上方へ突出して対向する山部と、これら山部の間で対向する谷部が形成され、これら山部の各々に、周壁の直径方向へ貫通する係止開口部が設けられ、前記把手は、前記釜本体の上面開口部の上方からこれら係止開口部ヘ各端部を差し込んで係合できる請求項1記載の炊飯釜。
【請求項3】前記釜本体は、底面に環状凸部を形成した請求項1又は2記載の炊飯釜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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